【解決手段】ボール弁体20の回転方向に相互に一定の中心角度で離間するように弁本体12に形成され、弁室14に連通する複数の水平方向流路44と、ボール弁体20の駆動軸18の方向に弁本体12に形成され、弁室14に連通する鉛直方向流路62と、ボール弁体20に形成され、水平方向流路44同士を連通するように形成された水平方向連通流路64と、ボール弁体20に形成され、水平方向流路44の一つと鉛直方向流路62とを連通するように形成された鉛直方向連通流路66とを備える。
前記弁本体には、弁座保持部材が装着され、前記水平方向流路と弁座部材収容用溝部が、弁座保持部材に形成されていることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の多方切換弁。
差圧が作用していない状態で、前記弁座部材と弁座部材収容用溝部の間の隙間Lが、前記シール部材の圧縮量dに対して、L/2<dの関係に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の多方切換弁。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の多方切換弁として、ボールバルブが広範に使用されており、このボールバルブは、ボール弁体に連結した回転軸を回転するだけの操作で、ボール弁体に形成した流路によって、流路の切り換えができるので、操作が迅速で、簡単であるといった利点がある。
【0003】
例えば、特許文献1(特開昭59−013170号公報)には、このような多方切換弁として機能するボールバルブとして、ボール弁体の片寄りがなく、弁漏れが増加しない4方向のボールバルブが開示されている。
【0004】
すなわち、
図11に示したように、特許文献1のボールバルブ100では、弁本体102に、弁室104に連通するように、中心角度90°で相互に離間した4つの水平方向流路106〜112が形成されている。そして、これらの4つの水平方向流路のうち、3つの水平方向流路106〜110の開口部に環状の突出部106a〜110aが形成されている。
【0005】
これらの突出部106a〜110aの外周に、環状の弁座部材114が摺動可能に嵌合されている。また、これらの弁座部材114の内周に、シール部材収容溝116が形成され、このシール部材収容溝116に、Oリング118を装着することによって、高圧側から低圧側へのいわゆる裏漏れを防止し、気密性が保たれるように構成されている。
【0006】
また、弁座部材114の後端と、弁本体102との間には、座金120と皿バネ122からなる押圧部材が介装されており、弁座部材114をボール弁体124に押し付ける(押圧する)ように構成されている。
【0007】
さらに、ボール弁体124には、2つの連通流路(弁孔)126、128が形成され、弁本体102に形成した4つの水平方向流路106〜112のうち、隣接するそれぞれ2つの流路に連通するように構成されている。また、ボール弁体124には、その中心に垂直方向に挿通孔130が形成されており、この挿通孔130内に、回転軸132が挿着されている。
【0008】
このように構成することによって、回転軸132が流体の圧力を受けても変位せず、また、弁座部材114の後端に、押圧部材の押圧力と流体の圧力とを作用させることによって漏れが生じないように構成されている。
【0009】
また、特許文献2(特開2013−44354号公報)には、多方切換弁として機能するボールバルブとして、特許文献1のボールバルブ100よりも簡単な構造とした4方向のボールバルブが開示されている。
【0010】
すなわち、
図12に示したように、この特許文献2のボールバルブ200では、弁本体202に、弁室204に連通するように、中心角度90°で相互に離間した4つの水平方向流路206、208、210、212が形成されている。
【0011】
そして、これらの水平方向流路206、208、210、212の弁室204側の開口部の周囲には、弁座部材収容用溝部214が形成され、これらの弁座部材収容用溝部214には、弁座部材216と、弁座部材216をボール弁体218に押圧するシール部材220が装着されている。
【0012】
そして、ボール弁体218には、2つの連通流路(弁孔)222、224が形成され、弁本体202に形成した4つの水平方向流路206、208、210、212のうち、隣接するそれぞれ2つの流路に連通するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、このような従来の多方切換弁では、下記のような問題がある。
【0015】
すなわち、特許文献1のボールバルブ100では、ボール弁体の片寄りがなく、弁漏れが発生しないようにするために、回転軸132をボール弁体124に形成した挿通孔130内に、精度よく貫通させる必要があり、コストが高くつくことになる。
【0016】
また、特許文献1のボールバルブ100では、環状の突出部106a〜110a、環状の弁座部材114を設ける必要があり、いわゆる裏漏れを防ぐためのシール部材収容溝116に装着したOリング118、および、弁座部材114をボール弁体124に付勢するための座金120と皿バネ122からなる押圧部材を設ける必要があり、複雑な構成が必要で部品点数が多くなり、コストが高くつくことになる。
【0017】
さらに、特許文献1のボールバルブ100では、
図11に示したように、ボール弁体124に形成した2つの連通流路(弁孔)126、128が、弁本体102に形成した4つの水平方向流路106、108、110、112のうち、隣接するそれぞれ2つの流路にしか連通することができないため、切り換えの種類(方向)が限定されており、このため、分野、用途が限定されることになってしまう。
【0018】
また、特許文献2のボールバルブ200では、特許文献1のボールバルブ100に比較して簡単な構造となっているが、特許文献1のボールバルブ100と同様に、
図12に示したように、ボール弁体218に形成した連通流路(弁孔)222、224が、弁本体202に形成した4つの水平方向流路206〜212のうち、隣接するそれぞれ2つの流路に連通することができないため、切り換えの種類が限定されており、このため、分野、用途が限定されることになってしまう。
【0019】
また、特許文献1のボールバルブ100、特許文献2のボールバルブ200のいずれも、全ての流路を、4つの水平方向の水平方向流路として弁本体に形成する必要があるため、スペース的にボールバルブが大型化してしまうことになる。
【0020】
本発明は、このような現状に鑑み、複雑な構成が不要で、部品点数が少なく、コストも低減でき、しかも、切り換えの種類(方向)が多く、様々な分野、用途に適用可能な多方切換弁を提供することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、高圧側から低圧側へのいわゆる裏漏れを防止し、気密性が保持され、安定した性能が得られる多方切換弁を提供することを目的とする。
【0022】
さらに、本発明は、ボール弁体と弁本体の間の間隙に、いわゆる液封が生じて破損損傷することがなく、安定した性能が得られる多方切換弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の多方切換弁は、
弁体の動作により流体の流れを切り替える多方切換弁であって、
弁本体の内部に形成された弁室内に装着され、駆動軸の回転によって、弁室内で回転するように構成されたボール弁体と、
前記ボール弁体の回転方向に相互に一定の中心角度で離間するように弁本体に形成され、前記弁室に連通する複数の水平方向流路と、
前記ボール弁体の駆動軸の方向に弁本体に形成され、前記弁室に連通する鉛直方向流路と、
前記ボール弁体に形成され、前記水平方向流路同士を連通するように形成された水平方向連通流路と、
前記ボール弁体に形成され、前記水平方向流路の一つと鉛直方向流路とを連通するように形成された鉛直方向連通流路と、
を備えることを特徴とする。
【0024】
このように構成することによって、弁本体には、ボール弁体の回転方向に相互に一定の中心角度で離間するように形成された複数の水平方向流路と、ボール弁体の駆動軸の方向に形成された鉛直方向流路とを備えている。
【0025】
これに対応して、ボール弁体には、水平方向流路同士を連通するように形成された水平方向連通流路と、水平方向流路の一つと鉛直方向流路とを連通するように形成された鉛直方向連通流路とを備えている。
【0026】
従って、駆動軸の回転によって、ボール弁体を弁室内で回転することによって、従来の多方切換弁に比較して、格段に切り換えの種類(方向)が多くなり、様々な分野、用途に適用可能な多方切換弁を提供することができる。
【0027】
しかも、従来の多方切換弁のように、水平方向の水平方向流路のみを形成するだけでなく、鉛直方向の鉛直方向流路を形成するので、その分、スペース的に余裕ができ、ボールバルブが大型化してしまうことなく、コンパクト化することができる。
【0028】
従って、本発明の多方切換弁によれば、複雑な構成が不要で、部品点数が少なく、コストも低減でき、しかも、切り換えの種類(方向)が多く、様々な分野、用途に適用可能な多方切換弁を提供することができる。
【0029】
また、本発明の多方切換弁は、
前記弁本体の水平方向流路の弁室側の開口部の周囲には、弁座部材収容用溝部が形成され、
前記弁座部材収容用溝部には、弁座部材と、弁座部材をボール弁体に押圧するシール部材が装着され、
前記弁座部材と弁座部材収容用溝部の間には、差圧が作用していない状態で隙間Lが形成され、
差圧が作用していない状態で、前記隙間Lが、シール部材の圧縮量dより小さく(L<d)設定されていることを特徴とする。
【0030】
このように構成することによって、弁座部材収容用溝部には、弁座部材と、弁座部材をボール弁体に押圧するシール部材が装着され、弁座部材と弁座部材収容用溝部の間には、差圧が作用していない状態で隙間Lが形成されるとともに、差圧が作用していない状態で、隙間Lが、シール部材の圧縮量dより小さく(L<d)設定されている。
【0031】
従って、シール部材の復元力が常に生じて、弁座部材がボール弁体に押圧された状態であるので、シール性が良好で、たとえ、異常な高圧が印加された場合でも、高圧側から低圧側へのいわゆる裏漏れを防止し、気密性が保持され、安定した性能が得られる。
【0032】
また、弁座部材が膨潤変形しても、弁座部材と弁座部材収容用溝部の間には、差圧が作用していない状態で隙間Lが形成されているので、この弁座部材の膨潤変形をシール部材で吸収することができる。そのため、ボール締め付け力が異常に高くなり、作動性が悪くなるという不具合が発生しない。
【0033】
さらに、弁本体の水平方向流路の弁室側の開口部の周囲に、弁座部材収容用溝部が形成され、弁座部材収容用溝部には、弁座部材と、弁座部材をボール弁体に押圧するシール部材が装着されて、シール性が確保されているが、ボール弁体の駆動軸の方向に弁本体に形成された鉛直方向流路には、このような弁座部材と、弁座部材をボール弁体に押圧するシール部材が装着されていない。
【0034】
従って、鉛直方向流路を介して、ボール弁体と弁本体の間の間隙に入った流体が排出されるので、ボール弁体と弁本体の間の間隙に、いわゆる液封が生じて破損損傷することがなく、安定した性能が得られる。
【0035】
また、本発明の多方切換弁は、前記弁本体には、弁座保持部材が装着され、前記水平方向流路と弁座部材収容用溝部が、弁座保持部材に形成されていることを特徴とする。
【0036】
このように弁本体には、弁座保持部材が装着され、水平方向流路と弁座部材収容用溝部が、弁座保持部材に形成されていれば、弁本体に水平方向流路と弁座部材収容用溝部を加工することなく、別途弁座保持部材にこれらを加工して、弁本体に脱着自在に装着することができるので、加工が容易であり、メンテナンス性も向上する。
【0037】
また、本発明の多方切換弁は、前記弁本体の水平方向流路が、奇数個の水平方向流路から形成されていることを特徴とする。
【0038】
このように弁本体の水平方向流路が、奇数個の水平方向流路から形成されていれば、ボール弁体に、弁本体の水平方向流路同士を連通する水平方向連通流路と、弁本体の残りの水平方向流路の一つと弁本体の鉛直方向流路とを連通する鉛直方向連通流路を形成することができる。
【0039】
また、本発明の多方切換弁は、前記弁本体の水平方向流路が、3つの水平方向流路から形成されていることを特徴とする。
【0040】
これにより、従来の特許文献1、特許文献2の4方向のボールバルブでは、4つの水平方向流路を設ける必要があるのに対して、本発明の4方向の多方切換弁では、弁本体の水平方向流路を、3つの水平方向流路から形成すれば良いので、その分、スペース的に余裕ができ、ボールバルブが大型化してしまうことなく、コンパクト化することができる。
【0041】
また、本発明の多方切換弁は、
差圧が作用していない状態で、前記水平方向流路が相互になす中心角度θ:θ
前記弁座部材と弁座部材収容用溝部の間の隙間:L
シール部材の圧縮量:d
とした時、
L・cos(θ/2)<d
の関係を満たすように構成されていることを特徴とする。
【0042】
すなわち、L・cos(θ/2)<d
の関係を満たすように構成されていれば、例えば、
図8、
図9に示したように、ボール弁体20が、
図8の矢印Fで示した方向に、高圧側から低圧側(B側)に移動しても、高圧側ではシール部材54の潰し代が確保され、シール部材54の復元力が常に作用して、弁座部材56がボール弁体20に押圧された状態である。
これにより、シール性が確保され、高圧側から低圧側(B側)に高圧流体が漏れるのが効果的に防止される。
【0043】
また、本発明の多方切換弁は、差圧が作用していない状態で、前記弁座部材と弁座部材収容用溝部の間の隙間Lが、前記シール部材の圧縮量dに対して、L/2<dの関係に設定されていることを特徴とする。
【0044】
このように構成することによって、弁本体の水平方向流路が、3つの水平方向流路から形成され、これらの水平方向流路が、ボール弁体の回転方向に相互に一定の中心角度120°で離間するように弁本体に形成されていることになる。
【0045】
従って、差圧が作用していない状態で、弁座部材と弁座部材収容用溝部の間の隙間Lが、シール部材の圧縮量dに対して、L/2<dの関係に設定されていれば、後述するように、
図8、
図9に示したように、ボール弁体が、高圧側から低圧側(B側)に移動しても、高圧側ではシール部材の潰し代が確保され、シール部材の復元力が常に作用して、弁座部材がボール弁体に押圧された状態である。
【0046】
これにより、シール性が確保され、高圧側から低圧側(B側)に高圧流体が漏れるのが効果的に防止される。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、弁本体には、ボール弁体の回転方向に相互に一定の中心角度で離間するように形成された複数の水平方向流路と、ボール弁体の駆動軸の方向に形成された鉛直方向流路とを備えている。
【0048】
これに対応して、ボール弁体には、水平方向流路同士を連通するように形成された水平方向連通流路と、水平方向流路の一つと鉛直方向流路とを連通するように形成された鉛直方向連通流路とを備えている。
【0049】
従って、駆動軸の回転によって、ボール弁体を弁室内で回転することによって、従来の多方切換弁に比較して、格段に切り換えの種類(方向)が多くなり、様々な分野、用途に適用可能な多方切換弁を提供することができる。
【0050】
しかも、従来の多方切換弁のように、水平方向の水平方向流路のみを形成するだけでなく、鉛直方向の鉛直方向流路を形成するので、その分、スペース的に余裕ができ、ボールバルブが大型化してしまうことなく、コンパクト化することができる。
【0051】
従って、本発明の多方切換弁によれば、複雑な構成が不要で、部品点数が少なく、コストも低減でき、しかも、切り換えの種類(方向)が多く、様々な分野、用途に適用可能な多方切換弁を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
(実施例1)
【0054】
図1は、本発明の多方切換弁を4方向のボールバルブに適用した多方切換弁の一部を切欠した状態の縦断面図、
図2は、
図1のI−I線での断面図、
図3〜
図4は、本発明の多方切換弁の作動状態を説明する
図1のI−I線での断面図、
図5は、
図1のII部分の拡大図、
図6は、弁座部材が膨潤変形する状態を説明する
図1のII部分の拡大図である。
【0055】
図1〜
図4において、符号10は、全体で本発明の多方切換弁10を示している。
【0056】
図1〜
図4に示したように、本発明の多方切換弁10は、弁本体12を備えており、弁本体12の内部には、略球形状の弁室14が形成されている。この弁室14内には、例えば、直流モーター・ステッピングモータなどの駆動モーターから構成されるアクチュエーター16の駆動軸18に連結されたボール弁体20が、回転可能に装着されている。
【0057】
すなわち、
図1に示したように、ボール弁体20の上部の中心には、スリット22が形成されており、このスリット22に、駆動軸18の下端24に形成した図示しない回り止め突設部を嵌合することによって、回り止め防止部26が構成され、駆動軸18とボール弁体20とが、相互に連結されるようになっている。
【0058】
また、
図1に示したように、弁本体12の上部には、駆動軸18を挿通する挿通孔28が形成されており、弁室14に連通した状態となっている。この挿通孔28は、上部の小径部30と拡径部32とから構成されている。
【0059】
図1に示したように、小径部30内に、駆動軸18の上部に形成された2つのフランジ34が配置され、これらのフランジ34の間に、Oリングからなる2つのシール部材36を装着することによって、外部に流体が漏えいするのが防止されるようになっている。
【0060】
さらに、駆動軸18の下端24には、バネ保持フランジ38が形成されており、駆動軸18の上部に設けた保持リング40との間に、圧縮状態の圧縮バネ42を介装することによって、Oリング36を常に圧縮するように構成されている。なお、
図1中、符号11は、スラストベアリングとしてのPTFE製のリングである。
【0061】
また、
図1〜
図2に示したように、ボール弁体20の回転方向に相互に一定の中心角度(この実施例の場合には、120°)で離間するように弁本体12に形成され、弁室14に連通する複数の(この実施例では、3つの)水平方向流路44(44a〜44c)が形成されている。
【0062】
すなわち、
図1、
図2において、弁本体12の右側の側部(A側)には、第1の水平方向流路44aが形成されている。この第1の水平方向流路44aは、
図1、
図2において、弁本体12の右側(A側)の側部に形成された開口部46aに装着された弁座保持部材48aに形成されている。
【0063】
また、
図5の拡大図に示したように、弁座保持部材48aの弁室14の側の開口部の周囲には、弁座部材収容用溝部50aが形成されている。そして、弁座部材収容用溝部50aには、その底部にシール溝部52aが形成され、このシール溝部52aに、Oリング形状のシール部材54aが装着されている。
【0064】
さらに、弁座保持部材48aの弁座部材収容用溝部50aには、シール部材54aの弁室14の側に、弁座部材56aが装着されている。この弁座部材56aには、ボール弁体20に接する側に、弁座シール面58aが形成されており、シール部材54aの復元力によって、弁座部材56aがボール弁体20に押圧されシールされるように構成されている。
【0065】
すなわち、
図5に示したように、弁座部材56aと弁座部材収容用溝部50aの間には、差圧が作用していない状態で隙間Lが形成されるとともに、差圧が作用していない状態で、隙間Lが、シール部材54aの圧縮量dより小さく(L<d)設定されている。
【0066】
従って、シール部材54aの復元力が常に生じて、弁座部材56aがボール弁体20に押圧された状態であるので、シール性が良好で、たとえ、異常な高圧が印加された場合でも、高圧側から低圧側へのいわゆる裏漏れを防止し、気密性が保持され、安定した性能が得られる。
【0067】
また、
図6に示したように、弁座部材56aが膨潤変形しても、弁座部材56aと弁座部材収容用溝部50aの間には、差圧が作用していない状態で隙間Lが形成されているので(
図6(A)参照)、この弁座部材の膨潤変形をシール部材で吸収することができる(
図6(B)参照)。そのため、ボール締め付け力が異常に高くなり、作動性が悪くなるという不具合が発生しない。
【0068】
なお、
図1〜
図2に示したように、弁本体12の開口部46aと、弁座保持部材48aとの間には、シール部材60aが装着され、シール性が保持されるようになっている。
【0069】
また、同様に、
図2に示したように、弁本体12の右側の側部(A側)に対して、反時計方向に120°の中心角度離間した弁本体12の側部(B側)には、第2の水平方向流路44bが形成されている。この第2の水平方向流路44bは、
図2において、弁本体12の側部(B側)の側部に形成された開口部46bに装着された弁座保持部材48bに形成されている。
【0070】
また、弁座保持部材48bの弁室14の側の開口部の周囲には、弁座部材収容用溝部50bが形成されている。そして、弁座部材収容用溝部50bには、その底部にシール溝部52bが形成され、このシール溝部52bに、Oリング形状のシール部材54bが装着されている。
【0071】
さらに、弁座保持部材48bの弁座部材収容用溝部50bには、シール部材54bの弁室14の側に、弁座部材56bが装着されている。この弁座部材56bには、ボール弁体20に接する側に、弁座シール面58bが形成されており、シール部材54bの復元力によって、弁座部材56bがボール弁体20に押圧されシールされるように構成されている。
【0072】
また、弁座保持部材48aと同様に、弁座部材56bと弁座部材収容用溝部50bの間には、差圧が作用していない状態で隙間Lが形成されるとともに、差圧が作用していない状態で、隙間Lが、シール部材54bの圧縮量dより小さく(L<d)設定されている。
【0073】
なお、
図2に示したように、弁本体12の開口部46bと、弁座保持部材48bの間には、シール部材60bが装着され、シール性が保持されるようになっている。
【0074】
さらに、同様に、
図2に示したように、弁本体12の右側の側部(A側)に対して、時計方向に120°の中心角度離間した弁本体12の側部(C側)には、第3の水平方向流路44cが形成されている。この第3の水平方向流路44cは、
図2において、弁本体12の側部(C側)の側部に形成された開口部46cに装着された弁座保持部材48cに形成されている。
【0075】
また、弁座保持部材48cの弁室14の側開口部の周囲には、弁座部材収容用溝部50cが形成されている。そして、弁座部材収容用溝部50cには、その底部にシール溝部52cが形成され、このシール溝部52cに、Oリング形状のシール部材54cが装着されている。
【0076】
さらに、弁座保持部材48cの弁座部材収容用溝部50cには、シール部材54cの弁室14の側に、弁座部材56cが装着されている。この弁座部材56cには、ボール弁体20に接する側に、弁座シール面58cが形成されており、シール部材54cの復元力によって、弁座部材56cがボール弁体20に押圧され、弁座シール面58cでシールされるように構成されている。
【0077】
また、弁座保持部材48aと同様に、弁座部材56cと弁座部材収容用溝部50cの間には、差圧が作用していない状態で隙間Lが形成されるとともに、差圧が作用していない状態で、隙間Lが、シール部材54cの圧縮量dより小さく(L<d)設定されている。
【0078】
なお、
図2に示したように、弁本体12の開口部46cと、弁座保持部材48cの間には、シール部材60cが装着され、シール性が保持されるようになっている。
【0079】
さらに、
図1に示したように、弁本体12の底部(D側)には、弁本体12の駆動軸18の方向(鉛直方向)に、弁室14に連通する鉛直方向流路62が形成されている。
【0080】
一方、
図1〜
図2に示したように、ボール弁体20には、弁本体12に形成された水平方向流路44(44a〜44c)同士を連通するように形成された水平方向連通流路64が形成されている。
【0081】
すなわち、水平方向連通流路64は、例えば、ボール弁体20が、
図2の回転位置にある際に、弁本体12の側部(B側)の第2の水平方向流路44bと、弁本体12の側部(C側)の第3の水平方向流路44cを連通するように形成されている。
【0082】
図2に示したように、水平方向連通流路64は、例えば、ボール弁体20が、
図2の回転位置にある際に、弁本体12の側部(B側)の第2の水平方向流路44bと連通する連通流路64aと、弁本体12の側部(C側)の第3の水平方向流路44cと連通する連通流路64bとから構成されている。すなわち、
図2に示したように、連通流路64aと連通流路64bとは、略120°の中心角度で離間しており、連通している。
【0083】
また、
図1〜
図2に示したように、ボール弁体20には、弁本体12に形成された水平方向流路44(44a〜44c)の一つと鉛直方向流路62とを連通するように形成された鉛直方向連通流路66が形成されている。
【0084】
すなわち、鉛直方向連通流路66は、例えば、ボール弁体20が、
図2の回転位置にある際に、弁本体12の右側の側部(A側)の第1の水平方向流路44aと、弁本体12の底部(D側)の鉛直方向流路62とを連通するように形成されている。
【0085】
図1〜
図2に示したように、鉛直方向連通流路66は、例えば、ボール弁体20が、
図2の回転位置にある際に、弁本体12の右側の側部(A側)の第1の水平方向流路44aと連通する水平方向に形成された連通流路66aと、弁本体12の底部(D側)の鉛直方向流路62とを連通する鉛直方向の連通流路66bと、これらの連通流路66aと連通流路66bとを連通する連通流路66cとから構成されている。
【0086】
このように構成される本発明の多方切換弁10の作動について、
図2〜
図4に基づいて説明する。
【0087】
先ず、ボール弁体20が、
図2の回転位置にある際には、前述したように、ボール弁体20の水平方向連通流路64を介して、弁本体12の側部(B側)の第2の水平方向流路44bと、弁本体12の側部(C側)の第3の水平方向流路44cとが連通する。すなわち、B⇔C方向の流路が形成される。
【0088】
また、ボール弁体20が、
図2の回転位置にある際には、前述したように、ボール弁体20の鉛直方向連通流路66を介して、弁本体12の右側の側部(A側)の第1の水平方向流路44aと、弁本体12の底部(D側)の鉛直方向流路62とが連通する。すなわち、A⇔D方向の流路が形成される。
【0089】
そして、ボール弁体20が、
図2の回転位置にある状態から、アクチュエーター16を駆動させて、駆動軸18に連結されたボール弁体20を、
図2において反時計方向に120°回転させることによって、ボール弁体20が、
図3の回転位置にある状態とする。
【0090】
この状態では、
図3に示したように、ボール弁体20の水平方向連通流路64を介して、弁本体12の右側の側部(A側)の第1の水平方向流路44aと、弁本体12の側部(C側)の第3の水平方向流路44cとが連通する。すなわち、A⇔C方向の流路が形成される。
【0091】
また、ボール弁体20が、
図3の回転位置にある際には、ボール弁体20の鉛直方向連通流路66を介して、弁本体12の側部(B側)の第2の水平方向流路44bと、弁本体12の底部(D側)の鉛直方向流路62とが連通する。すなわち、B⇔D方向の流路が形成される。
【0092】
続いて、ボール弁体20が、
図3の回転位置にある状態から、アクチュエーター16を駆動させて、駆動軸18に連結されたボール弁体20を、
図3において反時計方向に120°回転させることによって、ボール弁体20が、
図4の回転位置にある状態とする。
【0093】
この状態では、
図4に示したように、ボール弁体20の水平方向連通流路64を介して、弁本体12の右側の側部(A側)の第1の水平方向流路44aと、弁本体12の側部(B側)の第2の水平方向流路44bとが連通する。すなわち、A⇔B方向の流路が形成される。
【0094】
また、ボール弁体20が、
図4の回転位置にある際には、ボール弁体20の鉛直方向連通流路66を介して、弁本体12の側部(C側)の第3の水平方向流路44cと、弁本体12の底部(D側)の鉛直方向流路62とが連通する。すなわち、C⇔D方向の流路が形成される。
【0095】
このように構成することによって、弁本体12には、ボール弁体20の回転方向に相互に一定の中心角度で離間するように形成された複数の水平方向流路44と、ボール弁体20の駆動軸18の方向に形成された鉛直方向流路62とを備えている。
【0096】
これに対応して、ボール弁体20には、水平方向流路44(44a〜44c)同士を連通するように形成された水平方向連通流路64と、水平方向流路44(44a〜44c)の一つと鉛直方向流路62とを連通するように形成された鉛直方向連通流路66とを備えている。
【0097】
従って、駆動軸18の回転によって、ボール弁体20を弁室14内で回転することによって、従来の多方切換弁に比較して、格段に切り換えの種類(方向)が多くなり、様々な分野、用途に適用可能な多方切換弁を提供することができる。
【0098】
しかも、従来の多方切換弁のように、水平方向の水平方向流路のみを形成するだけでなく、鉛直方向の鉛直方向流路62を形成するので、その分、スペース的に余裕ができ、ボールバルブが大型化してしまうことなく、コンパクト化することができる。
【0099】
従って、本発明の多方切換弁によれば、複雑な構成が不要で、部品点数が少なく、コストも低減でき、しかも、切り換えの種類(方向)が多く、様々な分野、用途に適用可能な多方切換弁を提供することができる。
【0100】
このように構成される本発明の多方切換弁10のシール状態について、以下に説明する。
【0101】
図7〜
図8は、本発明の多方切換弁のシール状態を説明する
図1のI−I線での断面図である。
【0102】
なお、
図7〜
図8は、説明の便宜上、本発明の多方切換弁10全体を、
図2の状態から反時計方向に30°回転した状態を示している。また、説明の便宜上、断面のハッチングを省略し、その代わりに、高圧流体の部分をハッチングで図示している。
【0103】
図7の状態は、
図1〜
図2の状態と同じであり、弁本体12の右側の側部(A側)の第1の水平方向流路44aと、弁本体12の底部(D側)に形成された鉛直方向流路62とが高圧側で、弁本体12の側部(B側)の第2の水平方向流路44bと、弁本体12の側部(C側)の第3の水平方向流路44cとが低圧の場合であって、下記のような状態となる。
【0104】
すなわち、弁本体12の右側の側部(A側)の第1の水平方向流路44aから導入された高圧の流体は、
図7のハッチングで示したように、ボール弁体20に形成された鉛直方向連通流路66を介して、弁本体12の底部(D側)に形成された鉛直方向流路62に流入する。
また、後述のように鉛直方向流路62には弁座部材が装着されていないため、第1の水平方向流路44aから導入された高圧の流体は、ボール弁体20と弁本体12の間の間隙Sにも流入する。
【0105】
一方、弁本体12の側部(B側)の第2の水平方向流路44bからの低圧流体は、ボール弁体20に形成された水平方向連通流路64を介して、弁本体12の側部(C側)の第3の水平方向流路44cに流入する。
【0106】
この場合、ボール弁体20と弁本体12の間の間隙Sでは、
図7のハッチングで示したように、間隙S1〜S3内が全て高圧となる。一方、弁本体12の側部(B側)の第2の水平方向流路44b、ボール弁体20に形成された水平方向連通流路64、および、弁本体12の側部(C側)の第3の水平方向流路44cは低圧である。
従って、シール部材54b、54cのそれぞれの復元力によって、高圧流体と低圧流体とを気密に分離する弁座部材56b、56cがボール弁体20に押圧される。これにより、ボール弁体20と弁座部材56b、56cの弁座シール面58b、58cとのシール性は維持され、高圧流体と低圧流体は気密に分離される。
【0107】
ところで、弁本体12の水平方向流路44の弁室14の側の開口部の周囲に、弁座部材収容用溝部50が形成され、弁座部材収容用溝部50には、弁座部材56と、弁座部材56をボール弁体20に押圧するシール部材54が装着されて、シール性が確保されているが、ボール弁体20の駆動軸18の方向に弁本体12の底部(D側)に形成された鉛直方向流路62には、このような弁座部材56と、弁座部材56をボール弁体20に押圧するシール部材54が装着されていない。
【0108】
従って、例えば、ボール弁体20が、
図1〜
図2の回転位置にある場合に、弁本体12の右側の側部(A側)の第1の水平方向流路44aが高圧側で、弁本体12の側部(B側)の第2の水平方向流路44bと、弁本体12の側部(C側)の第3の水平方向流路44cとが低圧の場合には、下記のような状態となる。
【0109】
すなわち、弁本体12の右側の側部(A側)の第1の水平方向流路44aから導入された高圧の流体は、
図7のハッチングで示したように、ボール弁体20に形成された鉛直方向連通流路66を介して、ボール弁体20と弁本体12の間の間隙Sに高圧流体が流入する。
【0110】
この場合、弁本体12の底部(D側)に形成された鉛直方向流路62には、水平方向流路44a、44b、44cに装着されたような弁座部材56と、弁座部材56をボール弁体20に押圧するシール部材54が装着されていないので、
図1の矢印Eで示したように、鉛直方向連通流路66を介して、ボール弁体20と弁本体12の間の間隙Sに入った流体が排出される。従って、ボール弁体20と弁本体12の間の間隙Sに、いわゆる液封が生じて破損損傷することがなく、安定した性能が得られる。
【0111】
一方、
図8の状態は、
図3の状態と同じであり、弁本体12の右側の側部(A側)の第1の水平方向流路44aと、弁本体12の側部(C側)の第3の水平方向流路44cとが高圧側で、弁本体12の側部(B側)の第2の水平方向流路44bと、弁本体12の底部(D側)に形成された鉛直方向流路62が低圧の場合であって、下記のような状態となる。
【0112】
すなわち、弁本体12の右側の側部(A側)の第1の水平方向流路44aから導入された高圧の流体は、
図8のハッチングで示したように、ボール弁体20に形成された水平方向連通流路64を介して、弁本体12の側部(C側)の第3の水平方向流路44cに流入する。
【0113】
一方、弁本体12の側部(B側)の第2の水平方向流路44bからの低圧流体は、ボール弁体20に形成された鉛直方向連通流路66を介して、弁本体12の底部(D側)に形成された鉛直方向流路62に流入する。また、上述のように、鉛直方向流路62には弁座部材は装着されていないため、ボール弁体20と弁本体12の間の間隙Sにも低圧流体が流入する。
【0114】
従って、この場合、弁本体12の右側の側部(A側)の第1の水平方向流路44aの高圧流体、ボール弁体20に形成された水平方向連通流路64の高圧流体、および、弁本体12の側部(C側)の第3の水平方向流路44cの高圧流体と、弁本体12の側部(B側)の水平方向流路44bの低圧流体、および、ボール弁体12と弁本体12の間の間隙Sの低圧流体との差圧による作用によって、
図8の矢印Fで示した方向にボール弁体20が移動することになる。
【0115】
従って、弁座部材56a、56cの弁座シール面58a、58cのボール弁体20に対する密着度を保たないと、高圧流体が、ボール弁体20と弁本体12の間の間隙Sに漏れて、低圧側である弁本体12の底部(D側)に形成された鉛直方向流路62、弁本体12の側部(B側)の第2の水平方向流路44bへ弁漏れが生じてしまうことになる。
【0116】
このために、本発明の多方切換弁10では、
図8、
図9に示したように、弁座部材56と弁座部材収容用溝部50との間の隙間Lと、シール部材54の圧縮量dとの関係を下記のように設定している。
なお、
図9では、説明の便宜上、弁座部材56b、56cのみを図示しており、弁座部材56aについては、省略して図示している。
【0117】
差圧が作用していない状態では、弁本体12の側部(A〜C側)では、弁座保持部材48a〜48cの弁座部材収容用溝部50a〜50cに装着された弁座部材56a〜56cは、弁座部材56a〜56cと弁座部材収容用溝部50a〜50cの間には、それぞれ、隙間Lが形成されている。
【0118】
従って、
図8の矢印Fで示した方向にボール弁体20が移動する場合、ボール弁体20の移動量は、最大で隙間Lの距離となる。
【0119】
この場合、
図8、
図9(C)に示したように、弁本体12の側部(C側)では、弁座保持部材48cの弁座部材収容用溝部50cに装着された弁座部材56bは、シール部材54cの復元力が作用していないと、弁座シール面58cがボール弁体20に押圧されなくなり漏れが生じてしまうことになる。
【0120】
すなわち、上述したように、
図8の矢印Fで示した方向にボール弁体20が移動した場合、
図9(A)、
図9(B)に示したように、弁座部材56bは、最大で隙間Lの分だけ弁座保持部材48bの方向に変位する。
【0121】
一方、
図8の矢印Fで示した方向にボール弁体20が移動した場合、弁座部材56cと弁座部材56aは、それぞれ、弁座保持部材48c、弁座保持部材48aから離れる方向に変位にする。
この場合、その最大の変位量Xは、水平方向流路44a〜44cが相互になす中心角度θ(
図8参照)に依存する。
【0122】
すなわち、ボール弁体20の移動量をAとした時、弁座部材56cと弁座部材56aの変位量Xは、X=A・cos(θ/2)の関係式で表される。
なお、θの角度は、多方切換弁であるためには、0°<θ≦180°の範囲であるのが望ましい。
【0123】
さらに、水平方向流路44が奇数個の場合(例えば、この実施例のように、水平方向流路44a〜44cの3つで、鉛直方向流路62が1つの場合)には、0<θ≦120°であるのが望ましい
この実施例の場合、水平方向流路の数は、水平方向流路44a〜44cの3つであり、中心角度θは、120°となるため、X=A・cos60°=A・1/2となる。
【0124】
この実施例の場合、ボール弁体20がボール弁体20に作用する差圧により、
図8の矢印Fで示した方向に移動すると、ボール弁体20の最大の移動量Aは、弁座部材56bと弁座保持部材48bとの隙間であるL(A=L)となる(
図9(A)、
図9(B)参照)。
従って、
図9(A)の矢印に示したように、弁座部材56bも、隙間L分だけ弁座保持部材48bの方向に変位する。
【0125】
一方、弁座部材56cと弁座部材56aも変位するが、その方向は、それぞれ、弁座部材保持部48c、弁座部材保持部48aから離れる方向となり、その変位量Xは、最大でL/2となる(
図9(A)、
図9(C)参照)。
【0126】
すなわち、水平方向流路44a〜44cが相互になす中心角度θは、120°であるため、シール部材54cの圧縮量dは、
図9(B)に示したように、Y軸方向の移動量L/2より大きくないと、弁座シール面58cがボール弁体20に押圧されなくなり漏れが生じてしまうことになる。従って、この関係を、式で表せば下記のようになる。
【0127】
すなわち、この実施例の場合、差圧が作用していない状態で、弁座部材56と弁座部材収容用溝部50の間の隙間Lが、シール部材54の圧縮量dに対して、L/2<dの関係に設定されていることが必要である。
【0128】
このように、差圧が作用していない状態で、弁座部材56と弁座部材収容用溝部50の間の隙間Lが、シール部材54の圧縮量dに対して、L/2<dの関係に設定されていれば、
図8、
図9に示したように、ボール弁体20が、
図8の矢印Fで示した方向に、高圧側から低圧側(B側)に移動しても、高圧側ではシール部材54の潰し代が確保され、シール部材54の復元力が常に作用して、弁座部材56がボール弁体20に押圧された状態である。
【0129】
従って、この関係を、一般式で表せば下記のようになる。
すなわち、
水平方向流路44が相互になす中心角度θ:θ
弁座部材56と弁座部材収容用溝部50の間の隙間:L
シール部材54の圧縮量:d
とした時、
L・cos(θ/2)<d
の関係を満たせばよい。
【0130】
これにより、シール性が確保され、高圧側から低圧側(B側およびD側)に高圧流体が漏れるのが効果的に防止される。
(実施例2)
【0131】
図10は、本発明の多方切換弁10の別の実施例の示す概略図である。
【0132】
この実施例の多方切換弁10は、
図1〜10に示した実施例1の多方切換弁10と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
なお、
図10では、説明の便宜上、簡易に図示したものであって、弁座保持部材48、弁座部材収容用溝部50、シール溝部52、シール部材54、弁座部材56などは省略して図示している。
【0133】
実施例1では、ボール弁体20の回転方向に相互に一定の中心角度(実施例1の場合には、120°)で離間するように弁本体12に形成され、弁室14に連通する複数の(実施例1では、3つの)水平方向流路44(44a〜44c)が形成されている。
【0134】
これに対して、この実施例では、ボール弁体20の回転方向に相互に一定の中心角度(実施例2の場合には、72°)で離間するように弁本体12に形成され、弁室14に連通する複数の(実施例2では、5つの)水平方向流路44(44a〜44e)が形成されている。
【0135】
従って、実施例1の場合には、ボール弁体20に1つの水平方向連通流路64が形成されているが、この実施例の場合には、ボール弁体20に2つの水平方向連通流路64が形成されている。
【0136】
なお、この実施例の多方切換弁10の場合には、水平方向流路44aが低圧で、それ以外の水平方向流路44b〜44eが高圧の時には、
図10の矢印G方向に、ボール弁体20が移動することになる。
【0137】
従って、この場合には、水平方向流路44c、水平方向流路44dから低圧側である水平方向流路44aに漏れることになる。
従って、この場合にも、上記一般式、
L・cos(θ/2)<d
の関係を満たせばよい。
【0138】
このように、本発明の多方切換弁10では、3個以上の奇数個の水平方向流路から形成することが可能である。
【0139】
このように弁本体12の水平方向流路44が、奇数個の水平方向流路44から形成されていれば、ボール弁体20に、弁本体12の水平方向流路44同士を連通する水平方向連通流路64と、弁本体12の残りの水平方向流路44の一つと弁本体12の鉛直方向流路62とを連通する鉛直方向連通流路66を形成することができる。
【0140】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、上記実施例では、水平方向流路44を、弁本体12の側部に形成された開口部46に装着された弁座保持部材48に形成したが、水平方向流路44を弁本体12に直接形成することも可能である。
【0141】
また、高圧側、低圧側、流体の流れ方向は、特に限定されるものではなく適用可能であるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。