【解決手段】保守用車両1では、駆動側の作業車1Aと従動側の充電車1Bとが連結器2によって結合可能且つ分離可能である。作業車1Aに、走行用モータ10とバッテリ20とインバータ装置30とが搭載されている。充電車1Bに、ディーゼル発電機70とコンバータ装置80とが搭載されている。ディーゼル発電機70の駆動とバッテリ20の充放電とインバータ装置30の作動とコンバータ装置80の作動を制御可能な制御装置50が設けられている。制御装置50は、作業車1Aと充電車1Bが電気的に接続されている状態で、コンバータ装置80が変換した直流電力でバッテリ20を充電する状態、又はインバータ装置30を介して走行用モータ10を回転駆動させる状態に切換え可能である。
発電機が発電した電力によって走行用モータを回転駆動させることができると共に、バッテリの電力によって前記走行用モータを回転駆動させることができ、鉄道車両が走行する線路を移動して保守作業を行うための保守用車両において、
駆動側の作業車と従動側の充電車とが連結器によって結合可能且つ分離可能になっていて、
前記作業車には、前記バッテリと、前記走行用モータと、前記バッテリが蓄えている直流電力を交流電力に変換可能なインバータ装置とが搭載され、
前記充電車には、前記発電機と、前記発電機が発電した交流電力を直流電力に変換可能なコンバータ装置とが搭載され、
前記発電機の駆動と前記バッテリの充放電と前記インバータ装置の作動と前記コンバータ装置の作動を制御可能な制御装置が設けられ、
前記制御装置は、前記作業車と前記充電車とが電気的に接続されているときに、前記コンバータ装置が変換した直流電力で前記バッテリを充電する状態、又は前記インバータ装置を介して前記走行用モータを回転駆動させる状態に切換え可能であることを特徴とする保守用車両。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された鉄道作業車201では、以下の問題点がある。即ち、トンネル内では、作業環境及び視界を良くするために、エンジン210ではなくバッテリ250を駆動源として使用し続けることになる。しかし、バッテリ250の容量(充電量)には限界があるため、バッテリ250の充電量が足りなくなるおそれがある。このため、バッテリ250を使用して走行できる距離が短くて、トンネル内で保守作業を長時間行うことができない。
【0008】
これに対して、搭載するバッテリの数を多くして、バッテリ全体としての容量を大きくする方法が考えられる。しかし、保守用車両を駆動源が二つであるハイブリッド車両で構成する場合、車両にはエンジン、発電機、インバータ装置、コンバータ装置、走行用モータ等の多くの機器が搭載されるため、重量が嵩む。一方、車両には軸重(車軸がレールに与える荷重)の制限が課されているため、車両の重量には制限がある。従って、重量面の問題により、多くのバッテリを搭載することは難しい。
【0009】
そこで、本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、軸重の制限をクリアしつつ、トンネル内で保守作業を長時間行うことができる保守用車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る保守用車両は、発電機が発電した電力によって走行用モータを回転駆動させることができると共に、バッテリの電力によって前記走行用モータを回転駆動させることができ、鉄道車両が走行する線路を移動して保守作業を行うためのものであって、駆動側の作業車と従動側の充電車とが連結器によって結合可能且つ分離可能になっていて、前記作業車には、前記バッテリと、前記走行用モータと、前記バッテリが蓄えている直流電力を交流電力に変換可能なインバータ装置とが搭載され、前記充電車には、前記発電機と、前記発電機が発電した交流電力を直流電力に変換可能なコンバータ装置とが搭載され、前記発電機の駆動と前記バッテリの充放電と前記インバータ装置の作動と前記コンバータ装置の作動を制御可能な制御装置が設けられ、前記制御装置は、前記作業車と前記充電車とが電気的に接続されているときに、前記コンバータ装置が変換した直流電力で前記バッテリを充電する状態、又は前記インバータ装置を介して前記走行用モータを回転駆動させる状態に切換え可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る保守用車両によれば、作業車と充電車の2車両によって、駆動源が二つであるハイブリッド車両が構成されている。そして、コンバータ装置及び発電機は、駆動側の作業車ではなく、従動側の充電車に搭載されている。即ち、作業車では、ハイブリッド車両を構成するための機器の一部を搭載していないため、車両の重量が軽い。また、充電車では主に、コンバータ装置及び発電機を搭載しているだけであるため、車両の重量が軽い。このため、作業車と充電車は、共に軸重の制限をクリアすることができる。更に、作業車単独で重量を軽くできるため、より多くのバッテリを搭載することができる。従って、バッテリ全体としての容量を大きくすることができ、バッテリを使用して走行する距離を長くすることができる。そして、この保守用車両は、以下のように用いられる。
【0012】
先ず、作業現場であるトンネルに向かう場合、作業車と充電車とを連結させて、充電車に搭載された発電機を駆動させる。このとき、発電機が発電した電力をコンバータ装置とインバータ装置を介して走行用モータに供給する。こうして、バッテリが蓄えている電力を温存させつつ、走行用モータを回転駆動させて、作業現場まで走行することができる。そして、トンネル付近で作業車と充電車とを分離させて、充電車をトンネルの外側で待機させておく。
【0013】
トンネル内を走行する場合、バッテリが蓄えている電力をインバータ装置を介して走行用モータに供給する。これにより、走行用モータを回転駆動させて、作業車単独で走行させることができる。このとき、作業車は、バッテリを多く搭載できるため、走行できる距離が長くなる。従って、トンネル内で保守作業を長時間行うことができる。そして、仮にバッテリの充電量が少なくなったときには、作業車を待機している充電車まで移動させて充電車と電気的に接続する。その後、発電機を駆動させることで、発電機が発電した電力をコンバータ装置を介してバッテリに供給する。こうして、バッテリを充電することができて、作業車を再びトンネル内で長時間走行させることができる。
【0014】
また、本発明に係る保守用車両において、前記作業車は、商用電源から延びる電源ケーブルのコネクタに接続可能で且つ前記コネクタから交流電力が供給される供給部と、前記供給部に供給された交流電力を直流電力に変換可能な充電装置とを有し、前記充電装置が変換した直流電力によって前記バッテリを充電可能であっても良い。
この場合には、バッテリの充電量が少なくなったときに、商用電源から延びる電源ケーブルのコネクタを作業車の供給部に接続する。これにより、商用電源の電力が電源ケーブルとコネクタと供給部と充電装置を介してバッテリに供給されて、バッテリを充電することができる。こうして、作業車を商用電源が設けられている場所に移動させることで、より簡単にバッテリを充電させることができる。
【0015】
また、本発明に係る保守用車両において、前記作業車には、警報装置が取付けられていて、前記制御装置は、前記作業車と前記充電車との離間距離を演算し、記憶している記憶マップから前記離間距離に対する必要充電量を読み出して、前記バッテリで検出される充電量が前記必要充電量以下である場合に前記警報装置に警報信号を出力しても良い。
この場合には、バッテリの充電量が少なくなり、且つ作業車と充電車との離間距離が大きくなると、制御装置が警報装置に警報信号を出力する。これにより、警報装置が例えば警告音を鳴らして、作業車の運転士に対して注意を喚起する。このため、運転士は、作業車単独で長時間走行し続けても、充電車に戻って充電しなければならない状況を確実に把握できるため、安心して作業車を走行させることができる。
【0016】
また、本発明に係る保守用車両において、前記作業車には、バッテリ走行モードと発電機走行モードと充電モードを選択可能な選択部が設けられていて、前記制御装置は、前記バッテリ走行モードが選択されたとき、前記バッテリが蓄えている直流電力で前記インバータ装置を介して前記走行用モータを回転駆動させる状態に切換え、前記発電機走行モードが選択されたとき、前記コンバータ装置が変換した直流電力で前記インバータ装置を介して前記走行用モータを回転駆動させる状態に切換え、前記充電モードが選択されたとき、前記コンバータ装置が変換した直流電力で前記バッテリを充電する状態に切換えても良い。
この場合には、運転士がバッテリ走行モードと発電機走行モードと充電モードとを任意に選択することができるため、状況に応じて最適なモードで走行することができる。例えば、夜間に民家の周辺を走行する状況では、バッテリ走行モードを選択することで、発電機の駆動を停止して、夜間走行で騒音が発生することを防止できる。
【0017】
また、本発明に係る保守用車両において、前記選択部には、選択可能なハイブリッド走行モードが含まれていて、前記制御装置は、前記ハイブリッド走行モードが選択されたとき、前記コンバータ装置が変換した直流電力及び前記バッテリが蓄えている直流電力の両方で、前記インバータ装置を介して前記走行用モータを回転駆動させる状態に切換えると良い。
この場合には、ハイブリッドモードが選択されると、発電機が発電した電力がコンバータ装置を介してインバータ装置に供給されると共に、バッテリの電力がインバータ装置に供給される。これにより、より大きな電力がインバータ装置から走行用モータに供給されて、加速力及び牽引力を大きくすることができる。このため、保守基地から作業現場まで向かう状況又は作業現場から保守基地まで戻る状況では、ハイブリッド走行モードを選択することによって急行することができる。また、急な上り坂を走行する状況では、ハイブリッド走行モードを選択することによって円滑に走行することができる。
【0018】
また、本発明に係る保守用車両において、前記作業車には、複数の前記バッテリが搭載されていて、前記制御装置は、前記各バッテリの充放電を制御しても良い。
この場合には、制御装置が複数のバッテリを放電させて走行用モータを回転駆動させることができるため、バッテリを使用して走行する走行距離をより長くすることができる。
【0019】
また、本発明に係る保守用車両において、前記複数のバッテリの異常を検知する異常検知センサが設けられ、前記制御装置は、前記異常検知センサの検知に基づいて前記各バッテリが正常であるか否かを判断し、正常と判断したバッテリのみの充放電を制御すると良い。
この場合には、複数のバッテリのうち一部のバッテリが故障しても、故障したバッテリを電気回路から切り離し、故障していない残りのバッテリを使用して走行を維持することができる。
【0020】
また、本発明に係る保守用車両において、前記作業車は、同一の線路で2両以上配置されていて、前記各作業車は、連結器によって結合可能且つ分離可能であり、前記充電車は、前記各作業車と電気的に接続されているときに、前記コンバータ装置が変換した直流電力を前記各作業車が搭載する各バッテリに供給可能であっても良い。
この場合には、保守基地から作業現場まで、2両以上の作業車と充電車との3両以上の編成で、発電機の駆動を主体として走行する。これにより、各作業車が搭載する各バッテリの電力をそれぞれ温存させつつ、作業現場まで向かうことができる。そして、作業現場では、充電車に対して各作業車を切り離す。これにより、各作業車をそれぞれ単独で作業させて、保守作業を効率的に行うことができる。その後、各作業車が搭載するバッテリの充電量が少なくなったときには、それらのバッテリを1両の充電車によって同時に充電することができる。
【0021】
また、本発明に係る保守用車両において、前記作業車が走行する線路とは別の線路に第2の前記作業車が配置されていて、前記充電車は、前記作業車と電気的に接続する電気接続部材より長い第2電気接続部材によって、第2の前記作業車に電気的に接続可能であり、前記充電車は、前記第2の作業車が電気的に接続されているとき、前記コンバータ装置が変換した直流電力を前記第2の作業車が搭載するバッテリに供給可能であっても良い。
この場合には、1両の充電車によって、複数の作業車が搭載する各バッテリを充電することができる。このため、例えば、上り線で1両の充電車を待機させておき、その充電車と下り線で停止している第2の作業車とを充電ケーブルで電気的に接続して、第2の作業車のバッテリを充電することができる。
【0022】
また、本発明に係る保守用車両において、前記充電車には、車輪を回転駆動させる第2走行用モータと、前記コンバータ装置が変換した直流電力を交流電力に変換可能な第2インバータ装置とが搭載され、前記充電車は、前記第2インバータ装置が変換した交流電力で前記第2走行用モータを回転駆動させて、自走可能であっても良い。
この場合には、万一バッテリの充電量がほとんど無くなって、作業車が充電車まで戻ることができない状況が生じても、充電車が自走して作業車まで近づいて行き、バッテリを充電することができる。従って、上記した状況が万一生じたとしても、作業車が走行できなくなる事態を防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の保守用車両によれば、軸重の制限をクリアしつつ、トンネル内で保守作業を長時間行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
本発明に係る保守用車両の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態の保守用車両1の構成を模式的に示した図であり、
図2は、
図1に示した保守用車両1が備える各機器の機能ブロック図である。保守用車両1は、鉄道車両が走行する線路SRを移動して、作業員が線路SRのレール又は枕木の交換及び点検、バラストの突き固め作業、架線の点検及び張替え作業等の保線作業、及びトンネルの点検や補修等の保守作業を行うための車両である。
【0026】
この保守用車両1は、駆動源が発電機とバッテリの二つであるハイブリッド車両になっている。そして、ハイブリッド車両が、駆動側の作業車1Aと従動側の充電車1Bとの2車両によって構成されていることに特徴がある。作業車1Aと充電車1Bは、共に線路SRを走行する軌道車両であり、連結器2によって結合可能且つ分離可能である。また、作業車1Aと充電車1Bは、ジャンパ連結器3によって電気的に接続されるようになっている。
【0027】
即ち、ジャンパ連結器3において、ジャンパ線3aの一端部が作業車1Aの車体配線に接続され、ジャンパ線3aの他端部が充電車1Bの車体配線に接続される。これにより、充電車1Bから作業車1Aに電力を供給することができる。なお、作業車1Aと充電車1Bとの間の制御信号の送受信は、ジャンパ線3aと別の図示しないケーブルによって行われるようになっている。連結器2とジャンパ連結器3は、
図1に示すように、作業車1Aの台枠4Aと充電車1Bの台枠4Bとの間に設けられているが、
図2に示すジャンパ連結器3は、電力の流れを分かり易く説明するために、
図1に示す位置と異なる位置に配置されている。
【0028】
作業車1Aでは、台枠4Aの下側に各走行用モータ10,10(以下、単に「走行用モータ10」と呼ぶ)が吊り下げられている。走行用モータ10が回転駆動すると、発生した回転トルクが各推進軸11,11と各減速機12,12を介して各車輪13,13に伝達される。これにより、各車輪13,13が線路SR上を回転し、作業車1Aが駆動側の車両として線路SRを走行することができる。
【0029】
この作業車1Aは、台枠4Aの上側で車両の後位側(
図2の右側)に機関室5を備え、車両の前位側(
図1の左側)に運転室6を備えている。機関室5の中には主に、バッテリ20とインバータ装置30,30(以下、単に「インバータ装置30」と呼ぶ)と切換装置40とが設けられている。運転室6の中には主に、保守用車両1の各機器及び電気回路を制御する制御装置50と、運転士(作業員)が運転操作するための運転台60とが設けられている。
【0030】
充電車1Bは、台枠4Bの上側に車体7を備え、台枠4Bの下側に台車8を備えている。車体7の中には主に、ディーゼル発電機70とコンバータ装置80とが設けられている。台車8は、台枠4B及び車体7を支持していて、各車輪9,9が線路SR上を回転可能である。充電車1Bは、連結器2によって作業車1Aに連結されたときに、作業車1Aに牽引されることで従動側の車両として線路SRを走行することができる。
【0031】
走行用モータ10は、交流電力によって回転駆動する三相交流モータである。バッテリ20は、充放電可能な二次電池であり、例えばリチウムイオン二次電池である。インバータ装置30は、直流電力を交流電力に変換するものであり、バッテリ20及び走行用モータ10に電気回路を介して電気的に接続されている。このため、バッテリ20が蓄えている直流電力は、インバータ装置30によって交流電力に変換されて、変換された交流電力が走行用モータ10に供給されるようになっている。インバータ装置30は、走行用モータ10が適切な回転トルクを発生できるように、制御装置50の制御指令によって交流電力の電圧及び周波数を可変制御する。
【0032】
切換装置40は、作業車1Aと充電車1Bとがジャンパ線3aによって電気的に接続又は切り離される前に、電気回路を遮断するものである。即ち、切換装置40の内部に設けられたスイッチ又は遮断機が操作されて、ジャンパ線3aに電圧(バッテリ電圧)が印加されない状態が作られる。これにより、ジャンパ線3aの接続又は切り離しを行うことができるようになっている。
【0033】
制御装置50は、バッテリ20の充放電とインバータ装置30の作動を制御することができる。即ち、制御装置50がインバータ装置30に制御信号を送信すると、インバータ装置30に供給される電力のうち必要な電力が消費されるようになっている。こうして、バッテリ20が蓄えている電力は、インバータ装置30を介して走行用モータ10に供給されて、走行用モータ10を回転駆動させることができる。
【0034】
また、制御装置50は、図示しないケーブルを介してディーゼル発電機70及びコンバータ装置80に制御信号を送信して、ディーゼル発電機70の駆動とコンバータ装置80の作動を制御することができる。このため、制御装置50がコンバータ装置80に制御信号を送信すると、コンバータ装置80からジャンパ線3aを介してバッテリ20に電力が供給されて、バッテリ20を充電することができる。なお、充電車1Bに制御装置50と無線通信可能な第2制御装置を設けて、この第2制御装置が制御装置50から受信した制御信号に基づいて、ディーゼル発電機70の駆動とコンバータ装置80の動作を制御するように構成しても良い。
【0035】
運転台60には、押圧可能な発電スイッチ61が設けられている。これにより、運転士が発電スイッチ61を押すと、制御装置50はディーゼル発電機70が発電するように制御する。また、運転台60には、「バッテリ走行モード」と「発電機走行モード」と「充電モード」と「ハイブリッド走行モード」を選択可能な選択スイッチ62が設けられている。この選択スイッチ62が、本発明の「選択部」に相当するが、選択部の構成はスイッチに限定されるものではなく、ボタンやレバー等であっても良く適宜変更可能である。各モードが選択されたときの電力供給状態については、後に詳しく説明する。
【0036】
ここで、作業車1Aには、バッテリ20の充電量(残存容量SOC)を検出する電流/電圧センサ21が設けられている。電流/電圧センサ21は、バッテリ20の電流/電圧を常に監視していて、検出した電流/電圧を制御装置50に出力する。制御装置50は、入力した電流/電圧値に基づいて、バッテリ20の充電量を推定する。そして、推定された充電量が運転室6の中に設けられたモニタ63に表示されて、運転士がその充電量を随時確認できるようになっている。なお、制御装置50は、バッテリ20の充電量や故障(異常電池)を推定するために、温度等も入力している。これらの情報は、バッテリ20に付属されている監視装置から得ることもできる。
【0037】
ディーゼル発電機70は、制御装置50の制御指令に基づいてディーゼルエンジンを駆動させて発電するものである。ディーゼルエンジンの駆動によって発生する排気ガスは、車体7の排気管(図示省略)から排出される。ディーゼル発電機70が発電した交流電力は、コンバータ装置80に供給される。充電車1Bの車体7の中には燃料タンク71が設けられていて、燃料タンク71の中にディーゼル発電機70の燃料である軽油が貯留されている。燃料タンク71に貯留されている軽油の量は、モニタ63に表示されて、運転士がその軽油の量を随時確認できるようになっている。
【0038】
コンバータ装置80は、ディーゼル発電機70が発電した交流電力を直流電力に変換するものであり、制御装置50の制御指令に基づいて所定の電力及び電圧を出力する。作業車1Aと充電車1Bとがジャンパ連結器3によって電気的に接続されている状態では、コンバータ装置80が変換した直流電力が、ジャンパ線3aを介してバッテリ20又はインバータ装置30へ供給される。このため、制御装置50がコンバータ装置80及びインバータ装置30に制御信号を送信することで、コンバータ装置80からインバータ装置30に供給された電力のうち必要な電力が走行用モータ10に供給される。こうして、ディーゼル発電機70が発電した電力で走行用モータ10を回転駆動させることができる。
【0039】
次に、上記のように構成された保守用車両1の使用状況を場面を分けて説明する。通常、保守用車両は、旅客車等が走行しない夜間に保守基地から作業現場まで向かい、作業員が作業現場で保守作業を行った後に、旅客車等が走行し始める朝方までに作業現場から保守基地まで戻ってこなければならない。このような使用状況において、先ず、保守基地に待機している保守用車両1が作業現場のトンネルに向かう状況について説明する。この状況では、
図3に示すように、作業車1Aと充電車1Bが連結器2によって連結され、ジャンパ連結器3によって電気的に接続されている。このとき、運転士は運転台60の発電スイッチ61を押すと共に、選択スイッチ62で「発電機走行モード」を選択する。
【0040】
これにより、ディーゼル発電機70が発電し、発電した交流電力がコンバータ装置80によって直流電力に変換される。そして、その直流電力がコンバータ装置80からジャンパ線3aを介してインバータ装置30へ供給される。インバータ装置30は、直流電力を交流電力に変換して走行用モータ10に供給して、走行用モータ10が回転駆動する。こうして、トンネルに向かう場合、ディーゼル発電機70の燃料である軽油のみを使用し、バッテリ20が蓄えている電力を温存させつつ、トンネル付近まで走行する。
【0041】
ここで、本実施形態の保守用車両1は、選択スイッチ62で「ハイブリッド走行モード」が選択されているとき、
図4に示すように、バッテリ20が制動時に生じる回生電力を充電できるように構成されている。つまり、制動時には制御装置50の制御指令に基づいて、走行用モータ10が発電機として機能して回生電力を発電する。これにより、回生電力がインバータ装置30を介してバッテリ20に供給されて、バッテリ20が回生電力を充電することができる。こうして、仮にバッテリ20の充電量が満タン状態から減っていたとしても、トンネルに向かう途中で、できるだけ満タン状態に戻るようになっている。
【0042】
続いて、保守用車両1がトンネル付近に到達した後に、トンネル内を走行する状況について説明する。保守用車両1は、トンネル付近で停止し、作業車1Aと充電車1Bとに分離すると、作業車1Aと充電車1Bとの電気的な接続が解除される。そして、運転士は運転台60の選択スイッチ62で「バッテリ走行モード」を選択する。これにより、
図5に示すように、バッテリ20が放電して、バッテリ20が蓄えている直流電力がインバータ装置30に供給される。インバータ装置30は、直流電力を交流電力に変換して走行用モータ10に供給して、走行用モータ10が回転駆動する。
【0043】
こうして、トンネル内では、バッテリ20の電力を使用して、作業車1A単独で走行することができる。このとき、充電車1Bはトンネルの外側で待機していて、ディーゼル発電機70は駆動していない。このため、充電車1Bから排気ガスが排出されることがなく、トンネル内では排気ガスによって作業環境及び視界が悪くなることはない。そして、作業車1Aは、コンバータ装置80及びディーゼル発電機70を搭載しておらず、重量物として主にバッテリ20とインバータ装置30と走行用モータ10を搭載しているだけである。従って、バッテリを多く搭載できて、バッテリ20の電力で長い距離を走行することができる。この結果、作業車1A単独でトンネル内で走行して、作業員がトンネル内で保守作業を長時間行うことができる。
【0044】
ここで、バッテリ20の充電量が少なくなった状況について説明する。例えば作業車1Aがトンネル内を長時間走行した後に、更に走行し続ける場合には、バッテリ20の充電量が足りなくなるおそれがある。この場合には、作業車1Aがトンネルの外側で待機している充電車1Bの位置まで移動して、作業車1Aと充電車1Bとをジャンパ連結器3によって電気的に接続する。そして、運転士が運転台60の発電スイッチ61を押すと共に、選択スイッチ62で「充電モード」を選択する。
【0045】
これにより、
図6に示すように、ディーゼル発電機70が発電し、発電した交流電力がコンバータ装置80によって直流電力に変換される。そして、その直流電力がコンバータ装置80からジャンパ線3aを介してバッテリ20へ供給される。こうして、バッテリ20を充電することができ、作業車1Aを再びトンネル内で長時間走行させることができる。つまり、バッテリ20の充電量が少なくなったときには、作業車1Aを保守基地まで戻す必要がなくて、待機している充電車1Bの位置まで移動させることでバッテリ20を充電することができる。従って、トンネルから保守基地まで戻るためのバッテリの電力が不要であり、トンネル内を走行するためにバッテリ20の電力をより多く使用することができる。
【0046】
最後に、保守用車両1がトンネルから保守基地に戻る状況について説明する。
図7に示すように、作業車1Aを充電車1Bに対して連結器2によって連結すると共に、ジャンパ連結器3によって電気的に接続する。そして、運転士は運転台60の発電スイッチ61を押すと共に、選択スイッチ62で「ハイブリッド走行モード」を選択する。これにより、ディーゼル発電機70が発電した電力がコンバータ装置80とジャンパ線3aを介してインバータ装置30に供給されると共に、バッテリ20の電力がインバータ装置30に供給されて、より大きな電力がインバータ装置30から走行用モータ10に供給される。
【0047】
こうして、ディーゼル発電機70が発電する電力に対して、バッテリ20が蓄えている電力をアシストして、走行用モータ10を回転駆動させるため、加速力及び牽引力を最大限に大きくすることができる。この結果、保守用車両1は作業現場(トンネル)から保守基地までできるだけ早く戻ることができる。言い換えると、保守用車両1が保守基地まで早く戻ることができることを考慮して、作業現場で保守作業を行う時間をより多く確保できるようになり、作業員が保守作業をより進めることができる。保守基地に戻った保守用車両1では、旅客車等が走行している間に、バッテリ20を充電できると共に、軽油を燃料タンク71に補給し、次の作業に備えることができる。
【0048】
なお、上述した保守用車両1の使用状況は例示であり、保守用車両1をその他の方法で使用させても良い。例えば、作業現場であるトンネルが二つある場合には、先ず第1のトンネル内で作業車1A単独で走行させて保守作業を行う。その後、作業車1Aを充電車1Bに電気的に接続し、バッテリ20を充電する。充電が完了した後、保守用車両1又は作業車1A単独で第2のトンネルに向かわせる。そして、第2のトンネル内では、作業車1A単独で走行させて保守作業を行えば良い。また、保守基地から作業現場までの距離が近い場合には、保守基地から作業車1A単独で走行させることも可能である。また、保守用車両1が作業現場から保守基地に戻る必要がない場合には、保守用車両1を待避線で待機させておき、次に走行させるまでにバッテリ20を充電すると共に、軽油を燃料タンク71に補給しても良い。
【0049】
第1実施形態の作用効果について説明する。
仮に保守用車両として、駆動源が発電機とバッテリの二つであるハイブリッド車両を1車両で構成することが考えられる。しかし、1車両でハイブリッド車両を構成しようとすると、車両にはエンジン、発電機、インバータ装置、コンバータ装置、走行用モータ等の多くの機器が搭載されるため、重量が嵩む。そして、車両には軸重(車軸がレールに与える荷重)の制限が課されているため、車両の重量には制限がある。このため、車両に多くのバッテリを搭載して、バッテリ全体としての容量を大きくすることができない。従って、1車両でハイブリッド車両を構成すると、バッテリを使用して走行できる距離が短いという問題点がある。
【0050】
これに対して、第1実施形態の保守用車両1によれば、作業車1Aと充電車1Bの2車両でハイブリッド車両が構成されている。そして、コンバータ装置80及びディーゼル発電機70は、駆動側の作業車1Aではなく、従動側の充電車1Bに搭載されている。即ち、作業車1Aでは、ハイブリッド車両を構成するための機器の一部を搭載していないため、車両の重量が軽い。また、充電車では主に、コンバータ装置80及びディーゼル発電機70を搭載しているだけであるため、車両の重量が軽い。このため、作業車1Aと充電車1Bは、共に軸重の制限をクリアすることができる。更に、作業車1A単独で重量を軽くできるため、より多くのバッテリを搭載することができる。従って、バッテリ20全体としての容量を大きくすることができ、バッテリ20を使用して作業車1A単独で走行する距離を長くすることができる。こうして、保守用車両1は、軸重の制限をクリアしつつ、トンネル内で保守作業を長時間行うことができる。
【0051】
また、第1実施形態の保守用車両1よれば、選択スイッチ62で「バッテリ走行モード」と「発電機走行モード」と「充電モード」と「ハイブリッド走行モード」を選択できるため、上記したように様々な状況に対応することができる。そして、上記した状況以外にも、例えば夜間に民家の周辺を走行する状況では、「バッテリ走行モード」を選択する。これにより、ディーゼル発電機70の駆動を停止して、夜間走行で騒音が発生することを防止できる。更に、保守基地から作業現場まで向かう状況では、「ハイブリッド走行モード」を選択することで急行することができ、急な上り坂を走行する状況では、「ハイブリッド走行モード」を選択することで円滑に走行することができる。
【0052】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の保守用車両1Uについて説明する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、説明を省略する。
図8に示すように、保守用車両1Uの作業車1A1の機関室5には、コネクタ90と充電装置91とが設けられている。
【0053】
コネクタ90では、商用電源92(例えばAC200V三相三線式)から延びる電源ケーブル93のコネクタ94が接続可能になっている。このため、コネクタ94がコネクタ90に接続されると、商用電源92の交流電力が電源ケーブル93とコネクタ94を介して、コネクタ90に供給される。このコネクタ90が、本発明の「供給部」に相当する。充電装置91は、コネクタ90に供給された交流電力を直流電力に変換するものである。変換された直流電力はバッテリ20に供給されて、バッテリ20が充電できるようになっている。
【0054】
こうして、第2実施形態の保守用車両1Uによれば、バッテリ20の充電量が少なくなったときには、商用電源92から延びる電源ケーブル93のコネクタ94を作業車1A1のコネクタ90に接続する。これにより、商用電源92の電力がバッテリ20に供給されて、バッテリ20を充電することができる。従って、作業車1A1を商用電源92が設けられている場所に移動させることで、より簡単にバッテリ20を充電させることができる。即ち、作業車1A1が充電車1Bから遠く離れていて、商用電源92に近い場合には、作業車1A1を充電車1Bの位置まで戻さないでバッテリ20を簡単に充電させることができる。
【0055】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態の保守用車両1Vについて説明する。第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、説明を省略する。
図9に示すように、保守用車両1Vの作業車1Aaの運転室6には、警報装置100が設けられている。警報装置100は、制御装置50Vから警告信号を受信すると警告音を鳴らすように構成されている。なお、警報装置100は、運転士に注意を喚起するものであれば警告音を鳴らす構成以外にも適宜変更可能であり、例えば警告ランプを点灯するものであっても良い。
【0056】
ここで、第1実施形態で説明したように、作業車1Aは充電車1Bから分離して、トンネル内ではバッテリ20の電力を用いて単独で走行することになる。しかし、作業車1Aが単独で長時間走り続けていると、バッテリ20の充電量が少なくなる。このとき、作業車1Aが充電車1Bから遠く離れていると、充電量の不足によって作業車1Aが充電車1Bまで戻ることができなくて、走行できなくなるおそれがある。通常、線路SRでは朝方から旅客車が走行し始めるため、作業車1Aが線路SRから退避できなくなることは非常に問題である。そこで、第3実施形態では、上記した事態が生じることを事前に防止するために、制御装置50Vがバッテリ20の充電量と作業車1Aが充電車1Bから離れた離間距離Dに基づいて、警報装置100に警告信号を出力するようになっている。
【0057】
制御装置50Vは、離間距離Dに対して作業車1Aaが充電車1Bまで戻るために最低限必要なバッテリの充電量を、必要充電量Xaとして予め記憶マップに記憶している。つまり、記憶マップは多数の必要充電量Xaを記憶しているデータベースである。各必要充電量Xaは、予め行われるシミュレーション又は走行実験によって、離間距離Dの各範囲毎に決定されている。
【0058】
例えば、離間距離Dが1km以上且つ2km未満である場合に必要充電量XaがX1であり、離間距離Dが2km以上且つ3km未満である場合に必要充電量XaがX2(X2>X1)であるように設定されている。つまり、離間距離Dが大きくなるほど必要充電量Xaが大きくなるように設定されている。そして、必要充電量Xaは、線路SRの形状(曲線及び傾斜)や作業車1Aaの走行状況も考慮して、作業車1Aaが充電車1Bまで確実に戻ることができる充電量として決められている。
【0059】
こうして、制御装置50Vは、
図10に示すプログラムを逐次(例えば数msec毎に)実行する。具体的に、先ずステップS1では、制御装置50Vは、作業車1Aaが充電車1Bから離れた離間距離Dを演算する。離間距離Dを演算する方法は、周知の方法と同様であるため詳細な説明を省略するが、例えば走行用モータ10のモータ軸に取付けられた速度発電機の出力信号をカウントする方法、又は加速度センサによって検出された進行方向の加速度を二回積分する方法である。
【0060】
次にステップS2では、制御装置50Vは、上述した記憶マップから、演算した離間距離Dに対する必要充電量Xaを読み出す。続いて、ステップS3では、制御装置50Vは、現地点において検出するバッテリ20の充電量Xが必要充電量Xa以下であるか否かを判断する。なお、バッテリ20の充電量Xは、上述したように、電流/電圧センサ21が検出した電流/電圧に基づいて推定された値である。
【0061】
この結果、ステップS3で「Yes」と判断されれば、ステップS4では、制御装置50Vが警報装置100に警報信号を出力する。これにより、警報装置100は警告音を鳴らして、運転士に作業車1Aaが充電車1Bまで戻らなければならない状況を知らせる。一方、ステップS3で「No」と判断されれば、制御装置50Vは一旦このプログラムを終了し、数msec後に再びこのプログラムを実行する。
【0062】
こうして、第3実施形態の保守用車両1Vでは、バッテリ20の充電量が少なくなり且つ離間距離Dが大きくなると、制御装置50Vが警報装置100に警報信号を出力する。これにより、警報装置100が警告音を鳴らして、作業車1Aaの運転士に対して注意を喚起する。このため、運転士は、作業車1Aa単独で長時間走行し続けても、充電車1Bに戻って充電しなければならない状況を確実に把握できるため、安心して作業車1Aaを走行させることができる。
【0063】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態の保守用車両1Wについて説明する。第4実施形態では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、説明を省略する。
図11に示すように、保守用車両1Wの作業車1Abの機関室5には、バッテリ20Aとバッテリ20Bとバッテリ20Cとが空いたスペースに搭載されている。このように作業車1Abでは、軸重の制限をクリアできる範囲でバッテリを多く積んで重量を大きくしていて、充電車1Bを牽引する牽引力を大きくしている。そして、保守用車両1Wの制御装置50Wは、各バッテリ20A,20B,20Cの充放電を制御することができる。従って、制御装置50Wが複数のバッテリ20A,20B,20Cを放電させて走行用モータ10を回転駆動させることができるため、第1実施形態に比べてバッテリを使用して走行する走行距離を長くすることができる。
【0064】
また、保守用車両1Wでは、各バッテリ20A,20B,20Cに対応して、各電流/電圧センサ21A,21B,21Cと各温度センサ22A,22B,22Cとが設けられている。各電流/電圧センサ21A,21B,21Cは、各バッテリ20A,20B,20Cの電流/電圧を常に監視していて、検出した各電流/電圧を制御装置50Wに出力する。各温度センサ22A,22B,22Cは、各バッテリ20A,20B,20Cの異常な発熱を検知するためのものであり、各バッテリ20A,20B,20Cの温度を常に監視していて、検出した各温度を制御装置50Wに出力する。各電流/電圧センサ21A,21B,21Cと各温度センサ22A,22B,22Cが、本発明の「異常検知センサ」に相当するが、バッテリの異常を検知する異常検知センサの種類は適宜変更可能である。
【0065】
制御装置50Wは、入力された各電流/電圧及び各温度に基づいて、各バッテリ20A,20B,20Cが正常であるか否かの判断をし、正常と判断したバッテリのみの充放電を制御するようになっている。このため、例えばバッテリ20Aが異常な発熱等によって故障したとき、制御装置50Wは入力される各電流/電圧及び各温度に基づいて、バッテリ20Aが正常でないと判断する。このとき、
図12に示すように、制御装置50Wは、故障したバッテリ20Aを電気回路から切り離し、正常と判断した各バッテリ20B,20Cを放電させて、走行用モータ10を回転駆動させる。こうして、複数のバッテリ20A,20B,20Cのうち一部のバッテリ20Aが故障しても、故障していない残りのバッテリ20B,20Cを使用して走行を維持することができる。
【0066】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態の保守用車両1Xについて説明する。第5実施形態では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、説明を省略する。
図13に示すように、保守用車両1Xは、作業車1AFと作業車1ARと充電車1Bとを備えた3両編成で構成されていて、作業車1AFと作業車1ARと充電車1Bとが同一の線路SRに配置されている。
【0067】
図13の左側に配置されている作業車1AFは、上記した作業車1Aと同様の構成であり、以下では「前側作業車1AF」と呼ぶことにする。
図13の左側に配置されている作業車1ARは、上記した作業車1Aと同様の構成であり、以下では「後側作業車1AR」と呼ぶことにする。前側作業車1AFは、連結器2によって後側作業車1ARと結合可能且つ分離可能であると共に、ジャンパ連結器3のジャンパ線3aによって後側作業車1ARと電気的に接続可能である。このため、充電車1Bは、後側作業車1ARを介して前側作業車1AFに電気的に接続できるようになっている。こうして、充電車1Bと前側作業車1AFと後側作業車1ARとが電気的に接続されているとき、コンバータ装置80が変換した直流電力を後側作業車1ARが搭載するバッテリ20に供給することができると共に、前側作業車1AFが搭載するバッテリ20にも供給することができる。
【0068】
第5実施形態の保守用車両1Xによれば、保守基地から作業現場まで、前側作業車1AFと後側作業車1ARと充電車1Bとの3両編成で、ディーゼル発電機70の駆動を主体として走行する。これにより、前側作業車1AFが搭載するバッテリ20の電力と、後側作業車1ARが搭載するバッテリ20の電力とをそれぞれ温存させつつ、作業現場まで向かうことができる。そして、作業現場では、充電車1Bに対して前側作業車1AFと後側作業車1ARを切り離す。これにより、前側作業車1AFと後側作業車1ARとをそれぞれ単独で走行させて、保守作業を効率的に行うことができる。その後、前側作業車1AFが搭載するバッテリ20の充電量と、後側作業車1ARが搭載するバッテリ20の充電量が少なくなったときには、それらバッテリ20を1両の充電車1Bによって同時に充電することができる。
【0069】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態の保守用車両1Yについて説明する。第6実施形態では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、説明を省略する。
図14に示すように、保守用車両1Yの作業車1Aが走行する線路(上り線SR1)とは別の線路(下り線SR2)に、第2の作業車1Acが停止している。第2の作業車1Acの構成は、上記した作業車1Aの構成と同様である。つまり、第2の作業車1Acは、ジャンパ連結器3を備えていて、ジャンパ線3bの一端部が接続されるようになっている。
【0070】
ジャンパ線3bは、充電車1Bと作業車1Aとを電気的に接続する上記したジャンパ線3a(電気接続部材)より長いものであり、充電車1Bと第2の作業車1Acとを電気的に接続するものである。このジャンパ線3bが、本発明の「第2電気接続部材」に相当する。こうして、充電車1Bは、ジャンパ線3bによって第2の作業車1Acと電気的に接続されているとき、コンバータ装置80が変換した直流電力をジャンパ線3bを介して第2の作業車1Acが搭載するバッテリ20に供給することができる。なお、インターロック(安全技術)として、長いジャンパ線3bを充電車1Bと第2の作業車1Acとに接続しているときは、走行用の電気回路を短絡又は開放することで、第2の作業車1Acを走行不可能にする機構を設けても良い。
【0071】
第6実施形態の保守用車両1Yによれば、1両の充電車1Bによって、作業車1Aが搭載するバッテリ20を充電できることに加えて、第2の作業車1Acが搭載するバッテリ20を充電することができる。このため、
図14に示すように、上り線SR1の作業現場で1両の充電車1Bを待機させておき、その充電車1Bと下り線SR2で停止している第2の作業車1Acとをジャンパ線3bで電気的に接続する。これにより、第2の作業車1Acは、自身が牽引する充電車から遠く離れていても、充電車1Bによって搭載するバッテリ20を充電することができる。つまり、下り線SR2では、第2の作業車1Ac単独で保守基地から作業現場まで向かうことができる。
【0072】
また、第6実施形態の保守用車両1Yによれば、以下のように用いることもできる。第1トンネル及び第2トンネルのように作業現場であるトンネルが断続的にある場合、第1トンネルの傍の上り線SR1で充電車1Bを待機させておき、第2トンネルの傍の下り線SR2で充電車1Bを待機させておく。これにより、第1トンネルの上り線SR1で充電車1Bから切り離された作業車1Aは、第2トンネルに向かって行き、第2トンネルの傍の下り線SR2で待機している充電車1Bによってバッテリ20を充電することができる。同様に、第2トンネルの下り線SR2で充電車1Bから切り離された作業車1Aは、第1トンネルに向かって行き、第1トンネルの傍の上り線SR1で待機している充電車1Bによってバッテリ20を充電することができる。
【0073】
こうして、第6実施形態の充電車1Bを複数用いれば、充電できるポイントを複数設けることができて、保守作業において広い運用を図ることができる。なお、保守用車両1Yは、作業車1Aと充電車1Bとの分離によって軸重が軽くなる分、従来に比べてサイズが大きい発電機を搭載することができる。このため、充電車1Bの変形実施形態として、発電能力が高いディーゼル発電機70を搭載して、作業車1Aが搭載するバッテリ20及び第2の作業車1Acが搭載するバッテリ20を同時に充電できるように構成しても良い。又は、3両以上の作業車が搭載するバッテリを同時に充電できるように構成しても良い。
【0074】
また、第6実施形態の変形実施形態として、
図15に示すように、第2の作業車1Adの機関室5(車体)に、通常使用するコネクタとしてのジャンパ連結器3とは別に、充電ケーブル110の一端部110aを接続可能なコネクタ120を設けても良い。この場合には、充電車1Cと第2の作業車1Adとが充電ケーブル110で電気的に接続されることとあわせて、充電ケーブル110の一端部110aとコネクタ120とが結合していることを機械的(リミットスイッチ等)又は電気的(並設した端子のコネクタによる連結)に検出することにより、その検出に基づく信号が制御装置50へ伝達され、インターロック(作業者が間違って運転操作しても走り出さないようにすること)として、第2の作業車1Adを走行不可能としている。
【0075】
<第7実施形態>
次に、第7実施形態の保守用車両1Zについて説明する。第7実施形態では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、説明を省略する。
図16に示すように、第7実施形態の保守用車両1Zの充電車1Dは、車両の前位側(
図16の右側)に運転室6Zを備えている。運転室6Zの中には、充電車1Dの各機器及び電気回路を制御する制御装置50Zと、運転士が運転操作するための運転台60Zとが設けられている。
【0076】
また、充電車1Dは、車体7にインバータ装置30Z,30Z(以下、単に「インバータ装置30Z」と呼ぶ)を搭載していて、台枠4Bの下側に各走行用モータ10Z,10Z(以下、単に「走行用モータ10Z」と呼ぶ)を吊り下げている。インバータ装置30Zが本発明の「第2インバータ装置」に相当し、走行用モータ10Zが本発明の「第2走行用モータ」に相当する。制御装置50Zは、コンバータ装置80に制御信号を送信すると、ディーゼル発電機70が発電した電力がコンバータ装置80を介してインバータ装置30Zに供給されるようになっている。
【0077】
そして、制御装置50Zがインバータ装置30Zに制御信号を送信し、インバータ装置30Zに供給される電力のうち必要な電力が消費されて、走行用モータ10Zを回転駆動させることができる。走行用モータ10Zが回転駆動すると、発生した回転トルクが各推進軸11Z,11Zと各減速機12Z,12Zを介して各車輪9Z,9Zに伝達される。これにより、各車輪9Z,9Zが線路SR上を回転し、充電車1Dが線路SRを自走できるようになっている。
【0078】
第7実施形態の保守用車両1Zによれば、万一バッテリ20の充電量がほとんど無くなって、作業車1Aが充電車1Dの位置まで戻ることができない状況が生じても、充電車1Dが自走して作業車1Aの位置まで近づくことができる。これにより、充電車1Dと作業車1Aとを電気的に接続して、バッテリ20を充電することができる。従って、上記した状況が万一生じたとしても、作業車1Aが走行できなくなる事態を防止できる。
【0079】
そして、第3実施形態で説明したようなバッテリ20の充電量と離間距離Dとに基づいて警報装置100が作動するプログラム(
図10参照)が万一機能しない場合でも、運転士は作業車1A単独で安心して長時間走行し続けることができる。更に、第7実施形態の充電車1Dを複数用いれば、充電できるポイントが複数であり且つ自由に移動できるため、保守作業において極めて広い運用を図ることができる。なお、第7実施形態の充電車1Dは、必要最小限の自走機能を有していれば良いため、比較的コンパクトなインバータ装置30Z及び走行用モータ10Zを搭載すれば良くて、充電車1D自体をコンパクトに構成できる。
【0080】
以上、本発明に係る保守用車両の各実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、作業車1Aと充電車1Bとがジャンパ連結器3によって電気的に接続されているが、連結器2と一体的な電気連結器によって電気的に接続されても良い。
また、第3実施形態において、バッテリ20の充電量Xが必要充電量Xa以下である場合に警告音を鳴らすように構成したが、バッテリ20の充電量Xが必要充電量Xaに近くなった場合に警告音を鳴らすように構成しても良い。具体的には、バッテリ20の充電量Xが必要充電量Xa×1.05の値以下である場合に警告音を鳴らすように構成しても良い。又は、必要充電量の値を、作業車1Aaが充電車1Bまで確実に戻れるように予め余裕度を持った値として設定しておいて、バッテリ20の充電量Xが余裕度を持った必要充電量以下である場合に警告音を鳴らすように構成しても良い。
また、バッテリ20はリチウムイオン二次電池以外であっても良く、例えば鉛蓄電池であっても良い。
また、各実施形態の保守用車両の特徴をそれぞれ組み合わせて実施することも勿論可能である。