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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-224777(P2015-224777A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】自動変速機の変速制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20151117BHJP
   F16H 59/18 20060101ALI20151117BHJP
   F16H 59/44 20060101ALI20151117BHJP
   F16H 61/688 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   F16H61/02
   F16H59/18
   F16H59/44
   F16H61/688
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-111978(P2014-111978)
(22)【出願日】2014年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】江藤 正
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 吉晴
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 広規
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA04
3J552MA05
3J552MA13
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA20
3J552QC03
3J552RA08
3J552RA11
3J552SA26
3J552SA27
3J552SB10
3J552SB38
3J552TB02
3J552TB13
3J552UA03
3J552VB01W
3J552VD02W
(57)【要約】
【課題】 簡単な変速制御で飛び変速の変速時間を短縮して変速応答性を高める。
【解決手段】 ツインクラッチ式の自動変速機において、現変速段から目標変速段に同じ入力軸11,12間で飛び変速するとき、プリシフトのための待機変速段が現変速段および目標変速段間にない場合であっても、現変速段において係合している第1、第2クラッチC1,C2の一方を係合解除するとともに現変速段において係合解除している第1、第2クラッチC1,C2の他方を滑らせながら係合し、第1、第2クラッチC1,C2の一方が係合解除している間に現変速段のシンクロ装置を係合解除して目標変速段のシンクロ装置S1〜S4を係合した後に、第1、第2クラッチC1,C2の他方を係合解除して第1、第2クラッチC1,C2の一方を係合するので、シンクロ装置S1〜S4の架け替えを1回行うだけで同じ入力軸11,12間でトルク抜けのない飛び変速が確実に可能となり、簡単な変速制御で変速時間を大幅に短縮して変速応答性を高めることができる。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に平行に配置される第1入力軸(11)、第2入力軸(12)および出力軸(13)と、駆動源(E)の駆動力を前記第1、第2入力軸(11,12)にそれぞれ伝達可能な第1、第2クラッチ(C1,C2)と、前記第1、第2入力軸(11,12)および前記出力軸(13)間で複数のシンクロ装置(S1〜S4)の選択操作により複数の変速段を確立可能な複数のギヤ列とを備え、
前記第1、第2クラッチ(C1,C2)の一方のクラッチの係合により駆動力が伝達される前記第1、第2入力軸(11,12)の一方の入力軸と前記出力軸(13)との間に所定の現変速段を確立し、車両の運転状態および運転者の意思に基づいて前記現変速段と異なり、かつ前記一方のクラッチが係合する目標変速段が予測されたとき、所定の前記シンクロ装置(S1〜S4)を係合することにより、現在駆動力が伝達されていない前記第1、第2入力軸(11,12)の他方の入力軸と前記出力軸(13)とを前記現変速段および前記目標変速段と異なる待機変速段のギヤ列で接続した状態で待機するプリシフト操作を行う自動変速機の変速制御装置であって、
前記待機変速段が前記現変速段および前記目標変速段間にない場合に、前記一方のクラッチを係合解除するとともに前記第1、第2クラッチ(C1,C2)の他方のクラッチを滑らせながら係合し、前記一方のクラッチが係合解除している間に前記現変速段のシンクロ装置(S1〜S4)を係合解除して前記目標変速段のシンクロ装置(S1〜S4)を係合した後に、前記他方のクラッチを係合解除して前記一方のクラッチを係合することを特徴とする自動変速機の変速制御装置。
【請求項2】
アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段(M1)と、車速を検出する車速検出手段(M2)と、アクセル開度および車速に基づいて前記目標変速段を予測する目標変速段予測手段(M3)とを備え、前記変速制御は前記目標変速段が前記現変速段よりも低速側の変速段である場合に実行されることを特徴とする、請求項1に記載の自動変速機の変速制御装置。
【請求項3】
現変速段を表示可能な表示手段(D)を備え、前記表示手段(D)は前記変速制御中に前記待機変速段を表示しないことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の自動変速機の変速制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に平行に配置される第1入力軸、第2入力軸および出力軸と、駆動源の駆動力を前記第1、第2入力軸にそれぞれ伝達可能な第1、第2クラッチと、前記第1、第2入力軸および前記出力軸間で複数のシンクロ装置の選択操作により複数の変速段を確立可能な複数のギヤ列とを備える自動変速機の変速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかるツインクラッチ式の自動変速機において、連続しない二つの変速段間で飛び変速を行う場合、経由する変速段が異なる複数の変速経路の何れを選択するかに応じて目標変速段に到達するまでの変速時間に差が出るため、各変速経路について変速時間を推定するとともに、その変速時間に応じて所定の変速経路を選択することで変速応答性の向上を図るものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−194893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のものは、飛び変速の複数の変速経路のそれぞれについて変速時間を推定する必要があるため、その演算量が膨大になって演算時間や演算装置の負荷が増加するという問題があった。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、簡単な変速制御で飛び変速の変速時間を短縮して変速応答性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、相互に平行に配置される第1入力軸、第2入力軸および出力軸と、駆動源の駆動力を前記第1、第2入力軸にそれぞれ伝達可能な第1、第2クラッチと、前記第1、第2入力軸および前記出力軸間で複数のシンクロ装置の選択操作により複数の変速段を確立可能な複数のギヤ列とを備え、前記第1、第2クラッチの一方のクラッチの係合により駆動力が伝達される前記第1、第2入力軸の一方の入力軸と前記出力軸との間に所定の現変速段を確立し、車両の運転状態および運転者の意思に基づいて前記現変速段と異なり、かつ前記一方のクラッチが係合する目標変速段が予測されたとき、所定の前記シンクロ装置を係合することにより、現在駆動力が伝達されていない前記第1、第2入力軸の他方の入力軸と前記出力軸とを前記現変速段および前記目標変速段と異なる待機変速段のギヤ列で接続した状態で待機するプリシフト操作を行う自動変速機の変速制御装置であって、前記待機変速段が前記現変速段および前記目標変速段間にない場合に、前記一方のクラッチを係合解除するとともに前記第1、第2クラッチの他方のクラッチを滑らせながら係合し、前記一方のクラッチが係合解除している間に前記現変速段のシンクロ装置を係合解除して前記目標変速段のシンクロ装置を係合した後に、前記他方のクラッチを係合解除して前記一方のクラッチを係合することを特徴とする自動変速機の変速制御装置が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、アクセル開度および車速に基づいて前記目標変速段を予測する目標変速段予測手段とを備え、前記変速制御は前記目標変速段が前記現変速段よりも低速側の変速段である場合に実行されることを特徴とする自動変速機の変速制御装置が提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、現変速段を表示可能な表示手段を備え、前記表示手段は前記変速制御中に前記待機変速段を表示しないことを特徴とする自動変速機の変速制御装置が提案される。
【0009】
尚、実施の形態の第1出力軸13は本発明の出力軸に対応し、実施の形態の3速−5速シンクロ装置S1、7速−9速シンクロ装置S2、2速−4速シンクロ装置S3および6速−8速シンクロ装置S4は本発明のシンクロ装置に対応し、実施の形態のエンジンEは本発明の駆動源に対応する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、ツインクラッチ式の自動変速機において、現変速段から目標変速段に同じ入力軸間で飛び変速するとき、プリシフトのための待機変速段が現変速段および目標変速段間にない場合であっても、現変速段において係合している一方のクラッチを係合解除するとともに現変速段において係合解除している他方のクラッチを滑らせながら係合し、一方のクラッチが係合解除している間に現変速段のシンクロ装置を係合解除して目標変速段のシンクロ装置を係合した後に、他方のクラッチを係合解除して一方のクラッチを係合するので、シンクロ装置の架け替えを1回行うだけで同じ入力軸間でトルク抜けのない飛び変速が確実に可能となり、簡単な変速制御で変速時間を大幅に短縮して変速応答性を高めることができる。
【0011】
また請求項2の構成によれば、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、アクセル開度および車速に基づいて目標変速段を予測する目標変速段予測手段とを備え、前記変速制御は目標変速段が現変速段よりも低速側の変速段である場合に実行されるので、スポーツタイプの自動車において急加速すべくキックダウンを行った場合に、トルク抜けのない素早いシフトダウンを可能にすることができる。
【0012】
また請求項3の構成によれば、現変速段を表示可能な表示手段を備え、表示手段は変速制御中に待機変速段を表示しないので、変速中に現変速段および目標変速段間にない変速段が表示されて運転者に違和感を与えるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ツインクラッチ式のトランスミッションのスケルトン図。(実施の形態)
図2】変速制御系のブロック図。(実施の形態)
図3】トランスミッションのシフトマップ。(実施の形態)
図4】6速変速段→4速変速段の飛び変速時のタイムチャート。(従来例)
図5】6速変速段→4速変速段の飛び変速時のタイムチャート。(実施の形態)
図6】7速変速段→4速変速段の飛び変速時のタイムチャート。(従来例)
図7】7速変速段→4速変速段の飛び変速時のタイムチャート。(実施の形態)
図8】トランスミッションの変速制御のフローチャート。(実施の形態)
図9】表示手段の表示制御のフローチャート。(実施の形態)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1図9に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1に示すように、前進9速、後進1速のツインクラッチ式のトランスミッションTは、相互に平行に配置された第1入力軸11、第2入力軸12、第1出力軸13、第2出力軸14およびアイドル軸15を備える。エンジンEにフライホイール16を介して接続された主入力軸17は、第1クラッチC1を介して第1入力軸11に接続されるとともに、第2クラッチC2を介して第1入力軸1に相対回転自在に支持したドライブギヤ18に接続される。ドライブギヤ18はアイドル軸15に固設したアイドルギヤ19に噛合し、アイドルギヤ19は第2入力軸12に固設したドリブンギヤ20に噛合する。従って、第1クラッチC1を係合すると、エンジンEの駆動力はフライホイール16→主入力軸17→第1クラッチC1の経路で第1入力軸11に伝達され、第2クラッチC2を係合すると、エンジンEの駆動力はフライホイール16→主入力軸17→第2クラッチC2→ドライブギヤ18→アイドルギヤ19→ドリブンギヤ20の経路で第2入力軸12に伝達される。
【0016】
第1入力軸11に固設した1速入力ギヤ21が第1出力軸13にワンウェイクラッチ22を介して支持した1速出力ギヤ23に噛合する。第1入力軸11には3速入力ギヤ24および5速入力ギヤ25が相対回転自在に支持されており、これら3速入力ギヤ24および5速入力ギヤ25は3速−5速シンクロ装置S1を介して第1入力軸11に選択的に結合可能である。また第1入力軸11には7速入力ギヤ26および9速入力ギヤ27が相対回転自在に支持されており、これら7速入力ギヤ26および9速入力ギヤ27は7速−9速シンクロ装置S2を介して第1入力軸11に選択的に結合可能である。
【0017】
第2入力軸12には2速入力ギヤ28および4速入力ギヤ29が相対回転自在に支持されており、これら2速入力ギヤ28および4速入力ギヤ29は2速−4速シンクロ装置S3を介して第2入力軸12に選択的に結合可能である。また第2入力軸12には6速入力ギヤ30および8速入力ギヤ31が相対回転自在に支持されており、これら6速入力ギヤ30および8速入力ギヤ31は6速−8速シンクロ装置S4を介して第2入力軸12に選択的に結合可能である。
【0018】
第1出力軸13には、3速入力ギヤ24に噛合する3速−リバース出力ギヤ32が固設されるとともに、2速入力ギヤ28に噛合する2速出力ギヤ33が固設される。アイドル軸15に相対回転自在に支持されてリバースシンクロ装置S5により該アイドル軸15に結合可能なリバースアイドルギヤ34が3速−リバース出力ギヤ32に噛合する。
【0019】
5速入力ギヤ25および4速入力ギヤ29は共通の4速−5速出力ギヤ35に噛合し、7速入力ギヤ26および6速入力ギヤ30は共通の6速−7速出力ギヤ36に噛合し、9速入力ギヤ27および8速入力ギヤ31は共通の8速−9速出力ギヤ37に噛合する。
【0020】
3速−リバース出力ギヤ32は第2出力軸14に固設したファイナルギヤ38に噛合し、第2出力軸14に固設した第1ベベルギヤ39がディファレンシャルギヤDに設けた第2ベベルギヤ40に噛合し、ディファレンシャルギヤDから延びるドライブシャフト41,41に左右の駆動輪W,Wが接続される。
【0021】
従って、3速−5速シンクロ装置S1〜リバースシンクロ装置S5を全て係合解除するとワンウェイクラッチ22が係合して1速変速段が確立する。また2速−4速シンクロ装置S3で2速入力ギヤ28を第2入力軸12に結合すると2速変速段が確立し、3速−5速シンクロ装置S1で3速入力ギヤ24を第1入力軸11に結合すると3速変速段が確立し、2速−4速シンクロ装置S3で4速入力ギヤ29を第2入力軸12に結合すると4速変速段が確立し、3速−5速シンクロ装置S1で5速入力ギヤ25を第1入力軸11に結合すると5速変速段が確立し、6速−8速シンクロ装置S4で6速入力ギヤ30を第2入力軸12に結合すると6速変速段が確立し、7速−9速シンクロ装置S2で7速入力ギヤ26を第1入力軸11に結合すると7速変速段が確立し、6速−8速シンクロ装置S4で8速入力ギヤ31を第2入力軸12に結合すると8速変速段が確立し、7速−9速シンクロ装置S2で9速入力ギヤ27を第1入力軸11に結合すると9速変速段が確立する。そしてリバースシンクロ装置S5でリバースアイドルギヤ34をアイドル軸15に結合するとリバース変速段が確立する。
【0022】
図2に示すように、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段M1と、車速を検出する車速検出手段M2とが目標変速段推定手段M3に接続されており、目標変速段推定手段M3はアクセル開度および車速を図3の変速マップに適用することで、現変速段から変速する目標変速段を推定する。トランスミッションTの油圧回路を含む変速制御手段M4は、現変速段から目標変速段への変速を実行すべく、3速−5速シンクロ装置S1、7速−9速シンクロ装置S2、2速−4速シンクロ装置S3、6速−8速シンクロ装置S4、第1クラッチC1および第2クラッチC2の作動を制御するとともに、運転席のメーターパネルに設けられた表示装置Dに現在確立している変速段を表示する。
【0023】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0024】
本実施の形態のツインクラッチ式のトランスミッションTでは、1速変速段〜9速変速段のうち、奇数変速段である1速変速段、3速変速段、5速変速段、7速変速段および9速変速段の確立時には第1クラッチC1が係合し、偶数変速段である2速変速段、4速変速段、6速変速段および8速変速段の確立時には第2クラッチC2が係合する。連続する変速段間の順次変速時にはトルク抜けのないクラッチtoクラッチ変速が可能になる。
【0025】
例えばシフトアップの一例として2速変速段から3速変速段への順次変速の手順を説明すると、2速−4速シンクロ装置S3で2速入力ギヤ28を第2入力軸12に結合し、第2クラッチC2が係合して2速変速段が確立した状態において、予め3速−5速シンクロ装置S1で3速入力ギヤ24を第1入力軸11に結合するプリシフトを行っておき、この状態から第2クラッチC2を係合解除しながら第1クラッチC1を係合することで、トルク伝達を途切れさせることなく2速変速段から3速変速段へシフトアップすることができる。
【0026】
また、例えばシフトダウンの一例として5速変速段から4速変速段への順次変速の手順を説明すると、3速−5速シンクロ装置S1で5速入力ギヤ25を第1入力軸11に結合し、第1クラッチC1が係合して5速変速段が確立した状態において、予め2速−4速シンクロ装置S3で4速入力ギヤ29を第2入力軸12に結合するプリシフトを行っておき、この状態から第1クラッチC1を係合解除しながら第2クラッチC2を係合することで、トルク伝達を途切れさせることなく5速変速段から4速変速段へシフトダウンすることができる。
【0027】
以上、変速段が連続する連続変速の手順について説明したが、変速段が連続しない飛び変速であっても、偶数変速段と奇数変速段との間の飛び変速であれば、同様の手順でクラッチtoクラッチ変速が可能である。即ち、第2クラッチC2が係合して偶数変速段が確立した状態で、目標とする奇数変速段をプリシフトしておき、第2クラッチC2を係合解除して第1クラッチC1を係合すれば、偶数変速段から奇数変速段へのクラッチtoクラッチ変速が可能になる。同様に、第1クラッチC1が係合して奇数変速段が確立した状態で、目標とする偶数変速段をプリシフトしておき、第1クラッチC1を係合解除して第2クラッチC2を係合すれば、奇数変速段から偶数変速段へのクラッチtoクラッチ変速が可能になる。
【0028】
しかしながら、偶数変速段から偶数変速段への飛び変速、あるいは奇数変速段から奇数変速段への飛び変速の場合には、その手順がもっと複雑になる。
【0029】
図4は、偶数変速段である6速変速段から偶数変速段である4速変速段への飛び変速の従来の手順を示すタイムチャートである。このような状況は、図3の変速マップにおいて、所定の車速および所定のアクセル開度で6速変速段が確立しているA点から、運転者がアクセルをB点まで急激に踏み込むキックダウン操作を行った場合に発生する。
【0030】
6速−8速シンクロ装置S4により6速入力ギヤ30が第2入力軸12に結合されて第2クラッチC2が係合した6速変速段の確立状態において、プリシフトにより7速−9速シンクロ装置S2により7速入力ギヤ26が第1入力軸11に結合されていると仮定する。この場合の6速変速段→4速変速段の飛び変速は、5速変速段を経由して行われる。即ち、キックダウンに伴って現在係合している第2クラッチC2を滑らせながら7速−9速シンクロ装置S2で7速入力ギヤ26を第1入力軸11から切り離すとともに3速−5速シンクロ装置S1で5速入力ギヤ25を第1入力軸11に結合するギヤ架け替えを行った後、更に6速−8速シンクロ装置S4で6速入力ギヤ30を第2入力軸12から切り離すとともに2速−4速シンクロ装置S3で4速入力ギヤ29を第2入力軸12に結合するギヤ架け替えを行う間に、第2クラッチC2を係合解除するとともに第1クラッチC1を滑らせて5速変速段により駆動力の途切れを防止し、最終的に第2クラッチC2を係合して第1クラッチC1を係合解除することで目標の4速変速段を確立する。
【0031】
以上のように、従来の飛び変速の制御は2回のギヤ架け替えを必要とするため、長い時間を必要として変速応答性が悪いという問題があった。
【0032】
図5は、図4の従来例に対応する実施の形態のタイムチャートであり、偶数変速段である6速変速段から偶数変速段である4速変速段への飛び変速の手順を示している。
【0033】
従来例と同様に6速変速段が確立し、プリシフトにより7速−9速シンクロ装置S2で7速入力ギヤ26が第1入力軸11に結合されている状態からの4速変速段への飛び変速は、5速変速段を経由せずに、現在プリシフトされている7速変速段を利用して行われる。即ち、キックダウンに伴って現在係合している第2クラッチC2を係合解除すると同時に、第1クラッチC1を滑らせて7速変速段により駆動力の途切れを防止する。その間に、6速−8速シンクロ装置S4で6速入力ギヤ30を第2入力軸12から切り離すとともに2速−4速シンクロ装置S3で4速入力ギヤ29を第2入力軸12に結合し、このギヤ架け替えの終了後に、第2クラッチC2を係合して第1クラッチC1を係合解除することで目標の4速変速段を確立する。
【0034】
以上のように、本実施の形態によれば、現在プリシフトされている変速段をそのまま利用して偶数変速段間あるいは奇数変速段間の飛び変速を行うので、ギヤ架け替えを1回だけで済ませて変速応答性を大幅に高めることができる。
【0035】
図6および図7は、7速変速段が確立して6速変速段がプリシフトされた状態での走行中にアクセルが踏み込まれて6速変速段にシフトダウンしている間に、アクセルが更に踏み込まれて6速変速段から4速変速段にシフトダウンする場合のタイムチャートであり、図3の変速マップにおいて、所定の車速および所定のアクセル開度で7速変速段が確立しているC点から、運転者がアクセルをD点まで踏み込んだ直後に、アクセルを更にE点まで踏み込んだ場合を示している。
【0036】
図6に示す従来例では、7速変速段での走行中に6速変速段へのシフトダウンが指令されたとき、6速変速段のプリシフトが既に完了しているため、現在係合している第1クラッチC1を滑らせながら係合解除するとともに、現在係合解除している第2クラッチC2を滑らせながら係合することで6速変速段へのシフトダウンが実行される。6速変速段が確立する直前にアクセルが更に踏み込まれて4速変速段へのシフトダウンが指令されると、6速変速段から4速変速段への偶数変速段間の飛び変速が実行されるが、その内容は図4で説明したものと同じである。
【0037】
この従来例においても、7速変速段から4速変速段にシフトダウンする間に2回のギヤ架け替えが必要になるために、変速応答性が低下する問題がある。
【0038】
図7に示す実施の形態では、7速変速段から6速変速段へのシフトダウンの手順は図6に示す従来例と同じであり、6速変速段から4速変速段へのシフトダウンの手順は図5に示す実施の形態と同じであり、ギヤ架け替えを1回だけで済ませて変速応答性を大幅に高めることができる。
【0039】
本実施の形態の上記作用を図8および図9のフローチャートとに基づいて纏めると、以下のようになる。
【0040】
図8のフローチャートのステップP1で、アクセル開度検出手段M1が検出したアクセル開度と車速検出手段M2が検出した車速とに基づいて目標変速段推定手段M3がシフトダウンの飛び変速を必要とする目標変速段を推定すると、ステップP2で、現在確立している変速段を現変速段Aとし、これから確立すべき変速段を目標変速段Bとし、現在プリシフトされている変速段を待機変速段Cとする。続くステップP3で、現変速段および目標変速段が異軸であるか否か、つまり一方が偶数変速段で他方が奇数変速段であるか否かを、A−Bが奇数であるか否かにより判断し、A−Bが奇数であれば、偶数変速段から奇数変速段への変速、あるいは奇数変速段から偶数変速段への変速であるため、ステップP6で、変速制御手段M4により従来どおりの異軸間の変速制御を実行する。
【0041】
前記ステップP3で、現変速段および目標変速段が同軸であれば、つまり偶数変速段間の変速あるいは奇数変速段間の変速であれば、ステップP4で、現変速段A、目標変速段Bおよび待機変速段Cを比較する。比較の結果、B<C<Aが成立し、現変速段Aおよび目標変速段Bの間に待機変速段Cが入っていれば、例えば、現変速段Aである6速変速段から目標変速段Bである4速変速段にシフトダウンするときに、現在の待機変速段Cである5速変速段がプリシフトされていれば、前記ステップS6で、従来どおりの同軸間の変速制御を実行する。
【0042】
具体的には、6速変速段の確立中に第2クラッチC2を係合解除するとともに第1クラッチC1を滑らせてプリシフトされている5速変速段で駆動力の途切れを防止しながら、6速入力ギヤ30を第2入力軸12から切り離して4速入力ギヤ29を第2入力軸12に結合するギヤ架け替えを行った後、第2クラッチC2を係合するとともに第1クラッチC1を係合解除して4速変速段を確立する。
【0043】
前記ステップS4で、B<C<Aが成立せず、現変速段Aおよび目標変速段Bの間に待機変速段Cが入っていなければ、例えば、図5のタイムチャートで説明した如く、現変速段Aである6速変速段から目標変速段Bである4速変速段にシフトダウンするときに、現在待機変速段Cである7速変速段がプリシフトされていれば、ステップS5で、その待機変速段をそのまま用いた本実施の形態の同軸間の飛び変速を実行する。
【0044】
ところで、メーターパネルの表示手段D(図2参照)には現在確立している変速段が表示されるが、図5のタイムチャートで説明したように、現変速段Aが6速変速段であり、目標変速段Bが4速変速段であり、待機変速段Cが7速変速段であるような場合に、シフトダウンを行っているのに表示手段Dの表示は「6速」→「7速」→「4速」のように変化してしまい、運転者に違和感を与える可能性がある。
【0045】
そこで、本実施の形態では、図9のフローチャートに示すように、ステップQ1でギヤ架け替えやクラッチの滑りを伴う変速中でなければ、ステップQ2で現在の変速段が表示され、前記ステップQ1でギヤ架け替えやクラッチの滑りを伴う変速中であれば、ステップQ3で変速開始前の変速段が表示される。これにより、飛び変速中に現変速段および目標変速段の間にない変速段が表示されて運転者に違和感を与えるのが防止される。
【0046】
以上のように、本実施の形態によれば、現変速段から目標変速段に同じ入力軸間で飛び変速するとき、プリシフトのための待機変速段が現変速段および目標変速段間にない場合であっても、現変速段において係合している一方のクラッチを係合解除するとともに現変速段において係合解除している他方のクラッチを滑らせながら係合し、一方のクラッチが係合解除している間に現変速段のシンクロ装置を係合解除して目標変速段のシンクロ装置を係合した後に、他方のクラッチを係合解除して一方のクラッチを係合するので、シンクロ装置の架け替えを1回行うだけで同じ入力軸間の飛び変速が確実に可能となり、簡単な変速制御で変速時間を大幅に短縮して変速応答性を高めることができる。
【0047】
また前記変速制御は、目標変速段が現変速段よりも低速側の変速段である場合、つまりシフトダウンの場合だけに実行されるので、スポーツタイプの自動車において急加速すべくキックダウンを行った場合に、トルク抜けのない素早いシフトダウンを可能にすることができる。
【0048】
また表示手段Dは、変速制御中に待機変速段を表示しないので、変速中に現変速段および目標変速段間にない変速段が表示されて運転者に違和感を与えるのを防止することができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0050】
例えば、本発明の変速機の骨格は実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
11 第1入力軸
12 第2入力軸
13 第1出力軸(出力軸)
C1 第1クラッチ
C2 第2クラッチ
D 表示手段
E エンジン(駆動源)
M1 アクセル開度検出手段
M2 車速検出手段
M3 目標変速段予測手段
S1 3速−5速シンクロ装置(シンクロ装置)
S2 7速−9速シンクロ装置(シンクロ装置)
S3 2速−4速シンクロ装置(シンクロ装置)
S4 6速−8速シンクロ装置(シンクロ装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9