【解決手段】暖房循環ポンプ311の駆動により、暖房装置500,600に熱媒を循環供給するための熱媒循環経路540,550,560が形成される。バイパス路562bを形成するための熱動弁330の開弁時、および、開閉弁520,620の開放による暖房装置の使用台数の増加時には、熱媒の循環流量の増加に応じて、一次熱交換器11b内で熱媒の圧力低下により、沸騰音が発生しやすくなるので、一次熱交換器11bへの入力熱量を低下させる制御を実行する。
前記制御装置は、前記暖房用熱交換器の出側における前記熱媒の目標温度に対する前記検出温度の偏差に基づいて、上限発熱量よりも低い範囲内で前記第1の熱源の前記発熱量を制御し、
前記沸騰抑制手段は、前記検知手段によって前記圧力低下が検知されたときに前記圧力低下の非検知時よりも、前記目標温度を低下させる、請求項1記載の暖房熱源装置。
前記沸騰抑制手段は、前記検知手段によって前記圧力低下が検知されたときに、前記複数の暖房装置の前記作動台数に応じて、前記作動台数が多いほど前記目標温度が低くなるように、前記目標温度の低下量を変化させる、請求項2記載の暖房熱源装置。
前記制御装置は、前記暖房用熱交換器の出側における前記熱媒の目標温度に対する前記検出温度の偏差に基づいて、上限発熱量よりも低い範囲内で前記第1の熱源の前記発熱量を制御し、
前記沸騰抑制手段は、前記検知手段によって前記圧力低下が検知されたときに、前記圧力低下の非検知時よりも前記上限発熱量を低下させる、請求項1記載の暖房熱源装置。
前記沸騰抑制手段は、前記上限発熱量を前記検知手段によって前記圧力低下が検知されたときに、前記複数の暖房装置の前記作動台数に応じて、前記作動台数が多いほど前記上限発熱量が低くなるように、前記上限発熱量の低下量を変化させる、請求項2記載の暖房熱源装置。
前記沸騰抑制手段は、前記検知手段によって前記圧力低下が検知されたときに、前記循環ポンプの回転数を上昇させる制御をさらに実行する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の暖房熱源装置。
前記所定値は、前記暖房用熱交換器の出側における前記熱媒の目標温度が高いときに前記所定値が小さくなるように、前記目標温度に応じて可変に設定される、請求項8〜10のいずれか1項に記載の暖房熱源装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態に従う暖房熱源装置が適用された給湯システム100の概略構成図である。
【0030】
図1を参照して、給湯システム100は、カラン105や図示しないシャワー等の給湯栓の開栓時に出湯するための給湯回路101と、図示しない浴槽内の湯を加熱循環するための追焚回路102と、複数の暖房装置(図示せず)に対して液体の熱媒である温水を循環供給するための暖房回路103と、コントローラ300とを備える。コントローラ300は、たとえば、マイクロコンピュータによって構成される。
【0031】
追焚回路102は、吸入口191および吐出口192の間に、浴槽内の湯を加熱循環するための追焚循環経路を形成するように構成される。吸入口191および吐出口192は、浴槽内に配置された浴槽アダプタ(図示せず)に設けられた開口部と、配管を経由してそれぞれ接続される。暖房回路103から熱媒を受ける暖房装置は、暖房戻口302と暖房出力口(低温)304との間、または、暖房戻口302および暖房出力口(高温)306との間に接続される。
【0032】
以下、順に、給湯回路101、追焚回路102および暖房回路103の構成について説明する。
【0033】
給湯回路101は、缶体10に格納された、一次熱交換器11a、二次熱交換器21aおよび燃焼バーナ30aを含む。給湯回路101は、さらに、入水管50と、バイパス管60と、出湯管70とを含む。
【0034】
入水管50には、水道水等が給水される。入水管50および出湯管70の間にはバイパス管60が配置される。入水管50には、バイパス管60への分流を制御するための分配弁80が介挿接続される。分配弁80の開度に応じて、給水量の一部が入水管50からバイパス管60へ分流される。全体給水量に対する分流の割合は、分配弁80の開度に応じて制御される。
【0035】
さらに、入水管50には、温度センサ110および流量センサ150が配置される。温度センサ110は、入水温度Twを検出する。流量センサ150は、分配弁80よりも下流側(缶体側)に配置される。したがって、流量センサ150によって検出される流量Qは、缶体10を通過する流量(缶体流量)を示している。流量センサ150は、代表的には、羽根車式流量センサによって構成される。
【0036】
入水管50の水は、まず二次熱交換器21aによって予熱された後、一次熱交換器11aにおいて主加熱される。一次熱交換器11aおよび二次熱交換器21aによって所定温度まで加熱された湯は、出湯管70から出湯される。
【0037】
出湯管70は、合流部75においてバイパス管60と接続される。したがって、給湯システム100からは、缶体10から出力された高温湯と、バイパス管60からの水を混合した適温の湯が、台所や浴室等の給湯栓や、図示しない風呂への注湯回路などの所定の給湯箇所に供給される。
【0038】
出湯管70には、流量調整弁90および温度センサ120,130が設けられる。温度センサ120は、出湯管70のバイパス管60との合流部75よりも上流側(缶体側)に配置されて、缶体10からの出力湯温を検出する。温度センサ130は、合流部75よりも下流側(出湯側)に設けられて、バイパス管60からの水が混合された後の出湯温度Thを検出する。流量調整弁90は、出湯流量を制御するために設けられる。温度センサ110,120,130は、たとえば、サーミスタによって構成される。
【0039】
缶体10において、燃焼バーナ30aからは、燃料ガスと、送風ファン40によって供給される燃焼用空気との混合気が出力される。図示しない点火装置によって混合気が着火されることにより、燃料ガスが燃焼されて火炎が生じる。燃焼バーナ30aからの火炎によって生じる燃焼熱は、缶体10内で一次熱交換器11aおよび二次熱交換器21aへ与えられる。
【0040】
一次熱交換器11aは、燃焼バーナ30aによる燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)により入水を熱交換によって加熱する。二次熱交換器21aは、燃焼バーナ30aからの燃焼排ガスの潜熱によって通流された水を熱交換によって加熱する。缶体10の燃焼ガスの流れ方向下流側には熱交換後の燃焼排ガスを排出処理するための排気経路15が設けられる。このように、缶体10では、燃焼バーナ30aでの燃焼による発生熱量により、一次熱交換器11aおよび二次熱交換器21aで、入水管50から供給された水を加熱する。
【0041】
燃焼バーナ30aへのガス供給管31には、元ガス電磁弁32、ガス比例弁33および、能力切換弁35a〜35cが配置される。元ガス電磁弁32は、燃焼バーナ30aへの燃料ガスの供給をオンオフする機能を有する。ガス供給管31のガス流量は、ガス比例弁33の開度に応じて制御される。
【0042】
能力切換弁35a〜35cは、複数の燃焼バーナ30aのうちの、燃料ガスの供給対象となるバーナ本数(バーナ燃焼本数)を切換えるために開閉制御される。缶体10での発生熱量は、バーナ本数およびガス流量の組み合わせによって決まる、燃焼バーナ30a全体の供給ガス量に比例する。したがって、要求発生熱量に対応させて、能力切換弁35a〜35cの開閉パターン(バーナ燃焼本数)およびガス比例弁33の開度(ガス流量)の組み合わせを決定する設定マップを予め作成することができる。
【0043】
次に、追焚回路102を含む、給湯システム100における浴槽への給湯に関連した構成を説明する。なお、以下では、浴槽に対する給湯を「注湯」と表記する一方で、浴槽以外の給湯栓(カラン105等)への給湯を、単に「給湯」と表記することとする。
【0044】
給湯システム100は、出湯管70から分岐して浴槽(図示せず)へ給湯するための注湯管180をさらに備える。注湯管180は、出湯管70から流量調整弁90を経由して分岐される。さらに、注湯管180には、注湯電磁弁210および逆止弁220が介挿接続される。注湯管180は、後程説明する風呂戻り配管190と、合流部185で連結される。
【0045】
コントローラ300による注湯電磁弁210の開閉制御によって、給湯回路101から浴槽へ注湯するための経路の形成/遮断を制御することができる。
【0046】
追焚回路102は、風呂戻り配管190と、風呂往き配管195と、追焚循環ポンプ400と、風呂熱交換器410とを含む。
【0047】
風呂戻り配管190は、浴槽からの吸入口191と追焚循環ポンプ400の吸入口との間に設けられる。追焚循環ポンプ400の吐出側は、風呂熱交換器410の一方端と接続される。風呂熱交換器410の他方端は、風呂往き配管195によって、浴槽への吐出口192と連結される。
【0048】
追焚運転時には、追焚循環ポンプ400が作動することにより、吸入口191から給湯システム100へ浴槽内の湯が吸入される。そして、吸入された湯が、風呂戻り配管190、追焚循環ポンプ400、風呂熱交換器410および風呂往き配管195を経由して、吐出口192から浴槽内に戻される追焚循環経路が形成される。追焚循環経路において、風呂熱交換器410の入力側および出力側には、温度センサ372および374がそれぞれ設けられる。
【0049】
追焚運転時には、暖房回路103の熱動弁330が開放される。これにより、後述する暖房回路103で加熱された熱媒が、風呂熱交換器410を通流する。この結果、追焚循環経路の湯が、風呂熱交換器410によって加熱されることによって、浴槽内の湯温を上昇させることができる。
【0050】
さらに、風呂戻り配管190は、合流部185において、注湯管180と連結される。これにより、注湯電磁弁210が開放されると、給湯回路101からの湯が、注湯管180を経由して合流部185に供給される。注湯運転時には、追焚循環ポンプ400が停止されているため、供給された湯は、風呂戻り配管190および風呂往き配管195をそれぞれ経由して、吸入口191および吐出口192の両方から、浴槽内に供給される。
【0051】
次に、給湯システム100内の暖房回路103について説明する。暖房回路103は、暖房運転時に、暖房戻口302と暖房出力口(低温)304との間、および、暖房戻口302と暖房出力口(高温)306との間のそれぞれに、熱媒(代表的には、温水)の循環経路を形成するように構成される。
【0052】
暖房回路103は、一次熱交換器11bおよび二次熱交換器21bと、燃焼バーナ30bとを含む。一次熱交換器11b,二次熱交換器21bおよび燃焼バーナ30bは、給湯回路の一次熱交換器11a、二次熱交換器21aおよび燃焼バーナ30aと共通の缶体10内に格納されている。
【0053】
一次熱交換器11bは、燃焼バーナ30bによる燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)により入水を熱交換によって加熱する。二次熱交換器21bは、燃焼バーナ30bからの燃焼排ガスの潜熱によって通流された水を熱交換によって加熱する。能力切換弁36a,36bの開閉制御によって、複数の燃焼バーナ30bのうちの、燃料ガスの供給対象となるバーナ本数(バーナ燃焼本数)が切換えられる。燃焼バーナ30bに対しては、燃焼バーナ30aと共通のガス供給管31、元ガス電磁弁32およびガス比例弁33を経由して、燃料ガスが供給される。
【0054】
さらに、暖房回路103は、暖房循環ポンプ310と、暖房膨張タンク320と、熱動弁330と、配管350,360,370,380,390と、オリフィス365と、温度センサ382,384とを含む。
【0055】
配管350は、暖房出力口(低温)304と一次熱交換器11bの一方端との間を連結する。配管370は、一次熱交換器11bの他方端および暖房出力口(高温)306の間を連結する。配管360は、一次熱交換器11bの他方端および配管380の間に配設される。
【0056】
配管380は、暖房戻口302と二次熱交換器21bの一方端(入側)との間を連結する。配管390は、二次熱交換器21bの他方端(出側)および暖房膨張タンク320の間を連結する。暖房循環ポンプ310の吸入口311は、暖房膨張タンク320と接続される。暖房循環ポンプ310の吐出口312は、配管350の分岐部355と接続される。
【0057】
暖房膨張タンク320は、暖房循環ポンプ310の吸入口311と連結される。暖房膨張タンク320は、暖房回路103を循環する熱媒を一時的に貯留する。暖房膨張タンク320の水位低下時には、給水弁305を開放することにより、配管51から給水することができる。また、水位上昇時には、配管325を経由して、オーバーフロータンク327から排水栓106へ、熱媒を排出することができる。
【0058】
配管360および370は、一次熱交換器11bの同一側(出側)で分岐している。したがって、一次熱交換器11bから出力された熱媒は、配管370によって暖房出力口306(高温)へ出力される経路と、配管360を経由して循環される経路とに分けられる。配管360は、さらに、オリフィス365を経由して配管390に至る配管361と、風呂熱交換器410を通過する配管362とに分岐される。配管361は、合流部395において、配管390と接続される。配管361によって、一次熱交換器11bで加熱された熱媒を、配管390を経由して暖房膨張タンク320へ循環する経路が形成される。
【0059】
一次熱交換器11bの出力側には、暖房回路103における缶体10からの出力温度(缶体出側温度)を検出するための温度センサ384が配置される。一方で、暖房膨張タンク320には、タンク内の湯温を検出するための温度センサ382が配置される。温度センサ382による検出温度Thiは、暖房出口(低温)304から供給される熱媒の温度に相当する。温度センサ382,384は、たとえば、サーミスタにより構成される。
【0060】
配管362には、熱動弁330が介挿接続される。熱動弁330の開閉は、コントローラ300からの開閉指令に従って制御される。熱動弁330の開放時には、一次熱交換器11bで加熱された熱媒が、風呂熱交換器410を通流する。すなわち、熱動弁330の開放時には、一次熱交換器11bから出力された熱媒を、風呂熱交換器410、合流部385および配管380を経由して二次熱交換器21bへ循環させる経路が、さらに形成される。
【0061】
再び
図1を参照して、コントローラ300は、各センサからの出力信号(検出値)およびユーザ操作を受けて、給湯システム100の全体動作を制御するために、各機器への制御指令を発生する。ユーザ操作には、給湯システム100の運転オン/オフ指令および設定湯温(Tr*)指令が含まれる。たとえば、ユーザ操作は、図示しないリモートコントローラに対して入力される。
【0062】
制御指令には、各弁の開閉および開度指令等が含まれる。運転オン/オフ指令は、給湯回路101による給湯運転および注湯運転、追焚回路102による追焚運転、ならびに、暖房回路103による暖房運転の各々のオン/オフ指令を含む。なお、暖房運転については、暖房装置510,610(
図2)に対するオン指令に応じて、給湯システム100における暖房運転が自動的にオンされてもよい。設定湯温(Tr*)は、給湯運転および注湯運転のそれぞれに別個に設定されることが好ましい。なお、暖房運転では、直接、設定温度を入力しないことが一般的である。
【0063】
給湯運転および注湯運転時には、給湯回路101の燃焼バーナ30aでの燃焼によって、入水管50の低温水が加熱されて出湯管70へ出力される。コントローラ300は、給湯運転および注湯運転時における、燃焼バーナ30aによる要求発生熱量P*を算出する。この要求発生熱量P*は、流量センサ150によって検出される流量と、温度センサ110によって検出される入水温と、温度センサ120によって検出される、給湯回路101での缶体出側温度とに基づいて、缶体出側温度の検出値が目標値に制御されるように算出される。なお、缶体出側温度の目標値は、ユーザによって設定された給湯運転および注湯運転時の設定温度と、バイパス管60の分流率(分配弁80の開度)に基づいて設定できる。
【0064】
追焚運転および暖房運転時には、暖房循環ポンプ310の駆動によって形成される熱媒循環経路を循環する熱媒が、燃焼バーナ30bでの燃焼によって加熱される。コントローラ300は、燃焼バーナ30bによる要求発生熱量P*を、温度センサ384によって検出された一次熱交換器11bの出力温度(缶体出側温度)の検出値が目標値へ制御されるように算出する。すなわち、燃焼バーナ30bによる要求発生熱量P*は、暖房回路103における缶体目標温度(Tht*)と、温度センサ382,384による検出温度(タンク内湯温Thi,缶体出側温度Tht)とに基づいて、算出することができる。代表的には、要求発生熱量P*は、設定された上限値Pmaxを超えない範囲内で、缶体10における目標昇温量ΔT(ΔT=Tht*−Thi)および缶体出側温度の偏差ΔTht(ΔTht=Tht*−Tht)に基づいて算出することができる。
【0065】
コントローラ300は、給湯運転、注湯運転、暖房運転および追焚運転の各々において、算出された要求発生熱量P*に従って、燃焼バーナ30a,30bへの供給ガス量を算出する。さらに、コントローラ300は、この供給ガス量を実現するような、燃焼バーナ30a,30bのうちのバーナ燃焼本数およびガス流量の組合せを決定するとともに、決定されたバーナ燃焼本数およびガス流量が実現されるように、ガス比例弁33の開度および能力切換弁35a〜35c,36a,36bの開閉を制御する。
【0066】
さらに、コントローラ300は、算出された供給ガス量に対して、送風ファン40による送風量の比(空燃比)が所定値(たとえば、理想空燃比)となるように、送風ファン40の回転数を制御する。
【0067】
次に、給湯システム100の暖房回路103での通流経路をさらに詳細に説明する。
図2は、暖房回路103における熱媒の通流経路を説明するためのブロック図である。
【0068】
図2を参照して、暖房戻口302と暖房出力口(高温)306との間には、高温暖房端末500が接続される。高温暖房端末500は、高温暖房装置510および開閉弁520を有する。開閉弁520の開閉は、高温暖房端末500のコントローラ(図示せず)によって制御される。
【0069】
開閉弁520は、高温暖房装置510の作動時に開放される。開閉弁520が開放されると、高温暖房装置510および暖房回路103の間に、暖房戻口302と暖房出力口(高温)302を経由した、熱媒の循環供給経路が形成される。たとえば、高温暖房装置510は、暖房回路103からの熱媒によって加熱された温風を出力する、ルームヒーターによって構成される。
【0070】
暖房戻口302と暖房出力口(低温)304との間には、複数の低温暖房端末600が接続される。各低温暖房端末600は、低温暖房装置610および開閉弁620を有する。
【0071】
開閉弁620が開放されると、対応の低温暖房装置610および暖房回路103の間に、暖房戻口302と暖房出力口(低温)304を経由した、熱媒の循環供給経路が形成される。たとえば、低温暖房装置610は、暖房回路103からの熱媒が通流される、床暖房用の温水パネルによって構成される。
【0072】
暖房端末600ごとに、開閉弁620の開閉が、低温暖房端末600のコントローラ(図示せず)によって制御される。コントローラ間の通信によって、開閉弁620の開閉状態についても、コントローラ300(
図1)によって検知することができる。各開閉弁620は、対応の低温暖房装置610の作動時に開放される。複数の低温暖房端末600は、暖房回路103に対して並列接続されているので、各開閉弁620の開閉によって、低温暖房装置610ごとに作動および停止が制御できる。コントローラ300は、各開閉弁620に対する開閉指令に基づき、複数の低温暖房端末600のうちの、作動中の暖房端末の台数(以下、「作動台数」と称する)を検知することができる。なお、作動台数には、高温暖房装置510の作動台数を加えてもよい。したがって、以下では、高温暖房装置510および低温暖房装置610を包括的に「暖房装置」とも称する。
【0073】
給湯システム100は、暖房循環ポンプ310が作動すると、暖房戻口302と、暖房出力口(低温)304および/または暖房出力口(高温)306とを経由して、高温暖房装置510および/または低温暖房装置610に対して熱媒(温水)を循環供給する。すなわち、暖房循環ポンプ310の駆動によって、給湯システム100内には、暖房戻口302と、暖房出力口(低温)304および暖房出力口(高温)306との間に、熱媒循環経路が形成される。以下、当該熱媒循環経路の詳細について説明する。
【0074】
暖房循環ポンプ310の駆動によって、暖房戻口302から、配管380、二次熱交換器21b、配管390および、暖房膨張タンク320を経由して、暖房循環ポンプ310の吸入口311に至る吸入経路540が形成される。暖房膨張タンク320から暖房循環ポンプ310に吸入された熱媒は、吐出口312から、配管350の分岐部355へ出力される。
【0075】
暖房循環ポンプ310からの熱媒は、配管350の分岐部355において、暖房出力口(低温)304に至る出力経路550と、一次熱交換器11bを通過する経路560とに分岐される。経路560は、一次熱交換器11bの通過後に暖房出力口(高温)306から熱媒を出力する出力経路561と、一次熱交換器11bの通過後に再び配管390へ至る循環経路562とを含む。
【0076】
循環経路562は、オリフィス365が設けられた配管361を経由して、合流部395で配管390へ戻る経路562aと、熱動弁330の開放時に形成される経路562bとを含む。経路562bは、風呂熱交換器410、合流部385、配管380を経由して、二次熱交換器21bをさらに通過した後に、配管390へ至る。このように、循環経路562(経路562a,562b)は、少なくとも一次熱交換器11bを通過した後に、暖房膨張タンク320を経由して、暖房循環ポンプ310の吸入口311へ戻るように構成される。
【0077】
分岐部355における、出力経路550と経路560との間の分流比率は、経路560の等価的な圧損によって決まる。したがって、熱動弁330の開閉およびオリフィス365の径によって、上記分流比率が決まる。言い換えると、当該分流比率が適切な範囲となるように、オリフィス365の径が設計される。
【0078】
図2の構成において、出力経路550は「第1の経路」に対応し、循環経路562は「第2の経路」に対応する。さらに、分岐部355は、「第1の経路」および「第2の経路」を分岐する「分岐部」に対応する。また、一次熱交換器11bは「暖房用熱交換器」に対応し、燃焼バーナ30b(
図1)は「第1の熱源」に対応する。また、吸入経路540、出力経路550および、経路560(出力経路561および循環経路562を含む)によって、給湯システム100内の「熱媒循環経路」が構成される。また、暖房戻口302は「熱媒戻口」に対応し、暖房出力口304,306は「熱媒吐出口」に対応する。
【0079】
さらに、暖房循環ポンプ310の駆動による熱媒循環流量は、熱媒循環経路の圧損に依存して変化する。具体的には、熱動弁330の開放時には、オリフィス365を経由する経路562aに加えて、経路562bが並列に形成されるため、循環経路562の流量が増加する。この結果、給湯システム100内の熱媒循環流量も増大する。以下では、経路562bを「バイパス路」とも称する。熱動弁330は、「バイパス路」の形成および遮断を制御する「バイパス制御弁」に対応する。
【0080】
図2の構成から理解されるように、高温暖房装置510に対しては、暖房出力口306(高温)から、一次熱交換器11bを通過した高温水が供給される。すなわち、高温暖房端末500へ供給される熱媒の温度は、暖房回路103の缶体目標温度Tht*によって制御することができる。一方で、低温暖房装置610に対しては、暖房出力口304(低温)から、暖房膨張タンク320内の湯が供給される。
【0081】
暖房膨張タンク320の湯温は、缶体出側温度Thtと、出力経路550および循環経路562の流量比率とによって決まる。熱動弁330を開放すると、バイパス路562bを通流して一次熱交換器11bで加熱される熱媒の比率を高めることができるので、暖房膨張タンク320の湯温、すなわち、暖房出力口304から出力される熱媒の温度を上昇することが可能となる。
【0082】
また、
図1に示した追焚回路102によって浴槽の湯温を上昇させる追焚運転時には、
図1に示された追焚循環ポンプ400の駆動により、追焚循環経路570が形成される。さらに、熱動弁330が開放されて、暖房回路103で加熱された熱媒が風呂熱交換器410を通過することにより、追焚循環経路570を循環する湯が加熱されて、浴槽の湯温が上昇される。
【0083】
ここで、通常、暖房回路103では、運転開始時の所定期間内において、低温暖房端末500が床温等を速やかに上昇させるために、いわゆるホットダッシュ制御(以下、HD制御とも称する)が適用される。たとえば、HD制御の実行時には、暖房出力口304から低温暖房端末600へ供給される熱媒の温度が、通常時の60℃程度から、70℃程度に上昇される。HD制御は「迅速加熱運転」に相当する。通常、高温暖房端末600に対しては、HD制御は適用されない。
【0084】
HD制御の適用時には、缶体出側温度Thtの目標温度(缶体目標温度Tht*)が、通常時(HD制御の非実行時)よりも高くなるので、缶体10における目標昇温量ΔT(ΔT=Tht*−Thi)が大きくなる。これにより、燃焼バーナ30bによる要求発生熱量P*が大きく算出されることによって、運転開始後の初期期間において、缶体出側温度Tht、すなわち、暖房端末500,600へ供給される熱媒の温度を速やかに上昇することができる。
【0085】
HD制御では、燃焼バーナ30bから一次熱交換器11bへ与えられる熱量が増加する。したがって、一次熱交換器11bの流量が小さいと、缶体出側温度Thtが過上昇することによって、頻繁に燃焼の停止を余儀なくされることが懸念される。したがって、HD制御時には、熱媒循環経路の通流量を確保する目的で、バイパス路562bを形成するための熱動弁330を開放する。
【0086】
この結果、HD制御時には、経路560の通流量が増加することにより、暖房回路103に形成される暖房循環経路の通流量も増加する。さらに、暖房端末500,600の作動台数の増加が重なると、上記暖房循環経路の通流量がさらに増加する。
【0087】
暖房回路103において暖房循環経路の流量が増加すると、暖房循環ポンプ310の吐出圧が低下することにより、一次熱交換器11bを通過する熱媒の圧力が低下する。この圧力低下により、一次熱交換器11bにおいて熱媒が沸騰しやすくなる。これにより、一次熱交換器11bで発生した沸騰音が、ユーザに違和感を与えることが懸念される。
【0088】
さらに、上述のように、HD制御時には、缶体目標温度Tht*も上昇される。このため、一次熱交換器11bにおける沸騰音がさらに発生しやすくなる。
【0089】
したがって、実施の形態1では、本実施の形態に従う給湯システム100の暖房回路103において、暖房運転中のHD制御の適用時に、以下に説明する沸騰音抑制制御を実行する。
【0090】
図3は、給湯システムの暖房運転における実施の形態1に従う沸騰音抑制制御を説明するフローチャートである。
図3に示したフローチャートに従う制御処理は、
図1に示したコントローラ300によって繰返し実行される。
【0091】
図3を参照して、コントローラ300は、ステップS100により、暖房運転中であるか否かを判定する。上述のように、図示しないリモートコントローラに対するユーザのスイッチ操作に基づいて、ステップS100の判定は実行できる。
【0092】
コントローラ300は、暖房運転中(S100のYES判定時)には、ステップS200に処理を進めて、一次熱交換器11bの圧力低下条件が成立しているかどうかを判定する。ステップS200による圧力低下条件は、圧力をセンサによって直接検出することなく、一次熱交換器11b内の圧力低下が発生する可能性が高い所定の運転状態を抽出できるように予め定められる。
【0093】
たとえば、ステップS200では、HD制御の適用中であって、かつ、複数の暖房装置のうちの作動台数(N1)が、判定値αを超えたときに、圧力低下条件が成立していると判定される。上述のように、作動台数N1は、低温暖房装置610の作動台数であってもよく、高温暖房装置510および低温暖房装置610の作動台数の和でもよい。
【0094】
コントローラ300は、圧力低下条件の成立時(S200のYES判定時)には、ステップS300へ処理を進めて、沸騰音抑制のために、燃焼バーナ30bによる発生熱量を低下させる制御を実行する。
【0095】
代表的には、HD制御における缶体目標温度Tht*を低下することによって、目標昇温量ΔT(ΔT=Tht*−Thi)を減少させることにより、燃焼バーナ30bによる要求発生熱量P*が低下することができる。要求発生熱量P*が低下すると、燃焼バーナ30bへの供給ガス量が減少するので、燃焼バーナ30bによる発生熱量を低下することができる。たとえば、HD制御における缶体目標温度Tht*を、デフォルト値T0から所定値T1(T1<T0)に低下することによって、燃焼バーナ30bによる発生熱量が低下する。
【0096】
あるいは、上述のように、缶体出側温度制御における、燃焼バーナ30bによる要求発生熱量P*は、上限値Pmaxを超えない範囲内で設定されるので、当該上限値Pmaxを低下することによっても、要求発生熱量P*を強制的に低下することができる。たとえば、上限値Pmaxをデフォルト値P0から所定値P1(P1<P0)に低下することによって、要求発生熱量P*が低下されて、燃焼バーナ30bによる発生熱量が低下する。あるいは、燃焼バーナ30bへの供給ガス量を制御するガス比例弁33の開度を直接制限することによっても、燃焼バーナ30bによる発生熱量を低下することができる。
【0097】
さらに、暖房循環ポンプ310の揚程に余裕がある場合には、燃焼バーナ30bによる発生熱量の低下に加えて、暖房循環ポンプ310の回転数を上昇させる制御を行ってもよい。これにより、熱媒の圧力が上昇するので、一次熱交換器11bでの沸騰音の発生を抑制する効果を高めることができる。
【0098】
一方で、コントローラ300は、圧力低下条件の非成立時(S200のNO判定時)には、ステップS300による制御を非実行とする。これにより、通常の缶体目標温度(Tht*=T0)および上限値(Pmax=P0)に従って、HD制御が実行される。また、暖房運転の非実行中(S100のNO判定時)には、燃焼バーナ30bによる燃焼が停止されているので、ステップS200,S300による、一次熱交換器11bの沸騰音抑制制御は実行されない。
【0099】
これにより、実施の形態1による沸騰音抑制制御によれば、一次熱交換器11b内の圧力が低下しやすくなる運転状態である、多数の暖房装置の作動時にHD制御が実行される場合に、燃焼バーナ30bから一次熱交換器11bへの入力熱量を低下させることができる。この結果、圧力を直接検出することなく、一次熱交換器11b内の圧力低下時における一次熱交換器11bでの沸騰音の発生を抑制することが可能となる。
【0100】
図4は、実施の形態1に示された沸騰音抑制制御が適用された、HD制御の処理手順を説明するフローチャートである。
図4の処理は、暖房運転のオン中にコントローラ300によって繰り返し実行される。また、
図4には、
図3のステップS300において缶体目標温度Tht*を低下させたときの制御処理が例示される。
【0101】
図4を参照して、コントローラ300は、ステップS400により、HD制御の開始条件が成立しているかどうかを判定する。HD制御開始条件は、たとえば、暖房運転の開始時に成立する。なお、暖房運転の開始時であっても、温度センサ382によって検出される暖房膨張タンク320内の湯温が所定温度よりも高い場合には、ステップS400をNO判定としてもよい。
【0102】
コントローラ300は、HD制御の開始条件が成立しないとき(S400のNO判定時)には、通常の暖房運転を行なう。この場合には、缶体目標温度Tht*は所定値T2に設定される。たとえば、T2は、暖房出力口(低温)304から出力される熱媒の温度が
60℃程度となるように設定される。
【0103】
コントローラ300は、HD制御開始条件が成立すると(S400のYES判定時)、ステップS410に処理を進めて、暖房装置の作動台数N1が判定値αを超えているかどうかを判定する。
【0104】
コントローラ300は、作動台数N1が判定値αを超えていないとき(S410のNO判定時)には、ステップS430に進めて、缶体目標温度Tht*をHD制御でのデフォルト値T0に設定する(Tht*=T0)。たとえばT0は、暖房出力口(低温)304から出力される熱媒の温度が80℃程度になるように設定される。
【0105】
一方で、コントローラ300は、作動台数N1が判定値αを超えている場合(S410のYES判定時)には、テップS420に処理を進めて、缶体目標温度Tht*をデフォルト値T0よりも低い所定値T1に設定する。たとえばT1は、暖房出力口(低温)304から出力される熱媒の温度が77℃程度になるように設定される。このように、ステップS420,S430により、HD制御における缶体目標温度Tht*がT0またはT1に設定される。
【0106】
コントローラ300は、ステップS440により、HD制御の終了条件が成立しているか否かを判定する。たとえば、ステップS440では、HD制御開始からの経過時間thdが所定時間βを超えたか否かが判定される。
【0107】
コントローラ300は、HD制御開始からの経過時間thdが所定時間βを超えるまでの間(S440のNO判定時)、ステップS410〜S430の処理を繰返し実行する。一方で、HD制御開始からの経過時間thdが所定時間βを超えると(S440のYES判定時)、コントローラ300は、ステップS450に処理を進めて、HD制御を終了する。以降では、今回の暖房運転がオフされるまで、
図4のフローチャートにおいてステップS400がNO判定とされて、缶体目標温度Tht*=T2に設定される(S450)。これにより、暖房運転の開始時のみHD制御を適用することができる。
【0108】
このように、実施の形態1に従う沸騰音抑制制御を組合せることにより、暖房運転の開始時に、沸騰音の発生を抑制した上で、HD制御を円滑に実行することが可能となる。
【0109】
なお、
図1から理解されるように、暖房装置の作動台数N1が増加するほど、暖房回路103を循環する熱媒の流量が増加するので、一次熱交換器11b内の圧力低下が顕著になって、熱媒の沸騰が生じやすくなる。したがって、
図3のステップS300において、燃焼バーナ30bによる発生熱量を低下するためのパラメータである所定値P1,T1は、
図5に示されるように、暖房装置の作動台数N1に応じて段階的に設定することが好ましい。
【0110】
図5を参照して、沸騰音抑制制御における缶体目標温度Tht*および要求発生熱量の上限値Pmaxを低下させるための所定値P1,T1は、作動台数N1が判定値αより多いときに、デフォルト値T0,P0よりも低い値に設定される。さらに、所定値P1,T1は、作動台数N1が増えるほどT1,P1が低下するように、段階的に設定することが好ましい。このようにすると、一次熱交換器11b内の圧力低下が顕著になる運転状態に対応させて、缶体目標温度Tht*および要求発生熱量の上限値Pmaxの低下量が増大するので、一次熱交換器11bにおける沸騰音の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0111】
なお、実施の形態1において、ステップS200による判定は、HD制御中であるか否か、または、作動台数N1の一方のみに基づいて実行することも可能である。すなわち、バイパス路562bの形成、または、暖房装置の作動台数の増加の一方のみに基づいて、一次熱交換器11bの圧力低下を検知してもよい。
【0112】
[実施の形態2]
再び
図1および
図2を参照して、本実施の形態に従う給湯システム100では、暖房回路103に加えて、追焚回路102が搭載されている。
図1で説明したように、追焚運転時には、暖房回路103においても、風呂熱交換器410に熱媒を通流するために熱動弁330が開放される。
【0113】
したがって、暖房運転と追焚運転とが同時に実行される場合には、実施の形態1で説明したHD制御の適用時と同様に、バイパス路562b(
図2)の形成によって、暖房回路103を循環する熱媒の流量が増加する。これにより、一次熱交換器11b内の圧力低下が懸念される。
【0114】
このため、実施の形態2では、暖房運転および追焚運転の同時実行時における沸騰音抑制制御について説明する。なお、実施の形態2では、給湯システム100の構成を始め、沸騰音抑制制御以外の構成および制御は、実施の形態1と同様である。
【0115】
図6は、実施の形態2に従う沸騰音抑制制御を説明するためのフローチャートである。
図6を参照して、実施の形態2に従う沸騰音抑制制御では、
図3に示したフローチャートでのステップS200に代えて、ステップS201によって圧力低下条件が成立しているかどうかを判定する。ステップS100による処理は、
図3と同様であるので説明は繰返さない。
【0116】
コントローラ300は、ステップS201では、追焚運転が暖房運転と同時に実行されており、かつ、暖房装置の作動台数N1が判定値αを超えているか否かを判定する。すなわち、実施の形態2では、暖房運転および追焚運転が同時に実行され、かつ、N1>αのときに、ステップS300に処理が進められる。
【0117】
コントローラ300は、ステップS300により、沸騰音抑制のために、燃焼バーナ30bによる発生熱量を低下させる制御を実行する。たとえば、
図3のステップS300と同様に、缶体目標温度Tht*または要求発生熱量P*の上限値Pmaxが、追焚運転適用時のデフォルト値よりも低下される。あるいは、暖房循環ポンプ310の揚程に余裕がある場合には、燃焼バーナ30bによる発生熱量の低下に加えて、暖房循環ポンプ310の回転数が上昇される。
【0118】
これにより、実施の形態2に従う沸騰音抑制制御によれば、実施の形態1と同様に、一次熱交換器11b内の圧力が低下しやすくなる運転状態に対応させて、燃焼バーナ30bから一次熱交換器11bへの入力熱量を低下させることができる。この結果、圧力を直接検出することなく、一次熱交換器11b内の圧力低下時における一次熱交換器11bでの沸騰音の発生を抑制することが可能となる。
【0119】
なお、実施の形態2においても、ステップS300における、缶体目標温度Tht*および要求発生熱量の上限値Pmaxを低下させるための所定値P1,T1は、
図5に示したように、暖房装置の作動台数N1に応じて段階的に設定することが好ましい。
【0120】
また、実施の形態2において、ステップS201の判定については、暖房運転と同時に追焚運転中であるか否か、または、作動台数N1の一方のみに基づいて実行することも可能である。すなわち、バイパス路562bの形成、または、暖房装置の作動台数の増加の一方のみに基づいて、一次熱交換器11bの圧力低下を検知してもよい。
【0121】
[実施の形態3]
再び
図1を参照して、給湯システム100では、給湯回路101の燃焼バーナ30aと、暖房回路103の燃焼バーナ30bとは、共通のガス比例弁33によって制御されたガス量を供給される構成となっている。すなわち、
図1の構成において、燃焼バーナ30aは「第2の熱源」に対応し、一次熱交換器11aは「給湯用熱交換器」に対応し、ガス比例弁33は「燃料量制御弁」に対応する。
【0122】
給湯システム100で、給湯運転および暖房運転が同時に実行されている場合には、給湯運転における出湯温度を守ることが優先される。したがって、缶体10では、燃焼バーナ30aの要求発生熱量に従って、ガス比例弁33の開度が制御される。これにより、暖房運転のための燃焼バーナ30bにおける発生熱量の制御自由度が低下する。具体的には、暖房回路103の缶体出側温度Thtが缶体目標温度Tht*に達していても、給湯回路101側での要求に応じて、燃焼バーナ30bへの供給ガス量が増加され可能性がある。このような状態下で、暖房回路103を循環する熱媒流量の増加によって一次熱交換器11b内の圧力が低下すると、一次熱交換器11bにおいて熱媒の沸騰が生じる可能性がある。したがって、実施の形態3では、給湯運転および暖房運転の同時実行時における沸騰音抑制制御について説明する。なお、実施の形態3においても、給湯システム100の構成を始め、沸騰音抑制制御以外の構成および制御は、実施の形態1と同様である。
【0123】
図7は、実施の形態3に従う沸騰音抑制制御を説明するためのフローチャートである。
図7を参照して、実施の形態3に従う沸騰音抑制制御では、
図3に示したフローチャートでのステップS200に代えて、ステップS202によって圧力低下条件が成立しているかどうかを判定する。ステップS100による処理は、
図3と同様であるので説明は繰返さない。
【0124】
コントローラ300は、ステップS202では、給湯運転が暖房運転と同時に実行されており、かつ、暖房装置の作動台数N1が判定値αを超えているか否かを判定する。すなわち、実施の形態3では、給湯運転および追焚運転が同時に実行され、かつ、N1>αのときに、ステップS300に処理が進められる。
【0125】
コントローラ300は、ステップS300により、沸騰音抑制のために、燃焼バーナ30bによる発生熱量を低下させる制御を実行する。たとえば、暖房回路103での缶体目標温度Tht*または要求発生熱量P*の上限値Pmaxを、暖房回路103の単独運転時の値よりも低下することによって、燃焼バーナ30bによる発生熱量を低下することができる。あるいは、能力切換弁36a,36bの開閉制御を条件を変更して、暖房回路103の単独運転時と比較して、燃焼バーナ30bのうちのバーナ燃焼本数を減少させることによっても、燃焼バーナ30bによる発生熱量を低下することができる。また、暖房循環ポンプ310の揚程に余裕がある場合には、燃焼バーナ30bによる発生熱量の低下に加えて、暖房循環ポンプ310の回転数を上昇させてもよい。
【0126】
このように、実施の形態3に従う沸騰音抑制制御によれば、暖房運転と給湯運転とが同時に実行されて、ガス比例弁33による供給ガス量の制御が給湯運転に従って制御される場合に、一次熱交換器11b内の圧力が低下しやすくなる運転状態に対応させて、燃焼バーナ30bから一次熱交換器11bへの入力熱量を低下させることができる。この結果、圧力を直接検出することなく、一次熱交換器11b内の圧力低下時における一次熱交換器11bでの沸騰音の発生を抑制することが可能となる。
【0127】
また、実施の形態3においても、ステップS300における、缶体目標温度Tht*および要求発生熱量の上限値Pmaxを低下させるための所定値P1,T1は、
図5に示したように、暖房装置の作動台数N1に応じて段階的に設定することが好ましい。
【0128】
なお、実施の形態3では、給湯運転で要求される熱量が大きい場合、すなわちガス比例弁33の開度が大きい場合に、暖房回路103の一次熱交換器11bにおける沸騰音が発生しやすくなることが理解される。したがって、実施の形態3に対応する特有の制御として、ガス比例弁33による燃料供給量に応じて、暖房回路103での缶体目標温度Tht*を変化させることが好ましい。
【0129】
図8は、実施の形態3に従う沸騰音抑制制御における缶体目標温度の設定を説明する概念図である。
図8の横軸には、ガス比例弁33の開度に応じたガス供給量Ghが示される。
【0130】
図8を参照して、缶体目標温度Tht*は、ガス比例弁33によるガス供給量Ghが大きくなるほど、低く設定される。これにより、燃焼バーナ30bへの供給ガス量が過剰になる可能性がある運転状態では、缶体目標温度Tht*を暖房単独運転時よりも低下することによって、沸騰音の発生を防止することができる。一方で、燃焼バーナ30bへの供給ガス量が小さい運転状態では、通常の暖房運転における熱媒温度を確保するように、缶体目標温度Tht*を高めることができる。
【0131】
なお、
図8に示された缶体目標温度Tht*の可変設定は、ステップS200による圧力低下検知時に実行してもよく、暖房運転および給湯運転の同時実行時(S100のYES判定時)であれば、その他の条件にかかわらず常時実行することも可能である。
【0132】
また、実施の形態1〜3において、圧力低下を検知するための判定値α(S200〜S202)については、固定値としてもよく、給湯システム100の運転状態に応じて変化させてもよい。たとえば、現在の缶体目標温度Tht*に応じて判定値αを変化させてもよい。たとえば、缶体目標温度Tht*が一時的に上昇されるHD制御の適用時(実施の形態1)では、HD制御の非適用時(実施の形態2,3)と比較して、判定値αを小さく設定してもよい。
【0133】
なお、本実施の形態1〜3の沸騰抑制制御が適用される暖房熱源装置の構成は、
図1に示された給湯システム100の構成に限定されるものではない。すなわち、
図1では、追焚運転時に開放される熱動弁330によって、暖房回路103を通流する熱媒の流量を増加させるバイパス路が形成される構成を例示したが、当該バイパス路はその他の構成によって形成されてもよい。すなわち、バイパス路の形成/遮断が制御可能であり、かつ、熱媒の供給先(暖房装置)の作動台数が変更可能である構成の暖房熱源装置(給湯システム)に対して、本実施の形態1〜3に従う沸騰音抑制制御を共通に適用することが可能である。
【0134】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。