特開2015-224744(P2015-224744A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-224744ラチェット型ワンウェイクラッチ及び爪部材の設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-224744(P2015-224744A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】ラチェット型ワンウェイクラッチ及び爪部材の設定方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/12 20060101AFI20151117BHJP
【FI】
   F16D41/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-110910(P2014-110910)
(22)【出願日】2014年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000102784
【氏名又は名称】NSKワーナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】河合 勉
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 真弘
(72)【発明者】
【氏名】河合 総介
(57)【要約】
【課題】爪部材の挙動を安定させ、ラチェット型ワンウェイクラッチの噛合い性能を向上させることによって、ラチェット型ワンウェイクラッチの耐久性を向上させる。
【解決手段】内周にポケットを有する外輪と、外周にノッチを有する内輪と、ポケット内に収納され内輪のノッチに嵌合し内輪と外輪との間でトルクを伝達し、ノッチに嵌合する先端部と円形部とを有する爪部材と、爪部材を内輪に対して付勢するスプリングとを有するラチェット型ワンウェイクラッチにおける爪部材の設定方法であって、ポケットは爪部材の円形部が嵌合する円弧部を有し、円弧部の角度を180度以上、円弧部の開口部の両終端間の線分と爪部材の円形部の中心と先端部が前記ノッチに嵌合する接点とがなる角度を90度より大きく、かつスプリングの中心軸が、円弧部の中心とラチェット型ワンウェイクラッチの中心とを結ぶ線分とがなす角度を45度より大きく設定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周にポケットを有する外輪と、前記外輪の内径側に前記外輪と同軸上に配置され、外周にノッチを有する内輪と、前記ポケット内に収納され前記内輪のノッチに嵌合し前記内輪と前記外輪との間でトルクを伝達し、前記ノッチに嵌合する先端部と円形部とを有する爪部材と、前記爪部材を前記内輪に対して付勢するスプリングとを有するラチェット型ワンウェイクラッチにおける爪部材の設定方法であって、
前記ポケットは前記爪部材の前記円形部が嵌合する円弧部を有し、前記円弧部の角度を180度以上、前記円弧部の開口部の両終端間の線分と前記爪部材の円形部の中心と前記先端部が前記ノッチに嵌合する接点とがなる角度を90度より大きく、かつ前記スプリングの中心軸が、前記円弧部の中心とラチェット型ワンウェイクラッチの中心とを結ぶ線分とがなす角度を45度より大きく設定することを特徴とする爪部材の設定方法。
【請求項2】
内周にポケットを有する外輪と、前記外輪の内径側に前記外輪と同軸上に配置され、外周にノッチを有する内輪と、前記ポケット内に収納され前記内輪のノッチに嵌合し前記内輪と前記外輪との間でトルクを伝達する爪部材と、前記爪部材を前記内輪に対して付勢するスプリングとを有するラチェット型ワンウェイクラッチであって、
前記爪部材が、請求項1に記載の設定方法によって設定されていることを特徴とするラチェット型ワンウェイクラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、農機、建機、工業機械などの動力伝達部に使用され、バックストップなどの機能を有し、ロック機構にラチェット(爪部材)を用いたラチェット型ワンウェイクラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動変速機に用いられるワンウェイクラッチは、相対回転する外輪及び内輪を有し、外輪と内輪との間でトルクを伝達するスプラグやローラなどが外輪または内輪の軌道面に設けたカム面に噛み合うことで、一方向のみに回転トルクを伝達している。また、逆方向では空転する構成となっている。
【0003】
このようなワンウェイクラッチの中で、外輪と内輪との間でトルクを伝達するトルク伝達部材としてラチェットを用いたラチェット型ワンウェイクラッチがある(特許文献1)。ラチェット型ワンウェイクラッチは、内周にポケットを有する外輪と、外輪と同軸上に配置され外周にノッチを有する内輪と、前記ポケットに収納され内輪のノッチに嵌合してワンウェイクラッチをロック状態にし、内輪と外輪との間でトルクを伝達させる爪部材と、爪部材を内輪へ付勢するスプリングとによって構成される。
【0004】
以上の構成のラチェット型ワンウェイクラッチは、ワンウェイクラッチが一方向に回転すると、爪部材が内輪の外周に対してフリーで摺動するので、外輪と内輪とは相対的に空転する。次に、ワンウェイクラッチが他方向に回転しようとすると、爪部材がノッチに嵌合し、ワンウェイクラッチがロック状態になり、内外輪間でトルクを伝達できるようになる。
【0005】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−208104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ラチェット型ワンウェイクラッチにおいてトルクを伝達する爪部材の挙動を安定化させることが望まれている。例えば、空転時において、爪部材がポケットの奥部から抜け出そうとすることがあるが、これを防止する対策が求められていた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、爪部材の挙動を安定させ、ラチェット型ワンウェイクラッチの噛合い性能を向上させることによって、ラチェット型ワンウェイクラッチの耐久性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のラチェット型ワンウェイクラッチの爪部材の設定方法は、
内周にポケットを有する外輪と、前記外輪の内径側に前記外輪と同軸上に配置され、外周にノッチを有する内輪と、前記ポケット内に収納され前記内輪のノッチに嵌合し前記内輪と前記外輪との間でトルクを伝達し、前記ノッチに嵌合する先端部と円形部とを有する爪部材と、前記爪部材を前記内輪に対して付勢するスプリングとを有するラチェット型ワンウェイクラッチにおける爪部材の設定方法であって、
前記ポケットは前記爪部材の前記円形部が嵌合する円弧部を有し、前記円弧部の角度を180度以上、前記円弧部の開口部の両終端間の線分と前記爪部材の円形部の中心と前記先端部が前記ノッチに嵌合する接点とがなる角度を90度より大きく、かつ前記スプリングの中心軸が、前記円弧部の中心とラチェット型ワンウェイクラッチの中心とを結ぶ線分とがなす角度を45度より大きく設定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下のような効果が得られる。
爪部材の挙動を安定させ、爪部材がポケットから抜け出すことを防止できる。これにより、ラチェット型ワンウェイクラッチの噛合い性能を向上させることによって、ラチェット型ワンウェイクラッチの耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例が適用されるラチェット型ワンウェイクラッチの正面図である。
図2】本発明の実施例を示す、スプリング、爪部材、内外輪の関係を拡大して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。尚、図面において同一部分は同一符号で表してある。
【0013】
図1は、本発明の実施例が適用されるラチェット型ワンウェイクラッチの正面図である。
【0014】
ラチェット型ワンウェイクラッチ30は、内周にポケット4を有する外輪1と、外輪1の内径側に外輪1と同軸上に配置され、外周にノッチ7を有する内輪2とを備えている。内輪2側に開口したポケット4内には内輪2のノッチ7に嵌合し、外輪1と内輪2との間でトルクを伝達する爪部材3が揺動可能に収容されている。
【0015】
爪部材3の先端部8付近でポケット4に開口し径方向外方へ延在するスプリングポケット6には、爪部材3を内輪2に対して付勢するスプリング5が収容されている。コイルスプリングであるスプリング5は、その軸方向の一端部で爪部材3の先端部8に接触し、爪部材3を内径側に付勢している。
【0016】
爪部材3、ポケット4及びスプリングポケット6は、それぞれ円周方向等分に複数個設けられているが、この個数は任意であり、トルク等との関係で必要に応じて増加・減少することができる。但し、円周方向に等ピッチで設けることが好ましい。
【0017】
一方、内輪2は、内周側に設けるスプライン(不図示)によって固定されたシャフト(不図示)と嵌合している。ノッチ7は軸方向に延在し、その軸方向長さは爪部材3の軸方向幅に対応している。ノッチ7の個数は、爪部材3の個数等に応じて任意に設定できることは言うまでもない。
【0018】
以上のように構成された、ラチェット型ワンウェイクラッチ30では、外輪1は内輪2に対して図1において右回転はできるが、爪部材3とノッチ7との嵌合により左回転はできないという機能を発揮する。すなわち、右方向には空転できるが、左方向ではラチェット型ワンウェイクラッチ30がロック状態になり、内外輪間でトルクを伝達できるようになる。ロック状態では、爪部材3の先端部8の嵌合端部8a(図2)がノッチ7の嵌合凹部9(図2)に嵌合している。
【0019】
以上説明したラチェット型ワンウェイクラッチ30に基づき、本発明の各実施例を説明する。
【0020】
図2は、スプリング、爪部材、内外輪の関係を拡大して示す模式図であり、本発明の実施例を示している。
【0021】
図2に示すように、爪部材3はノッチ7に嵌合する先端部8と円形部10とを有し、ポケット4は爪部材3の円形部10が嵌合する円弧部11を有している。円弧部11の開口部OPは両終端間の線分A−A’を画成している。スプリング5の軸方向の端部にはガイド部材15が設けられ、スプリング5が爪部材3に対して安定して付勢力を与えられるように、スプリング5を案内している。
【0022】
爪部材3、特に円形部10が円弧部11から抜け出そうとする抜け出し方向Dは線分A−A’に対してほぼ垂直である。また、爪部材3の先端部8は、接点Pでノッチ7の嵌合凹部9に接触している。
【0023】
ここで、ポケット4の円弧部11の開口部OPの角度をα、円形部10の中心Oと接点Pとがなす角度をβ、スプリング5の中心軸Xと内輪2の中心線Yとがなす角度(スプリング5の配置角度)をγとする。
【0024】
爪部材3の抜け出しを防止して挙動を安定させるためには、爪部材3にかかわる上記各角度を以下のように設定する。
(1) α≧180°
(2) β>90°
(3) γ>45°
このように設定することで、スプリング5が爪部材3を付勢する力Fの分力f’が大きく設定でき、分力f’で爪部材3を抜け方向とは逆の方向に押し付けことができる。これにより、爪部材3をポケット4の円弧部11方向に押し付ける力が働くため、爪部材3のポケット4からの抜け出しを防止できる。
【符号の説明】
【0025】
1 外輪
2 内輪
3 爪部材
4 ポケット
5 スプリング
6 スプリングポケット
7 ノッチ
8 先端部
8a 嵌合端部
9 嵌合凹部
10 円形部
11 円弧部
15 ガイド部材
図1
図2