特開2015-224332(P2015-224332A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2015-224332刺激応答型材料とそれを用いた細胞培養容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-224332(P2015-224332A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】刺激応答型材料とそれを用いた細胞培養容器
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20151117BHJP
   C12M 1/22 20060101ALI20151117BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20151117BHJP
   C08G 69/36 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   C09K3/00 E
   C12M1/22
   C12M1/00 C
   C08G69/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-111873(P2014-111873)
(22)【出願日】2014年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 啓介
(72)【発明者】
【氏名】丸山 優史
(72)【発明者】
【氏名】多田 靖彦
【テーマコード(参考)】
4B029
4J001
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC02
4B029DG08
4B029GA01
4B029GA03
4J001DA01
4J001DB07
4J001EA33
4J001EA34
4J001EA36
4J001GE02
4J001JA20
(57)【要約】
【課題】培養中に培養液中のpH異常を把握することと、異常なく培養ができた場合、細胞シートを非侵襲的に回収する刺激応答型材料とそれを用いた細胞培養容器を提供する。
【解決手段】温度応答性高分子で構成される領域と温度応答性高分子と異なるpH応答性高分子から構成される領域を有し、上記領域が異なる位置にあることにより、温度、pH独立に刺激応答で親水性、疎水性を変化させる材料。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH応答性高分子よりなる領域と、前記と異なる温度応答性高分子よりなる領域を有し、前記領域が異なる位置にあることを特徴とする刺激応答型材料。
【請求項2】
ポリアミノ酸を骨格とし、その側鎖に疎水性の官能基で化学修飾されていること特徴とする請求項1に記載の刺激応答型材料。
【請求項3】
前記温度応答性高分子がN−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N、N−ジメチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピペリジン及びN−メタクリロイルモルホリンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の刺激応答型材料。
【請求項4】
前記pH応答性高分子がカルボキシル基、リン酸、スルホニル及びアミノから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の刺激応答型材料。
【請求項5】
前記pH応答性高分子が(メタ)アクリル酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ホスホリルエチル(メタ)アクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドから選ばれる少なくとも1種のモノマーが重合されたものであることを特徴とする請求項1に記載の刺激応答型材料。
【請求項6】
pH6.8以下で疎水性から親水性に変化することを特徴とする請求項1に記載の刺激応答型材料。
【請求項7】
pH7.6以上で疎水性から親水性に変化することを特徴とする請求項1に記載の刺激応答型材料。
【請求項8】
温度が30℃以上で疎水性であり、30℃以下で親水性となることを特徴とする請求項1に記載の刺激応答型材料。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの記載の刺激応答型材料の刺激応答型分子を培養面に固定化することを特徴とする細胞培養容器。
【請求項10】
前記刺激応答型分子が共有結合により固定化されることを特徴とする請求項9に記載の細胞培養容器。
【請求項11】
前記共有結合がアミド結合であること特徴とする請求項10に記載の細胞培養容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養装置において培養中の培養環境を維持管理し、正常に培養された細胞を非侵襲的に回収することを可能にする刺激応答型材料とそれを用いた細胞培養容器に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療では患者から細胞を採取し、その細胞を体外で増殖させ、必要に応じて細胞組織として分化誘導を行い、患者の疾患に戻す治療法がある。細胞を体外で安定的に増殖培養するには、培養環境を一定に維持管理し、細胞を非侵襲的に回収できることが重要である。
【0003】
細胞の品質に影響を与える培養環境因子としては、温度、pH、溶存酸素、溶存二酸化炭素などが挙げられる。多くの場合、専門知識を持った人による手作業での培養を行うが、より安定的に細胞を供給するためには自動細胞培養装置が必要となってくる。しかし、手作業や自動細胞培養装置で問題となるのは、pHのオンラインモニタリングが困難であることである。手作業では、インキュベータ内の温度、CO2濃度を一定に維持するのみで、培養容器内のpHをオンラインでモニタリングすることはない。また自動培養装置にしても、無菌状態を保ったままpH電極を取り付け、電極の校正まで行うことは困難である。
【0004】
一方、細胞の回収にあたっては、通常はトリプシンなどの酵素を用い細胞と培養容器底面の接着を剥がすことが行われているが、細胞への損傷が問題となっている。そこで、近年、温度応答で培養容器底面の親水性、疎水性を制御して、細胞を非侵襲的に剥離する材料が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
細胞を医療用材料などとして用いる場合、適切な環境下で培養されたかを管理することと細胞を非侵襲的に回収することを同時に満たす必要があるが、現在そのような培養容器は実現していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−49830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、培養中に培養液中のpH異常を把握することと、異常なく培養ができた場合、細胞シートを非侵襲的に回収する刺激応答型材料とそれを用いた細胞培養容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため本発明者らが鋭意検討した結果、培養容器底面上がpHや温度に独立で応答して親水性、疎水性を変化させるポリマーを被覆することで、pH正常時には培養底面は疎水性で細胞が接着でき増殖培養が可能で、pHが管理範囲を超えると(異常時)培養面が親水性となり細胞が剥離される。正常に細胞が増殖した後は、適正pH条件下で、温度を培養温度から低い温度に下げることで培養面を疎水性から親水性に変化させることで細胞を非侵襲的に回収できる材料を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の刺激応答型材料は、pH応答性高分子よりなる領域と、前記と異なる温度応答性高分子よりなる領域を有し、前記領域が異なる位置にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、管理pH範囲を超えた培養環境の場合、培養細胞を剥離し、細胞を製品として回収せず、また適正な培養環境下で培養された細胞を回収する際、酵素を用いず、非侵襲的に細胞を回収することが可能となり、安全性の高い細胞、特に医療用途の細胞を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】刺激応答性材料の骨格を示す図である。
図2】細胞の刺激応答による接着、剥離を示す概略図である。
図3】温度応答性ポリリシンの合成を示す概略図である。
図4】温度応答性ポリグルタミン酸の合成を示す図である。
図5】温度応答性ポリアスパラギン酸の合成を示す図である。
図6】刺激応答材料の温度依存性を示す図である。横軸は温度、縦軸は透過率を示す。
図7】刺激応答材料のpH依存性を示す図である。横軸はpH、縦軸は透過率を示す。
図8】刺激応答材料の培養プレートへの固定化手順を示す図である。
図9】細胞シート培養の培養過程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明では、pH刺激応答と温度刺激応答、それぞれ独立で刺激応答材料の親水性、疎水性を変化させるために、刺激応答材料の中にpH刺激応答ポリマーと温度刺激応答ポリマーを異なる領域で配置させた。ポリアミノ酸を用いた一例を以下に示すが、他の各刺激応答ポリマー(光、温度、pH)を組み合わせることにより、2つ以上の独立した刺激応答制御が可能な刺激応答材料を作成することが可能である。
【0014】
図1に2種類の刺激応答が可能な材料の分子骨格を記す。図1では、温度応答性刺激で分子構造を変化させることが可能な部位(構造1)とpH刺激で分子構造を変化させることが可能な部位(構造2)を設けてある。
【0015】
温度応答性を有するポリマーとしてはUCST型 (upper critical soluble temperature) とLCST型 (lower critical soluble temperature) の2種類がある。前者は臨界温度以下で溶媒に不溶だが臨界温度以上で可溶、後者は臨界温度以下で可溶だが臨界温度以上で不溶、という挙動を示す。細胞の剥離に利用する際、細胞が結合できるように、培養面が疎水状態から刺激応答により親水状態に変化することが望ましい。このことから、図2のように、温度応答部位であるポリマーが可溶 (= ポリマー全体が水和されている状態) となる条件を培養工程に,不溶 (= 分子間での相互作用が大きくポリマーが脱水和し凝集した状態) となる条件を細胞剥離工程に適用するのが望ましい。LCST型の温度応答性ポリマーは親水性の主鎖に疎水性の側鎖を導入することで実現できる。
【0016】
pHに関しても同様で、pH応答部位であるポリマーが可溶 (= ポリマー全体が水和されている状態) となる条件を適正培養条件に,不溶 (= 分子間での相互作用が大きくポリマーが脱水和し凝集した状態) となる条件を適正外培養条件に適用するのが望ましい。
刺激応答性材料の原料としては、特にストレプトマイセス属の細菌が生産するポリアミノ酸を使用することが望ましい。例えば、ポリアミノ酸の1種であるポリリジンはアミノ酸からなる生体由来材料で,安価で、化学修飾も容易、アミノ基 (-NH2) を有するため担体表面上への導入が可能、という特徴があり,温度応答部位の基本骨格として適している。構造1の部分は本発明で用いられる下限臨界溶液温度を有するポリマーとしては、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N、N−ジメチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルモルホリン等のN置換(メタ)アクリルアミド誘導体からなるポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリビニルメチルエーテル、(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン)ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンラウリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン誘導体;ポリオキシエチレンソルビタンラウレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル誘導体;(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)(メタ)アクリレート類;及び(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)(メタ)アクリレート類等のポリオキシエチレン(メタ)アクリル酸エステル誘導体等が挙げられる。更に、これらのポリマー及びこれらの少なくとも2種のモノマーからなるコポリマーも利用できる。また、N−イソプロピルアクリルアミドとN−t−ブチルアクリルアミドのコポリマーも利用できる。(メタ)アクリルアミド誘導体を含むポリマーを使用する場合、このポリマーにその他の共重合可能なモノマーを、下限臨界溶液温度を有する範囲で共重合してもよい。本発明では、なかでも、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N、N−ジメチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルモルホリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなるポリマー又はN−イソプロピルアクリルアミドとN−t−ブチルアクリルアミドのコポリマーが好ましく利用できる。
【0017】
構造2のカルボキシル基の他に、リン酸、スルホニル、アミノ等の基を官能基であってもよい。より具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ホスホリルエチル(メタ)アクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の解離基を有するモノマーが重合されたものであってもよく、これら解離基を有するモノマーと、pH応答能が損なわれない程度において、他のビニルモノマー、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、スチレン、塩化ビニル、N−ビニルピロリドン等のビニル化合物、(メタ)アクリルアミド類等とが共重合されたものであってもよい。
【0018】
以下、ポリアミノ酸を用いた刺激応答性材料の作成方法および培養への適用について記す。

(1)ポリアミノ酸による刺激応答材料の作成
・温度応答性ポリアミノ酸の調製
温度応答性ポリアミノ酸として、ポリリシンを基にしたもの、ポリグルタミン酸を基にしたもの、ポリアスパラギン酸を基にしたものが知られており、その合成反応をそれぞれ図3図4図5に示す。

(i)温度応答性ポリリシンの場合
WSC290mg、NHS170mg、吉草酸130μlをガラス容器に入れた蒸留水もしくはPBS(pH5.8)4mlに溶かした。上記溶液を4℃に冷却してポリリジン140mgを加え、一晩撹拌し、反応させた。反応では37℃で2時間でも構わない。反応液を透析膜(cut-off分子量2000,Spectra/Pore製)を用いて、室温で純水中、24時間撹拌して未反応物を除去し、単離・精製した。
(ii)温度応答性ポリアスパラギン酸の場合
セパラブルフラスコ(スターラー、温度計)へNN,-dimethylfomamide(DMF) 34gを入れ、Poly(succinimide)(PSI) 9.7g(0.1mol)を溶かした。dodecylamine(LA) 6.5g(0.035mol)と2-methoxyethylamine(MOE) 4.9g(0.065mol)を上記溶液へ添加し、70℃下で6時間反応させた。反応液を大量のacetonitrileへ入れ、フィルター処理により沈殿物を回収し、回収した沈殿物(参考:回収率92%,19.4g)は60℃下で24時間乾燥させた。

(2)刺激応答材料の刺激応答性の評価
得られたポリリジン誘導体のLCSTは,1wt%溶液 (PBS7.4) の光透過率を温度可変紫外可視吸収分光装置により測定し,光透過率が90%となる温度として決定した。結果を図3に示す。28 ℃付近でLCSTを示すため、37℃で細胞を培養(疎水性)し、27℃以下で細胞を剥離(親水性)することが可能である。
【0019】
同様に37℃において、溶媒のpHを変化させ、光透過率を測定したところ図4となり、pH刺激により親水性、疎水性の変化が生じることを確認した。

(3)刺激応答材料のプレートへの固定
表面にカルボキシル基を有する6ウェルポリスチレンマイクロプレートにEDC・HClのPBS5.8溶液 (1.0 wt%, 10 mL) を37 °Cで2時間作用させた。得られた表面活性化マイクロプレートをPBS5.8にて洗浄し、ポリマーのPBS5.8溶液 (0.001-1wt%, 10 mL) を37 °Cで2時間作用させ,PBS7.4にて洗浄することでポリマー担持表面とした (図5)。

(4)細胞培養への適用
上記刺激応答材料をヒト口腔細胞又はヒト角膜細胞の細胞シート化培養に適用した事例を示す。ヒト口腔細胞又はヒト角膜細胞は付着細胞であり、培養容器面上で最初、未分化の状態で増殖する。細胞がコンフレントな状態に達すると細胞が層状に増殖する。このとき、細胞は分化誘導をはじめ、十分に分化誘導が終了した時点で細胞を回収する(図9参照)。通常は、細胞培養容器の培養面としてプラスチック材もしくはNIPPAmを用いた材料が使用されるが、下記は培養面を本発明の刺激応答材料で被覆して細胞の培養を行った。

「細胞のシート化培養」
(i)細胞及び培地
実験にはヒト口腔細胞(ScienCell社)およびヒト角膜細胞(Invitrogen社)を使用した。増殖用の培地はそれぞれの細胞に付属の専用培地(無血清培地)を用い,細胞の重層化では,共にKCMを用いた。
(ii)培養方法
ヒト口腔細胞又はヒト角膜細胞を、刺激応答性材料で被覆した6ウェルプレートに播き、上記同位体グルコースを含むDMEM/F12培地にてインキュベータ内(37℃、5%CO2、>95%湿度)で培養し、3日もしくは4日に1度培地交換を行い、コンフレントまで増殖した時点で分化誘導用培地(KCM培地)に交換して分化させた。分化誘導用培地に交換後3日もしくは4日に1度KCM培地にて培地交換を行うことで細胞を重層化させ、細胞シートを形成した。
(iii)細胞の回収
正常に培養された細胞の回収では、温度を37℃から20℃に下げることにより、細胞を回収した。

「培養評価」
pH6.8からpH7.6を維持した培地で培養した場合、細胞は剥離されず増殖した。一方、菌のコンタミによりpHが6.8より下回った際、細胞は培養面から剥離された。また、培地交換が遅れ、細胞が分泌する乳酸の蓄積により培養液のpHが6.8を下回った場合も同様に細胞が培養面から剥離した。
【0020】
一方、上記のような培養環境に影響がない場合は、細胞は増殖し、分化誘導により細胞シートを構成することができた。この細胞シートを温度刺激(37℃から20℃に変化)を与えると細胞シートは容易に培養面から剥離することができた。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の重層化及び/又は分化の程度を判定する方法及び装置は、特に再生医療に使用する細胞に関し、培養工程での品質管理や、適切な移植時期の確認に使用することができる。例えば、再生医療に使用する細胞を培養する際に適用される細胞モニタリングに使用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1…細胞
2…刺激応答材料(疎水性)
3…刺激応答材料(親水性)
4…培養プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9