特開2015-223708(P2015-223708A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-223708ガラスフィルムを含む積層体、ガラスフィルムを含む積層体の製造方法、及びガラス物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-223708(P2015-223708A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】ガラスフィルムを含む積層体、ガラスフィルムを含む積層体の製造方法、及びガラス物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/06 20060101AFI20151117BHJP
   C03B 33/09 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   B32B17/06
   C03B33/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-108107(P2014-108107)
(22)【出願日】2014年5月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】柏谷 健
(72)【発明者】
【氏名】平尾 徹
【テーマコード(参考)】
4F100
4G015
【Fターム(参考)】
4F100AG00A
4F100AK01B
4F100AK25G
4F100AK42
4F100AK42B
4F100AR00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CB00C
4F100DC13A
4F100DC13B
4F100DC13C
4F100EJ32
4F100JK08B
4F100JK17B
4F100JL02
4F100JL05
4G015FA03
4G015FA06
4G015FB02
4G015FC02
(57)【要約】
【課題】割れを防止して、コストアップを招くことなくガラスフィルムからガラス物品を安全かつ容易に取出す。
【解決手段】本発明に係る積層体1は、ガラスフィルム2と、可撓性を有し、ガラスフィルム2を保持する保持シート4とを備え、ガラスフィルム2を保持シート4に剥離可能な程度の貼付け力で貼付けてなる。ガラスフィルム2には、ガラスフィルム2を厚み方向に貫通する切込み線部5が形成されており、切込み線部5は、ガラスフィルム2を製品部6と非製品部7とに分割する分割線部8と、非製品部7に形成され、製品部6を跨ぐように伸びる剥離補助線部9とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフィルムと、該ガラスフィルムを保持する保持シートとを備え、前記ガラスフィルムを前記保持シートに剥離可能な程度の貼付け力で貼付けてなる積層体であって、
前記保持シートは可撓性を有するもので、
前記ガラスフィルムには、前記ガラスフィルムを厚み方向に貫通する切込み線部が形成されており、
前記切込み線部は、前記ガラスフィルムを製品部と非製品部とに分割する分割線部と、前記非製品部に形成され、前記製品部を跨ぐように伸びる剥離補助線部とを有する、ガラスフィルムを含む積層体。
【請求項2】
前記剥離補助線部は、前記分割線部から前記ガラスフィルムの周縁部にまで伸びている請求項1に記載のガラスフィルムを含む積層体。
【請求項3】
前記剥離補助線部は直線状に伸びている請求項1又は2に記載のガラスフィルムを含む積層体。
【請求項4】
前記切込み線部は複数の前記剥離補助線部を有しており、前記複数の剥離補助線部は、互いに異なる向きから前記製品部を跨ぐように伸びている請求項1〜3の何れかに記載のガラスフィルムを含む積層体。
【請求項5】
前記切込み線部が、前記ガラスフィルムを厚み方向に貫通し、かつ前記保持シートの一部にまで形成されている請求項1〜4の何れかに記載のガラスフィルムを含む積層体。
【請求項6】
前記ガラスフィルムと前記保持シートとの間に配設され、前記ガラスフィルムを前記保持シートに剥離可能な程度の接着力で接着する接着層をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のガラスフィルムを含む積層体。
【請求項7】
前記接着層と前記ガラスフィルムとの接着力が、前記接着層と前記保持シートとの接着力を上回っていることを特徴とする請求項6に記載のガラスフィルムを含む積層体。
【請求項8】
前記接着層と前記保持シートとの接着力が、前記接着層と前記ガラスフィルムとの接着力を上回っていることを特徴とする請求項6に記載のガラスフィルムを含む積層体。
【請求項9】
前記保持シートは、伸縮性に優れた材料で形成されたものである請求項1に記載のガラスフィルムを含む積層体。
【請求項10】
前記ガラスフィルムは帯状をなすもので、
前記ガラスフィルムには、その長手方向に沿って複数の前記分割線部が形成されている請求項1〜9の何れかに記載のガラスフィルムを含む積層体。
【請求項11】
前記剥離補助線部は、前記ガラスフィルムの長手方向に直交する向きに沿ってかつ各々の前記製品部を跨ぐように伸びている第一の剥離補助線部と、前記ガラスフィルムの長手方向に沿って前記複数の製品部を跨ぐように伸びている第二の剥離補助線部とを有する請求項10に記載のガラスフィルムを含む積層体。
【請求項12】
前記ガラスフィルムの厚み寸法dに対する、幅寸法Lの比L/dが10以上となるよう、前記厚み寸法d及び前記幅寸法Lが所定の大きさに設定される請求項1〜11の何れかに記載のガラスフィルムを含む積層体。
【請求項13】
ガラスフィルムを、可撓性を有する保持シートに剥離可能な程度の貼付け力で貼付けることにより、ガラスフィルムを含む積層体を形成する貼付け工程と、
前記ガラスフィルムに、前記ガラスフィルムを厚み方向に貫通する切込み線部を形成する切込み線部形成工程とを備え、
前記切込み線部は、前記ガラスフィルムを製品部と非製品部とに分割する分割線部と、前記非製品部に形成され、前記製品部を跨ぐように伸びる剥離補助線部とを有するもので、
前記切込み線部形成工程において、前記ガラスフィルムに前記分割線部と前記剥離補助線部とを形成する、ガラスフィルムを含む積層体の製造方法。
【請求項14】
前記切込み線部形成工程において、レーザーを用いて、前記分割線部と前記剥離補助線部を有する前記切込み線部を形成する請求項13に記載のガラスフィルムを含む積層体の製造方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の方法で製造した積層体の前記保持シートを前記剥離補助線部に沿って折曲げて、前記製品部を前記保持シートから剥離することにより、前記製品部をガラス物品として得るガラス物品の製造方法。
【請求項16】
請求項13又は14に記載の方法で製造した積層体の前記保持シートをその平面方向に沿って引っ張って、前記製品部を前記保持シートから剥離することにより、前記製品部をガラス物品として得るガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフィルムを含む積層体、ガラスフィルムを含む積層体の製造方法、及びガラス物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、帯状ガラスや板状ガラスの製造技術の進歩に伴い、製造し得る帯状ガラス等の薄肉化が進んでいる。その一例として、一定の可撓性を有する例えば厚み寸法が300μm以下のガラスフィルムなどが開発され、様々な用途に適用されつつある。特に、最近では、ガラスが本来的に有する透過性や耐食性(耐薬品性)に加えて、薄肉であるが故に持ち得る可撓性(弾性変形性)を要する用途にも適用の拡大を図りつつある。
【0003】
このような薄肉のガラス物品は、通常、成形品となるガラスフィルムリボンから所定形状に切出すことで取得される。しかしながら、この種のガラス物品の切出しは、母材となるガラスフィルムリボンが非常に薄肉であることから難しく、また、切出した後の搬送を含めた取扱いが困難になる、との問題がある。
【0004】
ここで、例えば、特許文献1には、ガラス大板を粘着シートに貼付けたもの(切断ワーク)を作成し、この切断ワークに対して所定の切断作業を行うことで、ガラス大板を所定個数のガラス小板に切分ける技術が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、板状のガラスに粘着シートを貼付けて、板状のガラスを刃で切断することにより複数のガラス片に分離した後、粘着シートの裏面をピンで突上げて、ガラス片を部分的に剥脱させた状態とした後、吸着装置によりガラス片を吸着して、次工程へと搬送する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−103634号公報
【特許文献2】特開2005−353921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、実際のガラス物品はその用途に応じて様々な形状をなすことから、ガラスフィルムリボンの周縁部を含まないようにガラス物品の切出し領域を設定し、設定した切出し領域の周囲に沿ってガラスフィルムリボンを切断することで、所定形状のガラス物品を切出す必要がある。よって、この際、特許文献1等に記載の技術を利用して、ガラスフィルムリボンに粘着シートを貼付け、粘着シートを貼付けた状態でガラスフィルムリボンを切断すれば、ガラス物品を容易に切出すことができる。また、ガラスフィルムリボンのみを切断するようにすれば、ガラス物品を粘着シートに貼付けた状態で次工程等に搬送することが可能となる。
【0008】
しかしながら、ガラスフィルムリボンは従来の板状ガラスに比べて薄肉であるため、集中荷重や局所的な変形に対してどうしても脆くなる。そのため、製品部(ガラス物品)の端部をつまんだり、めくったりして粘着シートから剥離しようとすると、容易に割れを生じるおそれがある。また、特許文献1では、粘着力を低下させるためにUV処理を施しているが、これだと生産コストが高くなるという問題がある。
【0009】
以上の事情に鑑み、本明細書では、割れを防止して、コストアップを招くことなくガラスフィルムからガラス物品を安全かつ容易に取出すことを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題の解決は、本発明に係るガラスフィルムを含む積層体により達成される。すなわち、この積層体は、ガラスフィルムと、ガラスフィルムを保持する保持シートとを備え、ガラスフィルムを保持シートに剥離可能な程度の貼付け力で貼付けてなる積層体であって、保持シートは可撓性を有するもので、ガラスフィルムには、ガラスフィルムを厚み方向に貫通する切込み線部が形成されており、切込み線部は、ガラスフィルムを製品部と非製品部とに分割する分割線部と、非製品部に形成され、製品部を跨ぐように伸びる剥離補助線部とを有する点をもって特徴付けられる。
【0011】
このように、本発明では、可撓性を有する保持シートにガラスフィルムを剥離可能な程度の貼付け力で貼り付けてなる積層体を構成すると共に、切込み線部として、ガラスフィルムを製品部と非製品部とに分割する分割線部と、製品部を跨ぐように伸びる剥離補助線部とをガラスフィルムに形成した。このように、切込み線部としての分割線部及び剥離補助線部を設けることで、保持シートに貼り付いた状態の製品部を比較的容易に剥離し得る。例えば、剥離補助線部に沿って積層体を折曲げたときには、保持シートが比較的大きな曲率で曲がるのに対し、製品部には剥離補助線部が形成されていないことから、製品部の曲がり度合い(すなわち変形時の曲率)は比較的小さい。このようにして保持シートとガラス製の製品部との間に曲率差が生じることで、製品部が保持シートから部分的に剥がれるので、この剥がれた部分を持って容易に製品部全体を保持シートから剥がすことができる。また、折曲げ動作により自然と製品部の一部が浮き上がるようにして剥がれるので、割れ等を生じることなく安全に製品部を剥がして取出すことができる。あるいは、積層体を平面方向に沿って引っ張ったときには、剥離補助線部で保持シートが大きく伸びると共に、この剥離補助線部と連続又は近接する分割線部においても保持シートが同じ方向に大きく伸びる。よって、この大きく伸びた分割線部の側から製品部が自然と剥離し、あるいは端部が浮き上がり易くなるため、容易に製品部を取出すことができる。また、この際、平面方向に向かって粘着シートを引っ張るだけの動作で剥がすことができるので、製品部に対して局所的な荷重ないし変位(変形)を与えるおそれもない。よって、製品部を破損させることなく保持シートから剥がすことができる。
【0012】
また、本発明に係る積層体は、剥離補助線部が、分割線部からガラスフィルムの周縁部にまで伸びているものであってもよい。
【0013】
このように構成することで、ガラスフィルムの非製品部は、製品部の周縁部からガラスフィルムの周縁部に至る全領域にわたって剥離補助線部で分断された状態となる。そのため、このガラスフィルムを含む積層体を例えば剥離補助線部に沿って折曲げることで、保持シートを剥離補助線部に沿って抵抗なく折曲げることができる。抵抗なく折曲げることができれば、保持シートを容易に大きく折曲げることができるので、製品部と保持シートとの間の曲率差をさらに大きくして、製品部をより確実に保持シートから浮き上がらせることができ、より安全に製品部を剥がすことが可能となる。もちろん、平面方向に沿って積層体を引っ張る場合においても、剥離補助線部と分割線部とがつながっているほうが、分割線部で保持シートがより伸び易くなるため好適である。
【0014】
また、本発明に係る積層体は、剥離補助線部が直線状に伸びているものであってもよい。
【0015】
剥離補助線部の形状は特に限定されないが、例えば実際の折曲げ動作のし易さを考慮すると、剥離補助線部は直線状に伸びていることが好ましい。剥離補助線部がこのような形状をなすことで、より一層積層体を剥離補助線部に沿って容易に折曲げることができる。そのため、製品部をより一層安全に保持シートから剥がし易くなる。また、積層体を平面方向に沿って引っ張る場合であっても、直線状に剥離補助線部が伸びているほうが剥離補助線部の長手方向全域において保持シートを引き伸ばし易くなるため好適である。
【0016】
また、本発明に係る積層体は、切込み線部が複数の剥離補助線部を有しており、複数の剥離補助線部は、互いに異なる向きから製品部を跨ぐように伸びているものであってもよい。
【0017】
このように複数の剥離補助線部を設けることで、製品部を取出すべき者(切込み線を形成した次の工程の作業者や搬送者、出荷先の関係者など)が、複数の方向のうち何れの方向からでも積層体を折曲げ、又は引っ張ることで製品部を剥がして取出すことができる。また、1つの剥離補助線部に沿って積層体を折曲げ、又は引っ張った際、たとえ対象とする製品部が部分的に保持シートから剥がれなくても、他の剥離補助線部に沿って積層体を折曲げ、又は引っ張ることで当該製品部を剥がして取出すことができる。よって、作業内容や環境に影響を受けることなく製品部の取出し自由度を高めると共に、より確実に製品部を取出すことが可能となる。
【0018】
また、本発明に係る積層体は、切込み線部が、ガラスフィルムを厚み方向に貫通し、かつ保持シートの一部にまで形成されているものであってもよい。
【0019】
このように、切込み線部が、ガラスフィルムを厚み方向に貫通し、かつ保持シートの一部にまで形成されることで、積層体の折曲げ時、剥離補助線部に沿って保持シートをより大きく(大きな曲率で)折曲げることができる。あるいは、積層体の平面方向に沿った引張り時、剥離補助線部において保持シートをより大きく引き伸ばすことができる。よって、その分、製品部を保持シートから浮き上がらせ易くして、より安全かつ確実に製品部を剥がすことが可能となる。また、ガラスフィルムは非常に薄いため、ガラスフィルムのみを厚み方向に貫通するよう切込み線部を形成することは難しいが、保持シートの一部にまで形成するのであれば、切込み線部の形成深さを比較的容易に制御できる。よって、切込み線部の形成作業も容易になる。
【0020】
また、本発明に係る積層体は、ガラスフィルムと保持シートとの間に配設され、ガラスフィルムを保持シートに剥離可能な程度の接着力で接着する接着層をさらに備えるものであってもよい。
【0021】
このように積層体を構成することで、例えば両面接着テープの如き公知の接着部材を採用して、保持シートとガラスフィルムとの間に接着層を容易に介在させることができる。また、この場合、保持シートには、ガラスフィルムとの粘着性や密着性を考慮することなく、幅広い材料を選択可能となる。よって、より容易かつ低コストに積層体を構成することが可能となる。
【0022】
また、この場合、本発明に係る積層体は、接着層とガラスフィルムとの接着力が、接着層と保持シートとの接着力を上回っているものであってもよい。あるいは、接着層と保持シートとの接着力が、接着層とガラスフィルムとの接着力を上回っているものであってもよい。
【0023】
ガラスフィルムから分割線部に沿って切り出される(取り出される)製品部は種々の用途に用いられるため、場合によっては、製品部それ自体を直接他の部品に貼り付けることもある。このような場合に、例えば接着層とガラスフィルムとの接着力が、接着層と保持シートとの接着力を上回っているものを用意することで、製品部を剥がした際、接着層が一体に付着した状態の製品部を得ることができる。よって、これをそのまま他の部品に貼付けることができ、作業効率が向上する。もちろん、接着層と保持シートとの接着力が、接着層とガラスフィルムとの接着力を上回っているものを用意すれば、製品部を剥がした際、接着層は保持シートの側に残る。よって、この製品部を他の部品に貼付けない用途(表裏両面とも平滑な面とする用途)に用いることが可能となる。
【0024】
また、本発明に係る積層体は、保持シートが、伸縮性に優れた材料で形成されたものであってもよい。
【0025】
保持シートを、伸縮性に優れた材料で形成すれば、特に積層体を平面方向に沿って引っ張った際、保持シートが剥離補助線部でより大きく引き伸ばされる。そのため、製品部との間のせん断剥離力を高めて、製品部を一層剥がし易くすることが可能となる。
【0026】
また、本発明に係る積層体は、ガラスフィルムが帯状をなすもので、ガラスフィルムには、その長手方向に沿って複数の分割線部が形成されているものであってもよい。
【0027】
ガラスフィルムは、その製造方法にもよるが、通常、帯状に成形される。そのため、この帯状をなすガラスフィルムの長手方向に沿って複数の分割線部を形成すれば、幅方向(長手方向に直交する方向)での厚み分布の影響を受けることなく均質な製品部を取出すことができる。
【0028】
また、この場合、本発明に係る積層体は、剥離補助線部が、ガラスフィルムの長手方向に直交する向きに沿ってかつ各々の製品部を跨ぐように伸びている第一の剥離補助線部と、ガラスフィルムの長手方向に沿って複数の製品部を跨ぐように伸びている第二の剥離補助線部とを有するものであってもよい。
【0029】
このように剥離補助線部を設けるようにすれば、所望の取出し態様に応じて折曲げ方向又は引張り方向を選択することができる。例えば製品部を1個ずつ取り出したいときには、第一の剥離補助線部に沿って積層体を折曲げ、又は引っ張るようにすればよく、複数の製品部を一度に取り出したいときには、第二の剥離補助線部に沿って積層体を折曲げ、又は引っ張るようにすれば足りる。
【0030】
また、本発明に係る積層体は、ガラスフィルムの厚み寸法dに対する、幅寸法Lの比L/dが10以上となるよう、前記厚み寸法d及び前記幅寸法Lが所定の大きさに設定されるものであってもよく、好ましくは20以上に設定されるものであってもよい。
【0031】
本発明は、厚み寸法の大小に関係なくガラスフィルムを含む積層体に適用可能であるが、特に製品部を保持シートから割れなく剥がすことが困難な上記寸法関係を満たす比較的薄肉のガラスフィルムに対して好適である。
【0032】
また、前記課題の解決は、本発明に係るガラスフィルムを含む積層体の製造方法によっても達成される。すなわち、この積層体の製造方法は、ガラスフィルムを、可撓性を有する保持シートに剥離可能な程度の貼付け力で貼付けることにより、ガラスフィルムを含む積層体を形成する貼付け工程と、ガラスフィルムに、ガラスフィルムを厚み方向に貫通する切込み線部を形成する切込み線部形成工程とを備え、切込み線部は、ガラスフィルムを製品部と非製品部とに分割する分割線部と、非製品部に形成され、製品部を跨ぐように伸びる剥離補助線部とを有するもので、切込み線部形成工程において、ガラスフィルムに分割線部と剥離補助線部とを形成する点をもって特徴付けられる。
【0033】
このように、本発明に係る製造方法によっても、保持シートに貼り付いた状態の製品部を比較的容易に剥離し得る。例えば、剥離補助線部に沿って積層体を折曲げた際、保持シートが比較的大きな曲率で曲がるのに対し、製品部には剥離補助線部が形成されていないことから、製品部の曲がり度合い(変形時の曲率)は比較的小さい。このようにして保持シートとガラス製の製品部との間に曲率差が生じることで、製品部が保持シートから部分的に剥がれるので、この剥がれた部分を持って容易に製品部全体を保持シートから剥がすことができる。また、折曲げ動作により自然と製品部の一部が浮き上がるようにして剥がれるので、割れ等を生じることなく安全に製品部を剥がして取出すことができる。あるいは、積層体を平面方向に沿って引っ張ったときには、剥離補助線部で保持シートが大きく伸びると共に、この剥離補助線部と連続又は近接する分割線部においても保持シートが同じ方向に大きく伸びる。よって、この大きく伸びた分割線部の側から製品部が自然と剥離し、あるいは端部が浮き上がり易くなるため、容易に製品部を取出すことができる。また、この際、平面方向に向かって粘着シートを引っ張るだけの動作で剥がすことができるので、製品部に対して局所的な荷重ないし変位(変形)を与えるおそれもない。よって、製品部を破損させることなく保持シートから剥がすことができる。
【0034】
また、本発明に係る積層体の製造方法は、切込み線部形成工程において、レーザーを用いて、分割線部と剥離補助線部を有する切込み線部を形成するものであってもよい。
【0035】
レーザーを用いて分割線部と剥離補助線部とを有する切込み線部を形成するのであれば、予備クラック等をガラスフィルムに設けずとも簡易に所定形状の分割線部と剥離補助線部を形成することができる。レーザー光の走査軌跡で各線部の形状を設定できるので、形状自由度も高い。また、レーザー光の焦点距離を調整することで、切込み線部の形成深さを制御し易い利点もある。
【0036】
また、以上の説明に係る積層体の製造方法は、例えばその方法で製造した積層体の保持シートを剥離補助線部に沿って折曲げて、製品部を保持シートから剥離することにより、製品部をガラス物品として得る、ガラス物品の製造方法として提供することも可能である。あるいは、上記方法で製造した積層体の保持シートをその平面方向に沿って引っ張って、製品部を保持シートから剥離することにより、製品部をガラス物品として得る、ガラス物品の製造方法として提供することも可能である。
【発明の効果】
【0037】
以上に述べたように、本発明によれば、、割れを防止して、コストアップを招くことなくガラスフィルムからガラス物品を安全かつ容易に取出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態に係る積層体の平面図である。
図2図1に示す積層体のA−A断面図である。
図3図1に示す積層体のB−B断面図である。
図4図1に示す積層体の切込み線部のうち分割線部を形成する工程を説明するための平面図である。
図5図1に示す積層体の切込み線部のうち剥離補助線部を形成する工程を説明するための平面図である。
図6図1に示す積層体を剥離補助線部に沿って折曲げた際のA−A要部拡大断面図である。
図7図1に示す積層体を剥離補助線部に沿って折曲げた際のB−B要部拡大断面図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る積層体の平面図である。
図9図8に示す積層体を剥離補助線部に沿って折曲げた際のC−C要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係るガラスフィルムを含む積層体、ガラスフィルムを含む積層体の製造方法、及びガラス物品の製造方法の一実施形態を図1図7を参照して説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層体1の平面図を示している。また、図2及び図3はそれぞれ、図1に示す積層体1の異なる部位での断面図を示している。これらの図から分かるように、この積層体1は、ガラスフィルム2と、接着層3と、保持シート4とを備えるもので、ガラスフィルム2と保持シート4との間に接着層3が介在するように積層してなる。
【0041】
ガラスフィルム2は例えば図1に示すように帯状に成形される。このガラスフィルム2の厚み寸法については特に制約等なく任意の大きさが選択可能であり、例えば300μm以下に設定され、好ましくは100μm未満に設定され、より好ましくは50μm以下に設定され、さらに好ましくは30μm以下に設定され、より一層好ましくは15μm以下に設定される。なお、下限値については特に制約等ないが、成形技術上の観点から、例えば1μm以上に設定されるのがよい。
【0042】
また、幅寸法に関しても特に制約等はないが、取出すガラス物品の寸法に応じて適宜設定するのがよく、例えばガラス物品の幅方向寸法の2倍以上かつ5倍以下の大きさに設定される。具体的な数値として表した場合、ガラスフィルム2の幅寸法は例えば100mm以下に設定され、好ましくは50mm以下に設定される。
【0043】
また、厚み寸法と幅寸法との関係で見た場合、ガラスフィルム2は、厚み寸法をd、幅寸法をLとした場合、L/d≧10となるように形成されるのが好ましく、L/d≧20となるように形成されるのがより好ましい。
【0044】
また、ガラスフィルム2の組成についても特に限定されず、例えばアルカリ含有アルミノシリケートガラスや、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス等が採択可能である。
【0045】
また、ガラスフィルム2の成形方法についても特に制約等なくオーバーフローダウンドロー法など公知の成形技術が適用可能である。一例として、厚み寸法が30μm以下のガラスフィルム2を成形する場合には、まずガラスフィルム2の一次成形体を上記公知の成形技術で成形し、この一次成形体にリドロー法で二次成形を施す(一次成形体を加熱し、引き伸ばす)ことで最終製品の厚み寸法に成形することが可能である。
【0046】
接着層3は、本実施形態ではガラスフィルム2、保持シート4と別体をなすもので、例えばアクリル系両面接着テープなどが用いられる。接着力に関していえば、一旦貼付いた状態から人の手で端から剥がせる程度の貼付け力でガラスフィルム2に貼付くものが用いられる。接着層3の厚み寸法は特に問わないが、例えば1μm以上かつ50μm以下の大きさに設定され、好ましくは5μm以上かつ20μm以下の大きさに設定される。また、接着層3の幅寸法は、平面視した状態で、ガラスフィルム2、保持シート4の何れからもはみ出ないよう、ガラスフィルム2と保持シート4の幅寸法のうち小さいほうと同等又はそれ以下であることが好ましい。
【0047】
保持シート4は、接着層3を介してガラスフィルム2を保持するもので、可撓性を有する材料で形成される。ここでいう「可撓性を有する」とは、後述するガラスフィルム2の製品部6と保持シート4との間に所定の曲率差を生じ得る程度にまで、かつ保持シート4に破損等を生じることなく折曲げ可能な変形性を有する、との意である。このような性質を示す材料としては樹脂が好適であり、その一例としてPETを挙げることができる。もちろん、樹脂以外の材料からなる構造体、例えば紙や金属箔で保持シート4を形成することも可能である。
【0048】
保持シート4の厚み寸法は特に問われず、例えば20μm以上かつ500μm以下に設定され、好ましくは20μm以上かつ100μm以下に設定され、より好ましくは30μm以上かつ50μm以下に設定される。また、積層体1としての取り扱いのし易さ等を考慮すると、保持シート4の厚み寸法はガラスフィルム2の厚み寸法より大きいことが望ましい。
【0049】
また、保持4シートとガラスフィルム2の幅寸法の大小の別は問わないが、取扱い時の安全性の観点からは、本実施形態で図示(図1を参照)のように、保持シート4がガラスフィルム2からはみ出ている(保持シート4の幅寸法がガラスフィルム2の幅寸法より大きい)ほうが、ガラスフィルム2が不意の接触による割れを生じる危険性が小さいため好ましい。
【0050】
上記構成の積層体1において、ガラスフィルム2には、ガラスフィルム2を厚み方向に貫通する切込み線部5が形成される。この切込み線部5は、ガラスフィルム2を製品部6と非製品部7とに分割する分割線部8と、非製品部7に形成され、製品部6の保持シート4からの剥離を補助する剥離補助線部9とを有する。
【0051】
このうち、分割線部8は、ガラスフィルム2を平面視した状態で閉曲線状をなし、製品部6の全周にわたって形成される。本実施形態では、分割線部8は真円状をなし、故に分割線部8で非製品部7と分割される製品部6も真円形状をなす。また、本実施形態では、帯状をなすガラスフィルム2の長手方向に沿って複数の分割線部8が形成されており、分割線部8と同数の製品部6が切出し可能となっている。なお、図1には、ガラスフィルム2の幅方向にわたって1つの分割線部8が形成される場合を例示しているが、もちろん、幅方向にわたって2つ以上の分割線部8を形成することも可能である。
【0052】
剥離補助線部9は非製品部7に形成されるもので、製品部6を跨ぐように伸びている。本実施形態では、各製品部6をガラスフィルム2の長手方向に直交する方向、すなわち幅方向に跨ぐように、製品部6の数と同数の剥離補助線部9が直線状に伸びている。また、各剥離補助線部9は分割線部8からガラスフィルム2の周縁部にまで伸びている。これにより、非製品部7を長手方向で完全に分断している。
【0053】
また、これら分割線部8と剥離補助線部9は共に、ガラスフィルム2を厚み方向に貫通している。本実施形態では、分割線部8と剥離補助線部9は、図2及び図3に示すように、ガラスフィルム2及び接着層3を厚み方向に貫通し、かつ保持シート4の一部にまで形成されている。
【0054】
上記形状の切込み線部5は、例えば以下の工程を経て積層体1に形成される。まず、図4に示すように、切込み線部5を形成する前の積層体1の上方にレーザー光照射装置10を配置し、下方に位置するガラスフィルム2に向けて所定のレーザー光を照射しながら、予め設定された第一の切断予定線11に沿ってレーザー光(レーザー光照射装置10)を走査する。これにより切断予定線11と同形状の分割線部8が形成され、ガラスフィルム2が製品部6と非製品部7とに分割される。
【0055】
こうして分割線部8を形成した後、剥離補助線部9を形成する。すなわち、図5に示すように、剥離補助線部9を形成する前の積層体1の上方にレーザー光照射装置10を配置し、下方に位置するガラスフィルム2に向けて所定のレーザー光を照射しながら、予め設定された第二の切断予定線12に沿ってレーザー光(レーザー光照射装置10)を走査する。これにより、非製品部7に、各製品部6を幅方向に跨ぐように伸びる複数の剥離補助線部9が形成される。
【0056】
以上のようにして形成された切込み線部5を備えた積層体1は、特に、製品部6を剥がして取出す際に以下の如き利点を有する。
【0057】
すなわち、積層体1をその表裏一方の側(ここでは保持シート4の側)に向けて曲げることで製品部6を剥がすことを考えた場合、図6に示すように、積層体1はその幅方向に形成された剥離補助線部9に沿って大きく曲がる(折曲がる)。ここで、剥離補助線部9は非製品部7に形成されており、かつガラスフィルム2の幅方向中央に形成された製品部6を跨ぐように幅方向に伸びている。そのため、上述のように積層体1を折り曲げた際、保持シート4は比較的大きな曲率で曲がるのに対し、剥離補助線部9が形成されていない製品部6の曲がり度合い(すなわち変形時の曲率)は比較的小さい。よって、保持シート4とガラス製の製品部6との間に曲率差が生じ、この曲率差に基づく製品部6の剥離力が、製品部6と保持シート4との貼付け力(接着力)を上回ることで、製品部6がその折曲げ側の端部から剥がれる(図7)。よって、この剥がれた部分を持ってさらに製品部6を保持シート4から引き離すだけで、容易にガラス物品としての製品部6全体を保持シート4から剥がすことができる。また、折曲げ動作により自然と製品部6の端部から浮き上がるようにして剥がれるので、割れ等を生じることなく安全に製品部6を剥がして取出すことができる。特に、本実施形態のように、製品部6が円形で、どの向きから剥がそうとしても製品部6の剥がれ方が同じ(矩形などと違って、剥がれ易さについて異方性がない)場合に、本発明が特に有効である。
【0058】
また、本実施形態では、切込み線部5(特に剥離補助線部9)を、保持シート4の一部にまで形成しているので、積層体1の折曲げ時、保持シート4を剥離補助線部9に沿って容易にかつ大きく折曲げることができる。これによって、製品部6を一層取出し易く(剥がし易く)なる。
【0059】
また、この際、各製品部6をガラスフィルム2の幅方向に跨ぐように、剥離補助線部9が直線状に伸びていることで、かつ、各剥離補助線部9が分割線部8からガラスフィルム2の周縁部にまで伸びていることで、より保持シート4を大きな曲率で折曲げ易くなる。これによっても、製品部6を取出し易くなる。
【0060】
以上、本発明に係るガラスフィルムを含む積層体、ガラス積層体の製造方法、及びガラス物品の製造方法の一実施形態を説明したが、この積層体、及び積層体の製造方法は、当然に本発明の範囲内において任意の形態を採ることができる。
【0061】
例えば、上記実施形態では、各製品部6を一方向に跨ぐ剥離補助線部9をガラスフィルム2に形成した場合を例示したが、もちろん、製品部6を複数の方向から跨ぐように伸びるよう、剥離補助線部9を1つの製品部6につき複数形成することも可能である。図8はその一例を示すもので、図8に示す積層体21は、保持シート24に貼付けられたガラスフィルム22に、切込み線部25を形成してなる。切込み線部25は、ガラスフィルム22を製品部26と非製品部27とに分割する分割線部28と、非製品部27に形成され、保持シート24の折曲げを補助する剥離補助線部とを有しており、この剥離補助線部は、ガラスフィルム22の長手方向に直交する向きに沿ってかつ各々の製品部26を跨ぐように伸びている第一の剥離補助線部29と、ガラスフィルム22の長手方向に沿って複数の製品部26を跨ぐように伸びている第二の剥離補助線部30とを有する。
【0062】
このように2方向に伸びる剥離補助線部(第一の剥離補助線部29、第二の剥離補助線部30)を設けるようにすれば、所望の取出し態様に応じて折曲げ方向を選択することができる。例えば製品部26を1個ずつ取り出したいときには、第一の剥離補助線部29に沿って積層体21を折曲げるようにすればよく、複数の製品部26を一度に取り出したいときには、第二の剥離補助線部30に沿って積層体21を折曲げれば足りる。従って、本実施形態に係る積層体21とすることで、製品部26の取出し自由度を高めることが可能となる。
【0063】
また、以上の説明において、剥離補助線部9,29,30は何れも、真円形状をなす製品部6,26の中心を通過する(跨ぐ)ように形成されているが、別にこの位置に限る必要はない。剥離補助線部9,29,30に沿って積層体1,21を折り曲げた際の製品部6,26の端部からの十分な浮き上がりが得られれば問題ないため、例えば予め折曲げ側が長手方向あるいは幅方向の何れか一方に決まっている場合、折曲げ側(浮き上がり開始側)に剥離補助線部9,29,30の形成位置をシフトさせても構わない。もちろん、折曲げ自由度の向上メリットを最大限に享受する観点からは、図示の如く、製品部6,26の中心を跨ぐように伸びるよう、剥離補助線部9,29,30を形成するのがよい。
【0064】
また、上記実施形態では、ガラスフィルム2と保持シート4との間に接着層3が介在する場合、接着層3が剥離後もガラスフィルム2側(製品部6側)に一体的に残る場合を例示したが、もちろん用途によっては、保持シート4側に残るようにしてもよい。図9は、図8に示す積層体21において、ガラスフィルム22と保持シート24との間に介在する接着層23が製品部26と一体的に保持シート24から剥がれる場合を描いている。すなわち、この場合、ガラスフィルム22と接着層23との接着力は、保持シート24と接着層23との接着力を上回るよう接着層23の選定等が調整されている。なお、図9では、切込み線部25(特に分割線部28)が保持シート24の一部にまで形成される場合を例示しているが、接着層23が保持シート24の側に残ってもよいのであれば、切込み線部25も接着層23を厚み方向に貫通する必要はない。
【0065】
また、上記実施形態では、接着層3,23が、両面接着テープである場合を例示したが、これ以外の形態、例えば液状接着剤を薄膜状に保持シート4,24上に塗布し、この上にガラスフィルム2,22を載置することにより、積層体1,21を構成するようにしても構わない。
【0066】
また、上記実施形態では、ガラスフィルム2,22又は保持シート4,24と別体に形成された場合を例示したが、例えば接着層3,23と樹脂製の基体とを一体に有する接着シート(接着テープ)を、接着層3,23と保持シート4,24との一体品として採用することも可能である。
【0067】
もちろん、接着層3,23は必ずしも必要ではなく、他の要件を満たす限りにおいて、例えば保持シート4,24をガラス製とし、いわゆる帯電接着で互いに固定する構造を採ることも可能である。
【0068】
また、以上の説明では、積層体1,21からの製品部6,26の取出し方として、剥離補助線部9,29,30に沿って積層体1,21を曲げる方法を例示したが、これ以外の方法によっても製品部6,26を取出すことが可能である。例えば図1に示す積層体1の長手方向に沿って積層体1を引っ張ることで、保持シート4を剥離補助線部9で大きく引き伸ばし、これにより製品部6を保持シート4から剥離させて取出す方法が採用可能である。この場合、保持シート4が引っ張り方向に大きく伸びると共に、剥離補助線部9と連続する分割線部8においても保持シート4が同じ方向に大きく伸びる。よって、この大きく伸びた分割線部8の側から製品部6が自然と剥離し、あるいは製品部6の端部が浮き上がり易くなるため、容易に製品部6を取出すことができる。また、この際、平面方向に向かって粘着シート4を引っ張るだけの動作で剥がすことができるので、製品部6に対して局所的な荷重ないし変位(変形)を与えるおそれもない。よって、製品部6を破損させることなく保持シートから剥がすことができる。
【0069】
なお、上述した方法で製品部6を保持シート4から剥がして取出す方法を採用する場合、保持シートを、伸縮性に優れた材料で形成するのがよい。このように保持シート4に大きな伸縮性をもたせることで、特に積層体1を平面方向に沿って引っ張った際、保持シート4が剥離補助線部9でより大きく引き伸ばされる。そのため、製品部6との間のせん断剥離力を高めて、製品部6を一層剥がし易くすることができる。
【0070】
また、以上の説明では、本発明に係る積層体1,21として、剥離補助線部9,29,30が、製品部6,26を跨ぐように伸びているものを例示したが、これ以外の構成によっても、製品部6,26を比較的容易に保持シート4,24から剥がすことが可能である。例えば、その他の発明として、剥離補助線部9,29,30が製品部6,26の周縁部、すなわち閉曲線状をなす分割線部8,28と接するように形成したものが考えられる。この構成によれば、保持シート4,24の剥離補助線部9,29,30に沿った折曲げにより、製品部6,26の端部(端面)が露出する。そのため、この製品部6,26を比較的容易に保持シート4,24から剥がすことが可能となる。
【0071】
また、以上の説明では、切込み線部5,25(分割線部8,28、及び剥離補助線部9,29,30)として何れも、連続的に伸びる形態を例示したが、必ずしもこの構成に限る必要はない。何れも図示は省略するが、途中で一部途切れた形態や、ミシン目の如く所定間隔で断続的に形成される形態等が採用可能である。要は、積層体1,21の折曲げ、又は平面方向に沿った引張りにより、剥離補助線部9で折曲がり、又は大きく引き伸ばされて、製品部6を保持シート4から剥がすことで、非製品部7から完全に分割可能な限りにおいて、その形態は任意である。
【0072】
また、以上の説明に係るガラスフィルムを含む積層体、ガラスフィルムを含む積層体の製造方法、及びガラス物品の製造方法により取得し得るガラス物品(製品部6,26)は、種々の用途に適用可能である。例えば、ガラスが本来的に有する透過性や耐食性(耐薬品性)に加えて、薄肉であるが故に持ち得る可撓性(弾性変形性)、ひいては耐振動性を要する用途にも適用可能である。また、製品部6,26の形状についても図示した円形に限らず、楕円形、矩形などの多角形、及びこれらの角部を丸めた形状など、用途に応じた形状に分割線部8,28を形成することで取出し可能である。
【符号の説明】
【0073】
1,21 積層体
2,22 ガラスフィルム
3,23 接着層
4,24 保持シート
5,25 切込み線部
6,26 製品部
7,27 非製品部
8,28 分割線部
9,29,30 剥離補助線部
10 レーザー光照射装置
11,12 切断予定線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9