(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-223862(P2015-223862A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】自転車用ペダル
(51)【国際特許分類】
B62M 3/08 20060101AFI20151117BHJP
【FI】
B62M3/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-108017(P2014-108017)
(22)【出願日】2014年5月26日
(71)【出願人】
【識別番号】390007135
【氏名又は名称】株式会社三ケ島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001391
【氏名又は名称】特許業務法人レガート知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 敏行
(57)【要約】 (修正有)
【課題】装着時には強いバネ力が必須であり、他方強いバネ力は離脱操作の障害になるので弱いバネ力が好ましいという相反する要求を満たすために、離脱操作時に必要とする力を低減することができる自転車用ペダルを提供する。
【解決手段】ペダルボディの前方に固定係止爪3を、後方に可動係止爪4a、4bを備えたいわゆるステップイン・ターンアウトタイプのペダルであって、前記可動係止爪を独立した複数の可動係止爪としてペダル軸方向に並列して取り付け、各可動係止爪はそれぞれ個別の付勢部材によって上向きに付勢する。靴の離脱操作においては、下方に回動させるべき可動係止爪のバネ力は1/2以下に減少することとなり、小さな力で可動係止爪を回動させ、クリートの係止を解除し、靴を離脱することができる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダルボディの前方と後方とに、靴底に取り付けられたクリートを共同して係止する係止爪を備え、
前記前方の係止爪は固定係止爪であり、
前記後方の係止爪はペダル軸と平行な軸に回動可能に取り付けられた可動係止爪であり、
前記可動係止爪は、独立した複数の可動係止爪がペダル軸方向に並列して取り付けられ、
各可動係止爪はそれぞれ個別の付勢部材によって上向きに付勢された、
自転車用ペダル。
【請求項2】
付勢部材はペダル軸と平行な軸に取り付けられたトーションバネとし、このトーションバネの一端部は外向きに伸びた延出部としてあり、この延出部がペダル軸と平行に軸支された共通のアジャスターに係止し、このアジャスターの外周面はその回転軸心からの距離が異なる複数の平面を備えた、請求項1記載の自転車用ペダル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ペダルボディの前方と後方とに、靴底に取り付けられたクリートを共同して係止する係止爪を備えた、クリップレスタイプの自転車用ペダルに関するものであり、詳しくは、靴をペダルに固定するときは上から踏み込み、ペダルから離脱させるときには靴を回転させるようにした、いわゆるステップイン・ターンアウトタイプの自転車用ペダルである。
【背景技術】
【0002】
この種の自転車用ペダルは、ペダルボディの前方に固定係止爪を、後方に可動係止爪を備える構成であり、この基本的な構成を共通にする中で、特許文献1の発明の他、種々の提案がなされている。
【特許文献1】特開2001−294189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来提案されているステップイン・ターンアウトタイプの自転車用ペダルは、いずれも後方の可動係止爪がペダル本体の左右全幅に亘る一体の部品であった。
可動係止爪は、自転車走行中における靴(クリート)の不慮の脱抜を防ぐために、大きなバネ力が必要とされる。他方、靴をペダルから離脱させるときには、大きなバネ力に抗って可動係止爪を下方へ回動させなければならず、靴の離脱に大きな回転力が必要とされている。
【0004】
この発明は、装着時には強いバネ力が必須であり、他方強いバネ力は離脱操作の障害になるので弱いバネ力が好ましいという相反する要求を満たすために、離脱操作時に必要とする力を低減することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の自転車用ペダルは、従来のステップイン・ターンアウトタイプの自転車用ペダルと同様に以下の構成を備えている。すなわち、ペダルボディの前方(つま先側)と後方(かかと側)とに、靴底に取り付けられたクリートを共同して係止する係止爪を備え、前記前方の係止爪は固定係止爪であり、前記後方の係止爪はペダル軸と平行な軸に回動可能に取り付けられた可動係止爪である。
この発明は、前記可動係止爪を独立した複数の可動係止爪としてペダル軸方向に並列して取り付け、各可動係止爪はそれぞれ個別の付勢部材によって上向きに付勢することにより、上記課題を解決するものである。
【0006】
前記付勢部材はペダル軸と平行な軸に取り付けられたトーションバネとし、このトーションバネの一端部は外向きに伸びた延出部とし、この延出部をペダル軸と平行に軸支された共通のアジャスターに係止させ、このアジャスターの外周面はその回転軸心からの距離が異なる複数の平面を備えた構造が好ましい。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば可動係止爪を複数備え、各可動係止爪は個別の付勢部材によって付勢されている。すなわち、従来の構成においては一つの可動係止爪でまかなっていたクリートを固定するためのバネ力を複数の可動係止爪で分担してまかなうことになる。
クリートを保持するためのバネ力を同じとした場合、可動係止爪が一つの場合を1とすると、可動係止爪を二つとした場合は各可動係止爪が担うバネ力は1/2、可動係止爪を三つとした場合は各可動係止爪が担うバネ力は1/3となる。可動係止爪は4つ以上でもよい。
靴の離脱操作においては、下方に回動させるべき可動係止爪のバネ力は1/2以下に減少することとなり、小さな力で可動係止爪を回動させ、クリートの係止を解除し、靴を離脱することができる。
【0008】
付勢部材は、実施例に示すトーションバネの他、板バネその他可動爪に上向きの力を付与し得るものであれば良い。
付勢部材としてトーションバネを用いたときは、その延出部をペダル軸と平行に軸支された共通のアジャスターに係止させ、このアジャスターの外周面はその回転軸心からの距離が異なる複数の平面を備えたものとすることにより、複数のトーションバネのバネ力を一致させつつ、バネ力を調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下この発明の実施例を説明する。以下の実施例では可動係止爪を二つ備えた例を示す。実用上二つが最も適切であると考えるが、複数であれば数の限定はないこと、上記解決手段に記述したところである。
【実施例】
【0011】
ペダル軸1を備えたペダルボディ2の前方に固定係止爪3が設けてあり、後方に二つの可動係止爪4a、4bが取り付けてある。各可動係止爪の裏面両側には取付軸の挿通穴を備えた取付片5が突出しており、ペダル軸1と平行な1本の取付軸6に並列させて、回動可能に取り付けてある。前記取付軸6は一方の側壁から挿入され、端部を止めねじ6aで固定してある。
各可動係止爪4a、4bは、クリートの後縁に対向する垂直壁と、クリートの上面に対向する水平壁とを備え、ペダルクランク(図示しない)側に位置する可動係止爪4aの水平壁のクランク軸側は、クリートAに形成された傾斜縁A1に対応した傾斜縁7aを備え、ペダル軸1の先端側に位置する可動係止爪4aの係止部のクランク軸側は、クリートAに形成された傾斜縁A2に対応した傾斜縁7bを備えている。
【0012】
前記取付軸6には付勢部材としての2個のトーションバネ8a、8bが、それぞれ各可動係止爪の2つの取り付け片の間に装着してあり、各トーションバネの一端は各可動係止爪の裏面に設けられたバネ受け片9の下面に当接している。
前記取付軸6の近傍において、ペダルボディ2の内側枠2a及び外側枠2bの内側にアジャスター取付溝10が設けてあり、両取付溝10間にアジャスター11が架設してある。
このアジャスター11は、アジャスター本体12の両側に取付軸13を設けた態様であって、アジャスター本体12は、軸心からの距離が異なる3つの面12a、12b、12cを備えている。また、取付軸13の両端面には、アジャスター11を回転させるためのレンチ用穴14が設けてあり、内外の側枠2a、2bの対応部分にレンチ挿通用の穴15が設けてある。
前記アジャスター本体12に、前記トーションバネ8a、8bの延出された端部が係止し、可動係止爪4a、4bを上方へ付勢している。
【0013】
以下この実施例の自転車用ペダルの作用を示す。
この自転車用ペダルに靴を装着するときは、クリートAのつま先側を固定係止爪3に係止し、次いでかかとを踏み込んで二つの可動係止爪4a、4bをバネ力に抗って後方へ回動させてクリートのAのかかと側を可動係止爪に係止させる。
このとき、クリートAには二つのトーションバネ8a,8bのバネ力が係り、クリートAは強いバネ力で保持される。
【0014】
靴をペダルから離脱させるときは、脚をひねってクリートAを反クランク側に回動させる。このとき、クリートAの傾斜縁A1が可動係止爪4aの傾斜縁7aに当接し、クリートの回転力が可動係止爪4aのみに加わり、可動係止爪4aのみが後方へ回動する。
すなわち、一つのトーションバネ8aのみに対抗する力で可動係止爪4aを回動させて、クリートAと可動係止爪4aとの係止を解除することができる。
クリートAは、クリートの傾斜縁A1と可動係止爪の傾斜縁7aの係止が解除されれば、可動係止爪4bは回動しないかわずかに回動するのみで可動係止爪4b部分を通過することができるので、クリートAの係止は解除され、靴を離脱することができる。
【0015】
このように、係止状態においては二つのトーションバネのバネ力でクリートを保持するので、従来の可動係止爪を1部材をした構造のペダルと同等の保持力を得ることができ、他方離脱操作においては、一つのトーションバネに抗う力、すなわち従来の構造の1/2の力で離脱操作を行うことができる。
【0016】
トーションバネ8a、8bのバネ力の調節はアジャスター11によって行う。アジャスター本体12は軸心からの距離が異なる三つの平面を備えているので、バネ力は三段階に調節することができる。そして、二つのトーションバネ8a、8bの端部は一つのアジャスター本体12に係止しているので、アジャスターの回転によって二つのトーションバネのバネ力をは自動的に一致する。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明は、可動係止爪を複数備えることにより、強力なバネ力による固定と、小さなバネ力による迅速、安全な解除という相反する要求が両立可能となるものである。
【符号の説明】
【0018】
1 ペダル軸
2 ベダルボディ
3 固定係止爪
4a 可動係止爪
4b 可動係止爪
5 取付片
6 取付軸
7a 傾斜縁
7b 傾斜縁
8a トーションバネ
8b トーションバネ
9 バネ受け片
10 アジャスター取付溝
11 アジャスター
12 アジャスター本体
13 取付軸
14 レンチ用穴
15 レンチ挿通用の穴
A クリート
A1 傾斜縁
A2 傾斜縁