【課題】光学フィルタの切替動作と画像信号処理とを高い精度で同期させる必要がある。また、カラー画像と狭帯域画像とを一画面内に並べて表示させるにあたり、フレームレートが実質的に低下する。
【解決手段】R、G、Bの各波長域に対応する狭帯域光を照射することにより得た被写体の画像信号に対し、第一のマトリクスを適用して第一の色変換処理を行うことにより、被写体を白色光で照射した場合に得られるカラー画像を擬似的に表現したカラー擬似画像を生成し、カラー擬似画像の生成と並行して、被写体の画像信号に対し、第二のマトリクスを適用して第二の色変換処理を行うことにより、被写体の特定部位を強調した狭帯域画像を生成し、生成されたカラー擬似画像と狭帯域画像とを外部モニタに出力して一画面内に並べて表示させることが可能な内視鏡用プロセッサを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電子内視鏡システムについて説明する。
【0016】
[電子内視鏡システム1の構成]
図1は、本実施形態の電子内視鏡システム1の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、電子内視鏡システム1は、医療用の撮像システムであり、電子スコープ100、プロセッサ200及びモニタ300を備えている。電子スコープ100は、プロセッサ200に対し、プロセッサ200の入出力端子部214を介して光学的かつ電気的に接続されている。プロセッサ200は、電子スコープ100より出力される画像信号を処理して画像を生成する画像処理装置と、自然光の届かない体腔内を電子スコープ100を介して照明する光源装置とを一体に備えた一体型プロセッサである。別の実施形態では、画像処理装置と光源装置とを別体で構成してもよい。
【0017】
図1に示されるように、プロセッサ200は、コントローラ202を備えている。コントローラ202は、信号の処理タイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡システム1内の各回路に出力してその動作を制御する。
図1中、図面を簡明化するため、コントローラ202と一部のブロックとの結線は省略している。
【0018】
プロセッサ200は、光源ユニット204を備えている。光源ユニット204は、ランプ、ランプ電源イグナイタ、コリメートレンズ(何れも不図示)を有している。ランプは、ランプ電源イグナイタによる始動後、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の各波長域を含む白色光を放射する。ランプには、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプが適している。ランプから放射された白色光は、指向性を持たせるためのコリメートレンズを透過して、フィルタユニット206に入射される。
【0019】
図2(a)及び
図2(b)は、フィルタユニット206の構成を示す図である。
図2(a)及び
図2(b)に示されるように、フィルタユニット206は、回転式フィルタターレット206T、ターレット用モータ206M及びフォトインタラプタ206PIを有している。
【0020】
回転式フィルタターレット206Tは、複数の光学フィルタ206F1と206F2とが円周方向に並べて配置されている。光学フィルタ206F1は、光源ユニット204より射出された白色光を透過させる白色用フィルタである。なお、光学フィルタ206F1は、何れの光学フィルタも貼り付けられていない開口に置き換えてもよい。また、
図3(a)に、光学フィルタ206F2の分光特性を示す。
図3(a)(並びに後述の
図3(b)、
図3(c)、及び
図6)中、縦軸は、透過率(正規化されているため単位無し)を示し、横軸は、波長(単位:nm)を示す。
図3(a)に示されるように、光学フィルタ206F2は、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の各波長域に半値幅の狭い分光透過率を持つ狭帯域フィルタである。
【0021】
ターレット用モータ206Mは、例えばステップモータであり、モータ軸が回転式フィルタターレット206Tの中心を貫通する軸受穴に圧入されている。ターレット用モータ206Mは、回転式フィルタターレット206Tをモータ軸中心に印加電圧(パルス)に応じた角度だけ回転させる。
【0022】
術者は、プロセッサ200のフロント面に形成されたフロントパネル212又は電子スコープ100の手元操作部110に対する表示モード指定操作(後述)を介して、回転式フィルタターレット206Tを回転させることができる。回転式フィルタターレット206Tは、表示モード指定操作に応じて180°回転して、光学フィルタ206F1及び206F2の一方を白色光の光路へ挿入し、他方を光路より退避させる。回転式フィルタターレット206Tの外周縁付近には、ホームポジションを検出するための位置検出用穴Hが開けられている。コントローラ202は、フォトインタラプタ206PIを通じた位置検出用穴Hの検出とターレット用モータ206Mへの印加パルス数を基に、光学フィルタF1とF2のどちらが光路に挿入されているかを認識する。
【0023】
フロントパネル212の構成には種々の形態が想定される。フロントパネル212の具体的構成例には、プロセッサ200のフロント面に実装された機能毎のハードウェアキーや、タッチパネル式GUI(Graphical User Interface)、ハードウェアキーとGUIとの組合せ等が挙げられる。
【0024】
光源ユニット204より射出された白色光は、図示省略されたIRカットフィルタにより赤外領域の光がカットされて、回転式フィルタターレット206Tに入射される。回転式フィルタターレット206Tに入射された白色光は、光路に挿入されている光学フィルタF1又はF2の分光特性に従って分光されて、調光ユニット208に入射される。
【0025】
調光ユニット208は、羽根絞りを有する周知の調光ユニットである。調光ユニット208は、術者によるフロントパネル212又は手元操作部110に対する輝度調節操作に従って羽根絞りを動作させて開度を変化させることにより、回転式フィルタターレット206Tを介した分光後の光(以下、「分光照射光」と記す。)の量を調節する。調光ユニット208は、術者による輝度調節操作が行われない場合には、映像の輝度が適正値(例えば製品出荷時に予め設定)となるように自動調光を行う。
【0026】
調光後の分光照射光は、カップリングレンズ210を透過して、電子スコープ100のLCB(Light Carrying Bundle)102の入射端に入射される。LCB102の入射端に入射された分光照射光は、LCB102内を全反射を繰り返すことによって伝播して、電子スコープ100の先端に配されたLCB102の射出端より射出される。LCB102の射出端より射出された分光照射光は、配光レンズ104を介して被写体を照射する。
【0027】
分光照射光により照射された被写体からの反射光は、対物レンズ106を介して固体撮像素子108の受光面上の各画素で光学像を結ぶ。固体撮像素子108は、例えばベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。別の実施形態では、固体撮像素子108は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサであってもよい。
図3(b)に、ベイヤ配列のオンチップフィルタを構成するR(Red)フィルタ、G(Green)フィルタ、B(Blue)フィルタの分光特性を示す。
図3(b)では、説明の便宜上、R(Red)フィルタ、G(Green)フィルタ、B(Blue)フィルタの各分光特性を一図にまとめて示している。
【0028】
コントローラ202は、ドライブ回路216にクロックパルスを供給する。ドライブ回路216は、コントローラ202より供給されるクロックパルスに従って、固体撮像素子108をプロセッサ200側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。固体撮像素子108は、ドライブ回路216による駆動制御に従い、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の各色に応じた画像信号に変換する。変換された画像信号は、入出力端子部214を介してプロセッサ200に入力され、プロセッサ200内のプリプロセス回路217において、相関二重サンプリング処理によるリセット雑音及びアンプ雑音の除去、AGC(Auto Gain Control)によるゲイン調整、AD変換、ホワイトバランス調整、色補間処理等の所定の信号処理が施された後、プロセッサ200の信号処理回路218に入力される。
【0029】
図4は、信号処理回路218の構成を示す図である。
図4に示されるように、信号処理回路218は、カラー画像処理回路218A、狭帯域画像処理回路218B及び画像出力回路218Cを備えている。
【0030】
カラー画像処理回路218Aは、色変換マトリクス回路218Aa(F1)、218Aa(F2)、通常カラー画像生成回路218Ab(F1)、擬似カラー画像生成回路218Ab(F2)及びカラー画像用セレクタ218Acを有している。また、狭帯域画像処理回路218Bは、色変換マトリクス回路218Ba(F2)及び狭帯域画像生成回路218Bb(F2)を有している。
【0031】
信号処理回路218に入力された画像信号は、カラー画像処理回路218Aの色変換マトリクス回路218Aa(F1)及び218Aa(F2)並びに狭帯域画像処理回路218Bの色変換マトリクス回路218Ba(F2)に入力される。これらの色変換マトリクス回路は夫々異なる色変換用のマトリクスを保持している。以下、色変換マトリクス回路218Aa(F1)が保持するマトリクスM1を数1に示し、色変換マトリクス回路218Aa(F2)が保持するマトリクスM2を数2に示し、色変換マトリクス回路218Ba(F2)が保持するマトリクスM3を数3に示す。
【0032】
(色変換マトリクス回路218Aa(F1)が保持するマトリクスM1)
[数1]
【0033】
マトリクスM1は、光学フィルタ206F1を介した白色光により照射された被写体を忠実に色再現するためのマトリクス係数である。
【0034】
(色変換マトリクス回路218Aa(F2)が保持するマトリクスM2)
[数2]
【0035】
マトリクスM2は、光学フィルタ206F2を介した狭帯域光により照射された被写体を、恰も白色光で照射された被写体であるかのように色再現するためのマトリクス係数である。
【0036】
(色変換マトリクス回路218Ba(F2)が保持するマトリクスM3)
[数3]
【0037】
マトリクスM3は、光学フィルタ206F2を介した狭帯域光により照射された被写体の血管を強調するためのマトリクス係数である。血管は、主にG(Green)及びB(Blue)に対して高い吸収特性を持つ。そのため、G(Green)及びB(Blue)以外の波長域の照射光は、血管画像のコントラストを低下させる要因となる。一方、光学フィルタF2を介した狭帯域光には、G(Green)及びB(Blue)に加えてR(Red)も含まれている。そこで、マトリクスM3は、R(Red)の信号成分を消去する係数となっている。
【0038】
色変換マトリクス回路218Aa(F1)に入力された画像信号は、忠実な色再現性を達成すべく、マトリクスM1によって色変換された後、通常カラー画像生成回路218Ab(F1)に入力される。通常カラー画像生成回路218Ab(F1)に入力された画像信号は、輪郭強調、γ補正等の所定の信号処理が施された後、カラー画像用セレクタ218Acに入力される。
【0039】
また、色変換マトリクス回路218Aa(F2)に入力された画像信号は、被写体を白色光で照射した場合に得られるカラー画像を擬似的に表現すべく、マトリクスM2によって色変換された後、擬似カラー画像生成回路218Ab(F2)に入力される。擬似カラー画像生成回路218Ab(F2)に入力された画像信号は、輪郭強調、γ補正等の所定の信号処理が施された後、カラー画像用セレクタ218Acに入力される。
【0040】
カラー画像用セレクタ218Acは、コントローラ202より入力される制御信号に従い、通常カラー画像生成回路218Ab(F1)より入力した画像信号(以下、「通常カラー画像信号G1」と記す。)及び擬似カラー画像生成回路218Ab(F2)より入力した画像信号(以下、「擬似カラー画像信号G2」と記す。)の一方を画像出力回路218Cに出力する。
【0041】
また、色変換マトリクス回路218Ba(F2)に入力された画像信号は、被写体の血管を強調表示すべく、マトリクスM3によって色変換された後、狭帯域画像生成回路218Bb(F2)に入力される。狭帯域画像生成回路218Bb(F2)に入力された画像信号は、輪郭強調、γ補正等の所定の信号処理が施された後、画像出力回路218Cに出力される。ここで、説明の便宜上、狭帯域画像生成回路218Bb(F2)より画像処理回路218Cに出力される画像信号を「狭帯域画像信号G3」と記す。
【0042】
画像出力回路218Cは、カラー・狭帯域画像用セレクタ218Ca、画像合成処理回路218Cb及びシングル・ツイン用セレクタ218Ccを有している。
【0043】
カラー・狭帯域画像用セレクタ218Caには、通常カラー画像信号G1(又は擬似カラー画像信号G2)と狭帯域画像信号G3とが入力される。カラー・狭帯域画像用セレクタ218Caは、コントローラ202より入力される制御信号に従い、通常カラー画像信号G1(又は擬似カラー画像信号G2)及び狭帯域画像信号G3の一方をシングル・ツイン用セレクタ218Ccに出力する。ここで、説明の便宜上、カラー・狭帯域画像用セレクタ218Caよりシングル・ツイン用セレクタ218Ccに出力される画像信号を「シングル画像信号Gs」と記す。
【0044】
画像合成処理回路218Cbにも、通常カラー画像信号G1(又は擬似カラー画像信号G2)と狭帯域画像信号G3とが入力される。画像合成処理回路218Cbは、入力された2系統の画像信号を用いて一画面内に2つの異なる画像を並べた合成画像の信号(以下、「ツイン画像信号Gt」と記す。)を生成して、シングル・ツイン用セレクタ218Ccに出力する。以下、説明の便宜上、通常カラー画像信号G1による画像を「通常カラー画像G1’」と記し、擬似カラー画像信号G2による画像を「擬似カラー画像G2’」と記し、狭帯域画像信号G3による画像を「狭帯域画像G3’」と記す。
【0045】
シングル・ツイン用セレクタ218Ccは、コントローラ202より入力される制御信号に従い、カラー・狭帯域画像用セレクタ218Caより入力されるシングル画像信号Gs及び画像合成処理回路218Cbより入力されるツイン画像信号Gtの一方を、NTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase Alternating Line)等の所定の規格に準拠した映像信号に変換してモニタ300に出力する。これにより、モニタ300の表示画面に被写体の画像が表示される。
【0046】
本実施形態では、モニタ300の表示画面に表示させる被写体の表示モードとして3種類のモードが用意されている。具体的には、シングル表示モード(通常カラー画像表示)、シングル表示モード(狭帯域画像表示)及びツイン表示モードである。術者は、フロントパネル212又は手元操作部110に対して表示モード指定操作を行うことにより、モニタ300の表示画面に表示させる被写体の表示モードを指定することができる。以下、各表示モードで被写体をモニタ300の表示画面に表示させる際の、プロセッサ200の動作について説明する。
【0047】
[シングル表示モード(通常カラー画像表示)]
コントローラ202は、術者によりシングル表示モード(通常カラー画像表示)が指定されると、ターレット用モータ206Mを駆動制御して回転式フィルタターレット206Tを回転させて、光学フィルタ206F1を白色光の光路へ挿入する。そのため、被写体には、光学フィルタ206F1を介した分光照射光であって、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の各波長域を含む白色光が照射される。
【0048】
固体撮像素子108は、白色光により照射された被写体を撮像して画像信号を生成する。この場合における、固体撮像素子108のR(Red)画素、G(Green)画素、B(Blue)画素の各画素の分光感度特性(すなわち、〈白色光の特性〉×〈オンチップフィルタの特性〉)はそれぞれ、
図3(b)に示されるR(Red)、G(Green)、B(Blue)の特性と実質同じになる。固体撮像素子108により生成された画像信号は、入出力端子部214を介してプロセッサ200に入力され、プリプロセス回路217で所定の信号処理が施された後、色変換マトリクス回路218Aa(F1)及び218Aa(F2)並びに218Ba(F2)に入力される。色変換マトリクス回路218Aa(F1)に入力された画像信号は、マトリクスM1による色変換及び通常カラー画像生成回路218Ab(F1)による信号処理後、通常カラー画像信号G1としてカラー画像用セレクタ218Acに出力される。また、色変換マトリクス回路218Aa(F2)に入力された画像信号は、マトリクスM2による色変換及び擬似カラー画像生成回路218Ab(F2)による信号処理後、擬似カラー画像信号G2としてカラー画像用セレクタ218Acに出力される。また、色変換マトリクス回路218Ba(F2)に入力された画像信号は、マトリクスM3による色変換及び狭帯域画像生成回路218Bb(F2)による信号処理後、狭帯域画像信号G3として画像出力回路218Cに出力される。
【0049】
カラー画像用セレクタ218Acに、通常カラー画像生成回路218Ab(F1)より出力された通常カラー画像信号G1及び擬似カラー画像生成回路218Ab(F2)より出力された擬似カラー画像信号G2が入力する。コントローラ202は、カラー画像用セレクタ218Acの出力を通常カラー画像信号G1にセレクトする。そのため、画像出力回路218Cには、通常カラー画像信号G1が出力される。
【0050】
カラー・狭帯域画像用セレクタ218Caに、カラー画像処理回路218Aより出力された通常カラー画像信号G1及び狭帯域画像処理回路218Bより出力された狭帯域画像信号G3が入力する。コントローラ202は、カラー・狭帯域画像用セレクタ218Caの出力を通常カラー画像信号G1にセレクトする。そのため、シングル・ツイン用セレクタ218Ccには、シングル画像信号Gs(通常カラー画像信号G1)が出力される。
【0051】
シングル・ツイン用セレクタ218Ccには、シングル画像信号Gs(通常カラー画像信号G1)及びツイン画像信号Gt(通常カラー画像G1’と狭帯域画像G3’とが合成された合成画像の信号)が入力する。コントローラ202は、シングル・ツイン用セレクタ218Ccの出力をシングル画像信号Gsにセレクトする。そのため、モニタ300の表示画面には、シングル画像信号Gs(通常カラー画像信号G1)による被写体の通常カラー画像G1’、すなわち、マトリクスM1を用いることで忠実な色再現性が達成された被写体のカラー画像が表示される。
【0052】
[シングル表示モード(狭帯域画像表示)]
コントローラ202は、術者によりシングル表示モード(狭帯域画像表示)が指定されると、ターレット用モータ206Mを駆動制御して回転式フィルタターレット206Tを回転させて、光学フィルタ206F2を白色光の光路へ挿入する。そのため、被写体には、光学フィルタ206F2を介した分光照射光であって、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の離散的な3つの狭帯域光が同時に照射される。
【0053】
固体撮像素子108は、狭帯域光により照射された被写体を撮像して画像信号を生成する。この場合における、固体撮像素子108のR(Red)画素、G(Green)画素、B(Blue)画素の各画素の分光感度特性(すなわち、〈狭帯域光の特性〉×〈オンチップフィルタの特性〉)はそれぞれ、
図3(c)の斜線で示されるR(Red)、G(Green)、B(Blue)の特性となる。プロセッサ200内では、[シングル表示モード(通常カラー画像表示)]の例と同様に、固体撮像素子108より入力した画像信号を基に、色変換マトリクス回路218Aa(F1)及び通常カラー画像生成回路218Ab(F1)が通常カラー画像信号G1を生成し、色変換マトリクス回路218Aa(F2)及び擬似カラー画像生成回路218Ab(F2)が擬似カラー画像信号G2を生成し、色変換マトリクス回路218Ba(F2)及び狭帯域画像生成回路218Bb(F2)が狭帯域画像信号G3を生成する。
【0054】
カラー画像用セレクタ218Acに、通常カラー画像生成回路218Ab(F1)より出力された通常カラー画像信号G1及び擬似カラー画像生成回路218Ab(F2)より出力された擬似カラー画像信号G2が入力する。コントローラ202は、カラー画像用セレクタ218Acの出力を擬似カラー画像信号G2にセレクトする。そのため、画像出力回路218Cには、擬似カラー画像信号G2が出力される。但し、本表示モードでは、擬似カラー画像信号G2を使用しないため、カラー画像用セレクタ218Acの制御は特段行わなくてもよい。
【0055】
また、カラー・狭帯域画像用セレクタ218Caに、カラー画像処理回路218Aより出力された擬似カラー画像信号G2及び狭帯域画像処理回路218Bより出力された狭帯域画像信号G3が入力する。コントローラ202は、カラー・狭帯域画像用セレクタ218Caの出力を狭帯域画像信号G3にセレクトする。そのため、シングル・ツイン用セレクタ218Ccには、狭帯域画像信号G3が出力される。
【0056】
シングル・ツイン用セレクタ218Ccには、シングル画像信号Gs(狭帯域画像信号G3)及びツイン画像信号Gt(擬似カラー画像G2’と狭帯域画像G3’とが合成された合成画像の信号)が入力する。コントローラ202は、シングル・ツイン用セレクタ218Ccの出力をシングル画像信号Gsにセレクトする。そのため、モニタ300の表示画面には、シングル画像信号Gs(狭帯域画像信号G3)による被写体の狭帯域画像G3’、すなわち、マトリクスM2を用いることで血管が強調された被写体の狭帯域画像が表示される。
【0057】
[ツイン表示モード]
コントローラ202は、術者によりツイン表示モードが指定されると、ターレット用モータ206Mを駆動制御して回転式フィルタターレット206Tを回転させて、光学フィルタ206F2を白色光の光路へ挿入する。そのため、被写体には、光学フィルタ206F2を介した分光照射光であって、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の離散的な3つの狭帯域光が同時に照射される。
【0058】
固体撮像素子108は、狭帯域光により照射された被写体を撮像して画像信号を生成する。この場合における、固体撮像素子108のR(Red)画素、G(Green)画素、B(Blue)画素の各画素の分光感度特性(すなわち、〈狭帯域光の特性〉×〈オンチップフィルタの特性〉)もそれぞれ、
図3(c)の斜線で示されるR(Red)、G(Green)、B(Blue)の特性となる。プロセッサ200内では、[シングル表示モード(通常カラー画像表示)]の例と同様に、固体撮像素子108より入力した画像信号を基に、色変換マトリクス回路218Aa(F1)及び通常カラー画像生成回路218Ab(F1)が通常カラー画像信号G1を生成し、色変換マトリクス回路218Aa(F2)及び擬似カラー画像生成回路218Ab(F2)が擬似カラー画像信号G2を生成し、色変換マトリクス回路218Ba(F2)及び狭帯域画像生成回路218Bb(F2)が狭帯域画像信号G3を生成する。
【0059】
カラー画像用セレクタ218Acに、通常カラー画像生成回路218Ab(F1)より出力された通常カラー画像信号G1及び擬似カラー画像生成回路218Ab(F2)より出力された擬似カラー画像信号G2が入力する。コントローラ202は、カラー画像用セレクタ218Acの出力を擬似カラー画像信号G2にセレクトする。そのため、画像出力回路218Cには、擬似カラー画像信号G2が出力される。
【0060】
また、カラー・狭帯域画像用セレクタ218Caに、カラー画像処理回路218Aより出力された擬似カラー画像信号G2及び狭帯域画像処理回路218Bより出力された狭帯域画像信号G3が入力する。本表示モードでは、カラー・狭帯域画像用セレクタ218Caより出力される信号を使用しないため、カラー・狭帯域画像用セレクタ218Caの制御は特段行わなくてもよい。
【0061】
シングル・ツイン用セレクタ218Ccには、カラー・狭帯域画像用セレクタ218Caより出力される信号(擬似カラー画像信号G2又は狭帯域画像信号G3)及びツイン画像信号Gt(擬似カラー画像G2’と狭帯域画像G3’とが合成された合成画像の信号)が入力する。コントローラ202は、シングル・ツイン用セレクタ218Ccの出力をツイン画像信号Gtにセレクトする。そのため、モニタ300の表示画面には、ツイン画像信号Gtによる、被写体の擬似カラー画像G2’と狭帯域画像G3’とが合成された合成画像、すなわち、白色光で照射された被写体の色を擬似的に再現した被写体画像と、血管が強調された被写体の狭帯域画像とが一画面内に並べて表示される。
【0062】
このように、本実施形態では、共通の光学フィルタ206F2による狭帯域光により照射された被写体から得られる同一の画像信号を用いてカラー画像と狭帯域画像とが並行して生成される。すなわち、光学フィルタの切替動作と画像信号処理との同期が要求されない構成となっている。また、各フィールドでカラー画像と狭帯域画像の両方が生成され表示されるため、同一の画像を2フィールド続けて表示させる必要がない。そのため、特許文献1のようなフレームレートの実質的な低下が避けられる。また、同一のタイミングで撮影された、時間差のないカラー画像と狭帯域画像とが一画面内に表示される。
【0063】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。例えば、本実施形態では同時式を採用しているが、面順次式を採用することもできる。この場合、面順次光を得るため、例えば回転式フィルタターレット206TとIRカットフィルタとの間にRGB回転フィルタが配置される。
【0064】
[別の実施形態の構成]
図5は、別の実施形態のフィルタユニット206mの構成を示す図である。別の実施形態において、本実施形態の電子内視鏡システム1と同一の又は同様の構成には同一の又は同様の符号を付して説明を簡略又は省略する。
【0065】
図5に示されるように、別の実施形態のフィルタユニット206mは、回転式フィルタターレット206Tmを有している。回転式フィルタターレット206Tmには、光学フィルタ206F1及び206F2に加えて、光学フィルタ206F3及びF4が配置されている。光学フィルタ206F1〜206F4は、円周方向に90°間隔で並べて配置されている。光学フィルタ206F2〜F4は何れも、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の各波長域に半値幅の狭い分光透過率を持つ狭帯域フィルタである。光学フィルタ206F2〜206F4は分光特性が夫々異なっており、具体的には、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の各波長域に対応するピーク波長、中心波長、半値幅及びピーク波長の透過率の少なくとも1つが他の狭帯域フィルタに対して異なる。
【0066】
但し、光学フィルタ206F2〜206F4は、光学フィルタ206F2〜206F4の何れを用いた場合であっても擬似カラー画像の色再現性が同等に保たれるよう、各光学フィルタ206F2〜206F4を透過したR(Red)の波長域の光束のプロファイルの積分値が互いに等しく、かつG(Green)の波長域の光束のプロファイルの積分値が互いに等しく、かつB(Blue)の波長域の光束のプロファイルの積分値が互いに等しくなるように設計されている。
図6は、光学フィルタF3の分光特性を示す。
図6に示されるように、光学フィルタF3のR(Red)の波長域に対応する透過スペクトルは、光学フィルタF2のR(Red)の波長域に対応する透過スペクトル(
図3(a)参照)に対し、半値幅が広くかつピーク波長の透過率が低い。但し、光学フィルタF3は、光学フィルタF3を透過したR(Red)の波長域の光束のプロファイルの積分値が、光学フィルタF2を透過したR(Red)の波長域の光束のプロファイルの積分値と略等しくなるように設計されている。
【0067】
別の実施形態では、術者は、シングル表示モード(狭帯域画像表示)及びツイン表示モードで表示させる狭帯域画像G3’を、光学フィルタ206F2〜F4の夫々に対応する3種類の中から指定することができる。コントローラ202は、術者による表示モード指定操作に従い、ターレット用モータ206Mを駆動制御して回転式フィルタターレット206Tmを回転させて、光学フィルタ206F1〜206F4を白色光の光路へ挿入する。そのため、被写体には、光学フィルタ206F1〜206F4の何れかを介した分光照射光が照射される。
【0068】
図7は、別の実施形態の信号処理回路218mの構成を示す図である。
図7に示されるように、信号処理回路218mは、カラー画像処理回路218Am、狭帯域画像処理回路218Bm及び画像出力回路218Cを備えている。
【0069】
カラー画像処理回路218Amは、色変換マトリクス回路218Aa(F1)〜218Aa(F4)、通常カラー画像生成回路218Ab(F1)、擬似カラー画像生成回路218Ab(F2)〜218Ab(F4)及びカラー画像用セレクタ218Acを有している。色変換マトリクス回路218Aa(F3)、218Aa(F4)には夫々、光学フィルタ206F3、206F4を介した狭帯域光により照射された被写体を、恰も白色光で照射された被写体であるかのように色再現するための、マトリクスM2と同様のマトリクス係数が保持されている。
【0070】
狭帯域画像処理回路218Bmは、色変換マトリクス回路218Ba(F2)〜218Ba(F4)、狭帯域画像生成回路218Bb(F2)〜218Bb(F4)及び狭帯域画像用セレクタ218Bcを有している。色変換マトリクス回路218Ba(F3)、218Ba(F4)には夫々、光学フィルタ206F3、206F4を介した狭帯域光により照射された被写体の特定構造(例えば病変部など)を強調するためのマトリクス係数が保持されている。なお、夫々の回路より出力される画像信号を区別する便宜上、
図7に示されるように、擬似カラー画像生成回路218Ab(F3)よりカラー画像用セレクタ218Acに出力される信号を「擬似カラー画像信号G21」とし、擬似カラー画像生成回路218Ab(F4)よりカラー画像用セレクタ218Acに出力される信号を「擬似カラー画像信号G22」とする。また、狭帯域画像生成回路218Bb(F3)より狭帯域画像用セレクタ218Bcに出力される信号を「狭帯域画像信号G31」とし、狭帯域画像生成回路218Bb(F4)より狭帯域画像用セレクタ218Bcに出力される信号を「狭帯域画像信号G32」とする。
【0071】
[別の実施形態のシングル表示モード(通常カラー画像表示)]
例えば、シングル表示モード(通常カラー画像表示)が指定された場合を考える。この場合、コントローラ202は、光学フィルタ206F1を光路に挿入する。これにより、光学フィルタ206F1を介した白色光が被写体に照射される。また、コントローラ202は、カラー画像用セレクタ218Acの出力を通常カラー画像信号G1にセレクトし、カラー・狭帯域画像用セレクタ218Caの出力を通常カラー画像信号G1にセレクトし、シングル・ツイン用セレクタ218Ccの出力をシングル画像信号Gsにセレクトする。これにより、モニタ300の表示画面には、シングル画像信号Gs(通常カラー画像信号G1)による被写体の通常カラー画像G1’が表示される。
【0072】
[別の実施形態のシングル表示モード(狭帯域画像表示)]
また、例えば、シングル表示モード(狭帯域画像表示)であって、光学フィルタF2に対応する狭帯域画像を表示させるモードが指定された場合を考える。この場合、コントローラ202は、光学フィルタ206F2を光路に挿入する。これにより、光学フィルタ206F2を介した狭帯域光が被写体に照射される。また、コントローラ202は、狭帯域画像用セレクタ218Bcの出力を狭帯域画像信号G3にセレクトし、カラー・狭帯域画像用セレクタ218Caの出力を狭帯域画像信号G3にセレクトし、シングル・ツイン用セレクタ218Ccの出力をシングル画像信号Gsにセレクトする。これにより、モニタ300の表示画面には、シングル画像信号Gs(狭帯域画像信号G3)による被写体の狭帯域画像G3’が表示される。
【0073】
[別の実施形態のツイン表示モード]
また、例えば、ツイン表示モードであって、光学フィルタF2に対応する狭帯域画像を表示させるモードが指定された場合を考える。この場合もコントローラ202は、光学フィルタ206F2を光路に挿入する。これにより、光学フィルタ206F2を介した狭帯域光が被写体に照射される。また、コントローラ202は、カラー画像用セレクタ218Acの出力を擬似カラー画像信号G2にセレクトし、狭帯域画像用セレクタ218Bcの出力を狭帯域画像信号G3にセレクトし、シングル・ツイン用セレクタ218Ccの出力をツイン画像信号Gtにセレクトする。これにより、モニタ300の表示画面には、ツイン画像信号Gtによる、被写体の擬似カラー画像G2’と狭帯域画像G3’とが一画面内に並べて表示される。