(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-223044(P2015-223044A)
(43)【公開日】2015年12月10日
(54)【発明の名称】回路構成体および電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20151113BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20151113BHJP
【FI】
H02G3/16 A
H05K7/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-106803(P2014-106803)
(22)【出願日】2014年5月23日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 登
【テーマコード(参考)】
5E322
5G361
【Fターム(参考)】
5E322AA11
5E322AB01
5E322AB08
5E322EA10
5E322FA04
5G361BA01
5G361BB02
(57)【要約】
【課題】製造コストが低く、放熱性に優れる回路構成体および電気接続箱を提供する。
【解決手段】放熱板と、放熱板に重ねられた絶縁シートと、放熱板に絶縁シートを介して重ねられた回路基板と、を有する回路構成体であって、回路基板はねじ止めにより放熱板に固定されており、絶縁シートと回路基板との間に、熱伝導性部材が配されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱板と、
前記放熱板に重ねられた絶縁シートと、
前記放熱板に前記絶縁シートを介して重ねられた回路基板と、を有する回路構成体であって、
前記回路基板はねじ止めにより前記放熱板に固定されており、
前記絶縁シートと前記回路基板との間に、熱伝導性部材が配されている回路構成体。
【請求項2】
前記回路基板のうち前記放熱板が配される面と反対側の面に電子部品が実装されており、
前記熱伝導性部材は、前記回路基板のうち前記電子部品が実装される領域に対応する領域に設けられている請求項1に記載の回路構成体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回路構成体をケースに収容してなる電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、回路構成体および電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載電装品の通電や断電を実行する装置として、種々の電子部品が実装された回路基板を備える回路構成体をケースに収容してなるものが知られている。
【0003】
このような装置において、回路基板に実装される電子部品は比較的発熱量が大きいため、電子部品から発生した熱がケース内にこもるとケース内が高温になり、ケース内に収容された電子部品の性能が低下する虞があった。
【0004】
そこで従来から、回路基板や電子部品から発生した熱を放熱する様々な構造が提案されている。例えば、回路基板のうち電子部品が配された面の反対側の面に、金属製の放熱部材を設けた構成の回路構成体が提案されている。
【0005】
回路基板と放熱部材とは、まず、放熱部材の一面側に回路基板との間の絶縁性を図るための絶縁層を設け、その後、絶縁層に重ねて熱伝導性の高い接着剤を塗布することにより、互いに接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−164039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した絶縁層としては、例えば、放熱部材の上面に熱硬化性の接着剤を塗布して加熱することにより、絶縁性の薄膜を形成する方法がある。
【0008】
しかし、絶縁層として熱硬化性の接着剤を塗布・硬化させる方法は、大掛かりな装置が必要となるため、製造コストがかかる。そこで、常温で硬化可能な接着剤を使用する方法が考えられるが、そのような接着剤は常温で経時的に硬化してしまうため印刷やスプレー等の工法を適用できず、確実な絶縁性を得るための均一な層を形成するのが困難である。
【0009】
あるいは、両面に粘着性を有する絶縁シートを使用して、絶縁性と、放熱板および回路基板の接着との双方を実行させることも考えられるが、電子部品が実装された回路基板に対してむらなく一定の圧力をかけることは困難であり、放熱部材に対して均一な状態で回路基板を接着させることが難しい。
【0010】
本明細書に開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、製造コストが低く、放熱性に優れる回路構成体および電気接続箱を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に開示される技術は、放熱板と、前記放熱板に重ねられた絶縁シートと、前記放熱板に前記絶縁シートを介して重ねられた回路基板と、を有する回路構成体であって、前記回路基板はねじ止めにより前記放熱板に固定されており、前記絶縁シートと前記回路基板との間に、熱伝導性部材が配されていることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、まず、放熱板と回路基板とは、絶縁シートにより絶縁性が確保される。また、放熱板と回路基板とは、ねじ止めにより、互いに固定される。
【0013】
この時、放熱板と回路基板との間に隙間が生じる場合があり、そのような場合には、熱伝導性が低下する虞がある。しかし、本明細書に開示された技術によれば、放熱板と回路基板との間には熱伝導性部材が配される構成であるから、熱伝導性部材が放熱板および回路基板に密着し、回路基板で発生した熱はこの熱伝導性部材により速やかに放熱板に伝えられ、放熱される。
【0014】
また、回路基板のうち放熱板が配される面と反対側の面に電子部品が実装される場合に、熱伝導性部材は、回路基板のうち電子部品が実装される領域に対応する領域に設ける構成としてもよい。このような構成とすると、使用する熱伝導性部材の量を減らしながらも、高い放熱効果を得ることができる。
【0015】
また、本明細書に開示される技術は、上記回路構成体をケースに収容してなる電気接続箱である。
【発明の効果】
【0016】
本明細書に開示される技術によれば、製造コストが低く、放熱性に優れる回路構成体および電気接続箱を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】絶縁シートに熱伝導性部材を重ねた状態の平面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
一実施形態を
図1ないし
図7によって説明する。
【0019】
本実施形態の電気接続箱10は、回路基板12、および、放熱板25を含む回路構成体11と、回路構成体11を収容する合成樹脂製のケース40と、を備える(
図5参照)。なお、以下の説明においては、
図7における上側を表側又は上側とし、下側を裏側又は下側として説明する。
【0020】
図7に示すように、回路構成体11は、回路基板12と、回路基板12の表面(
図1における上面)に配された電子部品20と、回路基板12の裏面(
図1における下面)に配された放熱板25とを備える。
【0021】
図5に示すように、回路基板12は長方形状をなし、絶縁基板13の表面に、プリント配線技術により図示しない導電回路が形成されるとともに、裏面に、複数のバスバー16が所定のパターンで配索されてなる。複数のバスバー16は概ね矩形状をなしており、金属板材を所定形状にプレス加工してなる。回路基板12の四隅および中央部には、回路基板12を放熱板25に固定するボルト38を貫通するための基板用固定孔15が設けられている。
【0022】
回路基板12の表面には、リレー等の電子部品20が配されている。
図5および
図7に示すように、絶縁基板13のうち電子部品20が配される位置には、電子部品20をバスバー16上に実装するための接続用開口部14が形成されており、電子部品20の各リード端子は、例えばハンダ付け等公知の手法により、導電回路のランド17上、または、接続用開口部14を通して露出されたバスバー16の表面に、電気的に接続されている。
【0023】
回路基板12のうちバスバー16の下面側(裏面側)には、放熱板25が配置されている(
図7参照)。放熱板25は、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等の熱伝導性に優れる金属材料からなる板状部材であり、回路基板12および電子部品20において発生した熱を放熱する機能を有する。放熱板25のうち、上述した基板用固定孔15に対応する位置には、放熱板用固定孔26が設けられている。
【0024】
放熱板25の上面には、放熱板25と回路基板12(バスバー16)との間の絶縁性を図るための絶縁シート30が重ねられている。絶縁シート30は、放熱板25の上面より一回り小さいサイズとされており、放熱板25に対して固定可能な接着性を有している。また絶縁シート30のうち、放熱板用固定孔26に対応する位置には、シート用固定孔31が貫通して設けられている。
【0025】
さらに、絶縁シート30と、バスバー16のうち電子部品20と対応する領域との間には、熱伝導性部材35が配されている(
図5および
図7参照)。本実施形態において、熱伝導性部材35は、例えば粘性を有する接着剤である。
【0026】
続いて、本実施形態に係る電気接続箱10の製造工程の一例を説明する。まず、表面に導電回路がプリント配線技術により形成されるとともに、裏面にバスバー16が所定のパターンで配策された回路基板12の上面の所定位置に、スクリーン印刷によりはんだを塗布する。その後、所定の位置に電子部品20を載置し、リフローはんだ付けを実行する。これにより、回路基板12の表面側に電子部品20が実装された状態とされる(
図6参照)。
【0027】
次に、放熱板25の上面に絶縁シート30を重ね合わせ、全体を加圧して密着・固定させる(
図3参照)。そして、絶縁シート30のうち、回路基板12が重ねられた場合に電子部品20と対応する領域に熱伝導性部材35を塗布し(
図4参照)、その後、電子部品20を実装した回路基板12を上方から重ね合わせる。この時、熱伝導性部材35は回路基板12(バスバー16)の下面と絶縁シート30の上面との間に押し潰されるように広がり、両者に密着した状態とされる。
【0028】
その後、連通状態とされた基板用固定孔15、シート用固定孔31、および、放熱板用固定孔26にボルト38を貫通させて、ナット39を締結する。これにより、回路基板12および放熱板25が互いに固定された回路構成体11が完成する(
図5ないし
図7参照)。なお、
図5においては、熱伝導性部材35と、接続用開口部14およびランド17との位置関係を明確にするために、搭載されている電子部品20を省略している。
【0029】
最後に、回路構成体11をケース40内に収容し、電気接続箱10とする。
【0030】
続いて、本実施形態に係る回路構成体11および電気接続箱10の作用、効果について説明する。本実施形態の回路構成体11および電気接続箱10によれば、放熱板25と回路基板12(バスバー16)とは、絶縁シート30により絶縁性が確保される。従って、製造コストがかかる熱硬化性樹脂により絶縁層を形成する従来の構成と比較して、安価に製造することができる。
【0031】
また、放熱板25と回路基板12とは、ボルト38およびナット39の締結により互いに固定される構成とされている。この時、ともに板状の放熱板25と回路基板12との間に隙間が生じる場合があり、そのような場合には、熱伝導性が低下する虞がある。しかし本実施形態によれば、放熱板25と回路基板12との間には熱伝導性部材35が配されており、この熱伝導性部材35が放熱板25および回路基板12の双方に密着しているから、回路基板12で発生した熱はこの熱伝導性部材35により速やかに放熱板25に伝えられ、放熱される。
【0032】
しかも、上述したように、放熱板25と回路基板12とは、ボルト38およびナット39の締結により互いに固定されているから、熱伝導性部材35に接着性は必要なく、材料の選択が容易である。
【0033】
さらに、熱伝導性部材35を回路基板12のうち電子部品20が実装される領域に対応する領域のみに設ける構成としたから、使用する熱伝導性部材35の量を減らしながらも、電子部品20において発せられた熱を速やかに放熱板25側に伝えることができ、高い放熱効果を得ることができる。
【0034】
すなわち、製造コストが低く、放熱性に優れる回路構成体11および電気接続箱10を得ることができる。
【0035】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0036】
(1)上記実施形態では、熱伝導性部材35を電子部品20に対応する位置だけに設ける構成としたが、
図8に示すように、熱伝導性部材55を放熱板25の上面全体に設ける構成としてもよい。
【0037】
(2)上記実施形態では、熱伝導性部材35を粘着性を有する接着剤としたが、容易に変形して回路基板12(バスバー16)と絶縁シート30との間の隙間を埋めるように両者に密着するものであれば他のものでもよく、上記実施形態に限るものではない。
【0038】
(3)回路基板12と放熱板25とを固定するボルト38の位置は、上記実施形態に限らず、回路基板12の剛性に合わせて他の位置に設けてもよい。また、ボルト38の数も上記実施形態に限るものではない。
【符号の説明】
【0039】
10…電気接続箱
11…回路構成体
12…回路基板
13…接続用開口部
16…バスバー
20…電子部品
25…放熱板
30…絶縁シート
35…熱伝導性部材
38…ボルト
39…ナット
40…ケース