【解決手段】ロータは、第1及び第2ロータ側爪状磁極25,27の各磁極部25b,27bの背面側(径方向内側)に配置され径方向に磁化された背面磁石部41,42と、第1磁極部25bと第2磁極部27bとの周方向間に配置され周方向に磁化された極間磁石部43とが一体形成されて構成された補助磁石40を備えている。
コアベースから径方向へ延出した基部とその基部の先端から軸方向に延出した磁極部とを有した複数の爪状磁極をそれぞれ備えた第1及び第2ロータコアと、前記第1及び第2ロータコア間に配置され軸方向に磁化された永久磁石とを有するロータと、
コアベースから径方向へ延出した基部とその基部の先端から軸方向に延出した磁極部を有した複数の爪状磁極をそれぞれ備えた第1及び第2ステータコアと、前記第1及び第2ステータコア間に周方向に配置された巻線とを有するステータと
を備えたマルチランデル型モータであって、
前記ロータは、前記ロータ側の磁極部の背面に配置され径方向に磁化された背面磁石部と、前記第1ロータコアの爪状磁極と前記第2ロータコアの爪状磁極との周方向間に配置され周方向に磁化された極間磁石部とが一体形成されてなる補助磁石を備えていることを特徴とするマルチランデル型モータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなモータにおいては、周方向に隣同士の爪状磁極の間に隙間ができてしまい、この隙間から磁束が漏れてしまう現状があった。また、例えば、爪状磁極の背面においても同様に隙間ができてしまうと、その隙間から磁束が漏れてしまう虞がある。そして、漏れ磁束の増加はモータの出力の低下の要因となるため、何らかの対策が必要であるが、部品点数が増加しない構造としたい要望があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、漏れ磁束を抑えた構造を、部品点数を抑えて実現することができるマルチランデル型モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するマルチランデル型モータは、コアベースから径方向へ延出した基部とその基部の先端から軸方向に延出した磁極部とを有した複数の爪状磁極をそれぞれ備えた第1及び第2ロータコアと、前記第1及び第2ロータコア間に配置され軸方向に磁化された永久磁石とを有するロータと、コアベースから径方向へ延出した基部とその基部の先端から軸方向に延出した磁極部を有した複数の爪状磁極をそれぞれ備えた第1及び第2ステータコアと、前記第1及び第2ステータコア間に周方向に配置された巻線とを有するステータとを備えたマルチランデル型モータであって、前記ロータは、前記ロータ側の磁極部の背面に配置され径方向に磁化された背面磁石部と、前記第1ロータコアの爪状磁極と前記第2ロータコアの爪状磁極との周方向間に配置され周方向に磁化された極間磁石部とが一体形成されてなる補助磁石を備えている。
【0008】
この構成によれば、ロータ側の磁極部の背面に配置され径方向に磁化された背面磁石部と、第1ロータコアの爪状磁極と第2ロータコアの爪状磁極との周方向間に配置され周方向に磁化された極間磁石部とが一体形成されてなる補助磁石を備える。このため、第1ロータコアと第2ロータコアとの間の隙間から磁束を漏れ難くする構造を、部品点数を抑えて実現することが可能となる。
【0009】
上記マルチランデル型モータにおいて、前記背面磁石部は、前記ロータ側の各磁極部の背面に配置され、前記極間磁石部は、前記第1ロータコアの爪状磁極と前記第2ロータコアの爪状磁極との周方向の各間に配置され、前記各背面磁石部と前記各極間磁石部とが一体形成されて前記補助磁石が環状をなすことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、各背面磁石部と各極間磁石部とが一体形成されてなる環状の補助磁石を1つの部品として取り扱い可能となり、部品点数をより抑えることができる。
上記マルチランデル型モータにおいて、前記ロータは、前記第1及び第2ロータコア、前記永久磁石及び前記補助磁石から構成されたロータユニットが軸方向に複数並設されるとともに、軸方向に隣り合う前記ロータユニットの永久磁石の磁化方向が互いに反対であり、前記各ロータユニットが軸方向一端側から軸方向他端側にかけて周方向一方に順にずらして構成され、前記ステータは、前記第1及び第2ステータコア及び前記巻線から構成されたステータユニットが軸方向に複数並設され、前記各ステータユニットは軸方向一端側から軸方向他端側にかけて前記各ロータユニットのずらし方向とは反対方向に順にずらして構成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、第1及び第2ロータコア、永久磁石、及び補助磁石から構成されたロータユニットが軸方向に複数並設されたランデル型ロータと、第1及び第2ステータコア及び巻線から構成されたステータユニットが軸方向に複数並設されたランデル型ステータとから複数段構成のマルチランデル型モータが構成される。そして、部品点数が多くなりがちな複数段構成のマルチランデル型モータにおいて、各ロータユニットの補助磁石の背面磁石部と極間磁石部とを一体化する構成を適用することは、部品点数の増加を抑える点でより効果的である。
【0012】
上記マルチランデル型モータにおいて、前記各ロータユニットにおいて、前記極間磁石部は、周方向の一方に磁化された第1極間磁石部と、周方向の他方に磁化された第2極間磁石部とからなり、前記各ロータユニットの前記第1極間磁石部は、軸方向に隣り合うロータユニットの前記第2極間磁石部と軸方向に隣り合わないように構成されていることが好ましい。
【0013】
各ロータユニット間において、磁化方向が互いに反対である第1極間磁石部と第2極間磁石部とが軸方向に隣り合うと、互いの磁気が影響し合って第1及び第2極間磁石部による漏れ磁束抑制効果が弱くなることが懸念されるが、本構成によればそれを抑制することができる。
【0014】
上記マルチランデル型モータにおいて、軸方向に隣り合う前記ロータユニットの前記補助磁石同士が一体形成されていることが好ましい。
この構成によれば、軸方向に隣り合うロータユニットの補助磁石同士が一体化されることで、部品点数の増加をより抑えることができる。
【0015】
上記マルチランデル型モータにおいて、前記永久磁石と前記補助磁石とが異なる材料で構成されていることが好ましい。
この構成によれば、永久磁石と補助磁石とが異なる材料で構成されることで、各磁石の磁束の調整が容易となって出力調整が可能となる。
【0016】
上記マルチランデル型モータにおいて、前記補助磁石の配向方向が極異方配向であることが好ましい。
この構成によれば、背面磁石部と極間磁石部のそれぞれにおいて最適な方向の成分を有するように磁化することが可能となる。
【0017】
上記マルチランデル型モータにおいて、前記永久磁石と前記補助磁石とが一体形成されていることが好ましい。
この構成によれば、永久磁石と補助磁石とが一体化されることで、部品点数の増加をより抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のマルチランデル型モータによれば、漏れ磁束を抑えた構造を、部品点数を抑えて実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、マルチランデル型モータの一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態のモータ11は、回転軸(図示略)に固定されるロータ12と、ロータ12の外側に配置されモータハウジング(図示略)に固定された環状のステータ13とを備えている。
【0021】
[ロータの構成]
図2に示すように、ロータ12は、軸方向に順に積層されたU相ロータユニットRu、V相ロータユニットRv及びW相ロータユニットRwから構成されている。各ロータユニットRu,Rv,Rwは互いに略同様の構成を有している。
【0022】
図2及び
図3に示すように、各ロータユニットRu,Rv,Rwは、第1及び第2ロータコア21,22と、それら第1及び第2ロータコア21,22に挟まれた界磁磁石23と、界磁磁石23の外周側に配置される補助磁石40とから構成されている。
【0023】
第1ロータコア21は、前記回転軸が挿通固定される貫通孔24aを径中心部に備える円盤状の第1ロータコアベース24を有している。第1ロータコアベース24の外周縁には、4個の第1ロータ側爪状磁極25が周方向において互いに等間隔(90度間隔)に設けられている。
【0024】
第1ロータ側爪状磁極25は、第1ロータコアベース24の外周縁から径方向外側に延びる径方向延出部25aと、その径方向延出部25aの先端部(径方向外側端部)から突出する第1磁極部25bとからなる。なお、第1ロータ側爪状磁極25は、径方向延出部25aに対して第1磁極部25bを直角に屈曲することで成形してもよく、また、鋳造によって径方向延出部25aと第1磁極部25bとを一体に成形してもよい。
【0025】
径方向延出部25aは、軸方向から見て、径方向外側に向かうほど幅狭になる台形状に形成されている。また、第1磁極部25bは、径方向から見て長方形状に形成されている。そして、径方向延出部25aと第1磁極部25bからなる第1ロータ側爪状磁極25の周方向両側面は、それぞれ平坦面であり、径方向外側に向かうほど互いに近づくように形成されている。また、第1ロータ側爪状磁極25は、その周方向中心に対して線対称をなしている。なお、各第1磁極部25bの径方向外側面は、軸方向から見てロータ12の回転軸線を中心とする同一円上に位置する円弧状をなしている。
【0026】
図3に示すように、第2ロータコア22は、第1ロータコア21と同一形状をなし、第2ロータコアベース26と第2ロータ側爪状磁極27とを有している。第2ロータコアベース26(貫通孔26a)及び第2ロータ側爪状磁極27(径方向延出部27a及び第2磁極部27b)はそれぞれ、第1ロータコアベース24(貫通孔24a)及び第1ロータ側爪状磁極25(径方向延出部25a及び第1磁極部25b)と同一形状をなしている。
【0027】
図2に示すように、第1ロータコア21と第2ロータコア22とは、それらの磁極部25b,27bの先端が互いに反対方向を向くように組み付けられ、各第1磁極部25bの周方向間に各第2磁極部27bが配置される。第1磁極部25bと第2磁極部27bとは、組み付け状態において周方向に交互に並ぶとともに、周方向において等間隔に位置するように構成されている。
【0028】
第1及び第2ロータコア21,22の組み付け状態において、第1及び第2ロータコアベース24,26は互いに平行をなし、それらの間に界磁磁石23が配置されている。
図3に示すように、界磁磁石23は、例えばフェライト焼結磁石よりなる円板状の永久磁石である。界磁磁石23の中央位置には、前記回転軸が挿通される貫通孔23aが形成されている。そして、界磁磁石23の一方の端面23bが、第1ロータコアベース24の軸方向内側面24bと、界磁磁石23の他方の端面23cが、第2ロータコアベース26の対向面26bとそれぞれ当接し、界磁磁石23は第1ロータコアベース24と第2ロータコアベース26との間に軸方向に挟持固定される。なお、界磁磁石23の外径は、各コアベース24,26の外径と一致するように設定されている。
【0029】
そして、
図4中の実線で示す矢印は、界磁磁石23(及び補助磁石40)の磁化方向(S極からN極向き)を示している。同図に示すように、界磁磁石23は、第1ロータコアベース24側がN極、第2ロータコアベース26側がS極となるように軸方向に磁化されている。従って、この界磁磁石23によって、各第1ロータ側爪状磁極25がN極として機能し、各第2ロータ側爪状磁極27がS極として機能する。
【0030】
[補助磁石]
図2に示すように、各ロータユニットRu,Rv,Rwは、界磁磁石23の外周側において円環状の補助磁石40を備えている。補助磁石40は、ネオジム磁石等の希土類磁石よりなるボンド磁石(プラスチックマグネット、ゴムマグネット等)である。補助磁石40は、界磁磁石23の外周面23dに例えば接着によって固定される。
【0031】
図3に示すように、補助磁石40は、ロータ12の回転軸線を中心とする円環状をなし、第1及び第2背面磁石部41,42と極間磁石部43とが周方向に交互に連なるように一体形成されてなる。
【0032】
図3及び
図7に示すように、各第1背面磁石部41は、各第1ロータ側爪状磁極25の第1磁極部25bの径方向内側面と、界磁磁石23の外周面23dとの間に配置される。第1背面磁石部41は、第1磁極部25b及び界磁磁石23のそれぞれと径方向に当接する。また、各第1背面磁石部41は、各第1ロータ側爪状磁極25の径方向延出部25aに対して軸方向に当接する。
【0033】
同様に、各第2背面磁石部42は、各第2ロータ側爪状磁極27の第2磁極部27bの径方向内側面と、界磁磁石23の外周面23dとの間に配置される。第2背面磁石部42は、第2磁極部27b及び界磁磁石23のそれぞれと径方向に当接する。また、各第2背面磁石部42は、各第2ロータ側爪状磁極27の径方向延出部27aに対して軸方向に当接する。
【0034】
各極間磁石部43は、第1及び第2ロータ側爪状磁極25,27同士の周方向の各間に設けられている。詳しくは、各極間磁石部43は、周方向に隣り合う第1及び第2背面磁石部41,42同士を繋ぐように形成されるとともに、第1及び第2磁極部25b,27b同士の間にも配置されるように各背面磁石部41,42よりも径方向外側に突出した形状とされている。なお、各極間磁石部43と各磁極部25b,27bは、それらの径方向外側面がロータ12の回転軸線を中心とする同一円上に位置するように形成されている。また、極間磁石部43の径方向内側面は、第1及び第2背面磁石部41,42の径方向内側面よりも径方向外側に位置している。これにより、極間磁石部43の径方向内側面と界磁磁石23の外周面23dとの間に若干の隙間が形成されている(
図7参照)。
【0035】
そして、
図7中の実線で示す矢印は、補助磁石40の磁化方向(S極からN極向き)を示している。同図に示すように、補助磁石40は、各背面磁石部41,42及び極間磁石部43のそれぞれで界磁磁石23の漏れ磁束(短絡磁束)を抑えるように磁化されている。詳述すると、第1背面磁石部41は、径方向外側(第1磁極部25b側)が第1磁極部25bと同極のN極となるように径方向に磁化されている。同様に、第2背面磁石部42は、径方向外側(第2磁極部27b側)が第2磁極部27bと同極のS極となるように径方向に磁化されている。そして、各極間磁石部43は、第1磁極部25b側がN極に、第2磁極部27b側がS極となるように周方向に磁化されている。
【0036】
上記のような第1及び第2ロータコア21,22と、それらロータコア21,22に組み込まれる2種の磁石(界磁磁石23及び補助磁石40)が各ロータユニットRu,Rv,Rwを構成している。
【0037】
そして、上記のように界磁磁石23を用いた所謂ランデル型構造とされた各ロータユニットRu,Rv,Rwは、N極となる第1ロータ側爪状磁極25と、S極となる第2ロータ側爪状磁極27とが周方向に交互に配置され磁極数が8極(極数対が4つ)で構成される。
【0038】
次に、各相のロータユニットRu,Rv,Rwの積層構造について説明する。
図6に示すように、U相ロータユニットRu、V相ロータユニットRv、W相ロータユニットRwが軸方向に順に積層されてロータ12が構成される。
【0039】
ここで、U相及びW相ロータユニットRu,Rwは、第1ロータコア21が上側になるように積層され、V相ロータユニットRvは第2ロータコア22が上側になるように積層されている。つまり、中段のV相ロータユニットRvは、上下段のU相及びW相ロータユニットRu,Rwに対して裏向きで積層されている(
図4及び
図5参照)。これにより、U−V相間では第2ロータコアベース26同士が軸方向に隣接し、V−W相間では第1ロータコアベース24同士が軸方向に隣接している。
【0040】
そして、U相及びW相の界磁磁石23の磁化方向は、同方向(
図6において上向き)とされ、V相の界磁磁石23の磁化方向は、U相及びW相の界磁磁石23の磁化方向に対して反対向きとされる。より詳しくは、U相及びV相の界磁磁石23のS極同士が、隣接する2枚の第2ロータコアベース26を介して向かい合っている。また、V相及びW相の界磁磁石23のN極同士が、隣接する2枚の第1ロータコアベース24を介して向かい合っている。このように、各相の界磁磁石23は、隣り合う相のもの同士で軸方向への磁化方向が反対向きとされている。
【0041】
また、U相及びW相ロータユニットRu,Rwの各第1磁極部25b(第1ロータ側爪状磁極25)の軸方向への突出方向は、互いに同方向(
図6において下向き)である。それに対し、V相の各第1磁極部25bの突出方向は、U相及びW相の第1磁極部25bとは反対向き(
図6において上向き)となっている。
【0042】
同様に、U相及びW相ロータユニットRu,Rwの第2磁極部27b(第2ロータ側爪状磁極27)の軸方向への突出方向は、互いに同方向(
図6において上向き)であり、その方向に対してV相の第2磁極部27bの突出方向は反対向き(
図6において下向き)となっている。
【0043】
そして、各相のロータユニットRu,Rv,Rwは、ずれ角度θrずつ順に位相をずらして積層されている。詳述すると、各相の位相のずれ角度θrは、電気角で60度(機械角で15度)に設定されており、V相ロータユニットRvは、U相ロータユニットRuに対して時計回り方向に電気角で60度(機械角で15度)位相をずらして配置されている。また、W相ロータユニットRwは、V相ロータユニットRvに対して時計回り方向に電気角で60度(機械角で15度)位相をずらして配置されている。
【0044】
また、補助磁石40の極間磁石部43も、U相からW相にかけて時計回り方向に電気角で60度(機械角で15度)ずつずれている。
ここで、
図6に示すように、ロータ12を軸方向のU相側から見たときに、時計回り方向に着磁された極間磁石部(つまり、第1磁極部25bに対して反時計回り方向に隣接する極間磁石部)を第1極間磁石部43aとする。一方、反時計回り方向に着磁された極間磁石部(つまり、第1磁極部25bに対して時計回り方向に隣接する極間磁石部)を第2極間磁石部43bとする。
【0045】
U相の各第1極間磁石部43aは、V相の各第1極間磁石部43a及びV相の各第2磁極部27bと軸方向に隣り合っており、V相の各第2極間磁石部43bとは軸方向に隣り合わないように構成されている。
【0046】
また、V相の各第1極間磁石部43aは、U相の各第1極間磁石部43a及びU相の各第1磁極部25bと軸方向一方側で隣り合うとともに、W相の各第1極間磁石部43a及びW相の各第2磁極部27bと軸方向他方側で隣り合うように構成されている。つまり、V相の各第1極間磁石部43aは、U相及びW相の各第2極間磁石部43bとは軸方向に隣り合わないように構成されている。
【0047】
また、W相の各第1極間磁石部43aは、V相の各第1極間磁石部43a及びV相の各第1磁極部25bと軸方向に隣り合っており、V相の各第2極間磁石部43bとは軸方向に隣り合わないように構成されている。
【0048】
このように、各ロータユニットRu,Rv,Rwの第1極間磁石部43aは、軸方向に隣り合うロータユニットRu,Rv,Rwの第2極間磁石部43bと軸方向に隣り合わないように構成されている。
【0049】
[ステータの構成]
図8に示すように、ロータ12の径方向外側に配置されるステータ13は、各ロータユニットRu,Rv,Rwに対応して軸方向に積層された3相(U相、V相及びW相)のステータユニットSu,Sv,Swから構成されている。各ステータユニットSu,Sv,Swは互いに略同様の構成を有し、第1及び第2ステータコア31,32と、それら第1及び第2ステータコア31,32との軸方向間に配置された巻線33とから構成されている。
【0050】
図8及び
図9に示すように、第1ステータコア31は、円環状の第1ステータコアベース34を有している。第1ステータコアベース34は、板面が軸方向に対して垂直をなす板状に形成されている。また、第1ステータコアベース34は、その外周縁から軸方向に延びる円筒状の円筒壁34aを有している。そして、第1ステータコアベース34の内周縁には、4個の第1ステータ側爪状磁極35が互いに等間隔(90度間隔)に延出形成されている。
【0051】
第1ステータ側爪状磁極35は、第1ステータコアベース34の内周縁から径方向内側に延びる径方向延出部35aと、その径方向延出部35aの先端部(径方向内側端部)から軸方向一方に突出する第1磁極部35bとからなる。なお、第1ステータ側爪状磁極35は、径方向延出部35aに対して第1磁極部35bを直角に屈曲することで成形してもよく、また、鋳造によって径方向延出部35aと第1磁極部35bとを一体に成形してもよい。
【0052】
径方向延出部35aは、軸方向から見て、径方向内側に向かうほど幅狭になる台形状に形成されている。また、第1磁極部35bは、径方向から見て長方形状に形成されている。つまり、第1磁極部35bの径方向内側面(ロータ12との対向面)の周方向両端は、軸方向に沿った直線状をなしている。なお、第1ステータ側爪状磁極35は、その周方向中心に対して線対称をなしている。
【0053】
図9に示すように、第2ステータコア32は、第1ステータコア31と同一形状をなし、第2ステータコアベース36と第2ステータ側爪状磁極37とを有している。第2ステータコアベース36(円筒壁36a)及び第2ステータ側爪状磁極37(径方向延出部37a及び第2磁極部37b)は、前記第1ステータコア31の第1ステータコアベース34(円筒壁34a)及び第1ステータ側爪状磁極35(径方向延出部35a及び第1磁極部35b)とそれぞれ同一形状をなしている。
【0054】
図8に示すように、第1ステータコア31と第2ステータコア32とは、それらの磁極部35b,37bの先端が互いに反対方向を向くように組み付けられ、各第1磁極部35bの周方向間に各第2磁極部37bが配置される。第1磁極部35bと第2磁極部37bとは、組み付け状態において周方向に交互に並ぶとともに、周方向において等間隔に位置するように構成されている。
【0055】
組み付け状態において、第1及び第2ステータコアベース34,36は、互いに平行をなしている。また、第1及び第2ステータコアベース34,36の各円筒壁34a,36aは、軸方向に互いに当接されて各ステータユニットSu,Sv,Swの外周壁を構成している。そして、各円筒壁34a,36aの内周側であって第1及び第2ステータコアベース34,36の軸方向間のスペースには、周方向に円環状をなす巻線33が配置されている。
【0056】
上記のように構成されたステータユニットSu,Sv,Swは、巻線33にて第1及び第2ステータ側爪状磁極35,37をその時々で互いに異なる磁極に励磁する8極の所謂ランデル型(クローポール型)構造とされている。
【0057】
次に、各相のステータユニットSu,Sv,Swの積層構造について説明する。
図10に示すように、U相ステータユニットSu、V相ステータユニットSv及びW相ステータユニットSwが軸方向に順に積層されてステータ13が構成される。また、ステータユニットSu,Sv,Swは、第1ステータコアベース34と第2ステータコアベース36とが軸方向に交互に配置されるように積層されている。
【0058】
また、各相のステータユニットSu,Sv,Swは、ずれ角度θsずつ順に位相をずらして積層されている。詳述すると、各相の位相のずれ角度θsは、電気角で60度(機械角で15度)に設定されており、V相ステータユニットSvは、U相ステータユニットSuに対して反時計回り方向に電気角で60度(機械角で15度)位相をずらして配置されている。また、W相ステータユニットSwは、V相ステータユニットSvに対して反時計回り方向に電気角で60度(機械角で15度)位相をずらして配置されている。
【0059】
これにより、U相ステータユニットSuからW相ステータユニットSwにかけてのずれ方向(反時計回り方向)が、U相ロータユニットRuからW相ロータユニットRwにかけてのずれ方向(時計回り方向)に対して反対となる。言い換えると、ロータ12とステータ13とは、各相のユニット単位で位相のずれ方向が逆向きとなっている。
【0060】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ステータ13に3相交流電源電圧を印加すると、U相ステータユニットSuの巻線33にはU相電源電圧が、V相ステータユニットSvの巻線33にはV相電源電圧が、W相ステータユニットSwの巻線33にはW相電源電圧がそれぞれ印加される。これによって、ステータ13に回転磁界が発生し、ロータ12が回転駆動される。
【0061】
ここで、上記のように、各ロータユニットRu,Rv,Rwの補助磁石40は、第1及び第2磁極部25b,27bの背面側(径方向内側)にそれぞれ配置される第1及び第2背面磁石部41,42と、周方向に隣り合う第1及び第2ロータ側爪状磁極25,27の間に配置される極間磁石部43とを備える。そして、補助磁石40は、第1及び第2背面磁石部41,42及び極間磁石部43のそれぞれで界磁磁石23の漏れ磁束(短絡磁束)を抑えるように磁化されている(
図4及び
図7参照)。
【0062】
これにより、各背面磁石部41,42によって各磁極部25b,27bの背面側での漏れ磁束の発生が抑えられるとともに、極間磁石部43によって周方向に隣り合う第1及び第2ロータ側爪状磁極25,27の間における漏れ磁束の発生が抑えられ、モータ11の高出力化に寄与できるようになっている。さらに、各背面磁石部41,42と各極間磁石部43とが一体形成されているため、各背面磁石部41,42及び各極間磁石部43を有する補助磁石40を1つの部品として取り扱い可能となり、部品点数を抑えることができるようになっている。
【0063】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)ロータ12は、第1及び第2ロータ側爪状磁極25,27の各磁極部25b,27bの背面(径方向内側)に配置され径方向に磁化された背面磁石部41,42と、第1磁極部25bと第2磁極部27bとの周方向間に配置され周方向に磁化された極間磁石部43とが一体形成されて構成された補助磁石40を備えている。このため、第1ロータコア21と第2ロータコア22との間の隙間から磁束を漏れ難くする構造を、部品点数を抑えて実現することが可能となる。
【0064】
(2)背面磁石部41,42は、各磁極部25b,27bの背面に配置され、極間磁石部43は、第1磁極部25bと第2磁極部27bとの周方向の各間に配置され、各背面磁石部41,42と各極間磁石部43とが一体形成されて補助磁石40が環状をなす。このため、補助磁石40を1つの部品として取り扱い可能となり、部品点数をより抑えることができる。
【0065】
(3)ロータ12は、第1及び第2ロータコア21,22、界磁磁石23及び補助磁石40からそれぞれ構成された3相のロータユニットRu,Rv,Rwが軸方向に順に並設される。軸方向に隣り合うロータユニットRu,Rv,Rwの界磁磁石23の磁化方向は互いに反対であり、各ロータユニットRu,Rv,Rwが軸方向一端側(U相側)から軸方向他端側(W相側)にかけて周方向一方(時計回り方向)に順にずらして構成される。また、ステータ13は、第1及び第2ステータコア31,32及び巻線33からそれぞれ構成された3相のステータユニットSu,Sv,Swが軸方向に順に並設される。そして、各ステータユニットSu,Sv,Swは軸方向一端側(U相側)から軸方向他端側(W相側)にかけて各ロータユニットRu,Rv,Rwのずらし方向とは反対方向に順にずらして構成される。この構成によれば、ロータユニットRu,Rv,Rwが軸方向に並設されたランデル型のロータ12と、ステータユニットSu,Sv,Swが軸方向に並設されたランデル型のステータ13とから複数段構成のマルチランデル型モータが構成される。そして、部品点数が多くなりがちな複数段構成のマルチランデル型モータにおいて、各ロータユニットRu,Rv,Rwの補助磁石40の背面磁石部41,42と極間磁石部43とを一体化する構成を適用することは、部品点数の増加を抑える点でより効果的である。
【0066】
(4)各ロータユニットRu,Rv,Rwにおいて、極間磁石部43は、周方向の一方に磁化された第1極間磁石部43aと、周方向の他方に磁化された第2極間磁石部43bとからなる。そして、各ロータユニットRu,Rv,Rwの第1極間磁石部43aは、軸方向に隣り合うロータユニットRu,Rv,Rwの第2極間磁石部43bと軸方向に隣り合わないように構成される。各ロータユニットRu,Rv,Rw間において、磁化方向が互いに反対である第1極間磁石部43aと第2極間磁石部43bとが軸方向に隣り合ってしまうと、互いの磁気が影響し合って第1及び第2極間磁石部43a,43bによる漏れ磁束抑制効果が弱くなることが懸念されるが、本構成によればそれを抑制することができる。
【0067】
(5)界磁磁石23と補助磁石40とが異なる材料で構成されることで、各磁石23,40の磁束の調整が容易となって出力調整が可能となる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0068】
・
図11に示すように、軸方向に隣り合うロータユニットRu,Rv,Rwの補助磁石40同士を一体形成してもよい。なお、同図に示す例では、各ロータユニットRu,Rv,Rw間で軸方向に部分的に隣接する第1極間磁石部43a同士、及び第2極間磁石部43b同士が一体に繋がっている。このように、軸方向に隣り合うロータユニットRu,Rv,Rwの補助磁石40同士が一体化されることで、部品点数の増加をより抑えることができる。
【0069】
・
図12に示すように、補助磁石40の着磁態様を極異方配向としてもよい。同図の例では、S極の第2背面磁石部42の外側面から隣接の極間磁石部43を経由してN極の第1背面磁石部41の外側面に向けて磁束が径方向内側に凸状に湾曲して流れる、いわゆる極異方配向の着磁がなされている。これにより、第1及び第2背面磁石部41,42は径方向成分の磁束を有し、極間磁石部43は周方向成分の磁束を有することとなり、上記実施形態の補助磁石40と同様に機能する。そして、補助磁石40の配向方向を極異方配向とすることで、第1及び第2背面磁石部41,42と極間磁石部43のそれぞれにおいて最適な方向の成分を有するように磁化することが可能となる。
【0070】
・上記実施形態では、界磁磁石23をフェライト磁石としたが、これ以外に例えば、サマリウムコバルト(SmCo)磁石やネオジム磁石等としてもよい。また、上記実施形態では、補助磁石40をネオジム磁石よりなるボンド磁石としたが、これ以外に例えば、サマリウムコバルト(SmCo)系磁石、サマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁石、又はフェライト磁石等としてもよい。
【0071】
・上記実施形態では、界磁磁石23と補助磁石40とを接着にて固定したが、これ以外に例えば、界磁磁石23を第1及び第2ロータコア21,22で挟んだ状態で、ボンド磁石よりなる補助磁石40をインサート成形してもよい。
【0072】
・上記実施形態では、界磁磁石23と補助磁石40とを互いに異なる材料で構成したが、同一材料で構成してもよい。
・上記実施形態では、界磁磁石23と補助磁石40とを別体で構成したが、それらを一体形成してもよい。なお、界磁磁石23と補助磁石40とを互いに異なる材料で構成する場合には、界磁磁石23(焼結磁石)をインサート品として補助磁石40(ボンド磁石)をインサート成形することで、界磁磁石23と補助磁石40とを一体形成してもよい。このように、界磁磁石23と補助磁石40とを一体化することで、部品点数の増加をより抑えることができる。
【0073】
・各爪状磁極25,27,35,37の個数(磁極数)は、上記実施形態に限定されるものではなく、構成に応じて適宜変更してもよい。
・ロータ12を構成するロータユニットRu,Rv,Rwの数と、ステータ13を構成するステータユニットSu,Sv,Swの数は、上記実施形態に限定されるものではなく、構成に応じて適宜変更してもよい。
【0074】
・上記実施形態では、ステータ13の内側にロータ12が配置されたインナーロータ型のモータに適用したが、アウターロータ型のモータに適用してもよい。