特開2015-221444(P2015-221444A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-221444(P2015-221444A)
(43)【公開日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】鋳造金型用ガス排出装置
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/00 20060101AFI20151113BHJP
   B22D 18/04 20060101ALI20151113BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20151113BHJP
【FI】
   B22C9/00 F
   B22D18/04 R
   B22D17/22 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-105819(P2014-105819)
(22)【出願日】2014年5月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 洋史
(72)【発明者】
【氏名】前山 健一
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093KB05
4E093NA01
4E093NB07
(57)【要約】
【課題】必要な保持力を維持しつつガスパイプをホルダに抜き差しでき、これによりメンテナンスを迅速かつ容易に行うことができる鋳造金型用ガス排出装置を提供する。
【解決手段】鋳造金型用ガス排出装置10において、ホルダ50は、ガスパイプ40の上端側が挿入する挿入穴部54、およびガスを挿入穴部54内から外へ排出する排気孔56が設けられた本体51と、ガスパイプ40を挿入穴部54の内面に向けて押圧する弾性部材53と、を有しており、弾性部材53は、挿入穴部54へのガスパイプ40の挿入時に該弾性部材53がガスパイプ40に接触して変形することによる弾性力によってガスパイプ40を押圧するように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造時に鋳造金型のキャビティ内に設置された中子から発生するガスを前記鋳造金型外へ排出する鋳造金型用ガス排出装置であって、
前記鋳造金型に組み込まれ、一端を前記キャビティへ臨ませるとともに他端を前記鋳造金型の外側へ臨ませてなる筒状のガイド部材と、
前記ガイド部材の内部にスライド自在に配置され、前記鋳造金型の型締め時に一端が前記中子に当接するガスパイプと、
前記ガイド部材の他端側に配置され、前記ガスパイプの他端側を着脱自在に保持するホルダと、を備え、
前記ホルダは、前記ガスパイプの他端側が挿入する挿入穴部、および前記ガスを前記挿入穴部内から外へ排出する排気孔が設けられた本体と、前記ガスパイプを前記挿入穴部の内面に向けて押圧する弾性部材と、を有し、
前記弾性部材は、前記挿入穴部への前記ガスパイプの挿入時に該弾性部材が前記ガスパイプに接触して変形することによる弾性力によって前記ガスパイプを押圧すること
を特徴とする鋳造金型用ガス排出装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、長尺棒状の鋼材で形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の鋳造金型用ガス排出装置。
【請求項3】
前記弾性部材が前記ガスパイプを押圧する力を調整する調整手段をさらに有すること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋳造金型用ガス排出装置。
【請求項4】
前記弾性部材を前記ホルダの前記本体に固定する固定手段が前記調整手段を兼ねていること
を特徴とする請求項3に記載の鋳造金型用ガス排出装置。
【請求項5】
前記ホルダの前記本体の側部に、前記挿入穴部に連通する複数の貫通孔が形成されていること
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の鋳造金型用ガス排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造時に鋳造金型のキャビティ内に設置された中子から発生するガスを鋳造金型外へ排出する鋳造金型用ガス排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エンジン部品のひとつであるアルミニウム合金製のシリンダヘッド等のように、複雑な内部空間形状を有する部品(鋳造製品)の製造は、従来、鋳造金型(以下、単に「金型」ともいう)内部における鋳造製品を成形する空間(キャビティ)内に崩壊性の中子を配設し、且つ「低圧鋳造法」(LPDC)という鋳造法で行われている。この鋳造法では、鋳造が終わって鋳造製品を金型から取り出した後、中子を崩して複雑な内部空間形状としている。
【0003】
この崩壊性の中子は、周りをレジン(熱可塑性樹脂)でコーティングされた細粒ケイ砂を鋳造製品の複雑な内部空間形状に対応させた形状に造形した後、レジンを硬化させることによって作製される。
【0004】
鋳造の際、鋳造製品を成形するキャビティ内に配設された中子は、充填される合金アルミニウムの溶融金属である高温の溶湯に触れる。そうすると、崩壊性の中子のレジンが溶湯の高熱により熱分解を起こして、有機ガスである「中子ガス」(以下、単に「ガス」ともいう)が生じる。このガスが金型内に充満すると、溶湯がガスを巻き込んでしまい、巣孔や湯回り不良の原因となる。このため、金型には、ガス抜き用の配管であるガスパイプを備えるガスベント装置(鋳造金型用ガス排出装置)が配設されている(特許文献1,2参照)。
【0005】
特許文献1,2に記載の技術では、ガスパイプは、金型に組み込まれた筒状のガイド部材の内部にスライド自在に配置され、下端が金型の型締め時に中子に当接されるようになっており、上端側が、ガスを排出する排気孔が設けられたホルダに挿入されて保持されている。そして、特許文献1に記載の技術では、ガスパイプはホルダに雄ねじによる押圧を利用して保持されており、特許文献2に記載の技術では、ガスパイプはホルダに磁石やプランジャを利用して保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−172954号公報
【特許文献2】特開2010−179357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鋳造金型用ガス排出装置(以下、単に「ガス排出装置」ともいう)は、ガスがいわゆる「ヤニ」となって付着することから、適当な頻度で金型から取り外し、清掃や交換等のメンテナンスを行うことが望ましい。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ガスパイプはホルダに雄ねじで固定されているため、ガスパイプのホルダからの取外しは、ホルダに保持された状態のガスパイプを金型の外方に向けて引き抜いた後に行う必要があった。この場合、ホルダが配置される金型の外側周囲には昇降装置やエジェクトピン等が入り組んでいて作業がしづらく、メンテナンスが容易ではない。
【0009】
一方、特許文献2に記載の技術によれば、金型の型開き時にガスパイプを金型の内方に向けて引き抜くことによって容易にホルダから取り外すことができるとともに、ガスパイプを金型の内方から差し込むことによって容易にホルダに取り付けることができる。
【0010】
ここで、「中子ガス」は、基本的には、ガスパイプの中を通って金型内から外に排出される。しかしながら、金型内からのガスの漏れが不可避的に生じてしまい、このガスが、ガスパイプの外側表面に沿って流れ、ホルダ内において大気等によって冷やされて液化し、ヤニとして滞留してしまうことがあった。このため、特許文献2に記載の技術では、磁石を利用してガスパイプを保持する場合には、ガスパイプの外側表面と磁石との間にヤニが介在して必要な保持力が損なわれるおそれがある。また、プランジャを利用してガスパイプを保持する場合には、プランジャ内にヤニが溜まり固着するためにガスパイプに当接するボールを付勢するばね部材が弾発しなくなったり、プランジャが熱によって焼き付いて損傷を受けたりするおそれがある。
【0011】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、必要な保持力を維持しつつガスパイプをホルダに抜き差しでき、これによりメンテナンスを迅速かつ容易に行うことができる鋳造金型用ガス排出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、鋳造時に鋳造金型のキャビティ内に設置された中子から発生するガスを前記鋳造金型外へ排出する鋳造金型用ガス排出装置であって、前記鋳造金型に組み込まれ、一端を前記キャビティへ臨ませるとともに他端を前記鋳造金型の外側へ臨ませてなる筒状のガイド部材と、前記ガイド部材の内部にスライド自在に配置され、前記鋳造金型の型締め時に一端が前記中子に当接するガスパイプと、前記ガイド部材の他端側に配置され、前記ガスパイプの他端側を着脱自在に保持するホルダと、を備え、前記ホルダは、前記ガスパイプの他端側が挿入する挿入穴部、および前記ガスを前記挿入穴部内から外へ排出する排気孔が設けられた本体と、前記ガスパイプを前記挿入穴部の内面に向けて押圧する弾性部材と、を有し、前記弾性部材は、前記挿入穴部への前記ガスパイプの挿入時に該弾性部材が前記ガスパイプに接触して変形することによる弾性力によって前記ガスパイプを押圧することを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、金型の型開き時にガスパイプを金型の内方に向けて引き抜くことによって容易にホルダから取り外すことができるとともに、ガスパイプを金型の内方から差し込むことによって容易にホルダに取り付けることができる。
しかも、ホルダの弾性部材がガスパイプに接触して変形することで生じる弾性力によってガスパイプを直接押圧することで、ガスパイプがホルダに着脱自在に保持される。したがって、たとえ弾性部材にヤニが固着したとしても、弾性部材がガスパイプを押圧する際の弾性力は確実に発揮される。
すなわち、必要な保持力を維持しつつガスパイプをホルダに抜き差しでき、これによりメンテナンスを迅速かつ容易に行うことができる鋳造金型用ガス排出装置を提供できる。
【0014】
また、本発明では、前記弾性部材は、長尺棒状の鋼材で形成されていることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、限られたスペースを利用して弾性部材をホルダに配設することができるとともに、十分な弾性力を確保することができる。
【0016】
また、本発明では、前記弾性部材が前記ガスパイプを押圧する力を調整する調整手段をさらに有することが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、ホルダがガスパイプを保持する保持力を適切に設定することができる。これにより、必要な保持力をより確実に得ることができるとともに、メンテナンスをより迅速かつ容易に行うことができる。
【0018】
また、本発明では、前記弾性部材を前記ホルダの前記本体に固定する固定手段が前記調整手段を兼ねていることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、調整手段を固定手段とは別個に設ける必要がないため、部品点数の削減、および設備コストの低減を図ることができる。
【0020】
また、本発明では、前記ホルダの前記本体の側部に、前記挿入穴部に連通する複数の貫通孔が形成されていることが好ましい。
【0021】
このような構成によれば、金型内からの「中子ガス」の漏れが不可避的に生じてしまってホルダの挿入穴部にガスが流入したとしても、流入したガスは、ホルダの挿入穴部に滞留することなく、複数の貫通孔を通ってホルダ外に流出する。したがって、ホルダの弾性部材に触れるガスの量が低減される。このため、弾性部材へのヤニの付着が軽減され、弾性部材がガスパイプを押圧する際の弾性力をより確実に発揮させることができる。また、ホルダの挿入穴部の内面へのヤニの付着が軽減され、ホルダのメンテナンス頻度を低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、必要な保持力を維持しつつガスパイプをホルダに抜き差しでき、これによりメンテナンスを迅速かつ容易に行うことができる鋳造金型用ガス排出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る鋳造金型用ガス排出装置を備えた鋳造金型装置を一部断面で示す正面図である。
図2】(a)は図1のA−A線に沿う拡大断面図である。(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
図3図1に示される鋳造金型用ガス排出装置の断面図であり、(a)は型締め時、(b)は型開き時、(c)はメンテナンス時、の状態をそれぞれ示している。
図4】変形例に係る鋳造金型用ガス排出装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に示す図面において、同一の部材または相当する部材には同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。また、部材のサイズおよび形状は、説明の便宜のため、変形または誇張して模式的に表す場合がある。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る鋳造金型用ガス排出装置を備えた鋳造金型装置を一部断面で示す正面図である。図2(a)は図1のA−A線に沿う拡大断面図である。図2(b)は図2(a)のB−B線に沿う断面図である。
【0026】
図1に示すように、鋳造金型装置100は、例えばエンジン部品のひとつであるシリンダヘッドを鋳造するための装置である。鋳造金型装置100は、ここでは、昇降自在な上型2、固定型である下型3、水平方向に移動自在な右型4、左型5、前型および後型(図示省略)を有する鋳造金型(単に「金型」ともいう)1を備えている。金型1を型締めすることによって、鋳造製品を成形する空間としてのキャビティ6が形成される。
【0027】
キャビティ6内には、複数の中子S1,S2,S3,S4(以下、まとめて「中子S」という場合がある。)が予め設置される。中子Sは、例えば周りをレジンでコーティングされた細粒ケイ砂を鋳造製品の複雑な内部空間形状に対応させた形状に造形した後、レジンを硬化させることによって作製されたものである。本実施形態では、中子S1は、シリンダヘッドの上部隔壁の上方の空間を形成するものである。また、中子S2は、シリンダヘッドの上部隔壁の下方の空間を形成するものである。また、中子S3,S4は、シリンダヘッドの吸気通路と排気通路を形成するものである。
【0028】
上型2は、一対の支持枠7,7に固定されており、この支持枠7は図示しないシリンダ機構によって昇降駆動される。支持枠7は、エジェクトピン71を支持するエジェクトプレート72を有している。エジェクトプレート72は、支持枠7に対して上下にスライド自在に構成されており、支持枠7のバネ座73,73に設置されたスプリング74,74によって上方に付勢されている。支持枠7,7には、ストッパ75,75が設けられており、エジェクトプレート72の上限位置を規制している。
【0029】
エジェクトピン71は、鋳造した製品を中子Sとともに金型1から分離する部材である。各エジェクトピン71の上端側は、エジェクトプレート72の下面に固定されている。各エジェクトピン71の下端側は、上型2に形成されたエジェクト孔(図示省略)に摺動自在に挿入されている。
【0030】
エジェクトプレート72の中央部には、型開き時に、後記するホルダ50を押圧するための押圧装置78が設けられている。押圧装置78の下端は、エジェクトプレート72の下面から下方に向かって突出している。
【0031】
金型1を型締めした状態において、エジェクトプレート72はストッパ75に当接しており、エジェクトピン71の下端は中子S1に当接している。鋳造金型装置100の上方には、押圧部材76,76が設置されている。金型1を型開きすると、上型2の上昇に伴いエジェクトプレート72の上部に設けたストッパ77,77が押圧部材76,76に接触し、エジェクトプレート72およびエジェクトピン71をスプリング74のバネ力に抗して押下げるようになっている。これにより、上型2の下面からエジェクトピン71の下端が突出し、鋳造された製品および中子Sを上型2から分離することができる。
【0032】
下型3は、キャビティ6に溶湯を下方から充填するための注入孔(図示省略)を有している。また、右型4および左型5は、中子S3,S4から発生するガスを抜くためのガスベント4a,5aおよびガス通路4b,5bをそれぞれ有している。また、上型2は、中子S1からのガスを排出するためのガスベント2a,2aおよびガス通路2b,2bを有している。ガスベント2a,4a,5aは、中子S1,S3,S4の表面に直接開口している。
【0033】
さらに、上型2は、鋳造時に中子S2から発生するガスを金型1外へ排出する鋳造金型用ガス排出装置(単に「ガス排出装置」ともいう)10を備えている。ガス排出装置10は、メンテナンスを容易にするために、上型2に対して着脱自在に構成されている。ガス排出装置10は、金型1に組み込まれ、下端(一端)をキャビティ6へ臨ませるとともに上端(他端)を金型1の外側へ臨ませてなる筒状のガイド部材30と、ガイド部材30の内部にスライド自在に配置され、金型1の型締め時に下端(一端)が中子S2に当接するガスパイプ40と、ガイド部材30の上端側(他端側)に配置され、ガスパイプ40の上端側(他端側)を着脱自在に保持するホルダ50と、を備えている。
【0034】
図2に示すように、ガイド部材30は、ガスパイプ40のスライドをガイドする部材であり、上型2に上下方向に貫通形成された取付孔21に嵌め込まれている。
ガイド部材30は、例えば円筒形状を呈しており、軸方向に貫通形成されたガイド孔31を有している。ガイド孔31の上端側は、上型2の上面に連通しており、ガイド孔31の下端側は、キャビティ6に連通している。また、ガイド孔31の上端側には、ガイド孔31よりも径の大きな大径部31aが形成されている。大径部31aには、後記するホルダ50の嵌合部52が挿入されている。また、ガイド部材30は、径方向に突出する円環状の係止部32を上端部に有している。 係止部32は、ガイド部材30を上型2に設置した状態において、取付孔21の上端部に形成された段部21aに係止される。また、ガイド部材30の下端30aは、ガイド部材30を上型2に設置した状態において、上型2の下面(キャビティ面)から突出するとともに、中子S1の下面と面一となっている。つまり、ガイド部材30は、中子S1を貫通している。
【0035】
ガスパイプ40は、中子S2から発生するガスを金型1外に排出するパイプである。ガスパイプ40は、ガイド部材30のガイド孔31および後記するホルダ50の挿入穴部54にスライド可能に設置されている。ガスパイプ40は、例えば円筒形状を呈する金属製部材であり、軸方向に貫通形成されたガス抜き孔41を有している。
【0036】
ガスパイプ40の下端側に相当する下半部43は、ガイド部材30のガイド孔31にスライド可能に挿入されている。ガスパイプ40の下端40aは、ガスパイプ40をガイド部材30に設置した状態において、ガイド部材30の下端30aよりも下方に突出している。また、ガスパイプ40の下端40aは、金型1の型締め時に中子S2の上面に当接している。一方、ガスパイプ40の上端側に相当する上半部44は、後記するホルダ50に挿入されている。
【0037】
ホルダ50は、ガイド部材30に下方から挿入されたガスパイプ40を保持する部材である。ホルダ50は、本体51と、ガイド部材30の大径部31aに嵌合する嵌合部52と、ガスパイプ40を挿入穴部54の内面に向けて押圧する弾性部材53と、を備えている。ホルダ50は、上型2の上方からガイド部材30に取り付けられている。
【0038】
本体51は、例えば略四角筒形状(図2(b)参照)を呈する厚肉の金属製部材であり、ガスパイプ40の上半部44を挿入するための穴である挿入穴部54を有している。嵌合部52は、本体51よりも小径の円筒形状を呈しており、本体51の下端51aから下方に延出している。ホルダ50の嵌合部52は、ガイド部材30の大径部31aにスライド可能に嵌め入れられている。すなわち、嵌合部52および大径部31aは、ホルダ50をガイド部材30ひいては上型2に対して上下方向(ガスパイプ40の軸方向)にスライド可能にガイドするガイド機構を構成している。挿入穴部54は、ガスパイプ40の外径に対応する径に形成されている。挿入穴部54は、嵌合部52の下端に開口している。
【0039】
本体51の上端51bには、ガスパイプ40から立ち昇るガスを排出するための孔である排気孔56が形成されている。排気孔56は、ガスパイプ40の外径よりも小径に形成されており、挿入穴部54と連通している。
【0040】
また、本体51の側部には、挿入穴部54に連通する複数の貫通孔55a〜55e(以下、まとめて「貫通孔55」という場合がある。)が形成されている。貫通孔55は、ガスパイプ40とガイド部材30との間から流出したガスが、ガスパイプ40の外側表面に沿って流れてホルダ50の挿入穴部54に流入した場合に、そのガスを排出するための孔である。本実施形態では、貫通孔55は、本体51の各側部に、上下方向に長い長孔が1つまたは2つずつ形成されている。ただし、貫通孔55の形状、大きさ、および個数は適宜変更可能である。
【0041】
弾性部材53は、本実施形態では、ピアノ線等の長尺棒状の鋼材で形成されており、J字形状を呈している(図3(c)参照)。ホルダ50の本体51の上端側には、弾性部材53の上端側が差し込まれる取付孔57が形成されている。また、本体51の側面には、取付孔57に交差するように、一対のねじ孔58,58が形成されている。
【0042】
弾性部材53は、上端側が本体51に形成された取付孔57に挿入された状態で、固定手段としての一対の雄ねじ部材59,59が一対のねじ孔58,58にそれぞれねじ込まれることによって、ホルダ50の本体51に固定されている。一方、弾性部材53の下端側は、貫通孔55a内に配置されており、自由端となっている。
【0043】
弾性部材53は、ホルダ50の本体51に固定された状態で、弾性部材53の下端側に形成された湾曲部53a(図3(c)も参照)の外側表面が挿入穴部54内に所定量だけ進入している。したがって、弾性部材53は、挿入穴部54へのガスパイプ40の挿入時に該弾性部材53がガスパイプ40に接触して変形することによる弾性力によってガスパイプ40を押圧するように構成されている。このようにして、ホルダ50は、ガスパイプ40の上半部44を着脱自在に保持することが可能となっている。なお、弾性部材53の下端側が固定され、湾曲部53aが弾性部材53の上端側に形成されるように構成されてもよい。
【0044】
また、ガス排出装置10は、弾性部材53がガスパイプ40を押圧する力を調整する調整手段を有している。ここでは、弾性部材53をホルダ50の本体51に固定する一対の雄ねじ部材59,59が前記した調整手段の機能を兼ねている。具体的には、図2(a)に示される上側の雄ねじ部材59によって弾性部材53の設置位置が固定される。一方、下側の雄ねじ部材59のねじ孔58へのねじ込み力を調整することによって、弾性部材53を取付孔57内でガスパイプ40側に僅かに移動させることにより、ガスパイプ40に押圧する力を微調整することができるようになっている。なお、下側の雄ねじ部材59の下方に位置する弾性部材53の部分が自由端となって挿入穴部54内から見て露呈するように、取付孔57が形成されてもよい。このようにすれば、下側の雄ねじ部材59によるガスパイプ40に押圧する力の調整量を増やすことができる。また、一対の雄ねじ部材59,59の両方を緩めて弾性部材53を取付孔57内で軸方向にスライドさせることによって、弾性部材53がガスパイプ40に押圧する力を比較的大きく調整することが可能である。この場合、1個の雄ねじ部材59が使用されてもよい。
【0045】
次に、ガス排出装置10の作用について図3(適宜図1図2)を参照して説明する。図3は、図1に示される鋳造金型用ガス排出装置10の断面図であり、(a)は型締め時、(b)は型開き時、(c)はメンテナンス時、の状態をそれぞれ示している。
【0046】
鋳造金型装置100を用いて、例えばシリンダヘッドを鋳造する場合には、まず、金型1を型開きして、下型3の上に中子Sを設置するとともに、上型2の取付孔21にガス排出装置10をセットする。
【0047】
そして、図3(a)に示すように、金型1を型締めすると、ガスパイプ40の下端40aが中子S2の上面に当接する。そして、その後も上型2が降下を続けることによって、ガスパイプ40およびホルダ50は上型2に対して相対的に上方に移動する。これにより、ガスパイプ40の下端40aが中子S2の上面に確実に当接するとともに、本体51の下端51aが上型2(より詳しくはガイド部材30)から離間した状態となる。なお、この状態でも、ホルダ50の嵌合部52は、ガイド部材30の大径部31aに嵌入している。
【0048】
この状態で、下型3の注入孔(図示省略)からキャビティ6内に溶湯を下方から充填することにより、シリンダヘッドが鋳造される。崩壊性の中子Sのレジンが溶湯の高熱により熱分解を起こしてガスが生じ、このガスは、ガス排出装置10や、ガスベント2a,4a,5aを通って金型外に排出される。
【0049】
このとき、ガスパイプ40とガイド部材30との間を通ってガスが流出し、ホルダ50の挿入穴部54に流入することがあるが、本体51の側部には複数の貫通孔55が設けられているので、これらの貫通孔55からガスが排出される。
【0050】
なお、キャビティ6内に溶湯を注入したとき、ガスパイプ40の下端40aが中子S2の上面に当接して密着しているため、ガスパイプ40の下端開口が溶湯で閉塞されることはない。また、ガスベント2a,4a,5aはキャビティ6に臨んでおらず、直接中子S1,S4,S3の表面に開口しているので、溶湯によって閉塞されることはない。
【0051】
溶湯が冷えて固化した後、図3(b)に示すように、金型1を型開きする。このとき、ガスパイプ40は、ホルダ50に保持されているので、上型2とともに上方へ移動する。
【0052】
ホルダ50は、該ホルダ50の自重だけでは原位置に復帰しない(下方に移動しない)場合がある。本実施形態では、上型2の上方に配置されているエジェクトプレート72のホルダ50に対応する位置に、押圧部材78が設置されているので、型開きすると、ホルダ50の本体51の上端51bに押圧部材78が当接し、ホルダ50およびガスパイプ40が下方へ移動する。これにより、ホルダ50およびガスパイプ40が原位置に復帰した状態となる。なお、押圧部材78の下面に円弧状の切欠が形成されており、押圧部材78がホルダ50の本体51の上端51bに当接したときでも、その切欠によってガスの流れが妨げられることがないようになっている。
【0053】
鋳造作業を繰り返すうちに、ガスパイプ40やガイド部材30に、ガスが液化して付着したヤニが増加し、ガスパイプ40がスライドし難くなる。そのため、作業者は、所定の頻度でメンテナンス(清掃または交換)を行う必要がある。
【0054】
そこで、作業者は、図3(c)に示すように、ガスパイプ40の下端40a付近を把持して下方に引き抜くことにより、ガスパイプ40を上型2から取り外す。このとき、鋳造した製品を搬出した後であれば、上型2の下方の空間には何もないので、ガスパイプ40を容易に発見して引き抜くことができる。
また、ガスパイプ40は、弾性部材53の弾性力によって着脱自在にホルダ50に保持されているので、ガスパイプ40を下方に引き抜くだけで容易にホルダ50から取り外すことができる。
【0055】
続いて、作業者は、ガスパイプ40を抜き取った後に、ガイド部材30のガイド孔31およびホルダ50の挿入穴部54を、ワイヤブラシ等を用いて清掃する。また、作業者は、ガスパイプ40をワイヤブラシ等を用いて清掃する。
【0056】
清掃または交換が終了したら、作業者は、ガスパイプ40を把持して、上型2の下方からガイド部材30のガイド孔31およびホルダ50の挿入穴部54に再び挿入する。ホルダ50の挿入穴部54に挿入されたガスパイプ40は、弾性部材53の弾性力によってホルダ50に保持される。ここで、ガスパイプ40をホルダ50に保持させる際に、作業者がホルダ50に手を触れて操作する必要がない。そのため、ガスパイプ40の取付作業が容易になる。以上により、メンテナンス作業が完了する。
【0057】
前記したように、本実施形態に係るガス排出装置10において、ホルダ50は、ガスパイプ40の上端側が挿入する挿入穴部54、およびガスを挿入穴部54内から外へ排出する排気孔56が設けられた本体51と、ガスパイプ40を挿入穴部54の内面に向けて押圧する弾性部材53と、を有しており、弾性部材53は、挿入穴部54へのガスパイプ40の挿入時に該弾性部材53がガスパイプ40に接触して変形することによる弾性力によってガスパイプ40を押圧するように構成されている。
【0058】
このような構成によれば、金型1の型開き時にガスパイプ40を金型1の内方に向けて引き抜くことによって容易にホルダ50から取り外すことができるとともに、ガスパイプ40を金型1の内方から差し込むことによって容易にホルダ50に取り付けることができる。
しかも、ホルダ50の弾性部材53がガスパイプ40に接触して変形することで生じる弾性力によってガスパイプ40を直接押圧することで、ガスパイプ40がホルダ50に着脱自在に保持される。したがって、たとえ弾性部材53にヤニが固着したとしても、弾性部材53がガスパイプ40を押圧する際の弾性力は確実に発揮される。
すなわち、必要な保持力を維持しつつガスパイプ40をホルダ50に抜き差しでき、これによりメンテナンスを迅速かつ容易に行うことができる鋳造金型用ガス排出装置10を提供できる。
【0059】
また、本実施形態では、弾性部材53は、ピアノ線等の長尺棒状の鋼材で形成されている。このような構成によれば、限られたスペースを利用して弾性部材53をホルダに配設することができるとともに、十分な弾性力を確保することができる。
【0060】
また、本実施形態では、弾性部材53がガスパイプ40を押圧する力を調整する調整手段を有している。このような構成によれば、ホルダ50がガスパイプ40を保持する保持力を適切に設定することができる。これにより、必要な保持力をより確実に得ることができるとともに、メンテナンスをより迅速かつ容易に行うことができる。
【0061】
また、本実施形態では、弾性部材53をホルダ50の本体51に固定する固定手段としての雄ねじ部材59が前記調整手段を兼ねている。このような構成によれば、調整手段を固定手段とは別個に設ける必要がないため、部品点数の削減、および設備コストの低減を図ることができる。
【0062】
また、本実施形態では、ホルダ50の本体51の側部に、挿入穴部54に連通する複数の貫通孔55が形成されている。このような構成によれば、金型1内からの「中子ガス」(単に「ガス」ともいう)の漏れが不可避的に生じてしまって、ホルダ50の挿入穴部54にガスが流入したとしても、流入したガスは、ホルダ50の挿入穴部54に滞留することなく、複数の貫通孔55を通ってホルダ50外に流出する。したがって、ホルダ50の弾性部材53に触れるガスの量が低減される。このため、弾性部材53へのヤニの付着が軽減され、弾性部材53がガスパイプ40を押圧する際の弾性力をより確実に発揮させることができる。また、ホルダ50の挿入穴部54の内面へのヤニの付着が軽減され、ホルダ50のメンテナンス頻度を低減することができる。
【0063】
次に、図4を参照して、変形例に係るガス排出装置10aについて、図1図3に示す実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点の説明を適宜省略する。
図4は、変形例に係る鋳造金型用ガス排出装置10aの断面図である。
【0064】
図4に示すように、変形例に係るガス排出装置10aでは、ホルダ50aは、本体51の下部から左右方向に延出している一対のガイド部61,61を備えており、一対のガイド部61,61には一対の挿通孔62,62が形成されている。そして、ホルダ50aの一対の挿通孔62,62に、ガイド部材30または上型2に立設された一対のピン部材63,63がスライド可能に嵌め入れられている。
【0065】
すなわち、この変形例では、前記した実施形態の嵌合部52および大径部31aに代えて、一対の挿通孔62,62が形成された一対のガイド部61,61、および一対のピン部材63,63が設けられている。そして、一対のガイド部61,61、および一対のピン部材63,63が、ホルダ50をガイド部材30ひいては上型2に対して上下方向にスライド可能にガイドするガイド機構を構成している。
【0066】
このような変形例に係るガス排出装置10aによっても、前記した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。なお、ガイド部61の形状や、挿通孔62およびピン部材63の個数等は、適宜変更可能である。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0068】
例えば、前記した実施形態では、弾性部材53は、ピアノ線等の長尺棒状の鋼材で形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば板ばね等の長尺板状の鋼材で形成されていてもよい。
【0069】
また、前記した実施形態では、ホルダ50の本体51の側部に挿入穴部54と連通する複数の貫通孔55を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、貫通孔55を設けない構成が採用されてもよい。
【0070】
また、ホルダ50の自重が十分に大きく、型開き時にホルダ50およびガスパイプ40が自重によって降下して原位置に確実に復帰するのであれば、押圧装置78を省略してもよい。
【0071】
また、本実施形態では、シリンダヘッドの鋳造を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、シリンダヘッド以外のものを鋳造する場合に適用してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0072】
1(2〜5) 鋳造金型
6 キャビティ
10,10a 鋳造金型用ガス排出装置
30 ガイド部材
30a 下端(一端)
40 ガスパイプ
40a 下端(一端)
50,50a ホルダ
51 本体
53 弾性部材
54 挿入穴部
55(55a〜55e) 貫通孔
56 排気孔
59 雄ねじ部材(調整手段、固定手段)
S(S1〜S4) 中子
図1
図2
図3
図4