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特開2015-2247162層構造管およびそれを用いた防火区画構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-224716(P2015-224716A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】2層構造管およびそれを用いた防火区画構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/04 20060101AFI20151117BHJP
   F16L 9/14 20060101ALI20151117BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20151117BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   F16L5/02 M
   F16L9/14
   A62C3/16 B
   E04B1/94 L
   E04B1/94 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-109857(P2014-109857)
(22)【出願日】2014年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】クボタシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】原田 潤
(72)【発明者】
【氏名】小林 毅博
【テーマコード(参考)】
2E001
3H111
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001GA65
2E001HD11
3H111AA01
3H111BA15
3H111CB03
3H111CB14
3H111DA26
3H111DB18
(57)【要約】
【構成】 2層構造管10は、外層12および内層14の2層構造を有する合成樹脂管であって、建物の防火区画100の貫通孔102に配管される。2層構造管10の内層14は、合成樹脂製の管を拡径成形することによって形成される。つまり、内層14には、形状記憶温度以上に加熱されると周方向に収縮して縮径するという性質が付与されている。火災時には、内層14の一部が炭化しつつ外層12と分離して縮径することによって、貫通孔102が閉塞される。
【効果】 熱膨張材によって形成される外付部材を用いなくても、火災時に防火区画の貫通孔を適切に閉塞できる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防火区画の貫通孔に配管されて、火災時に前記貫通孔を閉塞させる2層構造管であって、
合成樹脂製の外層、および
合成樹脂製の管を拡径成形することによって形成され、前記外層の内周面に積層される内層を備える、2層構造管。
【請求項2】
前記外層は、合成樹脂製の管を縮径成形することによって形成される、請求項1記載の2層構造管。
【請求項3】
前記内層および前記外層の少なくとも一方に難燃材が配合される、請求項1または2記載の2層構造管。
【請求項4】
前記内層および前記外層の少なくとも一方に熱膨張材が配合される、請求項1ないし3のいずれかに記載の2層構造管。
【請求項5】
防火区画の貫通孔に配管されて、火災時に前記貫通孔を閉塞させる2層構造管であって、
ポリ塩化ビニル系樹脂製の外層、および
ポリ塩化ビニル系樹脂製の管を拡径成形することによって形成され、前記外層の内周面に積層される内層を備える、2層構造管。
【請求項6】
貫通孔が形成された防火区画、および
前記貫通孔に配管される請求項1ないし5のいずれかに記載の2層構造管を備える、防火区画構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は2層構造管およびそれを用いた防火区画構造に関し、特にたとえば、建物の防火区画の貫通孔に配管されて、火災時に貫通孔を閉塞させる、2層構造管およびそれを用いた防火区画構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の防火区画の貫通孔に配管される配管部材の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の技術では、合成樹脂管の外周面に対して、膨張性防火材料(熱膨張材)からなる耐火熱膨張テープまたは区画貫通措置キット等の外付部材が取り付けられる。また、合成樹脂管としては、管周方向に延伸された配向管が用いられる。そして、火災時には、熱膨張材からなる外付部材が膨張して合成樹脂管を押し潰すことによって、貫通孔を閉塞させる。これによって、熱、火炎および煙などが防火区画の一方から他方へ到達してしまうことが阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−119608号公報 [A62C 3/16]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、合成樹脂管の外周面に熱膨張材からなる外付部材を取り付けるので、コスト高になってしまう。また、外付部材を取り付ける作業および施工管理が必要となるので、施工性も悪くなる。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、2層構造管およびそれを用いた防火区画構造を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、外付部材を用いることなく、火災時に防火区画の貫通孔を閉塞できる、2層構造管およびそれを用いた防火区画構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、防火区画の貫通孔に配管されて、火災時に貫通孔を閉塞させる2層構造管であって、合成樹脂製の外層、および合成樹脂製の管を拡径成形することによって形成され、外層の内周面に積層される内層を備える、2層構造管である。
【0008】
第1の発明では、2層構造管は、外層および内層の2層構造を有する合成樹脂管であって、建物の防火区画の貫通孔に配管される。2層構造管の内層は、合成樹脂製の管を形状記憶温度で拡径成形することによって形成される。つまり、内層には、形状記憶温度以上に加熱されると周方向に収縮して縮径するという性質が付与されている。このため、火災時には、外層と内層とが別々の独立した挙動を示し、火災の熱により内層の一部が炭化しつつ外層から分離して縮径することによって、貫通孔が閉塞される。
【0009】
第1の発明によれば、合成樹脂製の管を拡径成形することによって形成される内層を有するので、火災時には、内層の一部が炭化しつつ外層から分離して縮径することによって、貫通孔が閉塞される。したがって、熱膨張材によって形成される外付部材を用いなくても、火災時に防火区画の貫通孔を適切に閉塞できる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に従属し、外層は、合成樹脂製の管を縮径成形することによって形成される。
【0011】
第2の発明では、2層構造管の外層は、合成樹脂製の管を形状記憶温度で縮径成形することによって形成される。つまり、外層には、形状記憶温度以上に加熱されると周方向に伸長して拡径するという性質が付与されている。このため、火災時には、火災の熱により外層が拡径して、貫通孔内において2層構造管の周囲に設けられるモルタル等の充填部材の内周面に密着する。
【0012】
第2の発明によれば、2層構造管の外周面と充填部材の内周面との間に隙間が形成されることが確実に防止される。また、外層が縮径成形されていることによって、外層と内層とが別々の独立した挙動を示し易くなり、内層14が外層から分離して縮径し易くなる。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、内層および外層の少なくとも一方に難燃材が配合される。
【0014】
第3の発明によれば、2層構造管の難燃性ないし耐火性が向上され、火災時に貫通孔をより確実に閉塞させることができる。
【0015】
第4の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明に従属し、内層および外層の少なくとも一方に熱膨張材が配合される。
【0016】
第4の発明では、外層および内層の少なくとも一方には、熱膨張性黒鉛などの熱膨張材が配合される。火災時において、内層が収縮して縮径すると、内層と外層との間に隙間が生じる恐れもあるが、内外層の少なくとも一方に配合された熱膨張材が膨張することによって、両層間の隙間が閉塞される。したがって、火災時における耐火性能がより向上する。
【0017】
第5の発明は、防火区画の貫通孔に配管されて、火災時に貫通孔を閉塞させる2層構造管であって、ポリ塩化ビニル系樹脂製の外層、およびポリ塩化ビニル系樹脂製の管を拡径成形することによって形成され、外層の内周面に積層される内層を備える、2層構造管である。
【0018】
第5の発明では、2層構造管は、外層および内層の2層構造を有するポリ塩化ビニル系樹脂管であって、建物の防火区画の貫通孔に配管される。2層構造管の内層は、ポリ塩化ビニル系樹脂製の管を形状記憶温度で拡径成形することによって形成される。つまり、内層には、形状記憶温度以上に加熱されると周方向に収縮して縮径するという性質が付与されている。このため、火災時には、外層と内層とが別々の独立した挙動を示し、火災の熱により内層の一部が炭化しつつ外層から分離して縮径することによって、貫通孔が閉塞される。
【0019】
第5の発明によれば、ポリ塩化ビニル系樹脂製の管を拡径成形することによって形成される内層を有するので、火災時には、内層の一部が炭化しつつ外層から分離して縮径することによって、貫通孔が閉塞される。したがって、熱膨張材によって形成される外付部材を用いなくても、火災時に防火区画の貫通孔を適切に閉塞できる。
【0020】
また、ポリ塩化ビニル系樹脂は、耐熱性が高く、自己消火性を有する上、火災時の熱で非常に素早く形状回復する。したがって、2層構造管をポリ塩化ビニル系樹脂によって形成することによって、確実かつ速やかに貫通孔を閉塞できる。
【0021】
第6の発明は、貫通孔が形成された防火区画、および貫通孔に配管される第1ないし第5のいずれかの発明に係る2層構造管を備える、防火区画構造である。
【0022】
第6の発明によれば、第1ないし第5のいずれかの発明と同様の作用効果を奏し、熱膨張材によって形成される外付部材を用いなくても、火災時に防火区画の貫通孔を適切に閉塞できる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、合成樹脂製の管を拡径成形することによって形成される内層を有するので、火災時には、内層の一部が炭化しつつ外層から分離して縮径することによって、貫通孔が閉塞される。したがって、熱膨張材によって形成される外付部材を用いなくても、火災時に防火区画の貫通孔を適切に閉塞できる。
【0024】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明の一実施例である2層構造管を示す図解図であって、(A)は2層構造管の外観を示す斜視図であり、(B)は2層構造管の断面を拡大して示す拡大断面図である。
図2図1の2層構造管の製造方法の一例を概略的に示す図解図である。
図3図1の2層構造管を防火区画の貫通孔に配管した防火区画構造を示す図解図である。
図4】火災時において、図1の2層構造管が貫通孔を閉塞する様子を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1および図3を参照して、この発明の一実施例である2層構造管10は、外層12および内層14の2層構造を有する。2層構造管10は、排水管、給水管または通気管などを構成する配管部材として用いられ、建物の防火区画100の貫通孔102を貫通するように配管される。そして、詳細は後述するように、火災時には、貫通孔102を閉塞させることによって、防火区画100の一方側で発生した熱、火炎および煙などが貫通孔102を通過して他方側に到達することを防ぐ。
【0027】
図1に示すように、2層構造管10は、ポリ塩化ビニル系樹脂によって形成される円筒状の直管であって、外層12と、外層12の内周面全体に積層される内層14とを有する。2層構造管10は、その両端部が差口形状となっている所謂プレーン管である。
【0028】
2層構造管10の原料となるポリ塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルモノマーとそれに共重合可能なモノマーとの共重合体、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体、これらの塩化ビニルモノマー単位が塩素化されたものからなる重合体(塩素化ポリ塩化ビニル)等が挙げられる。これらのポリ塩化ビニル系樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、外層12と内層14とで、異なる組成のポリ塩化ビニル系樹脂が用いられても構わない。
【0029】
また、外層12および内層14を形成するポリ塩化ビニル系樹脂の少なくとも一方には、難燃剤が配合(添加)されてもよい。難燃剤としては、一般的に使用されている難燃剤を用いるとよく、有機系難燃剤、無機系難燃剤、またはノンハロゲン化合物系難燃剤などを適宜用いるとよい。これによって、2層構造管10の難燃性ないし耐火性が向上され、火災時に貫通孔102をより確実に閉塞させることができる。また、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤および顔料などの他の添加剤も適宜配合されてもよい。
【0030】
さらに、外層12および内層14を形成するポリ塩化ビニル系樹脂の少なくとも一方には、熱膨張性黒鉛などの熱膨張材が配合されてもよい。外層12および内層14の少なくとも一方に熱膨張材を配合しておくことにより、火災時における外層12と内層14との間の閉塞性を向上させることができる。すなわち、火災時において、後述のように内層14が収縮して縮径すると、両層12,14の間に隙間が生じる恐れもあるが、外層12および内層14の少なくとも一方に配合された熱膨張材が膨張することによって、両層12,14の間の隙間が閉塞される。したがって、耐火性能がより向上する。
【0031】
2層構造管10の寸法は、この実施例では、日本工業規格 JIS K6741で規定されるVPパイプの基準寸法に従って設定される。たとえば、2層構造管10の外径が165mm(呼び径が150mm)の場合、その厚みは9.6mmに設定され、2層構造管10の外径が114mm(呼び径が100mm)の場合、その厚みは7.1mmに設定される。ここで、外層12の厚みと内層14の厚みとの比は、1:1〜1:3に設定されることが好ましい。この実施例では、2層構造管10の外径が165mmであって、外層12の厚みが3.2mmであり、内層14の厚みが6.4mmである。
【0032】
また、2層構造管10の軸方向長さは、たとえば500〜5000mmに設定される。ただし、2層構造管10の軸方向長さは、施工現場において切管されることによって、防火区画100の厚み(つまり貫通孔102の軸方向長さ)に応じた長さに適宜調整可能である。
【0033】
外層12は、ポリ塩化ビニル系樹脂製の管を形状記憶温度(ガラス転移温度(Tg)以上の温度域)において縮径成形(縮径加工)することによって形成される。すなわち、外層12は、周方向に収縮された層であって、形状記憶温度以上に加熱されると周方向に伸長して拡径するという性質が付与されている。
【0034】
一方、内層14は、ポリ塩化ビニル系樹脂製の管を形状記憶温度において拡径成形(拡径加工)することによって形成される。すなわち、内層14は、周方向に延伸された層であって、形状記憶温度以上に加熱されると周方向に収縮して縮径するという性質が付与されている。
【0035】
ここで、ポリ塩化ビニル系樹脂によって形成される成形体は、Tg〜Tg+40℃前後の温度(形状記憶温度)で力を加えて変形され、その形状を保持したままTgより低い温度まで冷却されると、その形状で形状固定される。そして、形状固定された成形体は、形状記憶温度以上に再度加熱されると、変形前の形状に復元されるという、形状記憶機能(形状回復機能)を有することが知られている。
【0036】
この実施例では、このようなポリ塩化ビニル系樹脂の形状記憶機能を利用して、外層12および内層14に対して上記のような性質を付与し、後述のように、火災時において外層12と内層14とが別々の独立した挙動を示すようにしている。そして、外層12および内層14の2層は、火災時に別々の独立した挙動を示す程度に分割(区分け)された状態で形成されている。つまり、内層14は、外層12の内周面に対して、火災時に外層12から分離する(離れる)ことが可能な状態で積層(一体化)されている。
【0037】
続いて、図2を参照して、2層管継手10の製造方法の一例について説明する。2層管継手10の製造する際には、先ず、外層12の元となるポリ塩化ビニル系樹脂製の外管(原管)52を用意する。具体的には、押出機を用いて所定長さの円筒状の外管52を押出成形した後、この外管52を縮径加工する。押出成形するときの外管52の径は、目的とする外層12の径よりも大きくされ、たとえばその外径は175mmとされる。押出成形された外管52は、形状記憶温度(たとえば125℃)に加熱された状態で、圧延機などを用いてその全長に亘って縮径加工される。縮径加工後の外管52の外径は、165mmとされ、その厚みは、3.2mmとされる。
【0038】
また、内層14の元となるポリ塩化ビニル系樹脂製の内管(原管)54も用意しておく。具体的には、押出機を用いて所定長さの円筒状の内管54を押出成形する。押出成形するときの内管54の径は、目的とする内層14の径よりも小さくされ、たとえばその外径は140mmとされる。
【0039】
次に、図2(A)に示すように、円筒形状の割金型50内に縮径加工後の外管52を配置し、外管52の外周面を割金型50によって拘束する。続いて、図2(b)に示すように、押出成形された内管54を形状記憶温度(たとえば125℃)に加熱した状態で外管52内に配置する。そして、内管54内に圧縮空気を吹き込み、図2(c)に示すように、内管54の外周面全体が外管52の内周面全体に密着するように、内管54を拡径加工する。つまり、外管52をブロー成形型として用いて、内管54を形状記憶温度でブロー拡径する。縮径加工後の内管54の厚みは、6.4mmとされる。内管54の拡径加工後、割金型50から取り出した成形品を適宜冷却することによって、外層12の内周面全体に内層14が積層された2層管継手10が形成される。
【0040】
ただし、2層構造管10の製造方法は、図2に示す方法に限定されない。図示は省略するが、たとえば、縮径加工したポリ塩化ビニル系樹脂製の外管と、拡径加工したポリ塩化ビニル系樹脂製の内管とを別々に用意しておき、外管内に内管を嵌め込むことによって、外層12の内周面全体に内層14が積層された2層管継手10を製造してもよい。この際、外管(外層12)の内周面と内管(内層14)の外周面との層間は、たとえばポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする接着剤またはホットメルト接着剤を用いて接着しておくとよい。これによって、外層12と内層14とが確実に一体化する。
【0041】
ただし、ここで用いる接着剤は、火災時の熱でその接着性が失われるもの、つまり火災時に外層12と内層14とが互いに分離可能なものとする。たとえば、接着剤は、内層14の縮径温度(約130℃)付近で溶けるものが好ましい。これにより、火災時おいて、内層14によって外層12が引っ張られたり、内層14の縮径が妨げられたりすることが防止される。ただし、火災時の熱でその接着性が失われるものであれば、接着剤が溶融ないし変性する温度は、特に限定されるものではない。さらに、接着剤に対して熱膨張材を配合することもできる。これによって、火災時には、外層12と内層14とが分離しつつ、外層12と内層14との間の隙間が接着剤に配合した熱膨張材で閉塞されるので、耐火性能がより向上する。
【0042】
また、外層12と内層14との層間は、ある程度密着した状態であればよく、必ずしも接着剤を用いて接着する必要はない。また、接着剤を塗布する場合でも、必ずしも外層12と内層14との層間全体に塗布する必要はなく、部分的に塗布してもよい。後述のように、2層構造管10の両端部は、受口に差し込まれる等して他の配管部材と接続されるので、外層12からの内層14の抜けは防止されるからである。
【0043】
また、図示は省略するが、2層構造管10の製造方法の他の一例として、形状記憶温度において外管を縮径成形しつつ内管を拡径成形すると共に、これらを2層化する工程を押出機内において連続的に行うようにすることもできる。
【0044】
このような2層構造管10は、図3に示すように、たとえば1階空間と2階空間とを区画する防火区画(2階の床スラブ)100に形成された貫通孔102に挿通され、防火区画100を貫通する管路を構成する。この際、2層構造管10の軸方向長さは、防火区画100の厚みに応じた長さに適宜切断されることによって調整される。また、2層構造管10の両端部は、図示しないポリ塩化ビニル系樹脂製の他の配管部材の受口に差し込まれて、接着接合などによって接続される。そして、2層構造管10の外周面と貫通孔102の内周面との間には、モルタル等の充填部材104が充填される。これによって、防火区画100の貫通孔102に2層構造管10が配管された防火区画構造110が形成される。
【0045】
そして、図4に示すように、たとえば1階空間で火災が発生したときには、2層構造管10の1階空間に配管される部分は、焼失または炭化される。
【0046】
一方、貫通孔102内に配管される部分においては、外層12が縮径成形されていることから、外層12の下端部は、火災の熱により縮径成形前の元の形状に戻ろうと拡径して(或いは拡径しようとして拡径方向に力が作用して)、充填部材104の内周面に密着する。これよって、2層構造管10の外周面と充填部材104内周面との間に隙間が形成されることが確実に防止される。
【0047】
また、内層14が拡径成形されていることから、内層14の下端部は、火災の熱により拡径成形前の元の形状に戻ろうとして、外層12から分離して縮径(小径化)する。また、内層14の下端部は、火災の熱により炭化層30となって体積膨張しつつ不燃化する。これによって、貫通孔102が閉塞される。
【0048】
すなわち、2層構造管10は、火災時には、外層12と内層14とが別々の独立した挙動を示し、内層14の一部が炭化しつつ外層12から分離して縮径することによって、貫通孔102を適切に閉塞させる。
【0049】
この実施例によれば、ポリ塩化ビニル系樹脂製の管(内管54)を拡径成形することによって形成される内層14を有するので、火災時には、内層14の一部が炭化しつつ外層12から分離して縮径することによって、貫通孔102が閉塞される。したがって、熱膨張材によって形成される外付部材を用いなくても、火災時に防火区画100の貫通孔102を適切に閉塞でき、防火区画100の一方側で発生した熱、火炎および煙などが貫通孔102を通過して他方側に到達することを防止できる。
【0050】
また、ポリ塩化ビニル系樹脂製の管(外管52)を縮径成形することによって形成される外層12を有するので、火災時には、外層12が拡径して充填部材104の内周面に密着する。これによって、2層構造管10の外周面と充填部材104内周面との間に隙間が形成されることが確実に防止される。また、外層12が縮径成形されていることによって、外層12と内層14とが別々の独立した挙動を示し易くなり、内層14が外層から分離して縮径し易くなる。
【0051】
さらに、施工現場における配管時には、2層構造管10は、通常の配管部材と同様に配管するだけでよいので、施工性および施工管理性に優れる。特に、配管部材の外周面に熱膨張材からなる外付部材を取り付ける作業が不要となるので、施工性に優れる。また、部材コストも低減される。
【0052】
なお、上述の実施例では、2層構造管10は、両端部が差口であるプレーン管であったが、これに限定されない。2層構造管10の一方端部または両端部には、接着受口またはゴム輪受口などの受口が形成されていてもよい。2層構造管10に受口を形成する場合には、受口部分を含む2層構造管10の全長を2層構造としてもよいし、受口部分以外の本体部分(直管部分)のみを2層構造とし、受口部分は内層14を形成せずに外層12のみの1層としてもよい。ただし、受口を有する2層構造管10を配管する際には、受口部分が貫通孔102内に少し入り込んでいても構わないが、基本的には、貫通孔102の全長に亘って2層構造管10の受口部分以外の本体部分がくるように、2層構造管10を配管する必要がある。受口部分には他の配管部材が差し込まれるため、受口部分以外の本体部分が、実質的に貫通孔102を閉塞させる機能を発揮する部分となるからである。
【0053】
また、上述の実施例では、2層構造管10の外層12を縮径成形(縮径加工)することによって形成したが、外層12は、必ずしも縮径成形されている必要はない。外層12を縮径成形しない場合、火災時には、外層12は、その形状を保持して内層14とは異なる独立した挙動を示す。そして、内層14の一部が炭化しつつ外層12から分離して縮径することによって、貫通孔102が閉塞される。
【0054】
さらに、上述の実施例では、2層構造管10の内層14を拡径成形する、つまり周方向にのみ延伸するようにしたが、内層14は、周方向に加えて軸方向に延伸することもできる。内層14を軸方向に延伸成形しておくことによって、内層14は、火災時の熱で軸方向にも収縮するようになる。内層14が軸方向に収縮することによって、内層14の径方向の厚みが増すので、火災時に貫通孔102をより確実に閉塞させることができる。同様に、2層構造管10の外層12も軸方向に延伸成形しておくとよい。火災時の熱で外層12が軸方向に収縮することによって、外層12の径方向の厚みが増すので、火災時に貫通孔102をより確実に閉塞させることができる。
【0055】
さらにまた、上述の実施例では、2層構造管10の外層12および内層14をポリ塩化ビニル系樹脂によって形成したが、これに限定されない。外層12および内層14の一方または双方は、加熱により形状回復が可能であってかつ難燃性を有する合成樹脂であれば、ポリ塩化ビニル系樹脂以外の合成樹脂で形成されてもよい。たとえば、外層12および内層14の一方または双方は、難燃性ポリエチレンによって形成されてもよい。
【0056】
ただし、ポリ塩化ビニル系樹脂は、耐熱性が高く、自己消火性を有する上、火災時の熱で非常に素早く形状回復するので、2層構造管10の外層12および内層14は、ポリ塩化ビニル系樹脂によって形成することが好ましい。2層構造管10をポリ塩化ビニル系樹脂によって形成することによって、確実かつ速やかに貫通孔102を閉塞させることができる。
【0057】
また、上述の実施例では、防火区画100として床スラブを例示したが、防火区画100は、隣り合う部屋同士を仕切る壁であってもよい。この場合には、2層構造管10は、横方向に延びるように配管される。
【0058】
なお、2層構造管10は、単独で貫通孔102を閉塞できるものであるが、2層構造管10の外周面に熱膨張材からなる外付部材を取り付けても構わない。
【0059】
また、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 …2層構造管
12 …外層
14 …内層
100 …防火区画
102 …貫通孔
104 …充填部材(モルタル)
110 …防火区画構造
図1
図2
図3
図4