【解決手段】給湯経路4から分岐された高温差し湯経路5に高温差し湯電磁弁27が備えられている給湯装置1において、制御部7に上記電磁弁27の開故障を検出する故障検出手順を備えさせ、この故障検出手順によって上記電磁弁27の開故障が検出されているときに給湯運転を行うときは、缶体2から出湯する温水の設定温度を給湯設定温度近くまで下げて給湯運転を行う。
缶体からの温水を給湯栓に供給する給湯運転用の給湯経路と、前記給湯経路から分岐され、前記缶体から浴槽に高温の温水を供給する高温差し湯運転用の高温差し湯経路とを備え、この高温差し湯経路に電磁弁が備えられている給湯装置において、
制御部が、前記電磁弁の開故障を検出する故障検出手順を有し、この故障検出手順によって前記電磁弁の開故障を検出した状態で給湯運転を行うときは、前記浴槽内の温水の温度の上昇を抑制する所定の安全給湯運転を行う制御構成を備えている
ことを特徴とする給湯装置。
前記安全給湯運転は、前記缶体から出湯する温水の設定温度を、前記電磁弁の開故障が検出されていない状態の設定温度よりも低い所定の安全温度に変更することを特徴とする請求項1に記載の給湯装置。
前記安全給湯運転は、前記給湯運転の連続運転許容時間を、前記電磁弁の開故障が検出されていない状態の許容時間よりも短い所定の安全時間に変更することを特徴とする請求項1に記載の給湯装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の給湯装置には以下のような問題があり、その改善が望まれていた。
【0006】
すなわち、この種の給湯装置においては、高温差し湯経路に電磁弁(高温差し湯電磁弁)を備えたものがあるが、この電磁弁が故障やゴミ噛みなどによって完全に閉止できない状態(いわゆる開故障)に陥ると、給湯運転時に缶体から出湯される高温の温水の一部が高温差し湯経路を介して浴槽に流入し、浴槽内の湯水の温度が意図しない高温になるおそれがあった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、高温差し湯経路の電磁弁が開故障したときでも浴槽内の湯水の温度が過度に上昇しない給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の給湯装置は、缶体からの温水を給湯栓に供給する給湯運転用の給湯経路と、上記給湯経路から分岐され、上記缶体から浴槽に高温の温水を供給する高温差し湯運転用の高温差し湯経路とを備え、この高温差し湯経路に電磁弁が備えられている給湯装置において、制御部が、上記電磁弁の開故障を検出する故障検出手順を有し、この故障検出手順によって上記電磁弁の開故障を検出した状態で給湯運転を行うときは、上記浴槽内の温水の温度の上昇を抑制する所定の安全給湯運転を行う制御構成を備えていることを特徴とする。
【0009】
すなわち、この請求項1に係る給湯装置では、高温差し湯経路の電磁弁の開故障を検出する故障検出手順が制御部に備えられており、この故障検出手順によって制御部が高温差し湯経路の電磁弁が開故障しているか否かを判定する。そして、高温差し湯経路の電磁弁が開故障していると判定された状態で給湯運転を行う場合、制御部は浴槽内の温水の温度の上昇を抑制する所定の安全給湯運転を行うので、給湯運転に伴って浴槽内の湯水の温度が過度に高温になることが防止される。
【0010】
本発明の請求項2に記載の給湯装置は、請求項1に記載の給湯装置において、上記安全給湯運転は、上記缶体から出湯する温水の設定温度を、上記電磁弁の開故障が検出されていない状態の設定温度よりも低い所定の安全温度に変更することを特徴とする。
【0011】
すなわち、この請求項2に係る給湯装置では、高温差し湯経路の電磁弁が開故障していると判定された状態で給湯運転を行う場合、缶体から出湯する温水の設定温度が開故障していないときの設定温度よりも低い安全温度に変更されるので、給湯運転に伴って高温の温水が高温差し湯経路から浴槽に流れ込むことが回避される。
【0012】
本発明の請求項3に記載の給湯装置は、請求項1に記載の給湯装置において、上記安全給湯運転は、上記給湯運転の連続運転許容時間を、上記電磁弁の開故障が検出されていない状態の許容時間よりも短い所定の安全時間に変更することを特徴とする。
【0013】
すなわち、この請求項3に係る給湯装置では、高温差し湯経路の電磁弁が開故障していると判定された状態で給湯運転を行う場合、給湯運転の連続運転許容時間が開故障していないときの許容時間よりも短縮されるので、給湯運転に伴って高温の温水が大量に浴槽に流れ込むことが防止される。そのため、この請求項3に係る給湯装置では、高温差し湯電磁弁が開故障している状態で給湯運転を行っても浴槽内の湯水の温度が過度に上昇することが抑制される。
【0014】
本発明の請求項4に記載の給湯装置は、請求項1から3のいずれかに記載の給湯装置において、上記高温差し湯経路を介して上記浴槽に供給される温水の温度を検出する温度センサを備え、上記制御部は、上記故障検出手順として、高温差し湯運転を停止している状態で給湯運転を行っているときに、上記温度センサの検出値に基づいて上記電磁弁の開故障の有無を判定する制御構成を備えていることを特徴とする。
【0015】
すなわち、請求項4に係る給湯装置では、高温差し湯運転が停止している状態で給湯運転を行っているときに、高温差し湯経路を介して浴槽に供給される温水の温度を検出する温度センサの検出値に基づいて制御部が高温差し湯経路の電磁弁の開故障の有無を判定する。つまり、電磁弁が開故障していれば、給湯運転の開始に伴って温度センサの検出温度が上昇するので、この上昇の有無から電磁弁が開故障しているか否かを判定する。
【0016】
本発明の請求項5に記載の給湯装置は、請求項4に記載の給湯装置において、上記給湯用の温水と水源から供給される水とを混合して上記高温差し湯経路に供給する注湯運転用の注湯経路を備え、上記制御部は、上記故障検出手順として、高温差し湯運転および注湯運転が停止している状態で給湯運転を行っているときに、上記温度センサの検出値に基づいて上記電磁弁の開故障の有無を判定する制御構成を備えていることを特徴とする。
【0017】
すなわち、請求項5に係る給湯装置では、高温差し湯運転および注湯運転の双方が停止している状態で給湯運転を行っているときに、高温差し湯経路を介して浴槽に供給される温水の温度を検出する温度センサの検出値に基づいて制御部が高温差し湯経路の電磁弁の開故障の有無を判定する。この請求項5に係る給湯装置も請求項4に係る給湯装置と同様に、電磁弁が開故障していれば、給湯運転の開始に伴って温度センサの検出温度が上昇するので、この上昇の有無から電磁弁が開故障しているか否かを判定する。
【0018】
本発明の請求項6に記載の給湯装置は、請求項1から3のいずれかに記載の給湯装置において、上記缶体から出湯される湯水の流量を検出する流量センサと、上記電磁弁と直列に配設され、上記高温差し湯経路の流量を調整する流量調整弁とを備え、上記制御部は、上記故障検出手順として、高温差し湯運転および給湯運転が停止している状態で上記流量調整弁の開度を制御し、そのときの上記流量センサの検出値に基づいて上記電磁弁の開故障の有無を判定する制御構成を備えていることを特徴とする。
【0019】
すなわち、請求項6に係る給湯装置では、高温差し湯運転および給湯運転の双方が停止しているときに、電磁弁と直列に配設された流量調整弁の開度を変更し、そのときの流量センサの検出値に基づいて制御部が高温差し湯経路の電磁弁の開故障の有無を判定する。つまり、電磁弁が開故障していれば流量調整弁の開度の変更に伴って流量センサで検出される流量が変化するので、この流量変化の有無から電磁弁が開故障しているか否かを判定する。
【0020】
本発明の請求項7に記載の給湯装置は、請求項6に記載の給湯装置において、上記給湯用の温水と水源から供給される水とを混合して上記高温差し湯経路に供給する注湯運転用の注湯経路を備え、上記制御部は、上記故障検出手順として、高温差し湯運転、給湯運転および注湯運転が停止している状態で上記流量調整弁の開度を制御し、そのときの上記流量センサの検出値に基づいて上記電磁弁の開故障の有無を判定する制御構成を備えている
ことを特徴とする。
【0021】
すなわち、請求項7に係る給湯装置では、高温差し湯運転、給湯運転および注湯運転がいずれも停止しているときに、電磁弁と直列に配設された流量調整弁の開度を変更し、そのときの流量センサの検出値に基づいて制御部が高温差し湯経路の電磁弁の開故障の有無を判定する。つまり、電磁弁が開故障していれば流量調整弁の開度の変更に伴って流量センサで検出される流量が変化するので、この流量変化の有無から電磁弁が開故障しているか否かを判定する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高温差し湯運転用の高温差し湯経路の電磁弁が開故障していると判定されたときに給湯運転を行う場合、制御部は浴槽内の温水の温度の上昇を抑制する所定の安全給湯運転を行うので、給湯運転に伴って高温の温水が高温差し湯経路から浴槽に流入することが抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る給湯装置の一例を示している。この
図1に示す給湯装置1は、カランやシャワーなどの給湯栓(図示せず)に温水を供給する給湯機能と、浴槽Bに湯張りを行う注湯機能と、浴槽Bに差し湯を行う高温差し湯機能とを備えた給湯装置であって、温水の生成を行う缶体2と、缶体2に水を供給するための給水経路3と、給湯栓に給湯温水を供給するための給湯経路4と、浴槽Bに差し湯を行うための高温差し湯経路5と、浴槽Bへの湯張りのための注湯経路6と、給湯装置1の制御部7と、給湯装置1のリモコン8とを主要部として構成されている。
【0025】
缶体2は、バーナ10、一次熱交換器11、二次熱交換器12などを収容した金属製の容器で構成されている。バーナ10は、燃焼ガスによって一次熱交換器11を加熱する加熱手段であって、本実施形態では、都市ガスやプロパンガスを燃料とするガスバーナで構成されている。なお、バーナ10の構造は周知であるので詳細な説明は省略するが、
図1において、13はガス供給源からガスを導入するガス管、14はガス電磁弁、15はガス比例弁、16はバーナ10の燃焼管の燃焼本数を数段階に切り替える能力切替弁を示している。
【0026】
一次熱交換器11は、バーナ10の燃焼ガスによって気−液熱交換を行う熱交換器であって、バーナ10の直近上方に配置されている。この一次熱交換器11は、その一端(入水側)が二次熱交換器12の出水側に接続され、二次熱交換器12で予熱された低温の温水が入力されるようになっており、その他端(出水側)が給湯経路4の入水側に接続され、一次熱交換器11で加熱された高温の温水を給湯経路4に供給できるようになっている。
【0027】
二次熱交換器12は、一次熱交換器11で熱交換後の燃焼排ガスによって気−液熱交換を行う熱交換器(潜熱回収型の熱交換器)であって、一次熱交換器11の上方に配置されている。この二次熱交換器12は、その一端(入水側)が給水経路3の出水側に接続され、給水経路4から水の供給を受けるようになっており、その他端(出水側)が一次熱交換器11の入水側に接続され、二次熱交換器12で加熱した低温の温水を一次熱交換器11に供給できるようになっている。
【0028】
給水経路3は、その一端(入水側)が図示しない市水などの水源に接続されるとともに、その他端(出水側)が二次熱交換器12の入水側に接続されている。そして、この給水経路3には、缶体2への入水流量を検出する缶体水量センサ17と、缶体2への入水温度を検出する入水温度センサ18とが備えられている。また、この給水経路3には、水源から供給される水を缶体2を介さずに給湯経路4に供給できるように給湯経路4に接続されたバイパス経路19が備えられており、このバイパス経路19にはバイパス経路19に流れる水の水量を調整するための分配弁20が備えられている。なお、このバイパス経路19は、缶体2から出湯された温水に水を混合することで、給湯経路4から出湯される温水の温度を調整するために備えられている。
【0029】
給湯経路4は、その一端(入水側)が一次熱交換器11の出水側に接続されるとともに、その他端(出水側)が給湯栓に接続されている。そして、この給湯経路4には、給湯経路4を流れる温水の水量を検出する給湯水量センサ21と、給湯経路4から出湯する温水の温度を検出する出湯温度センサ22とが備えられている。なお、給湯水量センサ21は、給湯経路4においてバイパス経路19との合流点の下流側に備えられている。また、給湯経路4には、これらの他に、バイパス経路19から流入した水の逆流を防止する逆止弁23、給湯経路4からの出湯流量を制限する過流出防止サーボ弁24、缶体2からの出湯温度を検出する缶体温度センサ25が備えられている。なお、この缶体温度センサ25で検出される温度は、後述する缶体設定温度どおりの温水が缶体2から出湯されているかどうかの判断に用いられている。
【0030】
高温差し湯経路5は、その一端(入水側)が給湯経路4に接続されるとともに、その他端(出水側)が浴槽B(具体的には、浴槽Bの温水吐出口となるアダプタA)に接続されている。すなわち、この高温差し湯経路5は、給湯経路4においてバイパス経路19との合流点より上流側で給湯経路4から分岐され、缶体2から高温の温水が供給されるように構成され、缶体2からの高温の温水(高温差し湯)を浴槽Bに供給できるように構成されている。そして、この高温差し湯経路5には、高温差し湯サーボ弁(流量調整弁)26と、高温差し湯電磁弁(電磁弁)27とが直列に配設されている。
【0031】
ここで、高温差し湯サーボ弁26は、高温差し湯機能の使用時(高温差し湯運転時)に、缶体2から浴槽Bに供給する高温の温水の流量を調整するためのサーボ弁であって、高温差し湯電磁弁27の上流側に配設される。そして、本実施形態では、この高温差し湯サーボ弁26には、高温差し湯経路5の流路を閉止する閉切り機能を有さないサーボ弁が用いられている。また、高温差し湯電磁弁27は、高温差し湯サーボ弁26が閉切り機能を有さないために設けられた流路閉止用の電磁弁であって、高温差し湯機能を使用しないとき(つまり、高温差し湯運転を行わない場合)には弁を閉じるように構成されている。なお、この高温差し湯電磁弁27として、本実施形態ではパイロット式の電磁弁が用いられている。
【0032】
注湯経路6は、その一端(入水側)が給湯経路4に接続されるとともに、その他端(出水側)が高温差し湯経路5に接続されている。具体的には、注湯経路6の入水側が給湯経路4の過流出防止サーボ弁24の下流側に接続されている。そして、この注湯経路6には、注湯機能の使用時(注湯運転時)に注湯経路6を介して浴槽Bに供給される温水の水量を検出する注湯水量センサ28と、注湯機能の使用時に開かれる注湯電磁弁29と、高温差し湯経路5を介して浴槽Bに供給される温水の温度を検出するふろ回路温度センサ30とが備えられている。また、この注湯経路6には、給水経路3と接続された注水経路9も接続されている。なお、図において、31,32は逆止弁を示している。
【0033】
制御部7は、給湯装置1の各部を制御する制御装置であって、制御中枢として図示しないマイコンを備えている。そして、このマイコンは、上述した各種センサ(各温度センサ18,22,25,30、各水量センサ17,21,28など)から得られる情報やリモコン8から与えられる指令に基づいて、給湯機能、注湯機能、高温差し湯機能に応じた制御を行うようにプログラムされている。
【0034】
リモコン8は、給湯装置1の遠隔操作装置であって、このリモコン8には、図示しない操作部(各種操作スイッチ)や表示部(LEDや液晶パネルなど)が備えられている。なお、このリモコン8により、給湯機能に関して給湯待機状態のオン/オフ切り替えや給湯設定温度の変更、注湯機能に関して注湯開始/停止、注湯設定温度の変更、高温差し湯機能に関して高温差し湯運転の開始/停止などの各種操作ができるようになっている。
【0035】
次に、このように構成された給湯装置1の動作について説明する。なお、給湯装置1の動作に関して、給湯機能(給湯運転)および注湯機能(注湯運転)については周知であるので、ここではこれらの機能の詳細な説明は省略し、本発明に関連する事項を中心に説明する。
【0036】
A:
給湯機能
給湯機能は、給湯栓から給湯設定温度の温水を出湯させる機能である。この機能は、給湯装置1が給湯待機状態にあるときに給湯栓が開栓され、給湯装置1に最低作動水量以上の通水が生じると機能する(給湯運転が開始される)ように構成されている。給湯運転が開始されると、制御部7は、出湯温度センサ22で検出される出湯温度が給湯設定温度となるようにバーナ10の燃焼制御やバイパス経路19の水量制御(分配弁20の制御)などを行う。そして、給湯装置1の通水量が最低作動水量未満となるか、あるいは、給湯待機状態が解除(オフ)にされると、制御部7はバーナ10の燃焼を停止させて給湯運転を終了する。
【0037】
B:
注湯機能
注湯機能は、注湯経路6を介して浴槽Bに湯張りを行う機能である。この機能は、リモコン8などで注湯開始を指示する所定操作が行われることにより機能する(注湯運転が開始される)ように構成されている。注湯運転が開始されると、制御部7は、注湯電磁弁29を開いて注湯経路6を給湯経路4に連通させるとともに、出湯温度センサ22で検出される出湯温度が注湯設定温度となるようにバーナ10の燃焼制御やバイパス経路19の水量制御などを行う。そして、浴槽Bへの湯張りが完了すると注湯運転は停止する。なお、湯張りが完了したか否かの判断は、たとえば、注湯水量センサ28で検出される水量の積算値が所定値に到達したかなどにより判断する。
【0038】
C:
高温差し湯機能
高温差し湯機能は、缶体2から出湯する高温の温水を高温差し湯経路5を介して浴槽Bに供給する機能である。この機能は、リモコン8などで高温差し湯の開始を指示する所定操作が行われることにより機能する(高温差し湯運転が開始される)ように構成されている。高温差し湯運転が開始されると、制御部7は、高温差し湯電磁弁27を開き、缶体2からの出湯温度が所定の缶体設定温度(たとえば、80℃)となるようにバーナ10の燃焼制御を行いながら、高温差し湯サーボ弁26の開度を制御し、缶体水量が所定水量(たとえば、4L/min)となるようにする。そして、高温差し湯運転を終了するときは、制御部7は、高温差し湯サーボ弁26を閉める(弁の開度を絞る)とともに、高温差し湯電磁弁27を閉じる。なお、高温差し湯運転の終了は、たとえば、アダプタAに浴槽B内の湯水の温度を検出する浴槽温度センサ(図示せず)を備えさせておき、この温度センサで一定の温度上昇が検出されたり、あるいは、高温差し湯運転開始から一定水量の温水を浴槽Bに供給したときに終了するように構成される。
【0039】
ところで、この高温差し湯運転が終了すると、高温差し湯サーボ弁26および高温差し湯電磁弁27はいずれも閉じられるが、上述したように、本実施形態に示す給湯装置1の高温差し湯サーボ弁26には閉切り機能がないことから、このときに高温差し湯電磁弁27が開故障すれば、缶体2から出湯した温水が高温差し湯経路5を介して浴槽Bに流入してしまう。そして、この状態で給湯運転が開始されると、缶体設定温度に加熱された高温の温水(給湯運転時の缶体設定温度は、バイパス経路19から供給される水との混合を前提にするので高温になる)が高温差し湯経路5を介して浴槽Bに流れ込み、浴槽B内の湯水の温度が過度に上昇(異常加熱)するおそれがある。
【0040】
そのため、本実施形態に示す給湯装置1では、制御部7が高温差し湯電磁弁27の開故障の有無を判定するための故障検出手順(故障検出用のソフトウェア)を備えており、高温差し湯電磁弁27の開故障が検出されている状態で給湯運転を開始する場合には、所定の安全給湯運転を行うように構成されている。
【0041】
制御部7に備えられる高温差し湯電磁弁27の故障検出手順は以下のとおりである。
D:
高温差し湯電磁弁の故障検出手順(1)
すなわち、制御部7は、高温差し湯運転が停止している状態で給湯運転が開始されると、この給湯運転中のふろ回路温度センサ30の検出値を監視し、検出値の上昇が検出されると、高温差し湯電磁弁27が開故障していると判定する。
【0042】
これは、高温差し湯運転の停止中は、高温差し湯電磁弁27を閉じる制御が行われているので、高温差し湯電磁弁27が正常に閉じていれば(高温差し湯経路5が閉止されていれば)、高温差し湯経路5から浴槽Bに温水が流れることがなく、ふろ回路温度センサ30の検出値は変化しないのに対し、高温差し湯電磁弁27が開故障していれば、給湯運転の開始に伴って缶体2から高温差し湯経路5に高温の温水が流れ、それによってふろ回路温度センサ30の検出値が上昇するからである。
【0043】
具体的には、この故障検出手順の実行にあたり、制御部7は、たとえば、給湯運転の開始直後にふろ回路温度センサ30の検出値Th0を取得する。そして、給湯運転が継続している間、一定周期でふろ回路温度センサ30の検出値Thxを取得し、取得したThxを最初に取得した検出値Th0と比較する。そして、Th0<Thnであれば、次のタイミングで新たに検出値Thxを取得し、再び最初に取得した検出値Th0と比較する。そして、Th0+X℃(たとえば、X=8℃)≦Thxが一定時間(たとえば、25秒)継続すると、高温差し湯電磁弁27は開故障していると判定する。
【0044】
なお、この故障検出手順の実行にあたっては、最初に取得する検出値Th0に下限値(たとえば、42℃)を設定しておくことができる。これにより、缶体2から出湯される温水の温度が低い場合に高温差し湯電磁弁27の故障検出による安全給湯運転への移行を回避することができる。また、検出する温度上昇幅X℃は、時間帯や季節など周囲の環境温度に応じて適宜設定変更可能である。
【0045】
なお、この故障検出にあたり、本実施形態のように注湯経路6(注湯機能)を備える給湯装置1では、高温差し湯運転および注湯運転の双方が停止している状態での給湯運転時におけるふろ回路温度センサ30の検出値に基づいて高温差し湯電磁弁27の開故障の有無を判定するように構成される。注湯運転が停止している状態を開故障の判定条件としているのは、注湯機能を有する給湯装置1では、注湯運転の開始によって温水が注湯経路6を通って浴槽Bに供給されるので、高温差し湯電磁弁27が開故障していたとしても、高温差し湯サーボ弁26によって流路が狭められている高温差し湯経路5と、注湯経路6とのそれぞれの圧損の差によって、高温差し湯経路5にはほとんど湯水が流れなくなり、注湯運転中は高温差し湯電磁弁27の開故障の有無が判定できないからである。
【0046】
ここで、このようにふろ回路温度センサ30を用いて高温差し湯電磁弁27の開故障の検出を行う構成の場合、ふろ回路温度センサ30が故障等していると高温差し湯電磁弁27の開故障を正確に検出することができない。そのため、本実施形態に示す給湯装置1では、ふろ回路温度センサ30に異常がないか否かを以下のようにして判定するように構成されている。
【0047】
すなわち、制御部7は、高温差し湯運転が停止している状態で注湯運転が行われると、この注湯運転中に出湯温度センサ22とふろ回路温度センサ30の検出値を比較し、両検出値の差が一定範囲内にあるか(つまり、両検出値が一致しているか)否かを判定する。そして、この判定の結果、両検出値の差が一定範囲内にあれば、ふろ回路温度センサ30は正常であると判定する。すなわち、高温差し湯運転が停止している状態で注湯運転を行うと、注湯経路6には給湯経路4からの温水のみが供給されるので、出湯温度センサ22とふろ回路温度センサ30が双方とも正常であれば両検出値は一致(ほぼ一致)するからである。一方、出湯温度センサ22とふろ回路温度センサ30の検出値を比較し、両検出値の差が一定範囲外となった場合、制御部7は、ふろ回路温度センサ30は異常であると判定する。
【0048】
なお、これらの判定は出湯温度センサ22が正常であることを前提とするので、この判定を行う前に、制御部7は、出湯温度センサ22が正常であるか否かの判定を行っておく。すなわち、たとえば、制御部7は、給湯運転が所定時間以上停止しているときに、入水温度センサ18と出湯温度センサ22の検出値を比較して、両検出値の差が一定範囲内にあるか(つまり、両検出値が一致しているか)否かを判定し、この判定の結果、両検出値の差が一定範囲内にあれば、出湯温度センサ22は正常であると判定する。
【0049】
E:
高温差し湯電磁弁の故障検出手順(2)
次に、高温差し湯電磁弁27の故障検出手順の他の実施態様を説明する。
この実施態様では、制御部7は、高温差し湯運転および給湯運転が停止している状態で高温差し湯サーボ弁26の開度を制御し、そのときの缶体水量センサ17の検出値に基づいて、高温差し湯電磁弁27の開故障の有無を判定する。
【0050】
具体的には、制御部7は、高温差し湯運転および給湯運転が停止しているときに、高温差し湯電磁弁27を閉じたままの状態で、まず、高温差し湯サーボ弁26を開方向に作動させてこのときに缶体水量センサ17で所定水量以上の通水が検出されているか否かを判断し、この判断で所定水量以上の通水が検出されていれば、次に、高温差し湯サーボ弁36を閉方向に作動させてそのときに缶体水量センサ17が所定水量未満に低下しているか否かを判断する。
【0051】
ここで、高温差し湯電磁弁27が開故障していれば、このような高温差し湯サーボ弁26の開閉にともなって缶体水量センサ17で検出される水量が変化するので、制御部7は、その変化の有無から高温差し湯電磁弁27が開故障しているか否かを判定する。なお、この故障検出手順において、高温差し湯サーボ弁36を開方向に作動させるだけでなく、閉方向にも作動させるのは、給湯経路4への通水などによる誤検出を防止するためである。
【0052】
なお、この故障検出にあたり、本実施形態のように給湯装置1が注湯経路6(注湯機能)を備える場合には、高温差し湯運転、給湯運転および注湯運転のすべてが停止しているときに高温差し湯サーボ弁26の開度を制御して故障検出を行う。これは、故障検出中に注湯運転が開始されると缶体水量センサ17の検出値が変化し、誤判定を招くおそれがあるからである。
【0053】
次に、安全給湯運転について説明する。この安全給湯運転は、高温差し湯電磁弁27が開故障している場合だけでなく、ふろ回路温度センサ30が異常であると判定した場合にも実行される。
【0054】
F:
安全給湯運転(1)
高温差し湯電磁弁27の開故障が検出された状態またはふろ回路温度センサ30の異常が検出された状態で給湯運転を行う場合、制御部7は、同じ給湯設定温度の温水を出湯するために、缶体2から出湯する温水の設定温度(缶体設定温度)を、高温差し湯電磁弁27の開故障が検出されていないときの設定温度よりも低い所定の安全温度Tsに変更して給湯運転を行う。
【0055】
すなわち、高温差し湯電磁弁27が開故障していない場合の缶体設定温度は、通常、60℃程度に設定されるので、安全給湯運転時には、この缶体設定温度を、給湯設定温度に所定値α(αは数℃、たとえば2℃)を加えた温度に変更して給湯運転を行う。ここで、缶体設定温度を給湯設定温度+α℃とするのは、この程度の温度の温水が浴槽Bに流入しても危険でないこと、および、数℃程度の温度差であれば、バイパス経路19の通水量を絞ることで給湯設定温度の温水を給湯栓に供給できる(給湯機能を損なわずに使用できる)からである。
【0056】
G:
安全給湯運転(2)
次に、安全給湯運転の他の実施態様を説明する。
この実施態様では、高温差し湯電磁弁27の開故障が検出された状態またはふろ回路温度センサ30の異常が検出された状態で給湯運転を行う場合、制御部7は、給湯運転の連続運転許容時間を、開故障が検出されていないときの許容時間よりも短い所定の安全時間tsに変更して給湯運転を行う。
【0057】
すなわち、高温差し湯電磁弁27が開故障していない場合における給湯運転の連続運転許容時間は、通常、たとえば60分に設定されている。つまり、給湯運転が60分間継続した場合、制御部7は、強制的に給湯運転を終了するようになっている。この実施態様では、安全給湯運転を開始すると、制御部7は、この連続運転許容時間を、たとえば20分に短縮する。このように20分程度の短時間の連続運転であれば、浴槽Bに高温の温水が供給されても浴槽B内の湯水が高温(たとえば、50℃以上)になるおそれは少なく、危険性は高くない。
【0058】
H:安全給湯運転の報知
このように、本実施形態に示す給湯装置1では、高温差し湯電磁弁27の開故障が検出された状態またはふろ回路温度センサ30の異常が検出された状態で給湯運転を行う場合、制御部7は所定の安全給湯運転を行うが、その際、制御部7は、安全給湯動作を行っている旨をリモコン8の表示部に表示する。また、この表示に代えて、または、この表示と合わせて、安全給湯運転が高温差し湯電磁弁27の故障によるものであるか、あるいは、ふろ回路温度センサ30の異常によるものであるかも表示するように構成される。
【0059】
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれに限定されることなく発明の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0060】
たとえば、上述した実施形態では、給湯装置1としてガスを燃料とするガス給湯装置を例示したが、オイルなどガス以外を燃料とする給湯装置にも本発明は適用可能である。
【0061】
また、上述した実施形態では、給湯装置1として、いわゆる潜熱回収型の給湯装置を用いた場合を示したが、潜熱回収型以外の給湯装置にも本発明は適用可能である。
【0062】
また、上述した実施形態では、温水暖房機能を備えていない給湯装置に本発明を適用した場合を示したが、温水暖房機能を備えた給湯装置にも本発明は適用可能である。