特開2015-224097(P2015-224097A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-224097(P2015-224097A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】用紙搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 29/70 20060101AFI20151117BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20151117BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   B65H29/70
   B65H5/06 D
   B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-109230(P2014-109230)
(22)【出願日】2014年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】工藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】戸島 隆人
【テーマコード(参考)】
2C056
3F049
3F053
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056HA29
2C056HA30
2C056HA32
3F049AA01
3F049CA33
3F049DA11
3F049DB02
3F049LA06
3F049LB05
3F053HA03
3F053HB01
3F053LA06
3F053LB05
(57)【要約】
【課題】搬送中に用紙の反りを抑制し、任意の厚さに対応して安定搬送でき、用紙の上面に印刷不可能領域が生じない用紙搬送装置を提供する。
【解決手段】用紙搬送装置1は、吸引搬送部2によってベルト5に用紙Pを吸着して搬送する。用紙の幅方向Bの両側には、付勢されて用紙の側面に接して転動するローラ7がある。ローラの回転軸Sは、搬送面に垂直な状態から、搬送方向Aの下流側と幅方向Bの内側の両方向に向けて上端側が傾斜している。用紙は搬送につれて搬送面に押し付けられ、用紙の側縁に上向きの反りがあれば搬送面から受ける反作用で反りを矯正される。用紙の側面の一部を挟んで案内するガイド部材は不用であり、表面の任意位置に印刷が可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送手段によって搬送面の上で所定の搬送方向に用紙を搬送する用紙搬送装置において、
前記搬送面に垂直で前記搬送方向に平行な面内において前記搬送面に垂直な状態から上端側が前記搬送方向に向けて傾斜した回転軸を備え、前記用紙の両側面に転動自在に接する少なくとも一対のローラを有することを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
前記一対のローラの前記回転軸が、
前記搬送面及び前記搬送方向に垂直な面内において前記搬送面に垂直な状態から上端側が前記用紙に向けて傾斜したことを特徴とする請求項1記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記搬送方向に前記用紙が搬送される際に前記一対のローラが前記用紙の両側面に追従するように、前記一対のローラを前記用紙の幅方向について移動可能に支持する移動機構と、前記一対のローラを前記用紙の両側面に当接させる付勢手段とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の用紙搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送面に沿って所定の搬送方向に用紙を搬送する用紙搬送装置に係り、特に、ダンボール等の比較的厚い用紙を搬送しながらインクジェット等の印刷手段で印刷を行う場合等に、用紙が反っていても安定して搬送することが可能であり、かつ用紙の表面に印刷手段による印刷が不可能な領域が生じないような態様で用紙を搬送することができる用紙搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されている段ボールシート印刷機の発明は、複数基の印刷ユニット1、1a、1bから構成されている。各印刷ユニットの段ボールシート送り手段5は、主送り装置6と、段ボールシートSの反りを矯正しつつ送り方向に案内する補助送り装置7からなる。補助送り装置7は、版胴2に対向して配備されて段ボールシートを支える受け部材3及び版胴2の裏面に当接する送り補助ローラ9を吸引ボックス8内に収容して構成される。この発明によれば、段ボールシート印刷において、段ボールシートを送り補助ローラ9に吸引しつつ、送り補助ローラ9の矯正回転によって送り出すことができるため、捨て版を装着せずとも段ボールシートを安定して送り出すことができ、捨て版による段ボールシートの切り捨て代を見込んでおく必要がなく、歩留りを向上できるものとされている(符号は同文献中の参照符号をそのまま使用した。また、同文献中では「段ボール」との表記が採用されているのに対し、本願発明の説明では「ダンボール」との表記を採用するが、両者の表記の意味に実質的な差異があるわけではない。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−224781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にダンボールのような厚手の用紙を搬送しながら、その表面に印刷を行う場合には、ダンボールの反りが問題となる。上記特許文献1に開示されている段ボールシート印刷機の発明によれば、段ボールシートを吸引ボックス8で吸引し、送り補助ローラ9に確実に吸着することができれば、当該送り補助ローラ9の矯正回転によって安定して送り出すことができるはずである。しかしながら、段ボールシートは補助送り装置7の搬送面上を送られていくだけであるため、剛性が大きいダンボールが湿気等の影響で変形すると、エアによる吸引のみでローラに吸着させて安定した搬送を行うことは困難となる。特に、搬送方向に平行な側縁部が上向きに反った凹反りになっていると、ダンボールと吸引手段の間から空気が逃げるために吸着は一層困難となり、搬送が不安定となって、場合によっては上方に設置されているインクヘッド等の印刷手段(上記特許文献1の例では版胴2)等にダンボールが接触したり、この衝突によってダンボールにインク汚れが発生してしまうことが考えられる。
【0005】
そこで、上記特許文献1に開示された発明のように吸引方式を採用した搬送装置においては、さらに用紙ガイドを利用してダンボールの反りを抑制しようとする場合もあった。ところが、その場合にはダンボールの厚さに応じて用紙ガイドの高さを変える必要がある。また、用紙ガイドを用いる場合には、用紙ガイドが重なるダンボール上面の側縁部分は印刷不可領域となってしまう。
【0006】
本発明は、このような従来の技術及びその課題に鑑みてなされたものであり、搬送中に用紙の反りを抑制するとともに任意の厚さに対応できるため用紙を安定的に搬送することができ、しかも用紙の上面に印刷できない領域が生じることがない用紙の搬送装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された用紙搬送装置は、
搬送手段によって搬送面の上で所定の搬送方向に用紙を搬送する用紙搬送装置において、前記搬送面に垂直で前記搬送方向に平行な面内において前記搬送面に垂直な状態から上端側が前記搬送方向に向けて傾斜した回転軸を備え、前記用紙の両側面に転動自在に接する少なくとも一対のローラを有することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載された用紙搬送装置は、請求項1記載の用紙搬送装置において、
前記一対のローラの前記回転軸が、前記搬送面及び前記搬送方向に垂直な面内において前記搬送面に垂直な状態から上端側が前記用紙に向けて傾斜していることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載された用紙搬送装置は、請求項1又は2に記載の用紙搬送装置において、
前記搬送方向に前記用紙が搬送される際に前記一対のローラが前記用紙の両側面に追従するように、前記一対のローラを前記用紙の幅方向について移動可能に支持する移動機構と、前記一対のローラを前記用紙の両側面に当接させる付勢手段とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された用紙搬送装置を、搬送方向に直交する視線で用紙の側面側(図2及び図3参照)から見た場合に、用紙の両側面に転動自在に接する一対のローラの回転軸は、搬送面に垂直な状態から上端側が搬送方向に向けて傾斜している。このため、一対のローラによって両側面から挟持されて搬送される用紙は、搬送方向に搬送されるにつれて搬送面に押し付けられる方向にも誘導され、これにより用紙の側縁に上向きの反りがあった場合には搬送面から受ける反作用によって反りを矯正される。
【0011】
また、この用紙搬送装置は、用紙の側面の一部を挟んで案内するような構造のガイド部材を必要としないため、ベルト上の用紙の表面が隠されることはなく、後段の工程が印刷であれば、その表面の任意の位置に印刷を施すことができる。
【0012】
請求項2に記載された用紙搬送装置によれば、搬送方向に平行な視線で用紙の前面側(図4及び図5参照)から見た場合に、用紙の両側面に転動自在に接する一対のローラの回転軸は、搬送面に垂直な状態から上端側が用紙に向けて傾斜している。このため、一対のローラは、反りの程度によって変わる幅方向(搬送方向と直交する方向)のサイズに対応することができ、両側面から挟持した用紙を搬送方向に搬送しながら搬送面に押し付けるまで誘導し、これにより用紙の側縁に上向きの反りがあった場合には搬送面から受ける反作用によって反りを矯正される。
【0013】
請求項3に記載された用紙搬送装置によれば、一対のローラは移動機構によって用紙の幅方向について移動可能とされ、付勢手段によって用紙の両側面に押し付けられているので、幅方向の寸法が一定でない用紙であっても、用紙が搬送されるに従って一対のローラは用紙の両側面に確実に接触しながら幅方向の寸法の変化に追従して移動することができ、用紙の搬送方向への搬送及び搬送面へ誘導して押し付けることにより反りを矯正する作用を確実に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】2対のローラを有する本発明の実施形態においてダンボールを搬送する状態を示す平面図である。
図2】1対のローラを有する本発明の実施形態においてダンボールを搬送する状態を示す第1の側面図である。
図3】1対のローラを設けた本発明の実施形態においてダンボールを搬送する状態を示す第2の側面図である。
図4】本発明の実施形態においてダンボールを搬送する状態を示す正面図である。
図5図4において互いに接触しているダンボールの一側縁部と一方のローラを示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態の用紙搬送装置を図1図5を参照して説明する。
本実施形態の用紙搬送装置は、インクジェット装置等の印刷手段で用紙に印刷を行う印刷装置に設けられた搬送手段、又はその他の処理を行うための処理装置に設けられた搬送手段として使用されることを想定している。また、この用紙搬送装置が搬送する用紙としては、厚さが比較的厚い用紙、例えばダンボール等を想定している。ここで、ダンボールとは、波状に加工した紙を表裏の紙で挟んで接着し、強度を持たせた構造の用紙を意味する。さらに多層に加工したものや、波状の紙が表面にでている片面ダンボールも含む。ダンボールは湿度等の影響によって反りが生じる場合があり、特に表裏の紙の間に挟まれた波状の紙の波形が視認できる方向から見て、その左右両側縁が上方又は下方に反り返る変形を生じやすい。本実施形態の用紙搬送装置は、このように反ったダンボールであっても、インクジェット等の印刷手段で表面の任意の部分に適切に印刷を行えるように、表面のいずれの部分も覆い隠すことなく、さらに変形を矯正しつつ安定して搬送することができるものである。
【0016】
図1及び図2に示すように、この用紙搬送装置1は、搬送手段としての吸引搬送部2を備えている。吸引搬送部2は、軸線が互いに平行となるように水平な面内に配置された従動ローラ3及び駆動ローラ4と、従動ローラ3及び駆動ローラ4に掛け回されたベルト5と、上側にあるベルト5の下面にその上面を接するように配置された吸引ボックス6とを備えている。吸引ボックス6は、用紙Pの搬送面である上面に図示しない多数の吸引孔が形成されており、内部にある図示しない吸引装置によって外気を吸引孔から内部に吸い込むことができる。またこの吸引ボックス6の搬送面に接するベルト5にも、図示しない多数の吸引孔が形成されており、吸引ボックス6の吸引孔と常時連通するように構成されている。従って、ベルト5の上に用紙Pを配置し、吸引ボックス6を作動させてベルト5の吸引孔から搬送面の吸引孔を経て吸引ボックス6内に空気を吸入すれば、用紙Pはベルト5の表面に吸着されるので、この状態で駆動ローラ4を駆動すれば、ベルト5の移動に伴ってベルト5に吸着された用紙Pは搬送されていく。
【0017】
なお、ここで、用紙搬送装置1によって用紙Pが搬送される方向を搬送方向Aと称し、図1図3の各図中に矢印で搬送方向Aを示す。なお、図4及び図5において搬送方向Aは紙面に垂直な方向である。また、搬送方向Aと直交する水平面内(すなわち搬送面内)の方向を用紙Pの幅方向Bと称し、図1図4図5の各図中に矢印で幅方向Bを示す。なお、図2及び図3において幅方向Bは紙面に垂直な方向である。また、幅方向Bに沿って測った用紙Pの寸法を用紙Pの幅と称する。
【0018】
このような吸引搬送部2によって用紙Pを吸引搬送する場合において、図4及び図5に示すように用紙の幅方向Bの両端が上反りしている場合には、用紙Pが反り返っている部分とベルト5の間に隙間ができてしまうため、吸着が不十分になって搬送に支障をきたす可能性がある。そこで、実施形態の用紙搬送装置1は、以下に説明するように、上述のような用紙Pの変形を矯正するとともに用紙Pを搬送面上のベルト5に押し付けて吸着搬送を確実にするため、用紙Pを搬送方向の両側から挟持案内する一対以上のローラ7を備えている。
【0019】
図1に示すように、吸引搬送部2の幅方向の両側には、用紙Pの案内・誘導手段としてのローラ7が2個ずつ合計4個配置されている。なお、図2及び図3では一対のローラ7の一方のみを示しているが、これは実施形態においてローラ7を一対だけ設けた構成例を示したものであり、ローラ7を2対設けた図1の構成例に対するバリエーションを同一実施形態の説明中に例示したものである。
【0020】
図1の平面図において、吸引搬送部2の幅方向Bの両側には、2個一組のローラ7,7が、搬送方向Aに沿って搬送方向Aの上流側と下流側の2位置にそれぞれ配置されている。なお、用紙Pの厚さによってローラの材質および硬度を変えることが望ましい。一例を挙げれば弾性力のあるゴム、ウレタン系を用いることが好ましく、さらに硬度はJIS−K−6253で定める硬度60度程度が適当である。
【0021】
図1に示すように、吸引搬送部2の幅方向Bの両側方には、4個のローラ7に対応して、各ローラ7の移動機構である4本のアーム8が2本ずつ設けられている。アーム8は水平面内で揺動可能となるように図示しないフレームに基端部が軸支されており、ローラ7はその先端部に回動自在に取り付けられている。アーム8の先端部及び基端部の間と図示しないフレームとの間には、付勢手段としてのばね9が設けられており、アーム8を用紙Pに近接する方向に付勢してローラ7が用紙Pの側面に常時転動自在に接するように構成されている。これにより、図1に示すように幅が一定でない異形の用紙Pが搬送される際には、二対のローラ7が用紙Pの両側面に追従して移動することができる。なお、詳細は図示しないが、アーム8の基端部の取付位置は変更可能であり、搬送する用紙Pの幅に応じて幅方向Bの取り付け位置を変えることができるようになっている。
【0022】
アーム8の先端部に取り付けられたローラ7の回転軸Sは、平面図である図1では搬送面に対して垂直であるかのように示してあるが、これは便宜上の表現であり、実際には図2図5を参照して以下に説明するように傾斜している。
【0023】
図2及び図3に示すように、ローラ7の回転軸Sは、搬送面に垂直で搬送方向Aに平行な面内において、搬送面に垂直な状態から上端側が搬送方向Aに向けて傾斜している。すなわち、搬送方向Aに直交する視線で用紙Pの側面側から見た場合に、ローラ7の回転軸Sは上端側が搬送方向Aに向けて傾斜している。この傾斜角度は、反り抑制量及び搬送抵抗等を加味して決定し、本実施形態では約10°としている。このため、一対のローラ7,7によって両側面から挟持されて搬送される用紙Pは、搬送方向Aだけでなく下方向にも力を加えられ、搬送方向Aに搬送されるにつれて搬送面に押し付けられる方向に誘導され、用紙Pの側縁に上向きの反りがあった場合には搬送面から受ける反作用によって反りが矯正される作用を受ける。
【0024】
図4及び図5に示すように、ローラ7の回転軸Sは、搬送面及び前記搬送方向Aに垂直な面内において、搬送面に垂直な状態から上端側が用紙Pに向けて傾斜している。すなわち、搬送方向Aに平行な視線で用紙Pの前面側から見た場合に、ローラ7の回転軸Sは上端側が用紙Pに向けて傾斜しており、用紙Pの上向き反りに合わせ、用紙Pの側面がローラ7に確実に接触するようになっている。この傾斜角度は、側面反り抑制量及び搬送抵抗等を加味して決定し、本実施形態では約10°としている。このため、一対のローラ7,7は、反りの程度によって変わる用紙Pの幅に対応することができ、図5に上反りの状態が徐々に矯正されていく用紙Pの端部を連続的に示すように、両側面から挟持した用紙Pを搬送方向Aに搬送しながら搬送面に押し付けるまで誘導し、これにより用紙Pの側縁に上向きの反りがあった場合には搬送面から受ける反作用によって反りが矯正される作用を受ける。
【0025】
図2及び図3と、図4及び図5のいずれにおいても、用紙Pの両側縁が上に反った変形はローラ7により矯正されて用紙Pは全面でベルト5に接するようになるため、用紙Pのベルト5に対する吸着状態は良くなり、搬送状態は良好となる。また、図2図5に示すように、ローラ7の回転軸Sの方向について測ったローラ7の幅は、ローラ7に当接する用紙Pの厚さや、その用紙Pに予想される反りの程度を考慮して適宜定めれば、種々の厚さの用紙Pや反りの程度の大きい用紙Pにも対応することができる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態の用紙搬送装置1によれば、用紙Pの搬送面の両側に合計二対4個(図1)又は一対2個(図2及び図3)のローラ7を設け、各ローラ7の回転軸Sの上端を垂直方向から内方及び搬送方向Aの下流側の2方向に向けて傾斜させた。
【0027】
このため、図2及び図3に示すように、側面側から見れば、ローラ7は用紙Pの側面に接触して搬送方向Aに連れ回りし、用紙Pには搬送方向Aと下方向に力が作用する。そして、ローラ7の連れ回りにより、上側に反った用紙Pの両側縁が搬送面に接触するまで移動して反りが矯正される。また、図4及び図5に示すように、前面側から見れば、ローラ7は用紙Pの側面に接触して搬送方向Aに連れ回りし、両側縁が上側に反った用紙Pを搬送面に接触するまで移動させた状態が保持される。
【0028】
また、各ローラ7は、揺動可能なアーム8と付勢手段としてのばね9から構成される追従機構により、用紙Pの形状に追従して接触することが可能であり、異形のダンボール等の用紙Pにも対応することができる。
【0029】
また、実施形態の用紙搬送装置1は、吸着搬送される用紙Pの側面に接触して連れ回りするローラ7で用紙Pの矯正と搬送面への押し付けを行っているため、用紙Pの側面の一部を挟んで案内するような構造のガイド部材を必要としない。このため、ベルト5上の用紙Pの表面は隠されることがなく、後段の工程が印刷であれば、その表面の任意の位置に印刷を施すことができる。また、印刷された面をガイド部材で汚すこともない。もちろん、実施形態のローラ7は用紙Pの側面に接するだけであるから、印刷された後に用紙Pの表面を汚すこともない。
【0030】
なお、以上説明した実施形態では、用紙Pの搬送手段として吸引搬送部2を示し、各ローラ7はいずれも搬送される用紙Pに連れ回りする従動ローラであった。しかしながら、一対又は複数対のローラ7を駆動ローラとし、用紙Pはこれに挟持されて所定の搬送面上を搬送されていく構成としてもよい。
【0031】
なお、実施形態では、図4及び図5に示すように用紙の幅方向Bの両端が上反りしている場合を例示し、その場合には吸引搬送が困難になるが、実施形態のように傾斜したローラ7を対で設けることにより、用紙Pを搬送面に押し付けて搬送する作用が得られ、形状矯正と吸引搬送の確実化という効果が得られる点を説明した。しかし、実施形態の用紙搬送装置1に搬入されてくる用紙Pの変形が常に上述したようなものであるとは限らず、用紙Pが逆に上に凸の形状、すなわち下面が凹んだ形状に変形した用紙Pが搬入されてくる場合も考えられ、その場合には、吸引搬送が困難になる可能性は相対的に小さくなる可能性がある。しかしながら、用紙搬送装置1にセットした用紙Pが実施形態で説明したような形態になるか否かは、搬送対象とする用紙Pがどちらの向きに凸となるような変形をするのか、またその用紙Pのいずれの面が印刷面(すなわち用紙搬送装置1において上面になるように配置すべき面)であるのか等の諸事情により決まるので、種々の条件から見て本実施形態のような用紙Pの変形及び用紙配置が好発するような場合には、実施形態の用紙搬送装置1の前記効果は特に有効であると言える。
【符号の説明】
【0032】
1…用紙搬送装置
2…吸引搬送部
3…従動ローラ
4…駆動ローラ
5…ベルト
6…吸引ボックス
7…ローラ
8…ローラの移動機構としてのアーム
9…ローラの付勢手段としてのばね
A…搬送方向
B…幅方向
P…用紙
S…ローラの回転軸
図1
図2
図3
図4
図5