【解決手段】陽極11上に形成される誘電体被膜と陰極との間に導電性固体層を配したコンデンサ素子10に電解液を含浸した電解コンデンサ1において、電解液に(化1)の構造を有するポリオキシアルキレンを添加した。
前記電解液に添加するポリオキシアルキレン中のポリオキシエチレンの比率を30重量%以上40重量%以下にしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電解コンデンサ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態の電解コンデンサを示す側面断面図
【
図2】本発明の実施形態の電解コンデンサのコンデンサ素子を示す斜視図
【
図3】本発明の実施形態の電解コンデンサの製造工程を示す工程図
【
図4】本発明の実施例3に係る電解コンデンサの高温負荷試験による容量変化率の変化を示すグラフ
【
図5】本発明の実施例5に係る電解コンデンサの高温負荷試験による容量変化率の変化を示すグラフ
【
図6】本発明の実施例6に係る電解コンデンサの高温負荷試験による容量変化率の変化を示すグラフ
【
図7】本発明の実施例7に係る電解コンデンサの高温負荷試験による容量変化率の変化を示すグラフ
【
図8】本発明の実施例3に係る電解コンデンサの高温負荷試験によるESRの変化を示すグラフ
【
図9】本発明の実施例5に係る電解コンデンサの高温負荷試験によるESRの変化を示すグラフ
【
図10】本発明の実施例6に係る電解コンデンサの高温負荷試験によるESRの変化を示すグラフ
【
図11】本発明の実施例7に係る電解コンデンサの高温負荷試験によるESRの変化を示すグラフ
【
図12】本発明の実施例3、5、6、7に係る電解コンデンサの高温負荷試験によるESRの変化を示すグラフ
【
図13】本発明の実施例3に係る電解コンデンサの高温負荷試験による損失角の正接の変化を示すグラフ
【
図14】本発明の実施例5に係る電解コンデンサの高温負荷試験による損失角の正接の変化を示すグラフ
【
図15】本発明の実施例6に係る電解コンデンサの高温負荷試験による損失角の正接の変化を示すグラフ
【
図16】本発明の実施例7に係る電解コンデンサの高温負荷試験による損失角の正接の変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は一実施形態の電解コンデンサを示す側面断面図である。電解コンデンサ1は一面に開口部2aを有した有底筒状のアルミニウム等から成る外装ケース2内にコンデンサ素子10が収納される。外装ケース2の開口部2aはゴム製のパッキン3により封口される。
【0016】
図2はコンデンサ素子10の分解斜視図を示している。コンデンサ素子10は陽極箔11及び対向陰極箔12を電解紙等のセパレータ13を介して巻回して形成される。陽極箔11または対向陰極箔12の終端は巻き止めテープ14によって固定される。陽極箔11はアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン等の弁作用金属から成り、表面に誘電体皮膜が形成される。対向陰極箔12はセパレータ13を介して陽極箔11に対向し、アルミニウム等により形成される。
【0017】
陽極箔11及び対向陰極箔12にはそれぞれリードタブ21a、22aを介してリード線21、22が取り付けられている。リード線21、22によって陽極及び陰極の端子部が形成される。
【0018】
コンデンサ素子10内の陽極箔11の誘電体皮膜の表面及び対向陰極箔12の表面には導電性固体層が設けられる。導電性固体層は二酸化マンガン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、導電性ポリマー等により形成される。導電性固体層を形成する導電性ポリマーとして、ポリチオフェン、ポリピロールまたはこれらの誘導体等を用いることができる。特に、ポリエチレンジオキシチオフェンは電気伝導率が高いためより望ましい。
【0019】
コンデンサ素子10には電解液が含浸される。電解液は極性溶媒に有機酸や有機酸塩を溶解して形成される。電解液の極性溶媒は電解コンデンサ1の使用温度域よりも沸点が高く、融点が低くなっている。例えば、−30℃〜150℃の使用温度域に対して、γ−ブチロラクトンを主成分とする極性溶媒を用いることができる。
【0020】
電解液に含まれる有機酸塩として、ボロジサリチル酸トリエチルアミン、ボロジサリチル酸トリメチルアミン、ボロジグリコール酸トリメチルアミン、フタル酸エチルジメチルアミン、フタル酸モノ1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、フタル酸モノ1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウム、またはこれらの混合物等を用いることができる。
【0021】
また、電解液は次式(化1)で示す構造を有するポリオキシアルキレンが添加される。このポリオキシアルキレンはポリオキシプロピレン(PPO)とポリオキシエチレン(PEO)とポリオキシプロピレン(PPO)のブロック共重合体から成る。
【化1】
【0022】
このブロック共重合体として具体的には次式(化2)で示す構造を有するポリオキシアルキレン(HO−PPO−PEO−PPO−H型ポリオキシアルキレン)がある。
【化2】
【0023】
HO−PPO−PEO−PPO−H型ポリオキシアルキレンを電解液に添加した電解コンデンサ1は電解液にポリエチレングリコール(PEG)を添加した電解コンデンサと比較してリフロー時の膨張が抑制される。これにより、電解コンデンサ1の取り付け不良を防止して実装時の歩留り低下を抑制することができる。
【0024】
また、HO−PPO−PEO−PPO−H型ポリオキシアルキレンを電解液に添加した電解コンデンサ1は電解液にポリエチレングリコール(PEG)を添加した電解コンデンサと比較して長期使用時のESR、損失角の正接(tanδ)の増加を抑制して長寿命化を図ることができる。また、次式(化3)で示す構造を有するポリオキシエチレン(PEO)とポリオキシプロピレン(PPO)とポリオキシエチレン(PEO)のブロック共重合体から成るポリオキシアルキレン(HO−PEO−PPO−PEO−H型ポリオキシアルキレン)と比較しても電解コンデンサ1の長期使用時のESR、損失角の正接(tanδ)の増加を抑制することができる。
【0026】
また、(化1)で示す構造を有するポリオキシアルキレンに含まれるポリオキシエチレン(PEO)の比率は10重量%以上40重量%以下が好ましく、30重量%以上40重量%以下がより好ましい。ポリオキシエチレン(PEO)の比率を30重量%以上40重量%以下とすることにより、長期使用時のESRの上昇をより抑制することができる。また、(化1)で示す構造を有するポリオキシアルキレンの平均分子量は1000以上4000以下が好ましく、3000以上4000以下がより好ましい。平均分子量を3000以上4000以下とすることにより、長期使用時のESRの上昇をより抑制することができる。
【0027】
図3は電解コンデンサ1の製造工程を示す工程図である。電解コンデンサ1は素子形成工程、組立工程、洗浄工程、エージング工程及び検査工程を順に行って形成される。また、コンデンサ素子10を形成する素子形成工程は、陽極化成工程、端子形成工程、巻回工程、素子化成工程、導電性固体層形成工程、電解液含浸工程が順に行われる。
【0028】
陽極化成工程では、まず弁作用金属から成る陽極箔11の表面をエッチング処理により粗面化する。エッチング処理を施した陽極箔11は化成液中で陽極酸化され、表面に酸化膜から成る誘電体皮膜が形成される。
【0029】
端子形成工程では陽極箔11及び対向陰極箔12の一端にリード線21、22のリードタブ21a、22aがカシメによって接合される。
【0030】
巻回工程では陽極箔11及び対向陰極箔12がセパレータ13を介して巻回され、終端が巻き止めテープ14によって固定される。これにより、コンデンサ素子10の素体が形成される。
【0031】
素子化成工程ではコンデンサ素子10を化成液中に浸漬して陽極酸化する。これにより、巻回工程等で欠損した誘電体皮膜が修復される。
【0032】
導電性固体層形成工程では、まず導電性固体の粒子やその凝集体を分散媒に分散した分散液にコンデンサ素子10を浸漬して分散液をコンデンサ素子10に含浸させる。次に、コンデンサ素子10を高温で乾燥し、分散媒を除去して導電性固体層を形成する。
【0033】
分散媒は導電性固体を溶解しないことが望ましく、取り扱い性や導電性固体の分散性等を考慮して水を用いるとより望ましい。例えば、ポリエチレンジオキシチオフェンの粒子を水に分散した分散液にコンデンサ素子10を減圧下で浸漬して、分散液をコンデンサ素子10に含浸させることができる。この時、分散媒にドーパント剤を含有してもよい。また、分散媒は例えば、100℃〜200℃でコンデンサ素子10を乾燥させることによって除去することができる。
【0034】
尚、導電性固体層形成工程において重合性モノマーを酸化重合して導電性固体層を形成してもよい。即ち、コンデンサ素子10に重合性モノマー(例えば、エチレンジオキシチオフェンのモノマー)を含浸させる。次に、酸化剤(例えば、パラトルエンスルホン酸鉄のエタノール溶液)にコンデンサ素子10を浸漬して酸化重合を行う。これにより、導電性ポリマー(例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン)から成る導電性固体層が形成される。
【0035】
電解液含浸工程ではコンデンサ素子10を電解液中に浸漬し、コンデンサ素子10に電解液を含浸する。電解液は前述したように、γ−ブチロラクトン等の極性溶媒に有機酸または有機酸塩の電解質が溶解される。極性溶媒中の電解質の濃度は特に制限されるものではなく、例えば、5〜50重量%とすることができる。また、コンデンサ素子10の浸漬時間はサイズに応じて異なるが、例えば、1秒〜数時間、好ましくは1秒〜5分とすることができる。また、コンデンサ素子10の浸漬温度は特に制限されないが、例えば、0℃〜80℃、好ましくは10℃〜40℃とすることができる。
【0036】
組立工程では外装ケース2の開口部2aにパッキン3を装着する。そして、パッキン3に対向した外装ケース2の周面に絞り加工が施されるとともに、開口部2aの周縁にカーリング加工が施される。これにより、コンデンサ素子10を収納した外装ケース2が封口される。
【0037】
洗浄工程では外装ケース2の外面に付着した電解液による汚れが洗浄される。
【0038】
エージング工程では、リード線21、22間に定格電圧または定格電圧よりも高電圧を印加しながら、例えば、約125℃で約1時間のエージング処理を行う。エージング処理によって陽極箔11の切断面やリード線21の接続部分等に生じる誘電体皮膜の欠陥が修復される。
【0039】
検査工程では電解コンデンサ1の外観及び特性が検査される。これにより、電解コンデンサ1が完成する。
【0040】
本実施形態によると、導電性固体層を有するコンデンサ素子10に含浸される電解液に(化1)で示す構造を有するポリオキシアルキレンが添加される。これにより、リフロー時の電解コンデンサ1の膨張を抑制することができる。また、電解コンデンサ1の長期使用時のESR、損失角の正接の増加を小さくできる。従って、電解コンデンサ1の実装時の歩留りを向上するとともに長寿命化を図ることができる。
【化1】
【0041】
また、電解液に添加するポリオキシアルキレンが次式(化2)の構造を有することにより、電解コンデンサ1の長期使用時のESR、損失角の正接(tanδ)の増加の抑制を容易に実現することができる。
【化2】
【0042】
また、電解液に添加するポリオキシアルキレン中のポリオキシエチレンの比率を30重量%以上40重量%以下とすることにより、長期使用時のESRの上昇をより抑制することができる。
【0043】
また、電解液に添加するポリオキシアルキレンの設計分子量を3000以上4000以下とすることにより、長期使用時のESRの上昇をより抑制することができる。
【0044】
なお、本実施形態において、電解コンデンサ1が陽極箔11と対向陰極箔12とを巻回して形成されるが、多孔質の陽極体の表面に誘電体を介して陰極層を設けた電解コンデンサであってもよい。
【0045】
なお、本実施形態において、コンデンサ素子10には電解液に加え、電解液の極性溶媒に対して非相溶性で極性溶媒よりも沸点の高い液剤を含浸してもよい。このような液剤として、グリセリン脂肪酸エステル、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、2−オクチルドデカノール等を主成分とする液剤を用いることができる。グリセリン脂肪酸エステルとして、テトラグリセロールペンタエステル、デカグリセロールデカエステル、デカグリセロールモノエステル、デカグリセロールトリエステル、ヘキサグリセロールモノエステル、ヘキサグリセロールジエステル、ヘキサグリセロールトリエステル、ヘキサグリセロールペンタエステル、テトラグリセロールモノエステル、テトラグリセロールトリエステル等を用いることができる。
【0046】
以下に本実施形態の電解コンデンサ1の特性についての評価を行うために形成した実施例及び比較例について説明する。
【0048】
表1は以下の実施例1〜7及び比較例1〜7の電解液に添加したポリオキシエチレンの構造、電解液に添加したポリオキシエチレンの試料ナンバー(A〜G)、ポリオキシアルキレンを構成するポリオキシエチレンの比率(EO比率)、ポリオキシアルキレンの設計分子量、電解液に対した添加剤の添加量をそれぞれ示している。
【実施例1】
【0049】
実施例1の電解コンデンサ1は完成寸法(外装ケース2に収納した状態での電解コンデンサ1の外形寸法)をφ6.3mm×H6.0mmとし、定格25V−47μFのコンデンサ素子10を作成した。
【0050】
また、導電性固体層形成工程において、ポリエチレンジオキシチオフェンの粒子を水に分散してドーパント剤を含有する分散液(濃度:10質量%)にコンデンサ素子10を25℃で1分間、80kPaの減圧下で浸漬した。分散液を含浸したコンデンサ素子10は分散液から取り出して125℃の乾燥炉内で乾燥し、ポリエチレンジオキシチオフェンの導電性固体層を形成した。
【0051】
電解液含浸工程ではγ−ブチロラクトン及びスルホランと溶媒とし、ボロジサリチル酸トリエチルアミンを電解質として30%溶解した電解液200mgにポリオキシアルキレンから成る添加剤(試料NO:A)を添加し、コンデンサ素子10を浸漬した。次に、外装ケース2にコンデンサ素子10を収納した。
【0052】
エージング工程では電解コンデンサ1に定格電圧の1.15倍の電圧を印加しながら、約125℃で約1時間エージングした。
【0053】
なお、添加剤を電解コンデンサ1の電解液100重量部に対して10重量部添加した。また、添加剤に含まれる上記の式(化2)で示す構造を有し、ポリオキシプロピレン(PPO)、ポリオキシエチレン(PEO)、ポリオキシプロピレン(PPO)のブロック共重合体(表1において、HO−PPO−PEO−PPO−H型と表す)から成る。また、添加剤のEO比率が30〜40%で、設計分子量が3000〜4000である。
【実施例2】
【0054】
実施例2に係る電解コンデンサ1は電解液100重量部に対して実施例1と同じ添加剤を20重量部添加した。その他は実施例1と同一である。
【実施例3】
【0055】
実施例3に係る電解コンデンサ1は電解液100重量部に対して実施例1と同じ添加剤を30重量部添加した。その他は実施例1と同一である。
【実施例4】
【0056】
実施例4に係る電解コンデンサ1は電解液100重量部に対して実施例1と同じ添加剤を40重量部添加した。その他は実施例1と同一である。
【実施例5】
【0057】
実施例5に係る電解コンデンサ1は電解液にHO−PPO−PEO−PPO−H型のポリオキシアルキレンから成る添加剤(試料NO:B)を電解液100重量部に対して30重量部添加した。また、添加剤のEO比率が10〜20%で、設計分子量が2000〜3000である。その他は実施例1と同一である。
【実施例6】
【0058】
実施例6に係る電解コンデンサ1は電解液にHO−PPO−PEO−PPO−H型のポリオキシアルキレンから成る添加剤(試料NO:C)を電解液100重量部に対して30重量部添加した。また、添加剤のEO比率が10〜20%で、設計分子量が2000〜3000である。その他は実施例1と同一である。
【実施例7】
【0059】
実施例7に係る電解コンデンサ1は電解液にHO−PPO−PEO−PPO−H型のポリオキシアルキレンから成る添加剤(試料NO:D)を電解液100重量部に対して30重量部添加した。また、添加剤のEO比率が20〜30%で、設計分子量が1000〜2000である。その他は実施例1と同一である。
【0060】
[比較例1]
比較例1に係る電解コンデンサ1は電解液100重量部に対してポリエチレングリコールから成る添加剤(PEG200、試料NO:E)を10重量部添加した。その他は実施例1と同一である。
【0061】
[比較例2]
比較例2に係る電解コンデンサ1は電解液100重量部に対してポリエチレングリコールから成る添加剤(PEG200、試料NO:E)を20重量部添加した。その他は実施例1と同一である。
【0062】
[比較例3]
比較例3に係る電解コンデンサ1は電解液100重量部に対してポリエチレングリコールから成る添加剤(PEG200、試料NO:E)を30重量部添加した。その他は実施例1と同一である。
【0063】
[比較例4]
比較例4に係る電解コンデンサ1は電解液100重量部に対してポリエチレングリコールから成る添加剤(PEG200、試料NO:E)を40重量部添加した。その他は実施例1と同一である。
【0064】
[比較例5]
比較例5に係る電解コンデンサ1は電解液に添加剤が添加されていない。その他は実施例1と同一である。
【0065】
[比較例6]
比較例6に係る電解コンデンサ1は電解液に次式(化3)で示す構造を有するポリオキシアルキレンから成る添加剤(試料NO:F)を電解コンデンサ1の電解液100重量部に対して30重量部添加した。このポリオキシアルキレンはポリオキシエチレン(PEO)、ポリオキシプロピレン(PPO)、ポリオキシエチレン(PEO)のブロック共重合体(表1において、HO−PEO−PPO−PEO−H型と表す)から成る。また、添加剤のEO比率が10%以下で、設計分子量が1000〜2000である。その他は実施例1と同一である。
【0066】
【化3】
【0067】
[比較例7]
比較例7に係る電解コンデンサ1は電解液にHO−PEO−PPO−PEO−H型のポリオキシアルキレンから成る添加剤(試料NO:G)を電解コンデンサ1の電解液100重量部に対して30重量部添加した。また、添加剤のEO比率が10%以下で設計分子量が1000〜2000である。その他は実施例1と同一である。
【0068】
<電解コンデンサの膨張についての評価>
上記のようにして作成した実施例1〜4及び比較例1〜5の電解コンデンサ1をピーク温度が235℃で210秒のVPS(vapor phase soldering)試験を2回行い、試験前後の電解コンデンサ1の高さ寸法の差から膨張量(mm)を測定した。また、比較例5の膨張量に対する各電解コンデンサ1の膨張量の比を表2にまとめた。
【0069】
【表2】
【0070】
表2によると、電解液にHO−PPO−PEO−PPO−H型のポリオキシアルキレンから成る添加剤を添加した実施例1〜4は比較例1〜4と比較して高温試験後の電解コンデンサ1の膨張が抑制されている。
【0071】
【表3】
【0072】
次に、表3は電解液中の添加剤の添加量が30重量部の実施例3、5〜7の高温負荷試験を行った結果を示している。比較のために電解液中の添加剤の添加量が30重量部の比較例3、6、7及び添加剤を含まない比較例5の高温負荷試験を行った結果を表3に並記している。
【0073】
高温負荷試験は125℃の高温環境下で定格電圧を6000時間まで印加して行い、静電容量変化率(ΔC/C)、ESR、損失角の正接(tanδ)について評価している。各評価は各実施例及び比較例に対して各100個の試料について測定し、平均している。尚、静電容量及びtanδの測定周波数は120Hzであり、ESRの測定周波数は100kHzである。
【0074】
<静電容量変化率の評価>
図4〜
図7はそれぞれ実施例3、5〜7の高温負荷試験時の静電容量変化率の推移を示し、各図において比較例3、5〜7の結果を並記している。これらの図において、縦軸は静電容量変化率(ΔC/C、単位:%)であり、横軸は時間(単位:Hr)である。
【0075】
表3、
図4〜7に示すように、実施例3、5〜7は比較例5と比較して長時間経過後においても静電容量の低下が抑制されている。従って、実施例3、5〜7は高温負荷試験後においても静電容量変化率(%)の低下が抑制され、各実施例は高温環境下で非常に長寿命であることがわかる。
【0076】
<ESRの評価>
図8〜
図11はそれぞれ実施例3、5〜7の高温負荷試験時のESRの推移を示し、各図において比較例3、5〜7の結果を並記している。また、
図12は実施例3、5〜7の結果を並記している。これらの図において、縦軸はESR(単位:mΩ)であり、横軸は時間(単位:Hr)である。
【0077】
表3、
図8〜11に示すように、実施例3、5〜7は比較例3、5〜7と比較して長時間経過後におけるESRの上昇が抑制されている。従って、実施例3、5〜7は高温負荷試験後においてもESRの上昇が抑制され、各実施例は高温環境下で非常に長寿命であることがわかる。
【0078】
また、表3、
図12に示すように、電解液に添加するポリオキシアルキレン中のポリオキシエチレンの比率(EO比率)を30重量%以上40重量%以下とし、設計分子量を3000以上4000以下とした実施例3に係る電解コンデンサ1が実施例5〜7に係る電解コンデンサ1と比較して長期使用時のESRの上昇がより抑制されている。
【0079】
従って、電解液に添加するポリオキシアルキレンの比率(EO比率)を30重量%以上40重量%以下とし、設計分子量を3000以上4000以下とすることにより、長期使用時のESRの上昇をより抑制することができることがわかる。
【0080】
<損失角の正接の評価>
図13〜
図16はそれぞれ実施例3、5〜7の高温負荷試験時の損失角の正接の推移を示し、各図において比較例3、5〜7の結果を並記している。これらの図において、縦軸は損失角の正接(tanδ)であり、横軸は時間(単位:Hr)である。
【0081】
図13〜16に示すように、実施例3、5〜7は比較例3、5〜7と比較して長時間経過後において損失角の正接(tanδ)の上昇が抑制されている。従って、実施例3、5〜7は高温負荷試験後においても損失角の正接(tanδ)の上昇が抑制され、各実施例は高温環境下で非常に長寿命であることがわかる。