特開2015-223596(P2015-223596A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-223596(P2015-223596A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】溶接用保護面
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/32 20060101AFI20151117BHJP
   B23K 9/10 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   B23K9/32 B
   B23K9/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-108512(P2014-108512)
(22)【出願日】2014年5月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(72)【発明者】
【氏名】呉羽 眞佳
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】土井 敏光
【テーマコード(参考)】
4E082
【Fターム(参考)】
4E082AA02
4E082EA04
(57)【要約】
【課題】遠隔操作のための電力の供給状況を考慮する必要があり、また、溶接の作業効率を向上させることができなかった。
【解決手段】表面に光電池101が配置された保護面10と、溶接機3のパラメータを設定するための操作を受け付ける一以上の操作部と、操作部が受け付けた操作に応じたパラメータを設定する設定指示を溶接機に送信する送信部202とを備えており、保護面10を保持するためのグリップ20と、光電池101が取得した電力を送信部202に供給する電力供給部60とを備えた。これにより、遠隔操作のための電力の供給状況を考慮する必要がなく、また、溶接の作業効率を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に光電池が配置された保護面と、
溶接機のパラメータを設定するための操作を受け付ける一以上の操作部と、前記操作部が受け付けた操作に応じたパラメータを設定する設定指示を前記溶接機に送信する送信部とを備えており、前記保護面を保持するためのグリップとを備え、
前記送信部は、前記光電池が取得した電力を用いて送信を行う溶接用保護面。
【請求項2】
前記溶接機は、溶接時のシールドガスとしてアルゴンガスを用いるものであり、
前記光電池は、単結晶シリコンを用いた光電池である請求項1記載の溶接用保護面。
【請求項3】
前記溶接機は、消耗電極を用いる溶接機であり、
前記光電池は、単結晶シリコンを用いた光電池である請求項1記載の溶接用保護面。
【請求項4】
前記送信部は、無線通信により前記設定指示を送信する請求項1から請求項3いずれか一項記載の溶接用保護面。
【請求項5】
前記光電池が取得した電力を蓄積する二次電池を更に備えた請求項1から請求項4いずれか一項記載の溶接用保護面。
【請求項6】
溶接機のパラメータを設定するための操作を受け付ける複数の操作部を備えた請求項1から請求項5いずれか一項記載の溶接用保護面。
【請求項7】
前記操作部のうちの一以上は、溶接機のパラメータである電流を設定する操作、または、溶接機のパラメータである電圧を設定する操作の少なくとも一方を受け付ける請求項1から請求項6いずれか一項記載の溶接用保護面。
【請求項8】
前記一以上の操作部が、それぞれ、三以上の異なるパラメータの値を設定する操作を受け付ける請求項1から請求項7いずれか一項記載の溶接用保護面。
【請求項9】
前記一以上の操作部の少なくとも一部は、一以上の操作部が予め指定された操作を受け付けた場合に、溶接機のパラメータを設定するための操作を受け付け可能な状態となる請求項1から請求項8いずれか一項記載の溶接用保護面。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接用保護面等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アーク放電を利用する溶接システムは、通常、重量があるため移動させない溶接電源装置と、溶接箇所の変更に伴って溶接作業者が持ち運び可能なワイヤ送給装置とを有している。溶接電源装置が溶接作業の位置から離れた場所に配置されている場合、溶接電圧などの溶接条件を設定するために、溶接作業者が溶接電源装置の設置場所まで行くのは作業効率が悪い。これを解消するために、溶接電源装置との間で無線通信を行う遠隔操作装置を用いて溶接条件の設定を行う溶接システムが開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3414193号公報(第1頁、第1図等)
【特許文献2】特開平3−275278号公報(第1頁、第1図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠隔操作装置の電源には、乾電池や蓄電池が用いられる。しかし、乾電池の場合、電圧が低下する前に、交換する必要があり、蓄電池の場合、電圧が低下する前に充電器に接続して充電する必要がある。電池の交換や充電を怠って溶接作業中に電源電圧が低下してしまった場合、操作や通信が適切に行えなくなり、溶接条件を変更できず、適切に溶接が行えない場合があるという課題があった。
【0005】
また、溶接作業時には、一方の手に溶接用保護面を、もう一方の手に溶接トーチを持って溶接を行うため、溶接の電圧等のパラメータを変更する際には、一旦、溶接を中断して、溶接トーチを持った手等で遠隔操作装置等を操作しなければならないため、作業が中断してしまい、作業効率が悪いという課題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解消するためになされたものであり、電力の供給状況を考慮する必要がなく、かつ、作業効率を損ねることなく溶接機を遠隔操作できる溶接用保護面を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の溶接用保護面は、表面に光電池が配置された保護面と、溶接機のパラメータを設定するための操作を受け付ける一以上の操作部と、操作部が受け付けた操作に応じたパラメータを設定する設定指示を溶接機に送信する送信部とを備えており、保護面を保持するためのグリップとを備え、送信部は、光電池が取得した電力を用いて送信を行う溶接用保護面である。
【0008】
かかる構成により、溶接機のパラメータを設定する操作のための電力不足をなくすことができる。また、一次電池の交換の手間等をなくすことができる。また、保護面の表面に光電池を設けたことにより、溶接時に効率よく、確実に光電池で電力を生成することができる。また、操作部を操作することで、作業中に溶接のパラメータを設定することができ、溶接の作業効率を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の溶接用保護面は、前記溶接用保護面において、溶接機は、溶接時のシールドガスとしてアルゴンガスを用いるものであり、光電池は、単結晶シリコンを用いた光電池である溶接用保護面である。
【0010】
かかる構成により、溶接のアーク光から効率よく電力を生成することができる。
【0011】
また、本発明の溶接用保護面は、前記溶接用保護面において、溶接機は、消耗電極を用いる溶接機であり、光電池は、単結晶シリコンを用いた光電池である溶接用保護面である。
【0012】
かかる構成により、溶接のアーク光から効率よく電力を生成することができる。
【0013】
また、本発明の溶接用保護面は、前記溶接用保護面において、送信部は、無線通信により設定指示を送信する溶接用保護面である。
【0014】
かかる構成により、有線接続が不要となり、溶接用保護面の操作性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の溶接用保護面は、前記溶接用保護面において、光電池が取得した電力を蓄積する二次電池を更に備えた溶接用保護面である。
【0016】
かかる構成により、操作に利用されなかった電力を蓄積することができる。
【0017】
また、本発明の溶接用保護面は、前記溶接用保護面において、溶接機のパラメータを設定するための操作を受け付ける複数の操作部を備えた溶接用保護面である。
【0018】
かかる構成により、作業中に操作によって溶接の複数のパラメータを設定することができ、溶接の作業効率を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の溶接用保護面は、前記溶接用保護面において、操作部のうちの一以上は、溶接機のパラメータである電流を設定する操作、または、溶接機のパラメータである電圧を設定する操作の少なくとも一方を受け付ける溶接用保護面である。
【0020】
かかる構成により、溶接の電流及び電圧の少なくとも一方の設定を作業中に容易に変更するることができる。
【0021】
また、本発明の溶接用保護面は、前記溶接用保護面において、一以上の操作部が、それぞれ、三以上の異なるパラメータの値を設定する操作を受け付ける溶接用保護面である。
【0022】
かかる構成により、溶接の各パラメータを細かく設定することができる。
【0023】
また、本発明の溶接用保護面は、前記溶接用保護面において、一以上の操作部の少なくとも一部は、一以上の操作部が予め指定された操作を受け付けた場合に、溶接機のパラメータを設定するための操作を受け付け可能な状態となる溶接用保護面である。
【0024】
かかる構成により、操作部に誤って触れた場合等による誤動作を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明による溶接用保護面によれば、電力の供給状況を考慮する必要がなく、かつ、作業効率を損ねることなく溶接機を遠隔操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態1における溶接用保護面の、前方から見た図(図1(a))、側面図(図1(b))及び後方から見た斜視図(図1(c))
図2】同溶接用保護面のグリップの斜視図(図2(a))、後方から見た図(図2(b))、及び右側面(図2(c))
図3】同溶接用保護面を備えた溶接システムの構成を示すブロック図
図4】同溶接用保護面を説明するための光電池の分光感度を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、溶接用保護面等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0028】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における溶接用保護面の、前方から見た図(図1(a))、側面図(図1(b))及び後方から見た斜視図(図1(c))である。
【0029】
図2は、本実施の形態における溶接用保護面のグリップの斜視図(図2(a))、後方から見た図(図2(b))、及び右側面(図2(c))である。
【0030】
図3は、本実施の形態における溶接用保護面を備えた溶接システムの構成を示すブロック図である。
【0031】
溶接システム1000は、図3に示すように、溶接用保護面1及び溶接機3を備える。
【0032】
溶接用保護面1は、光電池101、電力供給部60、複数の操作部201、及び送信部202を備えている。この実施の形態においては、複数の操作部201が、第一回転操作部201a及び第二回転操作部201bである場合を例に挙げて説明する。
【0033】
電力供給部60は、電圧調整回路601、ダイオード602,603、充電制御回路604、及び二次電池605を備えている。
【0034】
溶接機3は、溶接電源装置30、ワイヤ送給装置40、溶接トーチ50を備える。
【0035】
溶接電源装置30は、受信部301、溶接制御部302、電源部303を備える。
【0036】
溶接用保護面1は、図1に示すように、保護面10、及び保護面10を保持するためのグリップ20を備える。グリップ20は、1または2以上の操作部201と、送信部202とを備える。溶接用保護面1は、例えば、ハンドシールド型の溶接用保護面である。
【0037】
保護面10の表面には、1または2以上の光電池101が配置されている。光電池101が配置されている位置やサイズ、数等は問わない。例えば、光電池101は、保護面10前面の窓部103以外の領域に配置される。この光電池101により、溶接時に発生する光から、溶接用保護面1の送信部202で利用する電力を取得することができる。
【0038】
保護面10は、顔部や、頭頸部の前面等を覆うための面体である。保護面10は、例えば、溶接の際に発生する目に有害な紫外放射、赤外放射及び強い可視光から溶接作業者の目を保護し,かつ,アークやスパッタなどによる外傷の危険から顔部や頭頸部の前面を保護するためのものである。保護面10は、例えば、溶接に利用可能な保護面であれば、どのような材質及び形状の保護面であってもよい。
【0039】
光電池101は、光エネルギーを電力に変換するものである。例えば、光電池101は、溶接時に発生するアーク等の光の光エネルギーを電力に変換するものである。光電池101は、光起電力効果によって光を電力に変換して電力供給部60に出力する。光電池101は、例えば、図示しない複数の光電池セルを直列や並列に接続してパネル状にしたものである。光電池101は、太陽電池や、ソーラーパネル等も含む概念である。光電池101については、公知技術であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0040】
なお、光電池101として、溶接機3を用いて行われる溶接の種類に応じて、異なるアーク光のスペクトルに合わせた光電池を用いれるようにしてもよい。このようにすることで、溶接時に発生する光によって、より効率的に発電をすることができる。具体的には、アーク光のスペクトルにおいて相対的に強度の高い波長領域の分光感度が高い光電池101を用いればよい。分光感度とは、光電池の波長による感度の違いを表すものであり、特定波長における、入射光強度と出力電流値の比である。
【0041】
図4は、光電池の分光感度を示す図である。単結晶シリコン光電池の分光感度を実線で、アモルファスシリコン光電池の分光感度を破線で示している。図に示すように、単結晶シリコン光電池の分光感度は0.9(μm)付近で一番高くなり、アモルファスシリコン光電池の分光感度は0.6(μm)付近で一番高くなっている。アモルファスシリコン光電池の方が単結晶シリコン光電池より、短い波長領域で分光感度が高くなっている。
【0042】
一方、MIG溶接やTIG溶接のようなシールドガスにアルゴンガスを用いるアーク溶接の場合、アーク光のスペクトルにアルゴンの特性スペクトルが表れ、0.7〜0.9(μm)の相対強度が大きくなる。したがって、溶接機3がMIG溶接またはTIG溶接を行う場合、光電池101として単結晶シリコン光電池を用いる方が効率が良い。また、MAG溶接や炭酸ガスアーク溶接の場合、ワイヤ電極に含まれる鉄の特性スペクトルがアーク光のスペクトルに表れ、0.5(μm)近辺の相対強度が大きくなる。したがって、溶接機3がMAG溶接または炭酸ガスアーク溶接のような消耗電極を用いる溶接を行う場合、光電池101としてアモルファスシリコン光電池を用いる方が効率が良い。なお、上記記載は、各溶接方法に適用できる光電池101の種類を限定するものではない。光電池のその他の性質(光吸収係数、温度特性、変換効率など)や、配置面積、コストなどを総合的に考慮して、光電池101の種類を決定すればよい。
【0043】
光電池101は、電力供給部60の電圧調整回路601と接続されている。電力供給部60において、電圧調整回路601は、ダイオード603を介して送信部202と接続され、ダイオード602と、充電制御回路604と、二次電池605とを介して送信部202と接続されている。
【0044】
電力供給部60の電圧調整回路601は、光電池101から入力される電圧を所定の電圧に変換する回路であり、DC/DCコンバータを備えている。電圧調整回路601から出力される電力は、ダイオード603を介して送信部202に供給される。また、送信部202で消費される電力以上に光電池101が発電を行った場合は、電力がダイオード602を介して充電制御回路604に出力され、充電制御回路604により二次電池605が充電される。
【0045】
充電制御回路604は、二次電池605の充電を制御するものである。充電制御回路604の構成は、充電器等において公知の技術であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0046】
二次電池605は、充電により繰り返し電力を蓄えることができる電池である。二次電池は、例えば、蓄電池も含む概念である。本実施の形態では、例えば、二次電池605としてリチウムイオン電池を用いている。なお、二次電池605として、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池などの他の二次電池を用いてもよい。また、電気二重層コンデンサなどのコンデンサを用いてもよい。二次電池605は、送信部202で消費される電力が不足する場合に、蓄えた電力を放電して送信部202に供給する。
【0047】
なお、電力供給部60の構成は、光電池101が取得した電力を送信部202等へ供給するものであれば、上述したものに限定されない。例えば、送信部202への出力と二次電池605への充電とを切り替えるようにしてもよい。また、ダイオード602を例えば二次電池605と送信部202との間に設けるようにしてもよい。また、溶接作業中に電力不足になることだけを防ぐのであれば、充電制御回路604および二次電池605を設けずに、乾電池を併用するようにしてもよい。この場合、溶接作業時にはアークが発生しているので光電池101が電力を供給し、溶接作業時以外は乾電池が電力を供給する。したがって、溶接作業時に電力不足になることを防ぐことができる。また、溶接作業時には、乾電池の電力を利用しないようにして乾電池の消耗を抑えることができる。
【0048】
また、電力供給部60は、溶接用保護面1の送信部202以外の処理部等にも電力を供給するようにしてもよい。例えば、操作部201が、操作を受け付けるために電力を必要とする場合、電力供給部60は、操作部201に電力を供給するようにしてもよい。また、例えば、溶接用保護面1が、複数の操作部201や送信部202の動作を制御する制御部(図示せず)を、これらの処理部とは別に有している場合、電力供給部60は、制御部に電力を供給するようにしてもよい。
【0049】
なお、本実施の形態の電力供給部60は、グリップ20内に設けられていることが好ましいが、保護面10に設けるようにしてもよい。また、電力供給部60の一部を保護面10に取り付け、他の部分をグリップ20内に設けるようにしてもよい。また、後述するように、グリップ20を保護面10に対して着脱可能とする場合、光電池101と電力供給部60とを接続するための電極やコネクタ(図示せず)を、両者の取り付け面等に設けるようにしてもよい。
【0050】
グリップ20は、手に握って保護面10を保持するための棒状の部材である。グリップ20は、通常、保護面10の下方に取り付けられている。ただし、取り付け位置は問わない。グリップ20は、保護面10に対して直接取り付けられていてもよく、取り付け用の部材等を介して取り付けられていてもよい。本実施の形態においては、図1に示すように、グリップ20が、保護面10の前面下方に取り付けられたL字型の取り付け部材15を介して保護面10に取り付けられている場合を例に挙げて説明する。グリップ20は、保護面10に着脱可能となるように取り付けられていてもよい。例えば、グリップ20は、嵌め込み構造や、レバー式の留め具等の着脱機構等により着脱可能となるよう取り付けられていてもよい。
【0051】
グリップ20の材質は問わない。グリップ20の材質は、溶接時に発生する熱等による変形が起こりにくい材質であることが好ましい。
【0052】
グリップ20は、一以上の操作部201を備えている。操作部201は、溶接機3のパラメータを設定するためのものである。溶接機3のパラメータとは、例えば、溶接機3の電流や、電圧である。グリップ20は、溶接機3のパラメータを設定する操作を受け付ける複数の操作部201を備えていることが好ましい。操作部201は、パラメータを設定するための回転操作を受け付けるものであることが好ましい。グリップ20は、回転操作を受け付ける複数の操作部201を備えていることが好ましい。回転操作を受け付ける操作部201は、例えば、ロータリースイッチや、ロータリーセレクタ、ダイヤル式スイッチである。回転操作を受け付ける操作部201は、いわゆる回転式のボリューム等の回転式の可変抵抗も含むと考えてもよい。回転操作を受け付ける操作部201は、例えば、回転操作を受け付けるためのホイール状部材を備えている。ホイール状部材は、例えば、円盤状の部材である。なお、回転操作を受け付ける操作部201は、回転操作を受け付けるものであれば、どのような構造を備えたものであってもよい。例えば、操作部201は、回転操作後に予め指定された回転位置に戻るような機構を備えたものであってもよい。なお、操作部201は、回転操作以外の操作を受け付けるもの、例えば、スライド操作や、プッシュ操作等を受け付けるものであってもよい。
【0053】
一以上の操作部201のうちの一以上は、溶接機3のパラメータである電流を設定する操作、または、溶接機3のパラメータである電圧を設定する操作の少なくとも一方を受け付けるものであることが好ましい。
【0054】
複数の操作部201は、例えば、溶接機3の異なるパラメータを設定するための操作をそれぞれ受け付ける。ここでの異なるパラメータとは、例えば、種類や制御対象が異なるパラメータである。なお、この実施の形態においては、複数の操作部201として、溶接機3のパラメータの一つである電流を設定するための回転操作を受け付ける第一回転操作部201aと、溶接機3のパラメータの一つである電圧を設定するための回転操作を受け付ける第二回転操作部201bとを備えている場合を例に挙げて説明する。ただし、本発明においては、グリップ20は、第一回転操作部201a及び第二回転操作部201bの少なくとも一方を含む、異なるパラメータを設定するための2または3以上の操作部を備えていてもよい。また、第一回転操作部201a及び第二回転操作部201b以外の2または3以上の操作部を備えていてもよい。なお、溶接機3のパラメータである電流及び電圧とは、例えば、溶接機3の溶接電源装置30の電源部303が供給する電流及び電圧である。
【0055】
複数の操作部201(例えば、第一回転操作部201a及び第二回転操作部201b)は、例えば、それぞれが、三以上の異なるパラメータ値を設定する操作を受け付ける。例えば、第一回転操作部201aは、回転操作によって、三以上の異なる電流の値を溶接機3に設定する操作を受け付けるようにしてもよい。例えば、第一回転操作部201aは、回転操作によって、予め設定された三段階以上の電流の値のいずれかを溶接機3に設定する操作を受け付ける。第二回転操作部201bは、例えば、回転操作によって、三以上の異なる電圧の値を溶接機3に設定する操作を受け付けるようにしてもよい。第二回転操作部201bは、例えば、回転操作によって、予め設定された三段階以上の電圧の値のいずれかを溶接機3に設定する操作を受け付けてもよい。第一回転操作部201a及び第二回転操作部201bは、それぞれ、例えば、回転量によって無段階に変化するパラメータ値を設定する操作を受け付けてもよい。なお、複数の操作部201が、例えば、スライド式の操作部である場合、スライド量や、スライド位置によって、三以上の異なるパラメータ値を設定する操作を受け付けるようにしてもよい。
【0056】
一以上の操作部201は、例えば、グリップ20の後方の上部に設けられている。例えば、一または二以上の操作部201は、例えば、グリップ20の後方に操作面が位置するように設けられている。回転操作を受け付ける操作部201の操作面は、例えば、複数の操作部201をそれぞれ構成するホイール状部材の側面、あるいはその一部である。例えば、本実施の形態においては、第一回転操作部201a及び第二回転操作部201bをそれぞれ構成するホイール状部材2011a及び2011bの側面が、操作面2012a及び2012bである。ホイール状部材2011a及び2011bの側面の一部には、例えば、予め指定された位置に、突起2013a、2013bが設けられている。なお、ホイール状部材2011a及び2011bは、側面に滑り止めのための凹凸等を有していてもよい。操作部201(例えば、第一回転操作部201a及び第二回転操作部201b)は、グリップ20を溶接作業者が握った場合に、親指が届く位置に設けられていることが好ましい。例えば、本実施の形態においては、図2に示すように、グリップ20が、上方後部において、幅方向の厚さが他の部分に対して薄い部分を有しており、この厚さの薄い部分の両側に、第一回転操作部201aと第二回転操作部201bとがそれぞれ回動可能に取り付けられている場合を例に挙げて示している。なお、操作を受け付ける一または二以上の操作部201は、例えば、グリップ20の後方に操作面が位置するように設けられていれば、操作部の側部の後方部分だけが、グリップ20から露出した構成であってもよい。また、グリップ20における第一回転操作部201aと、第二回転操作部201bとの配置が逆であってもよい。
【0057】
一または二以上の操作部201のうちの少なくとも一部は、一以上の操作部201が予め指定された操作を受け付けた場合に、溶接機3のパラメータを設定するための操作を受け付け可能な状態となるようにすることが好ましい。操作を受け付け可能な状態とは、例えば、各操作部201が操作を受け付けた場合に、この操作を、溶接機3のパラメータを設定するための操作として受け付ける状態、あるいはパラメータを設定するための操作と判断する状態となることである。あるいは、予め指定された操作を受け付けた場合に、溶接機3のパラメータを設定するための操作を受け付けるための電力供給が操作部に対して行われること(例えば電源オンや通電状態となること)や、操作を溶接機3のパラメータを設定するための操作として判断する判断処理を操作部201等が実行可能な状態とすることや、溶接機3のパラメータを設定するための操作を受け付けるための回路等に操作部201が接続されることであってもよい。なお、一の操作部201が予め指定された操作を受け付けた場合に、この一の操作部201だけが、溶接機3のパラメータを設定するための操作を受け付けられるようにしてもよく、全ての操作部201が操作を受け付けられるようにしてもよい。
【0058】
上述した予め指定された操作を受け付ける前は、操作部201は、例えば、溶接機3のパラメータを設定する操作を受け付けられない状態となるようにする。溶接機3のパラメータを設定する操作を受け付けられない状態とは、操作部201が操作を受け付けた場合においても、この操作を溶接機3のパラメータを設定するための操作として受け付けないこと、あるいは、パラメータを設定するための操作と判断しないことである。あるいは、溶接機3のパラメータを設定するための操作を受け付けるための電力供給が操作部201に対して行われていない状態(例えば電源オフ状態や非通電状態)や、操作を溶接機3のパラメータを設定するための操作として判断する判断処理を操作部201等が実行できない状態とすることや、溶接機3のパラメータを設定するための操作を受け付けるための回路等に操作部201が接続されていない状態であってもよい。また、操作部201が受け付けた操作により得られた操作を示す情報を破棄することや、無効とすることであってもよい。
【0059】
一以上の操作部201に対する予め指定された操作は、どのような操作であってもよい。例えば、操作部201が回転操作を受け付けるものである場合、一以上の操作部201を所定回数以上、所定の回転角度以上、回転させる操作や、上下方向に所定回数回ずつ回転させる回転操作であってもよい。また、一以上の操作部201を所定の回転角度以上、所定の方向に移動させた後、元の位置に戻す操作であってもよい。あるいは、一以上の操作部201を所定の方向に所定の回転角度以上回転させた状態で、所定時間以上保持する操作や、2つの操作部201を、それぞれ、回転させる操作であってもよい。また、操作部201が回転操作に加えて、押しボタンとして機能する構成を有している場合、この操作部201が押しボタンを押す操作を受け付けた場合に、複数の操作部201が、溶接機3のパラメータを設定するための回転操作を受け付け可能な状態となるようにしてもよい。ここでの操作対象となる一以上の操作部201は、操作部201が複数も受けられている場合、特定の操作部201であってもよいし、任意の操作部201であってもよい。また、操作部201が押しボタン等の押す操作を受け付けるものである場合、所定間隔内に、一以上の所定の回数の押す操作を受け付けた場合に、予め指定された操作を受け付けたと判断してもよい。また、予め指定された操作は、複数の操作部201を、所定の時間内や時間間隔内において、所定の順番で動かすことであってもよい。
【0060】
このように、一以上の操作部201が予め指定された操作を受け付けた場合に、一以上の操作部201が、溶接機3のパラメータを設定するための操作を受け付け可能な状態となるようにすることで、作業中に誤って操作部201に触れた場合に、溶接機3のパラメータの設定が変更されて、所望の溶接が行えなくなることを防ぐことができる。
【0061】
また、操作部201は、上述したように、溶接機3のパラメータを設定するための操作を受け付け可能な状態において、予め指定された時間以上、操作を受け付けなかった場合に、溶接機3のパラメータを設定するための操作を受け付けない状態となるようにすることが、誤った操作を受け付けにくくするうえで好ましい。例えば、溶接作業者が、誤って操作部201に触れた結果、操作部201が、溶接機3のパラメータを設定する操作を受け付け可能な状態となったとしても、例えば、予め指定された時間(例えば、5秒間等)が経過するまでに操作を受け付けなければ、再度、溶接機3のパラメータを設定する操作を受け付けられない状態に戻ることで、誤った操作を受けにくくすることができる。つまり、操作を受け付け可能な操作と、実際のパラメータを設定する操作との組み合わせを、所定の時間感覚内に受け付けない場合は、誤操作とすることができ、誤操作を未然に防ぐことが可能となる。予め指定された時間は、どのような時間に設定してもよい。
【0062】
例えば、操作部201は、溶接機3のパラメータを設定するための操作を受け付け可能とするための操作を受け付けた時点から、時間の計測を開始し、溶接機3のパラメータを設定するための操作を受け付ける毎に、計測した時間をリセットして、再度計測を繰り返し、計測した時間が予め指定された時間が経過した場合、溶接機3のパラメータを設定するための操作を受付できない状態へと移行する。
【0063】
なお、操作部201は、上述したような操作を受け付け可能な状態に移行するか否かを判断する処理や、操作を受け付けない状態に移行するための判断処理等を行うための、MPUやメモリ等を備えていてもよい。これらの処理は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、同様の構成を、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0064】
送信部202は、一以上の操作部201がそれぞれ受け付けた操作に応じたパラメータを設定する設定指示を溶接機3に送信する。送信部202は、光電池101が取得した電力を用いて送信を行う。設定指示は、例えば、溶接機3の所定のパラメータ値を操作部201に対する操作によって示される値に設定する指示である。送信部202は、例えば、操作部201が操作を受け付けた場合に、設定指示を送信する。例えば、送信部202は、第一回転操作部201aが回転操作を受け付けた場合に、溶接機3が溶接に利用する電流の値を、第一回転操作部201aが受け付けた操作が示す値に設定する設定指示を溶接機3に送信する。送信部202は、例えば、第二回転操作部201bが回転操作を受け付けた場合に、溶接機3が溶接に利用する電圧の値を、第二回転操作部201bが受け付けた操作が示す値に設定する設定指示を溶接機3に送信する。設定指示は、例えば、回転操作に対応するパラメータの種類や操作対象とその設定値とを示す情報であってもよいし、更に、設定を実行させるコマンドとを有する情報であってもよい。パラメータの設定値は、例えば、パラメータ値と考えてよい。
【0065】
送信部202は、無線通信により設定指示を送信することが、溶接用保護面1と溶接機3等を有線接続する必要がなく、溶接用保護面の動きが制限されないことから好ましい。
【0066】
送信部202は、この実施の形態においては、一例として、溶接機の受信部301との間で、直接スペクトル拡散(Direct Sequence Spread Spectrum:DSSS)通信方式を用いて通信を行う。直接スペクトル拡散通信方式では、送信側は、送信する信号に対して拡散符号による演算を行い、元の信号のスペクトルをより広い帯域に拡散して送信する。受信側は、受信した信号を共通する拡散符号を用いて逆拡散することで、元の信号に戻す。例えば、溶接システム1000毎に異なる拡散符号を用いていれば、別の溶接システムで送受信される信号を誤って受信したとしても、受信した信号は異なる拡散符号で逆拡散されて、ノイズとして除去される。したがって、高い通信品質で通信を行うことができる。
【0067】
送信部202は、例えば、図示しないアンテナを介して信号の送受信を行う。送信部202は、キャリア信号をBPSK(Binary Phase Shift Keying)変調し、変調信号にスペクトル拡散を行い、アナログ信号に変換して、電磁波として送信する。なお、変調方法はBPSK変調に限られず、ASK変調やFSK変調を行うようにしてもよい。また、スペクトル拡散は直接拡散方式に限られず、周波数ホッピング方式を用いてもよい。
【0068】
なお、本実施の形態では、スペクトル拡散を行っているが、これに限定されず、スペクトル拡散を行わないようにしてもよい。送信部202の無線通信の方式や、設定信号のエンコード方法等は問わない。無線通信の方式等は、アーク溶接により発生するノイズ等の影響を受けにくいものであることが好ましい。送信部202は、通常、無線または有線の通信手段で実現される。
【0069】
なお、グリップ20は、複数の操作部201と送信部202との動作を制御する制御部(図示せず)等を、操作部201や送信部202とは別に備えているようにしてもよい。例えば、グリップ20は、上述したような溶接機3のパラメータを設定するための操作を受け付け可能な状態に移行するか否かを判断する処理や、操作を受け付けない状態に移行するための判断処理等を行うための、図示しない制御部等を備えていてもよい。このような制御部は、例えば、MPUやメモリ等で実現可能である。これらの処理は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0070】
溶接機3は、電力を利用して溶接を行う。溶接機3は、例えば、アーク溶接機である。本実施の形態においては、溶接機3が消耗電極型のアーク溶接機である場合を例に挙げて説明する。ただし、溶接機3は、他の構造の溶接機であってもよい。
【0071】
溶接機3の、溶接電源装置30の電源部303の一方の出力端子(図示せず)は、電力供給線61を介してワイヤ送給装置40と接続されている。ワイヤ送給装置40は、ワイヤ電極51を溶接トーチ50に送り出して、ワイヤ電極51の先端を溶接トーチ50の先端から突出させる。溶接トーチ50先端に配置されているコンタクトチップ(図示せず)において、電力供給線61とワイヤ電極51とは電気的に接続されている。溶接電源装置30の電源部303の他方の出力端子(図示せず)は、電力供給線62を介して、被加工物70に接続される。溶接電源装置30は、溶接トーチ50の先端から突出するワイヤ電極51の先端と、被加工物70との間に高電圧を印加してアークを発生させ、アークに電力を供給する。溶接機3は、このアークの熱で被加工物70の溶接を行う。なお、溶接機3は、実際には、溶接トーチ50から放出するシールドガスのガスタンク、溶接トーチ50を冷却する冷却水を循環させる冷却水循環装置などを備えている場合もあるが、ここでは、図への記載や詳細な説明は省略する。
【0072】
溶接電源装置30は、アーク溶接のための電力を溶接トーチ50に供給するものである。
【0073】
受信部301は、グリップ20の送信部202から送信される設定指示を受信する。受信部301は、例えば、無線通信により設定指示を受信することが好ましい。受信部301は、例えば、グリップ20から受信した設定指示を、例えば復調して、溶接制御部302に出力する。受信部301は、図示しないアンテナ等を介して受信を行う。受信部301は、例えば通信手段により実現される。
【0074】
溶接制御部302は、受信部301が受信した設定指示に従って、溶接機3を制御するためのパラメータを設定する。例えば、溶接制御部302は、受信部301が設定指示を受け付けた場合に、設定指示に応じて電源部303を制御するためのパラメータを設定する。例えば、溶接制御部302は、この設定指示に応じて設定されたパラメータにより電源部303を制御する。例えば、パラメータに応じた制御を行うための制御信号を、電源部303に出力する。例えば、受信部301が受け付けた設定指示が、溶接機3のパラメータの一つである溶接機3が供給する電流を所定値に変更する設定指示である場合、溶接制御部302は、供給する電流のパラメータ値を、設定指示が示す所定の値に設定し、電源部303が供給する電流を所定の値に変更する制御信号を電源部303に出力する。電圧についても同様である。
【0075】
電源部303は、溶接のための電力を供給する。例えば、電源部303は、電力系統から入力される三相交流電力をアーク溶接に適した直流電力に変換して出力する。例えば、電源部303に入力された三相交流電力は、図示しない整流回路によって直流電力に変換され、図示しないインバータ回路によって交流電力に変換される。そして、図示しないトランスによって降圧され、図示しない整流回路によって直流電力に変換されて、図示しない出力端子から出力される。
【0076】
電源部303は、溶接制御部302が出力する制御信号に応じて制御される。例えば、溶接制御部302から、電源部303が出力する電力を制御する制御信号を受け付けた場合に、電源部303は、この制御信号に応じて、出力する電力を制御する。例えば、電源部303は、溶接制御部302から、電圧を上げる制御信号を受け付けた場合、この制御信号に応じて、出力する電圧を高くする。
【0077】
このように、受信部301が受信した設定指示に応じて、溶接制御部302が電源部303等のパラメータを設定することにより、溶接機3のパラメータを、グリップ20の複数の操作部201の受け付けた操作に応じて設定することが可能となり、溶接機の動作等を、操作部201の受け付けた操作に応じて制御することが可能となる。
【0078】
ワイヤ送給装置40及び溶接トーチ50については、公知技術であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0079】
以下、溶接システムの具体的な動作について説明する。
【0080】
例えば、溶接作業者が溶接用保護面1のグリップ20左手に握り、右手で溶接トーチを持った状態で、溶接電源装置30の電源部303から電力を供給して、被加工物70に対してアーク溶接を行っていたとする。
【0081】
本実施の形態においては、溶接作業者が溶接用保護面1で顔を覆って溶接を行っている際には、保護面10の前面に配置された光電池101が、溶接時に発生するアーク光を受光して電力を発生する。光電池101で発生した電力が電力供給部60から送信部202に供給され、送信部202は、複数の操作部201が受け付けた操作に応じた設定指示を、溶接機3に送信する。電力供給部60の電圧調整回路601は、溶接作業中に光電池101で発生した電力を送信部202に供給するとともに、送信部202で消費しきれない電力は充電制御回路604に送信して、二次電池605に蓄積する。また、溶接を行っていない場合や、光電池101で発生した電力が足りない場合等には、二次電池605に蓄えられた電力が送信部202に出力される。
【0082】
溶接作業者が、電源部303から供給される電流を変化させるために、左手の親指で第一回転操作部201aの側面2012aを上方向に押し上げるようにして、第一回転操作部201aを、所定の角度以上、回転させたとする。第一回転操作部201a及び第二回転操作部201bは、この回転操作を受け付け、この操作に応じて、溶接機3のパラメータを設定するための回転操作を受け付け可能な状態へと移行する。例えば、グリップ20の電源をオンとして、第一回転操作部201a及び第二回転操作部201bや、送信部202の電源をオンとする。
【0083】
更に、溶接作業者が、電源部303から供給される電流を増加させるために、左手の親指で第一回転操作部201aの側面2012aを上方向に押し上げるようにして、第一回転操作部201aを回転させたとする。例えば、第一回転操作部201aは、電流についての三段階以上の異なるパラメータ値を選択可能なロータリースイッチであり、この回転操作によって、溶接機3の電流のパラメータ値を、現在の電流のパラメータ値よりも、例えば、二段階高い値に設定するための回転操作を受け付けたとする。なお、ここでのパラメータ値の一段階分の値は、例えば、予め設定された電流の値であるとする。ただし、予め指定された比率等であってもよい。
【0084】
第一回転操作部201aが回転操作を受け付けると、送信部202は、受け付けた回転操作に応じた設定指示を溶接機3に無線により送信する。具体的には、送信部202は、電流のパラメータ値を、現在のパラメータ値よりも二段階高い値に設定する設定指示を送信する。
【0085】
溶接機3の溶接電源装置30の受信部301は、送信部202が送信する設定指示を受信し、受信した設定指示を溶接制御部302に渡す。
【0086】
溶接制御部302は、受信部301が受信した設定指示に応じて、電源部303が供給する電流のパラメータ値を、現在のパラメータ値よりも二段階高い値に設定する。例えば、溶接制御部302は、図示しない記憶媒体等に格納されている電流のパラメータ値を更新する。そして、溶接制御部302は、更新したパラメータ値に応じて、電源部303が出力する電流を制御する。例えば、溶接制御部302は、現在の電流よりも二段階分値が高い電流を出力する制御信号を電源部303に出力する。電源部303は、この制御信号に応じて、溶接トーチ50に対して供給する電流の値を、二段階高くする。これにより、第一回転操作部201aが受け付けた回転操作に応じて、電源部303から供給される電流が変更される。
【0087】
また、溶接作業者が、電源部303から供給される電圧を下げるために、左手の親指で第二回転操作部201bの側面2012bを下方向に引き下げるようにして、第二回転操作部201bを回転させたとする。例えば、第二回転操作部201bは、電圧についての三段階以上の異なるパラメータ値を選択可能なロータリースイッチであり、この回転操作によって、溶接機3の電圧のパラメータ値を、現在の電圧のパラメータ値よりも、例えば、一段階低い値に設定するための回転操作を受け付けたとする。なお、ここでのパラメータ値の一段階分の値は、例えば、上記と同様に、予め設定された値であるとする。ただし、予め指定された比率等であってもよい。
【0088】
第二回転操作部201bが回転操作を受け付けると、送信部202は、受け付けた回転操作に応じた設定指示を溶接機3に無線により送信する。具体的には、送信部202は、電圧のパラメータ値を、現在のパラメータ値よりも一段階低い値に設定する設定指示を送信する。
【0089】
溶接機3の溶接電源装置30の受信部301は、送信部202が送信する設定指示を受信し、受信した設定指示を溶接制御部302に渡す。
【0090】
溶接制御部302は、受信部301が受信した設定指示に応じて、電源部303が供給する電圧のパラメータ値を、現在のパラメータ値よりも一段階低い値に設定する。例えば、溶接制御部302は、図示しない記憶媒体等に格納されている電圧のパラメータ値を更新する。そして、溶接制御部302は、更新したパラメータ値に応じて、電源部303が出力する電圧を制御する。例えば、溶接制御部302は、現在の電圧よりも一段階分値が低い電流を出力する制御信号を電源部303に出力する。電源部303は、この制御信号に応じて、溶接トーチ50に対して供給する電圧の値を、一段階低くする。これにより、第二回転操作部201bが受け付けた回転操作に応じて、電源部303から供給される電圧が変更される。
【0091】
ここで、例えば、複数の操作部201は、複数の操作部201が溶接機3のパラメータを設定する操作を受け付け可能となってから、時間の測定を開始し、所定の時間が経過するまでに、溶接機3のパラメータを設定する操作を受け付けたか否かを判断し、受け付けていない場合、溶接機3のパラメータを設定する操作を受け付けられない状態に移行する。上記の例においては、所定の時間が経過するまでに操作を受け付けたため、溶接機3のパラメータを設定する操作を受け付けられない状態に移行しなかったものとする。
【0092】
また、所定の時間が経過するまでに溶接機3のパラメータを設定する操作を受け付けた場合は、複数の操作部201は、この操作も含めて溶接機3のパラメータを設定する操作を受け付ける毎に、計測時間をリセットして時間の計測を繰り返し行い、次の溶接機3のパラメータを設定する操作を受け付けるまでに、所定の時間が経過した場合には、溶接機3のパラメータを設定する操作を受け付けられない状態に移行する。
【0093】
例えば、上記において電圧を一段階低くした直後から、複数の操作部201の少なくとも一方が時間を計測し、予め指定された時間、例えば、10秒間が経過する前に、溶接機3のパラメータを設定する回転操作を受け付けた場合、この回転操作に応じて溶接機3のパラメータを設定して、計測した時間をリセットして再度時間の計測を最初から行う。また、予め指定された時間に、溶接機3のパラメータを設定する回転操作を受け付けなかった場合、操作部201は、溶接機3のパラメータの設定を受け付けるための回転操作を受け付けない状態に移行する。これにより、溶接作業者が操作部201に誤って触れてしまうことで、溶接機3のパラメータを誤って変更すること等を防ぐことができる。
【0094】
以上、本実施の形態によれば、送信部202が、溶接時に発生する光から光電池101が生成した電力で設定情報の送信を行うようにしたことにより、溶接作業中に発生した光を電力源とすることができ、溶接作業中に送信部202の動作に必要な電力が低下してしまうことを防いで、遠隔によって溶接機3のパラメータを設定する際に必要な電力を確実に供給することができる。特に、送信部202が無線通信を行うようにする場合、通常は、溶接用保護面1が溶接機3と有線接続されないため、有線による電力供給が行われないため、電池による電力供給が必要となるが、このような場合においても、電池の電力低下による溶接作業の中断等を防ぐことができる。
【0095】
また、本実施の形態によれば、送信部202を動作させるための乾電池等の一次電池を、溶接用保護面1あるいはそのグリップ20に設けないようにすることができ、一次電池を取り替える手間をなくすことができる。
【0096】
また、送信部202を動作させるための二次電池を、溶接用保護面1あるいはそのグリップ20に設けた場合においては、光電池101が生成した電力で二次電池の充電が可能となるため、充電の手間をなくすることができるとともに、二次電池を充電するための外部電力を利用する充電装置等を不要とすることができる。
【0097】
また、溶接時に溶接箇所に対面することとなる保護面10の前面に光電池101を配置したことにより、溶接時に確実に、かつ、光源の近く、即ち溶接箇所の近傍において光を受光することができ、効率よく電力を得ることができる。
【0098】
また、溶接時に発生するアーク光等の光を再利用することができる。
【0099】
また、本実施の形態によれば、溶接用保護面1のグリップ20に操作部201を設けたことにより、溶接時に作業を中断せずに、溶接機のパラメータを変更することができる。
【0100】
また、グリップ20に複数の操作部201を備えたことにより、溶接機3の複数のパラメータを容易に変更することができる。例えば、複数の操作部201として、電流を設定する第一回転操作部201aと、電圧を設定する第二回転操作部201bとを備えたことにより、溶接機3のパラメータである電流と電圧を個別に容易に調整することができ、溶接の状況を細かく制御することができる。
【0101】
また、本実施の形態によれば、各操作部201が三以上の異なるパラメータ値を受け付けるようにしたことにより、例えば、回転操作等でパラメータ値について三段階以上の設定変更を行うことができ、電源部303を細かく制御することができる。
【0102】
また、本実施の形態によれば、グリップ20を保護面10に対して着脱可能としたことにより、作業状況に応じて、適宜、グリップ20を取り外すことができる。
【0103】
なお、上記実施の形態において、一以上の操作部201として、複数の操作部201を設けるとともに、これらが、同じ一のパラメータ、例えば、電流または電圧等の一の種類や制御対象のパラメータを設定する操作を受け付けるとともに、一のパラメータについて受け付けるパラメータ値の変化の度合い(割合)が、操作部201ごとに異なるようにしてもよい。パラメータ値の変化の度合いが異なるとは、例えば、操作の変化量(例えば、回転操作部の回転量等)、あるいは操作による段階の変化量に対する操作部201が受け付けるパラメータ値の変化の割合が異なることを意味する。このようにすることで、パラメータ量の変更の程度に応じて、複数の操作部201を使い分けることで、設定の大きな変更を素早く行うことができ、かつ、設定を微調節することが可能となる。
【0104】
例えば、上述した実施の形態において、第一回転操作部201aと第二回転操作部201bとをともに溶接機3の電圧を設定する操作を受け付ける操作受付部とするとともに、第一回転操作部201aは、回転操作によって一段階分設定を高くする操作を行った場合には、10A(アンペア)単位でパラメータ値の設定が変化するようにし、第二回転操作部201bは、回転操作によって一段階分設定を高くする操作を行った場合には、1A単位でパラメータ値の設定が変化するようにしてもよい。このようにすることで、第一回転操作部201aを回転操作させた場合は、パラメータである電圧の設定の大きな変更を素早く行うことができるとともに、第二回転操作部201bを回転操作させた場合には、電圧の設定を微調節することが可能となる。
【0105】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、格納部(例えば、ハードディスクやメモリ等の記録媒体)にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。
【0106】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上のように、本発明にかかる溶接用保護面は、手にもって利用する溶接用保護面として適しており、特に、アーク溶接等の、電力を利用して行われる溶接において用いられる溶接用保護面等として有用である。
【符号の説明】
【0108】
1 溶接用保護面
3 溶接機
10 保護面
15 取り付け部材
20 グリップ
30 溶接電源装置
40 ワイヤ送給装置
50 溶接トーチ
51 ワイヤ電極
60 電力供給部
101 光電池
201 操作部
201a 第一回転操作部
201b 第二回転操作部
202 送信部
301 受信部
302 溶接制御部
303 電源部
601 電圧調整回路
604 充電制御回路
605 二次電池
1000 溶接システム
2011a、2011b ホイール状部材
2012a、2012b 操作面
2013a、2013b 突起
図1
図2
図3
図4