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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-223531(P2015-223531A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】塗膜除去方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/12 20060101AFI20151117BHJP
   E04F 21/00 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   B05D3/12 E
   E04F21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-108024(P2014-108024)
(22)【出願日】2014年5月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】川上 展司
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075BB20X
4D075BB20Z
4D075BB57X
4D075BB57Z
4D075BB79X
4D075BB79Z
4D075CA34
4D075DA06
4D075DA23
4D075DB02
4D075DB12
4D075DB20
4D075DC02
4D075DC05
(57)【要約】
【課題】塗膜除去作業を効率よく行うことができる塗膜除去方法を提供すること。
【解決手段】基材2上に塗装された塗膜3を、水を用いて基材2から剥離し、剥離された塗膜10を捕集することによって塗膜3を除去する塗膜除去方法において、基材2から剥離された塗膜10の捕集を、基材2の前方にある地面4上に敷設した第1親水性不織布8Aを用いて行うことを特徴とする塗膜除去方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に塗装された塗膜を、水を用いて前記基材から剥離し、剥離された塗膜を捕集することによって前記塗膜を除去する塗膜除去方法において、
前記基材から剥離された前記塗膜の捕集を、前記基材の前方にある地面又は床面上に敷設した第1親水性不織布を用いて行うことを特徴とする塗膜除去方法。
【請求項2】
前記基材から剥離された前記塗膜の捕集を、前記基材と前記第1親水性不織布のうち前記基材側の端部とを結ぶように敷設した第2親水性不織布をさらに用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の塗膜除去方法。
【請求項3】
前記基材から剥離された前記塗膜の捕集を、前記第1親水性不織布のうち前記基材と反対側の端部から立ち上がるように敷設した第3親水性不織布をさらに用いて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の塗膜除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁材やベランダ側壁等の基材から劣化した塗膜を剥離する場合、水を用いて剥離することが一般に行われている。
【0003】
このとき剥離された塗膜は飛散して地面又は床面に向かって落ちる。ここで、地面が砂利面であったり、床面がスノコで構成されていたりすると、剥離された塗膜が砂利やスノコの隙間に入り込み、塗膜の回収が困難となる。このため、塗膜の回収作業に多大な時間が必要となり、塗膜を剥離してから回収するまでの作業、すなわち、塗膜除去作業の効率が低下する。
【0004】
そのため、例えば下記特許文献1に開示されるように、箱体や椀状体を用いて塗膜を回収することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−161286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1の方法は以下に示す課題を有していた。
【0007】
すなわち、箱体や椀状体によって塗膜を回収する場合、剥離されて飛散した塗膜を十分に回収することができず、塗膜は地面又は床面に落ちる。このとき、地面又は床面に落ちた塗膜の回収は困難であるため、塗膜の回収作業にかなりの時間がかかり、塗膜の除去作業はかなり非効率なものとなる。特に、塗膜が砂利面などに入り込むと、塗膜の除去作業はより一層非効率なものとなる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、塗膜除去作業を効率よく行うことができる塗膜除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、基材の前方の地面又は床面上にシートを敷設することを考えた。しかし、本発明者らが、シートとして、疎水性の非透水性シートを敷設したところ、シート上に塗膜が水とともに残り、この水が、作業者の足を滑らせるなど、作業の妨げになることに気付いた。ここで、シート上の塗膜を回収しようとすると、塗膜が水と一緒にシート表面から流れ落ちてしまい、結局、塗膜を効率よく回収できない。そこで、本発明者らはさらに鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、基材上に塗装された塗膜を、水を用いて前記基材から剥離し、剥離された塗膜を捕集することによって前記塗膜を除去する塗膜除去方法において、前記基材から剥離された前記塗膜の捕集を、前記基材の前方にある地面又は床面上に敷設した第1親水性不織布を用いて行うことを特徴とする塗膜除去方法である。
【0011】
この発明によれば、塗膜を、水を用いて基材から剥離すると、剥離された塗膜は、基材の前方に飛散して地面又は床面に向かって落ちる。その際、地面又は床面に第1親水性不織布が敷設されているため、塗膜は水とともに第1親水性不織布上に落ち、塗膜が地面又は床面上に直接落ちることが十分に抑制される。しかも、第1親水性不織布は親水性を有するため、水は第1親水性不織布を透過しやすい。このため、塗膜が第1親水性不織布上に残りやすくなる。この結果、第1親水性不織布上に水が残りにくくなるため、この水が塗膜の剥離作業の妨げとなることが十分に防止される。また、塗膜は水と分離されると、第1親水性不織布に絡まりやすくなる。このため、塗膜をしっかりと第1親水性不織布で捕集することが可能となる。別言すれば、塗膜が地面又は床面に入り込むことが第1親水性不織布で十分に阻止されるため、地面又は床面に入り込んだ塗膜を回収するための時間を省略することが可能となる。以上のことから、本発明の塗膜除去方法によれば、塗膜除去作業を効率よく行うことができる。
【0012】
また上記塗膜除去方法においては、前記基材から剥離された前記塗膜の捕集を、前記基材と前記第1親水性不織布のうち前記基材側の端部とを結ぶように敷設した第2親水性不織布をさらに用いて行うことが好ましい。
【0013】
この場合、基材と地面又は床面との間に、例えば家屋のコンクリートブロックなどからなる基礎が存在していても、その基礎が第2親水性不織布によって覆われることになるため、塗膜が基礎に付着することが十分に抑制される。このため、塗膜剥離作業が終わった後、基礎をブラシ等でこすり落とす作業が省略可能となり、塗膜除去作業の効率がより向上する。また第2親水性不織布は水を透過させやすい。このため、塗膜が第2親水性不織布に付着した後、水と一緒に第1親水性不織布に流れ落ちることが十分に抑制される。このため、第1親水性不織布において目詰まりが起こりにくくなり、第1親水性不織布をより長時間使用することが可能となる。
【0014】
さらに上記塗膜除去方法においては、前記基材から剥離された前記塗膜の捕集を、前記第1親水性不織布のうち前記基材と反対側の端部から立ち上がるように敷設した第3親水性不織布をさらに用いて行うことが好ましい。
【0015】
塗膜を基材から剥離する際、塗膜の中には基材から離れた位置まで飛散する場合もある。その点、第1親水性不織布のうち基材と反対側の端部から立ち上がるように第3親水性不織布が敷設されていれば、そのような遠くまで飛散する塗膜を第3親水性不織布によって捕集することが可能となる。また第3親水性不織布は水を透過させやすい。このため、塗膜が第3親水性不織布に付着した後、水と一緒に第1親水性不織布に流れ落ちることが十分に抑制される。このため、第1親水性不織布において目詰まりが起こりにくくなり、第1親水性不織布をより長時間使用することが可能となる。
【0016】
なお、本発明において、「親水性不織布」とは、JIS L 1907:2010の7.1.1に準拠して測定される吸水時間が2秒以上となる不織布を言う。ここで、吸水時間とは、水滴が親水性不織布からなる試験片の表面に達したときからその試験片が水滴を吸収するにつれて鏡面反射が消え、湿潤だけが残った状態までの時間を言う。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、塗膜除去作業を効率よく行うことができる塗膜除去方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の塗膜除去方法の第1実施形態のうち親水性不織布を敷設する様子を示す部分切断面端面図である。
図2】本発明の塗膜除去方法の第1実施形態のうち水を用いて塗膜を基材より剥離して捕集する様子を示す部分切断面端面図である。
図3】本発明の塗膜除去方法の第2実施形態を示す部分切断面端面図である。
図4】本発明の塗膜除去方法の第3実施形態を示す部分切断面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の塗膜除去方法の実施形態について図1及び図2を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の塗膜除去方法の第1実施形態のうち親水性不織布を敷設する様子を示す部分切断面端面図、図2は、本発明の塗膜除去方法の第1実施形態のうち水を用いて塗膜を基材より剥離して捕集する様子を示す部分切断面端面図である。
【0020】
まず本発明の塗膜除去の対象物について説明する。図1に示すように、本実施形態における塗膜除去の対象物は外壁材1であり、外壁材1は、基材2と、基材2上に設けられる塗膜3とを備えている。
【0021】
次に、上述した外壁材1の塗膜除去方法について説明する。まず図1において、符号4は地面であり、地面4には、コンクリートなどからなる家屋の基礎5が埋め込まれている。そして、基礎5の上には外壁6が設けられており、外壁6の表面に外壁材1が固定されている。また本実施形態では地面4に柵7が埋め込まれている。柵7は外壁材1の基材2に対向する位置に、基材2とほぼ平行に配置されている。
【0022】
次に、外壁材1の塗膜3を除去する方法について説明する。
【0023】
はじめに親水性不織布8を用意する。親水性不織布8として、本実施形態では、第1親水性不織布8A、第2親水性不織布8Bおよび第3親水性不織布8Cを別々に用意する。
【0024】
そして、第1親水性不織布8Aは、基材2の前方の地面4上に平面状に敷設する。このとき、第1親水性不織布8Aの基材2側の端部は、基材2の真下にあっても、基材2の真下になくてもよいが、基材2の真下にあることが好ましい。この場合、剥離された塗膜(以下、本明細書において「廃塗膜」と呼ぶ)10をより十分に捕集することが可能となる。
【0025】
第2親水性不織布8Bは、基材2と第1親水性不織布8Aのうち基材2側の端部とを結ぶように敷設する。本実施形態では、第2親水性不織布8Bは、基礎5を覆うように敷設されている。
【0026】
第3親水性不織布8Cは、第1親水性不織布8Aのうち基材2と反対側の端部から、地面4から離れる方向に向かって立ち上がるように敷設する。本実施形態では、第3親水性不織布8Cは、柵7を覆うように敷設する。なお、第1親水性不織布8A、第2親水性不織布8Bおよび第3親水性不織布8Cを敷設する順番は任意である。例えば第1親水性不織布8A、第2親水性不織布8Bおよび第3親水性不織布8Cの順に敷設してもよいし、第2親水性不織布8B、第3親水性不織布8C及び第1親水性不織布8Aの順に敷設してもよいし、第3親水性不織布8C、第1親水性不織布8A及び第2親水性不織布8Bの順に敷設してもよい。
【0027】
こうして親水性不織布8を敷設した後、ノズル9を有する高圧水噴射装置を用意する。そして、高圧水噴射装置を持った作業者を親水性不織布8A上に配置させる。そして、ノズル9の先端を外壁材1の塗膜3に向けて、図2に示すように、ノズル9から高圧水を噴射させ、高圧水の水圧により塗膜3を基材2から剥離し、廃塗膜10を親水性不織布8によって捕集する。
【0028】
このとき、廃塗膜10は、基材2の前方に飛散して地面4に向かって落ちる。その際、地面4に第1親水性不織布8Aが敷設されているため、廃塗膜10は水11とともに第1親水性不織布8A上に落ち、地面4上に廃塗膜10が落ちることが十分に抑制される。しかも、第1親水性不織布8Aは親水性を有するため、水11は第1親水性不織布8Aを透過しやすい。このため、廃塗膜10だけが第1親水性不織布8A上に残りやすくなる。この結果、第1親水性不織布8A上に水11が残りにくいため、この水11が塗膜3の剥離作業の妨げとなることが十分に防止される。また、廃塗膜10は水11と分離されると、第1親水性不織布8Aに絡まりやすくなる。このため、廃塗膜10をしっかりと第1親水性不織布8Aで捕集することが可能となる。別言すれば、廃塗膜10が地面4に入り込むことが第1親水性不織布8Aで十分に阻止されるため、地面4に入り込んだ廃塗膜10を回収するための時間を省略することが可能となる。さらに、第1親水性不織布8A、第2親水性不織布8Bおよび第3親水性不織布8Cは不織布である。このため、第1親水性不織布8A、第2親水性不織布8Bおよび第3親水性不織布8Cは巻取りが容易であり、嵩張らないため、持ち運びが容易となる。従って、廃塗膜10の片付作業が容易となる。以上のことから、本実施形態の塗膜除去方法によれば、外壁材1の塗膜除去作業を効率よく行うことができる。
【0029】
また、本実施形態では、廃塗膜10の捕集が、基材2と第1親水性不織布8Aのうち基材2側の端部とを結ぶように敷設した第2親水性不織布8Bによっても行われる。このため、外壁材1の基材2と地面4との間に存在する基礎5が第2親水性不織布8Bによって覆われることになるため、廃塗膜10が基礎5に付着することが十分に抑制される。このため、塗膜剥離作業が終わった後、基礎5をブラシ等でこすり落とす作業が省略可能となり、塗膜除去作業の効率がより向上する。また第2親水性不織布8Bは水11を透過させやすい。このため、廃塗膜10が第2親水性不織布8Bに付着した後、水11と一緒に第1親水性不織布8Aに流れ落ちることが十分に抑制される。このため、第1親水性不織布8Aにおいて目詰まりが起こりにくくなり、第1親水性不織布8Aをより長時間使用することが可能となる。
【0030】
さらに本実施形態では、廃塗膜10の捕集が、第1親水性不織布8Aのうち外壁材1と反対側の端部から立ち上がるように敷設した第3親水性不織布8Cによっても行われる。この場合、以下の利点が得られる。すなわち、塗膜3を基材2から剥離する際、廃塗膜10の中には基材2から遠く離れた位置まで飛散する場合もある。その点、第1親水性不織布8Aのうち基材2と反対側の端部から立ち上がるように第3親水性不織布8Cが敷設されていれば、そのような遠くまで飛散する廃塗膜10を第3親水性不織布8Cによって捕集することが可能となる。また第3親水性不織布8Cは親水性を有するため水11を透過させやすい。このため、廃塗膜10が第3親水性不織布8Cに付着した後、水11と一緒に第1親水性不織布8Aに流れ落ちることが十分に抑制される。このため、第1親水性不織布8Aにおいて目詰まりが起こりにくくなり、第1親水性不織布8Aをより長時間使用することが可能となる。
【0031】
さらに、本実施形態では、第1親水性不織布8A、第2親水性不織布8Bおよび第3親水性不織布8Cを別々に用意しており、これらはそれぞれ容易に巻き取ることができ、嵩張らないため、持ち運びが容易となる。従って、第1親水性不織布8A、第2親水性不織布8Bおよび第3親水性不織布8Cの片付け作業がより容易となる。
【0032】
なお、高圧水の圧力は、塗膜3の剥離によって露出された基材2を破壊しない程度の圧力であれば特に制限されず、例えば10〜100MPa程度とすればよい。また高圧水の水量も特に制限されず、例えば5〜20L/min程度とすればよい。さらに高圧水の噴射時間も一概には言えず、例えば1〜10秒程度とすればよい。
【0033】
次に、外壁材1及び親水性不織布8について詳細に説明する。
【0034】
(外壁材)
外壁材1は、上述したように、基材2と、基材2上に設けられる塗膜3とを備える。基材2としては、例えば窯業系サイディング材、セメント、モルタル、鋼板などを用いることができる。
【0035】
(親水性不織布)
親水性不織布8は、本実施形態では、第1親水性不織布8A、第2親水性不織布8Bおよび第3親水性不織布8Cで構成される。第1親水性不織布8A、第2親水性不織布8Bおよび第3親水性不織布8Cは互いに同一材料で構成されてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。
【0036】
親水性不織布8は、不織布素材に対して親水性処理を行うことによって得ることができる。
【0037】
不織布素材としては、例えばPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ビニロン、セルロース、ポリウレタン、ポリ乳酸、あるいはそれらの混紡などが挙げられる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルが好ましく用いられる。
【0038】
親水性処理としては、例えば不織布素材を、シランカップリング剤を含む溶液中に浸漬した後に加熱する方法や、界面活性剤にて処理する方法や、不織布素材をプラズマ処理する方法などが挙げられる。ここで、プラズマ処理としては、例えばコロナ放電処理が挙げられる。親水性処理としては、上記方法のうち、不織布素材を界面活性剤にて処理する方法が低コストの点から好ましい。
【0039】
また親水性不織布8の単位面積当たりの質量(以下、「目付」と呼ぶ)は、特に制限されるものではないが、10〜100g/mであることが好ましく、20〜60g/mであることがより好ましい。目付が10〜100g/mの範囲にあると、10g/m未満である場合に比べて親水性不織布8が破れにくく、100g/mを超える場合に比べて、親水性不織布8の透水性がより優れたものとなる。
【0040】
親水性不織布8の最大孔径は特に制限されないが、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
【0041】
さらに親水性不織布8の厚さは特に制限されるものではないが、0.01〜1.0mmの範囲であることが好ましい。親水性不織布8の厚さが0.01〜1.0mmの範囲であると、0.01mmを下回る場合に比べて親水性不織布8が破れにくくなり、1.0mmを超える場合に比べて、基礎5の壁面や地面4に沿わせて変形させたり、塗膜除去作業の完了後、廃棄する時にたたんだりすることが容易になる。
【0042】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、高圧水噴射装置から噴射される高圧水を用いて塗膜3を基材2から剥離しているが、必ずしも高圧水を用いる必要はない。例えば、低圧水とブラシを併用して塗膜3を基材2から掻き落とすことによって剥離してもよい。この場合、外壁材1として、ALC(軽量気泡コンクリート)を基材2として用いた外壁材を本発明の塗膜除去の対象とすることができる。
【0043】
また上記実施形態では、親水性不織布8として、第1親水性不織布8A、第2親水性不織布8Bおよび第3親水性不織布8Cが用いられているが、第2親水性不織布8Bおよび第3親水性不織布8Cの少なくとも一方は疎水性の不織布や飛散防止ネットで構成されてもよい。
【0044】
さらに、上記実施形態では、親水性不織布8として、第1親水性不織布8A、第2親水性不織布8Bおよび第3親水性不織布8Cが用いられているが、第2親水性不織布8Bおよび第3親水性不織布8Cの少なくとも一方は省略されてもよい。また第1親水性不織布8A、第2親水性不織布8Bおよび第3親水性不織布8Cは、図3に示すように、一体化されていることが好ましい。この場合、第1親水性不織布8A、第2親水性不織布8Bおよび第3親水性不織布8Cが連続してつながることになり、親水性不織布8間の隙間をなくすことができる。そのため、廃塗膜10をより一層しっかりと捕集することが可能となる。
【0045】
また上記実施形態では、地面4に柵7が埋め込まれているが、柵7は必ずしも必要なものでなく、省略が可能である。さらに柵7に代えて、図4に示すように、単管パイプで組み込まれた足場12が地面4に埋め込まれていてもよい。この場合、足場12には飛散防止ネット13が設けられてもよく、この場合には、第3親水性不織布8Cは、足場12のうち飛散防止ネット13によって覆われていない部分のみを覆うように敷設されていればよい。但し、飛散防止ネット13が足場12に設けられていなければ、第3親水性不織布8Cは、足場12全体を覆うように敷設されることが好ましい。さらに上記実施形態では、作業者が第1親水性不織布8Aの上に配置されるが、作業者は、基材2の前方に配置されていればよい。したがって、例えば作業者は柵7に対して第1親水性不織布8Aと反対側の地面4上に配置されていてもよい。
【0046】
さらに、上記実施形態では、塗膜除去の対象物が外壁材1となっているが、塗膜除去の対象物はベランダを構成する側壁であってもよい。特にベランダの床面がスノコなどで構成されている場合には、側壁の内側の塗膜を、水を用いて剥離した際、スノコの隙間を塗膜が通過してしまうため、塗膜の回収が困難となる。そのため、本発明は、ベランダの側壁の塗膜を除去する場合にも有用である。この場合、第1親水性塗膜8Aはスノコなどの床面上に敷設すればよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
実施例及び比較例で使用した不織布は表1に示す通りである。なお、表1において、「吸水時間」は、親水性の指標となるパラメータであり、値が小さい程親水性が高いことを示すものである。また「吸水時間」は、JIS L 1907:2010の7.1.1に準拠して測定された値を言う。さらに表1において、不織布1〜3は実施例で使用され、不織布4は、比較例で使用される。
【表1】
【0049】
(実施例1)
砂利面上に、表面が劣化したアクリルシリコン系樹脂塗膜が窯業系サイディング材からなる基材上に塗装された高さ1.8m、幅0.9mの外壁材を鉛直に設置し、基材の下には高さ190mmのコンクリートブロックを配して模擬家屋壁を用意した。
【0050】
一方、長辺0.9m×短辺0.5m×厚さ0.3mmの寸法を有する長方形状の不織布1(以下、実施例において「不織布1A」と呼ぶ)を用意した。
【0051】
次に、この不織布1Aを、第1親水性不織布として、その全体が基材の前方0.5mまでの砂利面を覆うように平面状に敷設した。このとき、不織布1Aは、その先端が基材の直下に配置されるように且つ長辺が基材表面に平行に配置されるように敷設した。
【0052】
そして、高圧洗浄機を用い、外壁材の塗膜に対して、高圧水を、水量12L/min、水圧10MPaの条件で30秒間噴射し、基材から塗膜を剥離させた。
【0053】
その結果、不織布の敷設されていないコンクリートブロックの表面と、不織布の敷設されていない基材から0.5m以上前方の砂利面には廃塗膜がいくらか散乱していた。しかし、砂利面に敷設された不織布1Aの表面に、剥離された多くの廃塗膜が引っかかり廃塗膜の回収が容易であった。
【0054】
(実施例2)
長辺0.9m×短辺0.19m×厚さ0.3mmの寸法を有する長方形状の不織布1(以下、本実施例において「不織布1B」と呼ぶ)をさらに用意し、この不織布1Bを第2親水性不織布として、基材の直下よりコンクリートブロック基部までの部分、すなわち、コンクリートブロックの表面を覆うように敷設したこと以外は実施例1と同様にして、塗膜を基材より剥離させた。
【0055】
その結果、不織布の敷設されていない基材から0.5m以上前方の砂利面には廃塗膜がいくらか散乱していた。しかし、砂利面上に敷設された不織布1Aおよびコンクリートブロックの表面を覆うように敷設された不織布1Bの表面にそれぞれ廃塗膜が引っかかり、不織布ごとの廃塗膜の回収が容易であった。
【0056】
(実施例3)
不織布1Aを、寸法を変更することなく不織布2に代えたこと以外は実施例2と同様にして塗膜を外壁材より剥離させた。
【0057】
その結果、不織布2の敷設されていない基材から0.5m以上前方の砂利面には廃塗膜がいくらか散乱していた。しかし、砂利面に敷設された不織布2およびコンクリートブロックの表面を覆うように敷設された不織布2の表面に廃塗膜が引っかかり、不織布ごとの廃塗膜の回収が容易であった。
【0058】
(実施例4)
砂利面上に、実施例1と同様にして模擬家屋壁を用意した。さらに、基材の前方0.5m部分に単管パイプで組まれた高さ0.5mの柵を設置した。
【0059】
一方、不織布1Aを2枚用意するとともに、不織布1Bを1枚用意した。そして、2枚の不織布1Aのうちの1枚を第1親水性不織布として、その全体が基材の前方0.5mまでの砂利面を覆うように平面状に敷設するとともに、もう1枚を、第3親水性不織布として、柵を覆うように敷設した。さらに不織布1Bを、第2親水性不織布として、基材の直下よりコンクリートブロック基部までの部分、すなわち、コンクリートブロックの表面を覆うように敷設した。このとき、不織布1A及び不織布1Bはいずれも、それらの長辺が基材表面に平行になるように配置した。
【0060】
その後は実施例1と同様にして外壁材の塗膜に高圧水を噴射して塗膜を基材より剥離させた。
【0061】
その結果、単管パイプの後ろの砂利面に僅かに廃塗膜が散乱していた。しかし、砂利面上に敷設した不織布1A、コンクリートブロックの表面に敷設した不織布1B、および単管パイプ柵の下端から上端までを覆うように敷設した不織布1Aの表面に廃塗膜が引っかかり、不織布ごとの廃塗膜の回収が容易であった。
【0062】
(実施例5)
砂利面上に、実施例1と同様にして模擬家屋壁を用意した。さらに、基材の前方0.5m部分に単管パイプで組まれた高さ3.0mの足場を設置した。ここで、足場の上部には飛散防止ネットを設置した。飛散防止ネットは、足場の上端から下方に向かって2.5mの範囲を覆うように設置した。
【0063】
一方、長辺0.9m×短辺0.5m×厚さ0.4mmの寸法を有する長方形状の不織布3(以下、実施例において「不織布3A」と呼ぶ)を2枚用意するとともに、長辺0.9m×短辺0.5m×厚さ0.4mmの寸法を有する長方形状の不織布3(以下、実施例において「不織布3B」と呼ぶ)を1枚用意した。そして、2枚の不織布3Aのうちの1枚を第1親水性不織布として、その全体が基材の前方0.5mまでの砂利面を覆うように平面状に敷設するとともに、もう1枚を、第3親水性不織布として、砂利面から足場の飛散防止ネット下端までの部分を覆うように敷設した。さらに不織布3Bを、第2親水性不織布として、基材の直下よりコンクリートブロック基部までの部分、すなわち、コンクリートブロックの表面を覆うように敷設した。このとき、不織布3A及び不織布3Bはいずれも、それらの長辺が基材表面に平行になるように配置した。
【0064】
その後は実施例1と同様にして外壁材の塗膜に高圧水を噴射して塗膜を基材より剥離させた。
【0065】
その結果、砂利面に敷設した不織布3A、コンクリートブロックの表面に敷設した不織布3B、および砂利面から足場の飛散防止ネット下端までの部分を覆うように敷設された不織布3Aの表面に廃塗膜が引っかかり、不織布ごとの廃塗膜の回収が容易であった。さらに飛散防止ネットにも僅かに廃塗膜が付着していたが砂利面やその他の部分には廃塗膜の散乱は見られなかった。
【0066】
(比較例1)
不織布1Aを砂利面上に敷設しなかったこと以外は実施例1と同様にして塗膜を基材より剥離させた。
【0067】
その結果、コンクリートブロック面に散乱した廃塗膜がこびりつきブラシでの清掃を余儀なくされた。また、砂利面に散乱した廃塗膜は砂利のすき間に入り込み回収が不可能であった。
【0068】
(比較例2)
不織布1Aを、寸法を変更することなく不織布4に代えたこと以外は実施例1と同様にして塗膜を基材より剥離させた。
【0069】
その結果、砂利面に敷設された不織布4上を、塗膜を剥離した水が廃塗膜ごと流れていき、水と共に砂利面へと流れ出した廃塗膜が砂利のすき間に入り込み回収が不可能であった。
【0070】
(比較例3)
不織布1A及び不織布1Bをそれぞれ、寸法を変更することなく不織布4(以下、それぞれ「不織布4A」、「不織布4B」と呼ぶ)に代えたこと以外は実施例4と同様にして塗膜を基材より剥離させた。
【0071】
その結果、塗膜を剥離した水が廃塗膜と共に不織布4A上に溜まり、作業の妨げになった。また、溜まった水と廃塗膜を不織布4Aごと回収しようとしたが、溜まった水が廃塗膜ごと流れ出し、回収が不可能であった。また、水と共に流れ出した廃塗膜が砂利のすき間に入り込み回収が不可能であった。
【0072】
以上の結果から、本発明の塗膜除去方法によれば、塗膜除去作業を効率よく行うことができることが確認された。
【符号の説明】
【0073】
1…外壁材
2…基材
3…塗膜
4…地面
8…親水性不織布
8A…第1親水性不織布
8B…第2親水性不織布
8C…第3親水性不織布
10…廃塗膜
11…水
図1
図2
図3
図4