【解決手段】半田鏝の、半田に対して非濡れ性の鏝先に付いた付着物を除去するクリーニング装置であって、前記鏝先を加熱する加熱手段と、前記付着物の少なくとも一部が燃焼するように前記加熱手段を制御する加熱制御手段とを備えたクリーニング装置とする。ここで、気体噴出手段をさらに設け、前記鏝先を加熱した後、前記気体噴出手段から前記鏝先に向かって気体を噴出させ前記鏝先の付着物を除去するのが好ましい。
前記加熱制御手段は、前記検出温度が所定条件を満たしている時間を計測し、該計測の結果に基づいて前記加熱手段を制御する請求項7又は請求項8に記載のクリーニング装置。
前記鏝先が付いた状態の前記半田鏝及び/又は前記加熱手段を移動させることにより、前記鏝先を、前記加熱手段による加熱が可能となる位置に配置する請求項15又は16に記載の半田付けシステム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について、第1実施形態から第3実施形態の各々を例に挙げ、図面を参照しながら以下に説明する。なお、本発明の内容はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。また、以下の説明で用いる上下左右の方向は、
図1に示す通りである。
【0021】
1.第1実施形態
[半田付けシステムの全体構成等]
まず第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る半田付けシステムXの斜視図であり、
図2は、
図1に示す半田付け装置Aを平面P1(半田鏝5の中心軸を含み、上下左右に広がる平面)で切断した場合の断面図である。なお、
図1では図の見易さを考慮して、支持部1の一部を切断して表示している。
図1に示すように半田付けシステムXは、半田付け装置Aおよび電熱ヒーターBを備えている。
【0022】
半田付け装置Aは、上方から糸半田Wを供給し、下部に設けられた半田鏝Saを利用し、半田鏝Saの下方に配置される配線基板Bdと電子部品Epを半田付けする装置である。なお、電熱ヒーターBは、半田鏝Saの鏝先5に付いた付着物を除去するための装置である。
【0023】
図1および
図2に示すように、半田付け装置Aは支持部1、カッターユニット2、駆動機構3、半田送り機構6、及び半田鏝Saを備えている。
【0024】
半田付け装置Aは、治具Gjに取り付けられた配線基板BdのランドLdと、配線基板Bdに配置された電子部品Epの端子とに溶融半田を供給し、接続固定を行う。半田付け装置Aは上下左右を含む各方向に移動可能となるよう構成されている。
【0025】
支持部1は、立設された平板状の壁体11を備えている。カッターユニット2は、半田送り機構6によって送られた糸半田Wを所定長さの半田片に切断するものである。カッターユニット2は、摺動ガイド13に固定されたカッター下刃22と、カッター下刃22の上部に配置され、摺動可能に配置されたカッター上刃21とを備えている。また、カッターユニット2は、駆動機構3の後述する第2アクチュエータ32によって、上下方向(カッター上刃21の摺動方向と交差する方向)に駆動されるプッシャーピン23を備えている(
図2参照)。
【0026】
図2に示すように、カッター上刃21は、半田送り機構6にて送られた糸半田Wが挿入される貫通孔である上刃孔211と、プッシャーピン23が挿入された貫通孔であるピン孔212とを備えている。上刃孔211の下端の辺縁部は切刃状に形成されている。カッター下刃22は、上刃孔211を貫通した糸半田Wが挿入される貫通孔である下刃孔221を備えている。下刃孔221の上端の辺縁部は切刃状に形成されている。上刃孔211と下刃孔221とは、糸半田Wが挿入されている状態で、糸半田Wと交差する方向にずれることで、互いの切刃によって糸半田Wを半田片に切断する。
【0027】
上刃孔211とピン孔212とは、カッター上刃21の摺動方向に並んで設けられている。カッター上刃21は、上刃孔211と下刃孔221とが上下に重なる位置と、ピン孔212と下刃孔221とが上下に重なる位置との間を摺動する。
【0028】
図2に示すように、駆動機構3は、カッター下刃22に固定されカッター上刃21を摺動させる第1アクチュエータ31と、カッター上刃21に取り付けられ、プッシャーピン23を駆動する第2アクチュエータ32とを備えている。第1アクチュエータ31は、カッター下刃22に固定されたシリンダ311と、シリンダ311の内部に配置され、供給される空気の圧力で伸縮するピストンロッド312とを備えている。ピストンロッド312の先端部分がカッター上刃21に固定されており、ピストンロッド312の伸縮動作によってカッター上刃21が摺動する。
【0029】
なお、
図2に示す半田付け装置Aでは、第1アクチュエータ31のピストンロッド312がシリンダ311から最も突出したとき、カッター上刃21が図中左端にあり、上刃孔211が下刃孔221と上下に重なるようになっている。また、
図3に示すように、ピストンロッド312がシリンダ311に収納されたとき、カッター上刃21が図中右端に移動し、ピン孔212が下刃孔221と上下に重なるようになっている。
【0030】
第2アクチュエータ32は、カッター上刃21に固定されたシリンダ321と、シリンダ321の内部に配置され、空気圧で伸縮するピストンロッド322とを備えている。ピストンロッド322の先端にはプッシャーピン23が固定されている。第2アクチュエータ32は、ピン孔212と下刃孔221とが上下に重なっている状態のとき、ピストンロッド322を伸長させることで、プッシャーピン23を下刃孔221に挿入し、ピストンロッド322をシリンダ321に収容することでプッシャーピン23を下刃孔221から抜く。カッターユニット2によって切断された半田片が下刃孔221に残っている場合でも、このプッシャーピン23の動作によって、押し出される。
【0031】
半田送り機構6は、糸半田Wを供給するものであり、糸半田Wを送る一対の送りローラ61と、送りローラ61で送られる糸半田Wをガイドするガイド管62とを備えている。一対の送りローラ61は、支持部1に取り付けられており、糸半田Wを挟むとともに、回転することで糸半田Wを下方に送る。送りローラ61は回転角度(回転数)によって、送り出した糸半田の長さを決定している。
【0032】
ガイド管62は、弾性変形可能な管体であり、上端は、送りローラ61の糸半田Wが送り出される部分に近接して配置されている。また、ガイド管62の下端はカッター上刃21の摺動に追従して移動するものであり、上刃孔211に連結されている。ガイド管62はカッター上刃21が摺動する範囲で引っ張られたり、突っ張ったりしないように設けられている。
【0033】
カッター下刃22の下部には、窒素や空気を下刃孔221に送り込むための通気経路225が設けられている。また、
図1および
図2に示すように、半田鏝Saは、カッターユニット2の下方に固定されている。半田鏝Saの詳細について以下に説明する。
【0034】
半田鏝Saは、ヒーターユニット4と、ヒーターユニット4に取り付けられた鏝先5を備えている。
図2に示すように、ヒーターユニット4は、通電によって発熱する半田付け用のヒーター41と、ヒーター41を取り付けるためのヒーターブロック42と、ヒーターブロック42を保持するヒーターブロック保持部43とを備えている。
【0035】
ヒーターブロック42は円筒形状を有しており、外周面には、ヒーター41が巻き付けられている。ヒーターブロック42は、軸方向の下端部に鏝先5をとりつけるための断面円形状の凹部421と、凹部421の底部の中心部から反対側に貫通する半田供給孔422とを備えている。
【0036】
ヒーターブロック保持部43は、平板状の本体部に形成された貫通孔を備えている。この貫通孔にヒーターブロック42を圧入することで、ヒーターブロック42はヒーターブロック保持部43に保持されている。ヒーターブロック保持部43を支持部1に取り付けることで、半田鏝Saが支持部1に固定される。
図2に示すように、カッター下刃22の下刃孔221は、ヒーターブロック42の半田供給孔422に連通している。
【0037】
鏝先5は、半田に対して非濡れ性の部材であり、上下方向(軸方向)に伸びる円筒形状となっている。鏝先5の中央部分には、軸方向に延びる半田孔51が形成されている。鏝先5は、高い熱伝導率を有する材料、例えば、炭化ケイ素、窒化アルミ等のセラミックやタングステン等の金属によって形成されていることが好ましい。
【0038】
鏝先5は、半田鏝Saの本体に対して着脱可能であり、装着時には上部がヒーターブロック42の凹部421に挿入して配置され、下端部がヒーターブロック42より下方に突出する。この状態において、鏝先5の半田孔51と半田供給孔422とが連通する。カッターユニット2で切断された糸半田は、下刃孔221から半田供給孔422を介して半田孔51に供給される。
【0039】
半田鏝Saで半田付けを行う場合、ヒーターブロック42を介してヒーター41の熱が伝達され、その熱で半田孔51に供給された半田片を溶融する。半田付け装置Aによれば、筒形状の鏝先5の先端を、配線基板BdのランドLdに接触させた状態で半田付けを行うことが出来る。これにより、半田やフラックスヒューム等の飛び散りを抑制することが可能である。
【0040】
半田鏝Saには、鏝先5の温度を検出するように配置された第1熱電対71(以下、「温度検出手段」と称することがある)が備えられている。温度検出手段による鏝先5の温度の検出結果は、半田片を溶融させて半田付けが可能となるように、ヒーター41による加熱を適切に制御するための情報として利用される。また、温度検出手段による鏝先5の温度の検出結果は、後述するクリーニング工程において、電熱ヒーターBによる加熱を制御するためにも利用される。なお、半田鏝Saには、ヒーターブロック42の温度を検出するように配置された第2熱電対72も備えられており、ヒーター41による加熱をより精度良く制御する用途等に利用される。
【0041】
また、半田付けシステムXには、当該システムが正常に機能するように各種動作を制御する制御機構CS(不図示)が設けられている。制御機構CSは、例えば、MPUやCPU等の論理回路を備え、第1アクチュエータ31、第2アクチュエータ32、ヒーター41、およびローラ61等を制御する機能を有している。また、制御機構CSは、半田付け装置A(半田鏝Saを含む)の移動を制御する機能も有しており、更に、温度検出手段の検出結果を継続的に取得することが可能である。
【0042】
制御機構CSは、半田付けが適切に遂行されるように各部を制御する。より具体的に説明すると、制御機構CSは、鏝先5の先端が配線基板Bdへ近づくように半田付け装置Aを移動させた後、糸半田Wから半田片が切り出されるようにローラ61と各アクチュエータ(31、32)を制御し、鏝先5の内部に半田片が供給されるようにする。その後に制御機構CSは、この半田片が溶融するように(通常、鏝先5が約400℃となるように)ヒーター41を制御し、半田付けが達成されるようにする。
【0043】
また、
図1および
図2に示すように、半田付けシステムXには、半田付けが行われる場所とは別の位置(本実施形態では一例として、配線基板Bdがセットされる位置の右方)に電熱ヒーターBが備えられている。電熱ヒーターBは、上方から鏝先5が挿入可能であるコイル形状(筒状と見ることも出来る)となっており、電力が供給されるとジュール熱を発生させて高温となる。
【0044】
電熱ヒーターBは、鏝先5が挿入された状態(鏝先5が電熱ヒーターB内に配置された状態)で発熱することにより、鏝先5を外周から加熱することになる。なお、電熱ヒーターBは、例えば、耐火レンガ等により形成された放熱抑制部材によって、周囲が囲まれた形態となっていても良い。これにより、電熱ヒーターBの外側への放熱が抑制され、鏝先5の加熱をより効率良く行うことが可能となる。また、制御機構CSは、電熱ヒーターBによる加熱を制御する機能(電熱ヒーターBへの供給電力を制御する機能)をも有している。
【0045】
[クリーニング工程]
半田付けシステムXは、鏝先5に付着した付着物の少なくとも一部を燃焼させて除去するためのクリーニング装置としての電熱ヒーターBを備える。電熱ヒーターBは、主に制御機構CSによって制御される。電熱ヒーターBによる鏝先5のクリーニングは、例えば、所定の時間毎、あるいは半田付けが所定回数行われる毎に、実行されるようにしても良い。クリーニング工程では、後述するように、半田付けが完了した直後の、鏝先5の温度が高い状態で行うことにより、クリーニング温度まで鏝先5を昇温する時間を短縮できる効果が得られる。クリーニング工程の流れについて、
図4に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0046】
クリーニング工程の実行時において、半田付けシステムXは、まず半田付け装置Aを移動させることによって、半田鏝Saの鏝先5を電熱ヒーターB内に配置する(
図4のステップS1)。例えば、半田付けが完了した直後に半田付け装置Aの移動が行われる場合には、その移動手順は
図5に示すようになる。
【0047】
すなわち半田付け装置Aは、半田付けが完了した直後の
図5(a)に示す位置から上へ移動し、
図5(b)に示す位置に到達する。次に半田付け装置Aは、そこから右へ移動し、電熱ヒーターBの真上となる
図5(c)に示す位置に到達する。更に半田付け装置Aは、そこから下へ移動して、鏝先5が電熱ヒーター内に配置される
図5(d)に示す位置に到達する。なお、半田付け装置Aの移動手順などは、鏝先5が電熱ヒーターB内へ適切に配置され得る限り、他の形態となっていても良い。
【0048】
鏝先5が電熱ヒーターB内に配置されると、電熱ヒーターBによる鏝先5の加熱が開始される(
図4のステップS2)。鏝先5が、例えば450℃以上に加熱されると、鏝先5の炭化物などの付着物は燃焼して除去される。そして、残存する付着物は主に金属酸化物となる。金属酸化物と鏝先5との付着力は弱く、機械振動や自重などによって多くは自然落下するが、後述するように、鏝先5に気体を吹き付けることによって金属酸化物を鏝先5から強制除去するのが好ましい。電熱ヒーターBによる鏝先5の加熱温度は、付着物中の炭化物を短時間で燃焼させる観点からは、450℃以上とするのが好ましい。一方、加熱温度が650℃以上では近傍部品への熱影響(糸半田内のフラックス溶融等)が問題となるため、鏝先5の加熱温度としては450℃〜650℃が好適である。そこで、電熱ヒーターBによる加熱は、温度検出手段の検出温度が450℃〜650℃の範囲内となるように(例えば、500℃を目標値とするように)制御される。
【0049】
なお、クリーニング工程での鏝先5を加熱する手段として、電熱ヒーターBに加えて、半田付け用のヒーター41も使用されるようにしても良い。この場合には、温度検出手段の検出温度が450℃〜650℃の範囲内となるように、電熱ヒーターBと半田付け用のヒーター41の両方による鏝先5の加熱が制御される。
【0050】
加熱が開始された後は、加熱に関する既定条件(鏝先5に付着した付着物の燃焼が見込まれる条件)が満たされるまで、加熱が継続される(
図4のステップS3)。この既定条件の内容は、付着物の燃焼が適切に達成され得る限り、特に限定されない。
【0051】
例えば、鏝先5の炭化物などの付着物は、450℃〜650℃の温度が約10分間維持されるとほぼ完全に燃焼すると考えられる。そこで、温度検出手段の検出温度が450℃〜650℃の範囲内となっている時間が計測され、「当該計測時間が10分に達した」という条件が満たされるまで加熱が継続されるようにしても良い。
【0052】
また、炭化物などの付着物を燃焼させるために要する加熱時間が予め判明している場合には、電熱ヒーターBによる加熱の実行時間が制御されるようにしても良い。例えば、加熱開始から約15分で付着物が燃焼することが経験的に判明していれば、電熱ヒーターBの実行時間が15分に制御される(すなわち、加熱開始から15分後に加熱が停止される)ようにしても良い。
【0053】
電熱ヒーターBによる加熱が終了すると、半田付けシステムXは、当該システムに備えられている気体噴出手段を用いて気体を噴出させ、付着物を除去する処理(いわゆるエアーブロー)を実行する(
図4のステップS4)。なお、当該気体として空気を用いることが望ましいが、他種の気体が用いられても構わない。
【0054】
鏝先5の炭化物などの付着物が燃焼した後には、金属酸化物などの付着物が未だ鏝先5に付いている。そこで、ステップS4の処理では、噴出させた気体を金属酸化物などの付着物に当ててこれを吹き飛ばし、鏝先5からすべての付着物を完全に除去されるようにする。前述のように、金属酸化物などの付着物には付着力が殆どなく、気体を当てるだけで容易に除去可能である。なお、気体を噴出させる処理は、通気経路225(
図2に図示)を介して鏝先5内へ気体を送り込む形態であっても良く、鏝先5の下方から鏝先5に向かって気体を噴出させる形態であっても良い。また、付着物の付着位置や付着状態に応じて、吹き付ける気体の速度や位置を変更することも可能である。
【0055】
ステップS4の処理が完了すると、半田付け装置Aは通常の位置(半田付け用の位置)に戻される(
図4のステップS5)。この処理は、例えば、
図5の場合とは逆の順序で半田付け装置Aを移動することにより実現される。ここまでの処理が完了すると、今回のクリーニング工程は終了する。
【0056】
上述したクリーニング工程によれば、付着物を燃焼させて除去する手法が採用される。そのため、例えば、ドリルを用いて付着物を削り取る手法が採用される場合などに比べて、より効率良く、かつ容易に付着物を除去することが可能である。また、電熱ヒーターBは、半田鏝Saとは分離して配置され、クリーニング工程の実行時にだけ鏝先5がセットされるようになっている。そのため、半田付けが行われる際に電熱ヒーターBが邪魔になることはない。なお、本実施形態では、半田付け装置Aが移動する例を示したが、電熱ヒーター(加熱手段)Bが移動するようにしてもよい。あるいは、半田付け装置A及び電熱ヒーター(加熱手段)Bが移動するようにしてもよい。
【0057】
2.第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態は、クリーニング工程において用いられる加熱手段に関する点を除き、基本的には第1実施形態と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる部分の説明に重点をおき、共通する部分については説明を省略することがある。
【0058】
第2実施形態の半田付けシステムXでは、クリーニング装置の加熱手段として、第1実施形態での電熱ヒーターBの代わりに、光照射手段(本実施形態では一例として、ハロゲンランプ)が設けられている。
図6は、この光照射手段によって鏝先5が加熱されている様子を示している。
【0059】
図6に示すように、第2実施形態の半田付けシステムXは、光照射手段C1および放熱抑制部材C2を備えている。放熱抑制部材C2には、上方から鏝先5が挿入可能である挿入スペースC2aが設けられている。なお、放熱抑制部材C2は、第1実施形態での電熱ヒーターBと同様に、半田付けが行われる場所とは別の位置(例えば、配線基板Bdがセットされる位置の右方)に配置されている。
【0060】
第2実施形態のクリーニング工程では、半田付け装置Aの移動によって鏝先5が電熱ヒーターB内に配置される代わりに、鏝先5が挿入スペースC2aへ挿入される(放熱抑制部材C2内に配置される)ことになる。そして光照射手段C1は、挿入スペースC2aに挿入された状態の鏝先5に対して光を照射することにより、鏝先5を加熱する。鏝先5の加熱の制御は、光の強度などを制御することにより実現される。このような光照射による加熱方式は、従来のセラミックヒーターを使う方式などに比べて加熱に要する時間が極めて短くなり、更に装置の寿命が長くなるという利点がある。また、鏝先5を非接触で加熱できるので、鏝先5の移動位置に関する自由度が高い。さらに、光照射手段C1からの光を収束させることにより、付着物の多い部分を選択的に加熱することもできる。
【0061】
放熱抑制部材C2は、例えば、耐火レンガによって形成されており、挿入スペースC2aに挿入された鏝先5の全部また、は一部を囲むことになる。これにより鏝先5は、光照射手段C1からの直接光に加えて、挿入スペースC2aの壁面からの反射光、再放射、および熱伝導、ならびに挿入スペースC2aでの対流も利用され、より効率良く加熱される。
【0062】
このような放熱抑制部材C2では、挿入スペースC2aの寸法形状を最適化することが容易である。すなわち、セラミックヒーターの場合には後加工が困難であるが、耐火断熱材の場合には容易に加工可能であり、寸法形状などの最適化が容易となる。また、放熱抑制部材C2を用いる場合には、標準的な集光型スポットヒーターやラインヒーターを組み合わせるだけで、理想的な加熱が可能となる。
【0063】
放熱抑制部材C2の形状等については、種々の形態が採用され得る。
図7は、放熱抑制部材C2の形状に関するバリエーションの一例を示している。なお、
図7において、(a)と(b)の相違点、および(c)と(d)の相違点は、挿入スペースC2aの断面形状のみである。
【0064】
図7(a)および(b)に示す放熱抑制部材C2は、挿入スペースC2aが上方に開口した穴状となっている。そのため、挿入された鏝先5の全周が放熱抑制部材C2に囲まれる格好となり、放熱抑制などの効果が極めて高くなっている。また、放熱抑制部材C2の側面には、光照射手段C1からの照射光を挿入スペースC2a内へ通すための貫通孔C2bが設けられている。
【0065】
図7(c)および(d)に示す放熱抑制部材C2は、挿入スペースC2aが上方と側面の一部が開口した溝状となっている。そのため、放熱抑制などの効果については
図7(a)および(b)のものに及ばないが、照射光を通すための貫通孔C2bの形成を省略することが可能である。
【0066】
また、放熱抑制部材C2は上述したバリエーションの他、例えば、
図8に示すように、複数の部材を組み合わせた構成となっていても良い。
図8に例示する放熱抑制部材C2は、溝状の挿入スペースC2aが形成された耐火レンガに、貫通孔C2bが形成されたマイカ板が取り付けられた構成となっている。
【0067】
なお、光照射による鏝先5の加熱効率を向上させるため、鏝先5の色は、黒色又は付着物(ドロスなど)と同色にされていることが望ましい。このことは、鏝先5を黒色又は付着物と同色の材料によって形成すること、或いは、鏝先5を黒色又は付着物と同色に着色すること等により達成される。なお、当該着色は、例えば、セラミック製の鏝先5に金属を擦り付けることによって実現される。
【0068】
3.第3実施形態
次に第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態の半田付けシステムXは、クリーニング工程において用いられる加熱手段に関する点を除き、基本的には第1実施形態と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる部分の説明に重点をおき、共通する部分については説明を省略することがある。
【0069】
第3実施形態の半田付けシステムXでは、クリーニング装置の加熱手段として、第1実施形態での電熱ヒーターBの代わりに、温風発生手段を用いる。
図9は、この温風発生手段によって鏝先5が加熱されている様子を示している。
【0070】
図9に示すように、第3実施形態の半田付けシステムXは、温風発生手段D1および放熱抑制部材D2を備えている。放熱抑制部材D2には、上方から鏝先5が挿入可能である挿入スペースD2aが設けられている。なお、放熱抑制部材D2は、第1実施形態での電熱ヒーターBと同様に、半田付けが行われる場所とは別の位置(例えば、配線基板Bdがセットされる位置の右方)に配置されている。
【0071】
第3実施形態でのクリーニング工程では、半田付け装置Aの移動によって鏝先5が電熱ヒーターB内に配置される代わりに、鏝先5が挿入スペースD2aへ挿入される(放熱抑制部材D2内に配置される)ことになる。そして温風発生手段D1は、挿入スペースD2aに挿入された状態の鏝先5に温風を当てることにより、鏝先5を加熱する。鏝先5の加熱の制御は、温風の温度や噴射量などを制御することにより実現される。
【0072】
放熱抑制部材D2は、例えば、耐火レンガによって形成されており、挿入スペースD2aに挿入された鏝先5の全部又は一部を囲むことになる。これにより鏝先5は、温風発生手段D1から温風を直接受けることに加えて、挿入スペースD2aの壁面からの熱伝導や挿入スペースD2aでの対流も利用され、より効率良く加熱される。また、温風による付着物の燃焼除去以外に、付着物が燃焼した後の、金属酸化物などの付着物を温風による風圧で除去する相乗効果も期待できるので、鏝先5の付着物の除去効果はより高くなる。
【0073】
放熱抑制部材D2の形状等については、種々の形態が採用され得る。
図10は、放熱抑制部材D2の形状に関するバリエーションの一例を示している。なお、
図10において、(a)と(b)の相違点、および(c)と(d)の相違点は、挿入スペースD2aの断面形状のみである。
【0074】
図10(a)および(b)に示す放熱抑制部材D2は、挿入スペースD2aが上方に開口した穴状となっている。そのため、挿入された鏝先5の全周が放熱抑制部材D2に囲まれる格好となり、放熱抑制などの効果が極めて高くなっている。また、放熱抑制部材D2の側面には、温風発生手段D1からの温風を挿入スペースC2a内へ通すための貫通孔D2bが設けられている。
【0075】
図10(c)および(d)に示す放熱抑制部材D2は、挿入スペースD2aが上方と側面の一部が開口した溝状となっている。そのため、放熱抑制などの効果については
図10(a)および(b)のものに及ばないが、温風を通すための貫通孔D2bの形成を省略することが可能である。また、放熱抑制部材D2は、例えば、
図8に示したものと同様に、複数の部材を組み合わせた構成とされても良い。
【0076】
4.その他
以上に説明した通り、各実施形態の半田付けシステムXには、半田鏝Saの鏝先5(半田に対して非濡れ性の鏝先)に付いた付着物を除去するクリーニング装置が設けられている。このクリーニング装置は、鏝先5を加熱する加熱手段と、付着物の少なくとも一部が燃焼するように前記加熱手段を制御する加熱制御手段を備えている。
【0077】
なお、当該加熱手段は、第1実施形態の場合には電熱ヒーターB(鏝先5を外周から加熱するもの)が該当し、第2実施形態の場合には光照射手段C1(加熱が光照射によるもの)が該当し、第3実施形態の場合には温風発生手段D1(加熱が温風によるもの)が該当する。また、付着物を除去する際の加熱手段を制御する加熱制御手段は、半田付けの際の加熱を制御する手段とは別にしても良く、共通としても良い。各実施形態のクリーニング装置によれば、鏝先5の付着物を効率良く除去することが可能である。
【0078】
また、各実施形態の半田付けシステムXでは、鏝先5が付いた状態の半田鏝Saを移動させることにより、加熱手段による加熱が可能となる特定位置(第1実施形態の場合は電熱ヒーターの内側、第2・第3実施形態の場合は放熱抑制部材の内側)に鏝先5が配置される。このように、鏝先5を特定位置に配置する処理は自動的に行われるため、作業者の作業負担が軽減される。
【0079】
但し、鏝先5を特定位置に配置する処理は、例えば、作業者の手作業によって行われるようにしても良い。この場合に作業者は、半田鏝Saの本体に対して着脱可能である鏝先5を取り外した上で、単体の鏝先5を特定位置まで運んで配置すれば良い。なお、鏝先5が半田鏝Saの本体に対して磁力によって着脱可能とされていれば、作業者は鏝先5を容易に着脱することが出来る。
【0080】
また、本発明のクリーニング装置と、ドリルを用いて付着物を削り取る従来のクリーニング装置とを併用してもよい。本発明のクリーニング装置では、付着物を鏝先5からほぼ完全に除去することができるが、鏝先5を加熱するのに通常数分間を要する。一方、ドリルを用いた装置では、付着物の除去は不完全であるが数秒間でクリーニングが完了する。そこで、ドリルを用いた鏝先5のクリーニングを、数回の半田付け作業が終了する毎に実施し、数百回あるいは昼休み期間、一日の作業終了後に本発明のクリーニング装置で鏝先5のクリーニングを実施するようにしてもよい。これにより、半田付けの作業効率を低下させることなく鏝先5のクリーニングが効果的に行える。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。