特開2015-223152(P2015-223152A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニチカ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015223152-農業用被覆資材 図000004
  • 特開2015223152-農業用被覆資材 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-223152(P2015-223152A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】農業用被覆資材
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/02 20060101AFI20151117BHJP
   D04H 1/541 20120101ALI20151117BHJP
   A01G 13/00 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   A01G13/02 B
   D04H1/541
   A01G13/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-111353(P2014-111353)
(22)【出願日】2014年5月29日
【新規性喪失の例外の表示】申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】権藤 壮彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克昇
【テーマコード(参考)】
2B024
4L047
【Fターム(参考)】
2B024DB01
2B024DB03
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA27
4L047AB07
4L047BA08
4L047BB09
4L047CA12
4L047CB08
4L047CB10
4L047CC15
4L047DA00
(57)【要約】
【課題】保温性、透光性、柔軟性を保持しながらも、敷設時に風によって煽られることなく良好に形態維持できる農業用資材を提供することを課題とする。
【解決手段】芯鞘型複合連続繊維により構成される不織布からなる農業用被覆資材であり、該不織布の目付が10〜25g/m、該繊維の芯部がポリエステル系重合体、鞘部がポリオレフィン系重合体からなり、鞘部の重合体の融点が芯部の重合体の融点よりも50℃以上低く、該繊維の単繊維繊度が13〜20デシテックス、該繊維同士は、熱圧着部を有することにより一体化しており、該熱圧着部は、熱エンボスロールを用いた熱エンボス加工により形成されたものであって、熱エンボス加工において、連続する凸部が凹部を囲繞し、凸部に囲繞された多数の凹部が存在するパターン彫刻がなされたエンボスロールが用いられることにより形成されたものであることを特徴とする農業用被覆資材。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯鞘型複合連続繊維により構成される不織布からなる農業用被覆資材であり、
該不織布の目付が10〜25g/mであり
該繊維の芯部がポリエステル系重合体、鞘部がポリオレフィン系重合体からなり、鞘部の重合体の融点が芯部の重合体の融点よりも50℃以上低く、
該繊維の単繊維繊度が13〜20デシテックスであり、
該繊維同士は、熱圧着部を有することにより一体化しており、
該熱圧着部は、熱エンボスロールを用いた熱エンボス加工により形成されたものであって、
熱エンボス加工において、連続する凸部が凹部を囲繞し、凸部に囲繞された多数の凹部が存在するパターン彫刻がなされたエンボスロールが用いられることにより形成されたものであることを特徴とする農業用被覆資材。
【請求項2】
農作物あるいは苗に直に触れるように覆って敷設するシートであり、請求項1記載の農業用被覆資材によって構成されることを特徴とするべたがけシート。
【請求項3】
農業用被覆資材の製造方法において、
芯部がポリエステル系重合体、鞘部がポリオレフィン系重合体からなり、鞘部の重合体の融点が芯部の重合体の融点よりも50℃以上低く、
単繊維繊度が13〜20デシテックスである
芯鞘型複合連続繊維を多数本堆積させて不織ウェブを得た後、
該不織ウェブを熱エンボス装置に通して熱エンボス加工を施すにあたり、
熱エンボスロールとして、連続する凸部が凹部を囲繞し、凸部に囲繞された多数の凹部が存在するパターン彫刻がなされたエンボスロールを用いて熱エンボス加工を施すことを特徴とする請求項1記載の農業用被覆資材の製造方法。
【請求項4】
凸部の面積率が25〜50%であることを特徴とする請求項3記載の農業用被覆資材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用被覆資材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、発芽や育苗を促したり、栽培中の農作物を霜・雨・雹等から守る等の目的で、土壌および農作物や苗に直に触れるようにシートで被覆するべたがけ栽培が行われている。そして、この被覆シートは、べたがけシートと呼ばれるものである。べたがけシートは、農作物の成長速度や出荷時期を調整するために、覆っていたシートを剥がしたり、また覆ったりして、作物の状況を確認しながら、適宜、シートを取り付けたり取り外したりすることもある。
【0003】
このようなべたがけシートとしては、ポリエチレン製等のフィルムを割繊化した不織布や、ポリエステル等によって構成される連続繊維からなる不織布が用いられており、特に連続繊維からなる不織布は、通気性や通水性があり、かつ透光性・保温性にも優れるという理由から多く用いられる。例えば、特許文献1には、複合フィラメントからなる不織布であって紫外線吸収剤が含有されることにより、耐候性と保温性が良好な、べたがけシートに用いられる農業用不織シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−139468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載のシートをべたがけシートとして敷設して使用中に、シートが風によって煽られるという現象が起こる。この現象は、シート自体は繊維間空隙を有するため通気性は有するものの、敷設時にシートの繊維間空隙を風が十分に通り抜けずに抵抗を受けて煽られることにより生じると考える。一般に、通気性を測定するときは、数cm〜十数cmの試験片を用いて、この試験片の外周をしっかり固定した状態で強制的に通気した量を測るものであり、実際の敷設における通気(通風)とは固定状態が異なることから、一定の通気性を有するシートであっても、風の通り抜けやすさや風に対する抵抗が問題になるのである。
【0006】
本発明は、べたがけシートに要される保温性、透光性、柔軟性を保持しながらも、敷設時に風によって煽られることなく良好に形態維持できる農業用資材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を達成するものであって、以下を要旨とする。すなわち、本発明は、芯鞘型複合連続繊維により構成される不織布からなる農業用被覆資材であり、
該不織布の目付が10〜25g/mであり
該繊維の芯部がポリエステル系重合体、鞘部がポリオレフィン系重合体からなり、鞘部の重合体の融点が芯部の重合体の融点よりも50℃以上低く、
該繊維の単繊維繊度が13〜20デシテックスであり、
該繊維同士は、熱圧着部を有することにより一体化しており、
該熱圧着部は、熱エンボスロールを用いた熱エンボス加工により形成されたものであって、
熱エンボス加工において、連続する凸部が凹部を囲繞し、凸部に囲繞された多数の凹部が存在するパターン彫刻がなされたエンボスロールが用いられることにより形成されたものであることを特徴とする農業用被覆資材を要旨とするものである。
【0008】
本発明の農業用被覆資材は、芯鞘型複合連続繊維により構成される不織布からなる。連続繊維を構成する芯部は、ポリエステル系重合体、鞘部はポリオレフィン系重合体からなる。
【0009】
芯部を構成するポリエステル系重合体としては、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタリン−2,6ジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸もしくはアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類と、アルコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等のジオール化合物とから合成されるホモポリエステルないしは共n重合ポリエステルがあり、上記ポリエステルにパラオキシ安息香酸、5−ソジュームスルフオイソフタール酸、ポリアルキレングリコール、ペンタエリスリトール、ビスフエノールAなどが添加あるいは共重合されていてもよい。
【0010】
鞘部を構成するポリオレフィン系重合体としては、炭素原子数が2〜16の脂肪族α−モノオレフイン、たとえばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセン、1−オクタデセンのホモポリオレフィン又は共重合ポリオレフィンなどがある。脂肪族α−モノオレフインは、他のオレフィンおよび、または少量(重合体重量の約10重量%まで)の他のエチレン系不飽和モノマー、たとえばブタジエン、イソプレン、ペンタジエン−1,3、スチレン、α−メチルスチレンの如き類似のエチレン系不飽和モノマーと共重合されていてもよい。特にポリエチレンの場合は、重合体重量の約10重量%までのプロピレン、ブテン−1、ヘ
キセン−1、オクテン−1または類似の高級α−オレフィンと共重合させたものが好ましい。
【0011】
なお、ポリエステル系重合体およびポリオレフィン系重合体には、本発明の目的を阻害しない範囲で、艶消し剤、顔料、防炎剤、消臭剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤などの任意の添加物が添加されていてもよい。
【0012】
芯部と鞘部の組合せとしては、上記の重合体から、融点差が50℃以上あるものを選択する。すなわち、芯部を構成するポリエステル系重合体の融点よりも鞘部を構成するポリオレフィン系重合体の融点が50℃以上低いものを選択する。不織布を構成する連続繊維同士は、熱圧着部を有することにより一体化して不織布として形態を保持している。熱圧着部は、熱エンボス加工により形成されるものであるが、熱圧着部においては、鞘部は溶融または軟化して接着に寄与するが、芯部は熱の影響を完全に受けて溶融するのではなく繊維形態を維持させて、不織布の引裂強力を向上に寄与する。このように熱圧着部において、鞘部は溶融または軟化し、一方、芯部は繊維形態を維持させるために、両者の融点に50℃以上の差を設けることにより、熱エンボス加工の際に、芯部を熱の影響を受けさせずに、かつ鞘部を確実に溶融させて熱圧着部での熱接着固定をすることができる。
【0013】
連続繊維における芯鞘複合比率(質量比)は、芯部/鞘部=80/20〜50/50がよい。鞘部よりも芯部の比率を同等以上にすることにより、機械的物性に優れ、実用的な強度が維持できる。なお、芯部の比率が80質量%を超えると、接着成分となる鞘部の比率が小さくなるため、熱圧着部での接着強力が低下する傾向となるため、芯部の比率の上限は80質量%がよい。
【0014】
連続繊維の単繊維繊度は13〜20デシテックスであり、かつ、不織布の目付は10〜25g/mである。単繊維繊度が13デシテックス以上とすることにより、風が抜けるための繊維間の空隙を十分に確保することができる。したがって、展張時に、風の抵抗を受けて煽られることにより、資材が地面や作物をバタバタたたきつけて構成する繊維がその摩擦により毛羽立ちが生じたり、作物を傷つたり、また資材が引裂かれて破れる恐れ等の問題が生じない。また、13デシテックス以上とすることにより、資材に良好な形態安定性を付与できる。一方、20デシテックス以下にすることにより、敷設した資材内部の保温性も確保することができる。目付を10g/m以上とすることにより、農業用資材として実用的な強度、保温性を確保することができ、一方、25g/m以下とすることにより良好な通風性を維持するとともに、透光性も確保できる。
【0015】
不織布は、熱エンボスロールを用いた熱エンボス加工が施されて熱圧着部が形成されているが、該熱圧着部は、連続する凸部が凹部を囲繞し、凸部に囲繞された多数の凹部が存在するパターン彫刻がなされたエンボスロールを用いて形成される。本発明の農業用資材は、上記したように、十分な通風性を具備することを考慮して、構成繊維の単繊維繊度が従来使用されていた農業資材よりも大きい繊度を設定し、かつ、目付をより小さく設定しているため、資材を構成する単位面積あたりの構成繊維本数が相対的に少なく、個々の繊維と繊維の間には十分な空隙が確保されている。不織布を得る際に、連続繊維が堆積してなる不織ウェブに熱エンボス加工を施すが、このように単位面積あたりの構成繊維本数が相対的に少ない不織ウェブに対して、連続する凸部が凹部を囲繞し、凸部に囲繞された多数の凹部が存在するパターン彫刻がなされたエンボスロールを用いて行う。熱エンボス加工では、不織ウェブにおいて、エンボスロールの凸部と当接する箇所に熱圧着部が形成されるが、目付が比較的小さく、かつ単繊維繊度が比較的大きい繊維によって構成される不織ウェブであって、二次元的に見たときに、繊維が存在しない箇所や領域を多く有していても、連続した凸部を有するエンボスロールを用いることにより、凸部との当接箇所、領域を確実に形成させて、良好に構成繊維同士を熱接着固定する熱圧着部を形成する。また、凸部が連続していることにより、得られる不織布の形態安定性も向上する。凸部が散点状に形成されてなるエンボスロールを用いると、凸部の大きさや面積率にもよるが、そもそも不織ウェブを構成する連続繊維が規則正しく堆積、配列しているものではなくランダムに堆積しているので、エンボスロールの散点状の凸部とがランダムに存在する繊維が当接する箇所(熱圧着部)もまた規則的に形成されないため一定の形態安定性を有する不織布が得られにくいが、本発明では、エンボスロールのロール表面の全面において連続した凸部を有するエンボスパターンのエンボスロールを用いることにより、このような現象が生じにくく、形態安定性の良好な不織布を得ることができる。
【0016】
連続する凸部が凹部を囲繞し、凸部に囲繞された多数の凹部が存在するパターンとしては、例えば、図1に示すごとく格子状の繰り返しパターンが挙げられる。凸部が連続線により形成されて、連続線(凸部)に囲まれた多数の凹部が形成される。他の例を図2に示す。図2は、連続する領域からなる凸部が凹部を囲繞して、凸部に囲繞された多数の楕円形状の凹部が形成されている繰り返しパターンである。このような凹部の形状は適宜設計すればよく、円形、楕円形、三角や四角等の多角形等さまざまな形状が挙げられる。また、個々の凹部の面積は0.2〜2mm程度、凹部の密度は15〜70個/cm程度がよい。エンボスロールの全表面に対して凸部が占める面積の比率(凸部の面積率)は、得られる不織布に形成される熱圧着部と非熱圧着部(繊維が単に堆積してなる領域)とのバランスを考慮して、25〜50%がよい。25%以上とすることにより、不織ウェブにおける繊維の存在箇所と良好に当接させて、形態安定性に優れる不織布を得ることができる。また、上限は50%とすることにより、得られる不織布において熱圧着部以外の領域(繊維が堆積してなる領域)も確保することにより、不織布に柔軟性と実用的な機械的強力を具備させ、通風性が良好な資材を得ることができる。
【0017】
熱エンボス加工に用いるエンボス装置は、上記した凹凸の彫刻パターンを有するエンボスロールとフラットロールとからなる装置を用いるとよい。
【0018】
エンボス加工を施した不織布には、本発明の目的を阻害しない範囲で、親水剤、帯電防止剤など任意の剤が塗布等により付着していてもよい。
【0019】
本発明の農業用被覆資材は、上述した不織布により形成されるが、当該資材は、シングルタング法による引裂強さが、MD方向が10N以上かつそのときの伸度が100%以上であり、CD方向が5N以上かつそのときの伸度は70%以上が好ましい。この引裂強さが前記値以上とすることにより、杭などで資材を地面に固定した際、杭を打ちつけた箇所から資材が破れ易くなることを防止し、長期間の使用に耐えられる。
【0020】
本発明の農業用被覆資材は、45°カンチレバー法による曲げ硬さがMD方向、CD方向ともに、40mm〜80mmであることが好ましい。40mm以上とすることにより、柔らか過ぎて、まとわりつく等の取扱いにくいものではなく、また、風になびき過ぎることもなく、ある程度の柔軟性を有しながらも程よい張り感を保持することができ、取扱い性と施工性等が良好の資材となる。また、上限を80mmとすることにより、硬くなりすぎず、取扱い性が良好である。
【0021】
本発明の農業用被覆資材を構成する不織布は、以下の方法により製造できる。まず、不織布を構成する芯鞘複合連続繊維は、一般に使用されている芯鞘型複合紡糸口金を用いて溶融紡糸すればよい。例えば、溶融した熱可塑性重合体を紡糸孔へ導くための導入部分の上部で、溶融した鞘部の重合体の中央部分に溶融した芯部の重合体を注入するような構造を持ったものが多用されている。また、不織布は、いわゆるスパンボンド法により製造することができる。たとえば、空気圧を利用して連続繊維束を引き取りながら延伸し,コロナ放電等の方法で静電気的に開繊し、移動する捕集面上に堆積することでウエブ化したのち熱エンボス加工を施す。
【0022】
引き取る際の牽引速度は、2000〜5000m/分に設定することが好ましく、3000〜5000m/分であることがさらに好ましい。牽引速度が2000m/分未満であると、糸条において、十分に分子配向が促進されず、得られる不織布の寸法安定性が劣りやすくなる。一方、牽引速度が5000m/分を超えると紡糸安定性に劣りやすくなる。
【0023】
牽引細化した多数本の連続繊維は、公知の開繊器具にて開繊した後、スクリーンコンベアなどの移動式捕集面上に開繊、堆積させて不織ウエブを形成する。その後、この不織ウエブを熱エンボス装置に通して、熱エンボス加工を施して不織布とする。熱エンボス加工いついては、上述したとおりである。
【0024】
本発明の農業用被覆資材は、べたがけ用シートとして用いることにより、特に機能を良好に発揮しうる。また、べたがけシート以外の被覆資材、例えば、直に被覆するのではなくトンネル状に被覆する資材やハウス内の天井部分等にカーテンのごとく被覆する被覆資材、地面を被覆するマルチング資材等の農業用被覆資材としても用いることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の農業用被覆資材は、保温性、透光性、柔軟性を保持しながらも、敷設時に風によって煽られることなく良好に形態維持できる適度な剛性も有し、特にべたがけ用シートとして好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】熱エンボス加工に用いるエンボスロールのパターンの一例を示す。
図2】熱エンボス加工に用いるエンボスロールのパターンの他の一例を示す。
【実施例】
【0027】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例において、各特性値の測定を次の方法により実施した。
(1)目付(g/m):10cm×10cmの試料片10点を作成し、標準状態における各試料片の質量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算して、不織布の目付(g/m)とした。
(2)単繊維繊度(デシテックス):顕微鏡を用いて繊維ウェブを観察し、50本の繊維の繊維径をそれぞれ測定し、密度補正して求めた繊度の平均値を単糸繊度(デシテックス)とした。
(3)引張強力(N/5cm幅)および伸度(%):幅5cm×長さ20cmの試験片を10個準備し、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、商品名「UTM−4−1−100」)を用いて、JIS−L−1913に準じて測定した。このときの条件は、つかみ間隔が10cm、引張速度20cm/分であった。伸張−荷重曲線を描き、得られた伸長−荷重曲線から、求められる最大荷重時の強さ(N/5cm幅)を測定し、10点の平均値を引張強力とした。また、最大荷重時の伸びを測定し、この伸びから伸度を求めて、10点の平均値を伸度(%)とした。
(4)透光率(%):JIS L 1906 透光性の記載に準じて、幅(CD方向)1m当たり5枚の試験片を採取し、照度を2000lxとして測定した。
(5)引裂強さ(N)と引裂伸度(%):JIS L 1906 引裂強さ シングルタング法に基づき測定した。すなわち、5cm×25cmの試験片を、1m当たりMD方向、CD方向ともに5枚採取した。次に、試験片の短辺の中央に短辺と直角に10cmの切れ目を入れ、定速伸張型引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUTM−4−1−100)を用い、つかみ間隔10cm、引張速度20cm/分で伸張し、得られた切断時破断荷重(N)の平均値を引裂強さとした。また、上記条件で得られた切断時の伸度(%)の平均値を引裂伸度とした。
(6)剛軟性 45°カンチレバー法(mm):JIS L 1096 剛軟性 45°カンチレバー法に基づき測定した。
【0028】
実施例1
ポリエステル系重合体として、融点が258℃、固有粘度が0.70のポリエチレンテレフタレートを使用した。ポリオレフィン系重合体として融点が128℃、メルトインデックス値が25g/10分の高密度ポリエチレンを使用した。鞘/芯=35/65(質量比)となるように個別に計量した後、個別のエクトル−ダー型押出機を用いて溶融し、芯鞘形複合断面となるように溶融紡糸した。その紡糸糸条を冷却した後、エアーサッカーにより3500m/分の速度で引き取り、公知の開繊器にて開繊させ、移動する捕集面上に捕集・堆積させて連続繊維からなる不織ウエブとした。得られた芯鞘型複合連続繊維の単繊維繊度は、15dtexであった。さらに、この不織ウエブを、エンボスロールとフラットロールとからなる熱エンボス装置に通して熱圧着部を形成した。エンボスロールの彫刻パターンが、凸部が連続して凹部を囲繞してなり、個々の凹部が楕円形であり、楕円形の長軸が、互い違いに配置されてなる彫刻パターン(図2に示すごときパターン)を繰り返しパターンとするものであり、個々の凹部の面積が1.14mm、凹部の密度が64個/cm、エンボスロールの全表面に対して凸部が占める面積の比率(凸部の面積率)が27%のエンボスロールを用い、熱エンボス加工温度:123℃、線圧:200Nとして熱エンボス加工を施して目付15g/mの不織布を得た。
【0029】
比較例1
実施例1において、熱エンボス加工に用いるエンボスロールとして、円形の凸部が散点状に彫刻された柄であるエンボスパターンであって、個々の凸部の面積が0.7mm、凸部の密度が22個/cm、凸部の面積率が約15%のものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして不織布を得た。
【0030】
比較例2
実施例1において、得られる芯鞘型複合連続繊維の単繊維繊度が7dtexのものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の不織布を得た。
【0031】
得られた実施例1、比較例1、2の不織布の物性を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例1の不織布は、実用的な強伸度、透光性、引裂強さを具備するものであり、また、引張り試験や引裂き試験での伸度がいずれも比較例に比べて高く、展張時に風等の力が加わっても、被覆農作物を良好に被覆できることが期待できるものであった。また、適度な剛性を有することから、柔らかすぎず、取扱い性が良好であった。
【0034】
また、実施例1、比較例1、2の不織布を適宜の大きさに裁断して農業用被覆資材とし、屋外の試験用畝に被せ、資材の端部に適当な間隔で杭を打って地面に固定することにより敷設した。数日間放置して観察したところ、実施例1の農業用被覆資材は、風が吹いても、煽られることなく、良好に地面を覆っていたが、比較例1、2の資材は風に煽られて、覆っている地面をバタバタと打ち付けた。資材の表面状態を観察したところ、比較例1、2の資材は、資材表面に毛羽立ちが観察されたが、実施例1の農業用被覆資材は特に毛羽の発生はなかった。
図1
図2