(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-224871(P2015-224871A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】センタ装置、運転支援システム及び運転支援方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20151117BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20151117BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20151117BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20151117BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
G01C21/26 C
G08G1/0969
G08G1/09 F
G09B29/10 A
G09B29/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-107689(P2014-107689)
(22)【出願日】2014年5月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 研二
(72)【発明者】
【氏名】礒村 陽介
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HB06
2C032HB11
2C032HB22
2C032HB25
2C032HC08
2C032HC11
2C032HC14
2C032HC16
2C032HC17
2C032HC22
2C032HC27
2C032HD04
2C032HD16
2C032HD21
2C032HD23
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB20
2F129BB22
2F129BB26
2F129CC03
2F129DD10
2F129DD30
2F129DD48
2F129DD49
2F129DD50
2F129EE02
2F129EE26
2F129FF11
2F129FF20
2F129HH02
2F129HH12
5H181AA01
5H181BB04
5H181FF04
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181FF35
(57)【要約】
【課題】
入力された探索条件と現在位置に応じて、車両のより正確な走行可能範囲を利用者に提示することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係るセンタ装置は、蓄積したエネルギーで走行する車両に搭載された情報端末と通信するセンタ装置であって、センタ装置は、情報端末又は車両の位置情報、及び情報端末に入力された探索条件を受信する受信部と、位置情報及び探索条件に基づいて、道路リンク毎のエネルギー消費量を算出し、算出したエネルギー消費量に基づいて、走行可能範囲を算出する走行可能範囲算出部と、算出した走行可能範囲に関する情報を、情報端末に表示させるために、情報端末に送信する送信部と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄積したエネルギーで走行する車両に搭載された情報端末と通信するセンタ装置であって、
前記センタ装置は、
前記情報端末又は前記車両の位置情報、及び前記情報端末に入力された探索条件を受信する受信部と、
前記位置情報及び前記探索条件に基づいて、道路リンク毎のエネルギー消費量を算出し、算出した前記エネルギー消費量に基づいて、走行可能範囲を算出する走行可能範囲算出部と、
算出した前記走行可能範囲に関する情報を、前記情報端末に表示させるために、前記情報端末に送信する送信部と、
を有することを特徴とするセンタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンタ装置であって、
前記探索条件は、
道路種別に関する情報、前記情報端末以外の車載機器の使用有無に関する情報、車両の進行方向に関する情報、前記車両の種類に関する情報、又は出発時間或いは到着時間における渋滞情報、の少なくとも1つであることを特徴とするセンタ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセンタ装置と、前記センタ装置と通信する車両に搭載された情報端末と、からなる運転支援システムであって、
前記情報端末は、
前記センタ装置から前記車両の前記走行可能範囲に関する情報を受信し、前記情報端末に表示させる表示部を有することを特徴とする運転支援システム。
【請求項4】
請求項3に記載の運転支援システムであって、
前記表示部は、
前記車両に搭載されたバッテリの残存エネルギー量で走行可能な道路を前記道路リンク単位で表示することによって、前記走行可能範囲を提示することを特徴とする運転支援システム。
【請求項5】
請求項4に記載の運転支援システムであって、
前記表示部は、前記残存エネルギー量に応じて、前記走行可能範囲の表示方法を変更することを特徴とする運転支援システム。
【請求項6】
蓄積したエネルギーで走行する車両に搭載された情報端末及び前記情報端末と通信するセンタ装置における運転支援方法であって、
前記情報端末は、表示部を有し、
前記情報端末又は前記車両の位置情報、及び前記情報端末に入力された探索条件を前記センタ装置に送信し、前記センタ装置から走行可能範囲に関する情報を受信し、前記表示部に表示し、
前記センタ装置は、
前記情報端末から前記位置情報及び前記探索条件を受信し、受信した前記位置情報及び前記探索条件に基づいて、道路リンク毎の電力消費量を算出し、算出した前記電力消費量に基づいて、走行可能範囲を算出し、算出した前記走行可能範囲に関する情報を、前記情報端末に送信することを特徴とする運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者に対する運転支援技術及びサービスに関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン車等の走行可能距離が長い車両とは異なり、電気自動車等のように蓄積したエネルギーで走行する車両の場合、1回の充電における走行可能距離が短いことや、充電設備が十分に普及していないことから、走行可能距離を考慮したナビゲーションや走行可能範囲をその都度ユーザに通知することが重要である。特許文献1には、車両周辺の道路形状、道路の勾配、交通情報及び過去の車両操作に基づいて走行可能範囲を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-025128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1による発明では、走行可能範囲を算出する際、車両周辺の道路形状、道路勾配、交通情報等の情報で電力消費量を計算し、走行可能範囲を求めている。しかしながら、電力消費量は、走行する道路種別(例えば、高速道路、一般道路)等の影響を受けるため、これらの条件を考慮することなく、走行可能範囲を精度良く推定することが難しい。また、特許文献1では、走行可能範囲を等高線で表示しているため、一般道路を走行しても高速道路を走行しても同じ表示となるため、両者を区別した正確な走行可能範囲を提示することが難しい。
【0005】
そこで、本発明の目的は、道路形状、道路勾配だけではなく、エネルギー消費量と関連がある条件を考慮し、エネルギー消費量を道路リンク単位で計算することで、走行可能範囲をより精度良く推定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るセンタ装置は、蓄積したエネルギーで走行する車両に搭載された情報端末と通信するセンタ装置であって、センタ装置は、情報端末又は車両の位置情報、及び情報端末に入力された探索条件を受信する受信部と、位置情報及び探索条件に基づいて、道路リンク毎のエネルギー消費量を算出し、算出したエネルギー消費量に基づいて、走行可能範囲を算出する走行可能範囲算出部と、算出した走行可能範囲に関する情報を、情報端末に表示させるために、情報端末に送信する送信部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、入力された探索条件と現在位置に応じて、車両のより正確な走行可能範囲を利用者に提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例に係る運転支援システムの概要を示す図。
【
図2】本実施例に係る運転支援システムの構成を示す機能ブロック図。
【
図3】本実施例に係る運転支援システムにおける処理フロー図。
【
図4】本実施例に係るセンタ装置での走行可能範囲を算出する処理フロー図。
【
図5】本実施例に係るセンタ装置で作成された走行可能範囲の一例を示す図。
【
図6】探索条件に応じた情報端末に表示される画面の一例。
【
図7】探索条件に応じた情報端末に表示される画面の一例。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施例に係るセンタ装置は、蓄積したエネルギーで走行する車両に搭載された情報端末と通信するセンタ装置であって、センタ装置は、情報端末又は車両の位置情報、及び情報端末に入力された探索条件を受信する受信部と、位置情報及び探索条件に基づいて、道路リンク毎のエネルギー消費量を算出し、算出した前記エネルギー消費量に基づいて、走行可能範囲を算出する走行可能範囲算出部と、算出した走行可能範囲に関する情報を情報端末に表示させるために情報端末に送信する送信部と、を有することを特徴とする。また上記構成を運転支援システムに適用した場合は、情報端末が、センタ装置から車両の走行可能範囲に関する情報を受信し、情報端末に表示させる表示部を有することを特徴とする。さらに、本発明の実施例に係る運転支援方法は、蓄積したエネルギーで走行する車両に搭載された情報端末及び情報端末と通信するセンタ装置における運転支援方法であって、情報端末は、表示部を有し、情報端末又は車両の位置情報、及び情報端末に入力された探索条件をセンタ装置に送信し、センタ装置から走行可能範囲に関する情報を受信し、表示部に表示し、センタ装置は、情報端末から位置情報及び探索条件を受信し、受信した位置情報及び探索条件に基づいて、道路リンク毎の電力消費量を算出し、算出した電力消費量に基づいて、走行可能範囲を算出し、算出した走行可能範囲に関する情報を、情報端末に送信することを特徴とする。このような構成により、車両のより正確な走行可能範囲を利用者に提示することが可能となる。
【0010】
また、探索条件としては、高速道路、一般道等の道路種別に関する情報や、エアコンや音声機器等の前述の情報端末以外の車載機器の使用有無に関する情報や、北向き等の車両の進行方向に関する情報、車両の種類に関する情報、指定する出発時間或いは到着時間に対応する渋滞情報、の少なくとも1つであることが好ましい。このように、エネルギー消費量に影響を与える探索条件を考慮することにより、より正確な走行可能範囲を提示することができる。さらに、運転支援システムの表示部は、車両に搭載されたバッテリの残存エネルギー量で走行可能な道路を道路リンク単位で表示することによって、走行可能範囲を提示することを特徴とする。単に出発地を起点として所定範囲を走行可能範囲と推定するのではなく、道路リンク毎にエネルギー消費量を算出して、表示することにより、正確な情報を利用者に提供できる。また、残存エネルギー量に応じて走行可能範囲の表示方法を変更することにより、利用者に対して残存エネルギー量を走行位置と関連付けて視覚的に訴えることが可能となる。
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施例を説明する。
図1は、本発明の実施例に係る運転支援システム100の概要を示す図である。
図1に示される運転支援システム100は、センタ装置101と、利用者の情報端末102を有し、通信回線103を介して互いに接続されている。情報端末102は、車両107に搭載され、通信回線103は、携帯電話回線等の無線通信網やインターネット等の有線通信網などによって構成される。またセンタ装置101は、受信部104、走行可能範囲算出部105、送信部106を備えている。受信部104は、情報端末102から車両107或いは情報端末102の位置情報、及び、利用者が入力する探索条件を受信する。走行可能範囲算出部105は、受信部104から受信した位置情報及び探索条件に応じて、走行可能範囲を算出する。算出された走行可能範囲は、送信部106にて、通信回線103を介して情報端末102に送信される。こうして、送信された走行可能範囲に関する情報は、情報端末102に表示されることにより利用者に対する運転支援が行われる。
情報端末102は、本実施例に係る運転支援システムに専用の端末として、車内に設置されたものや、ナビゲーション装置等を使用することができる。あるいは、スマートフォン、携帯電話、パーソナルコンピュータ、タブレット端末等でもよく、利用場所は車内に限定されない。また、車両107は、エネルギーを蓄積して走行する車両であれば良く、例えば、電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリット自動車等が挙げられる。電気自動車の場合は、車両107には電気エネルギーを蓄積するバッテリが搭載され、消費電力量や残存電力量等のバッテリに関する情報が必要に応じて情報端末102に送信される。
【0012】
図2は、本発明の実施例に係る運転支援システム100の構成を示す図である。
図2では、運転支援システム100を構成する複数の情報端末102のうち1の情報端末を図示しているが、他の情報端末についても同様の構成を有している。
図2の情報端末102は、センサ部209、記憶部208、操作部205、通信部206、表示部207を備える。センサ部209は、車両の走行状態を測定するためのセンサであり、例えば、GPSセンサ、車速センサ、加速度センサ、角速度センサ、車両のバッテリ残量を測定する為のセンサ等により構成され、取得した情報を記憶部208に記憶する。また、当該センサは必ずしも情報端末102内部に備える必要はなく、情報端末102外の車両に搭載されたセンサから取得した情報をセンサ部209で受信して、記憶部208に記憶する構成でも良い。
【0013】
操作部205は、例えばタッチパネル、スイッチ、マイクなどで構成され、利用者による操作入力や音声入力を受け付ける。操作部205では、利用者からの走行可能範囲の表示の要求を受け付け、その情報を通信部206に送信する。通信部206は、記憶部208に記憶された情報と、操作部205からの情報と、を操作部205から要求されたタイミング或いは所定のタイミング毎に読みだして、通信回線103を介して、センタ装置101に走行可能範囲の算出要求を行う。通信部103は、走行可能範囲の算出要求に応じて、センタ装置101から通信回線103を介して送信される走行可能範囲に関する情報を受信する。走行可能範囲の算出要求には、車両107或いは情報端末102の位置情報、走行状態とともに探索条件、送信時の車両の周囲環境、運転者特性、車の特性等を表わす情報が含まれている。これらの情報は、センサ部209からの情報や操作部205からの情報、記憶部208に記憶された利用者情報や車種情報に基づいて選択され、走行可能範囲の算出に用いられる。表示部207は、通信部206により受信された走行可能範囲に関する情報、地図情報、交通情報、充電スタンド等の各種情報を画面表示するための部分であり、液晶ディスプレイ等によって構成される。
【0014】
次に、センタ装置101は、記憶部201、受信部104、走行可能範囲算出部105、送信部106を備えている。記憶部201は、各種データを蓄積して記憶するための部分であり、ハードディスクやメモリ等の記憶媒体にて構成される。
図2では、交通情報等を記憶する環境情報データベース(DB)202、地図情報を記憶する地図情報データベース(DB)203、走行可能範囲情報データベース(DB)204が設けられている。環境情報DB202に記憶される交通情報は、路上センサデータ或いはプローブデータから生成されたリンク単位の所要時間、速度、渋滞度等であり、地図情報DB203には、道路の交差点或いは道路上の特定のポイントをノードと定義し、各ノード間を結ぶ道路をリンクとして定義した地図情報が記憶され、該リンクには、高速道路、一般道路等の道路種別、勾配情報、法定速度、規制情報等が定義される。
【0015】
受信部104は、情報端末102から送信された情報を受信し、受信した情報は、走行可能範囲を算出する目的で、走行可能範囲算出部105へ送信される。走行可能範囲処理部105では、受信部104からの情報、記憶部201に記憶されている環境情報又は地図情報により、後述する手順により走行可能範囲情報を作成し、走行可能範囲情報DB204に記憶する。送信部106は、記憶部201に記憶された走行可能範囲に関する情報を通信回線103を介して、走行可能範囲の要求を行った情報端末102の通信部206に送信する。このようにして、情報端末102からの要求に対して走行可能範囲に関する情報が情報端末102に送信される。
【0016】
さらに、センタ装置101の具体的な処理フローについて
図3を用いて説明する。
図3は、センタ装置101において、走行可能範囲の算出要求を受信した場合に実行される処理のフローチャートである。まず、受信部104は、情報端末102から送信された走行可能範囲の算出要求に関する情報を受信する(ステップ301)。走行可能範囲算出部105は、情報端末102から送信された情報から、走行可能範囲を求める際の出発地の情報を特定する(ステップ302)。なお、出発地に関しては、センサ部209のGPSセンサから求められた情報端末或いは車両の位置が出発地になる場合もあれば、操作部205から利用者が指定した任意の場所が出発地として特定される場合や、目的地までの走行ルート上の経由地が出発地として特定される場合もある。次に、走行可能範囲算出部105は、周囲環境の特定を行う(ステップ303)。周囲環境は、例えば、天候、気温、交通情報、路面状況等を環境情報DB202から取得する。また、走行可能範囲算出部105は、情報端末102から送信された情報から車両情報の特定を行う(ステップ304)。車両情報は、車両のバッテリ消費に影響を与える車種、車両寸法、車両重量、バッテリ容量、バッテリ残量等である。車両情報は、走行可能範囲の算出要求時に情報端末102から受信するが、事前にセンタ装置101に登録しておいてもよい。バッテリ残量は、情報端末102のセンサ部209から取得したバッテリ残量を用いる場合もあれば、操作部205から利用者が指定した任意の値をバッテリ残量として特定しても良い。
【0017】
次に、走行可能範囲処理部105は、情報端末102から送信された情報に基づいて探索条件の特定する(ステップ305)。探索条件としては、例えば、
(1)走行可能範囲を算出する際の対象道路の道路種別(高速道路を優先して走行可能範囲を算出、又は一般道路のみを用いて走行可能範囲を算出)、
(2)情報端末以外の車載機器の使用有無(エアコンを使用した場合の走行可能範囲を算出、又は使用しない場合の走行可能範囲を算出)、
(3)車両の進行方向を考慮するか否か、
(4)車両の種類に関する情報、
(5)出発時刻、到着時間等の渋滞情報、
といった走行可能範囲に影響を与える可能性がある条件を特定する。その結果、このステップ305で設定した探索条件により、生成される走行可能範囲が異なってくる。具体例を挙げて説明する。
【0018】
例えば、探索条件における対象道路を一般道路のみにすると、高速道路は走行可能範囲から外れることとなる。また、車両の走行速度が速くなると空気抵抗が増えることから、一般的に高速道路を走行した場合、一般道路のみで走行可能範囲を生成した場合と比べて、走行可能範囲は、狭く生成される。ここで、空気抵抗によるエネルギー消費量は、例えば、特開2004−38047号公報に記載されているように以下の式を用いることができる。
空気抵抗によるエネルギー消費量 = 1/2×ρ×Cd×A×V^2
ρ:空気密度
Cd:空気抵抗係数
A:投影面積
V:速度
また、空気抵抗によるエネルギー消費量は、過去の走行した実績値をもとに統計処理した値を用いてもよい。
【0019】
また、エアコンを使用すると設定した場合、エアコンによるエネルギー消費量を考慮することによりエアコンを使用しない場合と比べて、走行可能範囲は狭くなる。ここで、エアコンによるエネルギー消費量は、例えば、以下の式により算出する。
エアコンによるエネルギー消費量=単位時間当たりのエアコン消費量×時間
ここで時間とは、
図3ステップ306において走行可能範囲を求める際、車両がリンク単位でどのようなルートを通るか算出するため、そのルートを走行するための時間となる。また、エアコンによるエネルギー消費量は、過去の走行した実績値をもとに統計処理した値を用いてもよい。統計処理は、車種や地域、季節ごとに値を持つことで精度の高いエアコンによるエネルギー消費量を求めることが可能となる。
【0020】
さらに、車両の進行方向を考慮することを選択した場合、車両の進行方向を考慮し、走行可能範囲を生成する。その結果、例えば、高速道路上を出発地として走行可能範囲を生成した場合、進行方向と反対側の道路は、次のインターチェンジを降り、Uターンして反対側に進む必要があるため、車両の進行方向側の走行可能範囲が広く、車両の後方の走行可能範囲は狭く生成されることになる。
【0021】
また、車両の種類に関する情報を入力することにより、車両の重量等によって生じる車種別のエネルギー消費量を考慮することができる。例えば、重量の大きい車両の走行可能範囲は、重量の小さい車両の走行可能範囲より小さくなる。また、車両によりエネルギーの搭載容量も異なる。そのため、エネルギーの搭載容量の大きい車両の航行可能範囲は、エネルギーの搭載要用の小さい車両の走行可能範囲より大きくなる。
さらに、出発時間を入力することにより、環境情報DB202により、その時間に対応した渋滞情報等を取得でき、それらを考慮した走行可能範囲を生成することが可能となる。例えば、出発時間を朝に設定すると一般的に朝は渋滞するため、移動時間が増え、その結果、走行可能範囲は閑散する時間帯と比べると狭い走行可能範囲となる。
【0022】
次に、走行可能範囲算出部105は、ステップ302からステップ305で取得した各種情報に基づいて、走行可能範囲を算出し、算出された走行可能範囲に関する情報を記憶部204に記憶させる。そして、記憶部204に記憶された走行可能範囲に関する情報は、送信部106によって、通信回線103を介して情報端末102に送信される(ステップ307)。
【0023】
続いて、
図4は、
図3のステップ306における具体的な処理を示すフローチャートである。まず、どの位置から走行可能範囲を算出するかを示す位置情報と、車両のバッテリ残量、及び探索条件等の初期条件を決定する(ステップ401)。次に、探索条件に基づいて、指定した位置から周辺に向けて、次のノードを決定する(ステップ402)。次のノードを決定する方法としては、一般的なダイクストラ法などの数学的な手法を用いて道路リンク単位の旅行時間(速度)あるいは、距離に基づいたコスト最小経路を探索する方法で構わない。また、電気自動車の場合、旅行時間コストの代わりに、電力消費量をコストとして用い、電力消費量を最小とする経路を算出してもよい。この際、ステップ402で決定した探索条件が一般道路のみを用いて算出する条件であれば、ノードの選択の際に、高速道路上のノードは選択されないことになる。このように、一般道路を走行した場合の走行可能範囲と高速道路を利用した場合の走行可能範囲を区別して求めることができる。
【0024】
ステップ403では、決定した次のノードまでの電力消費量を道路リンク単位に計算する。ここで、電力消費量は、道路の勾配、車種特性、利用者の運転特性、交通情報等の周囲の環境情報を考慮して算出する。そして、ステップ404では、決定された各ノードのバッテリ残量を算出する。次に、ステップ405では、各ノードにおいて、バッテリ残量が0になるかの判定を行い、バッテリ残量が0より大であるノードであれば、周辺に向けて次のノードを決定するステップ402に戻り、ステップ402からステップ405までの処理を繰り返す。なお、周辺に向けて次のノードを決定する際に、全ての次のノードにおいて、バッテリ残量が0となった場合、ステップ405の処理のループが終了し、走行可能範囲を決定するステップ406へ進む。ここで、利用者に提示するための走行可能範囲を作成する(ステップ406)。
【0025】
次に、
図5を用いて、走行可能範囲算出部105にて算出する走行可能範囲の例について説明する。
図5では、ノードを白丸のマークで示し、ノード間を接続している実線が道路リンクを示している。図の中心の三角のマークは、走行可能範囲を算出するための出発位置を示している。ノードの右上に記載された値が各ノードでのバッテリ残量を示している。この例では、出発地点のバッテリ残量を1,000kwhとしており、バッテリ残量が0となっている各ノードの周辺のノードについてバッテリ残量が記載されていないが、これは
図4で説明したステップ405の処理のループが終了したためである。
【0026】
続いて、情報端末102の表示画面について説明する。
図6、7は、情報端末102の表示部207に、走行可能範囲が表示されている画面例である。この
図6、7に示す画面には、センタ装置101から送信された走行可能範囲601、701が表示されており、バッテリ残量の大きさに応じて、段階的に表示の色を変えて表示している。なお、走行可能範囲の表示方法は、バッテリ残量に応じて変更(色の変更、透過率の変更、線の太さを変更)してもよい。また、
図6、7の画面の左部分には、走行可能範囲を算出するための探索条件が表示されている。探索条件の例としては、走行可能範囲を求めるときのバッテリ残量602(702)、走行可能範囲を算出するときの出発地点である自車位置603(703)又は情報端末位置、走行可能範囲を求める際の出発日時604(704)、走行対象道路の条件を示す道路種別605(705)、エアコンを使用するか否かを示すエアコン使用有無606(706)、車種を特定する車種607(707)、車両の進行方向を特定する車両方向608(708)等があり、それらが選択することができる。なお
図6では、道路種別の選択では「高速道路を優先」、エアコン使用有無では「使用する」等を選択した場合の走行可能範囲を示している。また
図7では、道路種別の選択では「一般道を優先」、エアコン使用有無では「使用しない」等を選択した場合の走行可能範囲を示している。
【符号の説明】
【0027】
101…センタ装置
102…端末装置
103…通信回線
104…受信部
105…走行可能範囲算出部
106…送信部
107…車両
209…センサ部
201、208…記憶部
205…操作部
206…通信部
207…表示部
202…環境情報DB
203…地図情報DB
204…走行可能範囲情報DB