(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-222248(P2015-222248A)
(43)【公開日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】カルボニル化度の評価方法、カルボニル化度低下成分のスクリーニング方法、カルボニル化度低下剤
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20151113BHJP
G01N 33/58 20060101ALI20151113BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20151113BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20151113BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20151113BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20151113BHJP
【FI】
G01N33/50 H
G01N33/58 Z
G01N33/68
G01N33/48 A
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-187239(P2014-187239)
(22)【出願日】2014年9月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-92208(P2014-92208)
(32)【優先日】2014年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 紘介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 廉
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA14
2G043BA16
2G043DA01
2G043EA01
2G043FA03
2G045BA13
2G045BB02
2G045BB03
2G045CB16
2G045DA36
2G045FB07
2G045FB12
(57)【要約】
【課題】毛髪などのケラチン毛におけるカルボニル化度が低下したかの判定に必要なカルボニル化度の評価方法、カルボニル化度低下成分のスクリーニング方法、及びカルボニル化度低下剤の提供。
【解決手段】採取したケラチン毛(A)のカルボニル化度(A)と、後日に採取したケラチン毛(B)のカルボニル化度(B)とを比較し、カルボニル化度(A)よりもカルボニル化度(B)が小さいときにケラチン毛のカルボニル化度が低下したと判定するカルボニル化度の評価方法。カルボニル化度低下成分のスクリーニング方法は、その評価方法を使用するものであり、カルボニル化度低下剤は、その評価方法によりカルボニル化度低下成分と判定されたものを配合したものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
採取したケラチン毛(A)のカルボニル化度(A)と、
前記ケラチン毛(A)の採取より後日に採取したケラチン毛(B)のカルボニル化度(B)とを比較し、
カルボニル化度(A)よりもカルボニル化度(B)が小さいときにケラチン毛のカルボニル化度が低下したと判定するカルボニル化度の評価方法。
【請求項2】
前記ケラチン毛(A)及び前記ケラチン毛(B)が、毛髪である請求項1に記載のカルボニル化度の評価方法。
【請求項3】
前記ケラチン毛(A)及び前記ケラチン毛(B)が、毛根又は表皮から10mm以内の毛幹である請求項1又は2に記載のカルボニル化度の評価方法。
【請求項4】
前記カルボニル化度(A)が、
前記ケラチン毛(A)から溶解したケラチン(A)の溶液(IA)を調製する溶液調製工程(A)と、
カルボニル基を蛍光標識可能な蛍光物質を前記溶液(IA)に加えて、その蛍光物質を前記ケラチン(A)に接触させる標識工程(A)と、
前記蛍光物質で標識された前記ケラチン(A)を不溶化させ、この不溶化させたものを前記溶液(IA)から回収する回収工程(A)と、
前記回収したケラチン(A)の溶液(IIA)を調製し、当該溶液(IIA)におけるケラチン(A)を標識した蛍光物質の蛍光を測定する測定工程(A)と、
を備える方法(A)による蛍光の測定により定められ、
前記カルボニル化度(B)が、
前記ケラチン毛(B)から溶解したケラチン(B)の溶液(IB)を調製する溶液調製工程(B)と、
カルボニル基を蛍光標識可能な蛍光物質を前記溶液(IB)に加えて、その蛍光物質を前記ケラチン(B)に接触させる標識工程(B)と、
前記蛍光物質で標識された前記ケラチン(B)を不溶化させ、この不溶化させたものを前記溶液(IB)から回収する回収工程(B)と、
前記回収したケラチン(B)の溶液(IIB)を調製し、当該溶液(IIB)におけるケラチン(B)を標識した蛍光物質の蛍光を測定する測定工程(B)と、
を備える方法(B)による蛍光測定により定められる
請求項1〜3のいずれか1項に記載のカルボニル化度の評価方法。
【請求項5】
前記溶液調製工程(A)及び前記溶液調製工程(B)が、アルカリ性の還元剤溶液において前記ケラチン(A)及び前記ケラチン(B)を溶解させる請求項4に記載のカルボニル化度の評価方法。
【請求項6】
前記標識工程(A)及び前記標識工程(B)における蛍光物質が、フルオレセイン−5−チオセルカルバジドである請求項4又は5に記載のカルボニル化度の評価方法。
【請求項7】
前記回収工程(A)及び前記回収工程(B)における不溶化を、前記ケラチン(A)及び前記ケラチン(B)の貧溶媒を前記溶液(IA)及び前記溶液(IB)に添加して行う請求項4〜6のいずれか1項に記載のカルボニル化度の評価方法。
【請求項8】
前記貧溶媒が、前記蛍光物質を溶解するものである請求項7に記載のカルボニル化度の評価方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の評価方法を使用する
カルボニル化度低下成分のスクリーニング方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の評価方法によりカルボニル化度低下成分と判定されたものを配合したカルボニル化度低下剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪のカルボニル化度の低下を判定するための評価方法、毛髪のカルボニル化度を低下させる成分のスクリーニング方法及びその成分を配合したカルボニル化度低下剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚表面及びその付近では、皮脂の過酸化物が分解して生じたアクロレイン等のアルデヒドの付加や、直接的な酸化ストレス作用により、皮膚を構成するケラチンのカルボニル化が起こる。このカルボニル化は、ケラチンが酸化されることを意味し、毛髪などのケラチン毛においても同様に生じる。
【0003】
ケラチン毛のカルボニル化に関連して、特許文献1には、毛髪における酸化したケラチンのカルボニル基を蛍光標識してから、蛍光を検出することが開示されている。また、特許文献2では、毛髪におけるカルボニル化を抑制するために、カルボニル化抑制剤を含有する毛髪化粧料が開示され、カルボニル化の抑制がその抑制がないよりも毛髪の保湿性を付与するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/057211号
【特許文献2】特開2004−284988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、カルボニル化の抑制による保湿性付与が認められるのであれば、カルボニル化の程度(カルボニル化度)を低下させれば、より一層の保湿性付与を期待できる。しかし、上記文献が開示する「カルボニル化の抑制」は、カルボニル化度が高まることを抑えることを意味するに他ないから、カルボニル化度の低下を着想させることはない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、毛髪などのケラチン毛におけるカルボニル化度が低下したかの判定に必要なカルボニル化度の評価方法、カルボニル化度低下成分のスクリーニング方法、及びカルボニル化度低下剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、毛髪のカルボニル化度の変化についての検討を積み重ねた結果、新たに生える毛髪におけるカルボニル化度を低下させることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明に係るカルボニル化度の評価方法は、採取したケラチン毛(A)のカルボニル化度(A)と、前記ケラチン毛(A)の採取より後日に採取したケラチン毛(B)のカルボニル化度(B)とを比較し、カルボニル化度(A)よりもカルボニル化度(B)が小さいときにケラチン毛のカルボニル化度が低下したと判定するものである。
【0008】
ここで、「ケラチン毛(A)」及び「ケラチン毛(B)」は、羊毛、獣毛、毛髪(人の頭髪)などの皮膚表面から伸び出るケラチン繊維又は表皮より内側の毛根である。毛髪のカルボニル化度を低下させることが可能かを正確に判定するには、ケラチン毛(A)及びケラチン毛(B)が毛髪であると良い。
【0009】
前記ケラチン毛(A)及び前記ケラチン毛(B)は、毛根又は表皮から10mm以内の毛幹が良い。カルボニル化度低下の判定の正確性を高めるには、表皮より内側に存在する毛根が良い。
【0010】
本発明に係るカルボニル化度の評価方法において、例えば、後記方法(A)による蛍光測定により前記カルボニル化度(A)を定めると良く、後記方法(B)による蛍光測定により前記カルボニル化度(B)を定めると良い。その方法(A)は、前記ケラチン毛(A)から溶解したケラチン(A)の溶液(IA)を調製する溶液調製工程(A)と、カルボニル基を蛍光標識可能な蛍光物質を前記溶液(IA)に加えて、その蛍光物質を前記ケラチン(A)に接触させる標識工程(A)と、前記蛍光物質で標識された前記ケラチン(A)を不溶化させ、この不溶化させたものを前記溶液(IA)から回収する回収工程(A)と、前記回収したケラチン(A)の溶液(IIA)を調製し、当該溶液(IIA)におけるケラチン(A)を標識した蛍光物質の蛍光を測定する測定工程(A)と、を備える。上記方法(B)は、前記ケラチン毛(B)から溶解したケラチン(B)の溶液(IB)を調製する溶液調製工程(B)と、カルボニル基を蛍光標識可能な蛍光物質を前記溶液(IB)に加えて、その蛍光物質を前記ケラチン(B)に接触させる標識工程(B)と、前記蛍光物質で標識された前記ケラチン(B)を不溶化させ、この不溶化させたものを前記溶液(IB)から回収する回収工程(B)と、前記回収したケラチン(B)の溶液(IIB)を調製し、当該溶液(IIB)におけるケラチン(B)を標識した蛍光物質の蛍光を測定する測定工程(B)と、を備える。
【0011】
前記方法(A)及び前記(B)における前記溶液調製工程(A)及び前記溶液調製工程(B)は、アルカリ性の還元剤溶液において前記ケラチン(A)及び前記ケラチン(B)を溶解させるものが良い。このケラチン(A)、(B)の溶解方法であれば、溶液(IA)、(IB)に溶解させるケラチンの分子量を比較的高くでき、後に続く回収工程(A)、(IB)において、蛍光物質で標識されたケラチン(A)、(B)の回収を行い易くなる。
【0012】
前記標識工程(A)及び前記標識工程(B)における蛍光物質は、例えばフルオレセイン−5−チオセルカルバジドである。
【0013】
前記回収工程(A)及び前記回収工程(B)における不溶化は、前記ケラチン(A)及び前記ケラチン(B)の貧溶媒を前記溶液(IA)及び前記溶液(IB)に添加して行うものであると良い。その貧溶媒は、前記蛍光物質を溶解するものが好適である。上記の不溶化により、ケラチンを標識しなかった過剰な蛍光物質を除去し易くなり、添加する貧溶媒が蛍光物質を溶解するものであれば、その除去効率が向上する。
【0014】
本発明に係るカルボニル化度低下成分(ケラチン毛のカルボニル化の程度を下げる成分)のスクリーニング方法は、前記本発明に係るカルボニル化度の評価方法を使用するものである。このスクリーニング方法を使用することにより、カルボニル化度低下成分の選定が容易となる。
【0015】
また、本発明に係るカルボニル化度低下剤は、前記本発明に係るカルボニル化度の評価方法によりカルボニル化度低下成分と判定されたものを配合したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るカルボニル化度の評価方法によれば、異なる日に採取したケラチン毛のカルボニル化度の比較を行うので、双方のカルボニル化度の差を認識し、カルボニル化度の低下の判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】実施例におけるカルボニル化度の平均値を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
異なる日に採取したケラチン毛のカルボニル化度を比較する本実施形態のカルボニル化度の評価方法に基づき、以下に、本発明を説明する。
【0019】
本実施形態のカルボニル化度の評価方法は、採取したケラチン毛(A)のカルボニル化度(A)と、ケラチン毛(A)の採取より後日に採取したケラチン毛(B)のカルボニル化度(B)とを比較するものである。その比較において、カルボニル化度(A)よりもカルボニル化度(B)が小さいときにケラチン毛のカルボニル化度が低下したと判定する。
【0020】
ケラチン毛(A)及びケラチン毛(B)は、皮膚表面から伸び出るケラチン繊維又は表皮より内側の毛根であれば、羊毛、獣毛、毛髪(人の頭髪)など、特に限定されない。また、ケラチン毛(A)及びケラチン毛(B)は、外的要因の影響が少ない表皮の内側の毛根又は表皮の外側10mm以内の毛幹が良く、カルボニル化度低下の判定の正確性を高めるには、表皮の外側5mm以内の毛幹又は毛根が好ましく、毛根がより好ましい。
【0021】
ケラチン毛(A)、(B)として毛髪を選定する場合、頭頂部に近いほどカルボニル化度に影響を与え易いので、頭部のトップから採取したものが良く、頭頂部を中心とした半径5cm以内から採取したものが好ましい。ここで、頭部のトップについて、
図1に従って説明を加える。トップとは、オーバーとも呼ばれる部分であり、頭頂からテンプルポイントを通過する水平線の間の領域である。テンプルポイントとは、前髪の生え際の1番飛び出している部分のことである。
【0022】
カルボニル化度(A)と(B)の比較において、両者は、フーリエ変換型赤外分光光度計(FT−IR)によるATR法に基づいて導いたカルボニル化度であると良い。
【0023】
また、カルボニル化度(A)と(B)の比較において、カルボニル化度(A)は、溶液調製工程(A)、標識工程(A)、回収工程(A)、及び測定工程(A)を備える方法(A)により定め、カルボニル化度(B)は、溶液調製工程(B)、標識工程(B)、回収工程(B)、及び測定工程(B)を備える方法(B)により定めると良い。方法(A)及び方法(B)は、ケラチン毛の採取日以外は同じものなので、以下には方法(A)のみ説明する。
【0024】
溶液調製工程(A)
溶液調製工程では、溶液(IA)として、ケラチン(A)を溶解させたものを調製する。
【0025】
溶液(IA)の調製のためにケラチン(A)を溶解させるには、「『月刊ファインケミカル12』、株式会社シーエムシー出版、2007年11月15日発行」などに開示されている公知の方法を採用すると良い。例えば、ケラチン(A)の由来元となる毛髪や羊毛などのケラチン毛(A)を還元剤溶液に浸漬し、ケラチン(A)を溶解させる。この溶解を行う場合、溶解効率を向上させるために、ケラチン(A)の由来元となるものを細断すると良い。
【0026】
還元剤溶液における還元剤は、ケラチン(A)の架橋構造であるジスルフィド結合(−S−S−)をメルカプト基(−SH+HS−)に還元切断するものである。本実施形態の還元剤は、公知の還元剤から選ばれた一種又は二種以上であると良く、例えば2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグリコール酸塩(例えば、チオグリコール酸ナトリウム)である。
【0027】
還元剤溶液がウレアなどのタンパク質変性剤を配合したものであれば、ケラチン(A)を溶解する際のランチオニンの生成を抑えるために、還元剤溶液の温度及びpHの条件をより低く設定できる。
【0028】
上記還元剤溶液は、ケラチン(A)のジスルフィド結合を効率良く還元切断するために、pHがアルカリ性のものが良く、pHが8.0以上のものが好ましい。また、このpHは、11.0以下が良く、10.0以下が好ましく、9.0以下がより好ましい。ケラチン(A)の低分子化は回収工程(A)での不溶化に不利となるが、pHを11.0以下にすれば、その低分子化が抑えられる。
【0029】
上記還元剤溶液の温度は、例えば20℃以上40℃以下である。温度を高く設定すれば、ケラチン(A)の溶解時間を短縮できるが、40℃以下であれば、ケラチン(A)の加水分解に伴う低分子化を抑制できる。
【0030】
標識工程(A)
標識工程(A)では、上記溶液(IA)に蛍光物質を加えて、当該蛍光物質をケラチン(A)に接触させる。
【0031】
本標識工程で使用する蛍光物質は、カルボニル化したケラチン(A)が有するカルボニル基を蛍光標識可能なものである。この蛍光物質として、カルボニル基と結合するヒドラジノ基(―NHNH
2)を備えるフルオレセイン−5−チオセミカルバジドなどの公知のものを使用すると良い。
【0032】
回収工程(A)
回収工程では、上記標識工程において蛍光物質で標識されたケラチン(A)を、溶液(IA)から回収する。
【0033】
ケラチン(A)の回収は、例えば、溶液(IA)への溶媒の添加により上記標識されたケラチンを不溶化させ、この不溶化したものを回収すると良い。この回収により、ケラチン(A)を標識していない蛍光物質を除去できる。
【0034】
溶液(IA)に添加する溶媒として、ケラチン(A)を溶解しない貧溶媒又はケラチン(A)の溶解度が低い貧溶媒が使用される。貧溶媒として好適なものは、蛍光物質を溶解するものである(当該溶媒としては、蛍光物質がフルオレセイン−5−チオセルカルバジドであるときには、例えばアセトンが挙げられる。)。ケラチン(A)の貧溶媒であって、蛍光物質を溶解するものを使用すれば、ケラチン(A)を標識していない蛍光物質の除去効率が高まる。
【0035】
回収工程(A)では、回収した上記のケラチン(A)を貧溶媒で洗浄しても良い。この洗浄により、ケラチン(A)を標識していない蛍光物質が更に除去される。また、貧溶媒が蛍光物質を溶解するものであれば、蛍光物質の十分な除去が可能となる。
【0036】
測定工程(A)
測定工程(A)では、上記回収工程(A)で回収した蛍光物質で標識されたケラチン(A)を溶解した溶液(IIA)を調製し、この溶液(IIA)におけるケラチン(A)を標識した蛍光物質の蛍光を測定する。
【0037】
本測定工程(A)では、過剰な蛍光物質が回収工程で除去されたものを測定対象とするから、測定値の精度が高まる。また、毛髪自体などの固体表面を主として蛍光測定するものではなく、ケラチンの溶液(IIA)を測定するから、この点からも測定値の精度が高まる。
【0038】
本実施形態のカルボニル化度の評価方法は、以上の通りである。この評価方法は、カルボニル化度を低下させる成分(カルボニル化度低下成分)のスクリーニング方法において使用できる。また、本実施形態のカルボニル化度の評価方法によりカルボニル化度低下成分と判定されたものを配合し、カルボニル化度低下剤を製造しても良い。
【0039】
上記スクリーニング方法では、ケラチン毛のカルボニル化度を低下させる単一成分又は混合成分を選別する。例えば、(1)カルボニル化度(A)を定める、(2)単一又は混合成分を頭皮に定期的に塗布する、(3)カルボニル化度(B)を定める、といった(1)〜(3)の手順によりカルボニル化度低下成分を選別すると良い。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0041】
20代3名、30代7名、40代7名の以上の17名の頭頂部から採取した毛髪について、同一人のカルボニル化度(A)、(B)を定め、これらを比較することで、カルボニル化度(A)、(B)が低下したかを確認した。ここで、本実施例で採取した毛髪は、毛球を除いた毛根及び毛幹からなる全長約10mmのものである。
【0042】
カルボニル化度(A)、(B)は、エタノール、メタノールで洗浄後に更に水で洗浄した毛髪をFT−IR ATR法で測定した値から導いた。各カルボニル化度を定めるに際して、同一人から採取した毛髪を3本とし、この毛髪1本毎に5点をFT−IRで測定した。そして、得られた測定値において、C=Oの伸縮運動であるアミドIの吸収帯の面積(1640−1650cm
−1)を基準として、カルボニル吸収帯の面積(1710−1750cm
−1)の相対強度を算出したものをカルボニル化度として定めた。
【0043】
また、カルボニル化度(A)を定めるための毛髪の採取後、カルボニル化度(B)を定めるための毛髪を採取するまでの期間は、2カ月とし、その2か月の間には、後述の通り、組成物を定期的に塗布した。
【0044】
上記の組成物の定期的な塗布は、以下の通り行った。レスベラトロール0.0001質量%、リコピン0.0002質量%、トウキ根エキス0.01質量%、ヨモギ葉エキス0.008質量%を配合した乳液1gを調製した。この乳液1gを、洗髪後にタオルで水分を十分に拭き取った頭部のトップにおける右半分に塗布し、馴染ませた。この乳液の塗布を、2か月間継続した。
【0045】
図2は、実施例におけるカルボニル化度の平均値を表すグラフである。このグラフでは、カルボニル化度(A)よりもカルボニル化度(B)の方が低く、レスベラトロールなどを配合した乳液の頭皮への塗布により、カルボニル化度が低下したことを確認できる。