(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-222298(P2015-222298A)
(43)【公開日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20060101AFI20151113BHJP
【FI】
G02B7/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-105992(P2014-105992)
(22)【出願日】2014年5月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】日東光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169188
【弁理士】
【氏名又は名称】寺岡 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】蔭山 琢也
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AF03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】撮影距離の目盛の単位を容易に変更することができるレンズユニットを提供する。
【解決手段】レンズユニット1は、撮影距離が目盛Sを用いて示されており、目盛Sは、レンズユニット1の光軸Lを中心線L’とし、中心線L’を回動軸として回動する筒形状を有する表示部材2の外周面3に表示されている。表示部材2の外周面3の一部を露出し他の部分を隠す窓部材4を備え、表示部材2は、中心線L’を実質的に変えずに中心線L’と平行の方向に位置変更が可能であり、その位置変更によって、窓部材4から露出させる目盛Sを、異なる距離単位のものに変更可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影距離が目盛を用いて示されるレンズユニットにおいて、
上記目盛は、レンズユニットの光軸を中心線とし、上記中心線を回動軸として回動する筒形状またはその筒形状の周方向の所定範囲を切り取った形状を有する表示部材の外周面に表示され、
上記外周面の一部を露出し他の部分を隠す窓部材を備え、
上記表示部材は、上記中心線を実質的に変えずに上記中心線と平行方向に位置変更が可能であり、
上記位置変更によって、上記窓部材から露出させる上記目盛を、異なる距離単位のものに変更可能であることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
請求項1記載のレンズユニットにおいて、
前記表示部材を固定具によって固定する固定部材を備え、
上記固定をしていない状態では、前記表示部材をその周方向に位置調整ができることを特徴とするレンズユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレンズユニットにおいて、
前記表示部材の前記回動に伴って回動し、前記表示部材の径方向に重なりあって配置されるガイド部材を備え、
前記表示部材と上記ガイド部材の一方に凸状の突起部、もう一方に上記突起部が挿入される凹部を有し、
上記凹部が前記中心線と平行方向に伸び、上記突起部が凹部に挿入された状態でその伸びた方向に前記表示部材が移動可能であることを特徴とするレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
撮影距離が目盛を用いて示されるカメラの表示装置についての技術が、たとえば、特許文献1により開示されている。他にも、映画またはテレビ放送用等のレンズユニットには、メートル表示またはフィート表示等の撮影距離の目盛が付いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−092543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
映画またはテレビ放送用のレンズユニットでは、使用者が見慣れた単位の目盛を表示させたいと希望することが多い。そこで目盛の単位を変更させるためには、レンズユニットのメーカーのサポートセンターにレンズユニットを送り、そのサポートセンターにてレンズユニットを分解して目盛の単位表示部品を付け替える必要があった。このような付け替えは、非常に煩雑である。
【0005】
そこでこのような煩雑さを避けるべく、本発明の目的は、撮影距離の目盛の単位を容易に変更することができるレンズユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のレンズユニットは、撮影距離が目盛を用いて示され、目盛は、レンズユニットの光軸を中心線とし、中心線を回動軸として回動する筒形状またはその筒形状の周方向の所定範囲を切り取った形状を有する表示部材の外周面に表示され、外周面の一部を露出し他の部分を隠す窓部材を備え、表示部材は、中心線を実質的に変えずに中心線と平行方向に位置変更が可能であり、その位置変更によって、窓部材から露出させる目盛を、異なる距離単位のものに変更可能である。
【0007】
ここで本発明のレンズユニットは、表示部材を固定具によって固定する固定部材を備え、固定をしていない状態では、表示部材をその周方向に位置調整ができることとしても良い。
【0008】
また本発明のレンズユニットは、表示部材の回動に伴って回動し、表示部材の径方向に重なりあって配置されるガイド部材を備え、表示部材とガイド部材の一方に凸状の突起部、もう一方に突起部が挿入される凹部を有し、凹部が中心線と平行方向に伸び、突起部が凹部に挿入された状態でその伸びた方向に表示部材が移動可能であることとしても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、撮影距離の目盛の単位を容易に変更することができるレンズユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係るレンズユニットの正面図である。
【
図2】
図1の窓部材と撮影距離調節機構部材の一部を切り欠いて表示部材の隠れていた部分を示す図である
【
図4】レンズユニットの撮影距離を、フィートの距離単位の目盛で表示した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の実施の形態に係るレンズユニットの構成および動作)
以下、本発明の実施の形態に係るレンズユニットについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るレンズユニットの正面図である。
【0012】
レンズユニット1は、撮影距離が目盛Sを用いて示されている。そして、目盛Sは、レンズユニット1の光軸Lを中心線L’とし、中心線L’を回動軸として回動する筒形状を有する表示部材2の外周面3に表示されている。そして、表示部材2の外周面3の一部を露出し他の部分を隠す窓部材4を備えている。そして、表示部材2は、中心線L’を実質的に変えずに中心線L’と平行の方向(
図1における上下方向または縦方向)に位置変更が可能である。そして、その位置変更によって、窓部材4から露出させる目盛Sを、異なる距離単位のものに変更可能である。
【0013】
図1に示す撮影距離調節機構部材5(固定部材)は、光軸L(中心線L’)を回動軸として回動することができる。そして、撮影距離調節機構部材5の回動によって、レンズユニット1の撮影距離が変化する。この撮影距離調節機構部材5と表示部材2とは、固定ビス6によって、中心線L’から90°間隔に外周面3をその周方向(中心線L’と直交する線で表示部材2を切った断面形状の最外周に沿った方向、以下同じ。)に区切る位置で4箇所で固定されている。そのため、表示部材2は、撮影距離調節機構部材5の回動およびレンズユニット1の撮影距離の変化に伴って中心線L’を回動軸として回動する。
【0014】
そして、窓部材4は、表示部材2および撮影距離調節機構部材5とは固定されていない部材である。すなわち窓部材4は、表示部材2および撮影距離調節機構部材5の回動に影響されて回動等しない部材である。そして、窓部材4の開口部である窓7は、表示部材2の目盛S(メートルの距離単位の目盛)の一部を露出可能である。そのため、レンズユニット1の撮影距離の変化に伴う撮影距離調節機構部材5の回動によって、窓部材4の窓7から露出する表示部材2の目盛Sの露出状態が変化する。その目盛Sの露出状態の変化は、レンズユニット1の撮影距離の変化を示す。撮影距離調節機構部材5によって調節されるレンズユニット1の撮影距離は、その調節状態に従って、窓部材4の一部を肉薄にした肉薄部4Aに記された指標線4Bが指し示す、窓部材4の窓7から露出する目盛Sの位置にて逐次示される。この指標線4Bは、表示部材2の回動によっても位置が変わらず固定されている線である。なお、この肉薄部4Aを窓部材4に形成せず、たとえば窓部材とは別に用意した板状部材(指標線が記されたもの)を窓部材4に貼り付けて、指標線4Bと同等の役割を担わせても良い。さらに、指標線4Bは必ずしもレンズユニット1が備える必要はない。
【0015】
図2は、
図1の窓部材4と撮影距離調節機構部材5の一部を切り欠いて表示部材2の隠れていた部分を示す図である。また、
図3は、
図1および
図2に示す表示部材2の正面図である。
【0016】
表示部材2には、メートル用ビス固定穴8Aと、フィート用ビス固定穴8Bが形成されている。また、撮影距離調節機構部材5には、ビス固定穴9が形成されている。
図1および
図2では、メートル用ビス固定穴8Aとビス固定穴9とが、固定具である固定ビス6によって固定されている。
【0017】
また、
図3に示すように、表示部材2には、メートルの距離単位の目盛Sと、フィートの距離単位の目盛S’が刻印されている。メートルの距離単位の目盛Sには、目印として「メートル」の記号である「m」の文字が、また、フィートの距離単位の目盛S’には、目印として「フィート」の記号である「ft」の文字が刻印されている。
【0018】
ここで、
図1に示すレンズユニット1の正面図の裏側から見える背面側にも、窓部材4の窓7と同様の窓が形成されている。そして、その窓からは、
図1および
図2の正面図から見える目盛Sと同じ距離単位の目盛S1、または
図4に示す目盛S’と同じ距離単位の目盛S1’が露出され表示されている。目盛S1,S1’は、
図2、
図3および
図4に示している。
【0019】
ここで、
図2に示すレンズユニット1の状態から、レンズユニット1の撮影距離を、窓部材4の窓7からフィートの距離単位の目盛S’で表示する際の操作を説明する。まず、メートル用ビス固定穴8Aとビス固定穴9とを固定している固定ビス6を外す。そして、表示部材2を
図2における上側にスライド移動させる。そして、フィート用ビス固定穴8Bとビス固定穴9とを、固定ビス6によって固定する。以上の容易な作業で上述の操作が終了する。
図4は、この操作終了後の状態を示す図で、レンズユニット1の撮影距離を、フィートの距離単位の目盛S’で表示した状態を示す図である。この
図4は、
図3と同様に、
図1の窓部材4と撮影距離調節機構部材5の一部を切り欠いた図で、
図1に示す表示部材2の固定位置を変更した図である。
【0020】
また、メートル用ビス固定穴8Aとフィート用ビス固定穴8Bは、表示部材2の周方向に伸びる長穴となっている。そのため、メートル用ビス固定穴8Aまたはフィート用ビス固定穴8Bとビス固定穴9とが、固定ビス6によって固定されていない状態では、表示部材2をその周方向にその長穴の長さ分だけ位置調整ができる。
【0021】
(本発明の実施の形態によって得られる主な効果)
上述のように、本発明の実施の形態に係るレンズユニット1は、撮影距離の目盛の単位を容易に変更することができる。特に映画またはテレビ用のレンズユニットは、アメリカ人と日本人の両者に使用される場合がある。そのような場合には、日本人は撮影距離の目盛がメートルで表示されている方がわかりやすく、アメリカ人は撮影距離の目盛がフィートで表示されている方がわかりやすい。そのような場合に、サポートセンターで目盛を交換する手間、および、2種類の目盛を表示する表示部材を作製し保管しておく手間等を、レンズユニット1を使用することで無くすることができる。
【0022】
また、ビス固定穴8A,Bとビス固定穴9とが、固定ビス6によって固定されていない状態では、表示部材2をその周方向にその長穴の長さ分だけ位置調整ができる。そのため、レンズユニット1に搭載されるカメラを変更した際に生じ得る、指標線4Bが指し示す目盛S,S’の位置(レンズユニット1が示す撮影距離)と実際の撮影距離とのズレを修正することが可能となる。
【0023】
(他の形態)
上述した本発明の実施の形態に係るレンズユニット1は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変形実施が可能である。
【0024】
たとえば、表示部材2の目盛S,S’の距離単位は、メートル、フィートではなく、ヤード、マイル、インチ等の他の距離単位とすることができる。また、表示部材2は、2種類の距離単位を表示し、その中から1の距離単位を選択した。しかし、表示部材2の目盛は、3種類以上の距離単位を表示し、その中から1の距離単位を選択するようにすることができる。
【0025】
また、表示部材2は、筒形状としたが、筒形状の周方向の所定範囲を切り取った形状等としても良い。
【0026】
また、レンズユニット1は、
図1に示す正面図の裏側から見える背面側にも、窓部材4の窓7と同様の窓が形成されている。しかし、窓部材4に開けられる窓は1つでも良いし、3つ以上でも良い。
【0027】
また、表示部材2を固定する固定部材は、撮影距離調節機構部材5としたが、これに限られない。この固定部材は、たとえば、撮影距離調節機構部材5に取り付けられる別の部材等としても良い。また、レンズユニット1は、メートル用ビス固定穴8Aまたはフィート用ビス固定穴8Bとビス固定穴9とを、固定具である固定ビス6によって固定している。しかし、この固定に用いる各要素または部材は、他のものとすることができる。たとえば、固定具は、表示部材2と固定部材とを挟み込んで押圧固定するもの等とすることもできる。
【0028】
また、ビス固定穴8A、ビス固定穴8Bとビス固定穴9とが、固定ビス6によって固定されていない状態では、表示部材2をその周方向にその長穴の長さ分だけ位置調整ができるようにされている。しかし、このような構成は採用する必要はない。たとえば、ビス固定穴8A、ビス固定穴8Bは、長穴ではなく、真円の穴とすることができる。
【0029】
また、撮影距離調節機構部材5と表示部材2とは、中心線L’から90°間隔に外周面3をその周方向に区切る位置で4箇所で固定されている。しかし、撮影距離調節機構部材5と表示部材2との固定位置、固定箇所の数、固定位置間隔は、適宜変更できる。たとえば、撮影距離調節機構部材5と表示部材2は、中心線L’から180°間隔に外周面3をその周方向に区切る位置で2箇所で固定されていても良い。
【0030】
また、レンズユニット1は、表示部材2の回動に伴って回動し、表示部材2の径方向に重なりあって配置されるガイド部材を備えることができる。そして、表示部材2とガイド部材の一方に凸状の突起部、もう一方にその突起部が挿入される凹部を有することとしても良い。そして、その凹部が光軸L(中心線L’)と平行方向に伸び、その突起部がその凹部に挿入された状態でその伸びた方向に表示部材2が移動可能であることとしても良い。このような構成を採用することによって、表示部材2をスライド移動させて、表示する距離単位を変更する際に、表示部材2をその周方向へ大きくずらない効果を得ることができる。
【0031】
このような突起部と凹部を有する構成において、凹部の幅寸法(表示部材2をスライド移動させる方向と直交する方向の寸法)は、凹部に挿入される部分の突起部の太さよりも所定距離大きくすることができる。その所定距離を、たとえばビス固定穴8A,8Bの長穴の長さ分等とすることで、表示部材2をその周方向に略その長穴の長さ分だけ位置調整できる効果を維持しつつ、表示部材2をスライド移動させる際に表示部材2をその周方向へ大きくずらない効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 レンズユニット
2 表示部材
3 外周面
4 窓部材
5 撮影距離調節機構部材(固定部材)
6 固定ビス(固定具)
S,S’ 目盛
L 光軸(中心線)