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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-222486(P2015-222486A)
(43)【公開日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】車両用通信システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20151113BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20151113BHJP
【FI】
   G08G1/16 A
   B60R25/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-106364(P2014-106364)
(22)【出願日】2014年5月22日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】内藤 一孝
(72)【発明者】
【氏名】大見 則親
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA21
5H181BB04
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】歩行者の歩行に伴う圧力によって発電し、歩行の都度、所定の歩行信号を無線にて送信する簡易で小型の車外移動送信機を用いて、車両周辺に存在する歩行者を検知し、所定の制御を行うことが可能な車両用通信システムを提供する。
【解決手段】車両用通信システムは、車載機1及び車外移動送信機5を備える。車外移動送信機5は、歩行者の歩行に伴う圧力によって発電する圧電部と、該圧電部が発電した電力によって駆動し、該歩行者が歩行する都度、所定の歩行信号を無線にて送信する。車載機1は、車外移動送信機5から送信された歩行信号を受信する受信部と、該受信部が歩行信号を受信した場合、警告装置の動作を制御する制御信号を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を無線送信する車外移動送信機と、該車外移動送信機から送信された信号を受信する車載機とを備える車両用通信システムであって、
前記車外移動送信機は、
歩行者の歩行に伴う圧力によって発電する圧電部と、
該圧電部が発電した電力によって駆動し、該歩行者が歩行する都度、所定の歩行信号を無線にて送信する歩行信号送信部と
を備え、
前記車載機は、
前記歩行信号送信部から送信された歩行信号を受信する受信部と、
該受信部が歩行信号を受信した場合、外部装置の動作を制御する制御信号を出力する出力部と
を備える車両用通信システム。
【請求項2】
前記車載機は、
前記受信部が複数の歩行信号を受信した場合、該複数の歩行信号を受信した時間を計時する計時部と、
前記複数の歩行信号を受信する時間間隔が閾値未満であるか否かを判定する判定部と
を備え、
前記出力部は、
前記判定部が閾値未満であると判定した場合、制御信号を出力する
請求項1に記載の車両用通信システム。
【請求項3】
前記車載機は、
前記受信部が受信する歩行信号の受信信号強度を測定する測定部を備え、
前記出力部は、
前記受信部が受信した歩行信号及び前記測定部が測定した受信信号強度に応じて、制御信号を出力する
請求項1又は請求項2に記載の車両用通信システム。
【請求項4】
前記車載機は、
前記受信部が受信する歩行信号の受信信号強度を測定する測定部と、
前記受信部が複数の歩行信号を受信した場合、各歩行信号の受信信号強度が増大しているか否かを判定する増大判定部と
を備え、
前記出力部は、
前記判定部が閾値以上であると判定し、前記増大判定部が増大していると判定した場合、制御信号を出力する
請求項2に記載の車両用通信システム。
【請求項5】
前記歩行者の存在を警告する警告装置を備え、
前記出力部は、
前記警告装置の動作を制御する制御信号を出力する
請求項1から請求項4までのいずれか一つに記載の車両用通信システム。
【請求項6】
前記圧電部及び歩行信号送信部は前記歩行者の靴に設けられている
請求項1から請求項5までのいずれか一つに記載の車両用通信システム。
【請求項7】
車両に設けられた複数のアンテナから信号を送信する送信部と、
該送信部から送信された信号を受信し、受信した信号に応じた応答信号を送信する携帯機と
を備え、
前記受信部は前記携帯機から送信された応答信号を受信するようにしてあり、
更に、
前記受信部にて受信した応答信号に応じて、車両ドアの施錠又は解錠に係る処理を実行する制御部を備える
請求項1から請求項6までのいずれか一つに記載の車両用通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者が歩行する都度、所定の歩行信号を無線にて送信する車外移動送信機と、車外移動送信機から送信された歩行信号を受信する車載機とを備える車両用通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
歩行者が携帯する歩行者端末と、車両に搭載された車載機とが通信を行い、衝突の危険がある歩行者の存在を車両の運転者に通知する歩車間通信システムが提案されている(例えば、非特許文献1)。歩行者端末及び車載機は、基地局、路肩に設けられた路側装置等を介さずに無線接続を行うことが可能なアドホックネットワークを構成する。歩行者端末は、歩行者の位置を検出するGPS受信機、車載機との間で無線通信を行う無線通信部、データ処理部等を備える。歩行者端末は、GPS受信機を用いて検出された歩行者の位置等の情報を無線通信部にて車載機へ送信する。車載機は歩行者端末から送信された情報を受信し、衝突の危険がある歩行者の存在を運転者に通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】金子 富、浜口 雅春、「歩車間通信システムの開発」、OKIテクニカルレビュー、2011年10月、第218号、Vol.78 No.1、p. 72−77
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に係る歩車間通信システムにおいては、アドホックネットワークにて無線接続を行う特殊な歩行者端末用意し、歩行者は、携帯電話端末と同程度のサイズを有する歩行者端末を所持する必要があるという問題があった。道路に飛び出す危険性が高い幼児、児童等が、かかる特殊な歩行者端末を常時所持することは考えにくく、保護すべき児童等に対して歩車間通信システムを普及させることは困難である。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、歩行者の歩行に伴う圧力によって発電し、歩行の都度、所定の歩行信号を無線にて送信する簡易で小型の車外移動送信機を用いて、車両周辺に存在する歩行者を検知し、所定の制御を行うことが可能な車両用通信システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用通信システムは、信号を無線送信する車外移動送信機と、該車外移動送信機から送信された信号を受信する車載機とを備える車両用通信システムであって、前記車外移動送信機は、歩行者の歩行に伴う圧力によって発電する圧電部と、該圧電部が発電した電力によって駆動し、該歩行者が歩行する都度、所定の歩行信号を無線にて送信する歩行信号送信部とを備え、前記車載機は、前記歩行信号送信部から送信された歩行信号を受信する受信部と、該受信部が歩行信号を受信した場合、外部装置の動作を制御する制御信号を出力する出力部とを備える。
【0007】
本発明にあっては、歩行者の歩行に伴う圧力によって圧電部が発電を行い、車載移動送信機の歩行信号送信部は該圧電部が発電した電力によって駆動する。歩行信号送信部は、歩行者が歩行する都度、所定の歩行信号を送信し、車載機の受信部は歩行信号送信部から送信された歩行信号を受信する。歩行信号は歩行者の歩調に合わせて送信されるため、車載機は受信する歩行信号から、歩行者の歩調に関する情報を得ることができる。
また、歩行信号送信部は、歩行者の歩行に伴う圧力によって発電された電力によって駆動しているため、該歩行信号送信部から送信される歩行信号は、歩行者の周辺にある車両に搭載された車載機までしか到達しない。従って、車載機は、該車載機が搭載された車両の周辺に存在する歩行者の車外移動送信機から送信される歩行信号を受信することができ、遠方に存在する歩行者の車両移動送信機から送信される歩行信号を受信することは無い。つまり、車載機は、該車載機が搭載された車両の周辺に存在する歩行者の歩調に関する情報を選択的に得ることができる。
車載機の出力部は、受信部が歩行信号を受信した場合、制御信号を外部装置へ出力する。従って、車載機は、歩行者の存在に応じた外部装置の制御を行うことが可能である。
【0008】
本発明に係る車両用通信システムは、前記車載機は、前記受信部が複数の歩行信号を受信した場合、該複数の歩行信号を受信した時間を計時する計時部と、前記複数の歩行信号を受信する時間間隔が閾値未満であるか否かを判定する判定部とを備え、前記出力部は、前記判定部が閾値未満であると判定した場合、制御信号を出力する。
【0009】
本発明にあっては、車載機は、受信部が受信する複数の歩行信号の時間を計時部にて計時し、複数の歩行信号を受信する時間間隔が閾値未満であるか否かを判定部によって判定する。歩行者が走っている場合、複数の歩行信号を受信する時間間隔は短くなり、閾値未満になる。出力部は、歩行信号を受信する時間間隔が閾値未満であると判定された場合に制御信号を外部装置へ出力する。従って、車載機は、走っている歩行者、つまり、急に道路へ飛び出してくる危険がある歩行者が存在している場合、外部装置を制御することができる。
【0010】
本発明に係る車両用通信システムは、前記車載機は、前記受信部が受信する歩行信号の受信信号強度を測定する測定部を備え、前記出力部は、前記受信部が受信した歩行信号及び前記測定部が測定した受信信号強度に応じて、制御信号を出力する。
【0011】
本発明にあっては、車載機は、受信部が受信する複数の歩行信号の受信信号強度を測定部にて測定し、出力部は測定された受信信号強度に応じて制御信号を出力する。歩行信号の受信信号強度は、車載機が搭載されている車両と、歩行者との距離によって変化する。従って、車載機は、歩行者と車両との距離に応じて、外部装置を制御することができる。
【0012】
本発明に係る車両用通信システムは、前記車載機は、前記受信部が受信する歩行信号の受信信号強度を測定する測定部と、前記受信部が複数の歩行信号を受信した場合、各歩行信号の受信信号強度が増大しているか否かを判定する増大判定部とを備え、前記出力部は、前記判定部が閾値以上であると判定し、前記増大判定部が増大していると判定した場合、制御信号を出力する。
【0013】
本発明にあっては、車載機は、受信部が受信する複数の歩行信号の時間を計時部にて計時し、複数の歩行信号を受信する時間間隔が閾値未満であるか否かを判定部によって判定する。また、車載機は、受信部が受信する複数の歩行信号の受信信号強度を測定部にて測定し、複数の歩行信号が増大しているか否かを判定する。車載機が搭載されている車両に歩行者が近づいている場合、歩行信号は増大する。出力部は、歩行信号を受信する時間間隔が閾値未満であり、歩行信号の受信信号強度が増大していると判定された場合、制御信号を外部装置へ出力する。
従って、車載機は、走っている歩行者が車両に近づいている場合、外部装置を制御することができる。
【0014】
本発明に係る車両用通信システムは、前記歩行者の存在を警告する警告装置を備え、前記出力部は、前記警告装置の動作を制御する制御信号を出力する。
【0015】
本発明にあっては、車載機は警告装置を制御することによって、歩行者の存在を車両の運転者に警告する。
【0016】
本発明に係る車両用通信システムは、前記圧電部及び歩行信号送信部は前記歩行者の靴に設けられている。
【0017】
本発明にあっては、圧電部及び歩行信号送信部は歩行者の靴に設けられている。従って、歩行の都度、圧電部に圧力が加わる。車載機は歩行者が歩行する都度、歩行信号を送信することができる。
また、圧電部及び歩行信号送信部が靴に設けられているため、歩行者が車外移動送信機の携帯を忘れることを効果的に防止することが可能である。
【0018】
本発明に係る車両用通信システムは、車両に設けられた複数のアンテナから信号を送信する送信部と、該送信部から送信された信号を受信し、受信した信号に応じた応答信号を送信する携帯機とを備え、前記受信部は前記携帯機から送信された応答信号を受信するようにしてあり、更に、前記受信部にて受信した応答信号に応じて、車両ドアの施錠又は解錠に係る処理を実行する制御部を備える。
【0019】
本発明にあっては、送信部、受信部及び携帯機によって、いわゆるスマートエントリー(登録商標)システムを構成している。スマートエントリーシステムを構成する受信部によって、歩行信号を受信することができ、車両用通信システムの製造コストを抑えることが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、歩行者の歩行に伴う圧力によって発電し、歩行の都度、所定の歩行信号を無線にて送信する簡易で小型の車外移動送信機を用いて、車両周辺に存在する歩行者を検知し、所定の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態1に係る車両用通信システムの一構成例を示す概念図である。
図2】実施形態1に係る車外移動送信機の一構成例を示すブロック図である。
図3】実施形態1に係る車載機の一構成例を示すブロック図である。
図4】実施形態1に係る制御部の処理手順を示すフローチャートである。
図5】実施形態2に係る車載機の一構成例を示すブロック図である。
図6】実施形態2に係る制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。なお、以下に記載する実施形態及び各種変形の少なくとも一部を任意に組み合わせても良い。
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る車両用通信システムの一構成例を示す概念図である。本実施形態1に係る車両用通信システムは、車両Cに設けられた複数の送信アンテナ3及び受信アンテナ4を用いて各種信号を送受信する車載機1と、該車載機1との間で信号を送受信する携帯機2とを備え、いわゆるスマートエントリーシステムを構成している。複数の送信アンテナ3は、例えば、運転席側のピラー、助手席側のピラー、バックドア、車両Cの前部に設けられている。受信アンテナ4は車両Cの適宜箇所に設けられている。
車載機1は、携帯機2の位置を判定するための信号を複数の送信アンテナ3からLF(Low Frequency)帯の電波を用いて送信する。携帯機2は、各送信アンテナ3から送信された信号を受信し、受信した各信号の受信信号強度を測定する。携帯機2は、測定された受信信号強度を含む応答信号をUHF(Ultra High Frequency)帯の電波を用いて車載機1へ送信する。車載機1は携帯機2から送信された応答信号を受信し、受信した応答信号に含まれる受信信号強度に基づいて、携帯機2の車内外判定を行い、判定結果に応じた所定処理を実行する。例えば、車載機1は、車両ドアの施錠又は解錠、エンジン始動、車両ドアの施錠忘れの警告等の処理を実行する。
【0023】
また、車両用通信システムは、歩行者の靴底に設けられており、歩行の都度、歩行信号を無線にて送信する車外移動送信機5を備える。車載機1は、車外移動送信機5から送信された歩行信号を受信し、該歩行信号に基づいて衝突の危険がある歩行者を検知し、検知結果に応じた所定処理を実行する。例えば、歩行者の存在を車両Cの運転者に警告する処理を実行する。
【0024】
図2は実施形態1に係る車外移動送信機5の一構成例を示すブロック図である。車外移動送信機5は、歩行者が履く靴Aの踵部分Bに設けられている。車外移動送信機5は、歩行者の歩行に伴う圧力によって発電する圧電部50と、該圧電部50が発電した電力によって駆動する制御部51及び歩行信号送信部52とを備える。
【0025】
圧電部50は靴Aの踵部分Bに埋没した圧電素子である。圧電素子は、外圧による変形によって電圧を発生させるセラミックス、水晶等の圧電体を2つの電極で挟んだ構造であり、発電された電力は制御部51及び歩行信号送信部52へ供給される。白抜き矢印は、圧電部50から制御部51及び歩行信号送信部52へ供給される電力を示している。なお、図2では圧電部50にて発電した電力を制御部51及び歩行信号送信部52へ直接的に供給しているが、安定化回路によって、電圧を安定化させて供給するように構成しても良い。
【0026】
制御部51は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有するマイコンである。制御部51は、圧電部50から供給された電力によって駆動する。起動した制御部51は、ROMに記憶されている制御プログラムを実行することにより、各構成部の動作を制御する。具体的には、起動した制御部51は、所定の情報を歩行信号送信部52に与え、該情報を含む歩行信号を無線にて送信させる。制御部51は、歩行者が歩行する都度、電力が供給されて起動し、前記所定の情報を歩行信号送信部52に与える。歩行信号は、歩行者の靴Aに設けられた車外移動送信機5から送信された信号であることを識別できる所定の情報を有していれば足りる。なお、前記所定の情報に加え、車外移動送信機5に固有の識別情報を歩行信号に含ませても良い。
【0027】
歩行信号送信部52は、歩行者が歩行する都度、電力が供給されて駆動し、制御部51から与えられた情報を用いて搬送波を変調し、変調された歩行信号を、アンテナ52aを用いて無線にて送信する。歩行信号送信部52が送信する信号の周波数帯域及び変調方式は、スマートエントリーシステムを構成する携帯機2が送信する信号の周波数帯域及び変調方式と同じである。例えば、歩行信号送信部52は、周波数偏移変調方式によって変調された歩行信号を300MHz〜3GHzのUHF(Ultra High Frequency)帯の電波にて送信する。なお周波数帯域及び変調方式は一例である。
【0028】
図3は実施形態1に係る車載機1の一構成例を示すブロック図である。車載機1は、該車載機1の各構成部の動作を制御する制御部11を備える。制御部11には、受信部12、送信部13、計時部14、入力部15及び出力部16が設けられている。
【0029】
制御部11は、例えば一又は複数のCPU、マルチコアCPU、ROM、RAM等を有するマイコンである。制御部11には受信部12、送信部13、計時部14、入力部15及び出力部16が接続されている。制御部11はROMに記憶されている制御プログラムを実行することにより、各構成部の動作を制御し、歩行者の検知、警告処理を実行する。また、制御部11は、携帯機2の車内外判定、車内外判定に応じた所定処理を実行する。
【0030】
受信部12には、受信アンテナ4が接続されている。受信部12は、車外移動送信機5から送信された歩行信号を受信アンテナ4にて受信する回路である。受信部12は、受信した歩行信号を復調し、復調して得た情報を制御部11へ出力する。
また、受信部12は携帯機2から送信された応答信号を受信アンテナ4にて受信する。受信部12は、受信した応答信号を復調し、復調して得た情報を制御部11へ出力する。
【0031】
送信部13には複数の送信アンテナ3が接続されている。送信部13は、車両Cに設けられた複数の送信アンテナ3から携帯機2へ信号を送信する回路である。送信部13は、制御部11から出力された信号に基づいて、30kHz〜300MHzの搬送波(LF波)を変調する。変調された信号は複数の送信アンテナ3から各別に順次送信される。
【0032】
計時部14は、受信部12によって複数の歩行信号を受信した時間を計時し、計時結果を制御部11に与える。例えば、計時部14は、複数の歩行信号を受信する時間間隔を計時し、計時した時間間隔を制御部11に与える。また、計時部14は、複数の歩行信号を受信する時点を計時し、各歩行信号を受信した時点を制御部11に与えても良い。制御部11は、計時部14の計時結果に基づいて、歩行信号の受信周期を算出する。
【0033】
入力部15は、図示しない車両ドアリクエストスイッチの操作状態に応じたリクエスト信号が入力し、制御部11は入力部15を介して入力したリクエスト信号に基づいて、車両ドアリクエストスイッチの操作状態を認識することができる。車両ドアリクエストスイッチは、例えば、運手席側又は助手席側の車両ドアを施錠又は開錠するためのスイッチであり、運転席外側又は助手席外側のドアハンドルに設けられている。なお、押しボタンに代えて、ドアハンドルに対する使用者の手の接触を検出する接触センサを設けても良い。また、制御部11は、車両ドアリクエストスイッチの操作に対応したリクエスト信号を直接取得しても良いし、ドアECU(Electronic Control Unit)、その他のECU等を介して取得しても良い。
【0034】
出力部16は、歩行者の存在を車両Cの運転者に警告する警告装置6に接続されている。制御部11は、歩行信号の受信結果に応じて、警告装置6の動作を制御する制御信号を、出力部16を介して警告装置6へ出力する。警告装置6は、制御部11から出力された制御信号に従って、警告を行う。警告装置6は、音を出力するスピーカ、警告灯等を有し、音又は光によって警告を発する。
また、制御部11は、車両ドアリクエストスイッチの操作状態、携帯機2が車内にあるか否かと言った状況に応じて、車両ドアの解錠又は施錠を制御するための車両ドア制御信号を、出力部16を介して図示しないドアECUへ出力する。ドアECUは、制御部11からの車両ドア制御信号に従って、車両ドアを施錠し又は解錠する。
【0035】
図1に示す携帯機2は、図示しない制御部を備え、該制御部には携帯受信部、携帯送信部等が接続されている。携帯受信部は、車載機1から送信される無線の信号を3軸アンテナにて受信し、受信した信号を制御部に与える。また、携帯受信部は受信した信号の受信信号強度を測定し、制御部は受信信号強度の情報を携帯送信部にて車載機1へ送信する。携帯送信部は、受信信号強度の情報に基づいてUHF帯の搬送波を変調し、変調された応答信号をアンテナから送信する。
【0036】
図4は実施形態1に係る制御部11の処理手順を示すフローチャートである。車載機1の制御部11は、受信部12にて信号を受信し(ステップS11)、受信した信号が歩行信号であるか否かを判定する(ステップS12)。歩行信号であると判定した場合(ステップS12:YES)、制御部11は、歩行信号を受信した時間を計時部14にて計時し、一時記憶する(ステップS13)。次いで、制御部11は、受信部12が複数の歩行信号を受信した場合、一時記憶した時点に基づいて、歩行周期を算出する(ステップS14)。具体的には、制御部11は、複数の歩行信号を受信する周期の平均値を算出する。例えば、10秒間に歩行信号を10回受信した場合、周期は1[秒]である。10秒間に歩行信号を20回受信した場合、0.5[秒]である。
【0037】
次いで、制御部11は、算出した歩行周期が閾値未満であるか否かを判定する(ステップS15)。閾値以上であると判定した場合(ステップS15:NO)、制御部11は処理を終える。閾値は、歩行者が走っているか否かを判定するための数値である。閾値以上である場合、歩行者はゆっくり歩いている状態であり、歩行者が急に道路に飛び出してくるおそれは無い。
【0038】
閾値未満であると判定した場合(ステップS15:YES)、制御部11は、制御信号を警告装置6へ出力し(ステップS16)、処理を終える。制御信号を受けた警告装置6は、歩行者の存在、特に走っている歩行者の存在を運転者に警告する。
【0039】
ステップS12において、受信した信号が歩行信号で無いと判定した場合(ステップS12:NO)、制御部11は、受信した信号が携帯機2からの応答信号であるか否かを判定する(ステップS17)。携帯機2からの応答信号で無いと判定した場合(ステップS17:NO)、制御部11は処理を終える。携帯機2からの応答信号であると判定した場合(ステップS17:YES)、応答信号に基づく所定処理を実行し(ステップS18)、処理を終える。例えば、車両ドアリクエストスイッチの操作時に車載機1から携帯機2へ送信した信号に対する応答信号を受信した場合、制御部11は、携帯機2が車内にあるか否かを判定し、車外にあると判定した場合、車両ドアの施錠又は解錠に係る処理を実行する。また、エンジン動作中に携帯機2の存在を確認すべく車載機1から携帯機2へ送信した信号に対する応答信号を受信した場合、制御部11は、携帯機2が車内にあるか否かを判定し、車内に携帯機2が無い場合、警告に係る処理を実行する。更に、エンジンスイッチが操作された際に車載機1から携帯機2へ送信した信号に対して携帯機2から送信された応答信号を受信した場合、制御部11は、携帯機2が車内にあるか否かを判定し、車内にあると判定した場合、エンジンを始動する等の処理を実行する。
【0040】
このように構成された車両用通信システムによれば、歩行者の歩行に伴う圧力によって発電し、歩行の都度、所定の歩行信号を無線にて送信する簡易で小型の車外移動送信機5を用いて、車両C周辺に存在する歩行者を検知し、所定の制御を行うことができる。
なお、車両Cが停止している場合、つまり車載機1への給電が停止している場合、車載機1の受信部12は信号を間欠的に受信しており、歩行信号の取りこぼしが懸念されるが、車両Cは走行し得ない状態にあるため、問題では無い。車両Cが動作している場合、車載機1が起動し、受信部12は信号を常時受信し得る状態にあるため、歩行信号を漏れなく受信することができる。従って、車両Cが走行し得る状態にある場合、車載機1は、走っている歩行者を確実に検知し、警告を発することができる。
また、車外移動送信機5は圧電部50の電力によって駆動するため、歩行者が歩いていない場合、歩行者に関する情報が車載機1へ送信されない状態にあるが、歩行者が歩いていない場合、車両Cに歩行者が衝突する可能性は低く、問題では無い。
【0041】
本実施形態1によれば、特に、走っている歩行者を検知し、警告装置6にて運転者に警告を発することができる。
【0042】
また、車外移動送信機5は歩行者の靴Aに設けられているため、歩行者が車外移動送信機5の携帯を忘れることを効果的に防止することができる。
【0043】
更に、本実施形態1では、スマートエントリーシステムを構成する受信部12を用いて、車外移動送信機5からの信号を受信するように構成しているため、本発明に係る車両用通信システムの製造コストを抑えることが可能である。
【0044】
なお、本実施形態1では、歩行者を検出した際、警告装置6によって運転者へ警告を発する例を説明したが、運転者への警告以外の処理を実行するように構成しても良い。例えば、車載機1は、走っている歩行者を検出した場合、エンジンECUへ制御信号を出力し、車両Cの速度を低下させるように構成しても良い。また、車外の歩行者に対して警告を発するように構成しても良い。更に、歩行者を検知した際にブレーキの動作を制御することによって、車両Cを減速させても良い。歩行者を検出した際に実行する処理には、歩行者が車両Cに衝突することを回避するための任意の処理が含まれる。
【0045】
また、本実施形態1の車外移動送信機5は、歩行者の靴Aに設けられているが、歩行者の歩行に伴って圧力が加わる箇所であれば他の場所に車外移動送信機5を設けても良い。また、歩行に伴う上下振動によって十分な電力を得られるのであれば、歩行者が車外移動送信機5を任意の方法で携帯する構成であっても良い。
【0046】
更に、本実施形態1では右靴及び左靴の一方に車外移動送信機を設ける例を説明したが、右靴及び左靴の双方に車外移動送信機を設けても良い。また、1足の靴に設けられた車外移動送信機と、車載機とによって車両用通信システムを構成する例を説明したが、複数組の車外移動送信機と、車載機とによって車両用通信システムを構成しても良い。車外移動送信機及び車載機の構成は上述した実施形態1の構成と同様である。
複数の靴それぞれに設けられた車外移動送信機からの信号をそれぞれ識別する必要は無いが、複数の車外移動送信機それぞれが、自身の識別情報を含む歩行信号を送信するように構成しても良い。車載機は、歩行信号に含まれる識別情報に基づいて、複数の車外移動送信機毎に歩行周期を算出し、歩行周期が閾値未満であるか否かを判定すれば良い。この場合、走っている歩行者を個別に検出し、警告を発することができる。
【0047】
更にまた、本実施形態1では受信部12をスマートエントリーシステムと兼用する例を説明したが、車外移動送信機5から送信される歩行信号を受信する専用の受信機を備えても良い。
【0048】
(実施形態2)
実施形態2に係る車両用通信システムは、車両Cに対して歩行者が走って近づいている場合に運転者に警告を発するものである。実施形態2に係る車両用通信システムは実施形態1と同様の車載機201、携帯機2及び車外移動送信機5を備える。実施形態2に係る車両用通信システムは、車載機201の構成及び処理手順が異なるため、以下では主にかかる相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0049】
図5は実施形態2に係る車載機201の一構成例を示すブロック図である。実施形態2に係る車載機201は実施形態1と同様、制御部11、受信部212、送信部13、計時部14、入力部15及び出力部16を備える。実施形態2に係る受信部212は、受信した歩行信号の受信信号強度、即ち歩行信号の電界強度を測定する測定部212aを備える。
【0050】
図6は実施形態2に係る制御部11の処理手順を示すフローチャートである。車載機201の制御部11は、受信部212にて信号を受信し(ステップS211)、受信した信号が歩行信号であるか否かを判定する(ステップS212)。歩行信号であると判定した場合(ステップS212:YES)、制御部11は、受信部212にて受信した歩行信号の受信信号強度を測定部212aにて測定し、測定された受信信号強度を一時記憶する(ステップS213)。より詳細には、測定部212aは受信部212にて受信した歩行信号の受信信号強度を測定し、測定した受信信号強度を制御部11へ出力する。制御部11は測定部212aから出力された受信信号強度を取得する。
【0051】
そして、制御部11は、歩行信号を受信した時間を計時部14にて計時し、一時記憶する(ステップS214)。次いで、制御部11は、受信部212が複数の歩行信号を受信した場合、一時記憶した時点に基づいて、歩行周期を算出する(ステップS215)。
【0052】
次いで、制御部11は、算出した歩行周期が閾値未満であるか否かを判定する(ステップS216)。閾値以上であると判定した場合(ステップS216:NO)、制御部11は処理を終える。
【0053】
閾値未満であると判定した場合(ステップS216:YES)、制御部11は、受信部212が受信した複数の歩行信号の受信信号強度が増大しているか否かを判定する(ステップS217)。つまり、制御部11は、先の受信した歩行信号の受信信号強度よりも後に受信した歩行信号の受信信号強度の方が大きいか否かを判定する。なお、受信信号強度は、必ずしも継続的に増大している必要性は無く、例えば受信信号強度の移動平均が増大していれば良い。
【0054】
受信信号強度が増大していないと判定した場合(ステップS217:NO)、制御部11は処理を終える。受信信号強度が増大していない場合、歩行者が走っていても車両Cから遠ざかる方向へ移動しており、歩行者が車両Cに衝突する危険性は低い。
【0055】
受信信号強度が増大していると判定した場合(ステップS217:YES)、制御部11は、制御信号を警告装置6へ出力し(ステップS218)、処理を終える。制御信号を受けた警告装置6は、歩行者の存在、特に車両Cに近づく方向へ走っている歩行者の存在を運転者に警告する。
【0056】
ステップS212において、受信した信号が歩行信号で無いと判定した場合(ステップS212:NO)、制御部11は、実施形態1におけるステップS17及びステップS18と同様の処理をステップS219及びステップS220にて実行し、処理を終える。処理内容は実施形態1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0057】
本実施形態2に係る車両用通信システムによれば、車両Cに近づく方向へ走っている歩行者を検知し、運転者に警告を発することができる。
【0058】
(変形例)
なお、実施形態2では歩行周期、及び歩行信号の受信信号強度の双方を用いて歩行者を検知する例を説明したが、歩行周期を算出せず、歩行信号の受信信号強度が増大しているか否かのみを判定し、警告を発するように構成しても良い。つまり、図6に示すステップS214〜ステップS216の処理を実行しないように構成しても良い。
変形例によれば、歩行者が走っているか否かに拘わらず、車両Cに近づいてくる歩行者を検知し、運転者に警告を発することができる。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1,201 車載機
2 携帯機
3 送信アンテナ
4 受信アンテナ
5 車外移動送信機
6 警告装置
11 制御部
12,212 受信部
13 送信部
14 計時部
15 入力部
16 出力部
50 圧電部
51 制御部
52 歩行信号送信部
212a 測定部
A 靴
B 踵部分
C 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6