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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-224564(P2015-224564A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】内燃機関の燃焼制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/34 20060101AFI20151117BHJP
   F02B 17/00 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   F02D41/34 H
   F02D41/34 B
   F02D41/34 L
   F02B17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-108473(P2014-108473)
(22)【出願日】2014年5月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105119
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 孝治
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187805
【弁理士】
【氏名又は名称】毛利 弘人
(72)【発明者】
【氏名】英 寿
(72)【発明者】
【氏名】近藤 卓
【テーマコード(参考)】
3G023
3G301
【Fターム(参考)】
3G023AA05
3G023AA07
3G023AB01
3G023AC02
3G023AD03
3G023AD07
3G023AG02
3G301HA01
3G301HA15
3G301JA02
3G301JA25
3G301LB03
3G301LC01
3G301LC10
3G301MA01
3G301MA03
3G301MA11
3G301NB20
3G301NE15
3G301NE20
3G301PB03Z
3G301PG02Z
(57)【要約】
【課題】 均質度をより高めた混合気を形成し、安定した高効率の燃焼を実現するとともに、NOx排出量を低減することができる内燃機関の燃焼制御装置を提供する。
【解決手段】 吸気通路2内に配置されるスロットル弁3の直ぐ下流側に装着され、燃料を微粒化して噴射可能なシングルポイントインジェクタ4を用いて、吸気通路2内に燃料を噴射し、かつ必要な燃料量を複数回に分割して噴射する。シングルポイントインジェクタ4は、一対の燃料噴射弁4a,4bによって構成し、さらにタンブル流動制御弁6を用いて、混合気の流動を生成する。混合気の空燃比は30程度の希薄空燃比とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室内の混合気の火花点火を行う火花点火手段と、該火花点火手段を制御する点火制御手段とを備える、内燃機関の燃焼制御装置において、
前記燃焼室内に均質かつ希薄な混合気を形成する均質希薄混合気形成手段を備え、
前記均質希薄混合気形成手段は、燃料を微粒化して噴射可能な燃料インジェクタであって、前記機関の吸気通路内に配置されるスロットル弁の直ぐ下流側に装着されたシングルポイント燃料インジェクタを用いて、前記吸気通路内に燃料を噴射し、かつ必要な燃料量を複数回に分割して噴射することを特徴とする内燃機関の燃焼制御装置。
【請求項2】
前記シングルポイント燃料インジェクタは、燃料を微粒化して噴射可能な複数の燃料噴射弁によって構成されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃焼制御装置。
【請求項3】
前記燃焼室内に吸入された混合気の流動を生成する流動生成手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の燃焼制御装置。
【請求項4】
前記火花点火手段は、点火プラグと、該点火プラグに放電を発生させるための複数の点火コイル対とを備え、前記点火プラグにおける放電の開始時期及び継続時間を変更可能なものであり、
前記点火制御手段は、前記点火プラグにおける放電開始時期及び前記放電継続時間を制御することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の内燃機関の燃焼制御装置。
【請求項5】
前記燃焼室内の混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段をさらに備え、
前記空燃比制御手段は、前記空燃比を理論空燃比よりリーン側の所定リーン空燃比よりさらにリーン側の空燃比に制御し、
前記点火制御手段は、前記所定リーン空燃比よりリーン側の空燃比範囲において、前記空燃比が増加するほど、前記放電開始時期を進角させるとともに前記放電継続時間を長く設定することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の燃焼制御装置。
【請求項6】
前記均質希薄混合気形成手段は、前記燃焼室に連通する吸気ポート内に燃料を噴射する吸気ポート燃料インジェクタをさらに備え、前記機関の特定運転状態においては、前記シングルポイント燃料インジェクタとともに前記吸気ポート燃料インジェクタを使用して燃料の噴射を行うことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の内燃機関の燃焼制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼制御装置に関し、特に均質かつ希薄な混合気を火花点火することによって燃焼させる燃焼制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1おいては、均質かつ希薄な混合気を火花点火することによって燃焼させ、安定した燃焼を確保しつつNOx排出量を低減することができる均質希薄混合気の火花点火燃焼が提案されている。この非特許文献1では、空燃比「30」程度の均質希薄混合気を確実に燃焼させるための手法として、点火時の混合気温度を所望の温度まで高めるように圧縮比設定を行うこと、微粒化型の燃料噴射弁を使用することなどが提案されている。
【0003】
また特許文献1には、吸気通路が吸気マニホールドに分岐する箇所より上流側に燃料噴射弁を配置するシングルポイント噴射方式を採用した内燃機関の燃料噴射システムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−218861号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】自動車技術会学術講演会前刷集, No.121-12(2012/10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された燃料噴射システムでは、吸気系に設けられる過給機のロータに向けて燃料を噴射することにより、燃料の微粒化が促進される。したがって、このシステムの構成は、過給機を備えていない機関には適用できない。また、非特許文献1に示される微粒化型の燃料噴射弁をシングルポイント噴射方式に採用することによって、燃料の微粒化を促進することは可能であるが、希薄混合気の高効率の燃焼を確実に実現するために、混合気の均質度合(混合気内の空燃比分布の均質性)をより高めることが望まれている。
【0007】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、均質度をより高めた混合気を形成し、安定した高効率の燃焼を実現するとともに、NOx排出量を低減することができる内燃機関の燃焼制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関(1)の燃焼室内の混合気の火花点火を行う火花点火手段(7,8)と、該火花点火手段を制御する点火制御手段とを備える、内燃機関の燃焼制御装置において、前記燃焼室(1a)内に均質かつ希薄な混合気を形成する均質希薄混合気形成手段を備え、前記均質希薄混合気形成手段は、燃料を微粒化して噴射可能な燃料インジェクタであって、前記機関の吸気通路内に配置されるスロットル弁の直ぐ下流側に装着されたシングルポイント燃料インジェクタ(4a,4b)を用いて、前記吸気通路内に燃料を噴射し、かつ必要な燃料量を複数回に分割して噴射することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、吸気通路内に配置されるスロットル弁の直ぐ下流側に装着され、燃料を微粒化して噴射可能なシングルポイント燃料インジェクタを用いて、吸気通路内に燃料が噴射され、かつ必要な燃料量が複数回に分割して噴射される。シングルポイント燃料インジェクタをスロットル弁の直ぐ下流側に配置することで、スロットル弁直下の空気流の乱れによる混合気の均質化効果が得られ、さらに複数回に分割した噴射を行うことによって、燃焼室内の混合気の均質度合をより高めて安定した高効率の燃焼を実現するとともに、NOx排出量を低減することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の燃焼制御装置において、前記シングルポイント燃料インジェクタ(4a,4b)は、燃料を微粒化して噴射可能な複数の燃料噴射弁によって構成されることを特徴とする。
この構成によれば、シングルポイント燃料インジェクタが、燃料を微粒化して噴射可能な複数の燃料噴射弁によって構成されるので、混合気の均質度合をより高めることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の内燃機関の燃焼制御装置において、前記燃焼室(1a)内に吸入された混合気の流動を生成する流動生成手段(2b,6)をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、燃焼室内において、吸入された混合気の流動が生成されるので、点火プラグの放電継続時間の設定と混合気流動とによって強力な初期火炎核を形成し、高効率の燃焼を実現することが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか1項に記載の内燃機関の燃焼制御装置において、前記火花点火手段は、点火プラグ(8)と、該点火プラグに放電を発生させるための複数の点火コイル対(71,72)とを備え、前記点火プラグにおける放電の開始時期(CAIG)及び継続時間(TSPK)を変更可能なものであり、前記点火制御手段は、前記点火プラグにおける放電開始時期(CAIG)及び前記放電継続時間(TSPK)を制御することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、点火プラグにおける放電開始時期及び放電継続時間が変更可能であるため、放電開始時期及び放電継続時間を適切に設定することにより、すなわち、成層希薄混合気に点火する場合の放電開始時期より進角側に放電開始時期を設定することによって、放電継続時間を長く設定することを可能とし、均質かつ希薄な混合気を確実に着火させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の内燃機関の燃焼制御装置において、前記燃焼室内の混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段をさらに備え、前記空燃比制御手段は、前記空燃比を理論空燃比よりリーン側の所定リーン空燃比(AFL1)よりさらにリーン側の空燃比に制御し、前記点火制御手段は、前記所定リーン空燃比(AFL1)よりリーン側の空燃比範囲において、前記空燃比が増加するほど、前記放電開始時期(CAIG)を進角させるとともに前記放電継続時間(TSPK)を長く設定することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、所定リーン空燃比よりリーン側の空燃比範囲において、空燃比が増加するほど、放電開始時期を進角させるとともに放電継続時間を長く設定する制御が行われ、空燃比の変更に対応して安定した燃焼を実現できる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5の何れか1項に記載の内燃機関の燃焼制御装置において、前記均質希薄混合気形成手段は、前記燃焼室に連通する吸気ポート内に燃料を噴射する吸気ポート燃料インジェクタ(5)をさらに備え、前記機関の特定運転状態においては、前記シングルポイント燃料インジェクタ(4)とともに前記吸気ポート燃料インジェクタ(5)を使用して燃料の噴射を行うことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、機関の特定運転状態、例えば過渡運転状態や高負荷運転状態においては、シングルポイント燃料インジェクタとともに吸気ポート燃料インジェクタを使用して燃料の噴射が行われるので、混合気の均質度合を維持しつつ特定運転状態に対応した適切な燃料供給量制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関の構成を模式的に示す図である。
図2】吸気マニホールドに設けられるタンブル流動制御弁(6)の配置を説明するための図である。
図3図1に示す内燃機関の制御系の構成を示すブロック図である。
図4】1つの気筒に対応する点火回路ユニット(7)の構成を示す回路図である。
図5】燃料噴射弁による燃料の噴射状態を説明するための図である。
図6】シングルポイントインジェクタ(4)による燃料噴射を説明するためのタイムチャートである。
図7】空燃比(AF)と排気中のNOx濃度(CNOx)との関係を示す図である。
図8】超希薄混合気の目標空燃比(AFCMD)に応じて点火プラグの放電開始時期(CAIG)及び放電継続時間(TSPK)を設定するテーブルを示す図である。
図9】シングルポイントインジェクタ(4)による分割燃料噴射を行った場合の図示熱効率(ηi)、リーン限界空燃比(AFLL)、及び排気中のNOx濃度(CNOx)を示す図である。
図10】燃焼室内における検出空燃比(AFDET)の度数分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる内燃機関(以下「エンジン」という)の構成を模式的に示す図であり、4気筒のエンジン1の吸気通路2の途中にはスロットル弁3が配置されている。吸気通路2のスロットル弁3の直ぐ下流側には、一対の燃料噴射弁4a,4bからなるシングルポイントインジェクタ4が設けられており、さらに#1気筒〜#4気筒に連通する吸気マニホールド2aには、一対の燃料噴射弁5a,5bからなるポートインジェクタ5が各気筒に対応して設けられている。シングルポイントインジェクタ4及びポートインジェクタ5には図示しない燃料供給通路を介して、燃料ポンプによって加圧された燃料が供給される。
【0021】
図2に示すように、吸気マニホールド2aの、吸気弁11の直ぐ上流側には、隔壁2bと、隔壁2bによって形成される一方の流路に配置されたタンブル流動制御弁6とが設けられており、タンブル流動制御弁6はアクチュエータ6aによって開閉駆動可能に構成されている。タンブル流動制御弁6によって、燃焼室1a内に混合気のタンブル流動が生成される。
【0022】
エンジン1の各気筒には点火プラグ8が装着されており、点火プラグ8は点火回路ユニット7を介してその作動が制御される。
エンジン1の排気通路9には、排気浄化用の三元触媒10が設けられている。三元触媒10の上流側であって各気筒に連通する排気マニホールドの集合部より下流側には、比例型酸素濃度センサ27(以下「LAFセンサ27」という)が装着されている。LAFセンサ27は排気中の酸素濃度(空燃比AF)にほぼ比例した検出信号を出力する。
【0023】
図3は、エンジン1の制御系の構成を示すブロック図であり、上述したシングルポイントインジェクタ4、ポートインジェクタ5、アクチュエータ6a、及び点火回路ユニット7は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)20に接続されており、シングルポイントインジェクタ4、ポートインジェクタ5、タンブル流動制御弁6、及び点火プラグ8の作動は、ECU20によって制御される。ECU20は、後述するように各インジェクタ4,5の作動を制御するとともに、点火プラグ8における放電開始時期CAIG及び放電継続時間TSPKの制御を行い、さらにタンブル流動制御弁6の開度を調整して、タンブル流動の強度(流速)の制御を行う。
【0024】
ECU20には、エンジン1の吸入空気流量GAIRを検出する吸入空気流量センサ21、吸気温TAを検出する吸気温センサ22、スロットル弁開度THを検出するスロットル弁開度センサ23、吸気圧PBAを検出する吸気圧センサ24、エンジン冷却水温TWを検出する冷却水温センサ25、クランク角度位置センサ26、LAFセンサ27、及び図示しない他のセンサが接続されており、これらのセンサの検出信号がECU20に供給される。クランク角度位置センサ26は、エンジン1のクランク軸(図示せず)の回転角度を検出し、クランク軸の回転角度に応じた複数のパルス信号を出力する。クランク角度位置センサ16から出力されるパルス信号は、燃料噴射時期、点火時期(点火プラグ8の放電開始時期)等の各種タイミング制御、及びエンジン回転数NEの検出に使用される。
【0025】
ECU20は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路、中央演算処理ユニット(CPU)、該CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路、インジェクタ4,5,点火回路ユニット7、アクチュエータ6aなどに駆動信号を供給する出力回路等から構成される。
【0026】
エンジン1への燃料供給は、基本的にはシングルポイントインジェクタ4によって行われ、ポートインジェクタ5はエンジン1の過渡運転状態や高負荷運転状態などの特定運転状態において、燃料供給量の補正を行うために使用される。
【0027】
シングルポイントインジェクタ4による燃料噴射量は、吸入空気流量GAIRに応じて算出される基本燃料量を、LAFセンサ27により検出される空燃比AFに応じた空燃比補正係数KAFによって補正することによって制御される。空燃比補正係数KAFは、検出される空燃比AFが目標空燃比AFCMDと一致するように算出される。
【0028】
図4は、1つの気筒に対応する点火回路ユニット7の構成を示す回路図であり、点火回路ユニット7は、一次コイル71a及び二次コイル71bからなる第1コイル対71と、一次コイル72a及び二次コイル72bからなる第2コイル対72と、バッテリ30の出力電圧VBATを昇圧して昇圧電圧VUPを出力する昇圧回路73と、一次コイル71a,72aの通電制御を行うトランジスタQ1,Q2と、二次コイル71b,72bと点火プラグ8との間に接続されたダイオードD1,D2とを備えている。
【0029】
トランジスタQ1,Q2のベースはECU20に接続されており、ECU20によってオンオフ制御(一次コイルの通電制御)が行われる。2つの一次コイルの通電期間の一部を重複させて交互に通電を行うことによって、点火プラグ8における放電の継続時間(放電継続時間)TSPKをエンジン1の運転状態に応じて変更することができる。また一次コイルの最初の通電終了時期が放電開始時期CAIGに相当し、放電開始時期CAIGもエンジン1の運転状態に応じて変更可能である。
【0030】
インジェクタ4,5を構成する各燃料噴射弁4a,4b,5a,5bは、燃料を微粒化して噴射可能なものであり、SMD(Sauter Mean Diameter:ザウター平均直径)が35μm程度(燃圧350kPaで噴射し、噴射口からの50mm下におけるSMD)の特性を有する。図5(a)は、この燃料噴射弁4a等による燃料の噴射状態(噴射された燃料の拡散状態)を模式的に示し、図5(b)は比較のために示す通常の燃料噴射弁による燃料の噴射状態を示す。通常の燃料噴射弁では、円錐状に分布する燃料の周辺部の燃料濃度が高くなるのに対し、燃料噴射弁4a等では微粒化した燃料の到達距離が短くなり、かつ拡散領域内における濃度分布の均質度が高く(濃度差が少なく)なる。
【0031】
図6は、本実施形態におけるシングルポイントインジェクタ4による燃料噴射を説明するためのタイムチャート(横軸はクランク角度CA)であり、実線が本実施形態に対応し、破線は比較のために示すもので、ポートインジェクタ5のみを使用する場合に対応する。本実施形態では1燃焼サイクルにおいて1つの気筒に供給すべき燃料量を2回に分割して噴射する。すなわち、ポートインジェクタ5のみを使用した場合のポート燃料噴射PTIと比較して、単位時間当たりの噴射量を減少させ、2回の燃料噴射SPI1及びSPI2の噴射時間を長く設定して、燃料噴射が行われる。ポートインジェクタ5によって噴射された燃料は、吸気弁11が開弁されると直ちに燃焼室内に吸入されるが、シングルポイントインジェクタ4によって噴射された燃料は、例えば2サイクル程度遅れて燃焼室に吸入されるため、シングルポイントインジェクタ4による燃料噴射の実行時期は、図6に示した時期に厳密に制御する必要はない。
【0032】
このように、必要な燃料量をシングルポイントインジェクタ4によって分割して噴射することにより、検出空燃比AFを目標空燃比AFCMDと一致させるために必要とされる量の燃料を燃焼室に供給し、しかも燃焼室内における空燃比分布がほぼ一様な(均質度の高い)均質希薄混合気を形成することができる。
【0033】
本実施形態では、暖機完了後の目標空燃比AFCMDは、例えば「24」から「35」程度の範囲(以下「超希薄空燃比範囲」という)に設定される。空燃比「24」(所定空燃比AFL1)は、エンジン1からのNOx排出量(排気中のNOx濃度)が許容上限値CNOxHL(例えば120ppm)以下となるように設定される。空燃比「35」は、必要なエンジン出力を得るための限界値として設定される空燃比である。
【0034】
図7は、空燃比AFと排気中のNOx濃度CNOxとの関係を示す図であり、空燃比AFが「16」以上の範囲では、空燃比AFが増加するほど(リーン化するほど)、NOx濃度CNOxが低下する。したがって、所定空燃比AFL1は、許容上限値CNOxHLが低下するほど増加するように設定する必要がある。
【0035】
点火プラグ8における放電開始時期CAIGは、超希薄空燃比範囲における目標空燃比AFCMDに対応して、上死点前50度から15度の範囲に設定され、放電継続時間TSPKは均質希薄混合気を確実に着火させるべく、1.8〜3msecに設定される。このように放電継続時間TSPKを設定したときの放電エネルギが150〜600mJとなるように昇圧電圧VUPが設定されている。従来の火花点火による希薄混合気燃焼は、点火プラグ近傍の空燃比が相対的に小さくなるように燃焼室内の流動を生成することによって実現される成層混合気燃焼であるのに対し、本実施形態の均質希薄混合気燃焼は、放電継続時間TSPKを比較的長く設定し、その放電継続時間TSPKを確保できるように放電開始時期CAIGは、成層混合気燃焼の点火時期(例えば8.0度)より進角側に設定されている。
【0036】
さらにエンジン1の幾何学的圧縮比(ピストンが下死点に位置するときの燃焼室容積と、上死点に位置するときの燃焼室容積との比)は、最低実効圧縮比が9.0程度となるように、通常の火花点火エンジンの幾何学的圧縮比より若干大きく設定されている。
【0037】
またタンブル流動制御弁6の開度を変更することによって、流速5〜15m/sec程度(エンジン回転数NEが1500rpmであるとき流速)のタンブル流動を発生させるタンブル流動生成制御が行われる。
【0038】
放電継続時間TSPKを比較的長く設定するとともに、燃焼室内にタンブル流動を生成することによって、強力な初期火炎核を形成し、その火炎核を成長させることによって、圧縮上死点における未燃混合気の温度を1000度K以上の温度まで高めて、燃焼層流速度を支配する素反応を、過酸化水素が分解してOHラジカルを生成する反応に変化させ、圧縮上死点後において燃焼を確実に完結させることが可能となる。均質希薄混合気の火花点火による燃焼によって、高効率の安定した燃焼が得られる。
【0039】
また本実施形態では、エンジン1の暖機完了後は、エンジン1の要求トルクに応じて超希薄空燃比範囲内に目標空燃比AFCMDを設定し、目標空燃比AFCMDに応じて点火プラグ8の放電開始時期CAIG及び放電継続時間TSPKを設定する。
【0040】
具体的には、放電開始時期CAIG(圧縮上死点からの進角量で定義される)は、図8(a)に示すように、目標空燃比AFCMDが増加するほど進角するように設定され、放電継続時間TSPKは、図8(b)に示すように目標空燃比AFCMDが増加するほど長くなるように設定される。図8(a)(b)に示すAFL1及びAFL2は、それぞれ例えば「24」及び「35」に設定される所定空燃比であり、図8(a)に示すCAIG1,CAIG2は、それぞれ例えば「15度」及び「50度」に設定される所定進角量であり、図8(b)に示すTSPK1,TSPK2は、それぞれ例えば「1.8msec」及び「3msec」に設定される所定放電時間である。
【0041】
なお、放電開始時期CAIGは、上記のように目標空燃比AFCMDに応じて設定するとともに、エンジン回転数NEが高くなるほど進角させることが望ましい。エンジン回転数NEが高くなるほど、放電継続時間TSPKに対応するクランク角度CRAは増加するので、放電開始時期CAIGを進角させることによって、高回転状態においても必要な放電継続時間TSPKを確保し、安定した燃焼を得ることができる。
【0042】
図9(a)〜図9(c)は、シングルポイントインジェクタ4による分割噴射を行った場合の図示熱効率ηi、リーン限界空燃比AFLL、及び排気中のNOx濃度CNOxを示す図であり、図9(a)〜図9(c)において白丸(○)で示されている。これらの図に折れ線で示す特性は、ポートインジェクタ5を使用したポート燃料噴射PTIのみを行った場合(以下「比較対象例」という)に対応する。図9の横軸は、図示平均有効圧IMEPである。
【0043】
図示熱効率ηi、リーン限界空燃比AFLL、及び排気中のNOx濃度CNOxの何れにおいても、本実施形態における特性値は比較対象例より良好な値を示しており、特にNOx濃度CNOxの低減効果が大きいことが確認できる。
【0044】
図10(a)(b)は、燃焼室内における検出空燃比AFDETの度数分布を示す図であり、図10(a)は本実施形態に対応し、図10(b)は比較対象例に対応する。こららの図において実線及び破線は、クランク角度で示す検出時期がそれぞれ圧縮上死点前30度である場合及び圧縮上死点前60度である場合に対応する。横軸が検出空燃比AFDETであり、縦軸が検出度数FRQである。本実施形態のシングルポイントインジェクタ4を用いた分割噴射によって、燃焼室内の空燃比変動を低減すること、換言すれば空間的に均質度の高く、かつ燃焼サイクル毎の空燃比変動が小さい混合気を形成することができる。
【0045】
以上のように本実施形態によれば、吸気通路2内に配置されるスロットル弁3の直ぐ下流側に装着され、燃料を微粒化して噴射可能なシングルポイントインジェクタ4を用いて、吸気通路2内に燃料が噴射され、かつ必要な燃料量が2回に分割して噴射される。シングルポイントインジェクタ4をスロットル弁3の直ぐ下流側に配置することで、スロットル弁3直下の空気流の乱れによる混合気の均質化効果が得られ、さらに2回に分割した噴射を行うことによって、燃焼室内の混合気の均質度合をより高めて安定した高効率の燃焼を実現するとともに、NOx排出量を低減することができる。
【0046】
またシングルポイントインジェクタ4は、一対の燃料噴射弁4a,4bによって構成されるので、混合気の均質度合をより高めることができる。
【0047】
また燃焼室内において、吸入された混合気の流動が生成されるので、点火プラグ8の放電継続時間TPSKの設定と混合気流動とによって、強力な初期火炎核、すなわち圧縮上死点における燃焼混合気温度を1000度K以上に高めることができる初期火炎核を形成し、高効率の燃焼を実現することができる。すなわち、本実施形態では、燃焼室内の混合気流動は、点火プラグ近傍の空燃比を相対的に小さくするために生成されるものではなく、燃焼の完結をさせる強力な初期火炎核を形成するために生成されるものである。
【0048】
また点火プラグ8における放電開始時期CAIG及び放電継続時間TSPKが制御可能であるため、放電開始時期CAIG及び放電継続時間TSPKを適切に設定することにより、すなわち、成層希薄混合気に点火する場合の放電開始時期より進角側に放電開始時期CAIGを設定することによって、放電継続時間TSPKを長く設定することを可能として均質希薄混合気を確実に着火させることができる。
【0049】
また図8に示す所定空燃比AFL1からAFL2までの超希薄空燃比範囲において、目標空燃比AFCMDが増加するほど、点火プラグ8の放電開始時期CAIGを進角させるとともに放電継続時間TSPKを長く設定する制御が行われるので、目標空燃比AFCMDの変更に対応して安定した燃焼を実現できる。
【0050】
またエンジン1の特定運転状態、例えば過渡運転状態や高負荷運転状態においては、シングルポイントインジェクタ4とともにポートインジェクタ5を使用して燃料の噴射が行われるので、混合気の均質度合を維持しつつ特定運転状態に対応した適切な燃料供給量制御を行うことが可能となる。
【0051】
本実施形態では、点火回路ユニット7及び点火プラグ8が火花点火手段に相当し、隔壁2b及びタンブル流動制御弁6が流動生成手段に相当する。またECU20が点火制御手段及び空燃比制御手段を構成し、シングルポイントインジェクタ4、ポートインジェクタ5、及びECU20が均質希薄混合気形成手段を構成する。
【0052】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、シングルポイントインジェクタ4による、一つの気筒における1回の燃焼に必要な燃料供給量を2つに分割して2回の燃料噴射を行うようにしたが、3つ以上に分割してもよく、またシングルポイントインジェクタ4を連続して開弁可能な電磁弁で構成し、エンジン1の運転中は常に開弁するようにしてもよい。分割数を増加させるほど、混合気の均質度を高めることができると考えられ、常時開弁することによって均質度を最大限に高めることができると考えられる。なお、常時開弁する場合の燃料供給量(空燃比)の制御は、シングルポイントインジェクタ4に供給する燃料の圧力を変更することによって行う。
【0053】
また上述した実施形態では特定運転状態において燃料供給量の補正を行うために、ポートインジェクタ5を設けたが、例えば負荷がほぼ一定の発電用エンジンのように定常的な運転のみ行うエンジンの場合には設けなくてもよい。また、シングルポイントインジェクタ4及びポートインジェクタ5は、単一の燃料噴射弁で構成するようにしてもよい。
【0054】
また上述した実施形態では流動生成手段として、タンブル流動を生成する機構を使用したが、スワール流動を生成する機構を採用してもよい。また、燃焼室1a及びピストン頂部の形状を、スキッシュ流動が生成されるように構成してもよい。また、点火回路ユニット7のコイル対は、1つの点火プラグに対応して2個設けるようにしたが、3個以上設けるようにしてもよい。
【0055】
また上述した実施形態では4気筒エンジンの例を示したが、本発明は気筒数に関わらず適用可能である。また本発明は、クランク軸を鉛直方向とした船外機などのような船舶推進機用エンジンなどの燃焼制御装置にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 内燃機関
2 吸気通路
2b 隔壁(流動生成手段)
4 シングルポイントインジェクタ(均質希薄混合気形成手段)
5 ポートインジェクタ(均質希薄混合気形成手段)
6 タンブル流動制御弁(流動生成手段)
7 点火回路ユニット(火花点火手段)
8 点火プラグ(火花点火手段)
20 電子制御ユニット(点火制御手段、空燃比制御手段、均質希薄混合気形成手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10