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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-221745(P2015-221745A)
(43)【公開日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】精密レーザ罫書き
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/09 20060101AFI20151113BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20151113BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20151113BHJP
【FI】
   C03B33/09
   B23K26/064 A
   B28D5/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-107338(P2015-107338)
(22)【出願日】2015年5月27日
(62)【分割の表示】特願2012-500983(P2012-500983)の分割
【原出願日】2010年3月19日
(31)【優先権主張番号】61/161,980
(32)【優先日】2009年3月20日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】アナトリー エイ アブラーモフ
(72)【発明者】
【氏名】チー ウー
(72)【発明者】
【氏名】ナイユエ ヂョウ
【テーマコード(参考)】
3C069
4E168
4G015
【Fターム(参考)】
3C069AA02
3C069AA03
3C069BA08
3C069BB01
3C069CA11
3C069EA01
3C069EA02
4E168CB02
4E168DA02
4E168DA23
4E168DA32
4E168DA34
4E168DA38
4E168EA12
4E168JA14
4E168JA15
4G015FA06
4G015FB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】LCDディスプレイ用大型ガラス基板等のシート材料を高精度に切断可能な精密レーザ罫書きに有用なプロセスおよび装置の提供。
【解決手段】切断幅が2000mm以上のガラスシートを分割するプロセスにおいて、細長いレーザビームが、前記シートの表面に遮られる位置で、0.5〜3mmの幅W及び60〜300mmの長さLを有し、長さLと幅Wのアスペクト比は少なくとも30であり、さらに該細長いレーザビームの、幅Wに沿ったエネルギー分布がSモード、かつ長さLに沿ったエネルギー分布がフラットトップモードのプロファイルであり、前記レーザビームを、前記シートの前記表面上の露出領域内の罫書き線に沿って、長さLに本質的に平行な方向に、少なくとも300mm/秒の速度で移動させるステップ、及び、前記シートを、前記罫書き線に沿って実質的に直線的に分割するステップ、を含むプロセス。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断幅が2000mm以上のガラスシートを分割するプロセスにおいて、
(I)細長いレーザビームを提供するステップであって、該細長いレーザビームが、前記シートの表面に遮られる位置で、0.5mm以上3mm以下の幅W(LB)および60mm以上300mm以下の長さL(LB)を有し、前記長さL(LB)と前記幅(W)のアスペクト比は少なくとも30であり、さらに該細長いレーザビームの、前記幅に沿ったエネルギー分布がSモード、かつ前記長さに沿ったエネルギー分布がフラットトップモードのプロファイルである、該ステップ、
(II)前記シートの罫書き線に沿って前記表面の一部を前記レーザビームに露出し該露出された領域の温度を上昇させるステップであって、前記露出領域全体の、幅がW(EA)、長さがL(EA)であって、W(EA)≒W(LB)であり、さらに前記罫書き線が、前記露出領域内にありかつL(LB)に本質的に平行であり、(II−1)前記レーザビームを、前記シートの前記表面上の前記露出領域内の罫書き線に沿って、L(LB)に本質的に平行な方向に、少なくとも300mm/秒の速度で移動させるステップを含む、該ステップ、および、
(III)前記シートを、前記罫書き線に沿って実質的に直線的に分割するステップ、
を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
ステップ(III)において、分割されたガラスシートの前記罫書き線沿いのエッジの全体のうねりが50μm以下であることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
ステップ(II)とステップ(III)の間に、
(IIa)少なくとも前記露出領域の一部を、露出直後に、流体により冷却するステップ、
をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載のプロセス。
【請求項4】
ステップ(I)が、
(I−1)円形レーザビームを提供するステップであって、該円形レーザビームが直径D(CLB)を有し、かつ該ビームの任意の直径に沿ったエネルギー分布がSモードである、該ステップ、および、
(I−2)前記円形レーザビームを光学アセンブリに通過させることによって、前記円形レーザビームから前記細長いレーザビームへと変形させるステップであって、前記光学アセンブリが、W(LB)に沿ったSモードのエネルギー強度分布を維持しながらL(LB)に沿ったエネルギー強度分布をSモードからフラットトップモードのプロファイルに変換させるよう適合されたものである、該ステップ、
を含むことを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(I−2)において、前記光学アセンブリが、(a)前記ビームの寸法をL(LB)方向に細長くしかつ(b)L(LB)方向における前記エネルギー分布のプロファイルをSモードからフラットトップモードに変換させるよう動作する第1レンズ、および、前記円形レーザビームの寸法をW(LB)方向において減少させるよう動作する第2レンズ、を含むことを特徴とする請求項4記載のプロセス。
【請求項6】
ステップ(I―2)において、前記光学アセンブリが単一のレンズを含み、該レンズが、(i)前記円形レーザビームの寸法をW(LB)方向において減少させ、かつ(ii)前記円形レーザビームの寸法をL(LB)方向において増加させるとともに該ビームのL(LB)方向における前記エネルギー分布をSモードからフラットトップモードに変換させるよう動作するものであることを特徴とする請求項4記載のプロセス。
【請求項7】
切断幅が2000mm以上のガラスシートを該ガラスシート表面内の本質的に直線状の罫書き線に沿って分割するための装置であって、
(A)円形レーザビームを生成するよう適合されたレーザ発生器であって、該円形レーザビームが直径D(CLB)を有するものであり、かつ該ビームの任意の直径に沿ったエネルギー分布がSモードである、該レーザ発生器、および、
(B)前記円形レーザビームを細長いレーザビームへと変形させるよう適合された光学アセンブリであって、前記細長いレーザビームが、前記ガラスシートの表面に遮られる位置で、0.5mm以上3mm以下の幅W(LB)および60mm以上300mm以下の長さL(LB)を有し、前記長さL(LB)と前記幅(W)のアスペクト比は少なくとも30であり、さらに該細長いレーザビームの、前記W(LB)方向に沿ったエネルギー分布がSモードであり、かつ前記L(LB)方向に沿ったエネルギー分布がフラットトップモードである、該光学アセンブリ、を含み、
前記細長いレーザビームが、前記ガラスシートの表面に対して、少なくとも300mm/秒の速度で移動することを特徴とする装置。
【請求項8】
前記光学アセンブリ(B)が、(a)前記ビームの寸法をL(LB)方向において増加させかつ(b)L(LB)方向における前記エネルギー分布のプロファイルをSモードからフラットトップモードに変換させるよう適合された第1レンズ、および、前記円形レーザビームの寸法をW(LB)方向において減少させるよう適合された第2レンズ、を含むことを特徴とする請求項7記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2009年3月20日に出願された、米国仮特許出願第61/161980号の優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明はレーザ切断技術に関する。特に、本発明はガラスシートなどの無機シート材料の、レーザ加熱を使用した切断に関する。本発明は、とりわけLCDガラス基板の精密罫書きに有用である。
【背景技術】
【0003】
1枚の無機材料の分割は、例えば、線鋸、帯鋸などの機械的設備およびプロセスにより達成することができる。ガラス材料では、機械的罫書き(すなわち、表面上への罫書き線の形成)の後に屈曲させて割ることで分割することが可能である。機械的罫書きでは、摩擦を介してバルクすなわち表面材料の一部を取り除くことが必要であり、これが粒子の形成に繋がる。この粒子は、切断対象の材料の表面を汚染したり、あるいはこれに損傷を与えたりさえする可能性がある。さらに、機械的な罫書きおよび切断により生成されるガラスシートのエッジ品質は、例えばLCDパネル製造などの用途に要求される厳しい要件を満たしていないことが多い。
【0004】
機械的罫書きに代わる切断および罫書き技術として、レーザ罫書きが報告されている。約10.6μmの波長を有するCO2レーザを吸収性のガラス材料に対して照射すると、その露出領域の温度を上昇させることができる。補助的に冷却材を使用して、または使用しなくても、その照射の吸収による温度勾配が生じさせる引張応力が、ガラスシートの直接の分割に、あるいは、機械的曲げの助けを借りてガラスシートを分割させることが可能な欠陥(「割れ目」)ラインの形成に繋がり得る。
【0005】
レーザ罫書きプロセスに関連する、速度、レーザ出力、プロセスウインドウ、残留応力などのパラメータは、ガラスの熱特性やレーザビームの性質―ビーム形状、サイズ、さらにその強度プロファイル、を含む、多くの要因に依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大型のLCDパネルの製造、および多くの他のガラス基板を使用している製品の製造においては、ガラスの基板サイズがある世代から次世代へと益々大型になっていったとしても、ガラス基板のエッジが切断したままの状態で高品質であること、そして高速および高効率で製造可能であることが非常に望ましい。このことが、伝統的な機械的罫書き技術およびレーザ罫書き技術に対して同様に、大きな課題を提示した。
【0007】
すなわち、精密なガラス切断技術が必要とされている。本発明は、従来のレーザ罫書き技術を改善するものとして、この要望および他の要望に応えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のいくつかの態様がここで開示される。これらの態様は、互いに重複するかもしれないし、あるいは重複しないかもしれないことを理解されたい。すなわち、1つの態様の一部は別の態様の範囲内となるかもしれないし、逆もまた同様である
【0009】
各態様は多くの実施形態によって示され、これがさらに、1以上の具体的な実施形態を含むことがある。これらの実施形態は、互いに重複するかもしれないし、あるいは重複しないかもしれないことを理解されたい。すなわち、1つの実施形態の一部またはその具体的な実施形態は、別の実施形態またはその具体的な実施形態の範囲内となるかもしれないし、範囲内とならないかもしれないし、逆もまた同様である
【0010】
本発明の第1の態様によれば、シートを分割するプロセスが提供され、このプロセスは、
(I)細長いレーザビームを提供するステップであって、この細長いレーザビームが、シートの表面に遮られる位置で幅W(LB)および長さL(LB)を有し、さらにこの細長いレーザビームの、幅に沿ったエネルギー分布がSモード、かつ長さに沿ったエネルギー分布がフラットトップモードのプロファイルである、該ステップ、
(II)シートの罫書き線に沿ってこのシートの表面の一部をレーザビームに露出し、この露出された領域の温度を上昇させるステップであって、露出領域全体の、幅がW(EA)、長さがL(EA)であって、W(EA)≒W(LB)(特定の実施形態においては、W(EA)/W(LB)≦1.4;特定の他の実施形態ではW(EA)/W(LB)≦1.3、特定の他の実施形態ではW(EA)/W(LB)≦1.2、特定の他の実施形態ではW(EA)/W(LB)≦1.1、特定の他の実施形態ではW(EA)/W(LB)≦1.05)であり、さらにこの罫書き線が、露出領域内にありかつL(LB)に本質的に平行である、該ステップ、および、
(III)シートを、罫書き線に沿って実質的に直線的に分割するステップ、
を含む。
【0011】
本発明の第1の態様によるプロセスの第1の実施形態において、ステップ(I)で提供されるレーザビームは、約10.6μmの波長で動作するCO2レーザなどの、IRレーザビームである。LCDガラス基板用のアルミノケイ酸塩ガラス材料など、多くの無機ガラス材料はCO2レーザを吸収することができる。
【0012】
本発明の第1の態様によるプロセスの第2の実施形態において、ステップ(II)は、
(II−1)レーザビームを、シートの表面上の露出領域内の罫書き線に沿って、L(LB)に本質的に平行な方向に移動させるステップ、
を含む。
【0013】
上に概略を記述した本発明の第1の態様によるプロセスの第2の実施形態における、特定の具体的な実施形態において、ステップ(II−1)でのレーザビームの移動速度は、少なくとも300mm/秒である。特定の他の実施形態において、ステップ(II−1)でのレーザビームの移動速度は、少なくとも750mm/秒である。
【0014】
本発明の第1の態様によるプロセスの第3の実施形態において、ステップ(I)において提供されたレーザビームのアスペクト比は少なくとも30であり、特定の他の実施形態では少なくとも40、特定の他の実施形態では少なくとも50、特定の他の実施形態では少なくとも80、特定の他の実施形態では少なくとも100、特定の実施形態では少なくとも200、特定の実施形態では最大で400、特定の他の実施形態では最大で300である。
【0015】
本発明の第1の態様によるプロセスの第4の実施形態において、ステップ(I)において提供されたレーザビームの幅は、0.5mmから3mmまでの範囲内である。
【0016】
本発明の第1の態様によるプロセスの第5の実施形態において、シートは本質的に、無機ガラス材料、ガラスセラミック材料、またはセラミック材料から成るものである。第5の実施形態における特定の具体的な実施形態において、シートは本質的に無機ガラス材料から成るものである。第5の実施形態における特定の具体的な実施形態において、分割されたガラスシートの罫書き線沿いのエッジの、全体のうねりは、50μm以下である。
【0017】
本発明の第1の態様によるプロセスの第7の実施形態において、L(EA)≧2000mm、特定の具体的な実施形態ではL(EA)≧2400mm、特定の具体的な実施形態ではL(EA)≧2800mm、特定の他の具体的な実施形態ではL(EA)≧3000mmである。
【0018】
本発明の第1の態様によるプロセスの第8の実施形態において、このプロセスは、ステップ(II)とステップ(III)の間に、
(IIa)少なくとも露出領域の一部を、露出直後に、流体により冷却するステップ、
をさらに含む。
【0019】
上に概略を記述した本発明の第1の態様によるプロセスの第8の実施形態における、特定の具体的な実施形態において、ステップ(IIa)は、露出領域全体の一部がレーザビームに露出されている間に実行される。
【0020】
本発明の第1の態様によるプロセスの第9の実施形態において、このプロセスは、ステップ(II)とステップ(III)の間に、
(IIb)ガラスシートを罫書き線に沿って曲げるステップ、
をさらに含む。
【0021】
本発明の第1の態様によるプロセスの第10の実施形態において、ステップ(I)は、
(I−1)円形レーザビームを提供するステップであって、この円形レーザビームが直径D(CLB)を有し、かつこのビームの任意の直径に沿ったエネルギー分布がSモードである、該ステップ、および、
(I−2)円形レーザビームを光学アセンブリに通過させることによって、円形レーザビームから細長いレーザビームへと変形させるステップであって、この光学アセンブリが、W(LB)に沿ったSモードのエネルギー強度分布を維持しながらL(LB)に沿ったエネルギー強度分布をSモードからフラットトップモードのプロファイルに変換させるよう適合されたものである、該ステップ、
を含む。
【0022】
本発明の第1の態様によるプロセスの第10の実施形態における特定の具体的な実施形態において、ステップ(I−2)での光学アセンブリは、W(LB)<D(CLB)となるように選択され、特定の実施形態ではW(LB)≦0.8D(CLB)、特定の実施形態ではW(LB)≦0.6D(CLB)、特定の実施形態ではW(LB)≦0.5D(CLB)、特定の実施形態ではW(LB)≦0.4D(CLB)、特定の実施形態ではW(LB)≦0.3D(CLB)、特定の実施形態ではW(LB)≦0.2D(CLB)、特定の他の実施形態ではW(LB)≦0.1D(CLB)、特定の他の実施形態ではW(LB)≦0.05D(CLB)、特定の他の実施形態ではW(LB)≦0.03D(CLB)となるように選択される。
【0023】
本発明の第1の態様によるプロセスの第10の実施形態における特定の具体的な実施形態において、ステップ(I−2)での光学アセンブリは、円形レーザビームの寸法をW(LB)方向において減少させるよう動作する第1レンズ(集中性のシリンドリカルレンズなど)、および、(a)ビームの寸法をL(LB)方向において増加させかつ(b)L(LB)方向におけるエネルギー分布のプロファイルをSモードからフラットトップモードに変換させるよう動作する第2レンズ(発散性の変形シリンドリカルレンズなど)、を含む。
【0024】
本発明の第1の態様によるプロセスの第10の実施形態における特定の具体的な実施形態において、ステップ(I−2)での光学アセンブリは単一のレンズを含み、このレンズは、(i)円形レーザビームの寸法をW(LB)方向において減少させ、かつ(ii)円形レーザビームの寸法をL(LB)方向において増加させるとともにこのビームのL(LB)方向におけるエネルギー分布をSモードからフラットトップモードに変換させるよう動作する。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、ガラスシートをこのガラスシート表面内の本質的に直線状の罫書き線に沿って分割するための装置が提供され、この装置は、
(A)円形レーザビームを生成するよう適合されたレーザ発生器であって、この円形レーザビームが直径D(CLB)を有するものであり、かつこのビームの任意の直径に沿ったエネルギー分布がSモードである、レーザ発生器、および、
(B)円形レーザビームを細長いレーザビームへと変形させるよう適合された光学アセンブリであって、この細長いレーザビームが、ガラスシートの表面に遮られる位置で幅W(LB)および長さL(LB)を有するものであり、さらにこの細長いレーザビームの、W(LB)方向に沿ったエネルギー分布がSモードであり、かつL(LB)方向に沿ったエネルギー分布がフラットトップモードである、光学アセンブリ、
を含む。
【0026】
本発明の第2の態様による装置の第1の実施形態において、この装置は、
(C)シート表面の細長いレーザビームに露出される領域に、冷却流体流を送出するよう適合されたノズル、
をさらに含む。
【0027】
本発明の第2の態様による装置の第2の実施形態において、この装置は、
(D)ガラスシートを罫書き線に沿って屈曲させ、かつ分割する機器、
をさらに含む。
【0028】
本発明の第2の態様による装置の第3の実施形態において、光学アセンブリ(B)は、円形レーザビームの寸法をW(LB)方向において減少させるよう適合された第1レンズ、および、(a)ビームの寸法をL(LB)方向において増加させかつ(b)L(LB)方向におけるエネルギー分布のプロファイルをSモードからフラットトップモードに変換させるよう適合された第2レンズ、を含む。
【0029】
本発明の第2の態様による装置の第3の実施形態における特定の具体的な実施形態において、第1レンズは集中性のシリンドリカルレンズであり、かつ第2レンズは発散性の変形シリンドリカルレンズである。
【0030】
本発明の第2の態様による装置の第4の実施形態において、光学アセンブリ(B)は単一のレンズを含み、このレンズは、(i)円形レーザビームの寸法をW(LB)方向において減少させ、かつ(ii)このレーザビームの寸法をL(LB)方向において増加させるとともにこのレーザビームのL(LB)方向におけるエネルギー分布をSモードからフラットトップモードに変換させるよう適合されたものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明の1以上の態様の1以上の実施形態は、以下のような利点を有している。第1に、レーザビームの幅W(LB)に沿ったそのエネルギー分布のプロファイルにより、非常に精密な罫書きを達成することができる。第2に、切断幅が少なくとも2000mmであるような大型のガラスシートであっても、または2800mm超などの2400mm以上のもの、あるいは3000mmを超えるものでさえも、精密なレベルを実現することができる。第3に、本発明を使用すると、例えばフュージョンダウンドローガラス製造プロセスの延伸領域の下部などで、罫書き方向に垂直な方向へとガラスが地面に対して相対的に動いている間に、少なくとも750mm/秒での高速切断を達成することができる。
【0032】
本発明のさらなる特徴および利点は以下の詳細な説明の中で明らかにされ、ある程度は、その説明から当業者には容易に明らかになるであろうし、あるいは書かれた説明およびその請求項の他、添付の図面の中で説明されたように本発明を実施することにより認識されるであろう。
【0033】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、単に本発明の例示であり、請求される本発明の本質および特徴を理解するための概要または構想を提供することを意図したものであることを理解されたい。
【0034】
添付の図面は本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本書に組み込まれその一部を構成する。
【0035】
添付の図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施の形態によるレーザ罫書きシステムの配置を概略的に示す図
図2】本発明の一実施形態により動作する、平面的なガラス表面に遮られている位置でのレーザビームの形状および寸法を概略的に示す図
図3】軸yに沿ったガウスビームのエネルギー強度プロファイルを概略的に示す図
図4】軸xに沿ったDモードでのエネルギー強度プロファイルを概略的に示す図
図5】軸xに沿ったフラットトップモードでのエネルギー強度プロファイルを概略的に示す図
図6】本発明の一実施の形態によるビームの変形に関し、光学アセンブリの動作原理を示す図
【発明を実施するための形態】
【0037】
他に指示されていなければ、本明細書および請求項において用いられている、含有物の重量パーセント、寸法、および特定の物理的性質に関する値などを表している全ての数字は、全ての事例において「約」という用語により修飾されていると理解されたい。また、本明細書および請求項において使用されている正確な数値は、本発明のさらなる実施形態を形成することも理解されたい。実施例において開示される数値の確度を確実にする努力は行ってきた。しかしながら、いかなる測定値も、その夫々の測定技術において見られる標準偏差から生じる一定の誤差を本質的に含んでいる可能性がある。
【0038】
本発明の説明および請求において、本書では、単数形の使用は「少なくとも1つ」を意味し、明確に反対の指示がなければ「唯一」に限定されるべきではない。すなわち、例えば「レンズ」は、文脈が明らかに他に指示していなければ、2以上のこのレンズを有する実施形態を含む。
【0039】
本開示において、「レーザ罫書き」および「レーザ切断」は同じ意味で使用されるが、これらは、材料をレーザビームに露出し、さらに罫書き線に沿った機械的曲げなどの機械的補助を伴って、または伴うことなく、ガラスシートなどのバルク材料を分割するプロセスを意味する。
【0040】
ガラスシートのエッジ全体のうねりは、(i)ガラスシートが地面に対して本質的に静止した状態で維持されている間にガラスシートにレーザ罫書きし、かつ(ii)ガラスシートを罫書き線に沿って機械的に曲げ分割した後に測定される。
【0041】
I.一般的なレーザ罫書き
ガラスの罫書きにおけるCO2レーザの使用について論じているものとしては、とりわけ: Kondratenkoの「非金属材料を分割する方法(Method of splitting non-metallic materials)」と題する米国特許第5,609,284号明細書(´284特許);同一出願人によるAllaireの「脆弱材料を破断する方法および装置(Method and apparatus for breaking brittle materials)」と題する米国特許第5,776,220号明細書(´220特許);Ostendarpの「脆弱材料、特にガラスから作製された平坦なワークピースを切断する方法および装置(Method and apparatus for cutting through a flat workpiece made of brittle material, especially glass)」と題する米国特許第5,984,159号明細書(´159特許);および、同一出願人によるAllaireの「レーザ罫書きにおけるメディアンクラックの深さ制御(Control of median crack depth in laser scoring)」と題する米国特許第6,327,875号明細書(´875特許);同時係属の同一出願人による「平坦なプロファイルのビームによるレーザ罫書き(LASER SCORING WITH FLAT PROFILE BEAM)」と題する、2007年9月28日に出願された米国特許出願第11/904,697号明細書(以下、「´697特許」とする)が挙げられる。同一出願人による´220特許、´875特許、´697特許の内容は、その全体が参照により本書に組み込まれる。
【0042】
図1に示すように、レーザ罫書き中、メディアンクラック115(不完全な割れ目(partial vent)、または単に割れ目(vent)としても知られる)がガラスシート112の主表面114に生成される。この割れ目を生成するために、ガラスの1つのエッジ近傍のガラス表面上に小さい最初の傷111を形成し、次いで、ビーム113を形成するレーザ光121を、ガラス表面を横断するように伝播させ、これに続くように冷却ノズル119から供給される冷却流体により冷却領域を生成させて、この傷を割れ目に変形させる。ガラスをレーザビームで加熱した後すぐに冷却剤で急冷すると、温度勾配とそれに応じた応力場が生成され、これが割れ目を伝播させる働きをする。
【0043】
種々の形状およびサイズを有するレーザビームが、上で参照した特許において採用されている。
【0044】
レーザ罫書きは典型的には、波長10.6μmで動作する炭酸ガスレーザを用いて行われる。この波長での酸化物ガラスの吸収は105〜106l/mを超え得、これによりCO2放射の有効浸透深さは1〜10μm未満である。罫書きの成功のために望ましい割れ目深さはガラス厚の10〜20%の範囲内であり、これは厚さ0.7mmの基板では70〜140μmに相当する。このことは、レーザ罫書き中の割れ目の形成は主にガラス表面より下での熱伝導性に依存することを意味し、これは比較的遅いプロセスである。そのため、ガラスの表面吸収の高さと熱伝導性が、プロセスウインドウを決定しかつ罫書き速度を制限する2つの重要な因子である。
【0045】
割れ目を形成するのに必要な引張応力に到達するためには、ビームの出力密度は、ガラス表面で十分な温度差を実現できる程度に高いものでなければならない。しかしながら、出力密度が高すぎると、露出中に罫書き線に沿ってガラス表面上の各点に送出されるエネルギーが、ガラスのアブレーションすなわち蒸発を引き起こす可能性がある。さらに、このような高い出力密度では、分離された分割片のエッジとそのエッジに隣接している領域内との両方に、高レベルの残留応力を生じさせることにもなり得る。一方、露出時間が短い場合(罫書き速度が速いとき)には、ガラスに送出されるエネルギーが、表面より下方のガラスを加熱して深い割れ目を生成するには不十分であるかもしれない。
【0046】
本書において使用される「Sモード」とは、所与の方向に沿ったレーザビームのエネルギー強度分布が実質的にガウス分布であるものを意味する。図3は、軸yに沿ったSモード分布を示している。例示的なSモードは、円形CO2レーザビームの断面の任意の直径に沿ったTEM00モードであろう。
【0047】
本書において使用される「フラットトップモード」とは、所与の方向に沿ったレーザビームのエネルギー強度分布が、実質的に非ガウス分布であり、かつ比較的平坦な上部(flat top)を呈しているものを意味する。DモードはTEM00モードおよびTEM01*モードを種々の比率で組み合わせたものであるが、これは例示的なフラットトップモードである。同時係属の同一出願人による「平坦なプロファイルのビームによるレーザ罫書き(LASER SCORING WITH FLAT PROFILE BEAM)」と題する、2007年9月28日に出願された米国特許出願第11/904,697号明細書(以下、「´697特許」)では、レーザビームのフラットトップモードのモードが複数開示されており、その関連部分の全体が参照により本書に組み込まれる。例えば、この特許参考文献の中で開示されている1つの例示的なフラットトップモードは、以下の数学的表現で近似可能なプロファイルを有したものである。
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、Iは座標(x、y)を有する位置でのレーザビームのエネルギー強度、ωxはビーム幅パラメータ、ωyはビーム長パラメータ、そしてAおよびBは定数であってレーザビームの形状およびエネルギー密度を決定する。特定の実施形態において、A/B=1/2である。
【0050】
で述べたように、レーザ罫書きについては既に文献の中で報告されている。ビームのエネルギー分布プロファイルとビーム形状は、レーザ罫書きプロセスに重大な影響を与え得る。従来のレーザ罫書きプロセスでは、本質的にガウスビームであるTEM00モードのエネルギー分布プロファイルを有しているレーザビームが使用されていた。上記の´697特許では、Dモードおよび他のフラットトップモードのレーザビームは、歪み点温度を超えることなくガラスを加熱することにおいて、Sモードと比較するとより効果的であり得、さらにこれらのモードでは、ガラス内に過剰な残留応力を生成させることなくより高速の罫書き速度を達成することができると教示されている。幅広でより均一な強度プロファイルのため、フラットトップモードの強度分布によれば、ビーム内の平均出力密度が低下した、結果として、出力変動の観点からプロセスウインドウが拡大した、レーザ罫書きが可能となる。そのため、移動している細長いビームの長さに沿ったフラットトップモード分布が望ましい。
【0051】
しかしながら、ビームの幅およびその幅に沿った強度分布によって、ガラス表面上での露出領域の幅、そしてガラス表面の達する温度、温度勾配プロファイル、すなわち熱応力プロファイルが決定される。レーザ罫書き中の熱応力プロファイルは、エッジ品質、すなわち、うねり、強度、残留応力などに大きな影響を与える。レーザビームの幅に沿った方向では、エネルギー分布が狭いため、フラットトップモードよりSモードのエネルギー強度分布の方が、より望ましい温度勾配、すなわちより望ましい応力プロファイルをもたらすと考えられる。そのため、レーザビームの幅に沿ったSモードが、罫書きエッジ沿いのガラスシートのうねりを低減させることになる。
【0052】
本発明は、種々の材料の精密な切断および罫書きに使用することができるが、以下では、切断または罫書きされるシート材料が本質的に無機ガラス材料から成る場合の実施形態に関して説明する。しかしながら通常の当業者は、本発明の教示の観点から、有機ポリマーシートおよびフィルム、金属シートおよびフィルム、異なる組成および/または性質を有する材料からなる複数のシートを含むラミネート材料など、他のシート材料の精密切断に、本発明のプロセスおよび装置を必要な変更を加えて適合させることができることを理解できる。
【0053】
II.シート材料
本発明は、大型のガラスシートに効果的に適用し得るものであり、例えば、切断幅が少なくとも2000mm、2400mm、2500mm、または2800mmのLCDガラスシート、あるいは少なくとも3000mmのものにさえ適用することができる。ビームが長さ方向においてフラットトップモードであることから、特に切断に関し、高速での実行が可能である。このビームはビーム幅方向においてSモードであるため、例えば切断幅に沿った全体のうねりが最大で50μmであるような、高精度の切断が実行可能であり、これについては以下で論じる。
【0054】
本発明は、例えば、平均厚さが最大で2mm、特定の実施形態では最大で1.5mm、特定の実施形態では最大で1.0mm、特定の実施形態では最大で0.8mm、特定の他の実施形態では最大で0.5mmなど、厚さの薄いガラスシートの切断に特に有利である。
【0055】
III.レーザ発生器
上で述べたように、レーザ罫書きは、約10.6μmの波長で動作するCO2レーザを採用することにより有利に行われる。この波長の放射は、現在の多くのLCDガラス基板において典型的なアルミノケイ酸塩ガラス材料など、多くのガラス材料が吸収し得るものである。
【0056】
数百ワットから数十キロワットまでの出力を有するCO2レーザ発生器であれば、市販のものを購入することができる。多くの市販のレーザ発生器が発するレーザビームは円形のビーム形状を有し、かつその任意の直径に沿ってガウス型のエネルギー分布プロファイルを有している。この円形のガウスビームを変形させて本発明の特定の実施形態で使用し、高速、高精度、および高エッジ品質の罫書きを達成することができる。
【0057】
IV.レーザビームの形状およびエネルギー分布
本書において説明されるレーザビームの特性および寸法は、罫書き対象のシートの表面によって遮られている位置でのビームに関するものである。レーザビームは、その伝播路における他の空間的位置で、様々な形状、特性、および寸法を有し得ることを理解されたい。
【0058】
細長いレーザビームは本発明にとって特に有利である。図2は、本発明の特定の実施形態において使用可能な、長さL(LB)および幅W(LB)を有する細長い楕円形ビームを概略的に示したものである。ビームの寸法L(LB)およびW(LB)は、レーザビームを遮るガラスシート表面の様々な位置で、本質的に一定のままであることが非常に望ましい。このためには、ガラス基板の表面が本質的に平坦さを維持していること、すなわち、ビームの長さ方向(x軸)およびビームの幅方向(y軸)の両方向において、ガラス基板表面の曲率が極僅かであることが非常に望ましい。罫書き表面上でのレーザビームの形状および寸法が実質的に一貫性のあるものであれば、露出表面の各部分へのレーザエネルギーの送出を実質的に一貫性のあるものとすること、すなわち罫書き線に沿った温度勾配を一貫性のあるものとすることが可能になり、これは、高い罫書きエッジ品質を有する一貫性のある罫書きの成功のために必要なことである。
【0059】
図3は、本発明の一実施の形態によるレーザビームの、幅(y軸)に沿ったガウス型のエネルギー分布プロファイルを概略的に示したものである。このプロファイルは、その幅の間の最大強度Imax(W)と幅W(LB)とを示している。本開示において、ビーム幅W(LB)は、このビームのうち強度Imax(W)・e-2を有する一側部の点から、その対向する側の強度Imax(W)・e-2を有する点までの、幅方向における直線距離で定義される。ここでeはオイラーの無理数である。
【0060】
ガラスシートの罫書きを成功させて高いエッジ品質を得るには、狭ビームが望ましい。すなわち、本発明の特定の実施形態において、露出表面により遮断されたレーザビームのビーム幅W(LB)は、0.5mmから3mmであることが望ましく、特定の実施形態では0.5mmから2.5mm、特定の実施形態では0.8mmから2.0mmであることが望ましい。このような狭ビームは、ガラス表面上に狭くかつ一貫性のある割れ目を生成するのに必要とされる、限られた幅の集中したレーザエネルギーを送出する。
【0061】
図4は、本発明の一実施の形態によるレーザビームの、長さ(x軸)に沿ったDモードのエネルギー分布プロファイルを概略的に示したものである。このプロファイルは、その長さの間の最大強度Imax(L)と長さL(LB)とを示している。本開示において、ビーム長L(LB)は、このビームのうち強度Imax(L)・e-2を有する一端部の点から、その対向する端部の強度Imax(L)・e-2を有する点までの、長さ方向における直線距離で定義される。
【0062】
同様に、図5は、本発明の別の実施の形態によるレーザビームの、長さ(x軸)に沿ったフラットトップモードの分布プロファイルを概略的に示したものである。
【0063】
長さが60mmから300mm、特定の実施形態では60mmから200mm、特定の実施形態では75mmから150mmの細長いレーザビームが、罫書き速度が少なくとも300mm/秒、特定の実施形態では少なくとも500mm/秒、特定の実施形態では少なくとも600mm/秒、特定の実施形態では少なくとも750mm/秒の、高速のレーザ罫書きの達成のために特に望ましい。罫書き線に垂直な方向へと地面に対して相対的に移動しているガラスシートにとっては(レーザ露出プロセス中レーザビームは、罫書き線に垂直な方向において、シートおよび/または罫書き線に対して相対的に、実質的に静止したままであるかもしれないが)、とりわけ、罫書きプロセスが上流工程および下流工程のステップに与える影響を最小限に抑えるため、レーザ罫書き速度を少なくとも750mm/秒とすることが非常に望ましい。1000mm/秒、特定の実施形態では1200mm/秒、特定の他の実施形態では1400mm/秒もの速さの罫書き速度が既に達成されている。
【0064】
レーザビームのアスペクト比を、ビーム幅W(LB)に対するビーム長L(LB)の比率で定義する。ガラスシートへの高速のレーザ罫書きのためには、アスペクト比が少なくとも30、特定の他の実施形態では少なくとも40、特定の他の実施形態では少なくとも50、特定の他の実施形態では少なくとも80、特定の他の実施形態では少なくとも100、特定の実施形態では少なくとも200、特定の実施形態では最大で400、特定の実施形態では最大で300であることが望ましい。
【0065】
V.ビーム変形用光学アセンブリ
市販のCO2レーザは、典型的には、その任意の直径に沿ってガウス型のエネルギー分布プロファイルを有する、円形のレーザビームを提供する。このビームを、レーザ源に近接した位置で、ビーム拡大器や他の光学部品を用いて変形させ、本発明で使用する直径D(CLB)の円形レーザビームを得ることができる。
【0066】
その後、直径D(CLB)の円形レーザビームを、所望のビームサイズおよびエネルギー分布プロファイルを有するよう、光学アセンブリによってさらに変形させる。特定の実施形態において、この光学アセンブリは、とりわけ以下の2つの機能を提供する。すなわち:(i)長さ方向における強度分布をSモードからフラットトップモードへと変形させながら、ビームを長さ方向に拡大させる;そして(ii)Sモードの強度プロファイルを維持したまま、罫書き対象のガラスシート表面へと送出されるビームをその幅方向において集中させる。第1の機能は、ビームを長さ方向に発散させる表面を有する、第1の変形シリンドリカルレンズによって実行することができる。第2の機能は、ビームを幅方向に集中させる表面を有する、第2のシリンドリカルレンズによって実行することができる。第2レンズの発散面が完全な円筒状であれば、ビームはSモードの分布プロファイルを維持したまま発散することになる。第2レンズの発散面を適切な形状に変形させると、ビームの長さ方向においてフラットトップモードの強度分布を有する、発散する出力ビームが得られる。
【0067】
図6は、本発明の一実施形態の光学アセンブリの、動作原理を概略的に示したものである。この図では、第1レンズLS1および第2レンズLS2を通過した円形レーザビームが示されている。線xxに沿って示されているのは、軸xに垂直なレンズ断面であり、線yyに沿って示されているのは、軸yに垂直なレンズ断面であり、そして線zzに沿って示されているのは、軸z(すなわち、レーザビームの伝播方向)に垂直なビーム断面である。すなわち、レンズLS1は、ビーム長L(LB)を増加させ、かつ長さ方向において強度分布をSモードからフラットトップモードへと変化させる、変形された円筒状発散面を有する。レンズLS2はシリンドリカルレンズであるが、単にレーザビームを幅方向において集中させ、幅方向でのSモードの強度分布を維持したまま狭ビームを得るものである。レンズLS2は、幅方向(y軸)のビームプロファイルを、あるSモードから別のSモードに変化させるものでもよいし、変化させないものでもよいことを理解されたい。例えば、一実施の形態において、レンズLS2はビームの幅方向におけるガウスプロファイルを狭めることによって、ガラス表面に送出するための、より狭いガウスプロファイルを有する出力ビームを得る。
【0068】
上述の機能(i)および(ii)の両方を実行する、単一のレンズを作ることも可能である。
【0069】
レンズを作製する際には、レーザビームの波長に適した材料で作ってもよい。CO2レーザに対しては、屈折レンズをゲルマニウムやZnSeなどで作製してもよい。反射レンズまたは光回折格子を本発明にさらに用いてもよい。
【0070】
光学の当業者は、本書における教示に鑑みて、適切な表面形状、寸法、材料選択によりレンズを設計および作製し、さらに本発明の要求に合ったモジュールにこのレンズを組み立てることができる。
【0071】
VI.レーザビームの動きおよび露出
罫書きプロセス中にはガラスシートの表面の一部のみがレーザビームに露出される。この露出面の長さはL(EA)、幅はW(EA)である。レーザビーム全体がシート表面の範囲内に位置し、露出領域が完全に平坦でありかつ完全にレーザの伝播方向に垂直であり、さらに露出領域がレーザビームに対して相対的に完全に静止した状態を維持している場合には、L(EA)=L(LB)かつW(EA)=L(LB)である。
【0072】
上で論じたように、切断速度、切断精度、およびエッジ品質に重大な悪影響がなければ、露出表面が完全な平面からずれることは、ある程度まで許容できる。このため、一定量のシート撓みやレーザ伝播方向のシートの動きは許容することができる。
【0073】
特定の実施形態においては、レーザビームを罫書き対象のシートの表面に対して罫書き線に沿って動かしてもよく、このときシート表面の露出領域は、レーザの移動中にレーザビームが及んだ全ての領域となる。すなわち、レーザビームが罫書きプロセス中にシートの一方のエッジから他方のエッジへと移動する場合、露出領域の長さL(EA)はシート幅に等しくなる。本発明の特定の実施形態において、レーザビームはガラスシート表面上の露出領域内で移動させることが望ましい。高品質のエッジを有する一貫性のある高精度の罫書きを成功させるためには、露出領域の幅W(EA)がレーザビームの幅W(LB)と略等しくなるよう、すなわちW(EA)≒W(LB)となるよう、その移動方向が、本質的に直線的かつレーザビームの長さ方向に平行であることが望ましい。本開示において「W(EA)≒W(LB)」は、比率W(EA)/W(LB)が最大で1.5であることを意味する。特定の実施形態においては、W(EA)/W(LB)≦1.4;特定の他の実施形態ではW(EA)/W(LB)≦1.3、特定の他の実施形態ではW(EA)/W(LB)≦1.2、特定の他の実施形態ではW(EA)/W(LB)≦1.1、特定の他の実施形態ではW(EA)/W(LB)≦1.05である。
【0074】
罫書き対象のガラスシート表面に対するレーザビームの移動速度を、罫書き速度と定義する。本発明の特定の実施形態においては、例えばガラスシートが延伸工程から外れて仕上げ用の静止段階に置かれているときなど、ガラスシートの地面に対する相対速度が本質的にゼロであるときに、罫書き速度を少なくとも300mm/秒とすることで罫書きを成功させることができる。特定の他の実施形態においては、例えばガラスが製造ライン内で(例えば、フュージョンダウンドロープロセスの延伸部の下部で)動いているときなど、地面に対するガラスの相対速度がゼロでないときに、罫書き速度を少なくとも750mm/秒とすることで罫書きを成功させることができる。
【0075】
高速の罫書き速度は、とりわけ、レーザビームの長さが長いこと、高アスペクト比、およびレーザビームの長さ方向および幅方向の両方におけるレーザ強度分布を正確に制御することにより可能となる。
【0076】
ガラスシートのレーザ罫書きは、ガラスシートの1つのエッジ上またはその近傍の、小さい傷から開始されることが望ましい。傷は、エッジでのホイールによる機械的スクライブ、レーザパルスの利用、または他の方法で生成可能であり、この傷が、レーザビームにより生成される割れ目ラインの開始点としての役割を果たす。
【0077】
割れ目の形成の成功には、多くの実施形態において単一経路のレーザの露出で十分であるが、特定の実施形態では、より深い割れ目を得るため、あるいは、以下に詳細に説明するような追加の曲げを施すことなく直接ガラスシートを分割させるため、複数経路のレーザの露出を同じ罫書き線に沿って実行することが望ましい。複数の経路は、ガラスシートが実質的に地面に対して相対的に静止したままである場合など、経路を正確に繰り返し得る場合に有利に用いることができる。
【0078】
VII.冷却流体および冷却プロセス
上で論じたように、特定の実施形態においては、常に必要というわけではないが、レーザ露出直後に冷却流体を露出領域に送出することが望ましい。冷却は、制御された精密罫書きに必要な、レーザによる割れ目の形成に有用である。
【0079】
冷却流体は、ガス、液体、またはこれらの混合物やこれらを組み合わせたものとすることができる。冷却流体はガラスの表面を汚染することがないことが望ましく、これはLCDガラス基板にとって特に重要である。すなわち、冷却流体は、冷気噴射、冷窒素ガス噴射、水噴射などとしてもよい。冷却すると、罫書き線に沿った割れ目が、ガラスシート表面の露出領域内で所望の深さを有して形成される。
【0080】
ガラス表面に冷却流体を送出するために、レーザビームを追跡するノズルを使用してもよい。
【0081】
VIII.曲げ
上で述べたように、冷却を伴ってまたは冷却を伴わないでレーザ露出すると、ガラスシートが罫書き線に沿って破断または分割されて2つの分離されたガラス片が形成され得る。しかしながら、これは常に望ましいわけではないし、特に複数経路のレーザ露出を正確に実行できない場合には必ず可能なことでもない。罫書き線に沿った割れ目では、曲げモーメントを加えることによってガラスシートの分割を達成することができる。
【0082】
IX.分割
本発明によって達成可能な高品質のガラスシート分割エッジは、全体のうねりが小さいことを特徴とする。罫書きエッジが少なくとも2000mm、さらには少なくとも2500mm、さらには少なくとも2800mm、さらには少なくとも3000mmのガラスシートでさえ、本発明が達成し得る全体のうねりは、最大で50μm、特定の実施形態では最大で40μmである。これは1つには、レーザビームが幅方向においてSモードの強度プロファイルであり、かつ長さ方向においてフラットトップモードの強度プロファイルであることに起因すると考えられる。大型のガラスシートにとって、罫書きエッジの一端から他端までの全体のうねりを最大で50μmとすることは、大きな技術的課題である。本発明は、ビームプロファイルを選択することで達成される精密さにより、この厳しい要求を満たすことができると考えられる。
【0083】
本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本発明の種々の改変および変更が作製可能であることは当業者には明らかであろう。すなわち、本発明の改変および変形が添付の請求項およびその同等物の範囲内であるならば、本発明はこのような改変および変形を含むと意図される。
【符号の説明】
【0084】
111 傷
112 ガラスシート
113 ビーム
115 割れ目
119 冷却ノズル
121 レーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6