特開2015-221466(P2015-221466A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2015-221466シールリング組付装置及びシールリング組付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-221466(P2015-221466A)
(43)【公開日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】シールリング組付装置及びシールリング組付方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/02 20060101AFI20151113BHJP
【FI】
   B23P19/02 G
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-106353(P2014-106353)
(22)【出願日】2014年5月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】森本 有香
(72)【発明者】
【氏名】村口 浩二
(72)【発明者】
【氏名】矢野 健太
【テーマコード(参考)】
3C030
【Fターム(参考)】
3C030BB20
3C030BC04
3C030BC19
3C030CC07
(57)【要約】
【課題】嵌合不良が起こり難いシールリング組付技術を提供することを課題とする。
【解決手段】図(a)に示すように、筒部33にシールリング70が保持されている。一方の端部71に内径側が外径側より突出する第1段差73が設けられ、他方の端部に外径側が内径側より突出する第2段差74が設けられている。まず、一方の端部に第1移動爪51が当接し、一方の端部71を下げ始める。図(b)に示すように、シールリング70の一方の端部71が環状溝24に嵌る。このときには、シールリング70の他方の端部72は環状溝24の上方にあり、最終移動爪53で押し下げられる。図(c)に示すように、第1段差73へ第2段差74が重なるようにして、シールリング70の他方の端部72が環状溝24に嵌る。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの外周に設けられている環状溝に、合口で分断されているシールリングを組付けるシールリング組付装置において、
前記シールリングは、一方の端部に内径側が外径側よりも突出する第1段差を有し、他方の端部に外径側が内径側よりも突出する第2段差を有しており、
前記シールリング組付装置は、
前記ワークを支えるワーク支持部材と、
前記外周と同じ外径の筒部を有し、この筒部に組付け前の前記シールリングを保持すると共に前記ワーク支持部材で支えられている前記ワークに当接されるシールリング保持部材と、
このシールリング保持部材で保持されている前記シールリングに当接する移動爪と、
この移動爪を前記シールリング保持部材から前記ワークへ移動する爪移動機構と、
前記環状溝に前記シールリングが嵌る位置で前記移動爪の移動を終わらせるストッパーと、を備え、
前記移動爪は、前記環状溝を囲うように配置され第1移動爪で始まり最終移動爪で終わる複数個の爪からなり、前記第1移動爪が最初に前記シールリングの一方の端部に当接し前記一方の端部の移動を開始し、前記最終移動爪が最後に前記シールリングの前記他方の端部に当接し前記他方の端部の移動を開始するように、前記複数の爪が移動方向に相対差をおいて配置されていることを特徴とするシールリング組付装置。
【請求項2】
前記移動方向と直交する方向に移動して前記環状溝へ前記シールリングを押圧する抑え爪を更に備えていることを特徴とする請求項1記載のシールリング組付装置。
【請求項3】
前記抑え爪は、前記移動爪の各々の近傍に設けられていることを特徴とする請求項2記載のシールリング組付装置。
【請求項4】
前記シールリング保持部材は、1本の前記シールリングを保持した状態でこのシールリングを前記ワークの近傍まで運搬する運搬部材を兼ねていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のシールリング組付装置。
【請求項5】
シールリングは、一方の端部に内径側が外径側よりも突出する第1段差を有し、他方の端部に外径側が内径側よりも突出する第2段差を有しており、ワークの外周に設けられている環状溝に、前記シールリングを組付けるシールリング組付方法であって、
前記外周と同じ外径の筒部を有するシールリング保持部材と、前記環状溝を囲うように配置され第1移動爪で始まり最終移動爪で終わる複数個の爪からなる移動爪と、これらの移動爪を移動する爪移動機構と、前記環状溝に前記シールリングが嵌る位置で前記移動爪の移動を終わらせるストッパーとを準備する工程と、
ワーク支持部材にワークをセットするワークセット工程と、
前記シールリング保持部材に前記シールリングを保持させるシールリング保持工程と、
前記筒部がワークの外周と連続するようにして前記シールリング保持部材を前記ワークに当接する当接工程と、
前記第1移動爪で前記シールリングの一方の端部を移動し前記環状溝に嵌めるシールリング一方の端部嵌め工程と、
この後に、前記最終移動爪で前記シールリングの他方の端部を移動し前記環状溝に嵌めるシールリング他方の端部嵌め工程とからなり、
前記環状溝に嵌められた前記第1段差に、後から前記第2段差を重ね合わせるようにしたことを特徴とするシールリング組付方法。
【請求項6】
前記シールリングは、自己復元性に乏しい軟質材料からなることを特徴とする請求項5記載のシールリング組付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの外周に設けられている環状溝に、合口で分断されているシールリングを組付けるシールリング組付技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図8はCVT変速機の要部を示す図であり、図8(a)に示すように、プーリ軸101に固定プーリ102が一体形成され、プーリ軸101に軸方向移動可能に可動プーリ103が支持されている。可動プーリ103は、プーリ軸101に固定されるカップ104に収納されている。カップ104と可動プーリ103で囲われた空間が、油室105となる。
【0003】
油室105の油圧を高めると、可動プーリ103が固定プーリ102に接近するように付勢される。この付勢によりベルト106は、巻付け半径が増大する方向へ押される。
結果、図8(b)に示すように、可動プーリ103が固定プーリ102に十分に近づき、ベルト106の巻付け半径が大きくなる。油圧を下げると、図8(a)に戻る。
【0004】
油室105内の油が外へ漏れないように、可動プーリ103の外周にシールリング107が嵌められ、このシールリング107の外周面がカップ104に当接される。
シールリング107は、従来、人手で環状溝へ嵌められてきた。
作業能率の向上と省力化との要求から、近年、嵌め込み作業の自動化が求められ、そのための装置が各種提案されている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0005】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図9は従来のシールリング組付装置の基本構成を説明する図であり、環状溝111を有するワーク112にカム状ガイド113が載せられ、このカム状ガイド113にストッカ114が載せられる。このストッカ114にはシールリング107が複数本所定ピッチで保持されている。
【0006】
一番下のシールリング107が一本取出しアーム116でカム状ガイド113へ落とされる。次に、リング押し込み部材117、117が、カム状ガイド113にあるシールリング107の上面を押し下げる。シールリング107は、カム状ガイド113で案内されつつ下降する。最終的にシールリング107は、環状溝111へ案内されて嵌る。
【0007】
ところで、シールリング107は、自己復元性に乏しい軟質材料で造られ、図10(a)に示すように、一方の端部に内径側が外径側よりも突出する第1段差118を有し、他方の端部に外径側が内径側よりも突出する第2段差119を有している。
図10(b)に示すように、第1段差118に第2段差119が嵌ると、嵌合は良好となる。
【0008】
ところで、希にではあるが、図10(c)に示すように、第2段差119の外面に第1段差118の内面が当たることがある。これでは、嵌合は不良である。
また、図10(d)に示すように、第1段差118の先端面に第2段差119の先端面が当たることがある。これも嵌合不良となる。
【0009】
嵌合不良の場合は、人手等で嵌合を修正する必要がある。しかし、シールリング107は、元の形状に戻り難い材料であるため、修正作業は容易でない。
すなわち、従来の装置では、嵌合不良がある確率で発生するため、嵌合の良否を判別する工程と、不良を是正する修正工程が不可欠となる。
これらの工程を嵌合作業工程に加えると、生産性が低下すると共に設備コストが嵩む。
【0010】
そのため自動化を促すためには、嵌合不良が起こらないか、起こっても発生頻度がごく僅かであるようなシールリング組付技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2013−144333公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、嵌合不良が起こり難いシールリング組付技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、ワークの外周に設けられている環状溝に、合口で分断されているシールリングを組付けるシールリング組付装置において、
前記シールリングは、一方の端部に内径側が外径側よりも突出する第1段差を有し、他方の端部に外径側が内径側よりも突出する第2段差を有しており、
前記シールリング組付装置は、
前記ワークを支えるワーク支持部材と、
前記外周と同じ外径の筒部を有し、この筒部に組付け前の前記シールリングを保持すると共に前記ワーク支持部材で支えられている前記ワークに当接されるシールリング保持部材と、
このシールリング保持部材で保持されている前記シールリングに当接する移動爪と、
この移動爪を前記シールリング保持部材から前記ワークへ移動する爪移動機構と、
前記環状溝に前記シールリングが嵌る位置で前記移動爪の移動を終わらせるストッパーと、を備え、
前記移動爪は、前記環状溝を囲うように配置され第1移動爪で始まり最終移動爪で終わる複数個の爪からなり、前記第1移動爪が最初に前記シールリングの一方の端部に当接し前記一方の端部の移動を開始し、前記最終移動爪が最後に前記シールリングの前記他方の端部に当接し前記他方の端部の移動を開始するように、前記複数の爪が移動方向に相対差をおいて配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明では、移動方向と直交する方向に移動して環状溝へシールリングを押圧する抑え爪を更に備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明では、抑え爪は、移動爪の各々の近傍に設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明では、シールリング保持部材は、1本のシールリングを保持した状態でこのシールリングをワークの近傍まで運搬する運搬部材を兼ねていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る発明では、シールリングは、一方の端部に内径側が外径側よりも突出する第1段差を有し、他方の端部に外径側が内径側よりも突出する第2段差を有しており、ワークの外周に設けられている環状溝に、前記シールリングを組付けるシールリング組付方法であって、
前記外周と同じ外径の筒部を有するシールリング保持部材と、前記環状溝を囲うように配置され第1移動爪で始まり最終移動爪で終わる複数個の爪からなる移動爪と、これらの移動爪を移動する爪移動機構と、前記環状溝に前記シールリングが嵌る位置で前記移動爪の移動を終わらせるストッパーとを準備する工程と、
ワーク支持部材にワークをセットするワークセット工程と、
前記シールリング保持部材に前記シールリングを保持させるシールリング保持工程と、
前記筒部がワークの外周と連続するようにして前記シールリング保持部材を前記ワークに当接する当接工程と、
前記第1移動爪で前記シールリングの一方の端部を移動し前記環状溝に嵌めるシールリング一方の端部嵌め工程と、
この後に、前記最終移動爪で前記シールリングの他方の端部を移動し前記環状溝に嵌めるシールリング他方の端部嵌め工程とからなり、
前記環状溝に嵌められた前記第1段差に、後から前記第2段差を重ね合わせるようにしたことを特徴とする。
【0018】
請求項6に係る発明では、シールリングは、自己復元性に乏しい軟質材料からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明では、複数の移動爪が移動方向に相対差を確保しつつ配置されている。先ず、第1移動爪がシールリングの一方の端部に当接し一方の端部の移動を開始する。最後に、最終移動爪がシールリングの他方の端部に当接し他方の端部の移動を開始する。
環状溝にシールリングの一方の端部が嵌り、最後にシールリングの他方の端部が嵌められる。
環状溝に嵌っている第1段差に、外から第2段差を重ねることができ、図10(c)、(d)で説明した嵌合不良は、起こらない又は起こり難い。
【0020】
すなわち、本発明によれば、嵌合不良が起こり難いシールリング組付装置が提供され、生産性の向上が図れる。併せて、嵌合の良否判定や、修正工程が不要となるため、設備コストの低減が図れる。
【0021】
請求項2に係る発明では、移動方向と直交する方向に移動して環状溝へシールリングを押圧する抑え爪を更に備えている。抑え爪で押圧することで、環状溝へ確実にシールリングを嵌めることができる。
【0022】
請求項3に係る発明では、抑え爪は、移動爪の各々の近傍に設けられている。抑え爪は移動爪から離れた部位に配置することは差し支えないが、抑え爪を支持する部材が別途必要になる。
抑え爪を移動爪の近傍に配置することで、共通の部材で、抑え爪と移動爪を支持させることができ、シールリング組付装置の構造を簡単にすることができる。
【0023】
請求項4に係る発明では、シールリング保持部材は、1本のシールリングを保持した状態でこのシールリングをワークの近傍まで運搬する運搬部材を兼ねている。図9で説明したように、従来の装置では、カム状ガイドとストッカが不可欠であった。本発明では、カム状ガイドとストッカを、一部品(シールリング保持部材)に集約した。よって、シールリング組付装置の構造をより簡単に且つ小型にすることができる。
【0024】
請求項5に係る発明は、第1移動爪でシールリングの一方の端部を移動し環状溝に嵌める工程と、この後に、最終移動爪でシールリングの他方の端部を移動し環状溝に嵌める工程とを有し、環状溝に嵌められた第1段差に、後から第2段差を重ね合わせるようにした。
【0025】
すなわち、本発明によれば、請求項1と同様に嵌合不良が起こり難いシールリング組付方法が提供され、生産性の向上が図れる。併せて、嵌合の良否判定や、修正工程が不要となるため、設備コストの低減が図れる。
【0026】
請求項6に係る発明では、シールリングは、自己復元性に乏しい軟質材料からなる。本発明によれば、修正工程が不要であるため、元の形状に戻り難い軟質材料からなるシールリングに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係るシールリング組付装置の基本構成図である。
図2図1の2部拡大図である。
図3】複数の移動爪の配置を説明する図である。
図4】第1移動爪の作用を説明する図である。
図5】最終移動爪の作用を説明する図である。
図6】抑え爪の作用を説明する図である。
図7】シールリングの移動形態を説明する図である。
図8】CVT変速機の要部を示す図である。
図9】従来のシールリング組付装置の基本構成図である。
図10】第1段差と第2段差を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0029】
図1に示すように、シールリング組付装置10は、ベース11上に設けられワーク20を支える筒状のワーク支持部材13と、釣り鐘状のシールリング保持部材30と、ベース11から上へ延びているポスト40と、このポスト40に貼られ鉛直に配置されるレール41と、このレール41に移動可能に嵌っているスライダ42と、このスライダ42から水平に延びている昇降板43と、この昇降板43とポスト40との間に渡されスライダ42をレール41に沿って昇降する爪移動機構44と、昇降板43に上下移動可能に取付けられるセンタロッド45と、このセンタロッド45の下端に取付けられるテーパピン46と、昇降板43に吊された爪支持ロッド47、47と、これらの爪支持ロッド47、47の下部に取付けられているL字金具48、49と、一方のL字金具48に取付けられる第1移動爪51及び抑え爪52と、他方のL字金具49に取付けられる最終移動爪53及び抑え爪52と、L字金具48、49の真下に位置するように配置されサブベース14に取付けられるストッパー54、54とを備えている。
【0030】
ワーク20は、例えば、固定プーリ21を一体的に備えているプーリ軸22と、このプーリ軸22に嵌っている可動プーリ23とからなり、可動プーリ23の外周に環状溝24を備えている。
また、シールリング保持部材30は、上底部31と、この上底部31の周辺から下がり下ほど外径が大きくなるテーパ部32と、このテーパ部32から下がる筒部33からなり、この筒部33の外径は可動プーリ23の外周の径と同じである。上底部31はプーリ軸22の一方の端部に設けられているセンタ穴25に嵌合するセンタピン34を下面に備えると共に上面にセンタ凹部35を備えている。
【0031】
なお、最終移動爪53は、後述する図3に示すように第1移動爪51の近くに配置されるが、図1では理解を容易にするために離して示した。
また、爪移動機構44は、エアシリンダ、油圧シリンダ、電動シリンダが好適であるが、ピニオン・ラックであってもよく、種類、形式は問わない。
【0032】
センタロッド45は、昇降板43に固定されたセンタスリーブ55に収納されている。センタスリーブ55の案内作用により、センタロッド45は横に揺れることなく上下に移動する。センタロッド45の上端はナット56を介してセンタスリーブ55の上面に掛かっている。昇降板43の下面とテーパピン46の上面との間にセンタスプリング57が配置されるため、センタロッド45は常時下方へ付勢される。
【0033】
爪支持ロッド47は、昇降板43に固定されたサイドスリーブ58に収納されている。サイドスリーブ58の案内作用により、爪支持ロッド47は横に揺れることなく上下に移動する。爪支持ロッド47の上端はナット59を介してサイドスリーブ58の上面に掛かっている。サイドスリーブ58の下面とL字金具48(又は49)の上面との間にサイドスプリング61が配置されるため、爪支持ロッド47は常時下方へ付勢される。
【0034】
L字金具48、49の高さは、ナット59を捻ることで調節できる。第1移動爪51を支えるL字金具48に対して最終移動爪53を支えるL字金具49は、差Lだけ上方に配置される。すなわち、L字金具48とL字金具49は、昇降板43の移動方向に相対差(高低差)Lをおいて配置される。
【0035】
図2に示すように、L字金具48の縦壁部62に水平にエアシリンダ63が取付けられ、このエアシリンダ63のピストンロッド64にL字形の抑え爪52が取付けられている。エアシリンダ63が前進動作をすると、抑え爪52は想像線で示す位置まで前進する。
【0036】
また、ピストンロッド64より上方位置にて縦壁部62に水平ロッド65が取付けられ、この水平ロッド65の先端にクランク断面状の第1移動爪51が取付けられ、水平ロッド65の基部が大径部66とされている。第1移動爪51と縦壁部62の間に圧縮ばね67が配置され、この圧縮ばね67の作用で、第1移動爪51は前方へ付勢される。
【0037】
このときに、大径部66が抜け止め作用を発揮するため、水平ロッド65が縦壁部62から抜ける心配はない。また、第1移動爪51に縦壁部62へ向かう外力(水平力)が加わると、圧縮ばね67が縮まり、大径部66が縦壁部62から想像線で示すように後退し、第1移動爪51も一緒に後退する。
【0038】
以上の構成からなる移動爪51、53は、3個以上配置される。
図3は展開図的な配置図であり、第1移動爪51、第2移動爪51B、第3移動爪51C、第4移動爪51D、第5移動爪51E、最終移動爪53が、この順に60°ピッチで配置されている。すなわち、最終移動爪53は第1移動爪51の隣に配置される。
【0039】
第2〜最終移動爪51B〜53を支持する部材の構成は図2と同様であるため、支持構造の説明は省略する。
なお、移動爪51、51B〜51E、53の個数は、この例では6個であるが、3個以上であれば任意に設定できる。
【0040】
第1移動爪51に対して第2移動爪51Bが少し高くなり、第2移動爪51Bに対して第3移動爪51Cが少し高くなるように、第1移動爪51から最終移動爪53まで螺旋階段状に配置されている。第1移動爪51を支えるL字金具48と、最終移動爪53を支えるL字金具49との相対差(高低差)は、上述したようにLに設定される。
【0041】
以上の構成からなるシールリング組付装置10の作用を次に説明する。
先ず、図1に示すようなシールリング組付装置10を準備する(準備工程)。
次に、ロボットなどの搬送手段を用いて、ワーク20を、ワーク支持部材13にセットする(ワークセット工程)。
一方、別の場所でシールリング保持部材30に、1本のシールリング70を保持させる(シールリング保持工程)。1本のシールリング70が保持されているシールリング保持部材30を、ロボットなどの搬送手段を用いて、可動プーリ23上に導く。
【0042】
そして、図4に示すように、筒部33がワーク(可動プーリ23)の外周と連続するようにしてシールリング保持部材30を可動プーリ23に載せるようにして当接する(当接工程)。
このときに、センタピン34がプーリ軸22のセンタ穴25に嵌るため、ワーク20の中心にシールリング保持部材30の中心が合致する。
【0043】
この状態で、昇降板(図1、符号43)が下げられる。
すると、図4にて、テーパピン46がセンタ凹部35に嵌り、センタスプリング57がテーパピン46を下方へ付勢するため、シールリング保持部材30は浮き上がる心配がない。よって、以降の工程中に、ワーク20に対してシールリング保持部材30が位置決めされたままとなる。
【0044】
並行して、第1移動爪51は圧縮ばね67で付勢されているため、シールリング保持部材30のテーパ部32に摺接する。更に下がった第1移動爪51はシールリング70の一方の端部71に当たる。このときには、最終移動爪53は、まだシールリング70の他方の端部72に当たらない。
【0045】
さらに第1移動爪51を下げると、図5に示すように、シールリング70の一方の端部71が筒部33を滑り降り、可動プーリ23の外周に移り、環状溝24に嵌る(シールリング一方の端部嵌め工程)。L字金具48がストッパー54に当たるため、第1移動爪51の下降動作は終了する。図1に示す昇降板43は引き続き下がる。サイドスプリング61が縮むため、昇降板43の下降は円滑に行われる。
【0046】
遅れながら最終移動爪53が下がる。シールリング70の他方の端部72は、筒部33を滑り降り、可動プーリ23の外周に移るが、環状溝24にはまだ嵌らない。
さらに最終移動爪53を下げると、図6に示すように、シールリング70の他方の端部72は環状溝24に嵌る(シールリング他方の端部嵌め工程)。
L字金具49がストッパー54に当たるため、最終移動爪53の下降動作は終了する。このタイミングで全ての抑え爪52を前進させることで、嵌合を確実にする。
【0047】
なお、抑え爪52を前進させる順序は、全て同時でもよいが、図3における0°の位置に存在する第1移動爪51と同位相に存在する抑え爪52を初めに前進させ、次に60°の位置に存在する抑え爪52を前進させるように順々に前進させ、最終的には、最終移動爪53と同位相に存在する抑え爪52を前進させて、抑え爪52の前進動作は終了する。すなわち、シールリング70の一方の端部71に対応した抑え爪52から前進動作を始めて、他方の端部72に対応した抑え爪52で終わるようにする。このことで嵌合をより確実にする。
【0048】
次に、シールリング70の動きに注目して第1・最終移動爪51、53の作用を説明する。
図7(a)に示すように、筒部33にシールリング70が保持されている。一方の端部71に内径側が外径側より突出する第1段差73が設けられ、他方の端部72に外径側が内径側より突出する第2段差74が設けられている。まず、一方の端部71に第1移動爪51が当接し、一方の端部71を下げ始める。
【0049】
図7(b)に示すように、シールリング70の一方の端部71が環状溝24に嵌る。
このときには、シールリング70の他方の端部72は、最終移動爪53で押し下げられつつ環状溝24の上方にある。さらに最終移動爪53で他方の端部72を下げると第1段差73へ第2段差74が、図面手前から奥へ移動する。
結果、図7(c)に示すように、第1段差73へ第2段差74が重なるようにして、シールリング70の他方の端部72が環状溝24に嵌る。よって、図10(c)、図10(d)で述べたような嵌合不良が発生する心配はなく、発生したとしても、発生頻度はごく僅かである。
【0050】
なお、シールリング70が、軟質材料で造られる場合は、自己復元性が乏しい。仮に、図10(c)、図10(d)で述べたような嵌合不良が発生すると、人手で図10(a)の形態に戻し、図10(b)のようにするが、この修正作業は、シールリング70が元の形状に戻り難いため、容易ではなく、時間が掛かる。その上、シールリング70を傷める心配もある。
この点、本発明によれば、上述したように、嵌合不良が発生しないので、修正作業が不要となり、生産性の向上を容易に高めることができると共にシールリングを傷める心配もない。
【0051】
尚、ワーク20は、CVT用可動プーリ23の他、シリンダに嵌るピストンであってもよく、要は、外周に環状溝を有し、この環状溝に1箇所が分断されているシールリング70を組付けるものであれば、種類は問わない。
【0052】
また、シールリング組付装置10は、実施例ではシールリング70が上から下へ移動する縦型装置としたが、シールリング70が水平に移動する横型装置又は斜めに移動する装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、CVT用可動プーリの環状溝にシールリングを組付けるシールリング組付技術に好適である。
【符号の説明】
【0054】
10…シールリング組付装置、13…ワーク支持部材、20…ワーク、23…可動プーリ、24…環状溝、30…シールリング保持部材、33…筒部、44…爪移動機構、51…移動爪(第1移動爪)、53…移動爪(最終移動爪)、52…抑え爪、54…ストッパー、70…シールリング、71…シールリングの一方の端部、72…シールリングの他方の端部、73…第1段差、74…第2段差、L…相対差。
図1
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図10