【解決手段】電圧計測装置(1)は、計測電極電圧取得回路(31)、基準電極電圧取得回路(32)、計測電極電圧と位相が交流電圧から一定量ずれている基準電極電圧との位相差から、電線(11)の心線と計測電極(21)との間の結合容量を求め、求めた結合容量および計測電極電圧により電線(11)の電圧を求める演算手段を備える。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1〜3に示されているように、計測電極を絶縁電線の導体に接触させることなく、絶縁電線に印加されている電圧を計測する技術が知られている。
【0003】
特許文献1,2に記載の構成は、絶縁電線の絶縁被覆の一部の表面を覆うことが可能な検出電極および検出電極を覆うシールド電極を備えた検出プローブと、所定の周波数の信号を出力する発振器とを用いている。具体的には、発振器から所定の周波数の信号を出力し、その信号を検出プローブの検出電極に供給し、検出電極と導体との間のインピーダンスを計測している。さらに、絶縁電線の導体に印加された電圧に起因して検出電極から流出する電流を計測し、この電流と上記インピーダンスとから導体に印加されている電圧を計測している。
【0004】
ここで、絶縁電線(計測電線)の各絶縁被覆の特性は、温度および湿度によって大きく変化する。このため、計測電線の計測電圧は温度および湿度によって大幅に変化する。また、計測電線の絶縁被覆の比誘電率は周波数特性を有し、しかも周波数特性は、絶縁被覆の材質によって異なる。特に、絶縁被覆として多用されているPVC(ポリ塩化ビニル)は、周波数の違いに対する比誘電率の違いが顕著である。
【0005】
上記のような要因によって計測電線の計測電圧が大きく左右される状況下において、特許文献1,2に記載の構成では、計測電線の計測電圧(例えば周波数60Hz)とは周波数が大きく異なる高周波信号(例えば周波数6kHz)を計測電線に印加することにより、計測電線の導体と検出電極との間のインピーダンスを計測し、そのインピーダンスに基づいて、導体の電圧(計測電圧)を求めている。このため、計測電線の電圧を正確に計測することができない。
【0006】
一方、特許文献3に記載の構成では、電線の交流電圧を求め、基準交流電流と誘電損失電流との位相差から、電線を被覆する絶縁体の誘電正接を求め、この誘電正接の値により、先に求めた交流電圧を補正するようにしている。
【0007】
具体的には、電線の絶縁体に配した電極からの入力信号により、電線の導体と電極との間の結合容量を求め、この結合容量の値に基づき交流電圧を求めている。また、交流電圧に対して90°進んだ基準交流電流を絶縁体を通して検出している。また、絶縁体の誘電損失に伴う誘電損失電流を絶縁体を通して検出している。次に、これら基準交流電流(基準交流電圧)と誘電損失電流(誘電損失電圧)との位相差を求め、この位相差から絶縁体の誘電正接を算出している。さらに、誘電正接の値に基づき、先に求めた交流電圧値を補正している。したがって、このような特許文献3の構成によれば、特許文献1,2の構成が有する上記問題を回避できるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3の構成では、二つの交流電圧(基準交流電圧、誘電損失電圧)の位相差を求め、求めた位相差から誘電正接を求める回路が必要となる。また、電線の導体と電極との間の結合容量を求めるために、容量が既知の2個のコンデンサ、およびこれらコンデンサを切り替えるスイッチを備えている。このため、回路構成が複雑になるという問題点を有している。
【0010】
したがって、本発明は、簡単な構成により計測対象である計測電線の電圧を正確に計測することができる電圧計測装置および電圧計測方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の電圧計測装置は、電線の交流電圧を電線の絶縁被覆を通して計測する電圧計測装置において、前記絶縁被覆の周りに配置される計測電極および基準電極と、前記交流電圧により前記計測電極に生じる計測電極電圧を取得する計測電極電圧取得回路と、前記交流電圧により前記基準電極に生じる、前記交流電圧の位相に対して位相が一定量ずれている基準電極電圧を取得する基準電極電圧取得回路と、前記計測電極電圧と前記基準電極電圧との位相差から、前記電線の心線と前記計測電極との間の結合容量を求め、求めた結合容量および前記計測電極電圧により前記交流電圧を求める演算手段とを備えていることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、計測電極電圧取得回路は、電線の交流電圧によって計測電極に誘起される計測電極電圧を取得する。基準電極電圧取得回路は、電線の交流電圧によって基準電極に誘起される、交流電圧の位相に対して位相が一定量ずれている基準電極電圧を取得する。演算手段は、計測電極電圧と基準電極電圧との位相差から、電線の心線と計測電極との間の結合容量を求め、求めた結合容量および計測電極電圧により交流電圧を求める。
【0013】
したがって、電極に与えた電圧によって電極に生じる電圧を取得する構成、さらには電極に生じた複数の電圧を分離する構成等が不要となる。これにより、回路構成が簡素となり、回路基板を小型化することができる。この結果、簡単な構成にて電線の電圧を正確に計測することができる。
【0014】
上記の電圧計測装置において、前記基準電極電圧取得回路は、前記交流電圧の位相に対して位相が90°ずれている前記基準電極電圧を取得する構成としてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、基準電極電圧取得回路は、交流電圧の位相に対して位相が90°ずれている基準電極電圧を取得するので、後段の回路での基準電極電圧を使用する信号処理が容易となる。また、基準電極電圧取得回路は、抵抗など、基準電極電圧の位相に影響する素子を除いた簡単な回路構成とすることができる。
【0016】
上記の電圧計測装置において、前記計測電極電圧取得回路は、第1演算増幅器を備え、前記計測電極が抵抗器を介して前記第1演算増幅器の反転入力端子に接続されている反転増幅回路であり、前記基準電極電圧取得回路は、第2演算増幅器を備え、前記基準電極が前記第2演算増幅器の反転入力端子に直接接続されている反転増幅回路である構成としてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、計測電極電圧取得回路および基準電極電圧取得回路は、演算増幅器を使用した簡単な構成とすることができる。
【0018】
上記の電圧計測装置において、前記演算手段は、前記計測電極電圧をゼロクロス点で二値化した信号である第1のパルス波を出力する第1のパルス波出力回路と、前記基準電極電圧をゼロクロス点で二値化した信号である第2のパルス波を出力する第2のパルス波出力回路と、前記第1のパルス波および前記第2のパルス波から前記計測電極電圧と前記基準電極電圧との位相差を示す位相差信号を出力する位相差信号出力回路と、前記位相差信号から前記電線の心線と前記計測電極との間の結合容量を求め、求めた結合容量および前記計測電極電圧により交流電圧を求める計算部とを備えている構成としてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、第1のパルス波出力回路は、計測電極電圧をゼロクロス点で二値化した信号である第1のパルス波を出力する。第2のパルス波出力回路は、基準電極電圧をゼロクロス点で二値化した信号である第2のパルス波を出力する。位相差信号出力回路は、第1のパルス波および第2のパルス波から計測電極電圧と基準電極電圧との位相差を示す位相差信号を出力する。計算部は、位相差信号から電線の心線と計測電極との間の結合容量を求め、求めた結合容量および計測電極電圧により交流電圧を求める。
【0020】
上記のように、演算手段は、第1のパルス波出力回路、第2のパルス波出力回路、位相差信号出力回路および計算部を備えているので、計算部を比較的廉価なCPUにて構成し、かつ計算部以外を汎用の廉価な回路にて構成することができる。これにより、演算手段全体をCPUにて構成する場合に高速処理が可能な高価なCPUが必要となって演算手段が高価な構成となるのに対し、演算手段を廉価な構成とすることができる。
【0021】
本発明の電圧計測方法は、電線の交流電圧を電線の絶縁被覆を通して計測する電圧計測方法において、前記電線の絶縁被覆の周りに計測電極を配置し、前記交流電圧により前記計測電極に生じる計測電極電圧を取得する計測電極電圧取得工程と、前記電線の絶縁被覆の周りに基準電極を配置し、前記交流電圧により前記基準電極に生じる、前記交流電圧の位相に対して位相が一定量ずれている基準電極電圧を取得する基準電極電圧取得工程と、前記計測電極電圧と前記基準電極電圧との位相差から、前記電線の心線と前記計測電極との間の結合容量を求め、求めた結合容量および前記計測電極電圧により前記交流電圧を求める演算工程とを備えていることを特徴としている。
【0022】
上記の構成によれば、上記の電圧計測装置と同様に、簡単な構成により計測対象である電線の電圧を正確に計測することができる。
【0023】
上記の電圧計測方法において、前記基準電極は、前記電線の絶縁被覆に対して接触せず、前記絶縁被覆との間に空間を有するように配置する構成としてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、基準電極を電線の絶縁被覆に対して接触せず、絶縁被覆との間に空間を有するように配置することにより、絶縁被覆と基準電極との間の電気抵抗が無限大となる。したがって、絶縁被覆の表面の抵抗値が環境の変化の影響を受けて変化することにより基準電極電圧の位相が変化する事態を防止し、電線の交流電圧の位相に対する基準電極電圧の位相のずれ量を固定し易くなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の構成によれば、簡単な構成により計測対象である電線の電圧を正確に計測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。
図1は、本発明の実施の形態の電圧計測装置1の構成を示す回路図である。
【0028】
(電圧計測装置1の構成)
電圧計測装置1は、電圧計測対象の被覆電線である計測電線(電線)11の交流電圧を計測するものである。
図1に示すように、電圧計測装置1は、計測電極21、基準電極22、計算部23、および計算部23へ計測電極電圧V1および位相差信号Vpdを供給する回路を備えている。計測電極21および基準電極22は計測電線11の外周に配置できるように、計測電線11の方向に所定幅を有する円弧形状となっている。なお、計測電極21および基準電極22の形状は、これに限定されず、例えば平板状など、計測電線11に接することができる形状であればよい。
【0029】
計算部23には、XOR(排他的論理和、位相差信号出力回路)24の出力端子が接続されている。計測電極21とXOR24の第1入力端子24aとの間には、抵抗(抵抗器)R1、演算増幅器25および抵抗R2、並びに比較器(コンパレータ、第1のパルス波出力回路)26が直列に設けられている。このうち、抵抗R1、演算増幅器(第1演算増幅器)25および抵抗R2は計測電極電圧取得回路31を構成している。
【0030】
抵抗R1は、演算増幅器25の反転入力端子に接続され、抵抗R2は、演算増幅器25の反転入力端子と出力端子との間に接続されている。演算増幅器25は、非反転入力端子が接地され、出力端子が比較器26の反転入力端子に接続されている。また、演算増幅器25の出力端子は計算部23と接続され、これにより、計算部23には計測電極電圧V1が入力されるようになっている。比較器26は、非反転入力端子が抵抗R11を介して接地され、出力端子がXOR24の第1入力端子24aと接続されている。
【0031】
基準電極22とXOR24の第2入力端子24bとの間には、演算増幅器(第2演算増幅器)27および抵抗R0、並びに比較器(コンパレータ、第2のパルス波出力回路)28が直列に設けられている。このうち、演算増幅器27および抵抗R0は、基準電極電圧取得回路32を構成している。
【0032】
抵抗R0は、演算増幅器27の反転入力端子と出力端子との間に接続されている。演算増幅器27は、非反転入力端子が接地され、出力端子が比較器28の反転入力端子に接続されている。比較器28は、非反転入力端子が抵抗R12を介して接地され、出力端子がXOR24の第2入力端子24bと接続されている。
【0033】
XOR24の第1入力端子24aには抵抗R13を介して電源電圧Vccが供給され、XOR24の第2入力端子24bには抵抗R14を介して電源電圧Vccが供給されている。XOR24から計算部23へは位相差信号Vpdが出力される。上記比較器26,28、抵抗R11,12、XOR24および計算部23は、演算手段を構成している。
【0034】
(電圧計測装置1の動作)
上記の構成において、電圧計測装置1の動作について以下に説明する。
図2は、
図1における計測電線11から比較器26,28の前段までの、計測電極電圧取得回路31および基準電極電圧取得回路32を含む回路図である。
【0035】
電圧計測装置1により計測電圧VLを計測する場合には、計測電極21および基準電極22を計測電線11の絶縁被覆の外周面に配置する。この場合の計測電線11の心線と計測電極21との間の結合容量を結合容量CL1、計測電線11の心線と基準電極22との間の結合容量を結合容量CL2とする。なお、結合容量CL1と結合容量CL2とは一致している必要はない。
【0036】
計測電線11の周りに計測電極21および基準電極22を配置することにより、計測電極21から計測電極電圧V1が得られ、基準電極22から基準電極電圧V2が得られる。
【0037】
図2において、計測電極電圧取得回路31を含む計測電極21側の回路は、結合容量CL1と抵抗R1とが直列であり、これら結合容量CL1、抵抗R1、演算増幅器25および抵抗R2を含む反転増幅回路である。したがって、計測電極電圧V1は、下記の式(1)のようになる。
【0039】
この場合、計測電極電圧V1の位相αは下記の式(2)となり、計測電極電圧V1の振幅(絶対値)は下記の式(3)となる。
【0042】
式(2)から分かるように、計測電極電圧V1の位相αは、結合容量CL1の値によって変化する。すなわち、計測電極電圧V1の位相αは、計測電線11の電圧である計測電圧VLの位相に対してずれた状態となる。
【0043】
一方、基準電極電圧取得回路42を含む基準電極22側の回路には、抵抗R1に相当する抵抗Rが存在しない。したがって、基準電極電圧V2の位相βは、式(2)において抵抗R1=0であるから、tan
−1∞となり、90°に漸近する。これにより、基準電極電圧V2の位相βは、結合容量CL2の影響を受けず、計測電圧VLの位相に対して90°(一定量)進んだ状態に固定される。
【0044】
上記の計測電圧VL、計測電極電圧V1および基準電極電圧V2の位相の関係を示すと
図3のようになる。
図3は、計測電圧VL、計測電極電圧V1および基準電極電圧V2の位相の関係を示す波形図である。
【0045】
図3において、Δαは、計測電極電圧V1と基準電極電圧V2との位相差を示している。そこで、基準電極電圧V2の位相が計測電圧VLの位相から90°進んでいることを加味し、位相差Δαを結合容量CL1および抵抗R1によって表すと、式(4)のようになる。
【0047】
図4は、計測電極電圧V1、基準電極電圧V2、比較器26の出力信号COMP1、比較器28の出力信号COMP2およびXOR24から出力される位相差信号Vpdのタイミングチャートである。
【0048】
図4に示すように、計測電極電圧V1と基準電極電圧V2との間には、位相差ΔT(位相差Δαに相当)が存在する。比較器26は、計測電極電圧V1が入力されることにより、パルス波の出力信号COMP1をXOR24へ出力する。同様に、比較器28は、基準電極電圧V2が入力されることにより、パルス波の出力信号COMP2をXOR24へ出力する。
【0049】
なお、出力信号COMP1は、計測電極電圧がゼロクロス点で二値化された信号であり、出力信号COMP2は、基準電極電圧がゼロクロス点で二値化された信号である。また、これら出力信号COMP1,COMP2における立ち上がりのレベルは、電源電圧Vccである。
【0050】
XOR24は、出力信号COMP1と出力信号COMP2とが入力されることにより、これら出力信号COMP1,COMP2の排他的論理和である位相差信号Vpdを生成し、計算部23へ出力する。位相差信号Vpdは、計測電極電圧V1と基準電極電圧V2との位相差Δαに相当する幅(時間ΔT)のパルスを含むパルス信号である。
【0051】
ここで、計測電圧VLと基準電極電圧V2との位相差は90°、計測電極電圧V1と基準電極電圧V2の位相差はΔα、計測電圧VLと計測電極電圧V1との位相差は90°−Δαである。したがって、式(4)を参照し、計測電圧VLと計測電極電圧V1と基準電極電圧V2との位相の関係を整理すると、
図5のようになる。
【0052】
計算部23は、まず、XOR24から入力された位相差信号Vpdから、式(5)によって位相差Δαを求める。なお、fは計測電圧VLの周波数である。
【0053】
Δα=ΔT×f×360 …… (5)
次に、計算部23は、求めた位相差Δαを用いて、式(4)から、未知の結合容量CL1を求める。さらに、計算部23は、求めた結合容量CL1を用いて、計測電圧VLを求める。
【0054】
この場合、計測電極電圧V1の位相は式(2)、計測電極電圧V1の振幅は式(3)である。また、計算部23は、演算増幅器25の出力端子から入力された計測電極電圧V1をA/D変換して、計測電極電圧V1の値を求める。
【0055】
また、式(3)を計測電圧VLについて整理すると、式(6)になる。
【0057】
式(6)において、結合容量CL1および計測電極電圧V1は既知となっている。したがって、計算部23は、式(6)から計測電圧VLを算出することができる。
【0058】
以上のように、電圧計測装置1では、計測電極電圧取得回路31により計測電圧VLの位相に対して位相が一定値(例えば90°)ずれた基準電極電圧V2を取得している。また、比較器26,28およびXOR24により、計測電極電圧取得回路31から得られる計測電極電圧V1と基準電極電圧V2との位相差Δαを求めている。次に、求めた位相差Δαから計測電線11の心線と計測電極21との間に生じる結合容量CL1を求めている。また、計算部23により、計測電極電圧取得回路31から入力した計測電極電圧V1の値を求めている。さらに、計算部23により、既知となった結合容量CL1および計測電極電圧V1から計測電圧VLを求めている。
【0059】
したがって、誘電正接を求める構成、計測電線11の外周面に配置した電極に電圧を与える構成、前記電極に与えた電圧によって前記電極に生じる電圧を取得する構成、並びに前記電極に生じた複数の電圧を分離する構成等が不要となっている。したがって、回路構成が簡素となり、回路基板を小型化することができる。これにより、簡単な構成にて計測電圧VLを正確に計測することができる。
【0060】
なお、電圧計測装置1では、計測電極21は計測電線11の絶縁被覆の外周面に接触させて配置する一方、基準電極22は、計測電線11の外周面に接触させず、計測電線11から例えば1〜2mm浮いた状態に配置されることが好ましい。すなわち、計測電線11の絶縁被覆の表面から基準電極22を浮かせて、絶縁被覆と基準電極22との間に空間が存在するようにした場合には、絶縁被覆と基準電極22との間の電気抵抗が無限大となる。これにより、絶縁被覆の表面の抵抗値が環境の変化の影響を受けて変化することにより基準電極電圧V2の位相が変化することを防止し、計測電圧VLの位相に対する基準電極電圧V2の位相のずれ量を固定し易くなる。
【0061】
また、電圧計測装置1では、計測電極電圧V1および基準電極電圧V2から、位相差ΔαすなわちΔTを容易に求めるために、演算増幅器25,27およびXOR24を使用している。すなわち、電圧計測装置1では、演算増幅器25,27およびXOR24を備えていることにより、位相差ΔαすなわちΔTを求めるために、計算部23を構成するCPUの負担を軽減し、高速処理が可能かつ高価なCPUではなく、廉価なCPUにて計算部23を構成可能としている。
【0062】
一方、電圧計測装置1は、演算増幅器25,27およびXOR24を備えず、計算部23にて、計測電極電圧V1および基準電極電圧V2をA/D変換し、計測電極電圧V1と基準電極電圧V2とのゼロクロス点の時間差から、位相差ΔαすなわちΔTを演算して求める構成としてもよい。
【0063】
(変形例)
電圧計測装置1において、計測電極21から計測電極電圧V1を取得する計測電極電圧取得回路31、および基準電極22から基準電極電圧V2を取得する基準電極電圧取得回路32は、それぞれ
図6に示す計測電極電圧取得回路41および基準電極電圧取得回路42であってもよい。
図6は、
図1に示した計測電極電圧取得回路31および基準電極電圧取得回路32の他の例を示す回路図である。
【0064】
図1に示す計測電極電圧取得回路31では、演算増幅器25,27を反転増幅回路として使用していたのに対し、
図6に示す計測電極電圧取得回路41では、演算増幅器25,27を非反転増幅回路として使用している。このような回路であっても、同様に、計測電極電圧V1および基準電極電圧V2を取得することができる。
【0065】
計測電極電圧取得回路41において、計測電極電圧V1は、下記の式(7)のようになる。
【0067】
この場合、計測電極電圧V1の位相αは下記の式(8)となり、計測電極電圧V1の振幅(絶対値)は下記の式(9)となる。
【0070】
基準電極電圧取得回路42では、計測電圧VLの位相と基準電極電圧V2の位相との位相差が90°となる(基準電極電圧V2の位相が90°進む)ように、式(8)(但し、式R21はR22と読み替える)において抵抗R22の値を設定する。具体的には、結合容量CL2のインピーダンス(例えば300〜500MΩ)に対して、抵抗R22の値を無視できる程度(例えば1MΩ程度)に設定し、式(8)においてtan
−1∞とする。
【0071】
一方、計測電極電圧取得回路41では、結合容量CL1の値によって計測電極電圧V1の位相を変化させたいので、結合容量CL2のインピーダンス(例えば300〜500MΩ)に対して、抵抗R21を大きい値(例えば500MΩ程度)に設定する。
【0072】
但し、結合容量CL1は通常10PF程度(=300MΩ程度)であるので、抵抗R1を大きくすると、A点の電圧が高くなる(例えば、計測電圧VLの1/2程度の電圧がかかる)。このため、計測電圧VLが高く、A点の電圧が演算増幅器25の電源電圧を超える場合には、この回路は使用し難い。
【0073】
(電圧計測装置1の実体的な形態例)
図7は、電圧計測装置1の実体的な形態例を示す縦断面図、
図8は
図7に示した検出ユニットの斜視図である。
【0074】
図7に示すように、電圧計測装置1は、検出ユニット141と計算部23とを備えている。検出ユニット141は、上筐体部143と下筐体部144とに分離された筐体部142を備えている。上筐体部143と下筐体部144とはヒンジ145によって連結され、上筐体部143は下筐体部144に対して開閉可能となっている。また、筐体部142の内面には、シールド板146が設けられている。
【0075】
下筐体部144の上面部には、基準電極22が配置され、上筐体部143の下面部には、基準電極22と対向して計測電極21が配置されている。これら計測電極21および基準電極22は、円筒を縦割りした形状の半円筒形に形成されている。したがって、下筐体部144に対して上筐体部143を閉じた場合に、計測電極21と基準電極22とにより円筒が形成され、計測電線11の周りに第1および第2電極21,22を配置できるようになっている。なお、
図8において、符号12は計測電線11の心線、符号13は計測電線11の絶縁被覆を示している。
【0076】
下筐体部144の内部には、検出回路基板147が配置されている。検出回路基板147には、
図1に示した電圧計測装置1における第1および第2電極21,22および計算部23以外の回路が設けられている。検出回路基板147は、下筐体部144に設けられたコネクタ148、およびケーブル149を介して筐体部142の外部に配置される計算部23と接続されている。
【0077】
なお、
図1および
図7に示した電圧計測装置1は、計測電線11が単層2線の場合には1セット使用される。また、計測電線11が三相3線の場合には3セット使用される。
【0078】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。