【解決手段】ディザ電流が制御電流Icontとして通電するコイル28を有するアクティブダンパ20であって、制御電流Icontは、制御装置1が設定するデューティ比Dtでコイル28に通電され、制御装置1は、制御電流Icontの目標となる目標指令電流Itgを算出する演算部100と、デューティ比Dtに対応する推定電流Ixを算出する電流推定部105と、目標指令電流Itgから推定電流Ixを減算した目標偏差ΔItgに基づいてデューティ比Dtを設定するデューティ設定部102と、を有する。電流推定部105は、デューティ比Dtと推定電流Ixの相関関係を示す電流特性マップMP1を備え、制御装置1は、所定の時間間隔で電流特性マップMP1を更新することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1はアクティブダンパの構成図である。
図2はピストンの構成を示す断面図である。
図1に示すように、アクティブダンパ20は、四輪の車両10に備わって車輪Wを懸架する。なお、
図1には4つの車輪Wのうちの1つが記載されている。アクティブダンパ20は、サスペンションアーム13と、ダンパ本体14と、コイルばね15と、を備えている。サスペンションアーム13は車両10の車体11にナックル12を上下動自在に支持する。ダンパ本体14は減衰力を変えられる可変減衰力ダンパであり、サスペンションアーム13と車体11を接続する。コイルばね15はサスペンションアーム13と車体11を接続する。
【0017】
車両10には制御装置1が備わっている。制御装置1は、車両10を制御する車両制御装置である。本実施形態のアクティブダンパ20は制御装置1で制御される。なお、アクティブダンパ20を制御する制御装置1が車両制御装置と別体に備わっていてもよい。アクティブダンパ20には、バッテリ等の電源2から電力が供給される。
【0018】
また、車両10には加速度センサSgが備わっている。車体11が上下動するときの加速度(上下加速度α1)は加速度センサSgで計測される。加速度センサSgが出力する計測信号(加速度信号Sig1)は制御装置1に入力される。
【0019】
図2に示すように、ダンパ本体14は、シリンダ21、ピストン22、ピストンロッド23と、フリーピストン24とを備えている。シリンダ21は下端がサスペンションアーム13(
図1参照)に接続される。ピストン22はシリンダ21に摺動自在に嵌合している。ピストンロッド23は上端が車体11(
図1参照)に接続されている。フリーピストン24は、シリンダ21の下部に摺動自在に嵌合している。
シリンダ21の内部はピストン22によって、上側(車体11の側)の第1流体室25と下側(サスペンション13の側)の第2流体室26に区画されている。第2流体室26には、圧縮ガスが封入されたガス室27がフリーピストン24によって形成されている。
【0020】
ピストン22には、第1流体室25と第2流体室26を連通させる複数の流体通路22aが形成されている。また、ピストン22の内部にはコイル28が設けられている。本実施形態のコイル28は、制御電流Icont(
図1参照)が通電する通電部になる。コイル28に供給(通電)される制御電流Icontは制御装置1(
図1参照)から出力される。また、第1流体室25と第2流体室26には磁気粘性流体が封入されている。磁気粘性流体は、オイルなどの粘性流体に鉄粉などの磁性体微粒子が分散している。磁気粘性流体に磁力を作用させると磁力線に沿って磁性体微粒子が連結して粘性流体が流れ難くなり見かけの粘性が増加する。
ピストン22のコイル28に制御電流Icontが通電されると破線の矢印で示すように磁束が発生し、流体通路22aを通過する磁束により磁気粘性流体の粘性が変化する。
制御装置1は、コイル28に通電する制御電流Icontを調節してダンパ本体14の減衰力を調節する。
【0021】
本実施形態の制御装置1は、アクティブダンパ20をPWM(pulse width modulation)制御する。つまり、制御装置1は、デューティ比Dtで制御電流Icontをコイル28に通電する。コイル28に通電される制御電流Icontは、デューティ比Dtの鋸波になる。さらに、制御電流Icontはディザ電流になっている。本実施形態において、ディザ電流は所定の振幅及び周波数で振動する電流とする。ディザ電流の振幅及び周波数は、アクティブダンパ20の特性値としてあらかじめ設定されている。
また、デューティ比Dtは、制御電流Icontがコイル28に通電される時間(この時間を「ON時間」と称する)の、所定の単位時間(PWM(pulse width modulation)周期)に対する比率を示す。デューティ比Dtが大きいほどON時間が長くなり、コイル28に通電される制御電流Icontが大きくなる。
【0022】
このように、制御装置1は、ディザ電流の制御電流Icontをデューティ比Dtでコイル28に通電してダンパ本体14の減衰力を変動させる。
コイル28にディザ電流が通電されることによってダンパ本体14の減衰力が小刻みに変動し、アクティブダンパ20の減衰力が精度よく調節される。特に、コイル28にディザ電流が通電されることによってダンパ本体14に生じる機械的な摩擦が低減される。
【0023】
このように、
図1に示す本実施形態のアクティブダンパ20は、ディザ電流の制御電流Icontが通電する通電部(
図2に示すコイル28)を有する車両用電流制御デバイスである。
【0024】
図1に示すように、車両10には電流計SIが備わっている。電流計SIは、コイル28(
図2参照)に通電される制御電流Icontを計測する。電流計SIが制御電流Icontを計測した計測信号(電流信号Sig2)は制御装置1に入力される。
【0025】
図3は制御装置1の機能ブロック図である。
図4は制御装置が有する電流特性マップを示す図である。
図3に示すように、制御装置1は演算部100を有する。演算部100は、加速度センサSgから入力される加速度信号Sig1に基づいて車体11(
図1参照)が上下動する加速度(上下加速度α1)を算出する。そして演算部100は算出した上下加速度α1に基づいて目標指令電流Itgを設定する。目標指令電流Itgの値はコイル28に通電する電流の目標値となる。演算部100は、上下加速度α1が大きいほど大きな目標指令電流Itgを設定する。演算部100で設定された目標指令電流Itgは加減算器101に入力される。
【0026】
また、本実施形態の制御装置1は電流推定部105を有する。電流推定部105は電流特性マップMP1を有する。電流特性マップMP1は、デューティ比Dtと、デューティ比Dtに対応する推定電流Ixと、の関係を示す特性マップである。
【0027】
図4に示すように、電流特性マップMP1の横軸はデューティ比Dt(単位:%)を示す。また、電流特性マップMP1の縦軸は推定電流Ix(単位:A)を示す。本実施形態における推定電流Ixは、デューティ比Dtに基づいて推定された制御電流Icontを示す。
【0028】
本実施形態の制御装置1は、
図3に示すデューティ設定部102でデューティ比Dtを補正する補正量(デューティ補正量ΔDt)を設定する。そして、加算器103がデューティ補正量ΔDtに基づいて制御電流Icontのデューティ比Dtを設定する。デューティ設定部102及び加算器103の詳細は後記する。
【0029】
図4に示す電流特性マップMP1は、車両10の電源2(
図1参照)が出力する電源電圧Voutに基づいた電圧の特性値(電圧特性値)の変化に応じて変動する推定電流Ixを示す。
なお、本実施形態において、推定電流Ixを変動させる電圧特性値は、電源電圧Voutから電圧降下ΔVを減算した電圧値(Vout−ΔV)とする。
電圧降下ΔVは、ハーネス等による電圧降下を示す。電圧降下ΔVは、温度やハーネスを流れる制御電流Icontで変化する。
【0030】
図4は、異なる電圧特性値(V1,V2,V3)に対応する推定電流Ixの一例を示す。推定電流Ixの値は、同じデューティ比Dtに対して電圧特性値が低いほど小さな値となる。すなわち、
図4において、電圧特性値はV1が最大でありV3が最小になる(V1>V2>V3)。
【0031】
コイル28(
図2参照)に通電される制御電流Icontはディザ電流であるため、電流計SI(
図1参照)から制御装置1(
図1参照)に入力される電流信号Sig2はディザ電流の振幅及び周波数で振動する。このため、電流信号Sig2に基づいて算出される制御電流Icontの値が変動する。したがって、制御装置1は、電流計SIから入力される電流信号Sig2に基づいて制御電流Icontの値を精度よく算出できない。
【0032】
例えば、制御装置1がデューティ比Dtに同期して制御電流Icontを検出する構成であれば制御装置1は制御電流Icontの値を精度よく算出できる。しかしながら、このような構成にすると制御装置1が実行するプログラムのロジックが複雑になるなどの問題が生じる。
【0033】
そこで、
図3に示す本実施形態の制御装置1(電流推定部105)は、電流特性マップMP1に基づいてデューティ比Dtに対応する推定電流Ixを算出(推定)する。そして、制御装置1は、算出した推定電流Ixを、制御電流Icontのフィードバック信号としてアクティブダンパ20(
図1参照)をフィードバック制御する。
このため、制御装置1の電流推定部105には、加算器103で設定されるデューティ比Dtが入力される。電流推定部105は、電流特性マップMP1に基づいて、デューティ比Dtに対応する推定電流Ixを算出(推定)する。電流推定部105が算出する推定電流Ixは加減算器101に入力される。
【0034】
なお、デューティ比Dtに対応する推定電流Ixは電圧特性値に応じて変動する。そこで、制御装置1は、車両10(
図1参照)が安定していると判定したときに、そのときの電圧特性値に対応するように電流特性マップMP1を更新する。
制御装置1は、車両10が安定していると判定したとき、コイル28に通電される制御電流Icontの平均値(平均電流Iave)を算出する。制御装置1は、車体11に生じている上下加速度α1が、所定の上側閾値Ulmt以下で、かつ、所定の下側閾値Dlmt以上の場合に車両10が安定していると判定する。
上側閾値Ulmt及び下側閾値Dlmtは、車両10の特性値としてあらかじめ設定されている。
【0035】
なお、上下加速度α1は、上方の加速度を正(プラス)とした場合、下方の加速度を負(マイナス)とする。そして、上側閾値Ulmtはプラス側の加速度の閾値(上限)であり、下側閾値Dlmtはマイナス側の加速度の閾値(下限)になる。
【0036】
制御装置1は、車両10(
図1参照)が安定していると判定すると電流計SI(
図1参照)から入力される電流信号Sig2に基づいて、所定の規定時間Tavにおける制御電流Icontの平均電流Iaveを算出する。規定時間Tavは、制御装置1の処理能力等に応じて適宜設定される。例えば、規定時間Tavは「100msec」に設定される。この場合、制御装置1は、制御電流Icontの100msecの平均値(平均電流Iave)を算出する。
さらに、制御装置1は、その時点で設定されているデューティ比Dtと、算出した平均電流Iaveと、に基づいて、下式(1)から車両10の電圧特性値(Vout−ΔV)を算出する。
Iave=(Vout−ΔV)/R×(Dt−Doff) ・・・(1)
式(1)において、「R」は、電源2(
図1参照)とコイル28(
図1参照)を接続するハーネス等の抵抗値を示す。また、「Doff」は、PWM回路104(
図3参照)を構成する素子のばらつきで生じるデューティ比Dtのばらつきを示す。抵抗値(R)、及び、デューティ比Dtのばらつき(Doff)は、車両10の固有値であって事前の実験計測やシミュレーション等であらかじめ設定される。
【0037】
そして、制御装置1は、式(1)の平均電流Iaveを推定電流Ixに置き換え、算出した電圧特性値でのデューティ比Dtと推定電流Ixの相関関係を導出する。具体的に、制御装置1は、式(1)において電圧特性値(Vout−ΔV)を算出した値とし、デューティ比Dtの変化に応じて変化する推定電流Ixを算出する。
これによって、算出した電圧特性値に対応したデューティ比Dtと推定電流Ixの相関関係が設定されて電流特性マップMP1が更新される。
その後、制御装置1は、更新された電流特性マップMP1に基づいてデューティ比Dtに対応する推定電流Ixを算出(推定)する。
【0038】
図3に示す加減算器101は、目標指令電流Itgから推定電流Ixを減算した偏差(目標偏差ΔItg)を算出する。加減算器101が算出する目標偏差ΔItgはデューティ設定部102に入力される。
デューティ設定部102は、目標偏差ΔItgと、デューティ比Dtの補正量(デューティ補正量ΔDt)と、の関係を示すDT(デューティ)補正マップMP2を有する。デューティ設定部102は、DT補正マップMP2に基づいて目標偏差ΔItgに対応するデューティ補正量ΔDtを算出する。
【0039】
DT補正マップMP2は、目標偏差ΔItgが大きいほど、つまり、目標指令電流Itgに対して推定電流Ixが小さいほど、デューティ比Dtが大きくなるようなデューティ補正量ΔDtが設定されている。また、DT補正マップMP2は、目標偏差ΔItgが負(マイナス)となる範囲、つまり、推定電流Ixが目標指令電流Itgよりも大きな範囲では、デューティ比Dtを小さくするようなデューティ補正量ΔDt(負のデューティ補正量ΔDt)が設定されている。
【0040】
目標偏差ΔItgに基づいてデューティ設定部102が算出したデューティ補正量ΔDtは加算器103に入力される。加算器103では、前回設定されたデューティ比Dtにデューティ補正量ΔDtを加算して新たなデューティ比Dtが設定される。
このため、制御装置1には、前回設定されたデューティ比Dtを記憶する記憶部103aが備わっている。
なお、デューティ補正量ΔDtが負(マイナス)の場合、デューティ比Dtは減少する。そして、加算器103におけるデューティ補正量ΔDtの加算でデューティ比Dtが「0」未満になった場合、加算器103はデューティ比Dtを「0」に設定する。また、加算器103におけるデューティ補正量ΔDtの加算でデューティ比Dtが「100」を超えた場合、加算器103はデューティ比Dtを「100」に設定する。
【0041】
加算器103で新たに設定されたデューティ比DtはPWM回路104に入力される。PWM回路104は、加算器103で設定されるデューティ比Dtで基準となる電流(基準電流Istd)をPWM変調し制御電流Icontを生成する。基準電流Istdは、所定の振幅及び周波数で振動するディザ電流である。
加算器103は生成した制御電流Icontを出力する。PWM回路104から出力される制御電流Icontは、ディザ電流がデューティ比Dtでコイル28に通電される鋸波になる。
デューティ比Dtが増大するとコイル28に制御電流Icontが通電されるON時間が長くなり、コイル28に発生する磁束が増える。一方、デューティ比Dtが減少するとコイル28に制御電流Icontが通電されるON時間が短くなり、コイル28に発生する磁束が減少する。
【0042】
図5は制御装置がアクティブダンパを制御するロジックを示すフローチャートである。
図6は電流特性演算の手順を示すフローチャートである。
図7はアクティブダンパに対する電流フィードバック制御の手順を示すフローチャートである。
【0043】
図5〜7を参照して、制御装置1がアクティブダンパ20を制御(電流制御)する手順を説明する(適宜
図1〜4参照)。
制御装置1は、車両10が始動するとアクティブダンパ20の電流制御を開始する。なお、本実施形態では、車両10のイグニッションがオンされた状態を車両10が始動した状態とする。
図5に示すように、制御装置1は、アクティブダンパ20の電流制御を開始すると、制御時間をカウントする(ステップS1)。
【0044】
制御装置1は、所定の制御時間(特性計測時間Tsens)が経過したとき(ステップS2→Yes)、手順をステップS3に進める。特性計測時間Tsensが経過していないとき(ステップS2→No)、制御装置1は手順をステップS5に進める。特性計測時間Tsensは、制御装置1が電流特性マップMP1を更新する時間であり、制御装置1の処理能力等に応じて適宜設定される。例えば、特性計測時間Tsensは「100msec」に設定される。
【0045】
制御装置1は、ステップS3で車体11が上下動する上下加速度α1を算出する。そして、制御装置1は、算出した上下加速度α1があらかじめ設定される所定の閾値(上側閾値Ulmt,下側閾値Dlmt)の範囲内の場合(ステップS3→Yes)、車両10の状態が安定していると判定して手順をステップS4に進め、電流特性演算を実行する。
【0046】
図6に示すように、制御装置1は電流特性演算を実行すると、所定の規定時間Tavにおける制御電流Icontの平均値を算出する(ステップS41)。
【0047】
そして制御装置1は、前記した式(1)に基づいて車両10の電圧特性値(Vout−ΔV)を算出する(ステップS42)。さらに、制御装置1は、算出した電圧特性値におけるデューティ比Dtと推定電流Ixの相関関係を算出し、電流特性マップMP1を更新する(ステップS43)。このとき、制御装置1は、前記した式(1)の平均電流Iaveを推定電流Ixに置き換えてデューティ比Dtと推定電流Ixの相関関係を算出する。
【0048】
その後、制御装置1は、手順を
図5に示すステップS5に進める。
なお、制御装置1が所定の特性計測時間Tsens間隔で電流特性演算を実行して電流特性マップMP1を更新することによって、電源電圧Vout等の変化にともなって電圧特性値が変化した場合であっても、制御装置1は、精度よくデューティ比Dtに対応した推定電流Ixを算出できる。
【0049】
制御装置1はステップS5を実行して制御時間が所定の時間(待機時間Tw)が経過したか否かを判定する。制御装置1は前回の電流制御から所定の待機時間Twが経過していれば(ステップS5→Yes)、手順をステップS6に進めて電流FB(フィードバック)制御を実行する。
一方、前回の電流制御から所定の待機時間Twが経過していない場合(ステップS5→No)、制御装置1は電流制御を終了する。
待機時間Twは、制御装置1の処理能力等に応じて適宜設定される。例えば、待機時間Twは「10msec」に設定される。なお、待機時間Twが設けられない構成(つまり、待機時間Twが「0msec」である構成)であってもよい。
【0050】
制御装置1は電流FB制御を実行すると、
図7に示すように、電流特性マップMP1に基づいてデューティ比Dtに対応する推定電流Ixを算出する(ステップS61)。
このとき、制御装置1は、
図6に示す電流特性演算で更新した電流特性マップMP1に基づいて推定電流Ixを算出する。
【0051】
また、制御装置1は目標指令電流Itgから推定電流Ixを減算した目標偏差ΔItgを算出する(ステップS62)。そして、制御装置1は、DT補正マップMP2に基づいて、目標偏差ΔItgに対応するデューティ補正量ΔDtを算出する(ステップS63)。制御装置1は、現在設定されているデューティ比Dtにデューティ補正量ΔDtを加算して新たなデューティ比Dtを設定する(ステップS64)。
【0052】
そして、制御装置1は、新たに設定したデューティ比Dtで基準電流IstdをPWM変調する。新たに設定されたデューティ比DtでPWM変調された制御電流Icontがコイル28に通電される。制御装置1から出力される制御電流Icontは、新たに設定されたデューティ比Dtでディザ電流がコイル28に通電される鋸波になる。
【0053】
制御装置1は、
図5〜7に示す手順で実行されるアクティブダンパ20の電流制御を連続して実行し、走行する車両10(
図1参照)に生じる衝撃を効果的に吸収する。
【0054】
以上のように、
図1に示す本実施形態のアクティブダンパ20は、通電部であるコイル28(
図2参照)に制御電流Icontが通電されて減衰力が調節される可変減衰力のダンパ本体14を有する。制御電流Icontはデューティ設定部102(
図3参照)が設定するデューティ比Dtの鋸波になる。また、制御電流Icontはディザ電流である。したがって、コイル28にはディザ電流の鋸波が通電されて、アクティブダンパ20の減衰力が精度よく調節される。特に、ダンパ本体14(
図2参照)に生じる機械的な摩擦が低減される。
【0055】
また、制御装置1は、車体11が上下動するときの上下加速度α1に基づいて、コイル28(
図2参照)に通電する制御電流Icontの目標値(目標指令電流Itg)を設定する。さらに、制御装置1は、デューティ設定部102(
図3参照)が設定するデューティ比Dtに基づいて、コイル28に通電されている制御電流Icontを推定する(推定電流Ixを算出する)。そして、制御装置1は、目標指令電流Itgから推定電流Ixを減算した目標偏差ΔItgに基づいて、制御電流Icontのデューティ比Dtを設定する。制御電流Icontは、ディザ電流(基準電流Istd)がデューティ比DtでPWM変調されて生成される。生成された制御電流Icontは、制御装置1から出力されてコイル28に通電される。
【0056】
このように、本実施形態の制御装置1は、デューティ比Dtに基づいて算出する推定電流Ixをコイル28(
図2参照)に通電する制御電流Icontのフィードバック信号としてアクティブダンパ20(
図1参照)をフィードバック制御する。
制御電流Icontはディザ電流であり、電流計SIが出力する電流信号Sig2はディザ電流の振幅及び周波数で振動する。このため、電流信号Sig2に基づいて算出される制御電流Icontの値が変動し、制御装置1は制御電流Icontの値を正確に取得できない。したがって、電流計SIから入力される電流信号Sig2をフィードバック信号として制御装置1がアクティブダンパ20をフィードバック制御する構成では、制御装置1は精度よくアクティブダンパ20をフィードバック制御できない。
【0057】
本実施形態の制御装置1は、デューティ比Dtに基づいて算出する推定電流Ixを制御電流Icontのフィードバック信号としてアクティブダンパ20をフィードバック制御する。また、デューティ比Dtと推定電流Ixの対応関係を示す電流特性マップMP1(
図4参照)は、車両10(
図1参照)の状態が安定していると判定されたときに所定の特性計測時間Tsens間隔で更新される。したがって、制御装置1が推定電流Ixを算出するための電流特性マップMP1が常に更新され、制御装置1は、デューティ比Dtに対応する推定電流Ixを常に精度よく算出できる。この構成によって、制御装置1は、アクティブダンパ20を常に精度よくフィードバック制御できる。
【0058】
なお、本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更が可能である。
例えば、本実施形態の車両用電流制御デバイスは、アクティブダンパ20(
図1参照)である。しかしながら、本発明はアクティブダンパ20以外の車両用電流制御デバイスにも適用可能である。アクティブダンパ20以外の車両用電流制御デバイスとしては、いずれも図示しない、ブレーキ駆動用のソレノイドや、AT(オートマチックトランスミッション)駆動用のソレノイド等がある。
【0059】
また、本実施形態の制御装置1(
図1参照)は、車体11(
図1参照)の上下加速度α1に基づいて車両10(
図1参照)の状態が安定したと判定する。この構成に限定されず、車両10の前後加速度、ロールやピッチング、図示しないアクセルペダルの踏み込み操作量、図示しないブレーキ装置を作動させるブレーキ液の液圧、などに基づいて制御装置1が車両10の状態の安定性を判定する構成であってもよい。