【解決手段】管本体X1と、管本体X1の外側に連接された板状部分Y1と、を有する発泡成形体であって、発泡成形体の発泡倍率が2倍未満であり、管本体X1における板状部分Y1が連接された箇所の周囲の肉厚Aと、板状部分Y1の肉厚Bと、の関係である肉厚B/肉厚Aの値が2.82未満であるブロー成形により成形された、板状部分を連接させた管状の発泡成形体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
管状の発泡成形体は、例えば、
図1に示すように、溶融状態の発泡樹脂200を分割金型201a,201bにより所定の押圧力Zで型締めして成形している。管本体X8となる部分については、溶融状態の発泡樹脂200を所定のブロー圧によりキャビティ202a,202bに押圧することになる。また、フランジ部などの板状部分Y8となる部分については、溶融状態の発泡樹脂200をコンプレッションして板状部分Y8の厚さ方向に所定の押圧力Zで押圧され、分割金型201a,201bのキャビティ202a,202b間の厚みTまで圧縮することになる。
【0006】
図1に示すように、フランジ部などの板状部分Y8をダクトなどの管本体X8に連接させて設ける場合は、この板状部分Y8を他の部材と確実に接続させるように、所望の構造的強度が要求されることが多い。このため、分割金型201a,201bでの型締めの際に板状部分Y8を押圧し、板状部分Y8の発泡樹脂内の気泡を押し潰すことになる。
【0007】
管本体X8の内側には中空部を有し、空間が空いているため、
図2に示すように、板状部分Y8を強く押圧し過ぎると、板状部分Y8の発泡樹脂内の気泡が型締めによる押圧力Zにより、管本体X8に向けて移動することになる。このため、分割金型201a,201bによる型締めの結果、板状部分Y8が連接された管本体X8の部分に気泡が移動し、その管本体X8の部分に気泡が多く集まり易くなり、その気泡により、板状部分Y8が連接された管本体X8の内側に風船形状の気泡81が形成されてしまう場合がある。
【0008】
風船形状の気泡81が発生すると、管本体X8の内側形状が設計とは異なる形状となってしまう。その結果、内部を通過する流体の流量効率が低下してしまうことになる。また、異音や振動を引き起こしてしまうことになる。風船形状の気泡81は、発泡倍率が低倍率、高倍率に関わらず発生する。
【0009】
なお、
図2に示すような風船形状の気泡81を発生させないようにするには、分割金型201a,201bでの型締めの際に、板状部分Y8への押圧力Zを弱くしたり、
図1に示す分割金型201a,201bのキャビティ202a,202b間の厚みTを厚くし、板状部分Y8が連接された管本体X8の部分に気泡が移動しないようにすれば良い。
【0010】
しかし、板状部分Y8への押圧力Zを弱くしたり、キャビティ202a,202b間の厚みTを厚くしたりして、
図3に示すように、溶融状態の発泡樹脂200をコンプレッションし、板状部分Y8を構成する部分の発泡樹脂200同士を溶着したとしても、板状部分Y8を構成する部分の発泡樹脂200同士が所望の溶着状態で溶着せず、例えば、
図3に示す状態で、所定のブロー圧でブロー成形を行った際に、
図4に示すように、管本体X8において板状部分Y8が連接された箇所の内面がブロー圧Pにより引き裂かれ、管本体X8の内面側から板状部分Y8側に向かって発泡樹脂200同士の間に隙間82が形成されてしまう場合がある。なお、
図4に示す隙間82は、板状部分Y8を構成する部分の発泡樹脂200が成形収縮することによっても発生する。
図4に示すように、管本体X8の内面に隙間82が形成されてしまうと、
図2に示す風船形状の気泡81と同様に、管本体X8の内側形状が設計とは異なる形状となってしまい、内部を通過する流体の流量効率が低下してしまうことになる。また、異音や振動を引き起こしてしまうことになる。
【0011】
また、板状部分Y8を構成する部分の発泡樹脂200同士が所望の溶着状態で溶着しないと、例えば、
図5に示すように、板状部分Y8を構成する内部で発泡樹脂200同士の間に空洞83が形成されてしまう場合がある。板状部分Y8を構成する内部に発生する空洞83は、発泡樹脂200同士が未溶着状態のままで形成されたり、発泡樹脂200同士が一旦溶着し、その後、発泡樹脂200同士が部分的に剥がれることで形成されたりする。
図5に示す管本体X8の内面は、
図2に示す風船形状の気泡81や
図4に示す隙間82が発生していないため、内部を通過する流体の流量効率が低下してしまったり、異音や振動を引き起こしてしまったりする問題はない。但し、板状部分Y8は、他の部材と接続する部分であるため、板状部分Y8にボルト等を挿入するための貫通孔を形成し、その貫通孔にボルト等を貫通させてナットで締め付けて他の部材と接続することになる。このため、貫通孔を形成する箇所に空洞83が発生していると、貫通孔の周囲の強度が弱くなったり、板状部分Y8を他の部材と接続した際にがたつきが発生したりすることになる。この貫通孔周囲の強度低下や、がたつきが発生する問題は、
図4に示す隙間82が形成された場合も発生する。なお、発泡樹脂200同士が未溶着状態のままで形成された空洞83は、生産時に、板状部分Y8を押したりすることで、板状部分Y8の内部に空洞83が発生していると判定することも可能である。しかし、発泡樹脂200同士が一旦溶着し、その後、発泡樹脂200同士が部分的に剥がれることで形成される空洞83は、生産時に、板状部分Y8を押したりしても、板状部分Y8の内部に空洞83が発生していると判定することは困難である。
【0012】
また、
図2に示す風船形状の気泡81や、
図4に示す隙間82が発生した場合は、管本体X8の内面を検査することで、風船形状の気泡81や、隙間82が発生している不良品の発泡成形体を取り除くことができる。
【0013】
しかし、
図5に示す空洞83は、板状部分Y8の内部に形成されるため、管本体X8の内面を検査しても発見することができない。このため、
図5に示す空洞83が板状部分Y8の内部に形成することのない発泡成形体を成形する必要がある。
【0014】
なお、
図2、
図4、
図5に示す形状の問題を回避するには、例えば、
図6に示すように、板状部分Y8の間に、管本体X8の中空部84と一体に連通した中空部85を形成する方法がある。しかし、
図6に示す構成は、板状部分Y8の間に中空部85が形成されるため、板状部分Y8に所定の構造的強度を持たせることが難しい。また、板状部分Y8にボルト等を挿入するための貫通孔を形成する際に、板状部分Y8がへこんでしまい、貫通孔を形成し難くなっている。また、板状部分Y8の中空部85は、管本体X8の中空部84と一体に連通しているため、板状部分Y8に貫通孔を形成すると、管本体X8内部の空気が貫通孔から逃げてしまう場合がある。
【0015】
このため、
図1に示すように、発泡樹脂200同士が所望の溶着状態で溶着した板状部分Y8が管本体X8に連接された発泡成形体を成形する必要がある。
【0016】
なお、上述した
図2に示す風船形状の気泡81の発生を防止する方法として、特許文献1では、板状部分における管本体との連接面近傍に凹部を形成し、管本体の部分への気泡の移動を堰き止め、風船形状の気泡81の発生を防止することにしている。
【0017】
しかし、特許文献1の方法では、板状部分における管本体との連接面近傍に凹部を形成する必要がある。また、特許文献1の方法は、風船形状の気泡81の発生を防止することを目的としており、
図4に示す隙間82の発生や、
図5に示す空洞83の発生を防止することについては何ら考慮されたものではない。
【0018】
本発明の目的は、管本体と、管本体の外側に連接された板状部分と、を有する発泡成形体において、板状部分の内部に空洞が発生することのない発泡成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明にかかる発泡成形体は、
管本体と、前記管本体の外側に連接された板状部分と、を有する発泡成形体であって、
前記発泡成形体の発泡倍率が2倍未満であり、
前記管本体における前記板状部分が連接された箇所の周囲の肉厚Aと、前記板状部分の肉厚Bと、の関係である前記肉厚B/前記肉厚Aの値が2.82未満である、ことを特徴とする。
また、本発明にかかる発泡成形体は、
管本体と、前記管本体の外側に連接された板状部分と、を有する発泡成形体であって、
前記発泡成形体の発泡倍率が2倍以上であり、
前記管本体における前記板状部分が連接された箇所の周囲の肉厚Aと、前記板状部分の肉厚Bと、の関係である前記肉厚B/前記肉厚Aの値が2.88未満である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、板状部分の内部に空洞が発生することのない発泡成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(本発明の一態様にかかる発泡成形体1の概要)
まず、
図7〜
図9を参照しながら、本発明の一態様にかかる発泡成形体1の概要について説明する。
図7〜
図9は、本発明の一態様にかかる発泡成形体1の構成例を示す図である。
【0023】
本発明の一態様にかかる発泡成形体1は、
図9に示すように、管本体X1と、管本体X1の外側に連接された板状部分Y1と、を有する発泡成形体である。
【0024】
本発明の一態様にかかる発泡成形体1は、発泡成形体1の発泡倍率が2倍未満である場合は、管本体X1における板状部分Y1が連接された箇所の周囲の肉厚Aと、板状部分Y1の肉厚Bと、の関係である肉厚B/肉厚Aの値が2.82未満であることを特徴とする。
【0025】
また、発泡成形体1の発泡倍率が2倍以上である場合は、管本体X1における板状部分Y1が連接された箇所の周囲の肉厚Aと、板状部分Y1の肉厚Bと、の関係である肉厚B/肉厚Aの値が2.88未満であることを特徴とする。
【0026】
本発明の一態様にかかる発泡成形体1は、発泡成形体1の発泡倍率が2倍未満である場合は、肉厚B/肉厚Aの値が2.82未満であり、発泡成形体1の発泡倍率が2倍以上である場合は、肉厚B/肉厚Aの値が2.88未満であることで、
図5に示すように、板状部分の内部に空洞83が発生することのない発泡成形体1を得ることができる。また、
図4に示すように、管本体の内面に隙間82が発生することのない発泡成形体1を得ることができる。以下、添付図面を参照しながら、本発明の一態様にかかる発泡成形体1の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態においては、発泡成形体1としてインパネダクト1を例に説明する。
【0027】
<インパネダクト1の構成例>
まず、
図7〜
図9を参照しながら、本実施形態のインパネダクト1の構成例について説明する。
図7は、インパネダクト1の概略平面図であり、エアコンユニット(図示せず)に接続するための供給部105を有する側のインパネダクト1を示す。
図8は、
図7に示す嵌め合い部102d周辺の概略平面図を示し、
図9は、
図8のD−D’断面図を示す。
【0028】
本実施形態のインパネダクト1は、エアコンユニットから供給される冷暖風を所望の部位へ流通させるための軽量なインパネダクト1である。
【0029】
本実施形態のインパネダクト1は、ポリプロピレン系樹脂からなり、好ましくは、1〜20wt%のポリエチレン系樹脂及び/又は5〜40wt%の水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを混合させたブレンド樹脂で構成する。この場合、−10℃における引張破壊伸びが40%以上で、かつ、常温時における引張弾性率が1000kg/cm
2以上であることが好ましい。更に、−10℃における引張破壊伸びが100%以上であることが好ましい。なお、本実施形態で用いる各用語について以下に定義する。
【0030】
発泡倍率:後述する本実施形態の成形方法で用いた発泡樹脂の密度を、本実施形態の成形方法により得られたインパネダクト1の管本体X1(
図9参照)における見かけ密度で割った値を発泡倍率とした。
引張破壊伸び:後述する本実施形態の成形方法により得られたインパネダクト1の管本体X1を切り出し、−10℃で保管後に、JIS K−7113に準じて2号形試験片として引張速度を50mm/分で測定を行った値を引張破壊伸びとした。
引張弾性率:後述する本実施形態の成形方法により得られたインパネダクト1の管本体X1を切り出し、常温(例えば、23℃)で、JIS K−7113に準じて2号形試験片として引張速度を50mm/分で測定を行った値を引張弾性率とした。
【0031】
本実施形態のインパネダクト1は、
図7に示すように、エアコンユニット(図示せず)に接続するための供給部105が管部101(101a〜101d)の一端に設けられている。また、嵌め合い部102(102a〜102d)が管部101(101a〜101d)の他端に設けられる。また、管部101(101a〜101d)、供給部105、嵌め合い部102(102a〜102d)から構成される管本体X1(
図9参照)にフランジ部103(103a〜103g)が連接されている。
【0032】
本実施形態のインパネダクト1は、発泡倍率が1.3倍以上で複数の気泡を有する独立気泡構造(例えば、独立気泡率が70%以上)で構成される。また、インパネダクト1の平均肉厚は、0.5mm以上である。
【0033】
本実施形態において平均肉厚は、成形品の中空延伸方向に約100mmの等間隔で測定した肉厚の平均値を意味する。中空の成形品であれば、パーティングラインを介して溶着される2つの壁部の各々においてそれぞれパーティングライン90°方向の位置の肉厚を測定し、その測定した肉厚の平均値を意味する。但し、測定位置に、上述したフランジ部103などを含まないようにしている。
【0034】
管本体X1の内側は、流体を流通させる流路を有するように構成され、エアコンユニットの冷暖風を流通させられるようになっている。
【0035】
供給部105の開口部111から管本体X1の内側に供給される流体の流路は、
図7に示すように、流路a,b−1,b−2,cの4本に分けられる。こうした供給部105の開口部111から管本体X1の内側に供給された流体が、流路aでは嵌め合い部102aの開口部から流出する。また、流路b−1では嵌め合い部102bの開口部から流出する。また、流路b−2では嵌め合い部102cの開口部から流出する。また、流路cでは嵌め合い部102dの開口部から流出する。
【0036】
インパネダクト1における流路a周りの構成としては、管部101aの一端に供給部105が設けられ、他端に嵌め合い部102aが設けられている。また、管部101a、供給部105、嵌め合い部102aから構成される管本体X1にフランジ部103a、103eが連接されている。フランジ部103aには、嵌め合い部102aにより接続される他の管状部材に対して固定するための固定用孔107aが開設される。この固定用孔107aに不図示のボルトを貫通させてナットで締め付けることにより、他の管状部材に対してインパネダクト1を固定することができる。また、フランジ部103eにも固定用孔107eが開設される。
【0037】
インパネダクト1における流路b−1周りの構成としては、管部101bの一端に供給部105が設けられ、他端に嵌め合い部102bが設けられている。また、管部101b、供給部105、嵌め合い部102bから構成される管本体X1にフランジ部103bが連接されている。フランジ部103bには、嵌め合い部102bにより接続される他の管状部材に対して固定するための固定用孔107bが開設される。
【0038】
また、管部101aと101bとの間の間隔が狭い部分には、強度保持のための橋渡し部104eが、これら管部101a、101bそれぞれに連接されて設けられる。
【0039】
インパネダクト1における流路b−2周りの構成としては、上述した流路b−1周りの構成と同様に構成される。
【0040】
インパネダクト1における流路c周りの構成としては、上述した流路a周りの構成と同様に構成される。
【0041】
管部101bと101cとの間には、フランジ部103gが管部101b、101cそれぞれに連接されて設けられる。フランジ部103gにも固定用孔107gが開設される。
【0042】
本実施形態のインパネダクト1は、
図7に示すように、管本体X1(
図9参照)の外側にフランジ部103(103a〜103g)が連接されている。管本体X1は、管部101(101a〜101d)、供給部105、嵌め合い部102(102a〜102d)から構成される部分を意味する。
【0043】
また、本実施形態のインパネダクト1は、発泡倍率が2倍未満の場合は、
図9に示すように、管本体X1における板状部分Y1が連接された箇所の周囲の肉厚Aと、板状部分Y1の肉厚Bと、の関係である肉厚B/肉厚Aの値が1.40より大きく2.82未満で構成するようにしている。これは、肉厚B/肉厚Aの値が1.40以下になると、発泡倍率が2倍未満のインパネダクト1を成形した際に、
図2に示す風船形状の気泡81が発生する兆候が見られたり、風船形状の気泡81が発生するようになるためである。また、肉厚B/肉厚Aの値が2.82以上になると、
図4に示す隙間82や、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生するためである。
【0044】
肉厚Aは、
図9に示すように、管本体X1において板状部分Y1が連接された箇所αから5mmの範囲L1内の肉厚である。肉厚Bは、
図9に示すように、板状部分Y1の厚み方向の肉厚である。
【0045】
また、本実施形態のインパネダクト1は、発泡倍率が2倍以上の場合は、肉厚B/肉厚Aの値が1.46より大きく2.88未満で構成するようにしている。これは、肉厚B/肉厚Aの値が1.46以下になると、発泡倍率が2倍以上のインパネダクト1を成形した際に、
図2に示す風船形状の気泡81が発生する兆候が見られたり、風船形状の気泡81が発生するようになるためである。また、肉厚B/肉厚Aの値が2.88以上になると、
図4に示す隙間82や、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生するためである。
【0046】
このため、本実施形態のインパネダクト1は、発泡倍率が2倍未満の場合は、肉厚B/肉厚Aの値が1.40より大きく2.82未満で構成し、発泡倍率が2倍以上の場合は、肉厚B/肉厚Aの値が1.46より大きく2.88未満で構成するようにしている。これにより、
図2に示す風船形状の気泡81、
図4に示す隙間82、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生することのないインパネダクト1を得ることができる。
【0047】
なお、インパネダクト1の板状部分Y1は、他の部材と接続する部分であるため、板状部分Y1に所望の構造的強度を持たせることになる。このため、肉厚B/肉厚Aの値が1.80以上であることが好ましく、2.0以上であることが更に好ましい。これにより、肉厚Aに対して肉厚Bを厚くし、板状部分Y1に所望の構造的強度を持たせることができる。なお、板状部分Y1に所望の構造的強度を持たせるためには、肉厚Bは、4.0mm以上に設計することが好ましい。
【0048】
また、本実施形態のインパネダクト1は、嵌め合い部102の開口部100の開口面積を管部101の開口面積よりも大きくしている。管部101の開口面積は、管部101の箇所においてインパネダクト1の流路進行方向と直交する方向に切断した管部101の開口部の面積を意味する。嵌め合い部102の開口部100の開口面積を管部101の開口面積よりも大きくするには、例えば、嵌め合い部102の形状をラッパ形状で構成することで実現可能である。ラッパ形状とは、開口端部に向かうほど、開口面積が大きくなる形状をいう。
【0049】
<インパネダクト1の成形方法例>
次に、
図10〜
図12を参照しながら、本実施形態のインパネダクト1の成形方法例について説明する。
図10は分割金型の開状態、
図11は分割金型の閉状態を分割金型側面から示した図である。
図12は、分割金型の閉状態を2つの分割金型の当接面から分割金型12a側について示した図である。
【0050】
まず、
図10に示すように、発泡パリソンを環状ダイス11より射出し、円筒形状の発泡パリソン13を分割金型12a,12b間に押し出す。
【0051】
次に、分割金型12a,12bを型締めし、
図11に示すように、発泡パリソン13を分割金型12a,12bで挟み込む。これにより、発泡パリソン13を分割金型12a,12bのキャビティ10a,10bに収納させる。
【0052】
次に、
図11、
図12に示すように、分割金型12a,12bを型締めした状態で、分割金型12a,12bに設けられた所定の孔に吹き込み針14と吹き出し針15とを貫通させ、発泡パリソン13に同時に突き刺す。吹き込み針14、吹き出し針15の先端が発泡パリソン13内に入ると、すぐに吹き込み針14から空気等の圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込み、発泡パリソン13の内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧でブロー成形を行う。
【0053】
吹き込み針14は、
図7に示すインパネダクト1の供給部105の開口部111に相当する位置に突き刺し、圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込むための吹き込み口を形成する。また、吹き出し針15は、
図7に示すインパネダクト1の嵌め合い部102(102a〜102d)の開口部100(100a〜100d)それぞれに相当する位置に突き刺し、圧縮気体を発泡パリソン13の内部から外部に吹き出すための吹き出し口を形成する。
【0054】
これにより、吹き込み針14から圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込み、発泡パリソン13の内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧でブロー成形を行うことができる。
【0055】
ブロー圧は、0.5〜3.0kg/cm
2で設定し、好ましくは、0.5〜1.0kg/cm
2で設定する。ブロー圧を3.0kg/cm
2以上に設定すると、発泡パリソン13の肉厚がつぶれ易くなったり、発泡倍率が低下し易くなったりしてしまう。また、ブロー圧を0.5kg/cm
2以下に設定すると、レギュレータ16、排圧レギュレータ17の差圧の調整が難しくなってしまったりする。このため、ブロー圧は、0.5〜3.0kg/cm
2で設定し、好ましくは、0.5〜1.0kg/cm
2で設定する。
【0056】
本実施形態では、吹き込み針14から圧縮気体を発泡パリソン13内に吹き込むと共に、分割金型12a,12bのキャビティ10a,10bから排気を行い、発泡パリソン13とキャビティ10a,10bとの間の隙間をなくし、負圧状態にさせる。これにより、分割金型12a,12b内部のキャビティ10a,10bに収納された発泡パリソン13の内外において圧力差(発泡パリソン13の内部が外部よりも高い圧力を意味する)が設定され、発泡パリソン13は、キャビティ10a,10bの壁面に押圧される。
【0057】
なお、上述した成形工程において、発泡パリソン13の内部に圧縮気体を吹き込む工程と、発泡パリソン13の外部に負圧を発生させる工程と、は同時に行う必要はなく、互いの工程を時間的にずらして行うことも可能である。
【0058】
また、本実施形態では、
図13に示すように、発泡パリソン13を分割金型12a,12bにより押圧力Zで型締めしている。このため、上述のように発泡パリソン13における管本体X1となる部分について所定のブロー圧によりキャビティ10a,10bに押圧すると共に、フランジ部103(103a〜103g)や橋渡し部104(104e,104f)の板状部分Y1となる部分については、厚さ方向に押圧され、分割金型12a,12bのキャビティ10a,10b間の厚みTまで圧縮されることになる。
【0059】
発泡パリソン13における管本体X1となる部分については、上述のように吹き込み針14から空気等の圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込み、発泡パリソン13の内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出す。そして、所定のブロー圧により所定の時間だけ発泡パリソン13をキャビティ10a,10bに押圧し、管本体X1の厚さ方向のキャビティ10a,10b側から5〜8割程度の発泡パリソン13を冷却固化する。その後は、圧縮気体による冷却を行わず、分割金型12a,12bで型締めした状態で残りの溶融状態の発泡パリソン13を自然固化する。
【0060】
吹き込み針14から発泡パリソン13内に冷却のために供給する圧縮気体の温度は、10℃〜30℃に設定し、室温(例えば、23℃)に設定することが好ましい。圧縮気体の温度を室温に設定することで、圧縮気体の温度を調整するための温調設備を設ける必要がないため、インパネダクト1を低コストで成形することができる。また、温調設備を設け、吹き込み針14から発泡パリソン13内に供給する圧縮気体の温度を室温よりも低くした場合は、インパネダクト1の冷却時間を短縮することができる。なお、圧縮気体の温度にもよるが、圧縮気体による冷却時間(印加時間を意味する)は、35秒以下で行うことが好ましい。これにより、管本体X1の厚さ方向のキャビティ10a,10b側から5〜8割程度の発泡パリソン13を冷却固化し、管本体X1の内面側の発泡パリソン13を溶融状態のままにすることができる。その後は、圧縮気体による冷却を行わず、分割金型12a,12bで型締めした状態で溶融状態の残りの発泡パリソン13を自然に固化することができる。
【0061】
本実施形態のインパネダクト1を成形する際に適用可能なポリプロピレン系樹脂としては、230℃におけるメルトテンションが30〜350mNの範囲内のポリプロピレンが好ましい。特に、ポリプロピレン系樹脂は、長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体であることが好ましく、エチレン−プロピレンブロック共重合体を添加することが更に好ましい。
【0062】
また、ポリプロピレン系樹脂にブレンドされる水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、耐衝撃性を改善すると共にインパネダクト1としての剛性を維持するために、ポリプロピレン系樹脂に対して5〜40wt%、好ましくは、15〜30wt%の範囲で添加することが好ましい。
【0063】
具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体などの水素添加ポリマーを用いる。また、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン含有量が30wt%未満、好ましくは、20wt%未満であり、230℃におけるMFR(MFRは、JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は10g/10分以下、好ましくは、5.0g/10分以下で、かつ、1.0g/10分以上である。
【0064】
また、ポリプロピレン系樹脂にブレンドされるポリオレフィン系重合体としては、低密度のエチレン−α−オレフィンが好ましく、1〜20wt%の範囲で配合することが好ましい。低密度のエチレン−α−オレフィンは、密度0.91g/cm
3以下のものを用いることが好ましく、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体が好適であり、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等があり、特に、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が好適である。また、上記の炭素原子数3〜20のα−オレフィンは単独で用いたり、2種以上を併用したりすることも可能である。エチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、50〜99wt%の範囲であることが好ましい。また、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、1〜50wt%の範囲であることが好ましい。特に、メタロセン系触媒を用いて重合された直鎖状超低密度ポリエチレン又はエチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマーを用いることが好ましい。
【0065】
インパネダクト1を成形する際に使用する発泡樹脂は、インパネダクト1を成形する際に発生するバリを粉砕した粉砕材を用いて形成することも可能である。この場合、粉砕材100%で発泡樹脂を形成するよりも、粉砕材とバージン材とを溶融混練して発泡樹脂を形成することが好ましい。バージン材は、未使用の樹脂であり、本実施形態では、上述したポリエチレン系樹脂を使用する。バージン材を使用することで、インパネダクト1を構成する樹脂が劣化することを回避することができる。粉砕材とバージン材とを溶融混練して発泡樹脂を形成する場合は、例えば、粉砕材90%、バージン材10%の割合で溶融混練して形成する。
【0066】
また、本実施形態のインパネダクト1を成形する際に適用可能な発泡剤としては、物理発泡剤、化学発泡剤及びその混合物があげられる。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、及び、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、更には、それらの超臨界流体を適用することができる。超臨界流体としては、二酸化炭素、窒素などを用いて作成することが好ましく、窒素であれば臨界温度が−149.1℃、臨界圧力が3.4MPa以上、二酸化炭素であれば臨界温度が31℃、臨界圧力が7.4MPa以上とすることで作成することができる。
【0067】
次に、上記成形したインパネダクト1を分割金型12a,12bから取り出す。具体的には、インパネダクト1の上部に形成されるバリを所定の機械(クリップ等)で掴んだ状態で分割金型12a,12bを開いてインパネダクト1を分割金型12a,12bの間から取り出す。
【0068】
次に、分割金型12a,12bから取り出したインパネダクト1の周囲に形成されるバリ等の不要な部分を除去する。これにより、
図7に示す複雑な形状のインパネダクト1を得ることができる。
【0069】
本実施形態のインパネダクト1は、
図7に示すように、管本体X1を構成する嵌め合い部102(102a〜102d)や供給部105に形成された全ての開口部100(100a〜100d)、111の近傍にフランジ部103(103a〜103g)や橋渡し部104(104e、104f)を設けている。このため、本実施形態のインパネダクト1は、開口部100、111の周囲で他の管状部材に対してインパネダクト1を固定することができる。また、開口部100、111の周囲の強度を強固にすることができる。
【0070】
(他の成形方法例)
上述した実施形態としてのインパネダクト1は、例えば、
図14に示す成形方法で成形することも可能である。
【0071】
図14に示す成形方法は、上述した成形方法で円筒形状の発泡パリソン13を分割金型12a,12b間に押し出して成形するのに替えて、シート状の発泡樹脂を分割金型12a,12b間に押し出して成形するものである。
【0072】
他の成形方法で用いる成形装置は、
図14に示すように、2台の押出装置50a,50bと、上述した成形方法例と同様の分割金型12a,12bと、を有して構成される。
【0073】
押出装置50(50a,50b)は、上述した成形方法例における発泡パリソン13と同様の材質での、溶融状態の発泡樹脂による樹脂シートP1,P2を、分割金型12a,12b間に所定の間隔で略平行に垂下させるように配置される。樹脂シートP1,P2を押し出すTダイ28a,28bの下方には調整ローラ30a,30bが配置され、この調整ローラ30a,30bにより厚さ等の調整を行う。こうして押し出された樹脂シートP1,P2を、分割金型12a,12bで挟み込んで型締めし、成形する。
【0074】
2台の押出装置50(50a,50b)の構成は同様であるため、1つの押出装置50について、
図14を参照して説明する。
【0075】
押出装置50は、ホッパ21が付設されたシリンダ22と、シリンダ22内に設けられたスクリュー(図示せず)と、スクリューに連結された油圧モーター20と、シリンダ22と内部が連通したアキュムレータ24と、アキュムレータ24内に設けられたプランジャー26と、Tダイ28と、一対の調整ローラ30と、を有して構成される。
【0076】
ホッパ21から投入された樹脂ペレットが、シリンダ22内で油圧モーター20によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の発泡樹脂がアキュムレータ24に移送されて一定量貯留され、プランジャー26の駆動によりTダイ28に向けて発泡樹脂を送る。こうして、Tダイ28下端の押出スリットから、溶融状態の発泡樹脂による連続的な樹脂シートが押し出され、間隔を隔てて配置された一対の調整ローラ30によって挟圧されながら下方へ向かって送り出され、分割金型12a,12bの間に垂下される。
【0077】
また、Tダイ28には、押出スリットのスリット間隔を調整するためのダイボルト29が設けられる。スリット間隔の調整機構は、このダイボルト29を用いた機械式の機構に加え、公知の各種調整機構を他に備えてもよい。
【0078】
こうした構成により、2つのTダイ28a,28bの押出スリットから、内部に気泡セルを有する樹脂シートP1,P2が押し出され、上下方向(押出方向を意味する)に一様な厚みを有する状態に調整され、分割金型12a,12bの間に垂下される。
【0079】
こうして樹脂シートP1,P2が分割金型12a,12b間に配置されると、この分割金型12a,12bを水平方向に前進させ、分割金型12a,12bの外周に位置する不図示の型枠を、樹脂シートP1,P2に密着させる。こうして分割金型12a,12b外周の型枠により樹脂シートP1,P2を保持した後、分割金型12a,12bのキャビティ10a,10bに樹脂シートP1,P2を真空吸引することで、樹脂シートP1,P2それぞれをキャビティ10a,10bに沿った形状にする。
【0080】
次に、分割金型12a,12bを水平方向に前進させて型締めし、上述した成形方法と同様に、吹き込み針14と吹き出し針15とを樹脂シートP1,P2に突き刺し、吹き込み針14から空気等の圧縮気体を樹脂シートP1,P2の内部に吹き込み、樹脂シートP1,P2の内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出す。こうして、インパネダクト1の管本体X1となる部分の内側を冷却する。
【0081】
次に、分割金型12a,12bを水平方向に後退させ、分割金型12a,12bをインパネダクト1から離型させる。
【0082】
なお、一対の分割金型12a,12bの間に垂下された樹脂シートP1,P2は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生するのを防止するため、樹脂シートの厚み、押出速度、押出方向の肉厚分布などを個別に調整することが必要になる。
こうした樹脂シートの厚み、押出速度、押出方向の肉厚等の調整は、公知の各種方法を用いてよい。
【0083】
以上のように、
図14に示す他の成形方法例によっても、
図10〜
図12で説明した成形方法と同様に、本実施形態におけるインパネダクト1を好適に成形することができる。また、
図14に示す他の成形方法例では、2枚の樹脂シートP1,P2の材料、発泡倍率、肉厚などを異なるものとすることで、各種の条件に対応するインパネダクト1を成形することも可能である。
【0084】
<実施例>
次に、実施例により上述したインパネダクト1について説明する。但し、以下の実施例に限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
本実施例では、インパネダクト1の原料樹脂として、以下の原料配合で作成した発泡パリソンを使用し、シリンダにガス供給口を有するスクリュー式押出機を備えた発泡ブロー成形機を用い、ガス供給口より窒素の超臨界流体を添加し、上述した
図10〜
図12と同様な成形方法で
図15に示す簡易な形状のインパネダクト1を成形した。
図15に示すインパネダクト1は、管部101の両端に嵌め合い部102を設けた簡易な構造になっている。
図15に示すインパネダクト1も
図7に示すインパネダクト1と同様に、管部101、嵌め合い部102から構成される管本体X1(
図9参照)にフランジ部103が連接されている。このため、
図15に示すインパネダクト1においてフランジ部103が連接された箇所の切断面(
図15のE−E断面)は、
図9と同様な形状になる。
【0086】
発泡パリソンの原料配合
WB140/C4BSW/DF605=55部/40部/5部
PO217K:1部、黒MB:1部
但し、WB140:ボレアリス社製のHMS-PP(High Melt Strength-PP:高溶融張力ポリプロピレン)
BC4BSW:日本ポリプロ(株)製のポリプロピレン
DF605:三井化学(株)製のエチレンとブテンとの共重合体
PO217K:大日精化工業(株)製の無機系発泡剤
黒MB:東京インキ(株)製のカーボンブラックマスターバッチ
【0087】
発泡倍率:1.5〜1.8倍(比重:0.60〜0.50)
ブロー圧:0.1Mpa
【0088】
本実施例では、設定フランジ厚みを3.05mmとした場合と、4.57mmとした場合と、で
図15に示す簡易な形状のインパネダクト1の重量を変化させて成形した。設定フランジ厚みは、
図13に示す分割金型12a,12bのキャビティ10a,10b間の厚みTを意味する。インパネダクト1の重量が小さいと、発泡パリソンがキャビティ10a,10b間でコンプレッションされ難くなり、インパネダクト1の重量が大きいと、発泡パリソンがキャビティ10a,10b間でコンプレッションされ易くなる。
【0089】
本実施例では、成形後のインパネダクト1のフランジ脇肉厚と、フランジ肉厚と、を測定し、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値を計算した。
【0090】
フランジ脇肉厚は、
図9に示すように、管本体X1における板状部分Y1が連接された箇所の周囲の肉厚Aである。フランジ脇肉厚は、板状部分Y1が連接された箇所αから5mmの範囲L1の肉厚である。フランジ肉厚は、
図9に示すように、板状部分Y1の厚み方向の肉厚Bである。
【0091】
また、成形後のインパネダクト1の管本体X1の内面に
図2に示す風船形状の気泡81や、
図4に示す隙間82や、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生しているか検査した。
【0092】
設定フランジ厚みTを3.05mmとして成形したインパネダクト1の検査結果を
図16に示す。また、設定フランジ厚みTを4.57mmとして成形したインパネダクト1の検査結果を
図17に示す。
【0093】
図16、
図17に示す検査結果において、
図2に示す風船形状の気泡81や、
図4に示す隙間82や、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生していない場合は、OKとした。また、
図2に示す風船形状の気泡81が発生した場合は、NG1とした。また、
図2に示す風船形状の気泡81が発生しなかったが、風船形状の気泡81が発生する兆候が見られた場合は、BAD1とした。風船形状の気泡81が発生する兆候とは、管本体X1の部分に気泡が多く集まって管本体X1の内面にこぶが発生し、そのこぶの気泡が破泡して管本体X1の内面が荒れた状態である。また、
図4に示す隙間82が発生した場合は、NG2とした。また、
図5に示す空洞83が発生した場合は、NG3とした。
【0094】
図16に示す検査結果からフランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.40以下になると
図2に示す風船形状の気泡81が発生する兆候が見られたり、風船形状の気泡81が発生するようになった。このため、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.43となるようなインパネダクト1を数多く成形して、そのサンプルを検査したところ、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.43の場合は、全てのサンプルにおいて
図2に示す風船形状の気泡81や、風船形状の気泡81が発生する兆候が見られなかった。また、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.40となるようなインパネダクト1を数多く成形して、そのサンプルを検査したところ、複数のサンプルにおいて風船形状の気泡81が発生する兆候が見られ、一部のサンプルにおいて風船形状の気泡81が発生した。
【0095】
また、
図17に示す検査結果からフランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が2.82以上になると、
図4に示す隙間82や、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生するようになった。このため、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が2.80となるようなインパネダクト1を数多く成形して、そのサンプルを検査したところ、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が2.80の場合は、全てのサンプルにおいて
図4に示す隙間82や、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生することがなかった。また、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が2.82となるようなインパネダクト1を数多く成形して、そのサンプルを検査したところ、一部のサンプルにおいて
図4に示す隙間82や、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生した。
【0096】
このため、
図16、
図17に示す検査結果から、発泡倍率が2倍未満のインパネダクト1を成形する際に、
図2に示す風船形状の気泡81や、
図4に示す隙間82や、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生しないようにするには、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.40より大きく2.82未満である必要があることが判明した。
【0097】
なお、
図2に示す風船形状の気泡81や、風船形状の気泡81が発生する兆候は、生産時に、管本体X1の内面を確認することで不良品のインパネダクト1として取り除くことができる。しかし、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生しているインパネダクト1は、管本体X1の内面を確認しても判別できないため、生産時に、不良品のインパネダクト1として取り除くことができない。このため、発泡倍率が2倍未満のインパネダクト1を成形する場合は、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が2.82未満であることが必須となる。但し、インパネダクト1の量産を鑑みると、生産時に、管本体X1の内面を全て確認するのは難しいため、発泡倍率が2倍未満のインパネダクト1を成形する場合は、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.40より大きく2.82未満であることが好ましい。
【0098】
また、インパネダクト1の重量、比重のバラツキ±15%を考慮すると、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.70以上2.40以下であることが好ましい。
【0099】
また、板状部分Y1は、他の部材と接続する部分であるため、板状部分Y1に所望の構造的強度を持たせることになる。このため、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.80以上であることが好ましく、2.0以上であることが更に好ましい。これにより、フランジ脇肉厚に対してフランジ肉厚を厚くし、板状部分Y1に所望の構造的強度を持たせることができる。なお、板状部分Y1に所望の構造的強度を持たせるためには、フランジ肉厚は、4.0mm以上であることが好ましい。
【0100】
また、上記の
図16、
図17に示す検査結果は、
図15に示す簡易な形状のインパネダクト1を成形した場合の検査結果である。しかし、
図7に示す複雑な形状のインパネダクト1を成形した場合も、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.40より大きく2.82未満であることで、
図2に示す風船形状の気泡81や、
図4に示す隙間82や、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生していないインパネダクト1を成形することができた。
【0101】
また、
図15に示す簡易な形状のインパネダクト1の場合は、フランジ脇肉厚と、インパネダクト1の平均肉厚と、がほぼ同一の値となる。平均肉厚は、インパネダクト1の中空延伸方向に約100mmの等間隔で測定した肉厚の平均値を意味する。但し、測定位置に、上述した板状部分Y1の箇所などを含まない。しかし、
図7に示す複雑な形状のインパネダクト1の場合は、フランジ脇肉厚と、インパネダクト1の平均肉厚と、が異なる値となる。このため、
図7に示す複雑なインパネダクト1の平均肉厚を測定し、フランジ肉厚/平均肉厚の値を計算すると、フランジ肉厚/平均肉厚の値が2.0未満の場合に、
図2に示す風船形状の気泡81が発生する可能性があることが判明した。このため、
図15に示す簡易な形状のインパネダクト1は、フランジ脇肉厚と、インパネダクト1の平均肉厚と、がほぼ同一の値であることを考慮し、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚(平均肉厚)の値が2.0以上2.4以下であることが更に好ましい。
【0102】
(実施例2)
実施例1と同様な成形方法で発泡倍率が2.25〜3.0倍(比重が0.40〜0.30)の
図15に示す簡易な形状のインパネダクト1を成形した。
【0103】
設定フランジ厚みTを3.05mmとして成形したインパネダクト1の検査結果を
図18に示す。また、設定フランジ厚みTを4.57mmとして成形したインパネダクト1の検査結果を
図19に示す。
【0104】
図18、
図19に示す検査結果において、
図2に示す風船形状の気泡81や、
図4に示す隙間82や、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生していない場合は、OKとした。また、
図2に示す風船形状の気泡81が発生した場合は、NG1とした。また、
図2に示す風船形状の気泡81が発生しなかったが、風船形状の気泡81が発生する兆候が見られた場合は、BAD1とした。また、
図4に示す隙間82が発生した場合は、NG2とした。また、
図5に示す空洞83が発生した場合は、NG3とした。
【0105】
図18に示す検査結果からフランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.46以下になると
図2に示す風船形状の気泡81が発生する兆候が見られたり、風船形状の気泡81が発生するようになった。このため、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.47となるようなインパネダクト1を数多く成形して、そのサンプルを検査したところ、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.47の場合は、全てのサンプルにおいて
図2に示す風船形状の気泡81や、風船形状の気泡81が発生する兆候が見られなかった。また、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.46となるようなインパネダクト1を数多く成形して、そのサンプルを検査したところ、複数のサンプルにおいて風船形状の気泡81が発生する兆候が見られ、一部のサンプルにおいて風船形状の気泡81が発生した。
【0106】
また、
図19に示す検査結果からフランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が2.88以上になると、
図4に示す隙間82や、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生するようになった。このため、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が2.87となるようなインパネダクト1を数多く成形して、そのサンプルを検査したところ、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が2.87の場合は、全てのサンプルにおいて
図4に示す隙間82や、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生することがなかった。また、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が2.88となるようなインパネダクト1を数多く成形して、そのサンプルを検査したところ、一部のサンプルにおいて
図4に示す隙間82や、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生した。
【0107】
このため、
図18、
図19に示す検査結果から、発泡倍率が2倍以上のインパネダクト1を成形する際に、
図2に示す風船形状の気泡81や、
図4に示す隙間82や、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生しないようにするには、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.46より大きく2.88未満である必要があることが判明した。
【0108】
なお、
図2に示す風船形状の気泡81や、風船形状の気泡81が発生する兆候は、生産時に、管本体X1の内面を確認することで不良品のインパネダクト1として取り除くことができる。しかし、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生しているインパネダクト1は、管本体X1の内面を確認しても判別できないため、生産時に、不良品のインパネダクト1として取り除くことができない。このため、発泡倍率が2倍以上のインパネダクト1を成形する場合は、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が2.88未満であることが必須となる。但し、インパネダクト1の量産を鑑みると、生産時に、管本体X1の内面を全て確認するのは難しいため、発泡倍率が2倍以上のインパネダクト1を成形する場合は、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.46より大きく2.88未満であることが好ましい。
【0109】
また、インパネダクト1の重量、比重のバラツキ±15%を考慮すると、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.70以上2.40以下であることが好ましい。
【0110】
また、板状部分Y1は、他の部材と接続する部分であるため、板状部分Y1に所望の構造的強度を持たせることになる。このため、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.80以上であることが好ましく、2.0以上であることが更に好ましい。これにより、フランジ脇肉厚に対してフランジ肉厚を厚くし、板状部分Y1に所望の構造的強度を持たせることができる。なお、板状部分Y1に所望の構造的強度を持たせるためには、フランジ肉厚は、4.0mm以上であることが好ましい。
【0111】
また、上記の
図18、
図19に示す検査結果は、
図15に示す簡易な形状のインパネダクト1を成形した場合の検査結果である。しかし、
図7に示す複雑な形状のインパネダクト1を成形した場合も、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚の値が1.46より大きく2.88未満であることで、
図2に示す風船形状の気泡81や、
図4に示す隙間82や、板状部分Y1の内部に
図5に示す空洞83が発生していないインパネダクト1を成形することができた。
【0112】
また、
図15に示す簡易な形状のインパネダクト1の場合は、フランジ脇肉厚と、インパネダクト1の平均肉厚と、がほぼ同一の値となる。このため、
図7に示す複雑なインパネダクト1の平均肉厚を測定し、フランジ肉厚/平均肉厚の値を計算すると、フランジ肉厚/平均肉厚の値が2.0未満の場合に、
図2に示す風船形状の気泡81が発生する可能性があることが判明した。このため、
図15に示す簡易な形状のインパネダクト1は、フランジ脇肉厚と、インパネダクト1の平均肉厚と、がほぼ同一の値であることを考慮し、フランジ肉厚/フランジ脇肉厚(平均肉厚)の値が2.0以上2.4以下であることが更に好ましい。
【0113】
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形して実施することが可能である。