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特開2015-221772炭化水素油、並びにこれを含有する化粧料および皮膚外用剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-221772(P2015-221772A)
(43)【公開日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】炭化水素油、並びにこれを含有する化粧料および皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20151113BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20151113BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20151113BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20151113BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20151113BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20151113BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20151113BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20151113BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20151113BHJP
   A61Q 1/06 20060101ALI20151113BHJP
   C12P 5/02 20060101ALI20151113BHJP
   C07C 13/18 20060101ALI20151113BHJP
   C07C 5/03 20060101ALI20151113BHJP
【FI】
   A61K8/31
   A61Q1/12
   A61Q19/08
   A61Q19/00
   A61Q1/10
   A61Q19/10
   A61Q1/14
   A61Q5/12
   A61Q5/06
   A61Q1/06
   C12P5/02
   C07C13/18
   C07C5/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-107317(P2014-107317)
(22)【出願日】2014年5月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000226437
【氏名又は名称】日光ケミカルズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301068114
【氏名又は名称】株式会社コスモステクニカルセンター
(72)【発明者】
【氏名】田中 一光
(72)【発明者】
【氏名】タキ コフィ アルフォンソ
【テーマコード(参考)】
4B064
4C083
4H006
【Fターム(参考)】
4B064AB02
4B064CA01
4B064CA02
4B064DA01
4B064DA20
4C083AA122
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB282
4C083AB332
4C083AB362
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC031
4C083AC032
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC542
4C083AC582
4C083AC642
4C083AC712
4C083AC792
4C083AC852
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD242
4C083AD282
4C083AD302
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD412
4C083AD532
4C083AD572
4C083AD622
4C083AD642
4C083AD662
4C083BB13
4C083CC02
4C083CC05
4C083CC12
4C083CC13
4C083CC14
4C083CC23
4C083CC25
4C083CC33
4C083CC36
4C083CC39
4C083DD22
4C083DD27
4C083DD30
4C083DD31
4C083DD32
4C083DD41
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE26
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB12
4H006AC11
4H006BE20
(57)【要約】
【課題】化粧料および皮膚外用剤に汎用される炭化水素油は、その起源より石油系、合成系、動物魚系、植物系などが存在する。しかしながらこれらの資源はその供給に限りがあり、近年の地球環境問題より、環境負荷が少なく継続維持可能な原料への要求が高まりつつある。そこで本発明は、継続して安定に入手が可能な炭化水素油並びにこれを配合した化粧料および皮膚外用剤を提供することにある。
【解決手段】これらの実情に鑑み、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、炭素基質を含む栄養源存在下において微生物が産生するファルネセンを二量化し、水素添加などの化学処理をして得られる環状構造を有する炭化水素油が皮膚外用剤用の油剤として有効であり、かつ継続して安定に入手可能であることから、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で表される化合物(1)、(3)、(5)、(7)、およびそれらの立体異性体(2)、(4)、(6)、(8)から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする炭化水素油。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】
【請求項2】
前記一般式(1)〜(8)で表される化合物が、炭素基質を含む栄養源存在下において微生物を培養して得られるファルネセンを二量化した後、水素添加して得られることを特徴とする炭化水素油。
【請求項3】
前記炭素基質を含む栄養源がエタノール、グルコース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、フルクトース、マンノース、ショ糖、グリセリン、フロリキシド、N−グルコサミン、グルクロン酸、セルロース系物質、糖蜜、酢酸塩およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される請求項1〜2のいずれか1項に記載の炭化水素油。
【請求項4】
前記微生物が、バチルス(Bacillus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、エシェリキア(Escherichia)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、カンジダ(Candida)属から選択される属である請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化水素油。
【請求項5】
常温で液状であることを特徴とする、請求項1〜5のいずか1項に記載の炭化水素油。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭化水素油の1種または2種以上を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭化水素油の1種または2種以上を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な炭化水素油、並びにこの炭化水素油を含有する化粧料および皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に化粧料および皮膚外用剤に用いられる油剤としては油脂、ロウ類、エステル油、エーテル油、炭化水素油などが挙げられる。なかでも炭化水素油は、皮膚に疎水性の皮膜を形成して水分の蒸散を防ぐなどの理由から単独または他の油剤と併用して皮膚外用剤に汎用されている。炭化水素油はその起源から、流動パラフィン、ワセリン、イソパラフィンなどの石油系、α−オレフィンオリゴマー、ポリブテン、合成スクワランなどの合成系、オゾケライトやこれを精製したセレシンなどの鉱物系、サメ肝油から得られるスクワレンおよびこれに水素添加したスクワランなどの動物魚系、オリーブやコメヌカに存在するスクワレンおよびこれに水素添加したスクワラン、オレンジの皮から得られるリモネン、松の樹液から得られるテレビン油などの植物系に分類される。
【0003】
しかしながら石油は限りある埋蔵資源であり、数十年で枯渇するとも言われている。合成系も石油由来の成分を出発原料としていることから同様の問題が生じており、さらに石油の供給が中東情勢その他の影響を受けることから市場価格の変動が極めて大きい。鉱物系はオゾケライトの鉱脈が少なくなってきており、供給量が減っている。さらに、サメは海洋資源保護の観点から捕獲や国際取引に規制の動きがあり、漁獲高が激減している。また植物系は、食品用途へのニーズ拡大、生産量が天候などの環境因子に左右されることなどから、ここ数年、一定価格で安定に入手することが困難な状態にある。そこで、サステイナブル(持続可能な)原料由来の環境に優しく安定に入手できる炭化水素油の開発が求められていた。
【0004】
非特許文献1には、「α−オレフィンオリゴマー」の定義として、α−オレフィンを重合した後、水素添加して得られる側鎖を有する炭化水素で、その重合度は3〜6であると記載されている。また「重質流動イソパラフィン」の定義として、イソブテンとn−ブテンを重合した後、水素添加して得られる側鎖を有する炭化水素の混合物であると記載されている。さらにイソプレンより合成して得られる飽和炭化水素油である「合成スクワラン」が収載されている。動物魚系としては、アイザメその他深海に生息するサメ類の肝油から得られたスクワレンを水素添加して得られる「スクワラン」が収載されている。植物系としては、オリーブ油、コメヌカ油、コムギ胚芽油、ゴマ油などの植物油から抽出されたスクワレンを水素添加して得られる「植物性スクワラン」が収載されている。このように現在、化粧料および皮膚外用剤に用いられている炭化水素油剤は石油系、合成系、動物魚系、植物系であり、将来にわたり継続して安定に入手することが難しい。前述したよう石油の埋蔵量にも問題があり、さらに近年は石油の市場価格の変動や植物の生産高に影響され、炭化水素油の価格が安定しない状況が続いており、工業的に利用するには不安がある。
【0005】
これらに代わり近年、微生物を用いたバイオ技術が注目されている。特許文献1は、炭素基質を含む栄養源存在下において微細藻類および/または微生物を培養して得られるバイオマスから脂質を回収し、化学処理を加えてジェット燃料を生産する方法を教示する。これは、微生物(バイオ)によって得られた油が石油代替エネルギーとして有効であるとの内容である。
【0006】
特許文献2は、遺伝子組み換え宿主細胞からイソプレノイドを生産する方法を教示する。しかしながら、本文献ではイソプレノイドが医薬品、化粧品、ファインケミカル中間体として有用であるとの記述はあるものの、具体的な記述はなく、その重合物さらには水素添加物の利用についての記述も一切ない。
【0007】
特許文献3は、同様に宿主細胞からイソプレノイドを生産する方法で、特許文献2を元にイソプレノイドの生産性をさらに高めた内容となっている。
特許文献4は、宿主細胞からバイオ合成したC5イソプレノイド化合物および添加物から成る燃料組成物が、石油代替エネルギーとなりうることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2010−528627号公報
【特許文献2】特表2009−538601号公報
【特許文献3】特表2010−539902号公報
【特許文献4】登録第4630940号広報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】医薬部外品原料規格2006(薬事日報社)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、継続的に安定して入手可能な資源由来の炭化水素油を得ること、さらにこの炭化水素油を含有する化粧料および皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本課題を解決すべく鋭意検討を加えたところ、炭素基質を含む栄養源存在下において、微生物を宿主細胞として得られるイソプレノイドの一種であるファルネセンを二量化し、水素添加することにより得られる炭化水素油が、化粧料および皮膚外用剤用の油剤として有効であることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0012】
本発明の炭化水素油は、皮膚塗布時のクッション性が高く、また閉塞性(水分蒸散性)に優れ、既存の炭化水素油と比較して、化粧料および皮膚外用剤用途として大変優れた特徴を有する。さらに、本発明の炭化水素油は、ローション、乳液、クリーム、美容液、オイル、クレンジング、洗顔料など様々な形態の化粧料および皮膚外用剤において用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、地球環境への負荷が少なく、さらに継続して安定に入手可能な炭化水素油並びにこれを配合してなる化粧料および皮膚外用剤に関する。
【0014】
本発明における炭化水素油とは、炭素と水素よりなる化合物で、通常は炭素原子の配列により、直鎖、分岐、環式または部分的に環状である主鎖を形成するが、本発明では環状構造を有するものであり、通常医薬品、医薬部外品、化粧料等に対して配合されるいずれのものもあてはまる。さらに本発明の炭化水素油は常温で液体である。具体的には、次の一般式で表される化合物(1)、(3)、(5)、(7)、およびそれらの立体異性体(2)、(4)、(6)、(8)から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする炭化水素油である。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】
【0015】
本発明の炭化水素油は、炭素基質を含む栄養源存在下において微生物を培養して得られるファルネセンを二量化した後、水素添加して得られることを特徴とする。
培地に添加する栄養源としては、炭素基質を含む栄養源としてエタノール、グルコース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、フルクトース、マンノース、ショ糖、グリセリン、フロリキシド、N−グルコサミン、グルクロン酸、解重合セルロース系物質、糖蜜、酢酸塩などがあげられるが、とくにショ糖、グルコースおよび/またはフルクトースが好ましい。さらに窒素源、カルシウム源、リン源並びに酸素分子、イオウ原子、水酸基をもつ物質、生物学的に許容可能なキレート剤、抗生物質を加えてもよい。発酵は、用いる微生物の生育条件に合わせて嫌気的(酸素欠乏)、好気的(有酸素)いずれの条件下でも実施できる。
【0016】
本発明における微生物とは、古細菌、原核生物、真核生物のことである。微生物の例としては、バチルス(Bacillus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、エシェリキア(Escherichia)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、カンジダ(Candida)属などが挙げられる。とくに原核生物であるエシェリキア属、真核生物であるサッカロミセスに属する菌株が好ましく、非病原性菌株および/または米国食品医薬品局によってGRAS(安全性認定食品添加物)に認定されている菌株であればより好ましい。
【0017】
本発明におけるファルネセンは、α−ファルネセン、β−ファルネセンのいずれも可能であるが、β−ファルネセンがより好ましい。
さらに本発明の化粧料および皮膚外用剤には、前記炭化水素油の他、通常の医薬品、医薬部外品、化粧料等に用いられる各種任意成分、たとえば油剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、乳化剤、顔料、粉体、pH調整剤、薬効成分、紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料、水等を適宜配合することができる。
【0018】
具体的には、油剤としてはトリグリセリドからなる油脂、ロウ・ワックス類、脂肪酸、有機酸、エーテル油、エステル油、シリコーン油、フッ素油等が挙げられ、保湿剤としてはソルビトール、キシリトール、グリセリン、マルチトール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ピロリドンカルボン酸ナトリウムやヒアルロン酸などが挙げられ、増粘剤としてはカルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、カラギーナン、ゼラチンなどの水溶性高分子、塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの電解質、(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、(ブチレン/エチレン/スチレン)コポリマー、水添ポリデセンと(スチレン/イソプレン)コポリマーの混合物、(POE/POB)ジメチルエーテルなどの油溶性高分子が挙げられ、防腐剤としては、パラオキシ安息香酸塩などの有機酸およびその誘導体、フェノール類、四級アンモニウム塩、感光素、アルキルグリセリルエーテル、脂肪酸グリセリルエステル、ポリアミノプロピルビグアニドなどが挙げられる。乳化剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどが挙げられ、粉体としてはタルク、セリサイト、マイカ、カオリン、シリカ、ベントナイト、亜鉛華、雲母、雲母チタン、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、ベンガラ、酸化鉄、群青などが挙げられ、pH調整剤としてはクエン酸−クエン酸ナトリウムなどの緩衝剤が挙げられ、薬効成分としてはアルブチン、ビタミンA、B、C、D、Eおよびそれらの誘導体、グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン、パントテン酸誘導体、トラネキサム酸およびその誘導体、各種アミノ酸およびその誘導体、各種植物抽出物などが挙げられるが、これに限定されない。
【0019】
本発明にかかる化粧料および皮膚外用剤とは、一般式(1)〜(8)で表される炭化水素油を油剤として配合するものであり、その配合量は特に限定されず、形態としても溶液系、可溶化系、乳化系、油性系、水系又はそれらを併せもつ二層型、三層型等の様々な形態をとることができる。
以下、本発明を実施するための形態をより詳細に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
実施例1では、炭素源存在下において微生物が産生するファルネセンを二量化した後、水素添加して得られる一般式(1)〜(8)に記載の構造を有する炭化水素油の製造方法について記載する。
【0021】
(1)製造方法 例1:発明品1
サッカロミセス セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)をショ糖、グルコース、フルクトースまたはこれらの混合物存在下で最大比増殖速度を提供しうるレベル未満の温度(25〜40℃)で10〜15時間培養した後、培養液を遠心分離しα−ファルネセンおよび/またはβ−ファルネセンを得る。溶媒存在下で50〜400℃に加熱して環化反応を行なう。さらに130℃以上で2.0MPa以上まで加圧し、触媒および溶媒存在下で10〜20時間反応し水素添加処理を行う。ろ過により触媒を回収した後、200℃以上まで昇温し、未反応のファルネセンを留去、分画した後、水添ファルネセン二量体を得る。得られた物質を発明品1とする。
【0022】
(2)製造方法 例2:発明品2
大腸菌(Escherichia coli)をグルコース存在下で最大比増殖速度を提供しうるレベル未満の温度で培養した後、培養液を遠心分離しα−ファルネセンおよび/またはβ−ファルネセンを得る。触媒および溶媒存在下、攪拌し環化反応を行う。ろ過により触媒を回収して脱水ファルネセン二量体を得る。130℃以上で2.0MPa以上まで加圧し、触媒および溶媒存在下で10〜20時間反応し水素添加処理を行う。ろ過により触媒を回収した後、200℃以上まで昇温し、未反応のファルネセンを留去、分画した後、水添ファルネセン二量体を得る。得られた物質を発明品2とする。
【実施例2】
【0023】
発明品1〜2の粘度および摩擦係数を測定し、皮膚外用剤に汎用されている炭化水素油であるサメスクワラン(比較品1)、流動パラフィン(比較品2)と比較した。
【0024】
(1)粘度測定
東機産業社製TVB−10M型粘度計を使用し、ローターNo.1、12rpm、30秒間の条件で測定を行った。
【0025】
(2)摩擦係数測定
人工皮革(2.5×5.0cm)を貼ったスライドガラスを、カトーテック社製摩擦感テスターKES−SEの測定台に固定し、50μLの試料(4μL/cm)を均一になるよう塗布する。次に、25gの重りを乗せたシリコンラバー付センサーを、試料を塗布した人工皮革上にセットし、摩擦係数(MIU、SD)を測定した。3回の測定の平均値を結果とした。
【0026】
(3)結果
測定結果を表1に示す。発明品1および2は、皮膚外用剤に汎用されている炭化水素油であるサメスクワラン(比較品1)、流動パラフィン(比較品2)に比べて、粘度が高く、摩擦係数(MIU)が優れるという結果となった。

【表1】
【実施例3】
【0027】
(1)閉塞性(水分蒸散量)測定
クロマト用スクリュー管に0.5mLの精製水をはかりとり、3次元皮膚モデル剃り抜き用カッターで8mmφに切り抜いたメンブランフィルター(ADVANCE0.2μm)で蓋をした。この蓋上に試料5μLを塗布し、24時間、デシケーター(温度25℃、湿度65%、シリカゲル)内に静置した。試験前後のクロマト用スクリュー管の重量をはかり、その差より蒸散した水分量(mg)を算出した。
【0028】
(2)結果
測定結果を表2に示す。発明品1および2は、他の炭化水素油と同等の閉塞性を示した。
【表2】
【実施例4】
【0029】
モイスチュアクリーム
A 発明品1 5.0(質量%)
パルミチン酸エチルヘキシル 5.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 5.0
ステアリルアルコール 4.0
ベヘニルアルコール 2.0
ペンタステアリン酸ポリグリセリル−10 1.2
PEG−100水添ヒマシ油 0.2
酢酸トコフェロール 0.1
セラミド2 0.02
B 1,3−ブチレングリコール 5.0
ヒアルロン酸ナトリウム液(1%水溶液) 1.0
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
クエン酸ナトリウム 0.05
エデト酸四ナトリウム 0.01
パラベン 適量
精製水で全量
(調製方法)A、Bをそれぞれ80℃に加温して均一溶解する。Aをホモミキサーで攪拌しながらBを徐々に添加し室温まで攪拌冷却し調製を終了する。
(結果)安定性が良好で、伸びが良く、保湿性に優れたクリームを得た。
【実施例5】
【0030】
アンチエイジングクリーム
A ペンタステアリン酸ポリグリセリル−10 2.8(質量%)
ステアリン酸グリセリル 1.8
発明品2 9.0
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 5.0
ベヘニルアルコール 4.1
マカデミアナッツ油 2.0
ホホバ油 1.0
ステアロイル乳酸ナトリウム 0.02
セラミド2 0.002
セラミド3 0.014
セラミド6 0.002
フィトスフィンゴシン 0.002
B 1,3−ブチレングリコール 10.0
ケルトロール 3.0
メチルパラベン 適量
C アセチルヒドロキシプロリン 3.0
L−アルギニン 0.2
Peptiskin1) 0.2
Thiotaine2) 0.2
NIKKOL NET−ビタミンACE3) 0.2
クエン酸三ナトリウム 0.5
エデト酸四ナトリウム 0.1
精製水で全量

1)Peptiskin(ソラビア社製):(アルギニン/リシン)ポリペプチド
2)Thiotaine(AGI Dermatics社製):エルゴチオネイン、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、塩化カリウム、フェノキシエタノール、塩化ナトリウム
3)NIKKOL NET−ビタミンACE(日光ケミカルズ社製):グリセリン、ラウリン酸ポリグリセリル−10、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、ピーナッツ油、スクワラン、メチルパラベン、パルミチン酸レチノール、プロピルパラベン、水、酢酸トコフェロール、トコフェロール
(調製方法)A、Bをそれぞれ80℃に加温、均一溶解する。Cを室温で撹拌、溶解する。80℃を維持し、Bをホモミキサーで撹拌しながらAを徐々に加えていく。撹拌冷却を行い、50℃でCを加え、35℃まで冷却し調製を終了する。
(結果)安定性が良好で、伸びが良く、保湿性に優れたクリームを得た。
【実施例6】
【0031】
W/Oスキンクリーム
A イソステアリン酸ポリグリセリル−2 2.5(質量%)
ポリリシノレイン酸ポリグリセリル−6 1.5
シクロペンタシロキサン 5.0
パルミチン酸エチルヘキシル 3.5
発明品1 1.0
B グリセリン 10.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
アルギン酸ナトリウム 5.0
硫酸マグネシウム 0.5
パラベン 適量
精製水で全量
(調製方法)Bを80℃に加温して均一溶解する。Aをディスパーミキサーで攪拌しながらBを徐々に添加し、室温まで冷却した後調製を終了する。
(結果)安定性が良好で、伸びが良く、保湿性に優れたクリームを得た。
【実施例7】
【0032】
アンチエイジング美容液
A 1,3−ブチレングリコール 5.0(質量%)
グリセリン 5.0
PEG15004) 1.5
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー 0.16
キサンタンガム 7.84
FUCOGEL 1000PP5) 1.0
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
アルギニン 0.15
エデト酸二ナトリウム 0.05
メチルパラベン 適量
精製水で全量
B NIKKOL レチノールH106) 1.0
発明品1 1.0
トコフェロール 0.1

4)PEG1500(第一工業製薬社製):PEG−6、PEG−32
5)FUCOGEL 1000PP(ソラビア社製):ビオサッカリドガム−1、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、フェノキシエタノール
6)NIKKOL レチノールH10(日光ケミカルズ社製):トリ(カプリル酸/カプリン酸グリセリル)、水添レチノール
(調製方法)Aを80℃に加温し、均一溶解する。Aを攪拌しながらBを徐々に加え、均になったところで、室温まで冷却し調製を終了する。
(結果)安定性が良好で、伸びが良く、保湿性に優れた美容液を得た。
【実施例8】
【0033】
アイゲル
A NIKKOL トコレチノエート−107) 2.0質量%
水添レシチン 1.0
発明品2 10.0
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 6.0
B (アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー 0.3
キサンタンガム 0.2
精製水 30.0
C 1,3−ブチレングリコール 7.0
ヒアルロン酸ナトリウム水溶液(1%) 1.0
メチルパラベン 適量
精製水で全量
D アルギニン 0.2
精製水 5.0

7)NIKKOL トコレチノエート−10(日光ケミカルズ):トコフェロール、レチノイン酸トコフェリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸グリセリル)
(調製方法)A、B、Cをそれぞれ80℃に加温して均一溶解する。CにBを添加し混合した後、Aを徐々に添加する。ABCを撹拌しながら冷却し、50℃でDを添加し、室温まで冷却して調製を終了する。
(結果)安定性が良好で、伸びが良く、保湿性に優れたアイゲルを得た。
【実施例9】
【0034】
アンチエイジングローション
A 1,3−ブチレングリコール 3.0(質量%)
ジプロピレングリコール 3.0
NIKKOL レチノールH108) 0.5
PEG−20水添ヒマシ油 0.5
PEG−40水添ヒマシ油 0.1
発明品1 0.1
酢酸トコフェロール 0.1
B グリセリン 3.0
ペンチレングリコール 1.0
ヒアルロン酸ナトリウム水溶液(1%) 1.0
PEG−32 0.3
エデト酸二ナトリウム 0.05
メチルパラベン 適量
精製水で全量

8)NIKKOL レチノールH10(日光ケミカルズ社製):トリ(カプリル酸/カプリン酸グリセリル)、水添レチノール
(調製方法)A、Bをそれぞれ80℃まで加温して均一溶解する。80℃でAを攪拌しながらBを徐々に添加し可溶化する。室温まで冷却して調製を終了する。
(結果)安定性が良好で、べたつかず、しっとり感に優れたローションを得た。
【実施例10】
【0035】
美容オイル
オリーブ油 40.0(質量%)
テトラヘキシルデカン酸アスコルビル 3.0
NIKKOL ニコガード889) 0.8
トコフェロール 0.2
発明品1で全量

9)NIKKOL ニコガード88(日光ケミカルズ社製):トコフェロール、エチルヘキシルグリセリン、カプリル酸グリセリル
(調製方法)室温で全ての原料を均一になるまで撹拌し調製を終了する。
(結果)安定性が良好で、伸びが良く、保湿性に優れたオイル製剤を得た。
【実施例11】
【0036】
バスオイル
ホホバ油 20.0(質量%)
テトラオレイン酸ソルベス−3 14.0
アボカド油 5.0
セスキオレイン酸ソルビタン 3.0
オレス−2 3.0
プロピルパラベン 適量
BHT 適量
発明品1で全量
(調製方法)室温で全ての原料を均一になるまで撹拌し調製を終了する。
(結果)安定性が良好で、湯への溶解が良く、保湿性に優れたバスオイルを得た。
【実施例12】
【0037】
クレンジングクリーム
A 発明品1 25.0(質量%)
トリ(カプリル酸/カプリン酸グリセリル) 7.0
ジカプリル酸PG 3.0
ベヘニルアルコール 3.0
パルミチン酸セチル 3.0
ポリソルベート60 2.0
NIKKOL MGS−DEXV10) 2.0
ステアリン酸 1.5
テトラオレイン酸ソルベス−30 1.0
マカデミアナッツ油 0.5
トコフェロール 0.1
B ジプロピレングリコール 3.0
1,3−ブチレングリコール 2.0
ラウロイルメチルタウリンナトリウム 0.1
パラベン 適量
精製水で全量

10)NIKKOL MGS−DEXV(日光ケミカルズ):ステアリン酸グリセリル(SE)、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸PEG−10
(調製方法)A、Bをそれぞれ80℃に加温し均一溶解する。攪拌しながらBにAを添加する。攪拌を続けながら室温まで冷却し調製を終了する。
(結果)安定性が良好で、伸びが良く、クレンジング力に優れた製剤を得た。
【実施例13】
【0038】
クレンジングオイル
パルミチン酸イソプロピル 25.0(質量%)
トリイソステアリン酸PEG−20グリセリル 15.0
精製水 3.0
テトラオレイン酸ソルベス−30 3.0
フェノキシエタノール 0.4
発明品1で全量
(調製方法)室温で全ての原料を均一になるまで撹拌し調製を終了する。
(結果)安定性が良好で、クレンジング力に優れたオイル製剤を得た。
【実施例14】
【0039】
ヘアートリートメント
A 発明品2 10.0(質量%)
ステアリルアルコール 8.0
ジメチコン 6.0
ベヘナミドプロピルジメチルアミン 2.5
ステアリン酸グリセリル 1.0
エチルヘキサン酸セチル 1.0
ベヘニルアルコール 0.14
ペンタステアリン酸デカグリセリル−10 0.1
セラミド2 0.03
ステアロイル乳酸ナトリウム 0.03
B プロピレングリコール 5.0
グルタミン酸 0.8
ヒドロキシエチルセルロース 0.3
パラベン 適量
精製水で全量
(調製方法)A、Bをそれぞれ80℃に加温し均一溶解する。Bを攪拌しながらAを徐々に添加する。攪拌を続けながら室温まで冷却し調製を終了する。
(結果)安定性が良好で、すすぎ時の絡みが少なく、乾燥後の髪のまとまりに優れたトリートメントを得た。
【実施例15】
【0040】
カラーリンス
A セタノール 2.3(質量%)
発明品2 2.0
トリエチルヘキサノイン 2.0
ステアラミドプロピルジメチルアミン 1.3
オクチルドデカノール 1.0
アジピン酸ジイソプロピル 1.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル 0.6
ステアリルアルコール 0.6
KF−802011) 0.5
B ポリクオタニウム−10(2.5%水溶液) 10.0
ジプロピレングリコール 5.0
パラベン 適量
精製水で全量
C 塩基染料 適量
エトキシジグリコール 5.0
精製水 10.0

11)KF−8020(信越化学工業社製):アミノプロピルジメチコン、ジメチコン
(調製方法)A、Bそれぞれを80℃に加温、均一に混合する。Aを攪拌しながらBを徐々に添加し、攪拌を続けながら冷却し50℃以下でCを加え、室温で調製を終了する。
(結果)安定性が良好で、すすぎ時の絡みが少なく、乾燥後の髪のまとまりに優れたヘアリンスを得た。
【実施例16】
【0041】
リップグロス
A 発明品1 25.0(質量%)
トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2 5.0
パルミチン酸デキストリン 4.5
リンゴ酸ジイソステアリルで全量
B 水添ポリイソブテン 40.0
C リンゴ酸ジイソステアリル 5.0
顔料 適量
防腐剤 適量
(調製方法)Aを90度以上に加温溶解し、B、Cを加え、攪拌後均一混合する。
(結果)安定性が良好で、伸びが良く、保湿性に優れたリップグロスを得た。
【実施例17】
【0042】
口紅
発明品2 50.0(質量%)
エチルヘキサン酸セチル 7.0
セレシン 6.0
ポリエチレン 5.0
マイクロクリスタリンワックス 3.0
水添ポリイソブテン 2.0
トリエチルヘキサノインで全量
顔料 適量
酸化防止剤 適量
防腐剤 適量
(調製方法)全ての原料をはかりとり、90℃で加温溶解する。ローラーで顔料を均一に分散した後、脱泡し、型に流し入れ冷却する。
(結果)安定性が良好で、伸びが良く、保湿性に優れた口紅を得た。
【実施例18】
【0043】
プレストファンデーション
A マイカ 10.0(質量%)
酸化チタン 10.0
メタクリル酸メチルクロスポリマー 10.0
タルク 5.0
黄酸化鉄 3.0
ベンガラ 1.0
黒酸化鉄 0.2
セリサイトで全量
B 発明品1 5.0
トリエチルヘキサノイン 5.0
酸化防止剤 適量
防腐剤 適量
(調製方法)Aをミキサーで均一化し、予め溶解しておいたBを加え、ミキサーで十分に攪拌したのち、プレス成型する。
(結果)安定性が良好で、付きが良く、保湿性に優れたファンデーションを得た。
【実施例19】
【0044】
白色軟膏
白色ワセリン 40.0(質量%)
ステアリルアルコール 18.0
発明品1 10.0
ミウロウ 5.0
テトラヘキシルデカン酸アスコルビル 3.0
ポリオキシエチレン(10)モノオレイン酸エステル 1.0
グリセリンモノステアリン酸エステル 0.3
酸化防止剤 適量
防腐剤 適量
精製水で全量とする。
(調製方法)油相成分を混合加熱して、均一に溶解し、75℃とする。同様に75℃で水相成分を攪拌しながら徐々に添加して乳化させる。攪拌を続けながら室温まで冷却し調製を終了する。
(結果)安定性が良好で、伸びが良く、保湿性に優れた製剤を得た。