【解決手段】複数の電線21が、幹線部分から複数のコネクタ接続線部分24a、24b、24c、24d、24e、24fが延出する態様で束ねられて構成されたワイヤーハーネス20と、外装部材30とを備える。外装部材30は、幹線部分を収容可能な形状に形成された幹線部分22と、幹線収容部32の延在方向に沿って異なる位置に設けられ、それぞれコネクタ接続線部分24a、24b、24c、24d、24e、24fを外部に向けて引出す第1引出部40a、40b、40c、40dと第2引出部50e、50fとを含み、幹線収容部32のうち第1引出部と前記第2引出部との間に曲げ容易部36が設けられている。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスは、車両等における配線経路に応じて、複数の電線を分岐させつつ束ねると共に、各分岐部分の端部にコネクタを取付けること等によって製造される。
【0003】
ところで、ワイヤーハーネスの組付先によっては、ワイヤーハーネスとその周辺部分との干渉を抑制するため、ワイヤーハーネスを、所定形状内に収めるように要請されることがある。
【0004】
一般的には、複数の電線の結束状態の維持は、例えば、複数の電線周りに巻回された粘着テープ又は結束バンド等によってなされる。しかしながら、粘着テープ又は結束バンド等では、ワイヤーハーネスを所定形状内に収めるように維持することは困難である。
【0005】
ここで、特許文献1は、ワイヤーハーネスを略直線的に収容保持する、前面が開口した長尺状の収容本体部と、前記収容本体部に対して着脱自在に装着されて前記開口を閉蓋すると共に、前記ワイヤーハーネスの基幹より分岐する分岐線の先端に設けられた各コネクタをコネクタ装着孔にそれぞれ装着させて前記ワイヤーハーネスを配索保持するコネクタ保持部材とを備えたワイヤーハーネス保持装置を開示している。
【0006】
このワイヤーハーネス保持装置によると、ワイヤーハーネスを収容本体部内に収容保持することで、ワイヤーハーネスを所定形状内に収めるように維持できる。
【0007】
また、ワイヤーハーネスの基幹より分岐する分岐線の各コネクタをコネクタ装着孔にそれぞれ装着させているので、当該分岐線が基幹の延在方向一定位置に保持され、当該コネクタと相手側のコネクタとの接続作業を容易に行える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示の技術によると、収容本体部に装着されるコネクタ保持部材に複数のコネクタ装着孔が形成され、ワイヤーハーネスの分岐線の先端にある各コネクタが当該各コネクタ装着孔に装着される構成である。このため、複数のコネクタの相対的位置関係が一定に定っており、それらのコネクタを相手側の各コネクタに装着し難い。
【0010】
そこで、本発明は、ワイヤーハーネスの外形状を外装部材によって一定形状に維持しつつ、複数のコネクタ接続線部分の相対的な位置自由度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る外装部材付ワイヤーハーネスは、複数の電線が、幹線部分から複数のコネクタ接続線部分が延出する態様で束ねられて構成されたワイヤーハーネスと、前記幹線部分を収容可能な形状に形成された幹線収容部と、前記幹線収容部の延在方向に沿って異なる位置に設けられ、それぞれ前記コネクタ接続線部分を前記幹線部分の外周外方に向けて引出す第1引出部と第2引出部とを含み、前記幹線収容部のうち前記第1引出部と前記第2引出部との間に曲げ容易部が設けられた外装部材と、を備える。
【0012】
第2の態様は、第1の態様に係る外装部材付ワイヤーハーネスであって、前記外装部材が、ホットプレスされた不織部材により形成されているものである。
【0013】
第3の態様は、第2の態様に係る外装部材付ワイヤーハーネスであって、前記幹線収容部のうち前記曲げ容易部以外の部分が、前記曲げ容易部よりも硬くなるようにホットプレスされているものである。
【0014】
第4の態様は、第1〜第3のいずれか1つの態様に係る外装部材付ワイヤーハーネスであって、前記第1引出部及び前記第2引出部は、前記幹線部分に対して同一方向を向くように開口しているものである。
【0015】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか1つの態様に係る外装部材付ワイヤーハーネスであって、前記第1引出部及び前記第2引出部は、それぞれから引出される前記コネクタ接続線部分の端部のコネクタの相手側のコネクタの各位置に対向する位置に設けられているものである。
【発明の効果】
【0016】
第1の態様に係る外装部材付ワイヤーハーネスによると、幹線部分を収容する幹線収容部によってワイヤーハーネスの幹線部分の外形状を一定形状に維持することができる。また、前記幹線収容部のうち前記第1引出部と前記第2引出部との間に曲げ容易部が設けられているため、第1引出部から引出されるコネクタ接続線部分と、第2引出部から引出されるコネクタ接続線部分との相対的な位置自由度を向上させることができる。また、複数のコネクタ接続線部分は、第1引出部と前記第2引出部とによって幹線部分の外周外方に向けて引出されているため、それらの端部のコネクタを相手側のコネクタに容易に接続することができる。
【0017】
第2の態様によると、ホットプレスされた不織部材によって外装部材を容易に製造することができる。
【0018】
不織部材は、ホットプレス加工の有無、ホットプレスする際の温度、加熱時間、圧縮程度等を調整することで、硬さ、柔らかさを容易に調整することができる。そこで、第3の態様のように、前記幹線収容部のうち前記曲げ容易部以外の部分を、前記曲げ容易部よりも硬くなるようにホットプレスすることで、幹線部分の外形状を一定形状に維持することができ、かつ、第1引出部から引出されるコネクタ接続線部分と第2引出部から引出されるコネクタ接続線部分との相対的な位置自由度を向上させることができる。
【0019】
第4の態様によると、前記第1引出部及び前記第2引出部は、前記幹線部分に対して同一方向を向くように開口しているため、前記第1引出部及び前記第2引出部から引出されるコネクタ接続線部分を相手側のコネクタに容易に接続することができる。
【0020】
第5の態様によると、それぞれから引出される前記コネクタ接続線部分の端部のコネクタのそれぞれを、相手側のコネクタに容易に接続できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<外装部材付ワイヤーハーネスについて>
以下、実施形態に係る外装部材付ワイヤーハーネス10について説明する。
図1は外装部材付ワイヤーハーネス10を示す斜視図であり、
図2は外装部材付ワイヤーハーネス10を示す平面図であり、
図3は外装部材付ワイヤーハーネス10を示す側面図である。
【0023】
この外装部材付ワイヤーハーネス10は、ワイヤーハーネス20と、外装部材30とを備える。
【0024】
ワイヤーハーネス20は、複数の電線21が束ねられることによって構成されている。複数の電線21は、一平面内において、幹線部分22から複数のコネクタ接続線部分24a、24b、24c、24d、24e、24fが延出する態様で束ねられている。ここでは、1つの幹線部分22の両端部にコネクタ接続線部分24a、24fが延出しており、その幹線部分22の延在方向中間部に複数(ここでは、4つ)のコネクタ接続線部分24b、24c、24d、24eが分岐して延出している。
【0025】
幹線部分22の一端部寄りのコネクタ接続線部分24a、24b、24c、24dは、幹線部分22の当該一端部から一側方に向けて延出している。なお、コネクタ接続線部分24dは、他のコネクタ接続線部分24a、24b、24cよりも長い。
【0026】
また、幹線部分22の他端部寄りのコネクタ接続線部分24e、24fは、幹線部分22の当該他端部から一側方に向けて延出している。なお、コネクタ接続線部分24eは、他のコネクタ接続線部分24fよりも長い。
【0027】
また、幹線部分22のうち一端部寄りのコネクタ接続線部分24a、24b、24c、24dと他端部寄りのコネクタ接続線部分24e、24fとの間の中間部分23には、他に分岐線等が延出しない部分が存在している。
【0028】
また、上記コネクタ接続線部分24a、24b、24c、24d、24e、24fのそれぞれ端部には、コネクタ26a、26b、26c、26d、26e、26fが接続されている。そして、本ワイヤーハーネス20が車両に組込まれた状態で、端部のコネクタ26a、26b、26c、26d、26e、26fが車両等に搭載された各種電気部品110側等のコネクタ126a、126b、126c、126d、126e、126fに接続されることで、当該各種電気部品110同士がワイヤーハーネス20を介して電気的に接続される。なお、ワイヤーハーネス20には、光ファイバーコード等が含まれていてもよい。
【0029】
なお、上記ワイヤーハーネス20は、それに巻回された粘着テープ等によって結束状態が維持されてもよいし、外装部材内に収容されることで、結束状態が維持される構成であってもよい。
【0030】
外装部材30は、幹線収容部32と、少なくとも1つの第1引出部40a、40b、40c、40dと、少なくとも1つの第2引出部50e、50fとを備える。
【0031】
幹線収容部32は、幹線部分22を収容可能な形状に形成されている。ここでは、幹線収容部32は、偏平でかつ細長い直方体形状に形成されている。幹線収容部32の長さ寸法は、幹線部分22の長さ寸法と同じかこれよりも長い(僅かに長い)寸法に設定されている。そして、幹線収容部32内に、幹線部分22を直線状にした状態で収容できるようになっている。
【0032】
また、幹線収容部32を、その延在方向に対して直交する断面で観察すると、偏平な方形状をなすようになっている。そして、幹線部分22を幹線収容部32内に収容すると、当該幹線部分22が偏平な状態に維持される。これにより、幹線部分22が本外装部材付ワイヤーハーネス10の配設先にある周辺部品に干渉することが抑制される。幹線部分の形状は、ワイヤーハーネスの収容先となるスペースの形状に合わせて適宜決定される。
【0033】
また、この外装部材30は、4つの第1引出部40a、40b、40c、40dを備える。ここでは、幹線収容部32の一側部の一端部から中央に向けて、第1引出部40a、40b、40c、40dがこの順で並んで設けられている。
【0034】
各第1引出部40a、40b、40c、40dのそれぞれは、コネクタ接続線部分24a、24b、24c、24dを幹線部分22の外周外方に向けて引出可能な開口形状、ここでは、方形開口形状に形成されており、幹線収容部32の一側方に向けて開口している。各第1引出部40a、40b、40cの開口位置は、幹線収容部32の幅方向において同じ位置で開口しており、第1引出部40dは、第1引出部40a、40b、40cよりも奥の位置にある。
【0035】
また、この外装部材30は、2つの第2引出部50e、50fを備える。ここでは、幹線収容部32の他側部の中央寄りの部分から他端部に向けて、第2引出部50e、50fがこの順で並んで設けられている。
【0036】
各第2引出部50e、50fのそれぞれは、コネクタ接続線部分24e、24fを幹線部分22の外周外方に向けて引出可能な開口形状、ここでは、方形開口形状に形成されており、幹線収容部32の一側方に向けて、即ち、上記各第1引出部40a、40b、40c、40dと同方向に開口している。第2引出部50eの開口位置は、第2引出部50fよりも突出した位置にある。
【0037】
このように、第1引出部40a、40b、40c、40dと、第2引出部50e、50fとは、幹線収容部32の延在方向において異なる位置に設けられている。
【0038】
また、上記幹線収容部32のうち第1引出部40a、40b、40c、40dと、第2引出部50e、50fとの間に、曲げ容易部36が設けられている。ここでは、幹線収容部32のうち第1引出部40dと、第2引出部50eとの間の部分の中間部に、曲げ容易部36が設けられている。曲げ容易部36は、幹線収容部32のうち曲げ容易部36が設けられた箇所以外の部分よりも曲げ容易に形成された部分である。
【0039】
ここでは、外装部材30は、後述するように、不織部材をホットプレスすることにより形成されている。そして、外装部材30のうち曲げ容易部36が設けられた箇所以外の部分をホットプレスによって、曲げ容易部36よりも硬くなるように加工し、適宜折曲げ加工して上記直方体形状に形成することによって、幹線部分22を所定形状に維持した状態で収容可能な形状に形成している。また、外装部材30のうち曲げ容易部36を形成する部分を、ホットプレスせずに不織部材本来の柔軟な性状に保つことによって、曲げ容易部36に形成している。なお、幹線部分22は、外装部材30のうち曲げ容易部36の両端外側部分に収容されることで、所定形状に維持されているため、本曲げ容易部36においてもある程度偏平な状態に維持することができる。
【0040】
上記第1引出部40a、40b、40c、40d及び第2引出部50e、50fは、後述するように、車両に組付ける際に、接続先となる相手側のコネクタ126a、126b、126c、126d、126e、126fの各位置に対向する位置に設けられている。好ましくは、第1引出部40a、40b、40c、40d及び第2引出部50e、50fから引出されるコネクタ接続線部分24a、24b、24c、24d、24e、24fの端部のコネクタ26a、26b、26c、26d、26e、26fは、同一方向を向いて並ぶコネクタ126a、126b、126c、126d、126e、126fに接続される。また、第1引出部40a、40b、40c、40d及び第2引出部50e、50fの間隔は、接続先となるコネクタ126a、126b、126c、126d、126e、126fの間隔と同じである。
【0041】
ワイヤーハーネス20は、下記のようにして、外装部材30内に収容されている。
【0042】
すなわち、ワイヤーハーネス20のうち幹線部分22が幹線収容部32内に収容される。これにより、幹線部分22は、偏平な状態に維持され、本ワイヤーハーネス20を車両に組付けた状態でその周辺部品への干渉が抑制される。また、幹線部分22は、幹線収容部32によって覆われているため、本幹線収容部32自体によっても他の部品との直接的な接触が抑制される。
【0043】
上記状態で、コネクタ接続線部分24a、24b、24c、24d、24e、24fのそれぞれが、第1引出部40a、40b、40c、40d及び第2引出部50e、50fを通って外部に向けて引出される。これにより、コネクタ接続線部分24a、24b、24c、24d、24e、24fのそれぞれが、幹線部分22の延在方向において一定位置から側方に引出される状態が維持される。また、第1引出部40a、40b、40c、40d及び第2引出部50e、50fは、幹線収容部32の一側方に開口しているため、コネクタ接続線部分24a、24b、24c、24d、24e、24fの延出方向も、幹線部分22の外周周りにおいて揃った状態となるように維持される。
【0044】
なお、第1引出部40a、40b、40c、40d及び第2引出部50e、50fの各開口前方位置で、コネクタ26a、26b、26c、26d、26e、26fを保持できるように、第1引出部40a、40b、40c、40d及び第2引出部50e、50fから延出するコネクタ接続線部分24a、24b、24c、24d、24e、24fの長さ寸法はなるべく短いことが好ましい。ここでは、第1引出部40a、40b、40c及び第2引出部50fから延出する第1引出部40a、40b、40c及び第2引出部50fの長さ寸法は、第1引出部40a、40b、40c及び第2引出部50fの前方位置でコネクタ26a、26b、26c、26fを支持可能な程度に設定されている。
【0045】
<外装部材の製造方法について>
上記外装部材30は、ホットプレスされたシート状の不織部材70を折曲げることによって形成される。
図4及び
図5はホットプレスされたシート状の不織部材70を示す展開図であり、
図6は外装部材30を示す斜視図であり、
図7は外装部材30を示す平面図であり、
図8は外装部材30を示す正面図であり、
図9は外装部材30を示す左側面図であり、
図10は外装部材30を示す右側面図である。
【0046】
不織部材70は、高温状態で圧縮されることによって高剛性に加工可能なシート状の不織材料の少なくとも一部をホットプレスすることによって形成されたシートである。このような不織材料としては、複数の繊維が織られずに絡み合ったシート状の繊維材料であって、柔軟性を有するものを使用することができる。当該不織材料は、加熱によって少なくとも一部が溶融し、さらに硬化することにより、高剛性を呈するように加工することができる。
【0047】
具体的には、シート状の不織材料としては、絡み合う基本繊維と、接着樹脂(「バインダ」とも呼ばれる)とを含む柔軟性を有するものを用いることができる。接着樹脂は、基本繊維の融点よりも低い融点を有する樹脂である。そして、この不織材料を、基本繊維の融点よりも低くかつ接着樹脂の融点よりも高い温度に加熱することで、接着樹脂が溶融して基本繊維間に染みこむ。この後、不織材料が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化する。これより、不織材料が硬化して、加熱前の状態よりも硬くなる。また、接着樹脂が溶融している状態で、不織シート材料を圧縮すると、当該不織材料は、その圧縮時における所定の成形形状に維持される。
【0048】
接着樹脂は、粒状であっても繊維状であってもよい。芯繊維の外周に接着樹脂層を形成してバインダ繊維を構成し、これを基本繊維と絡み合わせるようにしてもよい。この場合の芯繊維としては、上記基本繊維と同材料のものを用いることができる。
【0049】
上記基本繊維としては、接着樹脂の融点で繊維状態を保ち得るものであればよく、樹脂繊維の他、各種繊維を用いることができる。また、接着樹脂としては、基本繊維の融点よりも低い融点を持つ熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。基本繊維と接着樹脂の組合わせとしては、基本繊維をPET(ポリエチレンテレフタレート)の樹脂繊維とし、接着樹脂をPETとPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂とした例が挙げられる。この場合、基本繊維の融点は接着樹脂の融点よりも高い。このため、不織材料を基本繊維と接着樹脂とのそれぞれの融点間の温度に加熱すると、接着樹脂が溶融し、溶融せずに繊維状を保つ基本繊維間に染込む。そして、不織材料が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化し、不織材料は硬くなって加熱時の成形形状を維持する。つまり、上記不織材料を、高温状態で、所定の面間に挟み込んで圧縮することで、不織材料が当該所定の面の形状に応じた所定形状に成形され、冷却されると、当該成形された形状に維持される。
【0050】
また、加工された不織材料を完全に切断しないように、厚み方向の途中まで切込むこと、或は、加熱圧縮加工時に不織材料の線状部分以外の部分を加熱して非加熱部分を柔軟なままに残すことなどによって、シート状の不織材料に折曲げ容易な折目を形成することができる。
【0051】
この不織部材70は、幹線部分22の底面に対応する領域70aと、上面に対応する領域70cと、両側面に対応する領域70b、70dと、下面に重ね合される領域70eとを含む。領域70d、70eの長さ寸法は、領域70a、70b、70cの長さ寸法よりも短い。領域70a、70b、70c、70d、70eのうち延在方向中間部(つまり、曲げ容易部36に対応する部分)はホットプレスされない領域Pとされ、領域70a、70b、70c、70d、70eの両端部はホットプレスされることにより硬くなった領域Qとされている。
【0052】
なお、不織部材70は、ホットプレスする際の温度、加熱時間、圧縮程度等を調整することで、硬さ、柔らかさを容易に調整することができる。このため、上記領域Pは、領域Qよりも柔らかい状態を保ち得る範囲で、ホットプレスされていてもよい。
【0053】
そして、領域70aに領域70eを重ね合せるようにして、これらの領域70a、70b、70c、70d、70eを偏平な方形筒状に形成することができる。
【0054】
また、上記領域70a、70cのそれぞれの延在方向両端には、幹線部分22の両端を閉塞する領域71a、71bが設けられており、これらの領域71a、71bを折曲げることによって、領域70a、70b、70c、70d、70eによって形成される方形筒状部分の両端を閉じることができる。
【0055】
さらに、領域70cの延在方向中間部には、付加領域72a、72bが形成されており、この付加領域72a、72bを折曲げることによって、第1引出部40d、第2引出部50eの側方部分を閉じることができる。
【0056】
これらにより、幹線収容部32が形成される。
【0057】
さらに、付加領域72aの外方部分に帯状の延出領域73a、73bが形成され、領域70aの一側部の延在方向中間部に帯状の延出領域73c、73eが形成されている。また、付加領域72bの外方部分に帯状の延出領域73fが形成されている。そして、上記のように幹線部分22を形成した状態で、各延出領域73a、73b、73c、73e、73fが、U字状に折曲げられることで、幹線収容部32の一側部が仕切られ、もって、第1引出部40a、40b、40c、40d、第2引出部50e、50fが形成される。
【0058】
なお、この不織部材70のうち各領域間には折目Lが形成されていることが好ましい。また、上記不織部材70の各領域の端部には、差込み片76pが形成され、当該差込み片76pに対応する位置にはスリット76sが形成され、差込み片76pをスリット76sに挿入することで、上記折曲げ状態が維持されている。もっとも、上記折曲げ状態は、その他、不織部材70同士の超音波溶着、粘着テープを巻回すること等によって維持されてもよい。
【0059】
なお、上記外装部材30は、ホットプレスされた不織部材70以外によって構成することもできる。例えば、段ボール又は段ボールと同様構造をプラスチックによって形成されたもの等の板材を折曲げること等によって、外装部材を製造することもできる。また、溶融した樹脂を金型内に流し込む射出成形によっても、外装部材を製造することもできる。これらの場合において、上記曲げ容易部は、蛇腹形状に形成すること等により実現可能である。
【0060】
もっとも、不織部材であれば、幹線収容部32を曲げ容易部36とそれよりも硬い部分とに容易に作り分けることができるというメリットがある。
【0061】
<外装部材付ワイヤーハーネスを車両に組込む手順について>
図11〜
図13は、外装部材付ワイヤーハーネス10を車両(図では車両の一部を図示)に組込む直前状態を示す概略図である。車両の所定部位100には、電気部品110のコネクタ126a、126b、126c、コネクタ126d、126e、126f等が一定位置に設けられている。各コネクタ126a、126b、126c、126d、126e、126fは、同一方向を向いてに配設されている。各コネクタ126a、126b、126c、126d、126e、126fは、第1引出部40a、40b、40c、40d及び第2引出部50e、50fと同じ間隔で設けられている。
【0062】
まず、作業者が、第1引出部40a、40b、40c、40d及び第2引出部50e、50fを、コネクタ126a、126b、126c、126d、126e、126fに対向させる姿勢及び位置で、外装部材付ワイヤーハーネス10を支持する。この状態では、少なくともコネクタ26a、26b、26c、26fは、相手側のコネクタ126a、126b、126c、126fに対向する位置に配設される。また、コネクタ26d、26eも相手側のコネクタ126d、126eに近い位置に配設される。
【0063】
この後、
図14に示すように、作業者は、第1引出部40a、40b、40cから引出されたコネクタ接続線部分24a、24b、24cの端部のコネクタ26a、26b、26cを一括して又は順次掴んで、それぞれ相手側のコネクタ126a、126b、126cに接続する。この際、コネクタ26a、26b、26cと相手側のコネクタ126a、126b、126cとは対向する位置に配設されているため、接続先を間違えることなく、正確かつ容易に接続作業を実施できる。同様に、作業者は、第1引出部40dから引出されたコネクタ接続線部分24dの端部のコネクタ26dを掴んで、相手側のコネクタ126dに接続する。
【0064】
これらの接続作業を行う際に、幹線収容部32を曲げ容易部36で曲げておくことができるため、コネクタ26e、26fを、相手側のコネクタ126e、126fに接続しない状態のままとすることができる。
【0065】
次に、作業者が、
図15〜
図17に示すように、コネクタ26e、26fを順次掴んで、相手側のコネクタ126e、126fに接続する。この際、コネクタ26eと相手側のコネクタ126eとは対向する位置に配設されているため、接続先を間違えることなく、正確かつ容易に接続作業を実施できる。
【0066】
上記接続作業を実施する際、コネクタ26a、26b、26c、26dが相手側のコネクタ126a、126b、126c、126dに接続されているにも拘らず、幹線収容部32を曲げ容易部36で曲げることで、コネクタ26e、26fを比較的自由に動かして、相手側のコネクタ126e、126fに接続することができる。
【0067】
これらにより、本外装部材付ワイヤーハーネス10の接続作業が終了する。
【0068】
このように、幹線収容部32を曲げ容易部36で曲げることで、コネクタ26a、26b、26c、26dの接続作業と、コネクタ26e、26fとの接続作業とを、相互の影響を抑制しつつ別々に容易に実施することができる。
【0069】
<効果等>
以上のように構成された外装部材付ワイヤーハーネス10によると、幹線部分22を収容する幹線収容部32によって、ワイヤーハーネス20の幹線部分22の外形状を一定形状に維持することができる。ここでは、幹線部分22を偏平な形状に維持することができる。これにより、ワイヤーハーネス20の幹線部分22とその周辺部品との干渉を有効に抑制することができる。
【0070】
また、幹線収容部32のうち第1引出部40a、40b、40c、40dと、第2引出部50e、50fとの間に曲げ容易部36が設けられているため、第1引出部40a、40b、40c、40dから引出されるコネクタ接続線部分24a、24b、24c、24dと、第2引出部50e、50fから引出されるコネクタ接続線部分24e、24fとの相対的な位置自由度を向上させることができる。これにより、コネクタ接続線部分24a、24b、24c、24dの端部のコネクタ26a、26b、26c、26dの接続作業と、コネクタ接続線部分24e、24fの端部のコネクタ26e、26fの接続作業等を容易に行える。
【0071】
また、第1引出部40a、40b、40c、40d、第2引出部50e、50fによって、コネクタ接続線部分24a、24b、24c、24d、24e、24fの引出位置が一定位置に維持され、かつ、幹線部分22の外周外方に向けて引出されているため、コネクタ接続線部分24a、24b、24c、24d、24e、24fを容易に識別して、その端部のコネクタ26a、26b、26c、26d、26e、26fの接続作業等を容易に行える。
【0072】
なお、コネクタの全体が、第1引出部、第2引出部から外部に出ている必要はなく、コネクタの基端部が第1引出部、第2引出部内に配設されていてもよい。
【0073】
また、不織部材70は、ホットプレスの有無、又は、ホットプレスする際の温度、加熱時間、圧縮程度等を調整することで、硬さ、柔らかさを容易に調整することができる。そこで、幹線収容部32のうち曲げ容易部36以外の部分を、曲げ容易部36よりも硬くなるようにホットプレスすることで、幹線部分22の外形状を一定形状に維持することができ、かつ、曲げ容易部36で容易に曲げられるように容易に加工することができる。
【0074】
また、第1引出部40a、40b、40c、40d及び第2引出部50e、50fは、幹線部分22に対して同一方向を向くように開口しているため、これらから引出されるコネクタ接続線部分24a、24b、24c、24d、24e、24fの端部のコネクタ26a、26b、26c、26d、26e、26fを相手側のコネクタ126a、126b、126c、126d、126e、126fに容易に接続することができる。
【0075】
特に、第1引出部40a、40b、40c、40d及び第2引出部50e、50fが、それぞれから引出されるコネクタ接続線部分24a、24b、24c、24d、24e、24fの端部のコネクタ26a、26b、26c、26d、26e、26fの相手側のコネクタ126a、126b、126c、126d、126e、126fの各位置に対向する位置に設けられているため、各コネクタ26a、26b、26c、26d、26e、26fの接続作業を容易かつ正確に行える。
【0076】
なお、幹線部分22に含まれる電線21の一部又は全部に余長が生じる場合、
図18に示すように、曲げ容易部36内にその余長部分21aを折返す等して収容してもよい。曲げ容易部36は、柔軟な状態に保たれているため、そのような余長部分を収容可能なスペースを、容易に確保することができる。
【0077】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。