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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-221407(P2015-221407A)
(43)【公開日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】集塵装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 47/06 20060101AFI20151113BHJP
   B01D 50/00 20060101ALI20151113BHJP
   B01D 36/00 20060101ALI20151113BHJP
   B01D 37/04 20060101ALI20151113BHJP
【FI】
   B01D47/06 A
   B01D50/00 501A
   B01D50/00 501L
   B01D36/00
   B01D37/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-106662(P2014-106662)
(22)【出願日】2014年5月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】野口 悟
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修
(72)【発明者】
【氏名】倉地 達也
【テーマコード(参考)】
4D032
4D066
【Fターム(参考)】
4D032AC07
4D032BA03
4D032BA06
4D032BB09
4D032CA01
4D032DA04
4D066AA01
4D066EA01
4D066EA06
(57)【要約】
【課題】集塵装置を停止させることなく安定的な連続運転を行い、火災や爆発の発生を確実に防止する。
【解決手段】本発明は、液体噴霧手段31が設けられる第1気体濾過手段26を有する湿式集塵手段13と、湿式集塵手段13の気流方向下流側において第2気体濾過手段61を有する乾式集塵手段14と、湿式集塵手段13と乾式集塵手段14が載置されるタンク12と、タンク12内と液体噴霧手段31とを接続する循環流路41と循環流路41から分岐する分岐流路42とタンク12内の液体を液体噴霧手段31に圧送する循環ポンプ43とを有する循環設備40と、を備え、循環流路41及び分岐流路42にはそれぞれ第1液体濾過手段46及び第2液体濾過手段47が設けられ、分岐流路42の分岐箇所には循環流路41と分岐流路42のいずれかの流路に切り換える上流側切換手段44が設けられていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含塵空気の気流を発生させて含塵空気中の塵埃を分離除去するための集塵装置であって、
含塵空気に液体を噴霧する液体噴霧手段が設けられて含塵空気中の塵埃を捕集する第1気体濾過手段を有する湿式集塵手段と、
該湿式集塵手段に対して含塵空気の気流方向下流側に設けられ、前記第1気体集塵手段で捕集できなかった含塵空気中の塵埃を捕集する第2気体濾過手段を有する乾式集塵手段と、
前記湿式集塵手段と前記乾式集塵手段が載置され、前記湿式集塵手段において含塵空気中から分離除去された塵埃及び前記液体噴霧手段により噴霧された液体を収容するタンクと、
該タンク内と前記湿式集塵手段の液体噴霧手段とを接続する循環流路と、該循環流路から分岐した後に該循環流路に再度合流して該循環流路に対して並列に形成される分岐流路と、前記タンク内の液体を汲み上げて前記湿式集塵手段の液体噴霧手段に圧送する循環ポンプと、を有する循環設備と、
を備え、
前記循環流路には該流路内を流通する液体中の汚れを捕集する第1液体濾過手段が設けられ、前記分岐流路には該流路内を流通する液体中の汚れを捕集する第2液体濾過手段が設けられ、前記循環流路に対する前記分岐流路の分岐箇所には、該循環流路と該分岐流路のいずれかの流路に切り換える上流側切換手段が設けられていることを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
前記循環ポンプは、前記分岐流路の分岐箇所より液体の流通方向上流側の前記循環流路に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の集塵装置。
【請求項3】
前記分岐流路の分岐箇所と前記循環ポンプとの間の第1の計測点における液圧と、前記分岐流路の合流箇所より液体の流通方向下流側の第2の計測点における液圧と、の差分を計測する差圧計を備えていることを特徴とする請求項2に記載の集塵装置。
【請求項4】
前記第1液体濾過手段と前記第2液体濾過手段とは同一の濾過性能を有し、前記差圧計の計測値が所定値に達した場合、或いは前記第1液体濾過手段又は前記第2液体濾過手段の濾過時間が所定時間を経過した場合に、前記上流側切換手段を制御して前記流路を切り換える制御手段を備えていることを特徴とする請求項3に記載の集塵装置。
【請求項5】
前記分岐流路の合流箇所には前記循環流路と前記分岐流路のいずれかの流路に切り換える下流側切換手段がさらに設けられ、該下流側切換手段は前記制御手段の指令に基づき前記上流側切換手段と同時に同一流路側に切り換えられることを特徴とする請求項4に記載の集塵装置。
【請求項6】
前記第1液体濾過手段と前記第2液体濾過手段とは異なる濾過性能を有し、含塵空気の発生源である加工機からの信号に基づき前記上流側切換手段を制御し、前記循環流路と前記分岐流路のいずれかの流路に切り換えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の集塵装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記差圧計の計測値が所定値まで上昇する際の上昇時間が所定の設定時間より短い場合に、警報を出力することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1の請求項に記載の集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場内の加工機等から発生する含塵空気中の塵埃を分離除去するための集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加工機等から発生する塵埃を吸引して工場内の空気を浄化するために産業用の集塵装置が利用されており、特に、含塵空気がレーザ加工機等から発生する爆発性や発火性を有する塵埃を含む場合には、集塵装置内に吸引した含塵空気を集塵装置内に貯溜した洗浄液に接触させることによって塵埃を分離除去する所謂湿式の集塵装置を使用することが多い。
【0003】
例えば、特許文献1には、本体の下部にシャワー液を貯留する液槽を設け、ポンプによって連結パイプを経てシャワー液を充填物上に噴霧することにより、金属の研削加工における火花を伴う粉塵及びアーク溶接作業におけるヒュームと火玉を処理するように構成した集塵装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、エッチング液を循環させる循環路の中間部を複数に分岐し、各分岐路にフィルターを挿入することで、一方のフィルターが目詰まりとなり交換が必要となったとしても、流路を切換えることでエッチング作業を中断することなく、フィルターの再生や交換を可能にしたエッチング装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−1433号公報
【特許文献2】特開平6−275597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の集塵装置では、連結パイプの流路中に液槽内のシャワー液を濾過するための濾過手段が設けられていないため、シャワーノズルの目詰まりが発生する恐れがある。これにより、最悪の場合には、シャワー流量の低下に起因して消火冷却機能が低下し、火災発生の危険性が高まるといった問題がある。
【0007】
また、上記した特許文献2に記載の循環路と同様の構成を本発明の集塵装置に設けた場合には、汚水がフィルターで濾過された後、ポンプを経由してスプレーノズルからスプレー水が散水されることとなる。しかしながら、特許文献2の構成ではフィルターを通過した後に、ポンプが配置されているので、ポンプ内部に付着堆積している異物などにより、スプレーノズルの目詰まりが発生する恐れがあり、上記した特許文献1と同様の問題点が生じる。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、集塵装置を停止させることなく安定的な連続運転を行い、火災や爆発の発生を確実に防止することのできる集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明の第1の集塵装置は、含塵空気の気流を発生させて含塵空気中の塵埃を分離除去するための集塵装置であって、含塵空気に液体を噴霧する液体噴霧手段が設けられて含塵空気中の塵埃を捕集する第1気体濾過手段を有する湿式集塵手段と、該湿式集塵手段に対して含塵空気の気流方向下流側に設けられ、前記第1気体集塵手段で捕集できなかった含塵空気中の塵埃を捕集する第2気体濾過手段を有する乾式集塵手段と、前記湿式集塵手段と前記乾式集塵手段が載置され、前記湿式集塵手段において含塵空気中から分離除去された塵埃及び前記液体噴霧手段により噴霧された液体を収容するタンクと、該タンク内と前記湿式集塵手段の液体噴霧手段とを接続する循環流路と、該循環流路から分岐した後に該循環流路に再度合流して該循環流路に対して並列に形成される分岐流路と、前記タンク内の液体を汲み上げて前記湿式集塵手段の液体噴霧手段に圧送する循環ポンプと、を有する循環設備と、を備え、前記循環流路には該流路内を流通する液体中の汚れを捕集する第1液体濾過手段が設けられ、前記分岐流路には該流路内を流通する液体中の汚れを捕集する第2液体濾過手段が設けられ、前記循環流路に対する前記分岐流路の分岐箇所には、該循環流路と該分岐流路のいずれかの流路に切り換える上流側切換手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第1の集塵装置によれば、循環流路と分岐流路を切り換え可能にし、各流路にそれぞれ液体濾過手段を設けているため、異物が濾過されたきれいな液体を液体噴霧手段に供給することができる。したがって、液体噴霧手段における目詰まりを防止することができ、流量低下に起因する消火冷却機能の低下を抑止することができるため、火災や爆発の発生防止、火種の通過抑制、及び湿度管理による静電気着火の抑制を図ることができる。また、含塵空気の発生源や集塵装置が稼動している状態でも、それらを停止させることなく液体濾過手段の交換を行うことができるため、含塵空気の発生源や集塵装置の連続運転が可能となり、稼働率及び運転効率の向上を図ることができる。さらに、液体濾過手段を切り換えることにより、タンク内の液中の粉塵濃度が高い場合(含塵空気中の粉塵量が多い場合)にも対応可能である。さらにまた、タンク内の液体を循環して液体噴霧設備に利用することにより、節水を図ることができる。
【0011】
本発明の第2の集塵装置では、前記循環ポンプが、前記分岐流路の分岐箇所より液体の流通方向上流側の前記循環流路に設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の集塵装置によれば、循環ポンプ内に異物や堆積物があったとしても、第1液体濾過手段又は第2液体濾過手段によってそれらを除去することができるので、液体噴霧手段を詰まらせる虞がなく、液体噴霧設備において安定して液体を噴霧することができる。
【0013】
本発明の第3の集塵装置は、前記分岐流路の分岐箇所と前記循環ポンプとの間の第1の計測点における液圧と、前記分岐流路の合流箇所より液体の流通方向下流側の第2の計測点における液圧と、の差分を計測する差圧計を備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の集塵装置によれば、差圧計により第1液体濾過手段又は第2液体濾過手段の目詰まり具合を把握することができ、集塵装置の運転状態を適性に監視することができる。
【0015】
本発明の第4の集塵装置では、前記第1液体濾過手段と前記第2液体濾過手段とが同一の濾過性能を有し、前記差圧計の計測値が所定値に達した場合、或いは前記第1液体濾過手段又は前記第2液体濾過手段の濾過時間が所定時間を経過した場合に、前記上流側切換手段を制御して前記流路を切り換える制御手段を備えていることを特徴とする。
【0016】
本発明の第4の集塵装置によれば、第1液体濾過手段又は第2液体濾過手段を適正なタイミングで切り換えて交換することができるため、常にきれいな液体を液体噴霧手段に安定的に供給することができる。
【0017】
本発明の第5の集塵装置では、前記分岐流路の合流箇所に前記循環流路と前記分岐流路のいずれかの流路に切り換える下流側切換手段がさらに設けられ、該下流側切換手段は前記制御手段の指令に基づき前記上流側切換手段と同時に同一流路側に切り換えられることを特徴とする。
【0018】
本発明の第5の集塵装置によれば、上流側切換手段と下流側切換手段を同時に切り換えることができるため、流路内を流れる液体が途切れることがなく、循環ポンプの故障を防止することができる。また、循環ポンプが締め切り運転となることがなく、循環ポンプのメカニカルシールが破損することもないため、循環ポンプの耐用年数を延ばすことができる。
【0019】
本発明の第6の集塵装置では、前記第1液体濾過手段と前記第2液体濾過手段とが異なる濾過性能を有し、含塵空気の発生源である加工機からの信号に基づき前記上流側切換手段を制御し、前記循環流路と前記分岐流路のいずれかの流路に切り換えることを特徴とする。
【0020】
本発明の第6の集塵装置によれば、加工機からの信号に基づき、加工機の加工条件(加工機から発生する粉塵の性状)に合った適正な濾過性能の液体濾過手段を選択することができるため、液体濾過手段の性能を最大限に発揮することができ、液体濾過手段の寿命の延長化を図ると共に、液体噴霧手段の目詰まりを防止し、安定した噴霧を行うことができる。
【0021】
本発明の第7の集塵装置では、前記制御手段が、前記差圧計の計測値が所定値まで上昇する際の上昇時間が所定の設定時間より短い場合に、警報を出力することを特徴とする。
【0022】
本発明の第7の集塵装置によれば、タンク内の液体の交換時期を把握し、適正に管理することができると共に、必要以上に液体濾過手段に負荷を掛けるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、集塵装置を停止させることなく安定的な連続運転を行い、火災や爆発の発生を確実に防止することができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る集塵装置を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る集塵装置において含塵空気と液体の流れを示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る集塵装置の変形例において含塵空気と液体の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る集塵装置について説明する。ここで、図1は本発明の実施形態に係る集塵装置を示す正面図、図2は本発明の実施形態に係る集塵装置において含塵空気と液体の流れを示す模式図である。
【0026】
本実施形態に係る集塵装置10は、下部に設けられる基台11と、基台11の内部に設けられるタンク12と、基台11上に並設される湿式集塵部13及び乾式集塵部14と、を備えて構成されている。基台11の下部には、基台11を支持する脚部15が四隅にそれぞれ設けられている。
【0027】
タンク12は、内部の上限水位を検知する上限水位計16と、内部の下限水位を検知する下限水位計17と、内部へ水を補給するための給水設備18と、内部の水を外部に排出するための排水設備19と、を備えている。
【0028】
給水設備18は、水道水供給源20からタンク12の上限水位より上方位置に接続される給水配管21と、給水配管21に取り付けられる二方電磁弁22と、を備えている。また、排水設備19は、タンク12の底部に接続される排水配管23と、排水配管23に取り付けられる排水弁24と、を備えている。
【0029】
湿式集塵部13は、基部11に載置される金属製で矩形筒形状の胴部25を備えており、胴部25はその底部が開口されてタンク12と連通している。胴部25の内部には第1気体集塵手段として第1濾過部26が設けられている。第1濾過部26は、充填部27と、充填部27の上方(含塵空気の気流方向下流側)に設けられるデミスター28と、充填部27とデミスター28との間に第1スプレーノズル29を有すると共にデミスター28の上方(含塵空気の気流方向下流側)に第2スプレーノズル30を有する液体噴霧設備31と、を備えて構成されている。
【0030】
充填部27は、例えばステンレス製の矩形状のボックスに石ころを敷き詰めて構成されている。充填部27の側方には、充填部27の下方(含塵空気の気流方向上流側)と上方(含塵空気の気流方向下流側)の間の圧力差を計測するため、第1気体差圧計32が設けられている。
【0031】
デミスター28は、例えば金属線を幾層にも積層してマット状にしたものであり、上下2段に配設されている。デミスター28の側方には、デミスター28の下方(含塵空気の気流方向上流側)と上方(含塵空気の気流方向下流側)の間の圧力差を計測するため、第2気体差圧計33が設けられている。
【0032】
第1スプレーノズル29は、平面視で充填部27の中心1箇所に配置され、充填部27に向かって下方約90度の噴霧角度で角錐状に液体を噴霧可能となっている。また、第2スプレーノズル30は、平面視でデミスター28の中心線に沿って2箇所に均等配置され、デミスター28に向かって下方約90度の噴霧角度で角錐状に液体を噴霧可能となっている。
【0033】
液体噴霧設備31は、第1スプレーノズル29及び第2スプレーノズル30の他に、第1スプレーノズル29に接続される第1スプレーノズル用配管34と、第2スプレーノズル30に接続される第2スプレーノズル用配管35と、第1スプレーノズル用配管34と第2スプレーノズル用配管35の分岐箇所に設けられる三方電磁弁36と、を備えて構成されている。また、第1スプレーノズル用配管34には、レギュレータ37及び流量計38が接続されている。
【0034】
液体噴霧設備31とタンク12との間には循環設備40が設けられている。循環設備40は、タンク12内と液体噴霧設備31の三方電磁弁36とを接続する循環流路41と、循環流路41の途中から分岐した後に循環流路41に再度合流して該循環流路41に対して並列に形成される分岐流路42と、タンク12内の水を汲み上げて液体噴霧設備31に圧送する循環ポンプ43と、を備えて構成されている。
【0035】
循環流路41に対する分岐流路42の分岐箇所には上流側切換手段として分岐用三方電磁弁44が設けられ、分岐流路42の循環流路41への合流箇所には下流側切換手段として合流用三方電磁弁45が設けられている。循環流路41の分岐用三方電磁弁44と合流用三方電磁弁45の間には第1液体濾過手段として第1フィルター46が取り付けられ、分岐流路42には第2液体濾過手段として第2フィルター47が取り付けられている。第1フィルター46と第2フィルター47は同一の濾過性能を有しており、それぞれ、フィルターケース(例えば、SMC株式会社の型式:FGDFA−04−BX77)と、該フィルターケース内に着脱可能なフィルターエレメント(例えば、日本フィルター株式会社の型式:CW−200−IL)と、を備えている。
【0036】
循環ポンプ43は、浸漬式クーラントポンプ(例えば、テラル株式会社の型式VKA395AH)を使用することができる。循環ポンプ43は、分岐用三方電磁弁44より液体の流通方向上流側の循環流路41の末端に接続されており、その吸込部分がタンク12内に配置されると共に吐出部分が基部11上に配置されるように取り付けられている。
【0037】
循環ポンプ43と分岐用三方電磁弁44との間には該分岐用三方電磁弁44に近接して第1の計測点P1が設けられ、合流用三方電磁弁45より液体の流通方向下流側には該合流用三方電磁弁45に近接して第2の計測点P2が設けられている。そして、この第1の計測点P1における水圧と第2の計測点P2における水圧との差分を計測するように、循環流路41には液体差圧計48が設けられている。
【0038】
胴部25の内部には、第1濾過部26の充填部27及び第1スプレーノズル29の側方に仕切壁49が取り付けられている。この仕切壁49と胴部25の周壁との間には縦長の空間50が形成されており、この空間50は、下端に形成された開口を介して第1濾過部26と連通している。
【0039】
胴部25の周壁には、空間50に連通するように吸込みダクト51が水平に接続されている。吸込みダクト51は、胴部25の周壁に接続される水平部52と、水平部52から上方に直角に屈曲する鉛直部53と、を備えている。水平部52には、逆止ダンパー54が取り付けられている。鉛直部53の上端は開口されて吸込口55が形成され、吸込口55の下方に防火ダンパー56が取り付けられている。防火ダンパー56は、常時は鉛直部53内の流路を開放させる姿勢を保持しているが、塵埃の爆発や火災等によって内部の温度が上昇すると、その温度をセンサが検知して該流路を閉鎖させるように動作する。
【0040】
湿式集塵部13の胴部25の上面には第1放散蓋57が開閉可能に設けられている。第1放散蓋57の下面側外周部には、パッキン(図示省略)が貼付され、第1放散蓋57の一辺側(図1では右辺側、図2では左辺側)両端部には、ヒンジ58がそれぞれ取り付けられている。これにより、第1放散蓋57は、集塵装置10の運転中、湿式集塵部13内が負圧になることで下方に吸引され、前記パッキンを介して胴部25の上面開口を閉鎖する。また、湿式集塵部13の内部で爆発が発生した場合には、その時の爆発圧力によってヒンジ58を支点として外側に回動して胴部25の上面開口を開放するように構成されている。また、特に図示しないが、第1放散蓋57と胴部25との間はワイヤーロープにより接続されており、粉塵爆発時に第1放散蓋57が上方に吹き飛ばされないようになっている。
【0041】
胴部25の周壁には、特に図示しないが、電装箱(制御盤)が取り付けられている。該電装箱は防塵構造を有し、爆発性粉塵の進入を防止している。該電装箱の表面には、運転・停止スイッチ、緊急停止スイッチ等の各種スイッチや、温度表示器、湿度表示器等の各種表示器が設けられている。
【0042】
また、前記電装箱の内部には、制御部59が設けられている。この制御部59には、上述した、二方電磁弁22、第1差圧計32、第2差圧計33、三方電磁弁36、レギュレータ37、流量計38、分岐用三方電磁弁44、合流用三方電磁弁45、循環ポンプ43、及び液体差圧計46等が接続されていると共に、含塵空気の発生源である加工機(図示せず)の制御部80が接続されている。また、前記電装箱の内部には、アース端子(図示省略)が設けられており、該アース端子には、各機器に電力を供給する電源線のアース線(図示省略)や各機器のアース線が接続されている。
【0043】
乾式集塵部14は、基部11に載置される金属製で円筒形状の胴部60を備えており、胴部60の底部が開口されてタンク12と連通している。胴部60の内部には、第2気体集塵手段として第2濾過部61が設けられている。第2濾過部61は、帯電防止処理を施した乾式のフィルター(濾過材)62を備えて構成されている。フィルター62としては、例えば濾布をヒダ折りして円筒状に形成したプリーツフィルターユニットをカートリッジ状にしたものが使用される。
【0044】
湿式集塵部13の胴部25と乾式集塵部14の胴部60とは旋回気流用ダクト63により接続されている。旋回気流用ダクト63は、円筒形状のダクトを複数箇所で屈曲させることにより形成され、湿式集塵部13の胴部25の周壁面上部に水平に接続される上流側端部64と、上流側端部64から下方に屈曲して形成される中間部65と、中間部65の下端から水平に屈曲して乾式集塵部14の胴部60の周壁面上部に偏心した状態で接続される下流側端部66と、を備えている。
【0045】
胴部25の上面には吸引部67が取り付けられている。吸引部67は、胴部25上に取付けられるファンのモータ68と、該ファンの吸込み側と乾式集塵部14とを接続する上流側ダクト部69と、該ファンの吐出側に接続される下流側ダクト部70と、を備えて構成されている。
【0046】
下流側ダクト部70は、円筒形状のダクトにより形成され、上方に延出している。下流側ダクト部70の上端は開口されて排出口71が形成され、排出口71の下方に防火ダンパー72が取り付けられている。防火ダンパー72は、常時は下流側ダクト部70内の流路を開放させる姿勢を保持しているが、塵埃の爆発や火災等によって内部の温度が上昇すると、その温度をセンサが検知して該流路を閉鎖させるように動作する。
【0047】
乾式集塵部14の胴部60の周壁には、平面視でタンク12の外側に張り出すように第2放散部73が設けられている。第2放散部73は、金属製で、胴部60の側部から上方に延出する矩形筒形状の放散ダクト74と、放散ダクト74の上端開口を開閉可能な第2放散蓋75と、を備えて構成されている。なお、第2放散蓋75は、上記した第1放散蓋57と同様の構成を有しているため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0048】
次に、上記した構成を備えた本発明の実施形態に係る集塵装置10の作用について説明する。
【0049】
工場内の例えばレーザ溶接機等の加工機(図示省略)から集塵装置10の吸込口55を介して吸引された爆発性粉体や可燃性粉体(未酸化ヒューム)等の塵埃を含む含塵空気は、吸込みダクト51を通って湿式集塵部13の胴部25内に吸引され、仕切壁49により形成される空間50を介して下方のタンク12内に貯留された液体に接触した後、上方の充填部27に導かれる。
【0050】
一方、前記加工機の制御装置80から受信した該加工機の起動信号に基づき、制御部59によって循環ポンプ43が駆動される。また、制御部59によって、循環流路41側が開放されると共に分岐流路42側が閉鎖されるように分岐用三方電磁弁44及び合流用三方電磁弁45が制御され、さらに、第1スプレーノズル用配管34が開放されると共に第2スプレーノズル用配管35側が閉鎖されるように三方電磁弁36が制御される。
【0051】
これにより、図2中に実線の矢印で示されているように、循環ポンプ43によってタンク12内から吸い上げられた水は、循環流路41を通り、第1フィルター46によって水中の異物を濾過された後、第1スプレーノズル用配管34を通って、第1スプレーノズル29から水滴となって充填部27上に噴霧される。
【0052】
この間、第1の計測点P1の水圧と第2の計測点P2の水圧との差分は、液体差圧計48によって、常時計測されている。そして、液体差圧計48により計測された差圧が所定値を超えた場合、或いは第1フィルター46(又は第2フィルター47)の濾過時間が所定時間に達した場合には、制御部59によって、循環流路41側が開放されると共に分岐流路42側が閉鎖されるように分岐用三方電磁弁44及び合流用三方電磁弁45が同時に切り換えられ、分岐用三方電磁弁44と合流用三方電磁弁45間の流水経路は分岐流路42に切り換えられる。なお、第1フィルター46(又は第2フィルター47)の濾過時間は、制御部59が、分岐用三方電磁弁44及び合流用三方電磁弁45の切り換え保持時間や循環ポンプ43の運転時間等に基づき計測することができる。
【0053】
このように流水経路が分岐流路42に切り換えられると、循環ポンプ43によってタンク12内から吸い上げられた水は、図2中に破線の矢印で示されているように、分岐流路42を通り、第2フィルター47によって水中の異物を濾過される。さらに、液体差圧計48により計測された差圧が所定値を超えた場合、或いは第1フィルター46(又は第2フィルター47)の濾過時間が所定時間に達した場合には、前記電装箱において警報が出力される。
【0054】
次いで、充填部27では、上記したように噴霧された水滴によって、石ころの表面が濡れ、充填部27内を上昇する含塵空気と該石ころの表面の濡れ水との間で気液接触が行われ、含塵空気中の塵埃に対して冷却作用と消火作用が行われる。この時、第1スプレーノズル29から噴霧される水滴が含塵空気の上昇気流と接触し、水滴表面からの蒸発が連続して行われて水蒸気が発生することにより、湿式集塵部13内の相対湿度は60%以上に保たれ、湿式集塵部13内での静電気の発生が抑制される。
【0055】
充填部27を通過し、第1スプレーノズル29の下流側まで上昇した含塵空気は、その後、上下2段のデミスター28を通過する。この時、含塵空気は第1スプレーノズル29による水滴の噴霧により粒子状の水滴を含んでいるが、この水滴は上下2段のデミスター28を通過する際に除去される。
【0056】
なお、この時にデミスター28に付着した塵埃は、集塵装置10の通常運転が停止されている時に、図2中に破線の矢印で示されているように、制御部59によって第1スプレーノズル用配管34が閉鎖されると共に第2スプレーノズル用配管35側が開放されるように三方電磁弁36が切り換えられることで、第2スプレーノズル30から噴霧される水滴によってデミスター28から分離除去され、胴部25の底部開口を通ってタンク12内に落下する。
【0057】
次に、このように湿式集塵部13において冷却消火されると共に水滴を除去された含塵空気は、湿式集塵部13の上部から旋回気流用ダクト63を介して乾式集塵部14に導かれる。
【0058】
旋回気流用ダクト63の下流側端部66は乾式集塵部14の胴部60の周壁面上部に偏心した状態で接続されているため、旋回気流用ダクト63から乾式集塵部14内に流入した含塵空気は、フィルター62の外側を旋回しながら降下した後、フィルター62の下端からフィルター62の内部を旋回しながら上昇する。含塵空気中の塵埃は、このように含塵空気が旋回しながらフィルター62を通過する間に確実に濾過され、胴部60の底部開口を通ってタンク12内に直接落下するか、或いは、フィルター62に付着する。
【0059】
なお、この時にフィルター62に付着した塵埃は、集塵装置10の通常運転が停止されている時に、タイマー制御や差圧制御等でオン動作された電磁弁(図示せず)を介してフィルター62の上方から圧縮空気が供給されることによってフィルター62から分離除去され、胴部60の底部開口を通ってタンク12内に落下する。
【0060】
このように乾式集塵部14において塵埃を分離除去されて清浄化された清浄空気は、吸引部67の上流側ダクト部69から、前記ファン、下流側ダクト部70を通り、排出口71から集塵装置10の外部に排出される。
【0061】
上記したように本発明の実施形態に係る集塵装置10によれば、適正なタイミングで、循環流路41と分岐流路42を切り換え、それぞれの流路に設置したフィルター46,47で水中の異物を濾過するようにしているため、スプレーノズル29,30に対して常に異物が濾過されたきれいな水を供給することができる。
【0062】
したがって、スプレーノズル29,30における目詰まりを防止することができ、水量低下に起因する消火冷却機能の低下を抑止することができるため、集塵装置10における火災や爆発の発生防止、火種の通過抑制、及び湿度管理による静電気着火の抑制を図ることができる。また、前記加工機及び集塵装置10が稼動している状態でも、それらを停止させることなくフィルター46,47の交換を行うことができるため、該加工機及び集塵装置10の連続運転が可能となり、稼働率及び運転効率の向上を図ることができる。さらに、複数設けたフィルター46,47を切り換え制御することにより、タンク12内の水中の粉塵濃度が高い場合(前記加工機から発生する粉塵量が多い場合)にも適切に対応可能である。さらにまた、タンク12内の水を循環して液体噴霧設備31の水源に利用することにより、節水を図ることができる。
【0063】
また、分岐用三方電磁弁44と合流用三方電磁弁45を制御部59の指令に基づき同時に切り換えることで、流路内を流れる水が途切れることがなく、循環ポンプ43の故障を防止することができる。また、循環ポンプ43が締め切り運転となることがなく、循環ポンプ43のメカニカルシールが破損することもないため、循環ポンプ43の耐用年数を延ばすことができる。
【0064】
さらに、循環ポンプ43の下流側にフィルター46,47を配置することにより、循環ポンプ43内に異物や堆積物があったとしても、フィルター46,47によって除去することができるので、液体噴霧設備31のスプレーノズル29,30を詰まらせる虞がなく、安定して水を噴霧することができる。
【0065】
さらに、液体差圧計48によりフィルター46,47の目詰まり具合を把握することができ、集塵装置10の運転状態を適性に監視することができる。
【0066】
なお、上記した本発明の実施形態では、循環流路41に対する分岐流路42の分岐箇所だけでなく、分岐流路42の循環流路41への合流箇所にも合流用三方電磁弁45が設けられているが、例えば、図3に示すように、合流用三方電磁弁45を設ける代わりに、循環流路41と分岐流路42にそれぞれ逆止弁76,77を設けても良い。これにより、制御の簡素化を図ることができる。
【0067】
また、上記した本発明の実施形態では、第1フィルター46と第2フィルター47の濾過性能を同一としているが、それぞれ濾過性能の異なるものを使用してよい。この場合、例えば、一方を通常の粒子を除去するフィルターAとし、他方を微粒子を除去する高性能のフィルターBとし、加工機が通常の粒子を排出する加工(外形加工等)の場合には、加工機からの信号により制御部59がフィルターAに切換制御し、加工機が微粒子を排出する加工(仕上げ加工や精密加工)の場合には、加工機からの信号により制御部59が高性能フィルターBに切換制御する等、加工機の加工条件(加工機から発生する粉塵の性状)に応じて加工機の制御部80から制御部59に送られる切換信号に基づき、加工機の加工条件(加工機から発生する粉塵の性状)に合った適正なフィルターを選択することができる。これにより、フィルターの性能を最大限に発揮することができ、フィルターの寿命の延長化を図ると共に、スプレーノズル29,30の目詰まりを防止し、安定した噴霧を行うことができる。
【0068】
さらに、上記した本発明の実施形態において、制御部59は、液体差圧計48の計測値が所定値まで上昇する際の上昇時間(又は上昇速度)が所定の設定時間よりも短い(又は所定の設定速度より速い)場合に、警報を出力することもできる。なお、制御部59は、常に運転時間の経過と共に、液体差圧計48の計測値を監視しており、液体差圧計48の計測値の上昇率(所定の運転時間における液体差圧計48の計測値の上昇割合)が、予め設定された上昇率(上昇割合)より大きい(高い)場合に、警報を出力しても良い。このように液体差圧計48の計測値が所定値まで上昇する際の上昇時間(又は上昇速度)が所定の設定時間より短い(又は所定の設定速度よりも速い)ということは、タンク12内の水が過度に汚れていることを示しているので、このように警報を出力することにより、タンク12内の水の交換時期を適正なタイミングで把握し、水を適正に管理することができると共に、必要以上にフィルター46,47に負荷を掛けるのを防止することができる。
【0069】
なお、上記した本発明の実施形態の説明は、本発明に係る集塵装置における好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、上記した本発明の実施の形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施の形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の技術は、工場内の加工機等から発生する塵埃を吸引して工場内の空気を浄化する集塵装置で利用されることが見込まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
10 集塵装置
12 タンク
13 湿式集塵部(湿式集塵手段)
14 乾式集塵部(乾式集塵手段)
26 第1気体濾過部(第1気体濾過手段)
31 液体噴霧設備(液体噴霧手段)
40 循環設備
41 循環流路
42 分岐流路
43 循環ポンプ
44 分岐用三方電磁弁(上流側切換手段)
45 合流用三方電磁弁(下流側切換手段)
46 第1フィルター(第1液体濾過手段)
47 第2フィルター(第2液体濾過手段)
48 液体差圧計
59 制御部(制御手段)
61 第2気体濾過部(第2気体濾過手段)
図1
図2
図3