【解決手段】 胴部側壁の所定領域に内方に窪んだ凹部を有し、少なくとも胴部にシュリンクラベル又はストレッチラベルが装着されているプラスチックボトルである。凹部の周縁の少なくとも一部に沿って外方に突出した凸状のリブが設けられている。リブの高さは0.5mm以上1mm以下であることが好ましく、リブの先端は曲面であることことが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のプラスチックボトルには、商品に関する情報を表示したり、商品同士の衝突による傷を防いだりするために、胴部を含む領域に包装フィルムが装着されることがある。包装フィルムとしては、プラスチックボトルにフィットし、また、多彩な印刷も可能であるシュリンクラベルやストレッチラベルが広く普及している。シュリンクラベルは熱収縮性を有するフィルムを加熱収縮させることによりプラスチックボトルにフィットさせており、ストレッチラベルはフィルム自体の伸縮性を利用してフィットさせている。上記従来技術のように、圧力吸収用の凹部を有するプラスチックボトルの場合は、包装フィルムがフラットな状態で凹部を覆い、包装フィルムと凹部の間に空間が生じることとなる。
【0006】
一方で、この種のプラスチックボトルは、内容液を適温に調節するために温水や冷水に浸すなど、液体に浸漬されることがある。前述のようにストレッチラベルが装着されている場合、液体に浸漬すると、包装フィルムと凹部の間に生じる空間に液体が侵入し、液体から引き揚げたときに、その空間に溜まった液体が垂れ落ち、使い勝手を悪くしたり、内容液の液漏れと誤認させたりする問題が生じていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、圧力吸収用の凹部とシュリンクラベル又はストレッチラベルとの間に生じる空間への液体の侵入を防止できるプラスチックボトルを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を改善するため、本発明のプラスチックボトルは、胴部側壁の所定領域に内方に窪んだ凹部を有し、少なくとも前記胴部にシュリンクラベル又はストレッチラベルが装着されているプラスチックボトルにおいて、前記凹部の周縁の少なくとも一部に沿って外方に突出した凸状のリブが設けられていることを特徴とする。
【0009】
この発明のプラスチックボトルにシュリンクラベル又はストレッチラベルを装着すると、凸状のリブとシュリンクラベル又はストレッチラベルとが線接触して高密着状態となるため、凹部とシュリンクラベル又はストレッチラベルとの間に生じる空間への液体の侵入が防止される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シュリンクラベル又はストレッチラベルと凸状のリブとが高密着状態となるため、液体にプラスチックボトルを浸漬しても、凹部とシュリンクラベル又はストレッチラベルとの間に生じる空間に液体が侵入することがない。これにより、液体からプラスチックボトルを引き揚げたときに、凹部から液体が垂れ落ちることがなく、使い勝手が改善され、内容液の液漏れと誤認される問題も解消される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態のプラスチックボトルの斜視図である。
【
図2】上記実施形態のプラスチックボトルの正面図である。
【
図3】上記実施形態のプラスチックボトルの右側面図である。
【
図4】上記実施形態のプラスチックボトルの左側面図である。
【
図5】上記実施形態のプラスチックボトルの背面図である。
【
図6】上記実施形態のプラスチックボトルの上面図である。
【
図7】上記実施形態のプラスチックボトルの下面図である。
【
図8】上記実施形態の胴部側壁に形成される凹部を説明する説明図である。
【
図9】上記実施形態のプラスチックボトルのA−A断面図である。
【
図10】上記実施形態のプラスチックボトルのB−B断面図である。
【
図11】他の実施形態の湾曲形状部を有するプラスチックボトルの断面図である。
【
図12】上記実施形態にリブを設けたプラスチックボトルの正面図である。
【
図13】上記実施形態のプラスチックボトルのC−C断面図である。
【
図14】上記実施形態のプラスチックボトルのD−D断面図である。
【
図15】上記実施形態におけるシュリンクラベルを装着した状態のプラスチックボトルの断面図である。
【
図16】上記実施形態の
図15におけるリブ付近の領域Eの拡大図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、本実施の形態のプラスチックボトルについて説明するが、先ず、プラスチックボトルの胴部壁面の形状について説明する。
図1は、プラスチックボトル10の斜視図であり、
図2は正面図であり、
図3は右側面図であり、
図4は左側面図であり、
図5は背面図であり、
図6は上面図であり、
図7は下面図であり、
図9は垂直方向におけるA−A断面図、
図10は水平方向におけるB−B断面図である。なお、以下の説明では、
図2における上を上方向、下を下方向、右を右方向、左を左方向として説明する。
【0013】
図1に示すのプラスチックボトル10は、医薬品や飲料等を内容液とする容器であり、口部1、肩部2、胴部3を備える。
【0014】
口部1は、円筒形状を呈し、外周には蓋体(図示せず)を取り付けるためのネジ山が形成されている。肩部2は、口部1と胴部3との間に位置し、胴部3から口部1に連続するように形成された略角錐台形状の部位である。
【0015】
胴部3は、縦長の略角筒状に形成された部位であり、側壁部と底部とを備える。側壁部は、角部を面取りした形状を呈しており、これにより、四つの側面部31と、各側面部31の間に形成される四つの面取り部32とが形成されている。各側面部31は、略長方形状を呈しており、周端に所定幅の細枠を残した中央領域が、胴部内側に陥没した凹部33となっている。
【0016】
図8は、凹部33を説明する説明図である。実線で示す部分が凹部33である。凹部33は、外周が略長方形状を呈し、胴部3の上端側に位置する上端側三角形状パネル部34と、下端側に位置する下端側三角形状パネル部35と、上端側三角形状パネル部34と下端側三角形状パネル部35の間に位置する左右の台形状パネル部36,37を有する。
【0017】
また、
図9は、凹部の断面形状を示す図であり、上端側三角形状パネル部34と下端側三角形状パネル部35の間の領域は、断面で見た時に、4面に形成される前記凹部33は、いずれも内方に向かって断面三角形状に窪んだ形状となっている。各凹部33の深さDは、任意に設定することができるが、胴部3の外径寸法の10%程度とすることが好ましく、例えば胴部3の一辺7cmの角形ボトルの場合、凹部33の深さDは、7mm程度に設定することが好ましい。凹部33の深さDが大きくなり過ぎると、容量の減少が著しくなり、容器としての性能が低下するおそれがある。逆に、凹部33の深さDが小さ過ぎると、凹部33を形成することによる強度向上が不十分になるおそれがある。
【0018】
前記凹部33において、上端側三角形状パネル部34は、凹部33の四周辺のうちの上辺を底辺34aとし、他の二つの辺を等辺とする二等辺三角形を呈し、二つの等辺の交点である対頂点34bが底辺34aに対して下方に位置する逆三角形の姿勢となっている。また、下端側三角形状パネル部35は、凹部33の四周辺のうちの下辺を底辺35aとし、他の二つの辺を等辺とする二等辺三角形を呈し、二つの等辺の交点である対頂点35bが、底辺35aに対して上方に位置する姿勢となっている。
【0019】
そして、
図10に示すように、上端側三角形状パネル部34は、下方向に向かって胴部内側に傾斜しており、下端側三角形状パネル部35は、上方向に向かって胴部内側に傾斜している。各傾斜角度について説明すると、水平面を基準としたときに、下端側三角形状パネル部35の傾斜角度βは、上端側三角形状パネル部34の傾斜角度αよりも小さく、下端側三角形状パネル部35のほうが急峻な傾斜となっている。これにより、内容液の自重の影響を受けやすい胴部下端側の剛性を高めることができ、プラスチックボトル10の下端側における変形を抑制することが可能となる。
【0020】
このとき、下端側三角形状パネル部35の水平面を基準とする傾斜角度βは、30度以上50度以下であることが好ましい。傾斜角度βが30度より小さいと、プラスチックボトル10の底部コーナー部のブロー比が高くなり薄肉が発生し、50度より大きいと、変形防止効果が低くなるためである。最適値は、本実施の形態に例示するように、上端側三角形状パネル部34の傾斜角度αが70度、下端側三角形状パネル部35の傾斜角度βが40度である。
【0021】
さらに好ましくは、下端側三角形状パネル部35は、胴部内側に凹状に湾曲したR形状部35Aを有する形態とすることである。下端側三角形状パネル部35に湾曲面を付加することにより、下端側三角形状パネル部35に加わる圧力を分散させることができ、減圧変形の防止効果が更に高められる。なお、下端側三角形状パネル部35がR形状部35Aを有するときの傾斜角度βも、
図11に示すように、三角形状パネル部35と水平面とがなす角度とする。
【0022】
なお、本例では、下端側三角形状パネル部35の底辺35aと上端側三角形状パネル部34の底辺34aは長さが同一であるが、下端側三角形状パネル部35の対頂点35bから底辺35aまでの垂線の長さは、上端側三角形状パネル部34の対頂点34bから底辺34aまでの垂線の長さよりも短い。ただし、各三角形状パネル部34,35の大きさは、これに限らず、必要に応じて適宜調整すれば良い。
【0023】
また、ここで、上端側三角形状パネル部34と下端側三角形状パネル部35は、略三角形状であれば良く、例えば、本実施の形態のように外周を構成する辺が曲線を呈していても良い。
【0024】
また、本実施の形態では、上端側三角形状パネル部34と下端側三角形状パネル部35との間には、対頂点34bと対頂点35bとを結ぶ垂直な谷線38か形成されており、谷線38の左側には左側台形状パネル部36が形成され、右側には右側台形パネル部37が形成されている。左側台形状パネル部36は、谷線38及び凹部33の四周辺のうちの左辺を一対の底辺とし、上端側三角形状パネル部34の左側の等辺及び下端側三角形状パネル部35の左側の等辺を脚とする台形状を呈する。また、右側台形状パネル部37は、谷線38及び凹部33の四周辺のうちの右辺を一対の底辺とし、上端側三角形状パネル部34の右側の等辺及び下端側三角形状パネル部35の右側の等辺を脚とする台形状を呈する。
【0025】
このプラスチックボトル10は、雑菌の繁殖を抑制するために、内容液充填時に加熱滅菌処理が行われる。加熱滅菌処理としては様々な手法が挙げられるが、例えば消毒等の薬液を内容液とする場合は、薬液をプラスチックボトル10に充填後、高圧蒸気滅菌処理が行われる。プラスチックボトルは高圧蒸気滅菌処理後に内部が減圧状態となり、特に内容液の自重の影響を受けやすい胴部3の下端側が変形しやすい状況となるが、本実施の形態のプラスチックボトル10は下端側三角形状パネル部35が設けられているため、変形を抑制することができ、従来技術では抑制できなかった変形にも高い効果を発揮する。
【0026】
次に、本発明のプラスチックボトルに設けられる凸状のリブについて説明する。
図12は、リブ39を設けたプラスチックボトル10の正面図であり、
図13は、その垂直方向におけるC−C断面図であり、
図14は、その水平方向におけるD−D断面図である。
【0027】
このプラスチックボトル10には、商品に関する情報を表示したり、商品同士の衝突による傷を防いだりするために、胴部を含む領域にシュリンクラベルLが装着されることがある。シュリンクラベルLは熱収縮性を有するフィルムを加熱収縮させることによりプラスチックボトルにフィットさせている。
図15は、シュリンクラベルLを装着した状態のプラスチックボトル10の断面図であり、
図16は
図15中のEで示す部分の一部拡大断面図である。シュリンクラベルLはフラットな状態で凹部を覆い、シュリンクラベルLと凹部33の間に空間Sが生じることとなる。
【0028】
一方、プラスチックボトル10は、内容液を適温に調節するために温水や冷水に浸すなど、液体に浸漬されることがある。リブ39が無い場合、シュリンクラベルLとプラスチックボトル10とは、凹部33の周辺領域の平坦面31aとが面接触するため十分に密着せず、プラスチックボトル10を液体に浸漬したときに空間Sに液体が侵入する恐れがある。すると、プラスチックボトル10を浸漬用の液体から引き揚げたときに、空間Sから液体が垂れ落ち、使い勝手が悪いばかりでなく、内容液の液漏れと誤認される事態を招く。
【0029】
そこで、本実施形態では、この空間Sへの液体の侵入を防ぐために、凹部33の周辺に凸状のリブ39を設け、シュリンクラベルLとリブ39とを線接触させる。リブ39は、胴部3の外面においてボトル外方に突出する細幅のライン状を呈しており、凹部33と若干の間隔を設けて、略長方形状の凹部33の外周の各辺に沿った位置に形成されている。すなわち、凹部33の左右側においては台形状パネル部36,37の左右の辺に沿って垂直なライン状に形成されており、上下側においては上下端側三角形状パネル部34,35の底辺34a,35aに沿って湾曲したライン状に形成されている。
【0030】
これにより、シュリンクラベルLとリブ39とが線接触して密着度が高くなり、プラスチックボトル10を液体に浸漬しても、シュリンクラベルLと凹部33のとの間に生じる空間Sへの液体の侵入が防止される。なお、
図16に示すように、リブ39が有する高さにより、リブ39の外周に沿って、シュリンクラベルLとプラスチックボトル10との間に僅かな空間が生じるが、非常に微小であるため問題はない。
【0031】
ここで、リブ39は、凹部33の全周に沿って設けると、全方向からの液体の侵入を防止できるため高い効果が得られる。ただし、凹部33の周辺の一部領域にのみ設けることもでも効果は得られる。たとえば、凹部33の上方及び/又は上方のみに設けることでも十分に効果的である。凹部33の上方と下方は、シュリンクラベルLの端部が位置しており、液体が侵入しやすいためである。具体的には、上端側三角形状パネル部34の底辺34a、及び/又は、下端側三角形状パネル部35の底辺35aに沿ってそれぞれリブを設ける。これにより液体が侵入しやすい凹部33の上下辺でシワなくシュリンクラベルLを装着することが可能になり、この部分での液体の侵入を抑制することができる。さらには、液体が最も侵入しやすい凹部33の下方の辺にのみリブを設けることも可能である。
【0032】
リブ39は必ずしも凹部33の外周に沿わせる必要はなく、凹部33の周辺に形成されていれば効果が得られる。ただし、シュリンクラベルLを装着したときに、シュリンクラベルLの端部がリブ39よりも外側に位置するようにリブ39を形成する必要がある。
【0033】
また、リブ39の高さは、0.5mm以上1mm以下が好ましい。0.5mmより低いと十分な密着状態が得られず、エアーが溜まりやすい個所であるため、未成形となるおそれもある。又、1mmよりも高いとリブ39の外周に沿って形成される微小空間が大きくなり、プラスチックボトル10を液体に浸漬したときに液体が溜まる恐れが生じ、滅菌時にリブ39を起点に変形する懸念もある。なお、リブ39の幅は任意であるが、1mm程度とすることが好ましい。
【0034】
また、リブ39の先端は、
図16に示すように、外側に凸状に湾曲した曲面部39aとすることが好ましい。先端を曲面とすることで、接触箇所におけるシュリンクラベルLの破損を防ぐことができる。また、先端の曲面39aに続く両側面は、平坦領域31aに対して垂直に立設し、基端側では平坦領域31aとの接続箇所に内側に湾曲した曲面部39bを有することが好ましい。
【0035】
このように、リブ39を設けることで、プラスチックボトル10を液体に浸漬しても、シュリンクラベルLと凹部33との間の空間Sに液体が侵入するのを防止することができる。これにより、プラスチックボトル10を液体から引き揚げても、空間Sから液体が垂れ落ちることがなく、使い勝手が改善され、内容液の液漏れと誤認される問題も解消される。
【0036】
なお、リブ39は、上記実施例に限られず、高さ、幅、形状において適宜変更可能である。
【0037】
本実施形態のプラスチックボトル10によれば、シュリンクラベルLとリブ39との密着状態が高くなり、プラスチックボトル10を液体に浸漬しても、シュリンクラベルLと凹部33との間の空間Sに液体が侵入することがない。これにより、プラスチックボトル10を液体から引き揚げたときに、その空間から液体が垂れ落ちることがなく、使い勝手が向上するとともに、内容液の液漏れとの誤認が生じることもない。なお、シュリンクラベルLに代えてストレッチラベルとしても同様の効果が得られる。
【0038】
以上、本発明を適用したプラスチックボトルの実施形態について説明したが、本発明が前述の実施形態に限定されるものでないことは言うまでもない。例えば、本実施の形態では、四つの側面部31を有するプラスチックボトルを例に説明したが、5以上の側面部を有する角筒形状のものや円筒形状のものでも良い。また、上端側三角形状パネル部と下端側三角形状パネル部はすべての側面部に設けずとも、対向する二側面のみに設けたりしても良く、少なくとも一つの側面部に形成されていれば良い。また、上端側三角形状パネル部と下端側三角形状パネル部の形状についても、二等辺三角形に限らず略三角形であれば良く、その大きさについても、適宜調整すれば良い。また、両三角形状パネル以外の領域についても上記実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じた形状に設計すれば良い。