【解決手段】制御装置100は、実回転数Nrに対する目標回転数Ntの偏差ΔNtを求める目標値偏差演算部115と、目標値偏差ΔNtに応じてガスタービンに供給する燃料の流量を定める燃料相当値演算部150と、実出力Prに対する設定上限出力Puの偏差である上限偏差ΔPuを求める上限偏差演算部131と、設定下限出力Pdに対する実出力Prとの偏差である下限偏差ΔPdを求める下限偏差演算部132と、実回転数が低下し且つ上限偏差が小さい場合に目標値偏差が小さくなるように、実回転数が上昇し且つ下限偏差が小さい場合に目標値偏差が大きくなるように、目標回転数と実回転数と目標値偏差とのうち、いずれか一のパラメータを変更するパラメータ変更部140と、を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、例えば、現時点での実出力がガスタービンの設定上限出力に近い場合に、実回転数が低下すると、目標回転数と実回転数との偏差が大きくなるため、燃料流量が増加し、実出力が設定上限出力を上回ってしまうおそれがある。
【0005】
また、上記特許文献1に記載の技術では、例えば、現時点での実出力がガスタービンの設定下限出力に近い場合に、実回転数が上昇すると、目標回転数と実回転数との偏差が小さくなるため、燃料流量が減少し、実出力が設定下限出力を下回ってしまうおそれがある。
【0006】
すなわち、上記特許文献1に記載の技術では、実出力がガスタービンに対して定められた設定出力範囲を逸脱するおそれがある、という問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は、ガスタービンの回転数の安定化を図りつつも、設定出力範囲に対する実出力の逸脱を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としてのガスタービンの制御装置は、
ガスタービンの目標回転数に相当する目標値を出力する目標値出力部と、前記ガスタービンの実回転数に相当する実回転数相当値に対する前記目標値の偏差である目標値偏差を求める目標値偏差演算部と、前記目標値偏差に応じて前記ガスタービンに供給する燃料の流量に相当する燃料相当値を定める燃料相当値演算部と、前記ガスタービンの実回転数の変動を検知する回転数変動検知部と、前記ガスタービンの実出力に対する前記ガスタービンの設定上限出力の偏差である上限偏差を求める上限偏差演算部と、前記ガスタービンの設定下限出力に対する前記ガスタービンの実出力との偏差である下限偏差を求める下限偏差演算部と、前記実回転数相当値が低下し且つ前記上限偏差が予め定められた値よりも小さい場合に前記目標値偏差が小さくなるように、前記実回転数相当値が上昇し且つ前記下限偏差が予め定められた値よりも小さい場合に前記目標値偏差が大きくなるように、前記目標値と前記実回転数相当値と前記目標値偏差とのうち、いずれか一のパラメータを変更するパラメータ変更部と、を有する。
【0009】
当該制御装置では、目標回転数に相当する目標値と実回転数に相当する実回転数相当値との偏差である目標値偏差に応じて、燃料流量に相当する燃料相当値を定めているので、ガスタービンの回転数の安定化を図ることができる。
【0010】
ところで、現時点での実出力がガスタービンの設定上限出力に近い場合に、実回転数が低下すると、目標値と実回転数相当値との偏差である目標値偏差が大きくなるため、燃料流量が増加し、実出力が設定上限出力を上回ってしまうおそれがある。また、現時点での実出力がガスタービンの設定下限出力に近い場合に、実回転数が上昇すると、目標値と実回転数相当値との偏差である目標値偏差が小さくなるため、燃料流量が減少し、実出力が設定下限出力を下回ってしまうおそれがある。
【0011】
しかしながら、当該制御装置では、ガスタービンの実出力が設定上限出力に近いときに実回転数が低下した場合に、パラメータ変更部により、目標値偏差が小さくなるように、目標値と実回転数相当値と目標値偏差とのうち、いずれか一のパラメータが変更される。このため、実回転数相当値の低下に伴って目標値偏差が増加しても、この目標値偏差の増加を抑制できる、又は目標値偏差を減少させることができる。よって、当該制御装置では、ガスタービンの実出力が設定上限出力に近いときに実回転数が低下した場合でも、実出力が設定上限出力を上回る可能性を低下させることができる。
【0012】
また、当該制御装置では、ガスタービンの実出力が設定下限出力に近いときに実回転数が上昇した場合に、パラメータ変更部により、目標値偏差が大きくなるように、目標値と実回転数相当値と目標値偏差とのうち、いずれか一のパラメータが変更される。このため、実回転数相当値の上昇に伴って目標値偏差が減少しても、この目標値偏差の減少を抑制できる、又は目標値偏差を増加させることができる。よって、当該制御装置では、ガスタービンの実出力が設定下限出力に近いときに実回転数が上昇した場合でも、実出力が設定下限出力を下回る可能性を低下させることができる。
【0013】
ここで、前記ガスタービンの制御装置において、前記パラメータ変更部は、前記目標値偏差に比例ゲインを乗算する乗算器と、前記実回転数相当値が低下し且つ前記上限偏差が予め定められた値よりも小さい場合に前記比例ゲインを小さくし、前記実回転数相当値が上昇し且つ前記下限偏差が予め定められた値よりも小さい場合に前記比例ゲインを大きくするゲイン変更部と、を有してもよい。
【0014】
また、以上のいずれかの前記ガスタービンの制御装置において、前記目標値出力部は、前記ガスタービンの目標出力に対する前記ガスタービンの実出力の偏差である出力偏差を求める出力偏差演算器と、前記出力偏差に基づいて前記目標回転数に相当する前記目標値を求める目標値演算器と、を有してもよい。
【0015】
前記出力偏差演算器を有する前記ガスタービンの制御装置において、前記目標値出力部は、事前に受け付けた前記ガスタービンの目標出力と前記設定下限出力とのうちの大きい出力であって、前記目標出力と前記設定上限出力とのうちの小さい出力を前記出力偏差演算器に目標出力として出力する目標出力制限部を有してもよい。
【0016】
また、以上のいずれかの前記ガスタービンの制御装置において、前記燃料相当値演算部が定めた前記燃料相当値に応じた弁開度指令を作成して、前記弁開度指令を前記ガスタービンに供給される前記燃料の流量を調節する燃料調節弁に出力する弁制御部を有してもよい。
【0017】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としてのガスタービン設備は、
前記弁制御部を有する制御装置と、前記燃料調節弁と、前記ガスタービンとを備えている。
【0018】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としてのガスタービンの燃料制御方法は、
ガスタービンの目標回転数に相当する目標値を出力する目標値出力工程と、前記ガスタービンの実回転数に相当する実回転数相当値に対する前記目標値の偏差である目標値偏差を求める目標値偏差演算工程と、前記目標値偏差に応じて前記ガスタービンに供給する燃料の流量に相当する燃料相当値を定める燃料相当値演算工程と、前記ガスタービンの実回転数の変動を検知する回転数変動検知工程と、前記ガスタービンの実出力に対する前記ガスタービンの設定上限出力の偏差である上限偏差を求める上限偏差演算工程と、前記ガスタービンの設定下限出力に対する前記ガスタービンの実出力の偏差である下限偏差を求める下限偏差演算工程と、前記実回転数相当値が低下し且つ前記上限偏差が予め定められた値よりも小さい場合に前記目標値偏差が小さくなるように、前記実回転数相当値が上昇し且つ前記下限偏差が予め定められた値よりも小さい場合に前記目標値偏差が大きくなるように、前記目標値と前記実回転数相当値と前記目標値偏差とのうち、いずれか一のパラメータを変更するパラメータ変更工程と、を実行する。
【0019】
ここで、前記ガスタービンの燃料制御方法において、前記パラメータ変更工程は、前記目標値偏差に比例ゲインを乗算する乗算工程と、前記実回転数相当値が低下し且つ前記上限偏差が予め定められた値よりも小さい場合に前記比例ゲインを小さくし、前記実回転数相当値が上昇し且つ前記下限偏差が予め定められた値よりも小さい場合に前記比例ゲインを大きくするゲイン変更工程と、を含んでもよい。
【0020】
また、以上のいずれかの前記ガスタービンの燃料制御方法において、前記目標値出力工程は、前記ガスタービンの目標出力と前記ガスタービンの実出力との偏差である出力偏差を求める出力偏差演算工程と、前記出力偏差に基づいて前記目標回転数に相当する前記目標値を求める目標値演算工程と、を含んでもよい。
【0021】
前記出力偏差編算工程を実行する前記ガスタービンの燃料制御方法において、前記目標値出力工程は、事前に受け付けた前記ガスタービンの目標出力と前記設定下限出力とのうちの大きい出力であって、前記目標出力と前記設定上限出力とのうちの小さい出力を目標出力として出力する目標出力制限工程を含み、前記出力偏差演算工程では、前記目標出力制限工程で出力された前記目標出力と前記ガスタービンの実出力との偏差である前記出力偏差を求めてもよい。
【0022】
また、以上のいずれかの前記ガスタービンの燃料制御方法において、前記燃料相当値演算工程で定めた前記燃料相当値に応じた弁開度指令を作成して、前記弁開度指令を前記ガスタービンに供給される前記燃料の流量を調節する燃料調節弁に出力する弁制御工程を実行してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、ガスタービンの回転数の安定化を図りつつも、設定出力範囲からの実出力の逸脱を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るガスタービン設備の一実施形態及び各種変形例について、図面を用いて説明する。
【0026】
「実施形態」
本発明に係るガスタービン設備の一実施形態について、
図1〜
図5を用いて説明する。
【0027】
本実施形態のガスタービン設備は、ガスタービン10と、ガスタービン10の駆動で発電する発電機50と、ガスタービン10に燃料Fを供給する燃料供給ライン35と、燃料供給ライン35を流れる燃料Fの流量を調節する燃料調節弁36と、燃料調節弁36を制御する制御装置100と、を備えている。
【0028】
ガスタービン10は、空気を圧縮する圧縮機20と、圧縮機20で圧縮された空気中で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器30と、高温高圧の燃焼ガスにより駆動するタービン40と、を備えている。
【0029】
圧縮機20は、軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ21と、この圧縮機ロータ21を回転可能に覆う圧縮機ケーシング22と、を有する。タービン40は、燃焼器30からの燃焼ガスにより、軸線Arを中心として回転するタービンロータ41と、このタービンロータ41を回転可能に覆うタービンケーシング42と、を有する。タービンロータ41と圧縮機ロータ21とは、同一の軸線Arを中心として回転するもので、相互に連結されて、ガスタービンロータ11を成している。このガスタービンロータ11には、発電機50のロータが接続されている。また、圧縮機ケーシング22とタービンケーシング42とは、相互に連結されてガスタービンケーシング12を成している。
【0030】
燃焼器30は、燃焼ガスをタービン40の燃焼ガス流路中に送る燃焼筒(又は尾筒)32と、この燃焼筒32内に燃料を噴射するノズル31と、を備える。燃料供給ライン35は、このノズル31に接続されている。
【0031】
発電機50と電力系統59とは、電力ケーブル51により電気的に接続されている。この電力ケーブル51には、発電機50と電力系統59との電気的な接続及び遮断を行う遮断器52と、発電機50から出力された電力であるガスタービン出力を検知する出力計61と、が設けられている。また、発電機50のロータ又はガスタービンロータ11には、その回転数Nを検知する回転数計62が設けられている。
【0032】
制御装置100は、ガスタービン10の目標出力Ptを外部から受け付ける目標出力受付部101と、ガスタービン10の上限出力として予め定めた設定上限出力Puを受け付ける上限出力受付部102と、ガスタービン10の下限出力として予め定めた設定下限出力Pdを受け付ける下限出力受付部103と、出力計61が検出したガスタービン10の出力である実出力Prを受け付ける実出力受付部104と、回転数計62が検出したガスタービン10の回転数である実回転数Nrを受け付ける実回転数受付部105と、ガスタービン10の目標回転数Nt(目標値)を出力する目標値出力部110と、実回転数Nr(実回転数相当値)に対する目標回転数Nt(目標値)の偏差である目標回転数偏差ΔNt(目標値偏差)を求める目標値偏差演算部115と、実回転数Nrの変動を検知する回転数変動検知部120と、実出力Prに対する設定上限出力Puの偏差である上限偏差ΔPuを求める上限偏差演算部131と、設定下限出力Pdに対する実出力Prの偏差である下限偏差ΔPdを求める下限偏差演算部132と、目標回転数偏差ΔNtを変更するパラメータ変更部140と、目標回転数偏差ΔNtに応じてガスタービン10に供給する燃料の流量(燃料相当値)を定める燃料相当値演算部150と、この燃料流量(燃料相当値)に応じた弁開度指令を燃料調節弁36に出力する弁制御部155と、を有する。
【0033】
目標値出力部110は、目標出力受付部101が受け付けた目標出力Ptの範囲を制限する目標出力制限部118と、実出力Prに対する目標出力制限部118により制限された目標出力Ptの偏差である出力偏差ΔPを求める出力偏差演算器113と、出力偏差ΔPに基づいて前述の目標回転数Ntを定めるガバナ設定器(目標値演算器)114と、を有する。目標出力制限部118は、目標出力受付部101が受け付けた目標出力Ptと設定下限出力Pdとのうち大きい方を目標出力Ptとして出力する下限制限器111と、下限制限器111から出力された目標出力Ptと設定上限出力Puとのうち小さい方を目標出力Ptとして出力する上限制限器112と、を有する。ガバナ設定器114は、回転数と出力との関係を示す調停率等を用いて、出力偏差ΔPに応じた目標回転数Ntを求める。
【0034】
回転数変動検知部120は、実回転数受付部105から実回転数Nrを所定時間遅らせて出力する遅延器121と、遅延器121からの実回転数Nrに対する実回転数受付部105からの実回転数Nrの偏差ΔNtsを求める回転数変動量演算器122と、回転数変動量演算器122が求めた偏差ΔNtsに応じて回転数上昇(+)、回転数低下(−)、変動無し(0)のいずれかを出力する変動判定器123と、を有する。変動判定器123は、偏差ΔNtsが予め定められた正の値より大きい場合に、回転数上昇(+)を出力する。変動判定器123は、偏差ΔNtsが予め定められた負の値より小さい場合に、回転数低下(−)を出力する。変動判定器123は、偏差ΔNtsが予め定められた正の値以下で且つ予め定められた負の値以上である場合に、変動無し(0)を出力する。
【0035】
パラメータ変更部140は、比例ゲインKpを発生する比例ゲイン発生器151と、目標回転数偏差ΔNtに比例ゲインKpの補正値を乗算するゲイン乗算器152と、比例ゲインKpを変更するゲイン変更部149と、を有する。ゲイン変更部149は、第一関数Fを用いて上限偏差ΔPuに応じた比例ゲインKpの第一補正係数k1を求める第一補正係数発生器141と、第二関数Gを用いて下限偏差ΔPdに応じた比例ゲインKpの第二補正係数k2を求める第二補正係数発生器142と、第一補正係数k1及び第二補正係数k2として固定係数(=1)を発生する固定係数発生器143と、第一補正係数発生器141からの第一補正係数k1と固定係数発生器143からの固定係数とのうち一方を第一補正係数k1として出力する第一選択器144と、第二補正係数発生器142からの第二補正係数k2と固定係数発生器143からの固定係数とのうち一方を第二補正係数k2として出力する第二選択器145と、第一選択器144から出力された第一補正係数k1と第二選択器145から出力された第二補正係数k2とを乗算する第一乗算器146と、比例ゲイン発生器151からの比例ゲインKpと第一乗算器146からの補正係数とを乗算する第二乗算器147と、を有する。
【0036】
第一補正係数発生器141は、上限偏差ΔPuと第一補正係数k1との関係を示す第一関数Fを用いて、上限偏差演算部131が求めた上限偏差ΔPuに対する第一補正係数k1を求める。第一関数Fは、
図3に示すように、上限偏差ΔPuが正の第一値a以下の場合に第一補正係数k1の値として、例えば、「0.9」を出力し、上限偏差ΔPuが正の第二値b(>第一値a)以上の場合に第一補正係数k1の値として、例えば、「1.0」を出力する関数である。また、この第一関数Fは、上限偏差ΔPuが第一値aと第二値bとの間の場合に第一補正係数k1の値として、上限偏差ΔPuの増大に伴って「1.0」に向って増大する値を出力する関数である。よって、第一補正係数発生器141は、上限偏差ΔPu1が小さい場合には、第一補正係数k1として「1.0」よりも小さい値を出力し、上限偏差ΔPu2が大きい場合には、第一補正係数k1として「1.0」を出力する。
【0037】
第二補正係数発生器142は、下限偏差ΔPdと第二補正係数k2との関係を示す第二関数Gを用いて、下限偏差演算部132が求めた下限偏差ΔPdに対する第二補正係数k2を求める。第二関数Gは、
図4に示すように、下限偏差ΔPdが正の第三値c以下の場合に第二補正係数k2の値として、例えば、「1.1」を出力し、下限偏差ΔPdが正の第四値d(>第三値c)以上の場合に第二補正係数k2の値として、例えば、「1.0」を出力する関数である。また、この第二関数Gは、下限偏差ΔPdが第三値cと第四値dとの間の場合に第二補正係数k2の値として、下限偏差ΔPdの増大に伴って「1.0」に向って減少する値を出力する関数である。よって、第二補正係数発生器142は、下限偏差ΔPd1が小さい場合には、第二補正係数k2として「1.0」よりも大きい値を出力し、下限偏差ΔPdが大きい場合には、第二補正係数k2として「1.0」を出力する。
【0038】
第一選択器144は、回転数変動検知部120の変動判定器123から回転数低下(−)を受けると、第一補正係数発生器141からの第一補正係数k1を出力する。また、第一選択器144は、
図2に示すように、変動判定器123から回転数上昇(+)又は変動無し(0)を受けると、固定係数発生器143からの固定係数「1.0」を第一補正係数k1として出力する。
【0039】
第二選択器145は、
図2に示すように、回転数変動検知部120の変動判定器123から回転数上昇(+)を受けると、第二補正係数発生器142からの第二補正係数k2を出力する。また、第二選択器145は、
図1に示すように、変動判定器123から回転数低下(−)又は変動無し(0)を受けると、固定係数発生器143からの固定係数「1.0」を第二補正係数k2として出力する。
【0040】
第一乗算器146は、前述したように、第一選択器144から出力された第一補正係数k1と第二選択器145から出力された第二補正係数k2とを乗算する。
【0041】
第二乗算器147は、比例ゲイン発生器151からの比例ゲインKpと第一乗算器146からの補正係数とを乗算し、乗算結果を補正後の比例ゲインKpとしてゲイン乗算器152に渡す。
【0042】
燃料相当値演算部150は、比例ゲイン発生器151と、補正後の比例ゲインKpと目標回転数偏差ΔNtとを乗算し、乗算結果をガスタービン10に供給する燃料の流量(燃料相当値)として出力するゲイン乗算器152と、を有する。なお、燃料相当値演算部150を構成する比例ゲイン発生器151及びゲイン乗算器152は、本実施形態では、パラメータ変更部140の構成要素でもある。
【0043】
次に、以上で説明したガスタービン10の動作について説明する。
圧縮機20は、大気Aを吸込みこれを圧縮する。燃焼器30の燃焼筒32には、圧縮機20で圧縮された空気と共に燃焼器30のノズル31から燃料Fが噴射される。燃料Fは、この空気中で燃焼して燃焼ガスとなる。燃焼ガスは、燃焼筒32からタービン40の燃焼ガス流路を流れた後、タービン40から排気される。タービンロータ41は、燃焼ガスが燃焼ガス流路を流れることで回転する。この結果、発電機50のロータも回転し、発電機50による発電が行われる。
【0044】
次に、ガスタービン10の運転過程での制御装置の動作について、
図5に示すフローチャートに従って説明する。
【0045】
制御装置100の目標値出力部110は、ガスタービン10の目標回転数Nt(目標値)を出力する(S10:目標値出力工程)。この目標値出力工程(S10)では、まず、下限制限器111が、目標出力受付部101が受け付けたガスタービン10の目標出力Ptと下限出力受付部103が受け付けた設定下限出力Pdとのうち大きい方を目標出力Ptとして出力する(S11:目標出力の下限制限工程)。次に、上限制限器112が、下限制限器111から出力された目標出力Ptと上限出力受付部102が受け付けた設定上限出力Puとのうち小さい方を目標出力Ptとして出力する(S12:目標出力の上限制限工程)。次に、出力偏差演算器113が、出力計61で検知された実出力Prに対する上限制限器112から出力された目標出力Ptの偏差である出力偏差ΔPを求める(S13:出力偏差演算工程)。次に、ガバナ設定器(目標値演算器)114が、出力偏差ΔPに基づいて目標回転数Nt(目標値)を定める(S14:ガバナ設定工程(目標値演算工程))。この際、ガバナ設定器114は、回転数と出力との関係を示す調停率等を用いて、出力偏差ΔPに応じた目標回転数Ntを求める。以上で目標値出力工程(S10)が終了する。
【0046】
制御装置100の目標値偏差演算部115は、回転数計62が検知した実回転数Nrに対する目標回転数Ntの偏差である目標回転数偏差ΔNt(目標値偏差)を求める(S15:目標値偏差演算工程)。
【0047】
制御装置100の回転数変動検知部120は、実回転数Nrの変動を検知する(S20:回転数変動検知工程)。この回転数変動検知工程(S20)では、まず、回転数変動量演算器122が、遅延器121からの実回転数Nrに対する回転数計62からの実回転数Nrの偏差ΔNtsを求める(S21:回転数変動量演算)。次に、変動判定器123が、回転数変動量演算器122が求めた偏差ΔNtsに応じて回転数上昇(+)、回転数低下(−)、変動無し(0)のいずれかを出力する(S22:変動判定工程)。変動判定器123は、偏差ΔNtsが予め定められた正の値より大きい場合に、回転数上昇(+)を出力する。変動判定器123は、偏差ΔNtsが予め定められた負の値より小さい場合に、回転数低下(−)を出力する。変動判定器123は、偏差ΔNtsが予め定められた正の値以下で且つ予め定められた負の値以上である場合に、変動無し(0)を出力する。
【0048】
制御装置100の上限偏差演算部131は、出力計61が検知した実出力Prに対する設定上限出力Puの偏差である上限偏差ΔPuを求める(S31:上限偏差演算工程)。また、制御装置100の下限偏差演算部132は、設定下限出力Pdに対する出力計61が検知した実出力Prの偏差である下限偏差ΔPdを求める(S32:下限偏差演算工程)。
【0049】
制御装置100のパラメータ変更部140は、目標回転数偏差ΔNt(目標値偏差)を変更する(S40:パラメータ変更工程)。このパラメータ変更工程(S40)では、第一補正係数発生器141が第一関数Fを用いて上限偏差ΔPuに応じた第一補正係数k1を求める(S41)。第一選択器144は、変動判定器123から回転数低下(−)を受けると、第一補正係数発生器141からの第一補正係数k1を出力し、変動判定器123から回転数上昇(+)又は変動無し(0)を受けると、固定係数発生器143からの固定係数「1」を第一補正係数k1として出力する(S42)。
【0050】
また、パラメータ変更工程(S40)では、第二補正係数発生器142が第二関数Gを用いて下限偏差ΔPdに応じた第二補正係数k2を求める(S43)。第二選択器145は、変動判定器123から回転数上昇(+)を受けると、第二補正係数発生器142からの第二補正係数k2を出力し、変動判定器123から回転数低下(−)又は変動無し(0)を受けると、固定係数発生器143からの固定係数「1」を第二補正係数k2として出力する(S44)。
【0051】
さらに、パラメータ変更工程(S40)では、第一乗算器146が、第一補正係数k1と第二補正係数k2とを乗算し、補正係数を求める(S45:補正係数演算工程)。次に、第二乗算器147が、比例ゲイン発生器151からの比例ゲインKpと第一乗算器146からの補正係数とを乗算して、比例ゲインKpを補正する(S46:比例ゲイン補正工程)。ゲイン乗算器152は、目標回転数偏差ΔNt(目標値偏差)に補正された比例ゲインKpを乗算して、ガスタービン10に供給する燃料の流量(燃料相当値)を定める(S51:燃料相当値設定工程)。以上で、パラメータ変更工程(S40)は、終了する。
【0052】
なお、パラメータ変更工程(S40)の最後工程(S51)では、ガスタービン10に供給する燃料の流量(燃料相当値)を定めるので、パラメータ変更工程(S40)の最終工程(S51)は、燃料相当値演算工程である。
【0053】
ここで、各種状態での比例ゲインKpの変化について整理して、説明する。
【0054】
実回転数Nrが低下している場合、
図1に示すように、第一選択器144は、第一補正係数発生器141からの第一補正係数k1を出力する。第一補正係数発生器141から出力される第一補正係数k1は、上限偏差ΔPu1(
図3参照)が小さい場合、つまり実出力Prが設定上限出力Puに近い場合、「1」よりも小さい値を第一補正係数k1として出力する。このため、実回転数Nrが低下し且つ実出力Prが設定上限出力Puに近い場合、第一選択器144は、第一補正係数k1として「1」より小さい値を出力する。
【0055】
一方、実回転数Nrが低下している場合、実出力Prと設定上限出力Puの関係、及び実出力Prと設定下限出力Pdとの関係がどのような場合でも、第二選択器145は、固定係数発生器143からの固定係数「1」を第二補正係数k2として出力する。
【0056】
よって、実回転数Nrが低下し且つ実出力Prが設定上限出力Puに近い場合、第一乗算器146では、「1」より小さい値である第一補正係数k1と、「1」である第二補正係数k2とを乗算し、これを補正係数とする。この補正係数は、「1」より小さい値であるため、第二乗算器147で補正された比例ゲインKpは、比例ゲイン発生器151から出力された比例ゲインKpよりも小さい。このため、補正された比例ゲインKpが乗算された目標回転数偏差ΔNt(燃料相当値)は、補正されていない比例ゲインKpが乗算された目標回転数偏差ΔNt(燃料相当値)よりも小さくなる。
【0057】
実回転数Nrが上昇している場合、
図2に示すように、第二選択器145は、第二補正係数発生器142からの第二補正係数k2を出力する。第二補正係数発生器142から出力される第二補正係数k2は、下限偏差ΔPd1(
図4参照)が小さい場合、つまり実出力Prが設定下限出力Pdに近い場合、「1」よりも大きい値を第二補正係数k2として出力する。このため、実回転数Nrが上昇し且つ実出力Prが設定下限出力Pdに近い場合、第二選択器145は、第二補正係数k2として「1」より大きい値を出力する。
【0058】
一方、実回転数Nrが上昇している場合、実出力Prと設定下限出力Pdの関係、及び実出力Prと設定上限出力Puとの関係がどのような場合でも、第一選択器144は、固定係数発生器143からの固定係数「1」を第一補正係数k1として出力する。
【0059】
よって、実回転数Nrが上昇し且つ実出力Prが設定下限出力Pdに近い場合、第一乗算器146では、「1」である第一補正係数k1と、「1」より大きい値である第二補正係数k2とを乗算し、これを補正係数とする。この補正係数は、「1」より大きい値であるため、第二乗算器147で補正された比例ゲインKpは、比例ゲイン発生器151から出力された比例ゲインKpよりも大きい。このため、補正された比例ゲインKpが乗算された目標回転数偏差ΔNt(燃料相当値)は、補正されていない比例ゲインKpが乗算された目標回転数偏差ΔNt(燃料相当値)よりも大きくなる。
【0060】
実回転数Nrが低下している場合でも、上限偏差ΔPu2(
図3参照)が大きい場合、つまり実出力Prが設定上限出力Puに近くない場合、第一補正係数発生器141から出力される第一補正係数k1は「1」である。この場合、第一選択器144は、第一補正係数k1として、第一補正係数発生器141からの「1」を出力する。一方、第二選択器145は、実出力Prが低下している場合、前述したように、一律に第二補正係数k2として「1」を出力する。よって、実回転数Nrが低下し且つ実出力Prが設定上限出力Puに近くない場合、第一乗算器146で求められる補正係数は「1」となり、第二乗算器147で補正された比例ゲインKpは、比例ゲイン発生器151から出力された比例ゲインKpと同じ値のままである。このため、この場合、補正された比例ゲインKpが乗算された目標回転数偏差ΔNt(燃料相当値)は、補正されていない比例ゲインKpが乗算された目標回転数偏差ΔNt(燃料相当値)と同じ値である。
【0061】
実回転数Nrが上昇している場合でも、下限偏差ΔPd2(
図4参照)が大きい場合、つまり実出力Prが設定下限出力Pdに近くない場合、第二補正係数発生器142から出力される第二補正係数k2は「1」である。この場合、第二選択器145は、第二補正係数k2として、第二補正係数発生器142からの「1」を出力する。一方、第一選択器144は、実出力Prが上昇している場合、前述したように、一律に第一補正係数k1として「1」を出力する。よって、実回転数Nrが上昇し且つ実出力Prが設定下限出力Pdに近くない場合、第一乗算器146で求められる補正係数は「1」となり、第二乗算器147で補正された比例ゲインKpは、比例ゲイン発生器151から出力された比例ゲインKpと同じ値のままである。このため、この場合、補正された比例ゲインKpが乗算された目標回転数偏差ΔNt(燃料相当値)は、補正されていない比例ゲインKpが乗算された目標回転数偏差ΔNt(燃料相当値)と同じ値である。
【0062】
実回転数Nrが実質的に変動していない場合、第一選択器144は、固定係数発生器143からの固定係数「1」を第一補正係数k1として出力し、第二選択器145は、固定係数発生器143からの固定係数「1」を第二補正係数k2として出力する。よって、この場合、第一乗算器146で求められる補正係数は「1」となり、第二乗算器147で補正された比例ゲインKpは、比例ゲイン発生器151から出力された比例ゲインKpと同じ値のままである。このため、この場合、補正された比例ゲインKpが乗算された目標回転数偏差ΔNt(燃料相当値)は、補正されていない比例ゲインKpが乗算された目標回転数偏差ΔNt(燃料相当値)と同じ値である。
【0063】
以上のように、本実施形態では、実回転数Nrが低下し且つ実出力Prが設定上限出力Puに近い場合、比例ゲイン発生器151から出力された比例ゲインKpは補正により小さくなる。このため、補正された比例ゲインKpが乗算された目標回転数偏差ΔNt(燃料相当値)は、補正されていない比例ゲインKpが乗算された目標回転数偏差ΔNt(燃料相当値)よりも小さくなる。また、実回転数Nrが上昇し且つ実出力Prが設定下限出力Pdに近い場合、比例ゲイン発生器151から出力された比例ゲインKpは補正により大きくなる。このため、補正された比例ゲインKpが乗算された目標回転数偏差ΔNt(燃料相当値)は、補正されていない比例ゲインKpが乗算された目標回転数偏差ΔNt(燃料相当値)よりも大きくなる。また、以上の他の場合、補正係数は「1」になるため、比例ゲイン発生器151から出力された比例ゲインKpは補正されても同じ値のままである。このため、この場合、補正された比例ゲインKpが乗算された目標回転数偏差ΔNt(燃料相当値)は、補正されていない比例ゲインKpが乗算された目標回転数偏差ΔNt(燃料相当値)と同じ値である。
【0064】
ゲイン乗算器152により、ガスタービン10に供給する燃料の流量(燃料相当値)が定められると(S51)、弁制御部155は、この燃料の流量(燃料相当値)に応じた弁開度を示す弁開度指令を作成し、この弁開度指令を燃料調節弁36に出力する(S52)。燃料調節弁36は、この弁開度指令が示す弁開度になり、燃焼器30のノズル31には、燃料相当値設定工程(S51)で定めた流量の燃料が供給される。
【0065】
以上、本実施形態では、目標回転数Ntと実回転数Nrとの偏差である目標回転数偏差ΔNtに応じて、燃料流量(燃料相当値)を定めているので、ガスタービン10の回転数の安定化を図ることができる。
【0066】
ところで、現時点での実出力Prがガスタービン10の設定上限出力Puに近い場合に、実回転数Nrが低下すると、目標回転数Ntと実回転数Nrとの偏差である目標回転数偏差ΔNtが大きくなるため、燃料流量が増加し、実出力Prが設定上限出力Puを上回ってしまうおそれがある。また、現時点での実出力Prがガスタービン10の設定下限出力Pdに近い場合に、実回転数Nrが上昇すると、目標回転数Ntと実回転数Nrとの偏差である目標回転数偏差ΔNtが小さくなるため、燃料流量が減少し、実出力Prが設定下限出力Pdを下回ってしまうおそれがある。
【0067】
しかしながら、本実施形態では、前述したように、ガスタービン10の実出力Prが設定上限出力Puに近いときに実回転数Nrが低下した場合に、比例ゲインKpは補正により小さくなる。このため、実回転数Nrの低下に伴って目標回転数偏差ΔNtが増加しても、目標回転数偏差ΔNtに補正後の比例ゲインKpを乗算することで、目標回転数偏差ΔNtの増加を抑制することができる。よって、本実施形態では、ガスタービン10の実出力Prが設定上限出力Puに近いときに実回転数Nrが低下した場合でも、実出力Prが設定上限出力Puを上回る可能性を低下させることができる。また、本実施形態では、前述したように、ガスタービン10の実出力Prが設定下限出力Pdに近いときに実回転数Nrが上昇した場合に、比例ゲインKpは補正により大きくなる。このため、実回転数Nrの上昇に伴って目標回転数偏差ΔNtが減少しても、目標回転数偏差ΔNtに補正後の比例ゲインKpを乗算することで、目標回転数偏差ΔNtの減少を抑制することができる。よって、本実施形態では、ガスタービン10の実出力Prが設定下限出力Pdに近いときに実回転数Nrが上昇した場合でも、実出力Prが設定下限出力Pdを下回る可能性を低下させることができる。
【0068】
従って、本実施形態によれば、ガスタービン10の回転数の安定化を図りつつも、設定出力範囲からの実出力Prの逸脱を抑制することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、補正係数を用いて比例ゲインKpを補正してから、補正後の比例ゲインKpを目標回転数偏差ΔNtに乗算しているが、補正係数を用いて目標回転数偏差ΔNtを補正してから、補正していない比例ゲインKpを補正後の目標回転数偏差ΔNtに乗算してもよい。
【0070】
「第一変形例」
図6を用いて、本発明に係るガスタービン設備の第一変形例について説明する。
【0071】
上記実施形態は、制御装置100のパラメータ変更部140が目標回転数偏差ΔNtを変更するものである。本変形例は、制御装置100aのパラメータ変更部140aが目標回転数Nt(目標値)を変更するものである。
【0072】
本変形例の制御装置100aは、上記実施形態の制御装置100と同様、目標出力受付部101、上限出力受付部102、下限出力受付部103、実出力受付部104、実回転数受付部105、目標値出力部110、目標値偏差演算部115、回転数変動検知部120、上限偏差演算部131、下限偏差演算部132、パラメータ変更部140a、燃料相当値演算部150、及び弁制御部155を有する。但し、本変形例では、前述したように、パラメータ変更部140aが上記実施形態と異なっている。
【0073】
本変形例のパラメータ変更部140aは、第一関数Hを用いて上限偏差ΔPuに応じた目標回転数Ntの第一補正係数k1を求める第一補正係数発生器141と、第二関数Iを用いて下限偏差ΔPdに応じた目標回転数Ntの第二補正係数k2を求める第二補正係数発生器142と、第一補正係数k1及び第二補正係数k2として固定係数(=1)を発生する固定係数発生器143と、第一補正係数発生器141からの第一補正係数k1と固定係数発生器143からの固定係数とのうち一方を第一補正係数k1として出力する第一選択器144と、第二補正係数発生器142からの第二補正係数k2と固定係数発生器143からの固定係数とのうち一方を第二補正係数k2として出力する第二選択器145と、第一選択器144から出力された第一補正係数k1と第二選択器145から出力された第二補正係数k2とを乗算する第一乗算器146と、ガバナ設定器114からの目標回転数Nt(目標値)と第一乗算器146からの補正係数とを乗算する第二乗算器147aと、を有する。
【0074】
第一補正係数発生器141は、上限偏差ΔPuと第一補正係数k1との関係を示す第一関数Hを用いて、上限偏差演算部131が求めた上限偏差ΔPuに対する第一補正係数k1を求める。第一関数Hは、上記実施形態における第一関数Fと同様、上限偏差ΔPuが小さい場合に第一補正係数k1として「1.0」より小さい値を出力し、上限偏差ΔPuが大きい場合に第一補正係数k1として「1.0」を出力する関数である。第二補正係数発生器142は、下限偏差ΔPdと第二補正係数k2との関係を示す第二関数Iを用いて、下限偏差演算部132が求めた下限偏差ΔPdに対する第二補正係数k2を求める。第二関数Iは、上記実施形態の第二関数Gと同様、下限偏差ΔPdが小さい場合に第二補正係数k2の値として「1」より大きい値を出力し、下限偏差ΔPdが大きい場合に第二補正係数k2の値として「1.0」を出力する関数である。
【0075】
第一選択器144及び第二選択器145は、上記実施形態と同様に動作する。
【0076】
本変形例のゲイン乗算器152は、第二乗算器147aにより補正された目標回転数Ntに対する実回転数Nrの偏差である目標回転数偏差ΔNtに、比例ゲイン発生器151からの比例ゲインKpを乗算して、燃料流量(燃料相当値)を求める。
【0077】
よって、本変形例では、ガスタービン10の実出力Prが設定上限出力Puに近いときに実回転数Nrが低下した場合、ガバナ設定器114からの目標回転数Ntは、第二乗算器147aによる補正で小さくなる。このため、実回転数Nrに対する、補正された目標回転数Ntの偏差ΔNtは、補正されていない目標回転数Ntの偏差ΔNtよりも小さくなる。従って、本変形例でも、第一実施形態と同様、ガスタービン10の実出力Prが設定上限出力Puに近いときに実回転数Nrが低下した場合でも、実出力Prが設定上限出力Puを上回る可能性を低下させることができる。また、本変形例では、実出力Prが設定下限出力Pdに近いときに実回転数Nrが上昇した場合、ガバナ設定器114からの目標回転数Ntは、第二乗算器147aによる補正で大きくなる。このため、実回転数Nrに対する、補正された目標回転数Ntの偏差ΔNtは、補正されていない目標回転数Ntの偏差ΔNtよりも大きくなる。従って、本変形例でも、第一実施形態と同様、ガスタービン10の実出力Prが設定下限出力Pdに近いときに実回転数Nrが上昇した場合でも、実出力Prが設定下限出力Pdを下回る可能性を低下させることができる。
【0078】
「第二変形例」
図7を用いて、本発明に係るガスタービン設備の第二変形例について説明する。
【0079】
上記実施形態は、前述したように、制御装置100のパラメータ変更部140が目標回転数偏差ΔNtを変更するものである。本変形例は、制御装置100bのパラメータ変更部140bが実回転数Nrを変更するものである。
【0080】
本変形例の制御装置100bは、上記実施形態の制御装置100と同様、目標出力受付部101、上限出力受付部102、下限出力受付部103、実出力受付部104、実回転数受付部105、目標値出力部110、目標値偏差演算部115、回転数変動検知部120、上限偏差演算部131、下限偏差演算部132、パラメータ変更部140b、燃料相当値演算部150、及び弁制御部155を有する。但し、本変形例では、前述したように、パラメータ変更部140bが上記実施形態と異なっている。
【0081】
本変形例のパラメータ変更部140bは、第一関数Lを用いて上限偏差ΔPuに応じた目標回転数Ntの第一補正係数k1を求める第一補正係数発生器141bと、第二関数Mを用いて下限偏差ΔPdに応じた目標回転数Ntの第二補正係数k2を求める第二補正係数発生器142bと、第一補正係数k1及び第二補正係数k2として固定係数(=1)を発生する固定係数発生器143と、第一補正係数発生器141bからの第一補正係数k1と固定係数発生器143からの固定係数とのうち一方を第一補正係数k1として出力する第一選択器144と、第二補正係数発生器142bからの第二補正係数k2と固定係数発生器143からの固定係数とのうち一方を第二補正係数k2として出力する第二選択器145と、第一選択器144から出力された第一補正係数k1と第二選択器145から出力された第二補正係数k2とを乗算する第一乗算器146と、実回転数受付部105が受け付けた実回転数Nrと第一乗算器146からの補正係数とを乗算する第二乗算器147bと、を有する。
【0082】
第一補正係数発生器141bは、上限偏差ΔPuと第一補正係数k1との関係を示す第一関数Lを用いて、上限偏差演算部131が求めた上限偏差ΔPuに対する第一補正係数k1を求める。但し、この第一関数Lは、上記実施形態や第一変形例における第一関数F,Hと異なり、上限偏差ΔPuが小さい場合に第一補正係数k1として「1.0」より大きい値を出力し、上限偏差ΔPuが大きい場合に第一補正係数k1として「1.0」を出力する関数である。また、第二補正係数発生器142bは、下限偏差ΔPdと第二補正係数k2との関係を示す第二関数Mを用いて、下限偏差演算部132が求めた下限偏差ΔPdに対する第二補正係数k2を求める。但し、この第二関数Mは、上記実施形態や第一変形例の第二関数G,Iと異なり、下限偏差ΔPdが小さい場合に第二補正係数k2の値として「1.0」より小さい値を出力し、下限偏差ΔPdが大きい場合に第二補正係数k2の値として「1.0」を出力する関数である。
【0083】
第一選択器144及び第二選択器145は、上記実施形態と同様に動作する。
【0084】
本変形例の目標値偏差演算部115は、第二乗算器147bにより補正された実回転数Nrに対する目標回転数Ntの偏差である目標回転数偏差ΔNt(目標値偏差)を求める(S15:目標値偏差演算工程)。ゲイン乗算器152は、第二乗算器147bにより補正された実回転数Nrと目標回転数Ntとの偏差である目標回転数偏差ΔNt(目標値偏差)に、比例ゲイン発生器151からの比例ゲインKpを乗算して、燃料流量(燃料相当値)を求める。
【0085】
よって、本変形例では、ガスタービン10の実出力Prが設定上限出力Puに近いときに実回転数Nrが低下した場合、実回転数受付部105からの実回転数Nrは、第二乗算器147bによる補正で小さくなる。このため、補正された実回転数Nrに対する目標回転数Ntの偏差は、補正されていない実回転数Nrに対する目標回転数Ntの偏差よりも小さくなる。従って、本変形例でも、上記実施形態及び第二変形例と同様、ガスタービン10の実出力Prが設定上限出力Puに近いときに実回転数Nrが低下した場合でも、実出力Prが設定上限出力Puを上回る可能性を低下させることができる。また、本変形例では、ガスタービン10の実出力Prが設定下限出力Pdに近いときに実回転数Nrが上昇した場合、実回転数受付部105からの実回転数Nrは、第二乗算器147bによる補正で大きくなる。このため、補正された実回転数Nrに対する目標回転数Ntの偏差は、補正されていない実回転数Nrに対する目標回転数Ntの偏差よりも大きくなる。従って、本変形例でも、上記実施形態及び第二変形例と同様、ガスタービン10の実出力Prが設定下限出力Pdに近いときに実回転数Nrが上昇した場合でも、実出力Prが設定下限出力Pdを下回る可能性を低下させることができる。
【0086】
「その他の変形例」
以上の実施形態及び各変形例では、実回転数相当値として実回転数Nrを用いて、目標値として目標回転数Ntを用いている。しかしながら、実回転数相当値として(実回転数Nr/定格回転数)を用い、目標値として(目標回転数Nt/定格回転数)を用いてもよい。さらに、実回転数相当値として、発電機50が発電する電力の実周波数又は(実周波数/定格周波数)を用い、目標値として目標周波数又は(目標周波数/定格周波数)を用いてもよい。
【0087】
また、以上の実施形態及び各変形例では、目標値演算器(ガバナ設定器)114で、目標値として目標回転数Ntを定めたが、出力の目標値を定めてもよい。この場合、実回転数受付部105からの実回転数Nrを調停率等を用いて出力に変換し、目標値偏差演算部115で出力の目標値と、実回転数Nrを調停率等で出力に変換したものとの偏差を目標値偏差として求めてもよい。つまり、目標値は出力であってもよく、この場合、実回転数相当値は出力であり、目標値偏差は出力の偏差である。