特開2015-222689(P2015-222689A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-222689(P2015-222689A)
(43)【公開日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】プレスフィット端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/58 20110101AFI20151113BHJP
【FI】
   H01R12/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-107232(P2014-107232)
(22)【出願日】2014年5月23日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 佳織
【テーマコード(参考)】
5E123
【Fターム(参考)】
5E123AB38
5E123AB45
5E123AC05
5E123BA27
5E123BB12
5E123CB64
5E123CB68
5E123CB88
5E123CD01
5E123CD15
5E123DB01
5E123DB08
5E123DB13
(57)【要約】
【課題】電気接続の高い信頼性を確保した上で、スルーホールからの抜け防止を図る。
【解決手段】回路基板1のスルーホール2に圧入されるプレスフィット端子10であって、基部11と、同基部11の先端から所定の角度間隔を開けて分岐して延出された複数の脚片13からなる圧入部12とが備えられ、脚片13は長さ方向の途中位置が外側に膨出した略弧状に形成されて、それぞれの先端15が互いに交差して窄んだ形状をなし、かつ、圧入部12がスルーホール2に圧入されて各脚片13が互いに接近する方向に弾性変形することに伴い、各脚片13の先端15がスルーホール2の裏面側の孔縁に係止可能な位置まで拡がる設定となっている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板のスルーホールに圧入されるプレスフィット端子であって、
基部と、同基部の先端から所定の角度間隔を開けて分岐して延出された複数の脚片からなる圧入部とが備えられ、
前記脚片は長さ方向の途中位置が外側に膨出した略弧状に形成されて、それぞれの先端が互いに交差して窄んだ形状をなし、
かつ、前記圧入部が前記スルーホールに圧入されて前記各脚片が互いに接近する方向に弾性変形することに伴い、前記各脚片の先端が前記スルーホールの裏面側の孔縁に係止可能な位置まで拡がる設定となっているプレスフィット端子。
【請求項2】
前記圧入部は、自然状態において前記各脚片の窄んだ先端がなす仮想円の直径が前記スルーホールの直径よりも小さく、
かつ、当該圧入部が圧入された場合における前記各脚片の拡がった先端がなす仮想円の直径が前記スルーホールの直径よりも大きくなるように形成されている請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項3】
前記各脚片の先端には、前記圧入部が前記スルーホールに圧入されて前記各脚片の先端が拡がった場合に、前記スルーホールの裏面側の孔縁に面接触して係止される係止部が形成されている請求項1または請求項2に記載のプレスフィット端子。
【請求項4】
前記各脚片における基端部の外縁には、前記スルーホールの表面側の孔縁に当接して前記各脚片の挿入を規制するストッパが形成されている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のプレスフィット端子。
【請求項5】
前記圧入部は、一対の前記脚片が二股状に延出形成されている請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のプレスフィット端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、プレスフィット端子に関する。
【背景技術】
【0002】
プレスフィット端子の一例として、開口部を挟んだ両側に一対の膨出した弾性接触部が配された、いわゆるニードルアイ形状の圧入部を備えたものが知られており、両弾性接触部を弾性変形させつつ圧入部が回路基板のスルーホールに挿入されて電気接続が得られるようになっている。
一方、この種のプレスフィット端子では、振動、衝撃等に起因したスルーホールからの抜けに対する防止策が要求される場合があり、従来、特開2006−172986号公報(下記特許文献1)には、弾性接触部の外縁に抜止用の爪部を設けたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−172986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記の抜け防止構造では、圧入部がスルーホールに挿入される際に、尖った爪部が、スルーホールの内周に形成されたメッキ層(接点部)に強く擦られることになるため、メッキが剥がれて電気接続の信頼性を損ねるおそれがある。メッキの剥がれを防ぐために、爪部で擦られる箇所に硬質メッキを施すことも提案されているが、コスト高を招くことが懸念される。
本明細書によって開示されるプレスフィット端子は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、電気接続の高い信頼性を確保した上で、スルーホールからの抜け防止を図るところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される技術は、回路基板のスルーホールに圧入されるプレスフィット端子であって、基部と、同基部の先端から所定の角度間隔を開けて分岐して延出された複数の脚片からなる圧入部とが備えられ、前記脚片は長さ方向の途中位置が外側に膨出した略弧状に形成されて、それぞれの先端が互いに交差して窄んだ形状をなし、かつ、前記圧入部が前記スルーホールに圧入されて前記各脚片が互いに接近する方向に弾性変形することに伴い、前記各脚片の先端が前記スルーホールの裏面側の孔縁に係止可能な位置まで拡がる設定となっているところに特徴を有する。
【0006】
プレスフィット端子は、圧入部の窄んだ先端側からスルーホールに挿入され、引き続き各脚片が互いに接近する方向に弾性変形しつつ圧入されて、それに伴い各脚片の交差した先端が次第に拡がり、正規位置まで挿入されたところでは、各脚片の先端がスルーホールの裏面側の孔縁に係止可能な位置まで拡がる。そのため、振動や衝撃等により圧入部に対しスルーホールから抜ける方向の力が作用した場合に、各脚片の拡がった先端がスルーホールの裏面側の孔縁に係止し、抜けが防止される。しかも、抜止用の爪部を設けた場合と違って、尖った部位でスルーホールの内周を擦ることがないから、接点部を構成するメッキを剥がすことが抑制され、プレスフィット端子の圧入部とスルーホールの接点部との間を、高い信頼性を持って電気接続することができる。
【0007】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記圧入部は、自然状態において前記各脚片の窄んだ先端がなす仮想円の直径が前記スルーホールの直径よりも小さく、かつ、当該圧入部が圧入された場合における前記各脚片の拡がった先端がなす仮想円の直径が前記スルーホールの直径よりも大きくなるように形成されている。
ここで脚片が2本の場合は、両脚片の先端がなす幅が、上記構成における「各脚片の先端がなす仮想円の直径」に相当する。
【0008】
自然状態では圧入部の先端側がスルーホールよりも小さく窄んでいることにより、スルーホールへの挿入が確実にかつ容易にできる一方で、圧入部が正規に圧入されたときには、先端側がスルーホールよりも大きく拡がることで、抜け止め機能を発揮できる。
【0009】
(2)前記各脚片の先端には、前記圧入部が前記スルーホールに圧入されて前記各脚片の先端が拡がった場合に、前記スルーホールの裏面側の孔縁に面接触して係止される係止部が形成されている。
各脚片の先端に設けられた係止部がスルーホールの裏面側の孔縁に面接触することにより、より確実な抜け止めが図られる。
【0010】
(3)前記各脚片における基端部の外縁には、前記スルーホールの表面側の孔縁に当接して前記各脚片の挿入を規制するストッパが形成されている。
圧入部が挿入方向に抜けることも併せて防止できる。
(4)前記圧入部は、一対の前記脚片が二股状に延出形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本明細書によって開示されるプレスフィット端子によれば、電気接続の高い信頼性を確保した上で、スルーホールからの抜け防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係るプレスフィット端子をスルーホールに圧入する前の状態を示す一部切欠正面図
図2】その圧入完了時の一部切欠正面図
図3図2のIII−III線拡大断面図
図4】実施形態2のプレスフィット端子をスルーホールに圧入する前の状態を示す一部切欠正面図
図5】その圧入完了時の一部切欠正面図
図6】実施形態3のプレスフィット端子をスルーホールに圧入する前の状態を示す一部切欠正面図
図7】その圧入完了時の一部切欠正面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図3に基づいて説明する。本実施形態では、図1に示すように、複数本(同図では1本のみ)のプレスフィット端子10が、コネクタハウジングCHの一面(下面)から並んで突出されており、各プレスフィット端子10が、回路基板1に形成された対応するスルーホール2内に圧入されるようになっている。スルーホール2の内周面には、メッキ層からなる接点部3が形成されている。
【0014】
プレスフィット端子10は、導電性に優れた金属板をプレス加工することによって、図1に示すような形状に形成されている。プレスフィット端子10は全体としては、角棒状をなす基部11の先端(下端)に、スルーホール2に圧入される圧入部12が設けられた形状である。
【0015】
基部11は、所定長さがコネクタハウジングCHの下面から垂下して突出している。この基部11の下端から、一対の脚片13が二股状に延出形成されることにより、圧入部12が構成されている。
脚片13は、上記の基部11よりも細い角棒状をなし、長さ方向の中央部が外側に膨出した(膨出部14)略弧状に形成され、かつ、それぞれの先端15が互いに交差して閉じた形態を採っている。
【0016】
ここで、自然状態における圧入部12の最大幅W1(両脚片13の膨出部14間の寸法)が、スルーホール2の直径Dよりも大きく設定されている(W1>D)ことに加え、両脚片13の閉じた先端15のなす幅W2が、スルーホール2の直径Dよりも小さく設定されている(W2<D)。
【0017】
また、詳しくは後記するように、圧入部12がスルーホール2に圧入されると、両脚片13が互いに接近する方向に弾性変形することに伴い、両脚片13の先端15が開くように変位するのであるが、図2に示すように、圧入部12が正規量圧入された場合における両脚片13の開いた先端15のなす幅W3が、スルーホール2の直径Dよりも大きくなるように設定されている(W3>D)。言い換えると、圧入部12が正規量圧入された場合には、両脚片13の先端15は、スルーホール2の裏面側の孔縁に係止可能な位置まで拡がる設定となっている。
なお、図3に示すように各脚片13におけるスルーホール2の接点部3と接触する角部には、R面17が形成されている。
【0018】
続いて、本実施形態の作用及び効果を説明する。
プレスフィット端子10は、図1の矢線に示すように、圧入部12における両脚片13の先端15が交差して閉じた下端側からスルーホール2に挿入され、挿入が進むと、両脚片13が互いに接近する方向に弾性変形しつつ圧入され、それに伴い両脚片13の交差した先端15が次第に開く。圧入される間、両脚片13の所定の角部が接点部3を摺接することになるが、同角部がR面17とされているから、エッジである場合と違って接点部3を縦方向に沿って傷付けるといったことがない。
【0019】
図2に示すように、圧入部12が正規位置まで挿入されて停止され、すなわち圧入が完了すると、両脚片13の膨出部14付近が、復元弾力によりスルーホール2の内周に形成された接点部3の上端部に押し付けられて、電気的な接続が取られる。それとともに、両脚片13の先端15がスルーホール2の裏面側の孔縁に係止可能な位置まで拡がった状態となる。
【0020】
そのため、振動や衝撃等により圧入部12に対してスルーホール2から抜ける方向(図2の上方)の力が作用した場合に、両脚片13の拡がった先端15がスルーホール2の裏面側の孔縁に係止し、抜けが防止される。しかも、抜止用の爪部を設けた場合と違って、尖った部位でスルーホール2の内周を擦ることがないから、接点部3を構成するメッキ層を剥がすことが抑制され、プレスフィット端子10の圧入部12とスルーホール2の接点部3との間を、高い信頼性を持って電気接続することができる。
【0021】
<実施形態2>
次に、実施形態2を図4及び図5によって説明する。この実施形態2のプレスフィット端子10Aでは、圧入部12Aの形状に変更が加えられている。以下、変更点を主に説明し、実施形態1と同一機能を備える部材、部位については、適宜に同一符号を付すことで、説明を簡略化または省略する。
【0022】
圧入部12Aは、図4に示すように、実施形態1と同様に、基部11の下端から、一対の略弧状をなす脚片20が二股状に延出形成され、それぞれの先端21が互いに交差して閉じた形態を採っている。ただし、両脚片20の先端21が上方に折り返されて、先端面22が上方を向いた形状とされている。
【0023】
ここで、自然状態における両脚片20の閉じた先端21のなす幅は、同様にスルーホール2の直径よりも小さく設定されている。一方、圧入部12が正規量圧入された場合には、両脚片20の先端21は、スルーホール2の裏面側の孔縁に係止可能な位置まで拡がる設定となっているが、それに加え、両脚片20の折り返された先端面22が水平姿勢を採るようになっている。したがって、両脚片20の折り返された先端面22が、「係止部」に相当する。
【0024】
この実施形態2のプレスフィット端子10Aによれば、圧入部12Aが正規位置まで圧入されると、図5に示すように、両脚片20の先端が開いて各先端面22がスルーホール2の裏面側の孔縁に面接触して係止する。そのため、圧入部12Aの抜け止めがより確実に図られる。
【0025】
<実施形態3>
図6及び図7は、実施形態3を示す。この実施形態3のプレスフィット端子10Bは、上記実施形態1の変形例とも言うべきものである。
すなわち、圧入部12Bを構成する一対の脚片13には、その基端側の外縁に、スルーホール2の表面側の孔縁に当接して各脚片13の挿入を規制するストッパ25が形成されている。
【0026】
圧入部12が所定位置まで挿入されると、図7に示すように、両脚片13の基端側に設けられたストッパ25がスルーホール2の表面側の孔縁に当接することによって、それ以上の挿入が規制され、正規位置に圧入された状態となる。
両脚片13の先端15がスルーホール2の裏面側の孔縁に係止可能な位置まで拡がった状態となるために、挿入方向と反対側への抜け防止が図られることに加え、両脚片13のストッパ25がスルーホール2の表面側の孔縁に当接していることで、圧入部12が挿入方向に抜けることも併せて防止できる。
【0027】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)実施形態3に示したところの脚片の基端部の外縁にストッパを設けた構造については、実施形態2のプレスフィット端子にも適用することが可能である。
(2)脚片の形状に関し、例えばなだらかな山形をなすものについても、長さ方向の途中位置が外側に膨出した略弧状に相当する。
(3)上記実施形態では、圧入部として、一対の脚片が二股状に延出形成されたものを例示したが、3本以上の脚片が所定の角度間隔を開けて分岐して延出形成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…回路基板
2…スルーホール
3…接点部
10,10A,10B…プレスフィット端子
11…基部
12,12A,12B…圧入部
13…脚片
14…膨出部
15…(脚片13の)先端
20…脚片
21…(脚片20の)先端
22…(脚片20の)先端面(係止部)
25…ストッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7