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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-222106(P2015-222106A)
(43)【公開日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】変速機ケース構造
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20151113BHJP
【FI】
   F16H57/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-106577(P2014-106577)
(22)【出願日】2014年5月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100077539
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 義仁
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 正明
(72)【発明者】
【氏名】高野 知之
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB01
3J063AC03
3J063BA11
3J063XD03
3J063XD17
3J063XD32
3J063XD47
3J063XD54
3J063XD62
3J063XD73
3J063XE18
3J063XF02
3J063XF12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】デファレンシャル装置のリングギヤで掻き揚げられて移動する潤滑油を整った流れにして回転軸支持部側に送り込むようにし、回転軸支持部の潤滑が適正に行なわれるようにする。
【解決手段】デファレンシャル装置のリングギヤの回転により掻き揚げられた潤滑油を円弧通路を介してケース内の上部空間B側に送り込み、その潤滑油を、供給油路13にてデファレンシャル装置の車輪軸の回転軸を支持する回転軸支持部10へ送り込むようにし、供給油路13に対して第一段差部15と第二段差部16とを設けて、供給油路13に流れる潤滑油の勢いを減じて整流し、整った流れとして潤滑油を回転軸支持部10に送り込まれるようにした。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両搭載の駆動機側からの回転を変速する変速機と、前記変速機からの回転を左右の車輪へ出力するデファレンシャル装置とを収容している変速機ケースにおいて、
前記変速機ケース内の下部空間における前記デファレンシャル装置のリングギヤの下部に対応する位置に油溜めを設けて、前記デファレンシャル装置のリングギヤの回転により掻き揚げ可能にして潤滑油が前記油溜めに収容され、
前記油溜め側から前記リングギヤの外周部に沿うように湾曲して前記変速機ケースの上部側に至るケース外壁部と前記リングギヤの外周側部に対応位置して前記ケース外壁部に沿って前記上部側に至るリブとの間に、前記油溜めに連続して前記変速機ケース内の上部空間側に至る略円弧状の円弧通路を設けて、前記リングギヤの回転により前記油溜めから掻き揚げられる潤滑油が前記円弧通路を介して前記変速機ケース内の上部空間側へ向けて送り込み可能とされており、
前記円弧通路の出口の近傍に位置して、該円弧通路から送り出される潤滑油の流れを一方向に方向付けする案内凸部と、
前記案内凸部で方向付けされた潤滑油を受け止めるように前記円弧通路の出口側が開いた障壁であって、該潤滑油の流れの向きを前記デファレンシャル装置の回転軸方向に沿うように変えるキャッチ部と、
前記キャッチ部にて流れの向きが前記回転軸方向となった潤滑油を、前記リングギヤに対して前記回転軸方向での側方となる前記変速機ケースの回転軸支持部に向けて導く供給油路とを有し、
前記供給油路には、
前記キャッチ部に連続していて、前記回転軸方向での前記円弧通路の位置から前記回転軸方向に沿った奥行きのある凹所とした第一段差部と、
前記第一段差部に連続していて、前記回転軸方向での前記第一段差部の位置から前記回転軸方向に沿った奥行きのある凹所とした第二段差部と、を有する
ことを特徴とする変速機ケース構造。
【請求項2】
前記円弧通路は、車両前進時における前記デファレンシャル装置のリングギヤの回転により掻き揚げられた潤滑油が通る通路であって、
前記案内凸部は、前記リングギヤの前記車両前進時の回転により前記円弧通路から送り込まれた潤滑油の流れを方向付けする部分であり、
前記キャッチ部は、前記リングギヤの前記車両前進時での前記案内凸部で流れが方向付けされた潤滑油を受けて前記供給油路に送り出す部分である
ことを特徴とする請求項1に記載の変速機ケース構造。
【請求項3】
前記キャッチ部には、前記円弧通路から送り出された潤滑油を素通りさせて潤滑油の流れの方向を非変更にして通過可能とする連通部が設けられていて、
前記キャッチ部で流れ方向が変更されずに前記連通部を通過した潤滑油が、変速機の変速軸側に連通する給油孔を備えた油路に送り込まれる構成とされている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の変速機ケース構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のデファレンシャル装置が組み入れられている変速機ケースの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マニュアルトランスミッションなどの変速機を備えた車両は、該マニュアルトランスミッションとデファレンシャル装置とが一体的に組み込まれている変速機ケースを備えている。このような変速機ケースでは、デファレンシャル装置での車輪軸である回転軸と変速機ケースの回転軸支持部との間を潤滑するための潤滑構造として、デファレンシャル装置におけるリングギヤの回転を利用してケース内の下部空間に溜め受けされた状態になっている潤滑油をケース内で掻き揚げて、掻き揚げた潤滑油がデファレンシャル装置の回転軸(車輪軸)が通る回転軸支持部側に移動させることで、この回転軸支持部回りを潤滑するように構成している。
【0003】
そして、上記のような変速機ケースにおいて、掻き揚げられた潤滑油を回転軸支持部側へとより適切に導くことを目的として、特許文献1に示されているように、ケース内の上部空間側から回転軸支持部側にスロープとなる溝を形成するようにした工夫が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4409929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の工夫にあっては、高速で回転するリングギヤで掻き揚げられてケース内の上部空間に送り込まれてきた潤滑油は、ある程度の勢いを伴って移動してきており、ケース内の上部空間から上記溝に入り込んだとしても勢いが弱くならない。そのため、潤滑油が前記溝から外れて回転軸支持部側に到達しないものも多くあり、潤滑油を整った流れにして回転軸支持部側に送り込む溝の役割が果たされていないという問題があった。また、掻き揚げた潤滑油がデファレンシャル装置の回転軸(車輪軸)が通る回転軸支持部側(デファレンシャル装置に対して軸方向の両側)へ十分に供給されないおそれもあった。
【0006】
そこで本発明は上記事情に鑑み、デファレンシャル装置のリングギヤで掻き揚げられて移動する潤滑油を整った流れにして回転軸支持部側に十分に送り込むようにすることを課題とし、回転軸支持部の潤滑が適正に行なわれるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、車両搭載の駆動機側からの回転を変速する変速機と、前記変速機からの回転を左右の車輪へ出力するデファレンシャル装置(4)とを収容している変速機ケース(1)において、前記変速機ケース(1)内の下部空間における前記デファレンシャル装置(4)のリングギヤ(6)の下部に対応する位置に油溜め(5)を設けて、前記デファレンシャル装置(4)のリングギヤ(6)の回転により掻き揚げ可能にして潤滑油が前記油溜め(5)に収容され、前記油溜め(5)側から前記リングギヤ(6)の外周部に沿うように湾曲して前記変速機ケース(1)の上部側に至るケース外壁部(8)と前記リングギヤ(6)の外周側部に対応位置して前記ケース外壁部(8)に沿って前記上部側に至るリブ(9)との間に、前記油溜め(5)に連続して前記変速機ケース(1)内の上部空間側に至る略円弧状の円弧通路(7)を設けて、前記リングギヤ(6)の回転により前記油溜め(5)から掻き揚げられる潤滑油が前記円弧通路(7)を介して前記変速機ケース(1)内の上部空間側へ向けて送り込み可能とされており、前記円弧通路(7)の出口の近傍に位置して、該円弧通路(7)から送り出される潤滑油の流れを一方向に方向付けする案内凸部(11)と、前記案内凸部(11)で方向付けされた潤滑油を受け止めるように前記円弧通路(7)の出口側が開いた障壁であって、該潤滑油の流れの向きを前記デファレンシャル装置(4)の回転軸方向に沿うように変えるキャッチ部(12)と、前記キャッチ部(12)にて流れの向きが前記回転軸方向となった潤滑油を、前記リングギヤ(6)に対して前記回転軸方向での側方となる前記変速機ケース(1)の回転軸支持部(10)に向けて導く供給油路(13)とを有し、前記供給油路(13)には、前記キャッチ部(12)に連続していて、前記回転軸方向での前記円弧通路(7)の位置から前記回転軸方向に沿った奥行きのある凹所とした第一段差部(15)と、前記第一段差部(15)に連続していて、前記回転軸方向での前記第一段差部(15)の位置から前記回転軸方向に沿った奥行きのある凹所とした第二段差部(16)と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、供給油路が備える第一段差部と第二段差部との二つの段差部を、円弧通路側から送り込まれてきた潤滑油が通ることで、その潤滑油の勢いが小さくなって纏まりのある整流された流れとして回転軸支持部へ潤滑油を送り込むことができるという効果を奏する。これにより、回転軸支持部に十分な潤滑油を供給することを可能として、回転軸支持部を含むデファレンシャル装置の全体の潤滑が適正に行なわれるようにすることができる。
【0009】
また、本発明において、前記円弧通路(7)は、車両前進時における前記デファレンシャル装置(4)のリングギヤ(6)の回転により掻き揚げられた潤滑油が通る通路であって、前記案内凸部(11)は、前記リングギヤ(6)の前記車両前進時の回転により前記円弧通路(7)から送り込まれた潤滑油の流れを方向付けする部分であり、前記キャッチ部(12)は、前記リングギヤ(6)の前記車両前進時での前記案内凸部(11)で流れが方向付けされた潤滑油を受けて前記供給油路(13)に送り出す部分であってよい。
【0010】
一般的に車両を運転する場合、前進させて利用する形態が圧倒的に多いものである。よって、上記の構成によれば、変速機ケースの内部で車両前進時に掻き揚げられる潤滑油を回転軸支持部に効果的に送り込むことができるようになり、潤滑油の合理的な使用を図ることができるようになる。
【0011】
また、本発明において、前記キャッチ部(12)には、前記円弧通路(7)から送り出された潤滑油を素通りさせて潤滑油の流れの方向を非変更にして通過可能とする連通部(14)が設けられていて、前記キャッチ部(12)で流れ方向が変更されずに前記連通部(14)を通過した潤滑油が、変速機の変速軸側に連通する給油孔(23)を備えた油路(24)に送り込まれる構成とすることが良好である。
【0012】
この構成によれば、円弧通路からケース内の上部空間に送り出される潤滑油を、デファレンシャル装置の車輪軸である回転軸を支持する回転軸支持部だけでなく、変速機の変速軸を支持する部位にも潤滑油として送り込めることとなり、潤滑油の有効な使用を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明における変速機ケースの一例をデファレンシャル装置が配される状態で示す説明図である。
図2】デファレンシャル装置が組み入れられた部分を回転軸方向に沿った断面で示す説明図である。
図3】円弧通路の出口からの潤滑油の流れを方向付けする案内凸部の断面での端縁位置を示す説明図である。
図4】円弧通路から送り出される潤滑油を受けるキャッチ部の断面での端縁位置を示す説明図である。
図5】供給油路における第一段差部の断面での端縁位置を示す説明図である。
図6】供給油路における第二段差部の断面での端面位置を示す説明図である。
図7】一例におけるケース内を示す説明図である。
図8】同じく一例におけるケース内を示すもので、第一段差部と第二段差部とをケース合わせ面側から見た状態で示す説明図である。
図9図1におけるX−X線に沿った断面位置での円弧通路ケース面と第一段差部との段差状態を断面で示す説明図である。
図10図1におけるY−Y線に沿った断面位置での第一段差部と第二段差部の段差状態を断面で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面(図1乃至図10)を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1及び図2は、車両の駆動源からの回転を変速する変速軸中、入力側の変速軸を支える変速軸支持部2と、出力側の変速軸を支える変速軸支持部3と、前記出力側の変速機から回転が伝えられるデファレンシャル装置4が収容される箇所とをケース内方側から見た状態で示している。図中の符号1は、変速機ケースで、この変速機ケース1は、マニュアルトランスミッションの変速機とデファレンシャル装置とが組み込まれているものである。なお、変速機ケース1は、図1及び後述する図7に示す上下の矢印で示す方向が略上下方向となるようにして車両に搭載される。
【0015】
図1図2に示されているように、変速機ケース1において、変速軸を支持するとともにデファレンシャル装置4が位置する凹所を備えるケース部分では、ケース内の下部空間Aとなる位置に油溜め5が設けられていて、この油溜め5に潤滑油が収容されている。そして、デファレンシャル装置4のリングギヤ6の下部が油溜め5に溜め受けられている潤滑油に浸るようにしており、リングギヤ6が回転することで潤滑油が掻き揚げられるようになっている。
【0016】
デファレンシャル装置4は、車両前進時と後退時とではその回転方向が相違するが、本発明の変速機ケース1では、車両前進時に回転するデファレンシャル装置4のリングギヤ6の回転(図1において反時計回り)で掻き揚げられる潤滑油をケース内の上部空間Bに送り出すための円弧通路7が形成されている。円弧通路7は図示されているように変速機ケース1のケース外壁部8とこのケース外壁部8よりケース内側に位置するリブ9との間に形成された溝からなるもので、この円弧状通路7を形成するケース外壁部8は、油溜め5側からリングギヤ6の外周部に沿うように湾曲してケース上部側に至る略円弧状とされた部分であり、リブ9については、デファレンシャル装置4の回転方向に沿った方向に突出し、リングギヤ6の外周側部に対応位置してケース外壁部8に沿ってケース上部B側に至る略円弧状とされていて、ケース外壁部8とリブ9とで円弧通路7がリングギヤ6の外周部の形状に応じた円弧状となっている。(図3図7参照)
【0017】
円弧通路7は、油溜め5に連続している通路であり、リングギヤ6が回転(前進状態での回転)することで掻き揚げられた潤滑油が油溜め5から円弧通路7を介してケース内の上部空間B側へと勢いを持って送り込まれる。
【0018】
本発明の変速機ケース構造においては、上部空間B側に送り出される潤滑油を、図2で示すデファレンシャル装置4の車輪軸である回転軸の回転軸支持部10に向けて流れを整った状態にして効率的に送り込むようにするための工夫が施されていて、その工夫は、案内凸部11とキャッチ部12と供給油路13とからなるものである。案内凸部11は、円弧通路7の出口の近傍に位置していて、円弧通路7でのケース外壁部8とリブ9との間のケース面(デファレンシャル装置4の回転軸方向と交差する方向に沿う面)及びケース外壁部8の内面に一体となる凸部分であり、円弧通路7の出口の近傍に配置されることで円弧通路7から勢いを持って送り出される潤滑油がこの案内凸部11に当たるようにしている。案内凸部11は当たる潤滑油の流れを大きく乱すものではなく、この潤滑油の流れをキャッチ部12への一方向に方向付けしており、円弧通路7から送り出されてきた潤滑油は案内凸部11に当たることでキャッチ部12に向けて送り出されるようになる。(図3図4参照)
【0019】
図3図6は、ケース内面に各断面位置での端縁を重ね合わせて示していて、最前位はケース合わせ面の位置となる。デファレンシャル装置の回転軸方向においてケース面から突出している案内凸部11の最突端での端縁位置を表現している図3、及び案内凸部11の最突端からケース面側に寄った部分での端縁位置を表現している図4では、案内凸部11が、円弧通路7から送り出される潤滑油の流れを矢印Cで示す方向へ、即ち、キャッチ部12側に方向付ける点が示されている。
【0020】
キャッチ部12は、ケース内の上部空間Bにあって、かつ案内凸部11で方向付けされた潤滑油が到達する位置に配されていて、デファレンシャル装置4の回転軸方向に交差する面での形状が略C字状とされ(図4参照)、潤滑油を受け止めることができるように円弧通路7の出口側が開いた障壁である。そして、このキャッチ部12は、受け止めた潤滑油の流れの向きをデファレンシャル装置4の回転軸方向に沿うように変える役割をするものであり、回転軸支持部10へ至る上記供給油路13に潤滑油を案内する。
【0021】
キャッチ部12は、円弧通路7から送り出される潤滑油全てを供給油路13へと送り出す障壁ではなく、デファレンシャル装置4の回転軸方向に直交する方向で断面略C字状とされているキャッチ部12の上辺部側が、図3、7、8に示されているように切り欠かれた状態にし、この位置を連通部14としている。連通部14は円弧通路7から送り出された潤滑油を素通りさせて潤滑油の流れの方向を供給油路13側へは変えず、その潤滑油を通過可能として後述するように変速軸支持部3側へと送るようにしている。
【0022】
供給油路13は、キャッチ部12にて受け止められて流れの方向がデファレンシャル装置の回転軸方向に変えられた潤滑油が送り込まれてくる通路である。そして、上述したように、潤滑油がこの供給油路13に入ることで回転軸支持部10へ導かれる。回転軸支持部10は図2に示すようにリングギヤ6に対してデファレンシャル装置4の回転軸方向での側方となる離れた位置にあるが、供給油路13は潤滑油がその流れ自体の勢いを利用して回転軸支持部10に届くように設けられている。
【0023】
車両前進時におけるデファレンシャル装置4のリングギヤ6の回転で掻き揚げられて円弧通路7を通ってケース内の上部空間Bに向けて送り出された潤滑油が、案内凸部11にて流れの方向をキャッチ部12に向けての一方向に変更され、そのキャッチ部12で受け止められて供給油路13へと送り込まれるが、潤滑油の流れの勢いは案内凸部11での流れの方向の変更、及びキャッチ部12での流れの方向の変更を経ても或る程度強い状態である。そのため、供給油路13を単純なスロープとしてその供給油路13中を勢いに任せて潤滑油が流れるようにした場合には、潤滑油の流れがまとまらずに供給油路13から外れる可能性がある。
【0024】
そこで本実施形態の変速機ケース1では、供給油路13に、デファレンシャル装置4の回転軸方向に沿った方向での上記円弧通路7の位置側から回転軸支持部10側に向けて第一段差部15と第二段差部16とが順に連続させて設けられていて(図8参照)、この二つの連続する段差部を経て潤滑油が移動することで流れの勢いを減じて纏まりのある流れに整流し、整流された潤滑油を回転軸支持部10側へ効率的に向かわせるようにしている。
【0025】
まず、第一段差部15は、キャッチ部12に連続していて、図9に示すごとくデファレンシャル装置4の回転軸方向での円弧通路7の位置から回転軸方向に沿った奥行きのある凹所とされており、この第一段差部15の奥面17が、回転軸方向にほぼ直交する面として形成されている。このように、第一段差部15が回転軸方向に沿った方向に奥行きのある凹所とされて奥面17が回転軸方向にほぼ直交する面となっているので、この第一段差部15に勢いを持って潤滑油が入り込んでも奥面17に当たることで或る程度の勢いが減ぜられることとなる。なお、図5において第一段差部15の位置で、その第一段差部15の断面での端縁が表現されている。
【0026】
第一段差部15は、上述した案内凸部11からキャッチ部12側へ向ける潤滑油の流れ方向とはほぼ逆方向となる側で第二段差部16と連続している。このように第一段差部15に対して、図5及び図8で示されているように、案内凸部11で案内される潤滑油の流れの方向とほぼ逆方向となる側で、第二段差部16が連続していて、第一段差部15から第二段差部16に潤滑油が移動することでもその勢いが減ぜられるものとなる。
【0027】
第二段差部16は、第一段差部15と同様にデファレンシャル装置4の回転軸方向での第一段差部15の位置(奥面17の位置)から前記回転軸方向に沿った奥行きのある凹所とされており、段差を持って第一段差部15に連続している。そして、図10に示すように、第二段差部16の奥面18が、第一段差部15から第二段差部16に入り込んだ潤滑油の流れを、回転軸方向にほぼ直交する方向、即ち、回転軸支持部10があるケース面に沿わせる方向に変化させるようにしている。このように、第二段差部16において回転軸方向側に向けて流れる潤滑油が奥面18にてその向きを変えられるので、この位置においても勢いが減ぜられることとなり、供給油路13を潤滑油が流れることでその勢いを減じて整流される。
【0028】
第二段差部16での断面の端縁位置が図6の実線にて表現されている。この図6で示すように、第二段差部16の奥面18自体は第一段差部15側で或る程度の広がりのある広幅面19とされ、さらに広幅面19に、この広幅面19に対して狭い幅となっている狭幅面20が連続していて、広幅面19と狭幅面20とで回転軸支持部10につながる先細り油路21を形成し、整流された潤滑油が先細り油路21に案内されることで、回転軸支持部10へより正確に方向付けされた状態で流れ込むようにしている。
【0029】
上述したように、円弧通路7から送り出された潤滑油を案内凸部11、キャッチ部12とで供給油路13へと送り込むようにし、その供給油路13での第一段差部15と第二段差部16とを順に潤滑油が流れることでその潤滑油の勢いを減じて整流し、そしてその整流された潤滑油を回転軸支持部10へ送り込むようにしているので、回転軸支持部10に対する潤滑が適正に行なわれるものとなる。
【0030】
変速機ケース1には、図7に示すように、ケース内の上部空間Bから変速軸支持部2、3側に向けて下り傾斜となる油路22が設けられていて、上記キャッチ部12で流れ方向が変更されずにそのキャッチ部12における連通部14を通過した潤滑油が油路22に流れ込むように設けられている。
【0031】
そして、上記油路22にあっては、該油路22での潤滑油流れ方向での奥端に変速軸支持部3へ潤滑油を送り込むべくその変速軸支持部3に連通する給油孔23が設けられているとともに、同じく変速軸支持部2に潤滑油を送り込むための通路24が設けられていて、油路22に流れ込んだ潤滑油が給油孔23を通して変速軸支持部3に達して潤滑を行ない、また、通路24を通った潤滑油が変速軸支持部2に達して潤滑を行なうようにしている。このように、本実施形態の変速機ケース1では、デファレンシャル装置4の回転軸を支持する回転軸支持部10だけでなく、変速軸支持部2、3の部位にも潤滑油を送り込めることとなり、潤滑油の有効な使用を図るものとなっている。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の変速機ケース1によれば、供給油路13が備える第一段差部15と第二段差部16との二つの段差部を、円弧通路7側から送り込まれてきた潤滑油が通ることで、その潤滑油の勢いが小さくなって纏まりのある整流された流れとして回転軸支持部10へ潤滑油を送り込むことができるという効果を奏する。これにより、回転軸支持部10に十分な潤滑油を供給することを可能として、回転軸支持部10を含むデファレンシャル装置4の全体の潤滑が適正に行なわれるようにすることができる。
【0033】
また、本実施形態の変速機ケース1では、円弧通路7は、車両前進時におけるデファレンシャル装置4のリングギヤ6の回転により掻き揚げられた潤滑油が通る通路であって、案内凸部11は、リングギヤ6の車両前進時の回転により円弧通路7から送り込まれた潤滑油の流れを方向付けする部分であり、キャッチ部12は、リングギヤ6の車両前進時での案内凸部11で流れが方向付けされた潤滑油を受けて供給油路13に送り出す部分である。この構成によって、変速機ケース1の内部で車両前進時に掻き揚げられる潤滑油を回転軸支持部10に効果的に送り込むことができるようになり、潤滑油の合理的な使用を図る。
【0034】
また、本実施形態の変速機ケース1では、キャッチ部12で流れ方向が変更されずに連通部14を通過した潤滑油が、変速機の変速軸側に連通する給油孔23を備えた油路24に送り込まれる構成としている。この構成によって、円弧通路7から変速機ケース1内の上部空間に送り出される潤滑油を、デファレンシャル装置4の回転軸支持部10だけでなく、変速機の変速軸を支持する部位にも潤滑油として送り込めることとなり、潤滑油の有効な使用を図ることができるようになる。
【0035】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…変速機ケース
3…出力側の変速軸支持部
4…デファレンシャル装置
5…油溜め
6…リングギヤ
7…円弧通路
8…ケース外壁部
9…リブ
10…回転軸支持部
11…案内凸部
12…キャッチ部
13…供給油路
14…連通部
15…第一段差部
16…第二段差部
21…先細り油路
22…油路
23…給油孔
24…通路
A…ケース内の下部空間
B…ケース内の上部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10