(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-222715(P2015-222715A)
(43)【公開日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】錫ウィスカの形成を防止するための電気コンタクト要素の製造方法、およびコンタクト要素
(51)【国際特許分類】
H01R 13/03 20060101AFI20151113BHJP
H01R 12/58 20110101ALI20151113BHJP
H01R 43/16 20060101ALI20151113BHJP
【FI】
H01R13/03 D
H01R12/58
H01R43/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-88052(P2015-88052)
(22)【出願日】2015年4月23日
(31)【優先権主張番号】10 2014 005 941.3
(32)【優先日】2014年4月24日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】トス,シュテファン
【テーマコード(参考)】
5E063
5E123
【Fターム(参考)】
5E063GA06
5E063GA08
5E123AB20
5E123BA27
5E123BB12
5E123CB24
5E123CB63
5E123CD01
5E123DB08
(57)【要約】
【課題】錫ウィスカの形成を防止するための電気コンタクト要素の製造方法、およびコンタクト要素を提供すること。
【解決手段】本発明は、特に圧入接続部において錫ウィスカの形成を防止することができる電気コンタクト要素の製造方法に関する。さらに、本発明は、対応するコンタクト要素にも関する。電気コンタクト要素の製造方法は、ベース部材を用意する工程と、少なくとも1つの導電性コンタクト層をベース部材上に形成する工程とを含む。コンタクト層は、凹凸によって隆起され潤滑剤を受容するのに適した外側表面を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気コンタクト要素の製造方法であって、
ベース部材を用意する工程と、
少なくとも1つの導電性コンタクト層を前記ベース部材上に形成する工程とを含み、
前記コンタクト層が、凹凸によって隆起され潤滑剤を受容するのに適した外側表面を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
コンタクト層表面を潤滑剤でコーティングする工程をさらに含む、
請求項1に記載の電気コンタクト要素の製造方法。
【請求項3】
前記コンタクト層表面は、1.5mm2/秒と680mm2/秒の間の動粘度値を有する油の塗布材を備える、
請求項2に記載の電気コンタクト要素の製造方法。
【請求項4】
前記ベース部材は、銅、錫青銅、真鍮、高強度真鍮、CuNi合金、CuMn合金、CuNiSi合金、もしくはCuAl合金、または弱合金化銅合金から製造される、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気コンタクト要素の製造方法。
【請求項5】
前記コンタクト層は、錫無し金属コーティングによって形成される、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気コンタクト要素の製造方法。
【請求項6】
前記錫無し金属コーティングは、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、イリジウム、パラジウム、銀、またはこれらの元素を含む合金を含む、
請求項5に記載の電気コンタクト要素の製造方法。
【請求項7】
前記コンタクト層は、角錐状、円錐形、球形、および/または塊状の隆起を有する、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気コンタクト要素の製造方法。
【請求項8】
前記コンタクト層は電気めっきにより製造され、前記電気めっきのパラメータは前記凹凸が形成されるように選択される、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気コンタクト要素の製造方法。
【請求項9】
前記コンタクト層の前記隆起の高さが、0.4μmと10μmの間、好ましくは0.8μmと5μmの間の値を有する、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気コンタクト要素の製造方法。
【請求項10】
少なくとも1つの中間層が前記ベース部材と前記コンタクト層の間に形成される、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の電気コンタクト要素の製造方法。
【請求項11】
前記中間層は、前記コンタクト層より表面粗さが小さいニッケル層によって形成される、
請求項10に記載の電気コンタクト要素の製造方法。
【請求項12】
導電性のベース部材と、
前記導電性のベース部材の少なくとも一部分上に形成されるコーティングとを有し、
前記コーティングは、前記ベース部材上に形成されるコンタクト層を有し、
前記コンタクト層は、凹凸によって隆起され潤滑剤を受容するのに適した外側表面を有することを特徴とする電気コンタクト要素。
【請求項13】
前記電気コンタクト要素は、1.5mm2/秒と680mm2/秒の間の動粘度値を有する油の塗布材をさらに備える、
請求項12に記載の電気コンタクト要素。
【請求項14】
前記電気コンタクト要素は、
圧入コンタクト要素、プラグタイプのコンタクト要素、射出成形コンタクト要素、はんだ接続部、またはフィルム導体コンタクト要素として形成される、
請求項12または請求項13に記載の電気コンタクト要素。
【請求項15】
前記ベース部材は、銅、錫青銅、真鍮、高強度真鍮、CuNi合金、CuMn合金、CuNiSi合金、もしくはCuAl合金、または弱合金化銅合金から製造される、
請求項12〜14のいずれか1項に記載の電気コンタクト要素。
【請求項16】
前記コンタクト層は、錫無し金属コーティングによって形成される、
請求項12〜15のいずれか1項に記載の電気コンタクト要素。
【請求項17】
前記錫無し金属コーティングは、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、イリジウム、パラジウム、銀、またはこれらの元素を含む合金を含む、
請求項16に記載の電気コンタクト要素。
【請求項18】
前記コンタクト層は、角錐状、円錐形、球形、および/または塊状の隆起を有する、
請求項12〜17のいずれか1項に記載の電気コンタクト要素。
【請求項19】
前記コンタクト層の前記隆起の高さが、0.4μmと10μmの間、好ましくは0.8μmと5μmの間の値を有する、
請求項12〜18のいずれか1項に記載の電気コンタクト要素。
【請求項20】
少なくとも1つの中間層が前記ベース部材と前記コンタクト層の間に形成される、
請求項12〜19のいずれか1項に記載の電気コンタクト要素。
【請求項21】
前記中間層は、前記コンタクト層より表面粗さが小さいニッケル層によって形成される、
請求項20に記載の電気コンタクト要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に圧入接続部における錫ウィスカの形成を防止することができる電気コンタクト要素の製造方法に関する。さらに、本発明は、対応するコンタクト要素にも関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路内の導電材料として錫を使用すると、周知のように、いわゆる錫ウィスカ、すなわち無鉛錫コーティングを有する表面上に主に形成される針状の錫の形成物が生じることがある。これらのウィスカは、最大1mm、極端な場合には最大2mmの長さを有することがある。これらは導電性であるため、たとえば組み立てられた印刷回路基板上で短絡を引き起こす可能性がある。この場合、ウィスカが溶解するのではなく最大許容電流密度で折れるまで、10〜50mAの電流がウィスカを流れることがある。小型化がますます進んだ結果、構成部品接続部間の間隔は数百マイクロメートルに減少したが、これは、錫ウィスカが容易に交差することができる距離である。電子回路の電流消費がますます小さくなった結果、錫ウィスカが短絡の際に電流によって破壊さることはもはや通常ないため、自浄効果もない。
【0003】
錫ウィスカの発生は、機械的応力の作用によって、錫層または接続部内の内部機械的応力(これは、次いで錫層に伝達される)によって、高温および高レベルの空気湿度によって助長される。
【0004】
よって、嵌合状態の錫コーティングが永続的な機械的圧力荷重にさらされる場合に、錫ウィスカによる構成部品の故障が特に頻繁に発生する。これは、たとえば圧入コンタクト、フィルム導体コンタクト、および射出成形された錫表面の場合には、通常、発生する。
【0005】
錫ウィスカの形成を低減する方法の一つとして、錫金属コーティングへ鉛を添加することが知られている。しかし、ROHSガイドライン(電気・電子デバイスにおける特定危険物質の使用を制限するための2011年6月8日の欧州議会および欧州連合理事会のガイドライン2011/65/EU、Official Journal EU(2011)No.L174、88〜110頁)の導入により、そのような低ウィスカ錫/鉛合金は、今日、例外的な場合にのみ許されており、中期的には、プラグコネクタのセクタにおける応用は完全に禁止される。たとえば銀/錫など他の錫合金、および様々な焼き戻し工程を使用するとウィスカの成長は抑制されるが、それらはウィスカの成長を完全に防止することはできず、その結果、短絡が形成される未解決のリスクは常に残ったままである。
【0006】
しかし、特に自動車セクタでは、ウィスカ形成に関する安全性は高い要件を満たさなければならない。
【0007】
したがって、相手側コンタクトに対する直近のコンタクト領域内において錫の存在を完全になくし、さらに、たとえば有機表面保護(OSP)または銀コーティング表面を有する印刷回路基板ホールを相手側コンタクトとして選択した場合、ウィスカの形成は完全に防止されうる。
【0008】
この場合、たとえばニッケルを含むコンタクト層が考えられる。しかし、従来のニッケルコーティングは、圧入コンタクトが押圧されるとき非常に高い挿入力が必要とされるため、圧入コンタクトそれ自体が変形したり、印刷回路基板ホールが過大な損傷を受けたりすることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、一方では錫ウィスカの形成を実質的に低減することができるが、他方では十分に大きな保持力を可能にすると同時に圧入コンタクトの製造中に低い押圧力をも可能にする、電気コンタクト要素の製造方法、および電気コンタクト要素が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立特許請求項の主題によって達成される。従属特許請求項は、本発明の有利な発展形態(development)に関する。
【0011】
本発明は、電気コンタクト要素のコンタクト領域内において錫を完全になくし、代わりにウィスカを形成する傾向がない別の金属を使用するという考えに基づく。この金属コーティングに一般的に錫ほど延性がないという欠点は、このコンタクト層が凹凸によって隆起され潤滑剤を永続的に受容するのに適した外側表面を備えることで克服することができる。このように潤滑剤が蓄えられることで、実際の電気接触の際の押圧力を実質的に低減することができる。たとえば相手側コンタクト内への導入中にその効果を示すことができる潤滑剤が導入されるくぼみは、潤滑剤が揮発する、またはクリーピングにより失われるのを防止する。
【0012】
挿入操作中、潤滑剤は、実際の電気接触中に障害とならないように変位される。コンタクト要素の収容中、蓄えられた潤滑剤は、汚染および腐食から保護するという利点をさらにもたらす。
【0013】
具体的には、コンタクト層表面は、1.5mm
2/秒と680mm
2/秒の間の動粘度値を有する油の塗布材を備えてもよい。
【0014】
電気コンタクト要素の製造に考えうるベース部材には、たとえば、銅、錫青銅、真鍮、高強度真鍮、およびCuNi合金、CuMn合金、CuNiSi合金、またはCuAl合金など様々な銅合金が含まれる。さらに、たとえばCuFe2Pなど弱合金化銅合金を使用してもよい。本発明による錫無しコンタクト層金属コーティングは、ニッケルから製造することができることが好ましいが、たとえば、鉄、コバルト、ロジウム、イリジウム、パラジウム、銀、またはこれらの元素を含む合金から製造されてもよい。
【0015】
潤滑剤を蓄えることを可能とする所望の亀裂性表面を製造するために、コンタクト層は、角錐状、円錐形、球形、および/または塊状の隆起を有してもよい。
【0016】
これらの隆起を製造するために様々な可能性がある。まず、コンタクト層は、間に潤滑剤を蓄えることができる対応する隆起を有するように構築しておくことができる。たとえば金属コーティングによってコンタクト層を製造する場合、たとえば酸性度、または様々な結晶化核および触媒の存在など金属コーティングのパラメータを、対応する構造が構築されるように選択することができる。しかし、代わりに、対応する凹凸は、様々な物理的または化学的材料除去方法によって形成することもできる。たとえば、好適なエッチング工程で、対応する表面構造形成を行ってもよい。
【0017】
コンタクト層内の対応する隆起は、0.4μmと10μmの間の典型的な高さを有する。最適な結果は、0.8μmと5μmの間の値について達成することができることを示すことが可能であった。
【0018】
本発明の有利な発展形態によれば、少なくとも1つの中間層をベース部材とコンタクト層の間に形成することができる。ベース部材に対するコンタクト層の付着力を、そのような中間層で改善することができる。たとえば、ニッケルコンタクト層の場合、中間層は、コンタクト層より表面粗さの小さいニッケル層により形成されてもよい。他のコンタクト層金属コーティングの場合、中間層は、同じ材料を含んでも異なる材料を含んでもよい。
【0019】
本発明によるコンタクト要素の有利な特性は、電気コンタクト要素が圧入コンタクト要素、プラグタイプのコンタクト要素、射出成形コンタクト要素、はんだ接続部、またはフィルム導体コンタクト要素である場合、特に効果的に利用することができる。これらの応用例すべてにおいて、ウィスカの形成は、特に問題のある故障の原因である。具体的には、コンタクトばねとの組合せの場合、又は、相手側コンタクトの側で銀層もしくは金層を使用した場合、ウィスカからの完全な解放を達成することができる。または、相手側コンタクト側に錫層がある場合、ウィスカの形成による故障の危険性は、相手側コンタクト側が受ける機械的応力がより小さい場合、やはり実質的に低減することができる。
【0020】
本発明をよりよく理解するために、以下の図に示されている実施形態を参照して、より詳細に説明する。同じ構成要素は、同じ符号および同じ構成要素指定で参照される。さらに、示され述べられている実施形態からの個々の特徴または特徴の組合せもまた、進歩性のある解決策、もしくはそれ自体独立である本発明による解決策となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ベース部材上のコンタクト層の概略断面図である。
【
図2】ベース部材上のコンタクト層および中間層の概略断面図である。
【
図3】潤滑剤でコーティングされる前のコンタクト層表面の電子走査顕微鏡画像である。
【
図4】印刷回路基板内に圧入される前の圧入コンタクトの概略図である。
【
図5】完全に組み立てられた状態の圧入コンタクトの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明について、まず
図1を参照して下記でより詳細に説明することにする。
【0023】
本発明による方法の開始点は、ベース部材100である。そのベース部材100は、ストリップ導体であっても、プラグピンなどであってもよく、たとえば銅、または錫青銅、真鍮、高強度真鍮、もしくはCuNi合金、CuMn合金、CuNiSi合金、CuAl合金など銅合金を含む。
【0024】
本
図1および
図2は、電気接触にとって重要な領域、すなわち、たとえばコンタクトホールと接触する圧入プラグピンの領域だけを示す。本発明によれば、コンタクト層102を形成する錫無し金属コーティングがこの領域内でベース部材100上に形成される。
【0025】
本発明によれば、コンタクト層102の表面は、区画されたくぼみ104および隆起106によって構成される。その亀裂性表面により、潤滑剤(図示せず)は、長時間のわたって蓄えられるようにコンタクト層102の表面上で保持される。隆起106は、それらがどのように製造されるかに応じて非常に異なる形状を有することがある。たとえば、隆起106は、角錐状、円錐形、球形、または塊状の隆起もしくは柱状となるように構築することができる。くぼみ104と隆起106との高さの差は、概して0.4μmと10μmの間である。最適な場合、そのような凹凸は、0.8μmと5μmの間となりうる。1.5mm
2/秒と680mm
2/秒の間の粘度を有する潤滑剤が、このようにして構成されたコンタクト層102の表面とともに使用された場合、油の塗布材を長時間の間蓄えることができ、後続の圧入操作に悪影響を及ぼさない。潤滑剤は、たとえば高粘性の油を含んでもよい。塗布するために、潤滑剤は、担体物質として作用し、塗布後に少なくとも部分的に揮発する高流動性の溶媒と混合される。
【0026】
錫ウィスカ防止のための有意な側面は、(
図1および
図2に示されている)実際の接触の領域において、直接の表面に錫コーティングがないことである。そのために、コンタクト層102は、たとえば鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、イリジウム、パラジウム、銀、またはそのような元素を含む合金から形成される。
【0027】
本発明の有利な実施形態によれば、錫無しコンタクト層102は、電気めっき技術によって堆積される。電気めっき堆積のパラメータ、すなわち浴の組成、触媒または酸の追加、ならびに電流強度および電圧値を、所望の表面粗さが製造されるように調整することができる。
【0028】
しかし、本発明による錫無しコンタクト層102を形成するために、十分な表面粗さを、同時に良好な付着力とともに可能にする他の堆積技法が使用されてもよいことは、当業者にとって自明である。
【0029】
さらに、それに応じて、第2のプロセス工程、たとえばエッチング工程で、滑らかに構築された金属コーティング層を粗くすることもできる。この場合における有意な側面は、錫がコンタクト表面に存在せず、凹凸が、潤滑剤を耐久性がある状態でそこに接着させるのに十分高いものであることである。
【0030】
図2は、
図1の構成の発展形態の概略図である。この実施形態によれば、錫無しコンタクト層102は、ベース部材100上に直接形成されず、中間層108が設けられる。その中間層は、特にコンタクト層102の堆積を容易にし、ベース部材100に対する付着力を改善する。たとえば、滑らかな中間ニッケル層108を、ニッケルコンタクト層102に使用することができる。しかし、当然ながら、他の金属および合金もまた、中間層108として使用することができる。
【0031】
図2の厚さ関係は、縮尺に忠実であると解釈されることは決して意図されていないことに留意されたい。したがって、1〜2μmの厚さを有するニッケルの中間層を基礎層100上に形成し、その後、0.5μmの厚さを有するニッケルから本発明による構成されたコンタクト層102を構築することが特に有利であることが示されている。
【0032】
図3は、対応する隆起106およびくぼみ104を有するニッケルコンタクト層102の電子走査顕微鏡画像である。
【0033】
図4および
図5を参照して、本発明によるコンタクト層構成の有利な応用例についてより詳細に説明するものとする。
【0034】
図4は、印刷回路基板114のコンタクトホール内に挿入される前の圧入コンタクトピン110を示す。具体的には、印刷回路基板114は、導電性ソケット112が嵌合される連続した開口116を有する。さらに、
図4は、圧入ピン110を示し、圧入ピン110は、圧入方向、すなわち矢印Pの方向で、所定の長手方向部分Lにわたって凸状に湾曲する表面部分118を有する。その部分は、互いに対向するコンタクト部材118A、118B上に形成される。これらの部材118A、118Bは、長手方向部分Lの領域内で圧入ピン110上に形成され、圧入ピンの円筒形長手方向部分から外向きに湾曲し、中央の空隙を囲む。
【0035】
図の実施形態では、ソケット112は、純粋な銅から形成される。圧入ピン110のベース部材もまた銅から形成される。また、圧入ピン100のベース部材は、いずれの場合にも、湾曲した表面118の領域において、2つのコンタクト相手側の組立て直前の図のプロセスの状況で油の塗布材を備える本発明によるコンタクト層102を有する。
【0036】
圧入接続をするためには、矢印Pの方向にソケット112によって配向した後、圧入ピン100を印刷回路基板114に対して移動する。この場合、まず、圧入ピン110は、その前方長手方向部分で、ソケット内で中央に置かれる。その前方長手方向部分の外径はソケットの内径より小さい。その圧入方向に引き続き移動するにつれて、湾曲した長手方向部分118が最終的にソケット112内に導入される。この場合、まず、圧入ピン110の外周面とソケット112の内周面120との間の間隔が、両面が互いに接触するまで縮小される。圧入方向に引き続き移動するにつれて、コンタクト部材118A、118Bがまず半径方向内向き方向に弾性変形し、最終的には、さらに引き続き移動するにつれて、外側層の材料が塑性変形する。
【0037】
この状態で、コンタクト層102の表面で保持されている油塗布材が潤滑剤として有効となるため、矢印Pの方向へのさらなる移動の間、必要な力は十分にわずかなまま維持される。引き続き圧入移動するにつれて、圧入ピン110の外周面から材料が剪断され、圧入方向における湾曲118の後方側面とソケット112の内周面120との間に突起122が形成される。このようになされる押圧タイプの接続は、一方では、半径方向内向きに予め張力がかけられたコンタクト部材118A、118Bの弾性復元力によって、また他方では、圧入ピン110の表面材料とソケット112の間の可能な冷間圧接によって維持される。潤滑剤もまたこの操作時に外向きに変位されるため、確実な電気接触が確保される。
【0038】
押圧の作用により機械的に荷重される表面部分118とソケット112の間の電気接触の領域内に錫が含まれない、すなわち印刷回路基板もまた錫を含まない場合、錫ウィスカの発生は、完全確実に防止することができる。印刷回路基板が錫を含む場合、ウィスカの成長は、この新たなコーティングを有するコンタクトを使用することにより実質的に防止される。
【0039】
しかし、本発明によるコンタクト層102は、多数の他の電気接続部とともに有利に使用される。たとえば、プラグタイプのマイクロコネクタのコンタクトばねが、本発明によるコーティングを備えてもよい。さらに、本発明によるコンタクト層は、射出成形コンタクト要素、はんだ接続部、またはフィルム導体コンタクトに使用するのに適している。
【0040】
したがって、コンタクト領域内で錫が完全に省かれる結果、もはやウィスカの成長がない技術を提供することができる。したがって、ウィスカの剪断をも防止することができ、同様に隣接する導電性構造間の橋絡を防止することができる。
【符号の説明】
【0041】
100 ベース部材
102 錫無しコンタクト層
104 くぼみ
106 隆起
108 中間層
110 圧入ピン
112 ソケット
114 印刷回路基板
116 開口
118 表面部分
118A、118B コンタクト部材
120 ソケットの内周面
122 突起
【外国語明細書】