特開2015-223016(P2015-223016A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2015223016-ブラシレス直流モータ 図000003
  • 特開2015223016-ブラシレス直流モータ 図000004
  • 特開2015223016-ブラシレス直流モータ 図000005
  • 特開2015223016-ブラシレス直流モータ 図000006
  • 特開2015223016-ブラシレス直流モータ 図000007
  • 特開2015223016-ブラシレス直流モータ 図000008
  • 特開2015223016-ブラシレス直流モータ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-223016(P2015-223016A)
(43)【公開日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】ブラシレス直流モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 17/10 20060101AFI20151113BHJP
【FI】
   H02K17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-105912(P2014-105912)
(22)【出願日】2014年5月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 道代
(72)【発明者】
【氏名】根本 浩臣
【テーマコード(参考)】
5H013
【Fターム(参考)】
5H013EE03
5H013EE06
5H013LL04
5H013LL05
(57)【要約】
【課題】低コスト、かつ高効率運転が可能なブラシレス直流モータを提供する。
【解決手段】主励磁コイル(20)が巻回されるステータ(10)と、前記ステータ(10)に収容され、所定の向きに回転可能なロータ(30)と、前記ロータ(30)の回転軸を中心として対向し、前記ステータに固定される対の副励磁コイル(41〜44)と、を備え、前記副励磁コイル(41〜44)は、電圧が印加されたときに、前記対の副励磁コイル(41〜44)を結ぶ方向に対して直交する方向、かつ前記ロータの回転軸に直交する方向に磁界が発生する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主励磁コイルが巻回されるステータと、
前記ステータに収容され、所定の向きに回転可能なロータと、
前記ロータの回転軸を中心として対向し、前記ステータに固定される対の副励磁コイルと、
を備え、
前記副励磁コイルは、電圧が印加されたときに、前記対の副励磁コイルを結ぶ方向に対して直交する方向、かつ前記ロータの回転軸に直交する方向に磁界が発生することを特徴とするブラシレス直流モータ。
【請求項2】
請求項1において、
前記対の副励磁コイルは、第1サブコイルと第3サブコイルとからなる第1の副励磁コイルと、第2サブコイルと第4サブコイルとからなる第2の副励磁コイルであることを特徴とするブラシレス直流モータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記対の副励磁コイルは、同一の向きに磁界を発生させることを特徴とするブラシレス直流モータ。
【請求項4】
請求項1において、
前記ステータは第一収容部と第二収容部とを有し、前記第一収容部と前記第二収容部とは、隙間をもって形成され、
前記第一収容部または第二収容部の前記ロータに対向する面には、前記隙間と略同一の幅の隙間ができる段差部を有し、
前記段差部を挟んで前記副励磁コイルが設けられることを特徴とするブラシレス直流モータ。
【請求項5】
請求項2において、
前記ステータは第一収容部と第二収容部とを有し、前記第一収容部と前記第二収容部とは、隙間をもって形成され、
前記第一収容部または第二収容部の前記ロータに対向する面には、前記隙間と略同一の幅の隙間ができる段差部を有し、
前記段差部に隣接して前記副励磁コイルが設けられることを特徴とするブラシレス直流モータ。
【請求項6】
請求項1または請求項2において、
前記副励磁コイルは、直列に接続されることを特徴とするブラシレス直流モータ。
【請求項7】
請求項1または請求項2において、
前記副励磁コイルは、並列に接続されることを特徴とするブラシレス直流モータ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項において、
前記副励磁コイルは、前記ロータの位置を検出する検出手段であることを特徴とするブラシレス直流モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレス直流モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の電動ポンプには、ブラシ及び整流子を有するブラシ付直流モータが主に用いられていた。ブラシ付直流モータは、低コストかつ構造が単純であるという利点を有する。
これに対し、前記したブラシ及び整流子に代えて、スイッチング素子のオン/オフを電気的に制御することで矩形波電圧をコイルに印加するブラシレス直流モータが知られている。ブラシレス直流モータを用いることで、その使用期間に関わらず、前記した電気的接続の信頼性を維持できる。
なお、従来のブラシレス直流モータは、三相交流電源を用いるものと単相交流電源を用いるものがある。
三相のブラシレス直流モータは、互いに位相の異なる矩形波電圧を三相コイルに印加することで、回転磁界を発生させる構成になっている。この場合、三相コイルに正負の電圧を印加するため6個のスイッチング素子(例えば、FET:Field effect transistor)が必要となる。
また、単相のブラシレス直流モータは、交番磁界となるので、そのままでは起動できないために、補助コイル(隈取コイル)を用いている。
特許文献1には、隈取コイルが巻回されるステータと、このステータのロータ収容孔に挿入されて回転駆動するロータと、ステータを励磁する励磁コイルと、を備えた隈取モータについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5090855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ブラシ付直流モータは、整流子との機械的接触によって、ブラシが経年劣化し、ブラシ・整流子間の電気的接続に不具合が生じるという欠点がある。
また、三相のブラシレス直流モータは、前記したように三相コイルに正負の電圧を印加するため6個のスイッチング素子が必要となるため、ブラシ付直流モータよりも製造コストが高くなるという欠点がある。
また、特許文献1に記載された隈取モータは、起動用のための補助コイル(隈取コイル)をさらに必要とすることにより、製造コストが高くなるという欠点がある。また、一周期のうちに隈取コイルに誘起電流が流れない期間では、ロータに負トルクが発生するため、運転効率が低いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、低コストかつ高効率運転が可能なブラシレス直流モータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明を以下のような構成にした。
すなわち、本発明のブラシレス直流モータは、主励磁コイルが巻回されるステータと、前記ステータに収容され、所定の向きに回転可能なロータと、前記ロータの回転軸を中心として対向し、前記ステータに固定される対の副励磁コイルと、を備え、前記副励磁コイルは、電圧が印加されたときに、前記対の副励磁コイルを結ぶ方向に対して直交する方向、かつ前記ロータの回転軸に直交する方向に磁界が発生することを特徴とする。
また、その他の手段は、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低コストかつ高効率運転が可能なブラシレス直流モータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係るブラシレス直流モータの回転軸に直角方向の断面を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るブラシレス直流モータの回転動作原理について説明する図であり、(a)は第1の安定点におけるメインコイルの電流とロータの位置と各主磁束を示し、(b)は第2の安定点におけるロータの位置と各主磁束を示し、(c)は第3の安定点におけるメインコイルの電流とロータの位置と各主磁束を示し、(d)は第4の安定点におけるロータの位置と各主磁束を示している。
図3】本発明の第2実施形態に係るブラシレス直流モータの回転軸に直角方向の断面を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るブラシレス直流モータの回転動作原理について説明する図であり、(a)は第1の安定点におけるメインコイルの電流とロータの位置と各主磁束を示し、(b)は第2の安定点におけるロータの位置と各主磁束を示し、(c)は第3の安定点におけるメインコイルの電流とロータの位置と各主磁束を示し、(d)は第4の安定点におけるロータの位置と各主磁束を示している。
図5】本発明の第2実施形態に係るブラシレス直流モータのサブコイルを直列に接続した場合のサブコイルの誘起電流とメインコイルに印加する電圧の関係を示す模式図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るブラシレス直流モータのサブコイルを並列に接続した場合のサブコイルの誘起電流とメインコイルに印加する電圧の関係を示す模式図である。
図7】比較例のブラシレス直流モータの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施するための形態(以下、実施形態と称す)について、適宜、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
(第1実施形態)
<ブラシレス直流モータの構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るブラシレス直流モータ1の回転軸に直角方向の断面を示す図である。
図1において、ブラシレス直流モータ1は、ロータ30がステータ10に収容されたインナーロータ型構造を呈し、ステータ10の内部(回転軸Kを基準として径方向内側)にロータ30が回転自在に軸支されている。なお、回転軸Kには、負荷(不図示)が連結される。
また、ブラシレス直流モータ1は、メインコイル(主励磁コイル)20が巻回されたステータ10と、ステータ10に収容され左回りに回転可能なロータ30と、ステータ10に固定される4つのサブコイル41〜44を備えている。
以上の構成により、ブラシレス直流モータ1は、メインコイル20に流れる電流に応じた磁束と、ステータ10に固定される4つのサブコイル41〜44の磁束と、の合成磁束によってトルクを発生させ、ロータ30を左回り(反時計回り)に回転駆動させる機能を有している。なお、動作の詳細は後記する。
【0011】
《ステータ》
ステータ10は、径方向内側にロータ30を収容する磁性体(例えば、ケイ素鋼板)であり、コイル巻回部11と、第1収容部121、122と、第2収容部131、132と、第1接続部14と、第2接続部15とを備えている。
コイル巻回部11は、左右方向に延びる棒状部材であり、メインコイル20が巻回されている。
なお、メインコイル20については、メインコイル20の中央の断面ではなく側面(紙面手前側)から見た図を示している。メインコイル20の中央の断面を示す図は、例えば後記する図2(a)におけるメインコイル20(および上側コイル20a、下側コイル20b)に示している。
上部の第1収容部121と下部の第1収容部122とからなる第1収容部121、122は、断面視で概ねC字状を呈し、回転軸Kと平行に(つまり、紙面手前側・奥側に)延びている。第1収容部121、122は、第1接続部14を介してコイル巻回部11の左端に接続されている。
【0012】
上部の第2収容部131と下部の第2収容部132とからなる第2収容部131、132は、断面視で概ね逆C字状を呈し、回転軸Kと平行に延びている。第2収容部131、132は、第2接続部15を介してコイル巻回部11の右端に接続されている。
つまり、第1接続部14、第2接続部15を介してコイル巻回部11と一体成形された第1収容部121、122及び第2収容部131、132は、ロータ30を左右から挟み込むように、回転軸Kを中心とする円柱状の収容空間を形成している。
なお、上部の第1収容部121は、上端に向かうにつれて肉薄に形成されている。また、下部の第1収容部122は、下端に向かうにつれて肉薄に形成されている。これによって、第1収容部121、122の上端付近・下端付近を透る磁束の量を制限できる。また、第2収容部131、132についても同様である。
なお、上下方向、左右方向は、図1に付記した方向とする。
【0013】
また、上部の第1収容部121の上端と、上部の第2収容部131の上端とは、左右方向において、所定の距離(間隔)L3だけ離間している。
同様に、下部の第1収容部122の下端と、下部の第2収容部132の下端とは、左右方向において、所定の距離(間隔)L3だけ離間している。
これらの離間によって、メインコイル20の電流に伴う磁束がロータ30を透り抜けるようにしている。換言すると、メインコイル20の電流に伴って生じる磁束が、ステータ10内のみで閉じないようにしている。
上下の第1収容部121、122の間には、段差部12dが形成されている。
上下の第2収容部131、132の間には、段差部13dが形成されている。
段差部12d、13dは、上下方向にL4の距離(間隔)がある。
なお、段差部12d、13dによる隙間を設けることで、ロータ30が回転する際のトルクの脈動を低減することが出来る。また、段差部12d、13dによる隙間を設けることで、磁界が作用する幅を大きくすることが出来る。
なお、前記の上部の第1収容部121と上部の第2収容部131との上端の間の距離(間隔)L3と、前記の上下の第1収容部121、122の間の段差部12dの上下方向の距離(間隔)L4とは、概ね等しい。
【0014】
メインコイル20が巻回された左端の下側の近傍で、上部の第1収容部121の磁性体の一部が切欠けた第1ステータ切欠部61がある。
また、メインコイル20が巻回された概ね中央の下側の近傍で、上部の第1収容部121の磁性体の一部が切欠けた第2ステータ切欠部62がある。
第1ステータ切欠部61は、磁気抵抗が高い高磁気抵抗部の役目をしており、ロータ30が回転する際のトルクの脈動を低減する。
【0015】
サブコイル41、42は、それぞれ上部の第1収容部121と上部の第2収容部131に上下方向に巻回されている。
サブコイル43、44は、それぞれ下部の第1収容部122と下部の第2収容部132に上下方向に巻回されている。
サブコイル41〜44は、第1実施形態のブラシレス直流モータ1の動作時においては、常に電流が流されて、所定の磁界を形成する。この磁界の形成の仕方の詳細については後記する。
【0016】
なお、サブコイル(第1サブコイル)41とサブコイル(第3サブコイル)43とによって、サブコイル41とサブコイル43とを透る磁界(磁束)が発生するので、サブコイル41とサブコイル43とを併せてひとつの励磁コイルとみなすこともできる。このサブコイル41とサブコイル43とを併せた励磁コイルを第1の副励磁コイルと呼称する。
また、同様にサブコイル(第2サブコイル)42とサブコイル(第4サブコイル)44とを併せた励磁コイルを第2の副励磁コイルと呼称する。
図1の構成においては、第1の副励磁コイルであるサブコイル41、43と、第2の副励磁コイルであるサブコイル42、44とは、ロータ30の回転軸Kを中心として対向している。
また、サブコイル41のコイル中心における磁界の方向を模式的に示したのが磁束4001である。サブコイル43のコイル中心における磁界の方向を模式的に示したのが磁束4003である。サブコイル41とサブコイル43とによって構成される第1の副励磁コイルの第1接続部14における磁界の方向を模式的に示したのが磁束4013である。つまり、磁束4013は、サブコイル41とサブコイル43の磁界が合成されて形成されている。
また、サブコイル42のコイル中心における磁界の方向を模式的に示したのが磁束4002である。サブコイル44のコイル中心における磁界の方向を模式的に示したのが磁束4004である。サブコイル42とサブコイル44とによって構成される第2の副励磁コイルの第2接続部15における磁界の方向を模式的に示したのが磁束4024である。つまり、磁束4024は、サブコイル42とサブコイル44の磁界が合成されて形成されている。
【0017】
第1の副励磁コイルおよび第2の副励磁コイルの形成する磁界の方向は、場所によって様々に変化するが、第1の副励磁コイルが第1接続部14において発生する磁束4013と、第2の副励磁コイルが第2接続部15において発生する磁束4024は、磁界の向きが同一方向となっている。この第1の副励磁コイルと第2の副励磁コイルがそれぞれ第1接続部14、第2接続部15において、磁界の向きが同一(磁束4013と磁束4024とが同一方向)であることを、単に「第1の副励磁コイルと第2の副励磁コイルは、同一の向きに磁界を発生する」と表記する。すなわち、第1の副励磁コイルと第2の副励磁コイルの磁界の向きを、それぞれ第1接続部14、第2接続部15における磁界の向きで代表して、適宜、表記する。
また、第1の副励磁コイルが第1接続部14において発生する磁束4013と、第2の副励磁コイルが第2接続部15において発生する磁束4024のそれぞれの磁界の向きは、サブコイル41、43とサブコイル42、44とを結ぶ方向に対して直交する方向、かつロータ30の回転軸Kに直交する方向である。
なお、図1における磁束4001〜4004、4013、4024は、前記のように模式的に表記したものであって、より具体的な磁束、磁界については、図2を参照して後記する。
また、図1において、サブコイル41〜44については、サブコイル41〜44のそれぞれの中央の断面ではなく、側面(紙面手前側)から見た図を示している。サブコイル41〜44のそれぞれの中央の断面を示す図は、例えば後記する図2(a)におけるサブコイル41〜44(および上側コイル41a〜44a、下側コイル41b〜44b)に示している。
【0018】
《ロータ》
ロータ30は、ブラシレス直流モータ1内での磁束分布に応じたトルクによって、左回りに回転可能な回転子であり、第1収容部121、122と第2収容部131、132との間の円柱状の収容空間に収容されている。
ロータ30は、ロータ基部31と、ロータ周辺部32a、32bと延出部53と、が一体成形された磁性体(例えば、鉄心)である。
また、ロータ周辺部32aの円周側には、磁気抵抗を高くして、磁束の流入を制限するための空隙である第1ロータ空隙部(高磁気抵抗部)51がある。なお、図1においては、第1ロータ空隙部(高磁気抵抗部)51は、複数の窓状の空隙から構成されている。
また、ロータ周辺部32aの側面には、磁気抵抗を高くして、磁束の流入を制限するための空隙または切欠きである第2ロータ空隙部(高磁気抵抗部)52がある。
【0019】
また、ロータ周辺部32aの円周側の左端には、左回りの回転とする要因となる磁性体の延出部53がある。なお、延出部53の形状は、ロータ周辺部32aの形状に比較すれば、細い形状となっている。この細い形状とするのは、必要以上の磁束が透るのを避けるためである。
また、延出部53は、先端(左端)に行くにしたがって、ステータ10の円周上の内径から離れる形状となっている。この理由は、ロータ30が回転する際のトルクの脈動を軽減するためである。
なお、ロータ周辺部32bについても、第1ロータ空隙部51、第2ロータ空隙部52、延出部53が同様に備えられている。なお、ロータ周辺部32a、32bの形状は、回転軸Kに基づいて点対称である。
また、断面視において、延出部53、第1ロータ空隙部51、第2ロータ空隙部52は、ロータ30のロータ周辺部32a(32b)の左端側に形成されている。このように、ロータ周辺部32a(32b)の左端側に形成されることによって、ロータ30が左回転の動作に適した構造となる。
【0020】
<回転動作原理>
次に、ブラシレス直流モータ1の回転動作原理について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係るブラシレス直流モータ1の回転動作原理について説明する図であり、(a)は第1の安定点(1極目)におけるメインコイルに電流を第1方向に流したときのロータの位置とロータとステータの主磁束を示し、(b)は第2の安定点(2極目)におけるロータの位置とステータの主磁束を示し、(c)は第3の安定点(3極目)におけるメインコイルに電流を第2方向に流したときのロータの位置とロータとステータの主磁束を示し、(d)は第4の安定点(4極目)におけるロータの位置とロータおよびステータの主磁束を示している。
【0021】
また、図2(a)、(b)、(c)、(d)において、ロータとステータにおいては、サブコイル41〜44とステータ10とロータ30とメインコイル20とによる磁束分布の概要を、複数の細線により示している。なお、ロータ30の回転に寄与しない漏洩磁束については、表記を省略している。また、細線による磁束分布のみでは、その作用がわかりにくいこともあるので、磁束分布により表記された磁束を合成したものを「主磁束」として表記する。
この主磁束として、サブコイル41、43とステータ10(第1収容部121、122)とで閉じる主磁束202、212、222、232として、太い線で表記している。サブコイル42、44とステータ10(第2収容部131、132)とで閉じる主磁束を主磁束201、211、221、231として、太い線で表記している。
【0022】
また、メインコイル20とステータ10とロータ30とで閉じる主磁束を、主磁束301、311として、太い線で表記している。
また、サブコイル41、43と、ステータ10とロータ30とで閉じる主磁束を、主磁束402として、太い線で表記している。サブコイル42、44と、ステータ10とロータ30とで閉じる主磁束を、主磁束401として、太い線で表記している。
また、サブコイル42とサブコイル43は、第1方向(サブコイルの上側コイル42a、43aにおいて紙面裏から表の方向、サブコイルの下側コイル42b、43bにおいて紙面表から裏の方向)に電流が流れている。サブコイル41とサブコイル44は、第2方向(サブコイルの上側コイル41a、44aにおいて紙面表から裏の方向、サブコイルの下側コイル41b、44bにおいて紙面裏から表の方向)に電流が流れている。
【0023】
以上により、サブコイル41、43の対で発生する磁界が左回転であり、サブコイル42、44の対で発生する磁界が右回転である。
なお、サブコイル41、43の対で主磁束202、212、222、232を発生しているので、前記したように、サブコイル41、43を併せて、ひとつの励磁コイルと見なして、第1の副励磁コイルとする。
また、同様に、サブコイル42、44の対で主磁束201、211、221、231を発生しているので、前記したように、サブコイル42、44を併せて、ひとつの励磁コイルと見なして、第2の副励磁コイルとする。
また、メインコイル(主励磁コイル)20に第1方向(上側コイル20aにおいて紙面裏から表の方向、下側コイル20bにおいて紙面表から裏の方向)に電流を流すことと、第2方向(上側コイル20aにおいて紙面表から裏の方向、下側コイル20bにおいて紙面裏から表の方向)に電流を流すことを切り換えることを、以上のサブコイル41〜44(第1、第2の副励磁コイル)とを組み合わせることによって、ロータ30が第1〜第4の安定点を有することに相当する4極の磁界を発生させることができる。
【0024】
《第1の安定点(1極目)》
図2(a)においては、メインコイル20に第1方向に電流が流れている。そのため、主磁束301がメインコイル20とステータ10とロータ30との間を通るように形成されている。また、サブコイル41、43(第1の副励磁コイル)とステータ10とで閉じる主磁束が主磁束202として形成されている。また、サブコイル42、44(第2の副励磁コイル)とステータ10とで閉じる主磁束がそれぞれ主磁束201として形成されている。
このとき、ロータ30には、メインコイル20による磁界(主磁束)によって右回転する力(トルク)と、サブコイル41、43およびサブコイル42、44による磁界(主磁束)によって左回転する力(トルク)とが均衡するトルクバランスが形成され、回転しない第1の安定点(1極目)となっている。
その後、メインコイル20に第1方向に流れていた電流が切られると、前記の均衡が破れてサブコイル41、43およびサブコイル42、44による磁界(主磁束)に引かれて左回転の方向に動きだす。
なお、ロータ周辺部32aの円周側の左端に備えられた磁性体の延出部53(図1)は、この左回転の動きに対して、より効果的に作用する。
【0025】
《第2の安定点(2極目)》
図2(b)は、前記したように、第2の安定点(2極目)におけるロータ30の位置と主磁束211、212とを示している。
図2(b)においては、メインコイル20には電流を流していない。そのため、ロータ30は、サブコイル41、43およびサブコイル42、44による磁界(主磁束)の磁力に引かれる。
つまり、図2(b)に示した状態において、ロータ周辺部32aがサブコイル41、43による磁界(主磁束)と径方向で重なり合っている。そのため、サブコイル41、43による磁界(主磁束)との間で磁気的な接続を促し、主磁束212が形成される。
また、ロータ周辺部32bがサブコイル42、44による磁界(主磁束)と径方向で重なり合っている。そのため、サブコイル42、44による磁界(主磁束)との間で磁気的な接続を促し、主磁束211が形成される。
これらの主磁束212と主磁束211が形成されることによって、図2(b)においてトルクバランスが形成され、第2の安定点(2極目)となる。
その後、メインコイル20に第2方向に電流が流れると、前記の均衡が破れてメインコイル20による磁界(主磁束)に引かれて左回転の方向に動きだす。
【0026】
《第3の安定点(3極目)》
図2(c)は、前記したように、第3の安定点(3極目)におけるメインコイル20に電流を第2の方向に流した状態を図示している。なお、第2の方向である上側コイル21aは紙面手前側から奥側に、下側コイル21bは紙面奥側から手前側を意味している。
このメインコイル20に電流を第2の方向に流したことによって、新たな主磁束311が、ステータ10とサブコイル41、43とロータ30とを介して形成される。
このメインコイル20に流れる電流による主磁束311とサブコイル41、43とサブコイル42、44による主磁束222、221とによって、ロータ30は、トルクバランスが形成され、第3の安定点(3極目)となる。
その後、メインコイル20に第2方向に流れていた電流が切られると、前記の均衡が破れてサブコイル41、43とサブコイル42、44による磁界(主磁束)に引かれて左回転の方向に動きだす。
【0027】
《第4の安定点(4極目)》
図2(d)は、前記したように、第4の安定点(4極目)におけるロータ30の位置とサブコイル41、43とサブコイル42、44による主磁束232、231と、ロータ30を介する主磁束402、401とを示している。
図2(d)においては、メインコイル20には電流を流していない。そのため、ロータ30は、サブコイル41、43とサブコイル42、44との磁力によって、トルクバランスが形成され、第4の安定点(4極目)となる。
つまり、図2(d)に示した状態において、ロータ30を介した主磁束401と主磁束402とによって、ロータ30が左回転する力と右回転する力とのトルクバランスが形成される。
その後、メインコイル20に第1方向に電流が流れると、第4の安定点(4極目)におけるトルクバランスは崩れて、ロータ30は、左回転の方向に動きだす。
【0028】
《再度の第1の安定点(1極目)》
メインコイル20に第1方向に電流が流れると、図2(a)に示した状態に戻る。なお、このときロータ30は180度の回転である。ロータ30が完全に元の状態(360度)に戻るには、さらに図2(a)〜図2(d)の動作をする必要がある。しかしながら、ロータの形状は、回転軸Kに基づいて点対称であるため、180度先の別の安定点に回転しても、外観上は区別がない。したがって、実質的に重複する説明は省略する。
【0029】
以上のように、メインコイル20に交互(第1の方向、第2の方向)に電流を流すことにより、ブラシレス直流モータ1は図2の(a)→(b)→(c)→(d)→(a)・・・の順に左回転する。
また、このときのメインコイル20の制御を1ステップごとに行い、安定点ごとに止めることもできる。また、メインコイル20における電流の反転を連続的に行い、連続的な左回転を行うこともできる。
【0030】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図3は、本発明の第2実施形態に係るブラシレス直流モータ2の回転軸に直角方向の断面を示す図である。
図3において、ブラシレス直流モータ2は、ロータ30がステータ10に収容されたインナーロータ型構造を呈し、ステータ10の内部(回転軸Kを基準として径方向内側)にロータ30が回転自在に軸支されている。なお、回転軸Kには、負荷(不図示)が連結される。
また、ブラシレス直流モータ2は、メインコイル(主励磁コイル)20が巻回されたステータ10と、ステータ10に収容され左回りに回転可能なロータ30と、ステータ10に固定される2つのサブコイル45、46を備えている。
【0031】
なお、図3の構成においては、サブコイル45は、第1の副励磁コイルであり、サブコイル46は、第2の副励磁コイルである。
また、第1の副励磁コイルであるサブコイル45は、第2の副励磁コイルであるサブコイル46と、ロータ30の回転軸Kを中心として対向して向き合い、サブコイル45、46(対の副励磁コイル)は、サブコイル45とサブコイル46を結ぶ方向に対して直交する方向、かつロータ30の回転軸Kに直交する方向に磁界が発生する。
以上の構成により、ブラシレス直流モータ2は、メインコイル(主励磁コイル)20に流れる電流に応じた磁束と、ステータ10に固定される2つのサブコイル45、46(第1、第2の副励磁コイル)の磁束と、の合成磁束によってトルクを発生させ、ロータ30を左回り(反時計回り)に回転駆動させる機能を有している。なお、動作の詳細は後記する。
【0032】
《ステータ》
ステータ10は、径方向内側にロータ30を収容する磁性体(例えば、ケイ素鋼板)であり、コイル巻回部11と、第1収容部12A、12Bと、第2収容部13A、13Bと、第1接続部14と、第2接続部15とを備えている。
コイル巻回部11は、左右方向に延びる棒状部材であり、メインコイル20が巻回されている。
なお、メインコイル20については、メインコイル20の中央の断面ではなく側面(紙面手前側)から見た図を示している。メインコイル20の中央の断面を示す図は、例えば後記する図4(a)におけるメインコイル20(および上側コイル20a、下側コイル20b)に示している。
上部の第1収容部12Aと下部の第1収容部12Bとからなる第1収容部12A、12Bは、断面視で概ねC字状を呈し、回転軸Kと平行に(つまり、紙面手前側・奥側に)延びている。第1収容部12A、12Bは、第1接続部14を介してコイル巻回部11の左端に接続されている。
【0033】
上部の第2収容部13Aと下部の第2収容部13Bとからなる第2収容部13A、13Bは、断面視で概ね逆C字状を呈し、回転軸Kと平行に延びている。第2収容部13A、13Bは、第2接続部15を介してコイル巻回部11の右端に接続されている。
つまり、第1接続部14、第2接続部15を介してコイル巻回部11と一体成形された第1収容部12A、12B及び第2収容部13A、13Bは、ロータ30を左右から挟み込むように、回転軸Kを中心とする円柱状の収容空間を形成している。
なお、上部の第1収容部12Aは、上端に向かうにつれて肉薄に形成されている。また、下部の第1収容部12Bは、下端に向かうにつれて肉薄に形成されている。これによって、第1収容部12A、12Bの上端付近・下端付近を透る磁束の量を制限できる。また、第2収容部13A、13Bについても同様である。
なお、上下方向、左右方向は、図3に付記した方向とする。
【0034】
また、上部の第1収容部12Aの上端と、上部の第2収容部13Aの上端とは、左右方向において、所定の距離(間隔)L3だけ離間している。
同様に、下部の第1収容部12Bの下端と、下部の第2収容部13Bの下端とは、左右方向において、所定の距離(間隔)L3だけ離間している。
これらの離間によって、メインコイル20の電流に伴う磁束がロータ30を透り抜けるようにしている。換言すると、メインコイル20の電流に伴って生じる磁束が、ステータ10内のみで閉じないようにしている。
上下の第1収容部12A、12Bの間には、段差部12dが形成されている。
上下の第2収容部13A、13Bの間には、段差部13dが形成されている。
段差部12d、13dは、上下方向にL4の距離(間隔)がある。
なお、段差部12d、13dによる隙間を設けることで、ロータ30が回転する際のトルクの脈動を低減することが出来る。また、段差部12d、13dによる隙間を設けることで、磁界が作用する幅を大きくすることが出来る。
なお、前記の上部の第1収容部12Aと上部の第2収容部13Aとの上端の間の距離(間隔)L3と、前記の上下の第1収容部12A、12Bの間の段差部12dの上下方向の距離(間隔)L4とは、概ね等しい。
【0035】
メインコイル20が巻回された左端の下側の近傍で、上部の第1収容部12Aの磁性体の一部が切欠けた第1ステータ切欠部61がある。
また、メインコイル20が巻回された概ね中央の下側の近傍で、上部の第1収容部12Aの磁性体の一部が切欠けた第2ステータ切欠部62がある。
第1ステータ切欠部61は、磁気抵抗が高い高磁気抵抗部の役目をしており、ロータ30が回転する際のトルクの脈動を低減する。
【0036】
サブコイル45は、上部の第1収容部12Aと下部の第1収容部12Bとの間で左右向に巻回されている。
サブコイル46は、上部の第2収容部13Aと下部の第2収容部13Bとの間で左右方向に巻回されている。
サブコイル45、46は、第2実施形態のブラシレス直流モータ2の動作時においては、常に電流が流されて、所定の磁界を形成する。この磁界の形成の仕方の詳細については後記する。
【0037】
なお、図3において、サブコイル45、46については、サブコイル45、46のそれぞれの中央の断面ではなく、側面(紙面手前側)から見た図を示している。サブコイル45、46のそれぞれの中央の断面を示す図は、例えば後記する図4(a)におけるサブコイル45、46(および外側コイル45a、46a、内側コイル45b、46b)に示している。
【0038】
《ロータ》
ロータ30は、ブラシレス直流モータ2内での磁束分布に応じたトルクによって、左回りに回転可能な回転子であり、第1収容部12A、12Bと第2収容部13A、13Bとの間の円柱状の収容空間に収容されている。
ロータ30は、ロータ基部31と、ロータ周辺部32a、32bと延出部53と、が一体成形された磁性体(例えば、鉄心)である。
また、ロータ周辺部32aの円周側には、磁気抵抗を高くして、磁束の流入を制限するための空隙である第1ロータ空隙部(高磁気抵抗部)51がある。なお、図1においては、第1ロータ空隙部(高磁気抵抗部)51は、複数の窓状の空隙から構成されている。
また、ロータ周辺部32aの側面には、磁気抵抗を高くして、磁束の流入を制限するための空隙または切欠きである第2ロータ空隙部(高磁気抵抗部)52がある。
【0039】
以上の第2実施形態のロータ30の構造と機能は、第1実施形態のロータ30の構造と機能と概ね同一であるので、重複する説明は省略する。
【0040】
<回転動作原理>
次に、ブラシレス直流モータ2の回転動作原理について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係るブラシレス直流モータ2の回転動作原理について説明する図であり、(a)は第1の安定点(1極目)におけるメインコイル20に電流を第1方向に流したときのロータの位置とロータ30とステータの主磁束を示し、(b)は第2の安定点(2極目)におけるロータ30の位置とステータの主磁束を示し、(c)は第3の安定点(3極目)におけるメインコイル20に電流を第2方向に流したときのロータの位置とロータ30とステータの主磁束を示し、(d)は第4の安定点(4極目)におけるロータ30の位置とロータ30およびステータの主磁束を示している。
【0041】
また、図4(a)、(b)、(c)、(d)において、ロータ30とステータにおいては、サブコイル45、46とステータ10(図1)とロータ30とメインコイル20とによる磁束分布の概要を、複数の細線により示している。なお、ロータ30の回転に寄与しない漏洩磁束については、表記を省略している。また、細線による磁束分布のみでは、その作用がわかりにくいこともあるので、磁束分布により表記された磁束を合成したものを「主磁束」として表記する。
この主磁束として、サブコイル45とステータ10(第1収容部12A、12B)とで閉じる主磁束242、252、262、272として、太い線で表記している。サブコイル46とステータ10(第2収容部13A、13B)とで閉じる主磁束を主磁束241、251、261、271として、太い線で表記している。
【0042】
また、メインコイル20とステータ10とロータ30とで閉じる主磁束を、主磁束321、331として、太い線で表記している。
また、サブコイル45と、ステータ10とロータ30とで閉じる主磁束を、主磁束404として、太い線で表記している。サブコイル46と、ステータ10とロータ30とで閉じる主磁束を、主磁束403として、太い線で表記している。
また、サブコイル45は、第1方向(サブコイルの内側コイル45bにおいて紙面裏から表の方向、外側コイル45aにおいて紙面表から裏の方向)に電流が流れている。サブコイル46は、第2方向(内側コイル46bにおいて紙面表から裏の方向、外側コイル46aにおいて紙面裏から表の方向)に電流が流れている。
【0043】
サブコイル45において、前記のように内側コイル45bの周囲に主磁束242が生成している。また、外側コイル45aの周囲にも磁束は生成しているが、ロータ30の回転には寄与しないので、図4(a)においては表記を省略している。
また、サブコイル46において、前記のように内側コイル45bの周囲に主磁束241が生成している。また、外側コイル46aの周囲にも磁束は生成しているが、ロータ30の回転には寄与しないので、図4(a)においては表記を省略している。
以上により、ロータ30の回転には寄与する磁束に着目すれば、サブコイル45(第1の副励磁コイル)で発生する磁界(主磁束242)が左回転であり、サブコイル46(第2の副励磁コイル)で発生する磁界(主磁束241)が右回転である。
また、メインコイル(主励磁コイル)20に第1方向に電流を流すことと、第2方向に電流を流すことを切り換えることを、以上のサブコイル45、46(第1、第2の副励磁コイル)とを組み合わせることによって、ロータ30が第1〜第4の安定点を有することに相当する4極の磁界を発生させることが出来る。
【0044】
《第1の安定点(1極目)》
図4(a)においては、メインコイル20に第1方向に電流が流れている。そのため、主磁束321がメインコイル20とステータ10(図1)とロータ30との間を通るように形成されている。また、サブコイル45とステータ10とで閉じる主磁束が主磁束242として形成されている。また、サブコイル46とステータ10とで閉じる主磁束がそれぞれ主磁束241として形成されている。
このとき、ロータ30には、メインコイル20による磁界(主磁束)によって右回転する力(トルク)と、サブコイル45およびサブコイル46による磁界(主磁束)によって左回転する力(トルク)とが均衡するトルクバランスが形成され、回転しない第1の安定点(1極目)となっている。
その後、メインコイル20に第1方向に流れていた電流が切られると、前記の均衡が破れてサブコイル45およびサブコイル46による磁界(主磁束)に引かれて左回転の方向に動きだす。
なお、ロータ周辺部32aの円周側の左端に備えられた磁性体の延出部53(図1)は、この左回転の動きに対して、より効果的に作用する。
【0045】
《第2の安定点(2極目)》
図4(b)は、前記したように、第2の安定点(2極目)におけるロータ30の位置と主磁束251、252とを示している。
図4(b)においては、メインコイル20には電流を流していない。そのため、ロータ30は、サブコイル45およびサブコイル46による磁界(主磁束)の磁力に引かれる。
つまり、図4(b)に示した状態において、ロータ周辺部32aがサブコイル45による磁界(主磁束)と径方向で重なり合っている。そのため、サブコイル45による磁界(主磁束)との間で磁気的な接続を促し、主磁束252が形成される。
また、ロータ周辺部32bがサブコイル46による磁界(主磁束)と径方向で重なり合っている。そのため、サブコイル46による磁界(主磁束)との間で磁気的な接続を促し、主磁束251が形成される。
これらの主磁束252と主磁束251が形成されることによって、図4(b)においてトルクバランスが形成されるのである。
その後、メインコイル20に第2方向に電流が流れると、前記の均衡が破れてメインコイル20による磁界(主磁束)に引かれて左回転の方向に動きだす。
【0046】
《第3の安定点(3極目)》
図4(c)は、前記したように、第4の安定点(3極目)におけるメインコイル20に電流を第2の方向(21a、21b)に流した状態を図示している。なお、第2の方向の上側コイル21aとは紙面手前側から奥側に、下側コイル21bとは紙面奥側から手前側を意味している。
このメインコイル20に電流を第2の方向(21a、21b)に流したことによって、新たな主磁束331が、ステータ10とサブコイル45とロータ30とを介して形成される。
このメインコイル20に流れる電流による主磁束331とサブコイル45とサブコイル46による主磁束262、261とによって、ロータ30は、トルクバランスが形成されるのである。
その後、メインコイル20に第2方向に流れていた電流が切られると、前記の均衡が破れ、サブコイル45とサブコイル46による磁界(主磁束)に引かれて左回転の方向に動きだす。
【0047】
《第4の安定点(4極目)》
図4(d)は、前記したように、第4の安定点(4極目)におけるロータ30の位置とサブコイル45とサブコイル46による主磁束272、271と、ロータ30を介する主磁束404、403とを示している。
図2(d)においては、メインコイル20には電流を流していない。そのため、ロータ30は、サブコイル45とサブコイル46との磁力によって、トルクバランスが形成される。
つまり、図2(d)に示した状態において、ロータ30を介した主磁束404と主磁束403とによって、ロータ30が左回転する力と右回転する力とのトルクバランスが形成される。
その後、メインコイル20に第1方向に電流が流れると、第4の安定点(4極目)におけるトルクバランスは崩れて、ロータ30は、左回転の方向に動きだす。
【0048】
《再度の第1の安定点(1極目)》
メインコイル20に第1方向に電流が流れると、図4(a)に示した状態に戻る。なお、このときロータ30は180度の回転である。ロータ30が完全に元の状態(360度)に戻るには、さらに図4(a)〜図4(d)の動作をする必要がある。しかしながら、ロータの形状は、回転軸Kに基づいて点対称であるため、180度先の別の安定点に回転しても、外観上は区別がない。したがって、実質的に重複する説明は省略する。
【0049】
以上のように、メインコイル20に交互(第1の方向、第2の方向)に電流を流すことにより、ブラシレス直流モータ2は図4の(a)→(b)→(c)→(d)→(a)・・・の順に左回転する。
また、このときのメインコイル20の制御を1ステップごとに行い、安定点ごとに止めることもできるし、また、メインコイル20における電流の反転を連続的に行い、連続的な左回転を行うこともできる。
【0050】
<サブコイルの接続方法による誘起電流の特性>
図3におけるサブコイル45とサブコイル46には、ロータ30の回転によって、誘起電流が発生(誘起)する。
この誘起電流を検出することによって、判定基準以上、もしくは以下(電流閾値、電流偏差閾値)の電流を検出したタイミングで、メインコイル20の電圧通電方向(第1方向、第2方向)を切り換えることで位置センサの代替として用いることができる。したがって、位置センサを廃止することができる。
すなわち、図3におけるサブコイル45とサブコイル46(および図1におけるサブコイル41〜44)は、ロータ30の位置を検出する検出手段でもある。
サブコイル45、46に誘起される電流は、サブコイル45とサブコイル46との接続方法によって変化する。
次に、サブコイル45、46を直列に接続した場合と、並列にした場合の特性について説明する。
【0051】
《サブコイル45、46を直列に接続した場合》
まず、サブコイル45、46を直列に接続した場合のサブコイルの誘起電流について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係るブラシレス直流モータ2のサブコイル45、46を直列に接続した場合のサブコイルの誘起電流とメインコイル20に印加する電圧の関係を示す模式図である。なお、図5の横軸は、ロータ(回転子)30の回転角度(deg)である。
図5において、ロータ(回転子)30の回転角度によって、サブコイル45、46に流れる誘起電流2001が変化している。なお、サブコイル45、46は直列に接続しているので同一の誘起電流(2001)である。
誘起電流2001の最も小さい電流となる変化点2011、および変化点2012を捉えて(検出して)、メインコイル20に印加する電圧1001を切り換えることが可能である。
【0052】
《サブコイル45、46を並列に接続した場合》
次に、サブコイル45、46を並列に接続した場合のサブコイルの誘起電流について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係るブラシレス直流モータ2のサブコイル45、46を並列に接続した場合のサブコイルの誘起電流とメインコイル20に印加する電圧の関係を示す模式図である。なお、図6の横軸は、ロータ(回転子)の回転角度(deg)である。
【0053】
図6において、ロータ(回転子)30の回転角度によって、サブコイル45に流れる誘起電流3001と、サブコイル46に流れる誘起電流3002は、変化している。
誘起電流3001の最も大きな電流となる変化点3011、最も小さい電流となる変化点3012を捉えて(検出して)、メインコイル20に印加する電圧1001の正負を切り換えることが可能である。
また、同様に、誘起電流3002の最も小さな電流となる変化点3021、最も大きな電流となる変化点3022を捉えて(検出して)、メインコイル20に印加する電圧1001を切り換えることが可能である。
さらには、サブコイル45に流れる誘起電流3001と、サブコイル46に流れる誘起電流3002の差分をとれば、変化量(電流の触れ幅)は大きくなり、ステータ位置のセンシング性を向上させることができる。
【0054】
<比較例のブラシレス直流モータ>
本発明の第1、第2実施形態のブラシレス直流モータは、サブコイルを4個もしくは2個、用いている構成であったが、比較例として、磁石(永久磁石)を4個、用いたブラシレス直流モータを説明する。
図7は、比較例のブラシレス直流モータの構成を示す断面図である。
図7において、ブラシレス直流モータ7は、ロータ730がステータ710に収容されたインナーロータ型構造を呈し、ステータ710の内部にロータ730が回転自在に軸支されている。
また、ブラシレス直流モータ7は、励磁コイル720が巻回されたステータ710と、ステータ710に収容され左回りに回転可能なロータ730と、周方向において、略等間隔でステータ710の内面に固定される磁石74a、75a、74b、75bと、を備えている。
以上の構成により、ブラシレス直流モータ7は、励磁コイル720に流れる電流に応じた磁束と、ステータ710の内面に固定される4つの磁石74a、75a、74b、75bの磁束と、の合成磁束によってトルクを発生させ、ロータ730を左回り(反時計回り)に回転駆動させる機能を有している。
【0055】
ステータ710は、径方向内側にロータ730を収容する磁性体(例えば、ケイ素鋼板)であり、コイル巻回部711と、第1収容部712と、第2収容部713と、第1接続部714と、第2接続部715とを備えている。
コイル巻回部711は、左右方向に延びる棒状部材であり、励磁コイル720が巻回されている。
第1収容部712は、断面視で概ねC字状を呈している。第1収容部712は、第1接続部714を介してコイル巻回部711の左端に接続されている。
【0056】
第2収容部713は、断面視で概ね逆C字状を呈している。第2収容部713は、第2接続部715を介してコイル巻回部711の右端に接続されている。
つまり、第1接続部714、第2接続部715を介してコイル巻回部711と一体成形された第1収容部712及び第2収容部713は、ロータ730を左右から挟み込むように、円柱状の収容空間を形成している。
【0057】
また、第1収容部712の上端と、第2収容部713の上端とは、左右方向において、所定の距離(間隔)L6だけ離間している。
同様に、第1収容部712の下端と、第2収容部713の下端とは、左右方向において、所定の距離(間隔)L6だけ離間している。
【0058】
磁石74a、75a、74b、75bは、それぞれ、断面視で円弧状をなす永久磁石である。
磁石74a、75aは、ステータ710の第1収容部712の径方向内側のそれぞれ左上側と左下側に固定して備えられている。
磁石74b、75bは、ステータ710の第2収容部713の径方向内側のそれぞれ右上側と右下側に固定して備えられている。
磁石74a、74bは、ステータ710側がN極であり、ロータ730側がS極である。
磁石75a、75bは、ステータ710側がS極であり、ロータ730側がN極である。
磁石74a、75a、74b、75bはそれぞれ円弧状に形成されている。
また、磁石74aと磁石75aとの間、磁石75aと磁石75bとの間、磁石75bと磁石74bとの間、磁石74bと磁石74aとの間は、それぞれ所定の距離(間隔)L6だけ離間している。
【0059】
ロータ730は、ブラシレス直流モータ6内での磁束分布に応じたトルクによって、左回りに回転可能な回転子であり、第1収容部712と第2収容部713との間の円柱状の収容空間に収容されている。
ロータ730は、一体成形された磁性体(例えば、鉄心)である。
また、ロータ730の周辺部には、磁気抵抗を高くして、磁束の流入を制限するための空隙や切欠きを形成して、トルクの脈動を低減している。
【0060】
なお、図7に示す比較例のブラシレス直流モータにおいても、励磁コイル720に誘起する電流を検出することによって、ロータの回転角度を検知することは可能である。
【0061】
以上の構成においても、高効率運転が可能なブラシレス直流モータが実現する。
しかしながら、図7に示した比較例のブラシレス直流モータでは、磁石が4個必要である。また、磁石がステータ710の内径の多くの部分を占めるように設置されているので、高価な磁石が多量に必要となり、高コストとなる。
また、前記の磁石は、希土類のネオジム(Neodymium、ネオジウム)および鉄・ホウ素を主成分として焼結して製造したネオジム磁石(Neodymium magnet)である。ネオジム磁石の材料は、高価な材料であり、また加工が難しい材料である。すなわち、この材料は硬く、加工が一体成形による製造が困難であるという特徴がある。
また、磁石74a、75a、74b、75bはそれぞれ円弧状に形成されているので、製造上の難易度が高いという問題がある。
すなわち、円弧状の磁石を製造する場合には、まず直方体の磁石を製作し、この直方体の磁石を削ることによって、円弧状に成形するという工程が必要である。
したがって、加工に多大の労力を必要とすることと、この磁石を削りだす工程において、高価な磁石材料を削り滓として、大量の無駄を生ずるという問題がある。
【0062】
<本発明の第1、第2実施形態の比較例に対する効果>
本発明の第1、第2実施形態は、前記の4個の磁石を用いた比較例に対して、次のような効果がある。
<1> 永久磁石では最も磁力が強いとされているネオジム磁石などの高価な磁石を使用しないので、低コストとなる。
<2> サブコイルに流れる誘起電流によって、容易に、かつ安価に回転の位置情報を検出できる。
つまり、比較例においては、励磁コイル720に誘起される電流値でロータの回転角度を検知していたため、電圧が正負交互に印加されて発生する電流値から、回転角によって異なる誘起電流を演算して角度を求める必要があった。そのため複雑な演算をする必要がある。
これに対して、本発明の第1、第2実施形態においては、サブコイル41〜46には一定の電圧が印加されており、この印加電圧から流れる電流は一定である。この一定の電流のなかに重畳される回転角によって異なる誘起電流を検出、演算すればよいので、複雑な演算をすることなくロータの回転角度を算出することができる。
【0063】
<本発明の第1、第2実施形態の特許文献1などの従来技術に対する効果>
<A> 従来技術で用いられていたレゾルバ等の回転角センサが不要となる。すなわち、本発明の第1、第2実施形態では、前記のような位置センサ、位置センサ入出力回路、位置センサ取付用部品を削減でき、大幅なコスト低減ができる。
<B>従来技術で用いられていた起動用のための補助コイル(隈取コイル)が不要であり、ロータに負トルクが発生することもないので、運転効率が高いという効果がある。
【0064】
(その他の実施形態、変形例)
なお、本発明は、以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態や変形例が含まれる。
【0065】
《誘起電流の検出装置》
サブコイル41〜46に流れる誘起電流を検出するにあたっては、様々な方法があるが、例えばシャント抵抗を備え、その両端で発生する電圧で検出する方法がある。
【0066】
《サブコイルの対数》
第1実施形態および第2実施形態では、それぞれサブコイルが2対(4個)、1対(2個)の例を示したが、3対以上で構成してもよい。サブコイルの対数を増やすことによって、ロータのトルクの脈動を低減することができる。
【0067】
《ロータ空隙部の形状》
第1実施形態においては、ロータ30にあるロータ空隙部である第1ロータ空隙部51(図1)は、窓状の空隙として、また、第2ロータ空隙部52(図1)は切欠として説明したが、これらの形状には限定されない。
あるいは、ロータ30にロータ空隙部(51、52)がない場合においても、サブコイル41〜44を用いた本発明の第1実施形態の低コストであって、かつ高効率運転が可能なブラシレス直流モータを提供できるという効果は、同様に期待できる。
【0068】
《ステータの切欠部》
第1実施形態においては、ステータ10の第1ステータ切欠部61について説明したが、高磁気抵抗部であるので、ロータ30のロータ空隙部と同様に、様々な形状の切欠や空隙でよい。
あるいは、ステータ10に第1ステータ切欠部61がない場合においても、サブコイル41〜44を用いた本発明の第1実施形態の低コストであって、かつ高効率運転が可能なブラシレス直流モータを提供できるという効果は、同様に期待できる。
【0069】
《延出部の形状》
第1実施形態においては、延出部53の形状について説明したが、前記した形状に限定されない。延出部53の形状が様々に変形した場合においても、サブコイル41〜44を用いた本発明の第1実施形態の低コストであって、かつ高効率運転が可能なブラシレス直流モータを提供できるという効果は、同様に期待できる。
【符号の説明】
【0070】
1、2 ブラシレス直流モータ
10 ステータ
11 コイル巻回部
121、122、12A、12B 第1収容部(収容部)
131、132、13A、13B 第2収容部(収容部)
12d、13d 段差部
14 第1接続部
15 第2接続部
20 メインコイル(主励磁コイル)
20a、21a、41a、42a、43a、44a 上側コイル
20b、21b、41b、42b、43b、44b 下側コイル
30 ロータ
31 ロータ基部
32a、32b ロータ周辺部
41〜44 サブコイル
45、46 サブコイル(副励磁コイル)
45a、46a 外側コイル
45b、46b 内側コイル
51 第1ロータ空隙部(高磁気抵抗部)
52 第2ロータ空隙部(高磁気抵抗部)
53 延出部
61 第1ステータ切欠部(高磁気抵抗部)
62 第2ステータ切欠部(高磁気抵抗部)
K 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7