(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-220454(P2015-220454A)
(43)【公開日】2015年12月7日
(54)【発明の名称】電極構造体
(51)【国際特許分類】
H05K 3/18 20060101AFI20151110BHJP
【FI】
H05K3/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-8394(P2015-8394)
(22)【出願日】2015年1月20日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0057291
(32)【優先日】2014年5月13日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(72)【発明者】
【氏名】ベク・スン・ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ユン・ス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ジン・ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】イ・チャン・ベ
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA02
5E343AA16
5E343AA17
5E343AA18
5E343BB24
5E343DD23
5E343DD25
5E343DD33
5E343DD43
5E343DD76
5E343ER11
5E343ER18
5E343GG08
5E343GG13
(57)【要約】
【課題】本発明は、薄厚のシード層が設けられると共に電解めっき工程をスムーズに行うことができる構造の電極構造体を提供する。
【解決手段】本発明による電極構造体100は、基材110と、基材110の片面または両面に設けられるシード層120と、シード層120上に設けられる電解めっき層130と、シード層120と電解めっき層130との間に不連続的に設けられるバリア140とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の片面または両面に設けられるシード層と、
前記シード層上に設けられる電解めっき層と、
前記シード層と前記電解めっき層との間に不連続的に設けられるバリアと
を含むことを特徴とする電極構造体。
【請求項2】
前記バリアは、アイランド形状に分布することを特徴とする請求項1に記載の電極構造体。
【請求項3】
前記バリアは、電解めっき工程時に使われるめっき液への耐エッチング性が前記シード層よりも優秀であることを特徴とする請求項1に記載の電極構造体。
【請求項4】
前記シード層は、CuまたはCu合金物から成り、
前記バリアは、Ti、Cr、Taまたはこれらの合金物から成ることを特徴とする請求項1に記載の電極構造体。
【請求項5】
前記基材と前記シード層との間に設けられる接合層を、さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電極構造体。
【請求項6】
前記接合層は、前記バリアと同じ金属材料から成ることを特徴とする請求項5に記載の電極構造体。
【請求項7】
基材の片面または両面にシード層を形成するステップと、
前記シード層上にバリアを形成するステップと、
前記バリアが形成されたシード層の片面にレジストパターンを形成し、続いて、電解めっきを施して、前記レジストパターン間に電解めっき層を形成するステップと、
前記レジストパターンを剥離してから、外部へ露出される前記シード層を除去するステップとを含むことを特徴とする電極構造体の製造方法。
【請求項8】
前記バリアを形成するステップにおいて、前記バリアはアイランド形状に形成されることを特徴とする請求項7に記載の電極構造体の製造方法。
【請求項9】
前記バリアを形成するステップは、スパッタリング法によって行われることを特徴とする請求項7に記載の電極構造体の製造方法。
【請求項10】
前記シード層を形成する前、前記基材上に接合層を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の電極構造体の製造方法。
【請求項11】
前記シード層を除去するステップにおいて、前記接合層が共に除去されることを特徴とする請求項10に記載の電極構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電極構造体に関し、特に、印刷回路基板などに設けられた回路配線の電極構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷回路基板(Printed Circuit Board:PCB)は、フェノール樹脂絶縁板またはエポキシ樹脂絶縁板などの各種合成樹脂から成るボードの片面または両面に、半導体チップなどの電子素子が配設され、これらの間の相互電気的接続のために回路配線が設けられたものである。最近には、電子製品の軽薄短小化に伴って回路配線の高密度化への要求が増加している。
【0003】
また、このような要求に応じるため、回路配線を形成する工法として、MSAP(Modified Semi Additive Process)またはSAP(Semi Additive Process)工法などが広く利用されている。
【0004】
特許文献1には、SAP工法による回路配線形成過程について示されている。ここでは、まず、絶縁層にシード層(seed layer)を形成し、ここにドライフィルム(Dry Film)のようなフォトリソグラフィ用の感光性材料から成るフォトレジスト層をコーティングする。
【0005】
続いて、該フォトレジスト層を選択的に露光後、現像工程によって回路配線に対応するパターンを設ける。
【0006】
続いて、パターン間の空間に金属材料が充填されるように、電解めっき工程を行い、フォトレジスト層を除去してから、最後に、エッチング工程によって外部へ露出するシード層の部分を除去して、所望のパターンの回路配線を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2009-0087149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、エッチング工程において残渣のない表面を得るためには、シード層の厚さよりオーバーエッチング(over-etching)になるように工程が行われるが、この過程において回路配線のパターン下部が一部除去されるアンダーカット(Under-cut)が発生するか、または回路配線のパターン幅が損失されるという不都合がある。
【0009】
そこで、微細回路を具現するためには、シード層の厚さが薄いほど望ましいが、電解めっき工程時に使われるめっき液中の硫酸(H
2SO
4)成分によってシード層がエッチングされてしまうため、シード層の厚さが非常に薄ければ電解めっき工程がスムーズに行われないことになる。このため、回路配線間に短絡が生じるか、回路配線の信号伝達特性が弱化されるという不都合がある。
【0010】
そのため、一定の厚さ以上のシード層が要求され、微細回路の具現に障害になる。
【0011】
本発明は前記の問題点に鑑みて成されたものであって、薄厚のシード層が設けられると共に電解めっき工程をスムーズに行うことができる構造の電極構造体を提供することに、その目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を解決するために、本発明の一形態によれば、基材と、前記基材の片面または両面に設けられるシード層と、前記シード層上に設けられる電解めっき層と、前記シード層と電解めっき層との間に不連続的に設けられるバリアとを含む、電極構造体が提供される。
【0013】
前記バリアは、アイランド形状に分布される。
【0014】
また、前記バリアは、めっき液への耐エッチング性が前記シード層より優秀である。
【0015】
また、前記シード層はCuまたはCu合金物から成り、前記バリアはTi、Cr、Taまたはこれらの合金物から成る。
【0016】
また、前記電極構造体においては、前記基材とシード層との間に接合層が設けられる。
【0017】
また、前記電極構造体は、前記基材とシード層との間に設けられる接合層とをさらに含む。
【0018】
また、上記目的を解決するために、本発明の他の形態によれば、基材の片面または両面にシード層を形成するステップと、前記シード層上にバリアを形成するステップと、前記バリアの形成されたシード層の片面にレジストパターンを形成し、電解めっきによって該レジストパターン間に電解めっき層を形成するステップと、前記レジストパターンを剥離し、外部へ露出されたシード層を除去するステップとを含む、電極構造体の製造方法が提供される。
【0019】
前記バリアを形成するステップにおいて、前記バリアはアイランド形状に形成される。
【0020】
また、前記バリアを形成するステップは、スパッタリング法によって行われる。
【0021】
また、前記電極構造体の製造方法は、前記シード層を形成する前に、前記基材上に接合層を形成するステップをさらに含む。
【0022】
また、前記外部へ露出されたシード層を除去するステップにおいて、前記接合層が共に除去される。
【発明の効果】
【0023】
従って、本発明の電極構造体によれば、従来に比べてシード層の厚さが軽減されるため、回路配線の形成時にパターン幅の損失を減らし、微細回路を具現することができるという効果が奏する。
【0024】
また、電解めっき工程を円滑に行うことによって、パターン不良のない回路配線を形成することができるという効果が奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明による電極構造体を示す断面図である。
【
図3】バリアが形成されたシード層の平面図である。
【
図4】本発明による電極構造体の製造方法を示す流れ図である。
【
図5】本発明による電極構造体の製造方法を示す断面図である。
【
図6】本発明による電極構造体の製造方法を示す断面図である。
【
図7】本発明による電極構造体の製造方法を示す断面図である。
【
図8】本発明による電極構造体の製造方法を示す断面図である。
【
図9】本発明による電極構造体の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態は図面を参考にして詳細に説明する。次に示される各実施の形態は当業者にとって本発明の思想が十分に伝達されることができるようにするために例として挙げられるものである。従って、本発明は以下示している各実施の形態に限定されることなく他の形態で具体化されることができる。そして、図面において、装置の大きさ及び厚さなどは便宜上誇張して表現されることができる。明細書全体に渡って同一の参照符号は同一の構成要素を示している。
【0027】
本明細書で使われた用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形は文句で特別に言及しない限り複数形も含む。明細書で使われる「含む」とは、言及された構成要素、ステップ、動作及び/又は素子は、一つ以上の他の構成要素、ステップ、動作及び/又は素子の存在または追加を排除しないことに理解されたい。
【0028】
図1は本発明による電極構造体の断面図で、
図2は
図1中の部分Aの拡大図である。
【0029】
図1及び
図2に示すように、本発明の電極構造体100は、基材110と、この基材110に設けられるシード層120と、この記シード層120上に設けられる電解めっき層130と、前記シード層120と電解めっき層130との間に設けられるバリア140とを含む。
【0030】
また、本発明の電極構造体100は、基材110との密着力を高めるために、基材110とシード層120との間に設けられる接合層121をさらに含む。
【0031】
前記接合層121の材料には、Ti、Cr、Taまたはこれらの合金物が挙げられる。その製造方法としては、スパッタリング法が用いられる。このスパッタリング法によって接合層121を設けるたき、前述の金属あるいは合金材料が基材110の表面に付着されて基材110との接着力が増大する。
【0032】
前記基材110は、支持台として機能し、基本的に絶縁性を有すると共に、高温・高圧及びその他化学薬品などによる変性あるいは変形が起きないように耐熱性、耐湿性、耐エッチング性などに優れた材料によって形成される。
【0033】
例えば、前記基材110を構成する最適の高分子材料として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられる。また、該高分子材料として、これらの高分子樹脂にガラス纎維や無機フィラーのような補強基材が含浸されたプリプレグ(Prepreg)が用いられてもよい。
【0034】
また、前記基材110は製品の用途によって、ガラス基板(Glass substrate)や有機基板(Organic substrate)であってもよく、リール−ツー−リール(Reel-To-Reel)方式の連続的な製造のために可撓性フィルム基板であってもよい。この場合、絶縁性を確保するために、表面に絶縁膜が形成されたものが用いられることが望ましい。
【0035】
前記電解めっき層130は、基板に設けられた回路配線を成す金属である。図面においては、説明の便宜上、前記電解めっき層130が基材110の片面のみに形成された片面基板を示したが、両面基板や多層基板など多様な種類の基板であってもよい。
【0036】
前記シード層120は、電解めっき層130の形成のために引入線として使われる金属であって、CuまたはCu合金物から成る。
【0037】
詳しくは、前記電解めっき層130は、シード層120を一電極にし、めっき槽に設けられた電極を他電極にして行われる電解めっき工程によって形成される。これによって、シード層120は電解めっき工程を行うのに適合な厚さで形成されることが要求される。
【0038】
電解めっき工程で使われるめっき液には硫酸(H
2SO
4)が含有されている。この硫酸はシード層を構成する銅(Cu)と反応することになる。その結果、電解めっき工程時にシード層は一定量だけエッチングされる。そのため、従来にはめっき液によるエッチング量を考慮して一定厚さ以上のシード層が要求され、回路配線の形成時にパターン損失幅の増加につながって微細回路を具現するのに困難さがあった。
【0039】
しかし、本発明の電極構造体100においては、バリア140を含むことによって従来要求される厚さよりも一層薄い厚さで前記シード層120を形成することができる。
【0040】
前記バリア140は、電解めっき層130と接合するシード層120の片面に不連続的に形成され、これによって、電解めっき工程時にめっき液とシード層120との接触を一部遮断させる。
【0041】
図3は、バリア140が形成されたシード層120の平面図である。詳しくは、前記バリア140はシード層120の片面にいわゆるアイランド形状に点在して形成される。このような構造によって、電解めっき工程時に、電解めっき層130はバリア140間に金属が析出されて形成され、バリア140が形成されたシード層120部位はめっき液との接触が遮られることになる。
【0042】
その結果、本発明によれば、シード層の全面がめっき液と接触する従来構造に比べて、シード層のエッチング速度を非常に遅延させることができ、従来よりも一層薄い厚さで前記シード層120を形成することができる。
【0043】
前記バリア140の材料には、電解めっき工程時にめっき液によって容易にエッチングされないように、硫酸への耐エッチング性がシード層120よりも優秀な金属材料を使うのが望ましい。
【0044】
バリア140は、接合層121と同様に、スパッタリング法によって形成される。よって、製造の便宜上、前記接合層121と同じ材料の金属、すなわち、Ti、Cr、Taまたはこれらの合金物を使って前記バリア140を形成するのが望ましい。
【0045】
次に、本発明による電極構造体の製造方法について説明する。
【0046】
図4は、本発明による電極構造体100製造方法を示す流れ図で、
図5〜
図9は各々
図4の各工程を示す断面図である。
【0047】
まず、
図5に示すように、基材110の片面または両面にシード層120を形成する。
【0048】
前記シード層120の形成工法としては、真空蒸着法、無電解めっき法、スパッタリング法などのように、基材110の表面に金属を析出することができるものならいずれも構わない。とりわけ、スパッタリング法を使って基材110との密着力を高めるのが望ましい。または、シード層120を形成する前、シード層120が形成される基材110の表面に接合層121を形成することによって密着力を向上させてもよい。
【0049】
シード層120が形成されると、
図6に示すように、シード層120上にバリア140を形成する。
【0050】
前記バリア140は、スパッタリング法によって形成される。このスパッタリング法とは、真空雰囲気のチャンバ内に反応性ガス(例えば、Ar)を取り込んで、プラズマを発生させ、ソース材料を基板に蒸着させることによってある。スパッタリングの初期には、ソース材料がアイランド形態に分布されて成長してから、後には互いに凝集されて薄膜を形成するようになる。本発明は、このようなスパッタリングの初期段階を利用してバリア140がアイランド形態で点在するようにする。
【0051】
続いて、
図7に示すように、バリア140が形成されたシード層120の表面にレジストパターン10を形成する。
【0052】
前記レジストパターン10は、感光性樹脂から成るフォトレジスト(Photo Resist:PR)に所望のパターンが形成されたフォトマスクを配置した状態で光を照射し、現像工程を行って回路配線が形成される部分の感光性樹脂を除去することによって形成される。
【0053】
PRを構成する樹脂は、光の照射された部分が硬化されて現像液によって溶解されないネガタイプ及び光の照射された部分が現像液によって溶解されるポジタイプの両方を用いてもよく、液状だけでなく乾状のフィルム形態を使ってもよい。
【0054】
このように、レジストパターン10の設けられた基材110をめっき槽に入れた後、シード層120を+電極(または、−電極)にし、めっき槽に設けられた電極を−電極(または、+電極)にして電圧を印加すると(電解めっき工程)、レジストパターン10間に金属が析出されて電解めっき層130が形成される(
図8)。
【0055】
詳しくは、前記シード層120の表面には、アイランド形状に分布されたバリア140が形成されているため、前記電解めっき層130はバリア140間に析出された金属が成長することによって形成される。
【0056】
図10は、本発明の電解めっき工程においてシード層120のエッチング状態を説明するために、
図8中の部分Bを拡大して示す図である。同図のように、前記電解めっき工程時、バリア140が形成されたシード層120の部位はめっき液と接触しないため、バリア140間のシード層120部位のみが凹な形態にエッチングされ、これによって、全面がめっき液と接触する従来シード層の構造に比べて、シード層120のエッチング量が著しく減るようになる。
【0057】
このように、電解めっき層130が形成されると、レジストパターン10を剥離し、最後に、フラッシュ(Flesh)エッチングやクィックエッチング(Quick etching)などのエッチング法によって外部へ露出されたシード層120、または接合層121が形成された場合、シード層120下の接合層121を共に除去して、回路配線のパターン間を絶縁させる(
図9)。
【0058】
前述のように、本発明の電極構造体100は、バリア140を含むことによってシード層120のエッチング速度を緩めることができる。従って、従来よりもシード層120の厚さを薄く形成することができるため、前記エッチング工程時に従来のようにオーバーエッチングを実施する必要がなく、微細回路を具現するのに有利である。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
10 レジストパターン
100 電極構造体
110 基材
120 シード層
121 接合層
130 電解めっき層
140 バリア