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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-224944(P2015-224944A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】生体画像取得装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20151117BHJP
【FI】
   G01N21/17 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-109503(P2014-109503)
(22)【出願日】2014年5月27日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】根城 均
(72)【発明者】
【氏名】トリフォノフ アルテム
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059AA06
2G059BB14
2G059EE09
2G059FF01
2G059GG01
2G059GG02
2G059GG03
2G059JJ11
2G059JJ13
2G059JJ19
2G059JJ20
2G059JJ22
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM14
2G059NN01
2G059NN10
(57)【要約】
【課題】現在のがん検出精度と比較して飛躍的に改善された高分解能画像を取得できる生体画像取得装置を提供すること。
【解決手段】検査対象組織10から反射又は放射される観察光を脂質組織12を介して入射する可変形鏡20であって、傾斜角度と高さ方向が位置姿勢制御可能な個別領域で構成された可変形鏡20と、可変形鏡20で反射された観察光を波面センサ30に入射して、脂質組織12で歪んだ成分を補償するように、可変形鏡20の各個別領域の傾斜角度と高さ方向の位置姿勢制御を行なう波面再構成に必要な制御量を演算する波面再構成演算部32と、この波面再構成制御量を用いて、可変形鏡20の波面再構成を行って、脂質組織12での歪成分を補償した検査対象組織10の観察光を入射する受光部40を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象組織から反射又は放射される観察光を脂質組織を介して入射する可変形鏡であって、当該可変形鏡は局所的な個別領域での傾斜角度と高さ方向が位置姿勢制御可能に構成された前記可変形鏡と、
この可変形鏡で反射された観察光を分岐するビームスプリッタと、
このビームスプリッタで分岐された観察光を入射する波面センサと、
この波面センサの入射光を各画素毎に区分して入力し、前記検査対象組織の観察光のうち、前記脂質組織で歪んだ成分を補償するように、前記可変形鏡の各個別領域の傾斜角度と高さ方向の位置姿勢制御を行なう波面再構成に必要な制御量を演算する波面再構成演算部と、
この波面再構成演算部の波面再構成制御量を前記可変形鏡の対応する各個別領域に送って、前記可変形鏡の波面再構成を行って、前記脂質組織での歪成分を補償した前記検査対象組織の観察光を入射する受光部と、
を備えることを特徴とする生体画像取得装置。
【請求項2】
前記可変形鏡の各個別領域は、各個別領域毎に設けられた高さ方向に移動する伸縮アクチュエータを有すると共に、
前記可変形鏡は各個別領域を互いに連続した状態で接続する表面鏡層を有することを特徴とする請求項1に記載の生体画像取得装置。
【請求項3】
前記可変形鏡の各個別領域における、高さ方向の位置姿勢制御可能な範囲は、前記観測光に含まれる波長の四半の一以上で一波長以下であることを特徴とする請求項2に記載の生体画像取得装置。
【請求項4】
前記可変形鏡の各個別領域の形状は、前記検査対象組織の単一の細胞形状よりも大きく、当該細胞形状の最大長の2倍よりも小さな形状を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の生体画像取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生体内のがん細胞の検査に用いて好適な、皮下の組織を高分解能で撮像することができる生体画像取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内のがん細胞の検査では、がん細胞が皮下の組織で覆われている場合が多い。そこで、例えば内視鏡のような生体画像取得装置では、生体内組織による入射光の擾乱のために、高分解能画像を取得する上で困難があった。
他方で、例えば非特許文献1に示すように、レーザーマンモグラフィ(Computed Tomographic Laser Mammography)も開発されている。しかし、その空間分解能は十分ではないという課題があった。
非特許文献2では、X線マンモグラフィを生体、特に乳がんの診断に適用した報告がなされている。X線を用いているために空間分解能に優れているが、X線の被曝によって人体組織が損傷されるため、がん組織を検出するためのX線照射量を少なくする必要があるという課題があった。
【0003】
ここで、『レーザーマンモグラフィ』は、レーザーを入射光とし、乳房に照射した後の光を3次元で検出したあとに、逆問題を解くことで、乳房の構造を決定する技術をいう。また『X線マンモグラフィ』は、X線を入射光とし、乳房に照射した後のX線を3次元で検出したあとに、逆問題を解くことで、乳房の構造を決定する技術をいう。『トモグラフィー』は、逆問題を解くことにより、検出光の情報から患部の構造を決定する手法の総称をいい、MRIなど多くの医療機器がこの手法を用いている。
【0004】
そこで、生体画像取得装置に補償光学系を装着して、生体分野の空間分解能向上を図ることが考えられる。しかし、現実には、その補償光学系を生体画像取得装置に装着させて、生体分野の空間分解能向上に適用した例や、眼底検査用に水晶体の光学補正を行なうものが存在するが透明ではない被測定物に適用した例は、本発明者の知る限りでは存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−6362号公報
【特許文献2】特開2013−7740号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】D. M.Richter, Jpn. Soc. Radiol. Tech. 59, 687-693 (2003)
【非特許文献2】D. Floery et al. Investigative Radiology 40, 328-335 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するもので、生体画像取得装置に適合する構造の補償光学系を生体画像取得装置に装着することで、現在のがん検出精度と比較して飛躍的に改善された高分解能画像を取得することでき、多くのがんをその初期の時点で発見できる生体画像取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の生体画像取得装置は、例えば図1図9に示すように、検査対象組織10から反射又は放射される観察光を脂質組織12を介して入射する可変形鏡20であって、当該可変形鏡は傾斜角度と高さ方向が位置姿勢制御可能な個別領域で構成された可変形鏡20と、可変形鏡20で反射された観察光を分岐するビームスプリッタ22と、ビームスプリッタ22で分岐された観察光を入射する波面センサ30と、波面センサ30の入射光を各画素毎に区分して入力し、検査対象組織10の観察光のうち、脂質組織12で歪んだ成分を補償するように、可変形鏡20の各個別領域の傾斜角度と高さ方向の位置姿勢制御を行なう波面再構成に必要な制御量を演算する波面再構成演算部32と、波面再構成演算部32の波面再構成制御量を可変形鏡20の対応する各個別領域に送って、可変形鏡20の波面再構成を行って、脂質組織12での歪成分を補償した検査対象組織10の観察光を入射する受光部40とを備えるものである。
【0009】
本発明の生体画像取得装置において、好ましくは、可変形鏡20の各個別領域は、各個別領域毎に設けられた高さ方向に移動する伸縮アクチュエータを有すると共に、可変形鏡20は各個別領域を互いに連続した状態で接続する表面鏡層を有する構成であるとよい。
本発明の生体画像取得装置において、好ましくは、可変形鏡20の個別領域は、高さ方向が位置姿勢制御可能な範囲は、観測光に含まれる波長の四半の一波長以上で、半波長以下であるとよい。四半の一波長では、観測光が干渉により増幅される。半波長では、観測光が干渉により減衰される。そこで、観測光に含まれる波長の四半の一波長以上で半波長以下とすると、高さ方向の位置姿勢制御可能な範囲が最小範囲で済む。
本発明の生体画像取得装置において、好ましくは、可変形鏡20の各個別領域の形状は、前記検査対象組織の単一の細胞形状よりも大きく、当該細胞形状の最大長の2倍よりも小さな形状を有するとよい。可変形鏡20の各個別領域の形状が検査対象組織の単一の細胞形状よりも小さいと、検査対象組織の単一の細胞形状が複数の個別領域に分割され、好ましくない。可変形鏡20の各個別領域の形状が当該細胞形状の最大長の2倍よりも大きいと、複数の細胞形状について単一の個別領域の光学的な補償が適用されるため、像の歪み補償が単一の細胞形状単位で行えない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の生体画像取得装置によれば、生体のがん検出のような光学的組織検査に適用することにより、これまで困難であった脂質下の注目する組織の画像をより高分解能で取得することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の生体画像取得装置における光学系概念図である。
図2A】波面センサの光学特性を説明する図で、参照画像である。
図2B】波面センサの光学特性を説明する図で、テスト画像である。
図2C】波面センサの光学特性を説明する図で、参照画像とテスト画像の相異を各画素毎に測定した結果である。
図2D】波面センサの光学特性を説明する図で、各画素毎の偏移の等高線表示である。
図2E】波面センサの光学特性を説明する図で、各画素毎の偏移の方向と偏移量表示である。
図3】可変形鏡の個別領域での変位および変位を補正すべき量の算出例を示す図である。
図4】波面再構成演算の詳細を説明する流れ図で、ステップ1を示している。
図5】波面再構成演算の詳細を説明する流れ図で、ステップ2を示している。
図6】波面再構成演算の詳細を説明する流れ図で、サブステップ1を示している。
図7】波面再構成演算の詳細を説明する流れ図で、サブステップ2を示している。
図8】波面センサと可変形鏡を組み合わせて、脂質組織で歪んだ画像を補償する一実施例の説明図で、(A)は歪んだ画像、(B)は補償後の画像を示している。
図9】本発明の生体画像取得装置における実施形態を示す光学系実施図である。
図10】大豆油で歪んだ画像の波面センサでの解析結果の一例を示す図である。
図11】波面センサと可変形鏡を組み合わせて、大豆油で歪んだ画像を補償する一実施例の説明図で、(A)は歪んだ画像、(B)は補償後の画像を示している。
図12】可変形鏡により補償された各画素毎の波面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用する科学技術用語の定義は、以下の通りである。
『マイクロレンズアレイ』は数μm程度の直径を持つレンズを2次元に配列し、各々のレンズからの画像をCCDカメラで取得するための光学素子である。
『可変形鏡』はデフォーマブルミラーともいい、機能面を重視して波面補償器とも言われ、英文表記では『Wavefront Corrector』も使用される。可変形鏡は数μm程度の反射鏡を機械的に、各々のミラーを独立に駆動することにより、ミラー全体に入射した光を各画素単位で補正するための光学素子である。
『散乱体』は、英文表記が『Turbulent Media』であり、光を散乱させることにより当該光の進行方向を変えるものである。
【0013】
『波面センサ』は、英文表記が『Wavefront Sensor』であり、到達した光の位相を各画素毎に検出できる性能を有する。
『対象体』は、英文表記が『Object』であり、例えば生体画像取得装置の性能を検証するテストパターンを描画したターゲットであり、実際の生体画像取得装置においては患者の患部が相当する。
【0014】
『球面波』は、レーザーから放出される光は波面が平面であるのに対し、光が散乱体に照射されると、各散乱体が新たな波源となり球面状の光となって放射されることを示している。
『フレームレート』は、1画面を取得するに要する時間の逆数であり、単位時間あたりの取得可能画面数である。
『波面センサ』は、マイクロレンズアレイを備えたCCDカメラであり、各画素単位で入射した光の位相を検出することが可能な光学素子である。
【0015】
『1951USAFテストターゲット』は、撮像光学系の性能を評価したりキャリブレーションを行う目的に使われる素子であり、1951年に米国空軍により規格化された解像力テストパターンである。
『空間周波数』は、単位長さあたりのパターン本数であり、この数値が大きいほど解像力に優れる。
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の生体画像取得装置における光学系概念図である。図において、検査対象組織10は、例えば患者の喉頭、皮膚、乳房等の特定臓器に位置するがん細胞である。がん細胞は、上皮組織の悪性新生物である癌腫と、非上皮組織の悪性新生物である肉腫に分類される。脂質組織12は、検査対象組織10と表皮との間に存在して、組織の病理検査の際に、検査対象組織10の光学的な像を歪めて、病理検査の障害物となる。脂質組織12による光学的な歪みは、例えばゼルニケの多項式で成分表示できる。
【0017】
可変形鏡20は、傾斜角度と高さ方向が位置姿勢制御可能な個別領域で構成されたもので、例えばドイツ連邦共和国のフラウンホーファー(Fraunhofer)研究所から入手できる。可変形鏡20は、各個別領域毎に高さ方向に変位するアクチュエータを有すると共に、弾性変形する膜に銀、金、アルミニューム等を蒸着して形成された連続した鏡面を有している。アクチュエータの個数は、例えば25個程度から1000個程度まで、要求される解像度に応じて適宜に設けると良い。
【0018】
ビームスプリッタ22は、可変形鏡20で反射された観察光を分岐するもので、一方の分岐光は波面センサ30に送られ、他方の分岐光は観察光の受像面に送られる。
【0019】
波面センサ30は、例えばシャックハルトマンセンサや曲率センサが用いられる。シャックハルトマンセンサは、細かなレンズアレイによって、像のずれを測定するものである。このレンズアレイの各レンズが、本明細書における波面センサ30の画素に対応している。曲率センサは、センサ本体の移動によって、光強度変化を捉えて波動干渉による波面の状態を捉えるものである。
【0020】
波面再構成演算部32は、波面センサ30が捉えた受光信号の情報を入力して、可変形鏡20を制御するための制御信号ベクトル電圧を演算する。この波面再構成演算は、隣接するセンサ群のマトリックス演算によるものである。これによって、波面再構成演算部32は、波面センサ30の入射光を各画素毎に区分して入力し、検査対象組織10の観察光のうち、脂質組織12で歪んだ成分を補償するように、可変形鏡20の各個別領域の傾斜角度と高さ方向の位置姿勢制御を行なう波面再構成に必要な制御量を演算する。
受光部40には、例えばCCD(Charge Coupled Device、電荷結合素子)カメラを用いる。
【0021】
次に、このように構成された生体画像取得装置の動作を説明する。検査対象組織10からの観察光は、脂質組織12と可変形鏡20をへて波面センサ30に至る。観察光は、図示しない光源から供給される可視光、典型的には透過光又は反射光である。脂質組織12は、観察光の散乱体として作用するが、折り曲がりのような強い散乱を観察光に付与しないとものとする。ここで、折り曲がりとは、観察光の進行方向から180度散乱され再度180度散乱されることにより透過する類型をいう。そこで、脂質組織12では、観察光の多重散乱を経た後に波面センサ30に到達する。
【0022】
波面センサ30において平面波との位相差を検出し、各々波面における位相差を独立駆動する可変形鏡20にフィードバックする補正量を波面再構成演算部32で演算する。そして、波面再構成演算部32は、この補正量を可変形鏡20に出力して、脂質組織12により歪んだ観察光を平面波に戻している。
即ち、波面再構成演算部32による波面再構成によって、光路に導かれた検査対象組織10の観察光の歪み補償が行われる。そこで、受光部40では、脂質組織12で歪んだ成分の補償された検査対象組織10の観察像が得られる。
【0023】
次に、波面センサの詳細を説明する。図2A〜Eは、波面センサの光学特性を説明する図で、図2Aは参照画像、図2Bはテスト画像、図2Cは参照画像とテスト画像の相異を各画素ごとに測定した結果、図2Dは各画素毎の偏移の等高線表示、図2Eは各画素毎の偏移の方向と偏移量表示である。
まず、平面波が、位相の変調を受けない場合の波面を記録しておく{図2A}。次に位相が乱れた状態の光を波面センサ30で受光する{図2B}。このあと波面再構成演算部32のソフトウェアを用いて、基準の波面と実際の波面との相異をマイクロレンズアレイごとに求める{(図2C}。また光の位相の偏移は等高線として表示することも可能である{(図2D}。更には画素ごとに偏移の方向と偏移の量を示すことも可能である{(図2E}。
【0024】
図3は、可変形鏡の個別領域での変位および変位を補正すべき量の算出例を示す図で、(A)は可変形鏡全体の要補正量の3D斜視図、(B)は可変形鏡の要補正量の分布を説明する3D斜視図、(C)は可変形鏡の各画素の要補正量、(D)は(A)と高さ方向の拡大率が相異する要補正量の3D斜視図、(E)は各画素毎の波面分布を説明する3D斜視図である。波面再構成演算部32は、波面センサ30の画素ごとの偏移と偏移を補正すべき信号を算出している。
【0025】
続いて、波面再構成演算部32の波面再構成演算の詳細を説明する。
図4は波面再構成演算の詳細を説明する流れ図で、ステップ1を示している。まず、波面センサ30は測定動作を開始して(S100)、波面センサ30のm×n画素のデータ読み込みを行う(S102)。また、可変形鏡20も測定動作を開始して(S110)、可変形鏡20のM×N画素のデータ読み込みを行う(S112)。
【0026】
続いて、ステップ1が開始される。波面再構成演算部32は、波面センサ30の(1,1)画素のデータを取込む(S104)と共に、可変形鏡20の(1,1)画素のデータを取込む(S114)。そして、波面再構成演算部32は平面方向からの波面の歪み量を演算し、具体的には変位方向、変位量、そして変換データインプットを行う(S120)。そして、変位方向、変位量がゼロであるか判断し(S122)、Noであれば可変形鏡20に対して当該歪み量を補償する制御量ΔSGを演算し(S124)、S120に戻る。他方、Yesであれば、ステップ1を終了して、次のステップ2に移る。
【0027】
図5は波面再構成演算の詳細を説明する流れ図で、ステップ2を示している。まずステップ2の開始時において、波面再構成演算部32は、波面センサ30の(1,2)画素のデータを取込む(S204)と共に、可変形鏡20の(1,2)画素のデータを取込む(S214)。そして、波面再構成演算部32は平面方向からの波面の歪み量を演算し、具体的には変位方向、変位量、そして変換データインプットを行う(S220)。そして、変位方向、変位量がゼロであるか判断し(S222)、Noであれば可変形鏡20に対して当該歪み量を補償する制御量ΔSGを演算し(S224)、S220に戻る。他方、Yesであれば、ステップ2を終了して、次のステップに移る。
【0028】
以下、波面センサ30と可変形鏡20の画素の座標として、(1,3)、(1,4)、…、(1,n)、(2,1)、(2,2)、(2,3)、…、(2,n)、…、(m,1)、(m,2)、(m,3)、…、(m,n)の各画素についてのステップを繰り返す。そこで、ステップ回数M×Nで全てのステップが終了する。
【0029】
続いて、波面再構成演算部32の波面再構成演算の他の態様を説明する。ここでは、平面波の傾き補正が可能なように、波面センサ30の一画素は可変形鏡20での複数の画素に対応している。
図6は波面再構成演算の詳細を説明する流れ図で、サブステップ1を示している。まず、波面センサ30は前記ステップ1の測定動作を開始して(S300)、波面センサ30の当該ステップに対応する1×1画素のデータ読み込みを行う(S302)。また、可変形鏡20も測定動作を開始して(S310)、可変形鏡20の当該ステップに対応するK×L画素のデータ読み込みを行う(S312)。
【0030】
続いて、ステップ1のサブステップ1が開始される。波面再構成演算部32は、波面センサ30の(1,1)画素のデータを取込む(S304)と共に、可変形鏡20の(1,1)画素のデータを取込む(S314)。そして、波面再構成演算部32は平面方向からの波面の歪み量を演算し、具体的には変位方向、変位量、そして変換データインプットを行う(S320)。そして、変位方向、変位量がゼロであるか判断し(S322)、Noであれば可変形鏡20に対して当該歪み量を補償する制御量ΔSGを演算し(S324)、S320に戻る。他方、Yesであれば、サブステップ1を終了して、次のサブステップ2に移る。
【0031】
図7は波面再構成演算の詳細を説明する流れ図で、サブステップ2を示している。まず当該ステップに対応するサブステップ2の開始時において、波面再構成演算部32は、当該ステップに対応する波面センサ30の(1,2)画素のデータを取込む(S404)と共に、当該ステップに対応する可変形鏡20の(1,2)画素のデータを取込む(S414)。そして、波面再構成演算部32は平面方向からの波面の歪み量を演算し、具体的には変位方向、変位量、そして変換データインプットを行う(S420)。そして、変位方向、変位量がゼロであるか判断し(S422)、Noであれば可変形鏡20に対して当該歪み量を補償する制御量ΔSGを演算し(S424)、S420に戻る。他方、Yesであれば、サブステップ2を終了して、次のサブステップに移る。
【0032】
以下、波面センサ30と可変形鏡20の画素の座標として、(1,3)、(1,4)、…、(1,L)、(2,1)、(2,2)、(2,3)、…、(2,L)、…、(K,1)、(K,2)、(K,3)、…、(K,L)の各画素についてのサブステップを繰り返す。そこで、サブステップ回数K×Lで全てのサブステップが終了する。
そこで、全てのステップについてのステップ回数M×Nを基準にすると、全てのステップについての全サブステップ回数はM×N×K×Lとなる。
【0033】
図8は、波面センサ30と可変形鏡20を組み合わせて、脂質組織12で歪んだ画像を補償する一実施例の説明図で、(A)は歪んだ画像、(B)は補償後の画像を示している。波面センサ30と可変形鏡20を組み合わせた補償光学を適用しない場合{図8(A)}に比較し、補償光学を適用した場合の画像{図8(B)}の分解能は明らかに向上して、画像が鮮明になっている。
【0034】
図9は、本発明の生体画像取得装置における実施形態を示す光学系実施図である。ここでは、乳がんを検査する場合の生体画像取得装置を構成してある。なお、図9において前記図1と同一作用をするものには同一符号を付して、説明を省略する。
【0035】
一般に細胞の種類により光の吸収係数が異なることを用いて、がん細胞の検出が行なわれている。このときに検出すべきがん細胞は3次元の生体脂質の中に埋め込まれた状態になっているために、第1の実施形態で示した2次元検出技術を3次元へと拡大する必要がある。このときに脂質は散乱体に相当するが、光は脂質により極度の折り曲がりがないと仮定し、可変形鏡を乳がんが存在する部位に対し入射光の後ろ側に配置する。フラウンホーファー研究所の提供する可変形鏡20の場合、ハウジングを含めた可変形鏡20の大きさは28mm×28mm×3mm(受光面14.3×14.3mm)であり、十分に入射光を面内に受光できる。
【0036】
図9において、HeNeレーザー光源14は、参照光として用いられるもので、検査対象組織10を経ないで直接脂質組織を代用する大豆油層13を透過して、可変形鏡20・波面センサ30・受光部40に送られる。LED光源16は、検査対象組織10の照射光として用いられるもので、検査対象組織10の透過光は大豆油層13を透過して、可変形鏡20・波面センサ30・受光部40に送られる。HeNeレーザー光源14には、例えばMeris Griot製、波長632.8nm、出力15mWのHeNeレーザーを用いることが出来る。LED光源16には、例えばTherlab製、波長505nm、最大出力4.5mWのLED光源を用いることが出来る。
【0037】
生体画像取得装置は、光路上に各種の凸凹レンズを有すると共に、ダイクロイックビームスプリッタ22、26、偏光ビームスプリッタ24、ゼルニケ偏光板28を有する。ゼルニケ偏光板28は、生体画像取得装置に既知の部品を用いて構成することで生体画像取得装置の校正を行なうためのものである。ゼルニケ偏光板28には、ゼルニケ多項式の直交規定のうち、例えば三次のコマ収差と三次の球面収差に相当する項を用いる。ゼルニケ多項式を用いて波面収差を分解すると、各ゼルニケ多項式は独立した波面の形に対応しそれぞれが古典的な収差にも対応しており、収差成分をしることができる。
Object部は、検査対象組織10や1951USAFテストターゲットのような撮像光学系の校正用の標識を設ける部位である。
受光部40には、例えば浜松フォトニクス製のC4880等のCCDカメラを用いるとよい。
【0038】
次に、このように構成された生体画像取得装置の動作を説明する。まず、LED光源16を用いて、ゼルニケ偏光板28により生体画像取得装置の校正を行なう。続いて、HeNeレーザー光源14を用いて、脂質に見立てた大豆油層13に照射し、生体画像取得装置の適用性を検証する。即ち、HeNeレーザー光源14からの照射光は、実際の生体を模した大豆油層13を透過するので、可変形鏡20・波面センサ30の各画素において波面位相補正後の画像を得ることができる。このとき得られた画像は、検査対象組織10のがん細胞が図5のObject部にあると想定した場合に、各方位から見たときのがん部位に相当する表面画像となる。
【0039】
ここで、LED光源16から検査対象組織10へ入射する波は平面波ではあるが、これが各々の細胞の位置で散乱されるとき、その細胞の場所が新たな波源となり球面波として伝播するため、生体画像取得装置の光学的な補償は球面波に対して施されることになる。一方、時間分解能は補償光学系のフレームレート、例えば100Hzにおいて考察する必要がある。生態観察において重要な問題は、生体活動ゆえの動的な挙動であり、因子としてたとえば血流があげられる。動的な挙動が散乱体として寄与する影響を低減するためには、例えば画像の時間平均化によりノイズ成分を除去できるが、空間分解能が劣化するという副作用を生ずる。したがって100Hz程度の高速で画像補償情報を得ることができれば、生体活動に妨げられることなく画像を得られることになる。
【0040】
図10は大豆油で歪んだ画像の波面センサでの解析結果の一例を示す図で、(A)は波面センサでの解析結果を示す数値の図、(B)はゼルニケ多項式の直交基底の係数値を示す図、(C)は波面センサの全体測定値を示す図、(D)は波面センサの局部ピーク近傍の測定値を示す拡大図、(E)は(D)の波面相関を示す拡大図、(F)は(D)のゼルニケ多項式の評価を示す図、(G)は(F)のゼルニケ多項式の点広がり関数(point spread function)を示す図、(H)は(G)の変調伝達関数(modulation transfer function)である。
【0041】
大豆油は、生体構成成分として重要な脂質の補給目的に使用する静脈用脂肪乳剤有効成分と同一性分の大豆油(シグマアルドリッチ製S7381)を用いた。この大豆油を用いた大豆油層13は、10 ×10× 40mm(光路長10mm)のガラスセルに入れ、光路中に配置されたものである。図10では、大豆油層13を光路に入れ、可変形鏡で補償していない場合の波面の変化を解析結果に応じて示している。
【0042】
図11は、波面センサと可変形鏡を組み合わせて、大豆油で歪んだ画像を補償する一実施例の説明図で、(A)は歪んだ画像、(B)は補償後の画像を示している。ここでは、検査対象組織10のがん細胞に代えて、1951USAFテストターゲットの像を用いている。図11に示された、可変形鏡で補償する前と補償した後の波面の像を比較すると、明らかに補償前の画像に比較して、補償後の画像の解像度が向上し、空間周波数57.02 本/mmを明瞭に解像できる。
【0043】
図12は大豆油で歪んだ画像を可変形鏡で補償する場合の詳細例を示す図で、(A)は波面センサでの解析結果を示す数値の図、(B)は波面センサの全体測定値を示す図、(C)は波面センサの局部ピーク近傍の測定値を示す拡大図、(D)は(C)の波面相関を示す拡大図、(E)は(C)のゼルニケ多項式の評価を示す図、(F)は(E)のゼルニケ多項式の点広がり関数を示す図、(G)は(F)の変調伝達関数である。
【0044】
なお、上記の実施の形態に於いては、生体画像取得装置として図1図9に示す態様の装置を用いて説明しているが、本発明はこれらに限定されるものではなく、当業者において自明な範囲で各種の設計変更が可能である。例えば、可変形鏡の材質はアルミ製に限られるものではなく、アルミ製と同等以上の反射率があれば良い。また、可変形鏡の受光面サイズは14.3 ×14.3mmに限らずこれより大きくても良い。レーザー光の波長は632.8nmに限られるものではなく、好ましくは808nm近傍が好ましい。LED光源の波長は505nmに限られるものではなく、レーザー光の波長と区別できれば808nm近傍が好ましい。Object部は1951USAFテストターゲットに限られるものではなく、空間分解能を識別できるものであれば代替可能である。
さらに、本発明の生体画像取得装置を適用する患部はがんに限られるものではなく、人体臓器の組織病変を伴うほかの疾患も対象となりうる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の生体画像取得装置は、生体のがん検出のような光学的組織検査に適用することにより、これまで困難であった脂質下の注目する組織の画像をより高分解能で取得することが可能になる。
【符号の説明】
【0046】
10 検査対象組織
12 脂質組織
13 大豆油
20 可変形鏡
22 ビームスプリッタ
30 波面センサ
32 波面再構成演算部
40 受光部
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12