【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0034】
1.測定方法、評価方法
【0035】
(1)融点および融解熱量
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7を用い、昇温速度20℃/分で350℃まで昇温した後、350℃で5分間保持し、降温速度20℃/分で25℃まで降温した。25℃で5分間保持後、再び昇温速度20℃/分で昇温し、吸熱ピークのトップを融点とし、ピーク面積を融解熱量とした。
【0036】
(2)相対粘度
96質量%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dL、25℃で測定した。
【0037】
(3)重量平均分子量
東ソー社製ゲル浸透クロマトグラフィ装置を用い、下記条件で調整した試料溶液にてGPC分析をおこなった後、ポリメチルメタクリレート(ポリマーラボラトリーズ社製)を標準試料として作成した検量線を用いて、重量平均分子量を求めた。
<試料調製>
ポリアミド5mgに10mMトリフルオロ酢酸ナトリウム含有ヘキサフルオロイソプロパノール2mLを加えて溶解後、ディスクフィルターで濾過した。
<条件>
・検出器:示差屈折率検出器RI−8010(東ソー社製)
・溶離液:10mMトリフルオロ酢酸ナトリウム含有ヘキサフルオロイソプロパノール
・流速:0.4mL/分
・温度:40℃
【0038】
(4)標準条件下での曲げ弾性率
ポリアミド樹脂組成物を十分に乾燥した後、射出成形機(東芝社製EC−100)を用いて射出成形をおこない、試験片(ダンベル片)を作製した。シリンダー温度は、実施例1〜13、比較例3〜4は(半芳香族ポリアミドの融点+10℃)、比較例1は、260℃、比較例2は280℃、金型温度130℃、射出速度は150mm/秒、保圧は60MPaとした。
得られた試験片を、23℃環境下、ISO178に準拠して測定した。
実用上、標準条件下での曲げ弾性率は、5GPa以上が好ましい。
【0039】
(5)吸湿処理後の曲げ弾性率
(4)の標準条件で得られた試験片を、65℃×60%RHにて500時間吸湿処理後、23℃環境下、ISO178に準拠して測定した。
得られた値を用いて、標準条件の値に対する保持率(%)を求めた。
保持率は、80%以上であることが好ましい。
【0040】
(6)80℃環境下の曲げ弾性率
(4)の標準条件で得られた試験片を、80℃環境下、ISO178に準拠して測定した。
得られた値を用いて、標準条件の値に対する保持率(%)を求めた。
保持率は、80%以上であることが好ましい。
【0041】
(7)内部損失の変化率
ポリアミド樹脂組成物を十分に乾燥した後、射出成形機(東芝社製EC−100)を用いて射出成形をおこない、試験片(短冊状、幅12.7mm×長さ127mm×厚み0.8mm)を作製した。シリンダー温度は、実施例1〜13、比較例3〜4は(半芳香族ポリアミドの融点+10℃)、比較例1は、260℃、比較例2は280℃、金型温度130℃、射出速度は150mm/秒、保圧は60MPaとした。
得られた試験片の内部損失を、23℃環境下、レオメトリック社製粘弾性スペクトロメーターRSAIIを用いて、引張モード、振動周波数1Hz、歪み0.1%、昇温速度2℃/分の条件で測定した。
次に、試験片を、65℃×60%RHにて500時間吸湿処理し、その後、同じ条件で内部損失を測定した。
吸湿処理前後の内部損失の測定値を用いて、以下の式から変化率(%)を求めた。
変化率=(吸湿処理後の内部損失−吸湿処理前の内部損失)/(吸湿処理前の内部損失)
変化率は、2%以下であることが好ましい。
また、試験片の80℃環境下での内部損失を測定し、同様に、以下の式から変化率(%)を求めた。
変化率=(80℃環境下の内部損失−23℃環境下の内部損失)/(23℃環境下の内部損失)
変化率は、2%以下であることが好ましい。
【0042】
2.原料
(1)ジカルボン酸成分
・TPA:テレフタル酸
【0043】
(2)ジアミン成分
・NDA:1,9−ノナンジアミン
・DDA:1,10−デカンジアミン
【0044】
(3)末端封鎖剤
・STA:ステアリン酸
【0045】
(4)半芳香族ポリアミド
・P−1
芳香族ジカルボン酸成分として粉末状のTPA4.70kgと、モノカルボン酸成分としてSTA0.33kgと、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物20gとを、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、脂肪族ジアミン成分として100℃に加温したDDA4.97kgを、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し反応物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、TPA:DDA:STA=48.5:49.5:2.0(官能基当量比はTPA:DDA:STA=49.0:50.0:1.0)であった。
続いて、得られた反応物を、同じ反応装置で、窒素気流下、250℃、回転数30rpmで8時間加熱して重合し、半芳香族ポリアミドの粉末を作製した。
その後、得られた半芳香族ポリアミドの粉末を、二軸混練機を用いてストランド状とし、ストランドを水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングして半芳香族ポリアミド(P−1)を得た。
【0046】
・P―2〜P−4
表1に示すように用いるモノマーを変更した以外は、半芳香族ポリアミド(P−1)と同様にして、半芳香族ポリアミド(P−2)〜(P−4)を得た。
【0047】
得られた半芳香族ポリアミドの樹脂組成およびその特性値を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
・半芳香族ポリアミド(P−5)
三井化学社製ポリアミド6T、アーレンA3000、融点320℃、融解熱量38J/g
【0050】
(5)結晶性半芳香族ポリアミド以外のポリアミド
・PA6:ポリアミド6、ユニチカ社製A1030BRL、相対粘度2.51、融解熱量71J/g
・PA66:ポリアミド66、アセンド社製50BWFS、相対粘度2.75、融解熱量84J/g
・非晶PA:イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体、DSM社製X21、ガラス転移温度125℃、相対粘度2.0、融解熱量0.4J/g
【0051】
(6)繊維状強化材
・E−1:炭素繊維、東邦テナックス社製HTA−C6−NR、平均繊維径7μm、平均繊維長6mm
・E−2:アラミド繊維、帝人社製テクノーラT322UR3−12、平均繊維長3mm
【0052】
実施例1
半芳香族ポリアミド(P−1)100質量部を、スクリュー径37mm、L/D40の同方向二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS)の主供給口に供給し、サイドフィーダーよりガラス繊維を30質量部供給し溶融混練をおこなった。320℃〜340℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量35kg/時間であった。その後、ストランド状に引き取った後、水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングしてポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
【0053】
実施例2〜13、比較例1〜4
表2に示すように樹脂組成物の組成を変更した以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
ただし、比較例1の溶融混練温度は250℃〜260℃、比較例2の溶融混練温度は270℃〜290℃とした。
【0054】
比較例5
繊維状強化材の含有量を、半芳香族ポリアミド100質量部に対して90質量部とする以外は、比較例3と同様にして半芳香族ポリアミド樹脂組成物ペレットを得ようとしたが、ストランドが切断し、ポリアミド樹脂組成物ペレットを得ることができなかった。
【0055】
実施例と比較例で得られたポリアミド樹脂組成物の組成およびその特性値を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
実施例1〜13は、吸湿処理後および80℃環境下いずれの条件においても、曲げ弾性率の保持率が高く、内部損失の変化率が小さかった。したがって、スピーカー振動板用の樹脂組成物として適していることがわかる。
【0058】
比較例1、2は、結晶性半芳香族ポリアミドを用いていなかったため、曲げ弾性率の保持率が低かった。また、内部損失の変化率も大きかった。
比較例3は、繊維状強化材の含有量が本発明で規定する範囲よりも少なかったため、標準条件下での曲げ弾性率が低かった。
比較例4は、結晶性半芳香族ポリアミドと前記ポリアミド以外のポリアミドの合計に対する結晶性半芳香族ポリアミドの含有量が、本発明で規定する範囲よりも少なかったため、曲げ弾性率の保持率が低かった。また、内部損失の変化率も大きかった。