(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-221966(P2015-221966A)
(43)【公開日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】防火扉
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20151113BHJP
E06B 3/48 20060101ALI20151113BHJP
E06B 3/36 20060101ALI20151113BHJP
A62C 2/06 20060101ALI20151113BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/48
E06B3/36
A62C2/06 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-105985(P2014-105985)
(22)【出願日】2014年5月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅史
【テーマコード(参考)】
2E014
2E015
2E039
【Fターム(参考)】
2E014AA02
2E014DA07
2E014DB03
2E015AA01
2E015BA14
2E015EA04
2E015FA02
2E039BA01
(57)【要約】
【課題】天井高さの比較的大きい通路に対して垂れ壁を設けることなく設置可能である上、避難時には避難経路となる通路の幅を大きく確保して安全性を高めることができる防火扉を提供すること。
【解決手段】観音開き式に開く左右の扉2,3を具備した防火扉1であって、前記左右の扉2,3は各々、上下二段に分割され、上段扉2a、3a及び下段扉2b、3bを有する。そして、上記防火扉1において、前記左右の扉2,3の前記下段扉2b、3bどうしの召合せ部には、互いにオーバーラップ可能な召合せ板部17,18が設けられていてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観音開き式に開く左右の扉を具備した防火扉であって、
前記左右の扉は各々、上下二段に分割され、上段扉及び下段扉を有することを特徴とする防火扉。
【請求項2】
前記左右の扉の前記下段扉どうしの召合せ部には、互いにオーバーラップ可能な召合せ板部が設けられている請求項1に記載の防火扉。
【請求項3】
前記上段扉の一部は前記下段扉用の戸当たり部となっていて、該戸当たり部は前記下段扉に当接し、前記上段扉より先に前記下段扉が閉じることを阻止するように構成されている請求項1又は2に記載の防火扉。
【請求項4】
前記左右の扉は各々、観音開き式に開く折れ扉の戸先側の扉として設けられていて、吊元側の扉に回動可能に支持され、折り畳まれた状態では前記吊元側の扉によって覆われるように構成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の防火扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ビル内や地下街等の壁開口において火災時の延焼を防止するための鋼製防火扉として利用される防火扉に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の建物等に設置される防火扉(防火戸)として、火災時にのみ閉鎖され、平時は開放される常開防火扉(常時開放式防火戸あるいは随時閉鎖式防火戸)がある。この常開防火扉が避難経路上に配置されるものであって扉面積が3m
2 を超える場合には、閉鎖後に避難者が通過するためのくぐり戸の設置が法律上義務付けられている。これに対して、扉面積が3m
2 以下である防火扉は、くぐり戸が不要な避難扉であると位置付けることができる。
【0003】
そして、常開防火扉が設置される通路の幅が比較的大きい場合には、
図4(A)に示すように、常開防火扉を観音開き式の左右の扉51,52で構成することが考えられる。この場合、左右の扉51,52の各々の扉面積が3m
2 以内であれば各扉51,52を避難扉として扱うことができ、避難時には両方の扉51,52を開放することにより、避難経路となる通路の幅を大きく確保して安全性を高めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、常開防火扉が設置される通路の天井高さが比較的大きく、左右の扉51,52を天井まで延ばすと扉面積が各々3m
2 を超えてしまう場合、左右の扉51,52を避難扉として使用するためには、
図4(B)に示すように垂れ壁53を設けて各扉51,52の高さを抑える必要がある。しかし、このように垂れ壁53を設けると、平時に垂れ壁53が目立ってしまい、意匠性が大きく損なわれる恐れがある。
【0005】
これを嫌って、垂れ壁53を設ける代わりに、
図4(C)に示すように、観音開き式の左右の扉51,52のうち、例えば左側の扉51を上段扉51aと下段扉51bとに分割し、下段扉51bを、扉面積が3m
2 以下の避難扉として使用可能に構成することが考えられる。しかし、この場合、右側の扉52を避難扉として見込むことはできない分、避難経路となる通路の幅を大きく確保して安全性を高めるという点では不利になる。
【0006】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、天井高さの比較的大きい通路に対して垂れ壁を設けることなく設置可能である上、避難時には避難経路となる通路の幅を大きく確保して安全性を高めることができる防火扉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る防火扉は、観音開き式に開く左右の扉を具備した防火扉であって、前記左右の扉は各々、上下二段に分割され、上段扉及び下段扉を有することを特徴としている(請求項1)。
【0008】
上記防火扉において、前記左右の扉の前記下段扉どうしの召合せ部には、互いにオーバーラップ可能な召合せ板部が設けられていてもよい(請求項2)。
【0009】
上記防火扉において、前記上段扉の一部は前記下段扉用の戸当たり部となっていて、該戸当たり部は前記下段扉に当接し、前記上段扉より先に前記下段扉が閉じることを阻止するように構成されていてもよい(請求項3)。
【0010】
上記防火扉において、前記左右の扉は各々、観音開き式に開く折れ扉の戸先側の扉として設けられていて、吊元側の扉に回動可能に支持され、折り畳まれた状態では前記吊元側の扉によって覆われるように構成されていてもよい(請求項4)。
【発明の効果】
【0011】
本願発明では、天井高さの比較的大きい通路に対して垂れ壁を設けることなく設置可能である上、避難時には避難経路となる通路の幅を大きく確保して安全性を高めることができる防火扉が得られる。
【0012】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の防火扉では、左右の扉の下段扉を、ともに扉面積が3m
2 以下の避難扉とすることができ、避難時には両方の扉を開放することにより、避難通路となる通路の幅を大きく確保して安全性を高めることができる。
【0013】
また、左右の扉の上段扉の上下方向の寸法は自由に設定可能であるので、天井高さが比較的大きい通路に防火扉を設置する場合には、上段扉の上下方向の寸法を大きくすることにより、下段扉の扉面積を3m
2 以下に確実に抑えることができ、意匠性を損なう垂れ壁の設置を不要とすることができる。
【0014】
請求項2に係る発明の防火扉では、左右の扉の下段扉をともに避難扉とする場合に、これらの下段扉の何れを先に閉めてもよいので、高い利便性が得られ、特に避難時などの緊急時においてこの利便性は大きな意味を持つことになる。
【0015】
請求項3に係る発明の防火扉では、防火扉が火災感知器等に連動して自動で閉鎖する常開防火扉である場合に、左右の上段扉が先に閉まるように構成されているので、左右の下段扉を避難扉として開放する際に、上段扉を開放する必要がなく、それだけ下段扉は活用し易いものとなる。
【0016】
請求項4に係る発明の防火扉では、平時には、上下に分割された左右の扉を、上下に分割されていない吊元側の扉で覆うことにより、左右の扉のそれぞれにおいて上下の扉の間に形成される隙間が表に出にくくなり、それだけ美観性が向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(A)及び(B)は、本発明の一実施の形態に係る防火扉の開放時及び閉鎖時の構成を概略的に示す説明図である。
【
図2】前記防火扉の左右の扉の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図3】(A)は、前記防火扉を構成する4枚の扉の召合せ部の構成を示す正面図、(B)は(A)のB−B線切断端面図、(C)は(A)のC−C線切断端面図、(D)は(C)のD矢視図、(E)は(C)のE矢視図であり、また、(A)は(C)のA矢視図でもある。
【
図4】(A)〜(C)は、それぞれ従来の防火扉の構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0019】
図1(A)及び(B)に示すように開閉する本実施の形態に係る防火扉1は、避難経路上に配置される常開防火扉であり、平時は
図1(A)に示すように開放され、火災時には火災感知器に連動する図外のドアチェック(ドアクローザー)により
図1(B)に示すように閉鎖される。
【0020】
また、
図1(B)に示すように、防火扉1は、観音開き式に開く左右の扉2,3を具備し、左右の扉2,3は各々上下二段に分割され、左側の扉2は上段扉2a及び下段扉2bを有し、右側の扉3は上段扉3a及び下段扉3bを有する。そして、左側の扉2は、左側の吊元扉4の戸先側に上下方向の軸回りに回動可能に支持(軸支)され、この吊元扉4は左側の縦枠5(
図1(A)参照)に上下方向の軸回りに回動可能に支持(軸支)されている。同様に、右側の扉3も右側の吊元扉6に回動可能に支持(軸支)され、この吊元扉6は右側の縦枠7(
図1(A)参照)に回動可能に支持(軸支)されている。
【0021】
つまり、防火扉1は、計六枚の扉2a,2b,3a,3b,4,6で構成された折れ戸式かつ観音開き式の扉である。そして、左右の扉2,3は各々、観音開き式に開く折れ扉の戸先側の扉として設けられていて、吊元扉(吊元側の扉)5,7に回動可能に支持され、折り畳まれた状態では吊元扉5,7によって覆われるように構成されている(
図1(A)参照)。なお、左右の扉2,3、吊元扉5,7を各々回動可能とするための構成としては、例えばヒンジ(蝶番)を用いることができる。
【0022】
防火扉1が閉鎖される際、左右の上段扉2a,3aの閉鎖順位は、防火扉1の上方に配された扉閉鎖順位調整器8(
図1(A)参照)で調整され、本例では左側の上段扉2aに先立って右側の上段扉3aが閉鎖されるように構成されている。ここで、
図2に示すように、右側の上段扉3aの背面側には、戸先側に突出する突出部(召合せ板部)9が設けられ、この突出部9に対応する段部(召合せ受け部)10が左側の上段扉2aの戸先部の背面側に設けられている。また、左側の上段扉2aの前面側には、戸先側に突出する突出部(召合せ板部)11が設けられ(
図3(B)も参照)、この突出部11に対応する段部(召合せ受け部)12が右側の上段扉3aの戸先部の前面側に設けられている。なお、
図3(B)には、突出部9と段部10との間に隙間があり、突出部11と段部12との間にも隙間がある状態を示しているが、閉鎖状態においてこれらの隙間は空いていてもよいし、隙間がなくなるように左右の扉2,3が接触するように構成されていてもよい。
【0023】
そして、
図2、
図3(D)に示すように、左側の上段扉2aの下部には、左側の下段扉2b用の戸当たり部となる段部13が設けられていて、この段部13は、左側の下段扉2bの上部の前面側に形成された上方に突出する突出部14に当接し、左側の上段扉2aより先に左側の下段扉2bが閉じることを阻止するように構成されている。同様に、
図2、
図3(E)に示すように、右側の上段扉3aの下部には、右側の下段扉3b用の戸当たり部となる段部15が設けられていて、この段部15は、右側の下段扉3bの上部の前面側に形成された上方に突出する突出部16に当接し、右側の上段扉3aより先に右側の下段扉3bが閉じることを阻止するように構成されている。
【0024】
一方、左右の扉2b、3bの何れが先に閉鎖してもよいように、左右の下段扉2b、3bどうしの召合せ部には、互いにオーバーラップ可能に構成された召合せ板部17,18が設けられている(
図2、
図3(C)参照)。具体的には、左側の下段扉2bの戸先部の前面側には突出部(召合せ板部)17が設けられ、右側の下段扉3bの戸先部の前面側には突出部(召合せ板部)18が設けられている。なお、左右の下段扉2b、3bの背面側に、召合せ部は設けられていない。
【0025】
そして、4枚の扉2a、2b、3a、3bの召合せ部は、
図3(A)に示すように、閉じた状態の召合せ部に開口(前後に延びる貫通孔)が形成されないように構成されている。ここで、
図3(A)では、4枚の扉2a、2b、3a、3bの違いを明確に示すために、右側の下段扉3bを最も太い線で示し、左側の下段扉2bを次に太い線で示し、左側の上段扉2aを3番目に太い線で示し、右側の上段扉3aを最も細い線で示してある。この
図3(A)に示すように、右側の上段扉3aの二つの段部12、15の前面は面一になっていて繋がっている。また、左側の下段扉2bの二つの突出部14,17と、右側の下段扉3bの二つの突出部16、18とは、各々前面が面一になっていて繋がっている(
図2参照)。一方、左側の上段扉2aにおいて、突出部11は、
図2、
図3(A)に示すように、段部13の上端よりも下方には延びておらず、段部13は、突出部11の基端よりも戸先側には延びていない。
【0026】
上記構成からなる防火扉1では、左右の扉2,3の下段扉2b、3bを、ともに扉面積が3m
2 以下の避難扉とすることができ、避難時には両方の扉2b、3bを開放することにより、避難通路となる通路の幅を大きく確保して安全性を高めることができる。
【0027】
また、左右の扉2,3の上段扉2a、3aの上下方向の寸法は自由に設定可能であるので、天井高さが比較的大きい通路に防火扉1を設置する場合には、上段扉2a、3aの上下方向の寸法を大きくすることにより、下段扉2b、3bの扉面積を3m
2 以下に確実に抑えることができ、意匠性を損なう垂れ壁の設置を不要とすることができる。
【0028】
さらに、左右の扉2,3の下段扉2b、3bをともに避難扉とする場合に、これらの下段扉2b、3bの何れを先に閉めてもよいので、高い利便性が得られ、特に避難時などの緊急時においてこの利便性は大きな意味を持つことになる。
【0029】
その上、防火扉1が火災感知器等に連動して自動で閉鎖する常開防火扉である場合に、左右の上段扉2a、3aが先に閉まるように構成されているので、左右の下段扉2b、3bを避難扉として開放する際に、上段扉2a、3aを開放する必要がなく、それだけ下段扉2b、3bは活用し易いものとなる。
【0030】
しかも、平時には、上下に分割された左右の扉2,3を、上下に分割されていない吊元扉4,6で覆うことにより(
図1(A)参照)、左右の扉2,3のそれぞれにおいて上下の扉の間に形成される隙間が表に出にくくなり、それだけ美観性が向上することになる。
【0031】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0032】
上記実施の形態では、防火扉1が避難経路上に配置される常開防火扉である例を示したが、これに限らず、防火扉1は避難経路上に配置されないものであってもよいし、常開防火扉ではなく常閉防火扉(常時閉鎖式防火戸)であってもよい。
【0033】
上記実施の形態では、左右の扉2,3は各々、観音開き式に開く折れ扉の戸先側の扉(吊元扉に回動可能に支持された扉)として設けられているが、これに限らず、左右の扉2,3の何れか一方又は両方が、吊元扉に回動可能に支持されておらず、縦枠等に直接支持されている扉であってもよい。
【0034】
上記実施の形態では、左右の扉2,3の下段扉2b、3bを、ともに扉面積が3m
2 以下の避難扉とした場合のメリットを強調しているが、この構成に限るものではなく、下段扉2b、3bの何れか一方または両方を避難扉としなくてもよいのであって、その場合には例えばくぐり戸を別途設けるようにすればよい。
【0035】
また、防火扉1の上方に垂れ壁を設けてあってもよい。
【0036】
また、左右の扉2,3の下段扉2b、3bの閉鎖順序が一義的に定まるように防火扉1が構成されていてもよい。
【0037】
また、4枚の扉2a、2b、3a、3bの召合せ部は、閉じた状態の召合せ部に開口(前後に延びる貫通孔)が形成されないように構成されていればよく、従って、この召合せ部の構成も種々に変更可能である。
【0038】
なお、上記変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0039】
1 防火扉
2 左側の扉
2a 上段扉
2b 下段扉
3 右側の扉
3a 上段扉
3b 下段扉
4 左側の吊元扉
5 左側の縦枠
6 右側の吊元扉
7 右側の縦枠
8 扉閉鎖順位調整器
9 突出部(召合せ板部)
10 段部(召合せ受け部)
11 突出部(召合せ板部)
12 段部(召合せ受け部)
13 段部(戸当たり部)
14 突出部
15 段部(戸当たり部)
16 突出部
17 突出部(召合せ板部)
18 突出部(召合せ板部)
51 左側の扉
51a 上段扉
51b 下段扉
52 右側の扉
53 垂れ壁