特開2015-224512(P2015-224512A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-224512(P2015-224512A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】橋梁床版下面点検装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20151117BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   E01D22/00 A
   E01D19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-111636(P2014-111636)
(22)【出願日】2014年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100080296
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】石橋 久義
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA13
2D059DD02
2D059GG39
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、橋梁の床版の下面を安定して点検することのできる橋梁床版下面点検装置を提供する。
【解決手段】橋梁床版3の下面3bを点検する点検手段としてのカメラ11と、橋梁床版3の下方に配置されてカメラ11を搭載する、橋梁床版3の幅方向に延長する基台12と、基台12に取付けられた錘部材14と、橋梁床版3の下面3b及び側面3cのいずれか一方もしくは両方に当接する当接部材(鉛直当接部材15、水平当接部材16)と、橋梁床版3の上面3aに設置されて、基台12を橋梁床版3の下方に吊下げながら昇降させる吊下昇降手段としてのトラッククレーン20とを備えるとともに、カメラ11を、基台12の橋梁床版3の下面3bの下方側に配置し、錘部材14を、基台12の橋梁床版3の幅方向外側の下方側に配置した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の床版の下面の状態を点検する点検手段を備えた橋梁床版下面点検装置であって、
前記橋梁床版の下方に配置されて前記点検手段を搭載する、前記橋梁床版の幅方向に延長する基台と、
前記基台に取付けられる錘部材と、
前記基台から、前記橋梁床版の下面及び側面のいずれか一方または両方に当接する当接部材と、
前記橋梁床版の上面に設置されて、前記基台を前記橋梁床版の下方に吊下げながら昇降させる吊下昇降手段とを備え、
前記点検手段が、前記基台の前記橋梁床版の下面の下方側に配置され、
前記錘部材が、前記基台の前記橋梁床版の幅方向外側の下方側に配置されていることを特徴とする橋梁床版下面点検装置。
【請求項2】
前記橋梁床版の下面に当接する当接部材は、前記基台から前記橋梁床版の下面側に突出して前記下面に当接することを特徴とする請求項1に記載の橋梁床版下面点検装置。
【請求項3】
前記基台から上方に突出するように設けられた支柱を備えるとともに、
前記橋梁床版の側面に当接する当接部材は、前記支柱から水平方向に突出して前記橋梁床版の側面に当接することを特徴とする請求項1に記載の橋梁床版下面点検装置。
【請求項4】
前記橋梁床版の側面に当接する当接部材は、前記橋梁床版の長さ方向に互いに離隔して配置されて、前記側面に当接する2つの当接部を備えることを特徴とする請求項3に記載の橋梁床版下面点検装置。
【請求項5】
前記点検手段を前記橋梁の幅方向に平行な方向に移動させる点検装置移動手段を備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の橋梁床版下面点検装置。
【請求項6】
前記点検手段を前記橋梁の長さ方向に平行な方向に移動させる第2の点検装置移動手段を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の橋梁床版下面点検装置。
【請求項7】
前記基台の前記点検手段とは反対側に取付けられる可動錘と、
前記可動錘を前記点検手段とは反対方向に移動させる可動錘移動手段とを備えることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の橋梁床版下面点検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁床版の下面の状態を点検するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁床版などの高架構造物の下面の点検を行う場合には、構造物の下に足場を組み立て、作業員が足場に下りて構造物の下面を目視にて点検したり、カメラにて撮影するなどの方法が行われていた。
しかし、足場を設置するには多大な資材と労力を必要とする。特に、橋梁の床版の下面については、橋梁の下が川や渓谷である場合が多く、そのため、地面から足場を設置することが困難であった。
【0003】
そこで、高架構造物の上部に高架構造物の側部の外方向に延長する支持アームを設置するとともに、この支持アームに垂直支柱を上下動可能に取付け、更に、垂直支柱の下端にカメラを搭載した水平アームを取付けて、高架構造物の下面を撮影する形態の点検装置が提案されている。(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−231602号公報
【特許文献2】特開2003−119722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1,2に記載の点検装置は、カメラを搭載した水平アームを高架構造物の上側で支持しているだけなので、非常に不安定な構造になっている。そのため、水平アームが風や振動などにより揺動してしまい、安定した撮影が困難であるといった問題点があった。
また、前記の点検装置は、構造上、装置を組み上げるためには別途クレーン等が必要となるだけでなく、水平アームを支持する構造が特殊であるため、装置全体の費用が高額になってしまう、といった問題点がある。
【0006】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、橋梁の床版の下面を安定して点検することのできる橋梁床版下面点検装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、橋梁の床版の下面のコンクリートのひび割れなどの状態を点検するため点検手段を備えた橋梁床版下面点検装置であって、前記橋梁床版の下方に配置されて前記点検手段を搭載する、前記橋梁床版の幅方向に延長する基台と、前記基台に取付けられる錘部材と、前記基台から、前記橋梁床版の下面及び側面のいずれか一方または両方に当接する当接部材と、前記橋梁床版の上面に設置されて、前記基台を前記橋梁床版の下方に吊下げながら昇降させる吊下昇降手段とを備え、前記点検手段が、前記基台の前記橋梁の床版の下面の下方側に配置され、前記錘部材が、前記基台の前記橋梁の床版の幅方向外側の下方側に配置されていることを特徴とする。
これにより、基台を、橋梁床版の下面側または側面側、もしくは、下面側と側面側の両方で橋梁床版と接触させることができるので、点検手段を橋梁床版の下方に安定して保持することができる。
また、基台の点検手段とは反対側に錘部を取付けて基台のバランスをとるようにしたので、点検手段が傾くことを防止することができる。
【0008】
また、前記橋梁床版の下面に当接する当接部材を、基台から橋梁床版の下面側に突出して前記下面に当接する当接部材としたので、橋梁床版と基台とを、橋梁床版の下面側にて確実に接触させることができる。
また、基台から上方に突出するように設けられた支柱を設けるとともに、前記橋梁床版の側面に当接する当接部材を、前記支柱から水平方向に突出して橋梁床版の側面に当接する当接部材としたので、橋梁床版と基台とを、橋梁床版の側面側にて確実の接触させることができる。
また、橋梁床版の側面に当接する当接部材を、橋梁床版の長さ方向に互いに離隔して配置される、前記側面に当接する2つの当接部から構成すれば、橋梁床版と基台との接触をより確実にできるので、点検手段を更に安定して保持できる。
【0009】
また、点検手段を橋梁の幅方向に平行な方向に移動させる点検装置移動手段を設けたので、橋梁の幅方向全体を容易に点検することができる。
また、点検手段を橋梁の幅方向に平行な方向に移動させる点検装置移動手段に加えて、点検手段を橋梁の長さ方向に平行な方向に移動させる第2の点検装置移動手段を設けて、平面的な点検ができるようにしたので、橋梁床版の下面を効率よく点検することができる。
また、基台の点検手段とは反対側に可動錘を取付けるとともに、前記可動錘を前記点検手段とは反対方向に移動させる可動錘移動手段を設けたので、点検手段を移動させた場合でも、点検手段の姿勢を安定して保持することができる。
【0010】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る橋梁床版下面点検装置の構成を示す図である。
図2】実施の形態の橋梁床版下面点検装置に用いられる基台とリニアーステージの一例を示す図である。
図3】本発明による橋梁床版下面点検装置の他の構成を示す図である。
図4】本発明による橋梁床版下面点検装置の他の構成を示す図である。
図5】1方向リニアーステージを装着した基台の例を示す図である。
図6】鉛直方向当接部材を2個備えた基台の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。
図1は本実施の形態に係る橋梁床版下面点検装置1の構成を示す図で、橋梁床版下面点検装置1は、橋梁2の床版3の下面3bに吊り下げられる装置本体10と、装置本体10を吊下げて昇降させる吊下昇降手段としてのトラッククレーン20とを備える。
装置本体10は、点検手段としてのカメラ11と、基台12と、支柱13と、錘部材14と、鉛直方向当接部材15と、水平方向当接部材16と、カメラ移動手段17と、可動錘移動手段18と、可動錘19とを備える。
カメラ11は、橋梁2の床版(以下、橋梁床版3という)の下面3bを撮影するもので、例えば、CCDカラーカメラや、ビデオカメラ、赤外線カメラなどが用いられる。なお、カメラ11を複数個もしくは複数種類としてもよい。カメラ11は、撮影方向が上方になるように基台12に搭載される。
図2に示すように、基台12は枠状の部材で、橋梁2の幅方向に延長する2本の棒状部材121,122と、橋梁2の長さ方向に延長し、棒状部材121,122をその端部側でそれぞれ連結する2本の棒状部材123,124とを備える。
以下、同図の左右方向に延長する矢印で示す方向を前後方向(左側が前側、右側が後側)とし、斜め方向の矢印で示す方向を左右方向(右上側が右側、左下側が左側)とする。また、棒状部材121,122を長片、棒状部材123を前片,棒状部材124を後片123という。前後方向は橋梁2の幅方向に平行な方向で、左右方向は橋梁2の長さ方向である。
図1に示すように、基台12の前後方向の長さ寸法は、装置本体10を橋梁床版3の下方に吊下げて保持した状態(以下、保持状態という)では、前片123は、橋梁床版3の下面3bよりも下側で、橋梁床版3の一方の幅方向端部の近傍まで延在し、後片124は、橋梁床版3の下面3bよりも下側で、橋梁2の他方幅方向端部の外側に位置するように設定される。
【0013】
支柱13は、基台12の長片121,122からそれぞれ上方に突出する垂直片13aと、2本の垂直片13aの上端部同士を連結する水平片13bとを備えたもので、水平片13bに、下フック13cと水平方向当接部材16とが取り付けられる。2本の垂直片13aは、上記の保持状態において、基台12の長片121,122の、橋梁2の幅方向外側の下方に立設される。
本例では、支柱13を、長片121,122の前側の端部から測って、長片121,122の長さの70%〜80%の位置に設けた。
錘部材14は、装置本体10のバランスをとるために、基台12の後片124の後側に取付けられる部材で、保持状態において、基台12が水平面に保持されるような重量に調整される。
鉛直方向当接部材15は、基台12の前片123から上方に突出する支持片15aと、支持片15aの上端に配置されて、橋梁床版3の下面3bに当接する鉛直当接片15bとを備える。鉛直当接片15bとしては、緩衝ゴムなどの弾性部材を用いることが好ましい。
水平方向当接部材16は、支柱13の水平片13bから水平方向に突出する支持片16aと、橋梁床版3の側面3cに当接する水平当接片16bとを備える。水平当接片16bも、鉛直当接片15bと同様に、緩衝ゴムなどの弾性部材を用いることが好ましい。なお、水平方向当接部材16を、支柱13の垂直片13aに取付けてもよい。
本例では、図2に示すように、水平方向当接部材16を、支柱13の水平片13bの両端側に1個ずつ設けることで、水平接触点を2点としている。
【0014】
カメラ移動手段17は、搭載したカメラ11を、水平面内にて基台12の前後方向及び左右方向に移動させる水平移動機構により構成される。本例では、カメラ移動手段17として、図2に示すような、図示しないリニアモータにより駆動する2方向リニアステージを用いている。
2方向リニアステージは、前後移動用磁性ユニット17aと左右移動用磁性ユニット17bとを備える。
前後移動用磁性ユニット17aは、基台12の長片121,122の、支柱13よりも左側にそれぞれ配置された、前後方向に延長するステータが具備されたレール部材171,172と、可動コイルが具備されたスライド部材173,174とを備える。
左右移動用磁性ユニット17bは、左右方向に延長するステータが具備されたレール部材175と、可動コイルが具備されたスライド部材176とを備え、前後移動用磁性ユニット17aの上部に、左右方向に延長するように配置される。
各磁性ユニット17a,17bは、図示しない可動コイルに制御電流を流すことで、左右移動用磁性ユニット17bスライド部材176の上面に搭載されたカメラ11を、基台12の前後方向及び左右方向に移動させる。
可動錘移動手段18も、カメラ移動手段17と同様の構成の、前後移動用磁性ユニット18a及び左右移動用磁性ユニット18bを備え、基台12の長片121,122の、支柱13よりも右側に配置されて、左右移動用磁性ユニット18bのスライド部材186の上面に搭載された可動錘19を、基台12の前後方向及び左右方向に移動させる。
なお、カメラ移動手段17、及び、可動錘移動手段18としては、エアシリンダのロッドに連結されたスライド部材をガイドレールに沿ってスライドさせるスライド機構や、モータによりボールネジを回転させてボールネジに取付けられたスライド部材をリニアガイドに沿って移動させるスライド機構などの周知の1方向スライド機構を2個組み合わせて、前後方向及び左右方向ににスライド可能な構成としたものを用いてもよい。
【0015】
トラッククレーン20は、図1に示すように、大型トラック21にクレーン装置22を組み付けたもので、橋梁床版3の上面3aの幅方向外側で、ガードレール4の内側(路肩)に配置される。同図の符号23は、トラッククレーン20を橋梁2上に安定して停車させるためのアウトリガー等のストッパー部材である。
クレーン装置22は、クレーンブーム22aと運転席22bに設けられた図示しないクレーン制御部とを備え、一端がクレーンブーム22aの先端に設けられたフックなどの吊り具22cに取り付けられたワイヤもしくはロープなどの吊下部材wにより、装置本体10を橋梁床版3の下方に吊下げながら昇降させる。
吊下部材wの他端は、支柱13の下フック13cに取り付けられる。
なお、装置本体10を橋梁床版3の下面3bの下方に吊下げて昇降させるには、クレーン装置22のみでよいが、点検は、橋梁2の長さ方向に沿って行う必要があるため、クレーン装置22を移動させる手段が必要である。本例では、大型トラック21を移動手段としているが、ホイールクレーンなどの他の移動式クレーンを用いてもよい。
【0016】
次に、本発明の橋梁床版下面点検装置1の動作について説明する。
まず、トラッククレーン20にて、装置本体10を吊り上げた後、装置本体10を橋梁2の幅方向外側に吊り下げる。
装置本体10は、支柱13の位置が基台12の中心よりも右側にあるので、支柱部材の前側が重く、後ろ側が軽いが、本例では、基台12の後片124の後側に錘部材14を取付けて基台12のバランスをとるようにしているので、吊り下げられた装置本体10が前後方向に傾くことはない。
次に、装置本体10を、カメラ11が橋梁床版3の下面3bに位置するように、クレーンブーム22aを上方及び左方(または、右方)に動かして、装置本体10を所定の位置まで移動させて保持する。このとき、鉛直方向当接部材15の鉛直当接片15bを、橋梁床版3の下面3bに当接させるとともに、水平方向当接部材16の2つの水平当接片16bを、橋梁床版3の下面3bに当接させる。これにより、装置本体10は、1つの鉛直接触点と2つの水平接触点とにより、橋梁床版3と接触するので、装置本体10を橋梁床版3の下方に安定して保持することができる。
【0017】
ところで、装置本体10が橋梁床版3の下面3bもしくは側面3cのうちの一箇所でも接触していれば、装置本体10に、風や振動などの装置本体10を揺動させるような力が作用しても、装置本体10は揺動しにくくなるだけでなく、揺動してもすぐに静止状態戻る。
本例では、鉛直方向当接部材15と水平方向当接部材16とにより、下方向と前後方向の両方で装置本体10と橋梁床版3とを接触させているだけでなく、水平方向当接部材16を2個設けて、左右方向(図1の紙面に垂直な方向)でも装置本体10と橋梁床版3とを接触させているので、装置本体10が揺動することを確実に防止できる。なお、鉛直方向当接部材15を左右方向にそれぞれ1個ずつ設け、水平方向当接部材16を1個としてもよい。この場合には、水平接触点が1点で鉛直接触点が2点なるが、実施の形態と同様に、上下方向と前後方向だけでなく、左右方向でも装置本体10と橋梁床版3とを接触させることができるので、装置本体10が揺動することを確実に防止することができる。
また、錘部材14の重量は、装置本体10が水平になる重さよりもを若干重くしておくことが好ましい。これにより、クレーンブーム22aを余分に上方に移動させることなく、鉛直方向当接部材15の鉛直当接片15bを橋梁床版3の下面3bに押付けることができる。
【0018】
装置本体10の保持後には、カメラ移動手段17により、カメラ11を前後方向及び左右方向に移動させながら、橋梁床版3の下面3bを撮影する。
ところで、カメラ11を、例えば前方に移動させると、カメラ11と支柱13との距離が長くなるため、基台12には、左端が下がり、右端が上がるようなモーメント(基台12を左回転させるモーメント)が作用する。本例では、カメラ11を前方に移動させたときには、可動錘19を後方、すなわち、カメラ11の移動方向とは反対側に移動させて、上記の基台12を左回転させるモーメントを打ち消すようにしている。これにより、カメラ11が前後左右に移動しても、装置本体10を水平に保持できるので、橋梁床版3の下面3bの撮影を安定して行うことがきる。
なお、可動錘移動手段18と可動錘19とは、点検手段が重い場合ほど有効に機能する。したがって、点検手段がカメラ11のように軽量のものであれば、可動錘移動手段18と可動錘19とを省略してもよい。
【0019】
所定範囲の撮影が終了した後には、装置本体10をクレーンブーム22aを下方及び右方(または、左方)に動かして橋梁床版3の幅外側に移動させた後、装置本体10を吊り上げて回収する。また、点検を続ける場合には、トラッククレーン20にて、装置本体10を、次の撮影箇所に運搬してから橋梁床版3の下面3bの撮影を行う。
なお、装置本体10を吊下げたまま、大型トラック21を走行させて装置本体10を橋梁2の長さ方向に移動させてもよい。但し、この場合には、クレーンブーム22aを下方及び右方(または、左方)に若干動かし、鉛直方向当接部材15と水平方向当接部材16とを橋梁床版3から離した状態で移動させることが好ましい。
【0020】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0021】
例えば、前記実施形態においては、点検手段をカメラ11としたが、レーザーを照射してその反射光からコンクリート表面の状態を解析するレーザー解析装置、コンクリート表面を打撃して打撃音を測定してコンクリート内部の欠陥の有無を診断する打音診断装置などの非破壊検査装置を点検手段として用いてもよい。
なお、打音診断装置などのように、点検手段を対象物の近くに設置する必要がある場合には、図3に示すように、基台12を前側の基台12Aと後側の基台12Bとに分離するとともに、前側の基台12Aに、点検手段11Kを装着して移動させる点検手段移動手段17Kを取付け、この点検手段11Kを装着した前側の基台12Aを、後側の基台12Bよりも上部に設置する構成とすればよい。これにより、点検手段11Kを橋梁床版3の下面3bに近づけることができる。
また、前記実施形態では、水平方向当接部材16を橋梁床版3の側面3cに当接させたが、図4に示すように、水平方向当接部材16を、床版3を支持する床版支持部材5の側面5cに当接させるようにしてもよい。
【0022】
また、前記実施形態では、カメラ移動手段17と可動錘移動手段18とを2方向リニアステージから構成したが、図5に示すような、1方向リニアステージとしてもよい。1方向リニアステージでは、2方向リニアステージを用いた場合のように平面的な点検ができないが、構造も簡単で、かつ、重量も軽いという利点がある。したがって、1方向リニアステージを用いるか、2方向リニアステージを用いるかは、橋梁2の建設置箇所や点検手段の種類等により適宜決定すればよい。
また、前記実施形態では、基台12の前後方向の長さを、前片12が橋梁床版3の一方の幅方向端部の近傍まで延在する長さとしたが、橋梁床版3の中央部まで延在する長さとしてもよい。この場合には、橋梁2の両側の路肩から橋梁床版3の下面3bの幅方向の半分ずつをそれぞれ点検する必要があるが、装置本体10の重量を低減できるとともに、装置本体10の長さが短いので設置が容易となるという利点がある。また、吊下昇降手段も小型化できる。
また、前記実施形態では、1個の鉛直方向当接部材15と2個の水平方向当接部材16とを設けることで、装置本体10と橋梁床版3とを3点で接触させたが、1点もしくは2点で接触させてもよいし、4点以上で接触させてもよい。
例えば、装置本体10と橋梁床版3とを4点で接触させる場合には、図6(a),(b)に示すように、鉛直方向当接部材15と水平方向当接部材16とをそれぞれ2個ずつ設ければよい。これにより、装置本体10を更に安定して橋梁床版3の下面3b側に保持することができる。なお、鉛直方向当接部材15は、必ずしも基台12の前片123に設ける必要はなく、長片121,122の外側に取付けるなど、支柱13よりも前側に設ければよい。
【符号の説明】
【0023】
1 橋梁床版下面点検装置、2 橋梁、3 床版、4 ガードレール、
5 床版支持部材、10 装置本体、11 カメラ、12 基台、13 支柱、
14 錘部材、15 鉛直方向当接部材、16 水平方向当接部材、
17 カメラ移動手段、18 可動錘移動手段、19 可動錘、
20 トラッククレーン。
図1
図2
図3
図5
図6
図4