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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-225032(P2015-225032A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】核酸増幅分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20151117BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20151117BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   G01N35/00 A
   C12M1/00 A
   C12M1/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-111439(P2014-111439)
(22)【出願日】2014年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(72)【発明者】
【氏名】澤田 孝憲
(72)【発明者】
【氏名】前田 耕史
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩子
【テーマコード(参考)】
2G058
4B029
【Fターム(参考)】
2G058AA08
2G058AA10
2G058GD01
2G058GE09
2G058GE10
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB16
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA12
4B029GB01
4B029GB02
4B029GB06
(57)【要約】
【課題】従来手法では、核酸増幅反応曲線のプラトー値やCt値から増幅の有無を判定することができたとしても、正常な核酸増幅反応曲線か否かを判定できない。
【解決手段】本発明は、測定対象とする試料について、2次元グラフの第1の軸を核酸増幅産物についての測定値、第2の軸を核酸増幅反応の進捗を示す値とする核酸増幅反応曲線を取得する測定部と、正常な核酸増幅反応曲線と測定した核酸増幅反応曲線を比較する比較部と、比較結果に基づいて、測定した前記核酸増幅反応曲線が正常か否か判定する判定部とを有する核酸増幅分析装置を提供する。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象とする試料について、2次元グラフの第1の軸を核酸増幅産物についての測定値、第2の軸を核酸増幅反応の進捗を示す値とする核酸増幅反応曲線を取得する測定部と、
正常な核酸増幅反応曲線と測定した核酸増幅反応曲線を比較する比較部と、
比較結果に基づいて、測定した前記核酸増幅反応曲線が正常か否か判定する判定部と
を有する核酸増幅分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の核酸増幅分析装置において、
前記比較部は、正常な核酸増幅反応曲線の変曲点における傾き又はプラトー値と、測定した核酸増幅反応曲線の変曲点での傾き又はプラトー値を比較する
ことを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の核酸増幅分析装置において、
前記核酸増幅反応曲線の不連続な測定値に対してシグモイド関数を適用する第1の処理、シグモイド関数へ準ニュートン法を用いた近似処理を繰り返し適用する第2の処理、シグモイド関数のパラメータを決定する第3の処理を実行して、前記核酸増幅反応曲線の近似式を算出する演算機能部
を更に有する核酸増幅分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の核酸増幅分析装置において、
前記演算機能部は、
算出された前記近似式に従い算出された増幅産物に基づく測定値に対し、閾値に達する核酸増幅反応の進捗を示す値を算出する
ことを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項5】
請求項3に記載の核酸増幅分析装置において、
前記演算機能部は、
算出された前記近似式を前記核酸増幅反応曲線にフィッティング可能な場合、前記近似式を1階微分した関数に、前記近似式を2階微分して算出した変曲点の値を代入して、前記変曲点における前記近似式の傾きを算出する
ことを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項6】
請求項3に記載の核酸増幅分析装置において、
前記演算機能部は、
前記核酸増幅反応曲線が算出された前記近似式にフィッティング不可の場合、前記核酸増幅反応曲線のプラトー値を算出する
ことを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の核酸増幅分析装置において、
前記正常な核酸増幅反応曲線の前記変曲点と当該変曲点における前記傾き、又は、前記プラトー値を試薬容器の情報記憶手段から読み取る読み取り部
を更に有することを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項8】
請求項1に記載の核酸増幅分析装置において、
前記正常な核酸増幅反応曲線の変曲点における傾きと、前記測定した核酸増幅反応曲線の変曲点における傾きを表示画面上に対比的に表示する
ことを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項9】
請求項1に記載の核酸増幅分析装置において、
前記正常な核酸増幅反応曲線のプラトー値と、前記測定した核酸増幅反応曲線のプラトー値を表示画面上に対比的に表示する
ことを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項10】
請求項1に記載の核酸増幅分析装置において、
前記判定部は、測定した前記核酸増幅反応曲線が正常でないと判定された場合、想定される不具合内容及び/又は増幅不良を報知する
ことを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項11】
請求項1に記載の核酸増幅分析装置において、
前記判定部は、測定した前記核酸増幅反応曲線が正常でないと判定された場合、再キャリブレーション条件設定画面を通じて事前に設定された条件に従い、再キャリブレーションを実行させる
ことを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸増幅分析装置において、
前記再キャリブレーション条件が、正常な核酸増幅反応曲線の変曲点における傾きと測定した核酸増幅反応曲線の変曲点での傾きとの比である
ことを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項13】
請求項11に記載の核酸増幅分析装置において、
前記再キャリブレーション条件が、正常な核酸増幅反応曲線のプラトー値と測定した核酸増幅反応曲線のプラトー値との比である
ことを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項14】
請求項1に記載の核酸増幅分析装置において、
前記判定部は、測定した前記核酸増幅反応曲線が正常でないと判定された場合、再検査条件設定画面を通じて事前に設定された再検査条件に従い、再検査を実行させる
ことを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸増幅分析装置において、
前記再検査条件が、正常な核酸増幅反応曲線の変曲点における傾きと測定した核酸増幅反応曲線の変曲点での傾きとの比である
ことを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項16】
請求項14に記載の核酸増幅分析装置において、
前記再検査条件が、正常な核酸増幅反応曲線のプラトー値と測定した核酸増幅反応曲線のプラトー値との比である
ことを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項17】
請求項1に記載の核酸増幅分析装置において、
前記測定部は、
それぞれ独立に温度制御可能な複数の温調ブロックと、
反応液を収容する複数の反応容器がそれぞれの前記温調ブロックで温度制御される保持具と
を更に有することを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸増幅分析装置において、
前記測定部は、測定した前記核酸増幅反応曲線が正常でないと判定された場合の不具合内容に前記温調ブロックの異常が含まれたとき、異常が疑われる温調ブロックで温度制御される前記保持具の使用を禁止する
ことを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項19】
請求項18に記載の核酸増幅分析装置において、
再キャリブレーション条件設定画面を通じ、ユーザは、異常が疑われる温調ブロックの使用を禁止するか否かを事前に選択できる
ことを特徴とする核酸増幅分析装置。
【請求項20】
請求項18に記載の核酸増幅分析装置において、
再検査条件設定画面を通じ、ユーザは、異常が疑われる温調ブロックの使用を禁止するか否かを事前に選択できる
ことを特徴とする核酸増幅分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に含まれる核酸の増幅反応をモニタリングする核酸増幅分析装置に関する。
【技術背景】
【0002】
遺伝子検査の分野では、微量の標的遺伝子を増幅して検出する核酸増幅技術が利用されている。遺伝子検査の最も一般的な例にPCR(Polymerase Chain Reaction)法がある。PCR
法は、標的とする核酸を含む反応液に対して温度変化(温度サイクル)を繰り返し、特定の塩基配列を選択的に増幅させる方法である。一般的なPCR法は、(1)熱変性、(2)アニー
リング、(3)伸長の3ステップを1サイクルとし、各ステップを試薬指定の温度で制御する
ことにより、鋳型となるDNAを2倍に増幅させる。サイクルを繰り返すことで、鋳型となるDNAが指数関数的に増幅することができる。
【0003】
PCR法の増幅反応をリアルタイムに検出し、標的核酸を定量または定性分析する方法と
して、リアルタイムPCRがある。従来のリアルタイムPCR装置は、複数の反応液に対して、同時に同じ温度サイクルを開始して鋳型となるDNAを増幅する。
【0004】
リアルタイムPCR法では、PCRを行う際に蛍光色素が付加されたプローブなどを使用し、蛍光強度を測定することによりDNAの増幅産物を検出する。蛍光強度の検出は、基本的に
、一定時間毎に行う。このため、X軸にサイクル数、Y軸に蛍光強度をプロットすると、不連続な散布図が得られる。
【0005】
リアルタイムPCR法における増幅の判定は、蛍光強度が所定の閾値に達したサイクル(Threshold Cycle Value: Ct値)を算出することにより行う。定量検査においては、既知濃度の標準液(キャリブレータ)についてCt値を算出し、Ct値と核酸濃度との関係を示す検量線を作成する。そして、未知濃度サンプルについてCt値を求め、作成した検量線からサンプル中の核酸濃度を算出する。リアルタイムPCR法において、サイクル数(X軸)と蛍光強度(Y軸)間の不連続なプロットからCt値を求める解析法として、ダブルシグモイド曲線に
近似させる方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
核酸増幅分析装置は、検査品質の判定に、ポジティブコントロールやネガティブコントロール、インターナルコントロールを用いる。ポジティブコントロールやネガティブコントロール、インターナルコントロールの検査結果が不良である場合、核酸増幅分析装置は、同時に測定した標的核酸試料の検査結果も不良であると判定する。なお、増幅の判定法には、プラトー検出やCt値検出がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−267730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、(1)反応液に核酸増幅反応を阻害する物質が含まれていた時、(2)試薬の消費期限が切れていた時、(3)温調ブロック異常に伴う温度サイクル不良等の装置トラブルな
どがあった時、核酸増幅反応曲線の変化量は、正常な反応と比べ小さくなる。このような異常な核酸増幅反応曲線であっても、特許文献1に記載のダブルシグモイド式に近似する
ことができればCt値を求めることができる。ただし、求められたCt値は正確でない可能性が残る。また、従来手法では、核酸増幅反応曲線のプラトー値やCt値から増幅の有無を判定することができたとしても、正常な核酸増幅反応曲線か否かを判定することはできなかった。
【0009】
そこで、本発明は、遺伝子検査等に利用される核酸増幅分析装置に、測定した核酸増幅反応の良否を判定する機能を設け、Ct値などの核酸増幅反応の進捗を示す値の測定結果の信頼性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本明細書は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、「測定対象とする試料について、2次元グラフの第1の軸を核酸増幅産物についての測定値、第2の軸を核酸増幅反応の進捗を示す値とする核酸増幅反応曲線を取得する測定部と、正常な核酸増幅反応曲線と測定した核酸増幅反応曲線を比較する比較部と、比較結果に基づいて、測定した前記核酸増幅反応曲線が正常か否か判定する判定部とを有する核酸増幅分析装置」を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キャリブレータやポジティブコントロール、インターナルコントロール等の核酸を含む試料について、核酸増幅反応が正常か否かを検出でき、Ct値等の核酸増幅反応の進捗を示す値の測定結果の信頼性を向上させることができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】核酸増幅分析装置の構成例を示す図。
図2】核酸増幅反応曲線が正常か否かの判定に使用するフローチャート。
図3】正常な核酸増幅反応曲線と異常な増幅曲線の例を示す図。
図4】正常な核酸増幅反応曲線と異常な増幅曲線を2階微分して得られる曲線の例を示す図。
図5】正常な核酸増幅反応曲線と異常な増幅曲線を1階微分して得られる曲線の例を示す図。
図6A】判定結果画面の例を示す図(近似できる場合)。
図6B】判定結果画面の例を示す図(近似できる場合)。
図6C】判定結果画面の例を示す図(近似できない場合)。
図6D】判定結果画面の例を示す図(近似できない場合)。
図7】自動再キャリブレーションの条件設定画面の例を示す図。
図8】核酸増幅部を説明する図。
図9】自動再検の条件設定画面の例を示す図。
図10】異常原因の通知画面例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の実施態様は
、後述する形態例に限定されるものではなく、その技術思想の範囲において、種々の変形が可能である。
【0014】
[装置構成]
図1に、核酸増幅分析装置100の概略構成を示す。サンプル容器101には、核酸を含む検体が収容される。サンプル容器ラック102には、複数のサンプル容器101が収容される。試薬容器103には、検体に加える試薬が収納される。試薬容器ラック104には、複数の試薬容器103が収容される。反応容器105は、検体と試薬の混合に使用される。反応容器ラック106には、複数の反応容器105が収容される。反応液調整部107は、サンプル容器101から吸引した検体と試薬容器103から吸引した試薬を反応容器105に吐出して混合し、反応液を調整する。密閉ユニット108は、反応容器105の密閉に使用される。攪拌ユニット109は、密閉された反応容器105に収納された反応液の攪拌に使用される。
【0015】
核酸増幅分析装置100には、ロボットアームX軸110と、ロボットアームY軸111を有する。ロボットアームX軸110は、核酸増幅分析装置100のX方向に沿って配置される。ロボットアームY軸111は、ロボットアームX軸110上に、Y軸方向に沿って配
置される。ロボットアームY軸111は、ロボットアームX軸110の駆動によりX軸方向
に移動される。ロボットアームY軸111上には、ロボットアームY軸の駆動によりY軸方
向に移動されるグリッパユニット112が配置される。グリッパユニット112は、反応容器105を掴み、装置内の各部に搬送する。また、ロボットアームY軸111上には、
ロボットアームY軸の駆動によりY軸方向へ移動することができる分注ユニット113が配置される。分注ユニット113は、サンプル容器101に収納された検体や試薬容器103に収納された試薬を吸引し、反応液調整部107に架設された反応容器105に吐出する。
【0016】
チップラック115は、分注ユニット113を用いて検体や試薬を吸引・吐出する時に使用されるチップ114を複数収容する。核酸増幅部116は、反応容器105に収納された反応液中の核酸の増幅に使用される。検出器117は、増幅過程の蛍光強度の検出に使用される。廃棄ボックス118は、使用済みのチップ114や使用済みの反応容器105の廃棄に使用する。入力部119は、キーボードやマウス等である。入力部119は、試薬ボトルに張り付けられたバーコード等から基準値(後述する変曲点や変曲点の傾き)の情報の入力にも用いられる。基準値がバーコードに記述されている場合、入力部119にはバーコードリーダーを使用する。表示部120は、液晶モニタ等である。制御部121は、装置全体の動作を制御するコンピュータである。本実施例で提案する異常な核酸増幅反応曲線の検出処理も制御部121が実行する。
【0017】
[検出処理動作の概要]
図2に、異常な核酸増幅反応曲線の検出処理手順の概要を示す。制御部121は、まずキャリブレータやポジティブコントロール等を含む試料をPCR測定し、核酸増幅反応曲線
を取得する(ステップ201)。次に、制御部121は、測定により得た核酸増幅反応曲線をシグモイド式に近似する処理を行い、近似(フィッティング)の可否を判定する(ステップ202)。制御部121は、近似可の場合にはステップ203に進み、近似不可の場合にはステップ209に進む。
【0018】
ステップ203においては、制御部121は、近似した核酸増幅反応曲線(近似式)の変曲点(例えば上へ凸から下へ凸へと変化する点)を求めるため、近似された核酸増幅反応曲線(近似式)を数学的に2階微分する。次に、制御部121は、2階微分式が0(ゼロ)となる変数の値を求める(ステップ204)。ここでの変数は、核酸増幅反応の進捗を示す値である。算出法には、2分法やニュートン法等があるが、本実施例では後述の通り、2分法を簡潔化した方法を採用する。次に、制御部121は、変曲点における傾きを算出するため、近似された核酸増幅反応曲線(近似式)を数学的に1階微分する(ステップ205)。続いて、制御部121は、1階微分式の変数値にステップ204で求めた変曲点を代入し、変曲点での傾きを算出する(ステップ206)。ここでの変数も、核酸増幅反応の進捗を示す値である。
【0019】
この後、制御部121は、判定条件(後述する式(12))に従い、近似された核酸増幅反応曲線(近似式)が正常か否かを判定する(ステップ207)。正常であると判定された場合、制御部121は、ステップ210に移行して一連の判定処理を終了する。一方、異常であると判定された場合、制御部121は、ステップ208に移行する。ステップ208で、制御部121は、想定される不具合を例えば液晶モニタに表示し、その後、ステップ210に移行して一連の判定処理を終了する。
【0020】
なお、ステップ202からステップ209に移行した場合、制御部121は、判定条件(後述する式(14))に従い、測定された核酸増幅反応曲線が正常か否かを判定する。正常であると判定された場合、制御部121は、ステップ210に移行して一連の判定処理を終了する。一方、異常であると判定された場合、制御部121は、ステップ208に移行する。ステップ208では、前述したように、制御部121は、想定される不具合を液晶モニタに表示し、その後、ステップ210に移行して一連の判定処理を終了する。
【0021】
以下の説明でも、引き続き、核酸増幅方法としてPCR法を適用する場合について説明す
る。もっとも、核酸増幅法は、PCR法に限定されない。例えばLAMP(Loop-mediated isothermal amplification)法などの恒温核酸増幅方法も適用することができる。
【0022】
PCR法等の温度サイクルを含む核酸増幅法においては、増幅産物に基づく規定の測定値
を閾値として用いるときに、当該閾値に測定値が達するサイクル数をCt値と定義する。恒温核酸増幅法では、増幅産物に基づく規定の測定値を閾値として用いるときに、当該閾値に測定値が達する反応時間をCt値に対応する概念として定義する。従って、本明細書においては、「核酸増幅反応の進捗を示す値」を、増幅産物の一定量を閾値として用いるときに、当該閾値に測定値が達するサイクル数または反応時間を意味する。
【0023】
ところで、核酸増幅法における増幅産物を検出する方法は任意であり、例えば従来公知の検出原理を利用することができる。増幅した核酸の検出には、いわゆる蛍光検出法を利用することができる。また、反応液の濁度変化、散乱光強度変化に基づいて増幅した核酸を検出しても良い。ここでの蛍光検出法には、インターカレータを用いる方法と蛍光標識プローブを用いる方法がある。インターカレータ法は、一般的にSYBR Green1と核酸増幅
反応によって合成された二本鎖DNAを結合させ、励起光の照射により生じる蛍光強度を測
定することにより、増幅産物の生成量に基づく蛍光量をモニタする方法である。一方、蛍光標識プローブ法の一例として、5’末端を蛍光物質で、3’末端をクエンチャー物質で修飾したTaqManプローブと核酸増幅反応によって合成された二本鎖DNAを結合させ、励起光
の照射により生じる蛍光強度を測定することにより、増幅産物の生成量に基づく蛍光量をモニタする方法がある。
【0024】
[理想的な(基準となる)核酸増幅反応曲線の作成]
以上のように、如何なる核酸増幅法であっても、所定の間隔で核酸増幅産物から発せられる蛍光量や濁度変化、散乱光量等を検出することにより、X軸を増幅反応の進捗を示す
値(サイクル数又は反応時間)、Y軸を増幅産物の検出値(蛍光強度、濁度変化、散乱強
度等)とする核酸増幅反応曲線を作成することができる。
【0025】
本実施例の場合、ステップ202の近似(フィッティング)処理において、核酸増幅反応曲線を、5つのパラメータを持つシグモイド式(1)に近似させる。
【0026】
以下に示す表1に、各パラメータの意味を示す。
【0027】
ステップ201で測定された核酸増幅反応曲線の式(1)への近似は、準ニュートン法に
より行い、式(1)から得られる計算値F(Xi)と実測値Yi(i:サイクル数又は反応時間)と
の差の二乗和Z2(式(2))が所定値以下になるまで非線形最小二乗法(準ニュートン)
処理を繰り返し、上記パラメータの最適値を決定する。
【0028】
ここで、準ニュートン法について簡単に説明する。準ニュートン法は、以下のステップI〜IIIで構成される。
【0029】
ステップI:
行列J(5行i列)を、次の式(3)により定義する。iは増幅反応の進捗を示す値(サイクル数又は反応時間)である。(δZ/δB)1,(δZ/δa)1,(δZ/δb)1,(δZ/δc)1,(δZ/δK)1は、Zにi=1を代入し、変数B, a, b, c ,Kで偏微分する意味である。
【0030】
ステップII:
残差Zを次の式(4)で表現する。
ここで、ΔB,Δa,Δb,Δc,ΔKは、次の式(5)で与えられ、B,a,b,c,K
は期待値、B’,a’,b’,c’,K’は設定値である。
【0031】
ステップIII:
式(4)を変形し、ΔB,Δa,Δb,Δc,ΔKを計算する。
ここで、Jは行列Jの配置行列であり、(J*J)-1は(J*J)の逆行列である。制御部121は、以上のステップIIとステップIIIを、式(2)の残差二乗和Zi2が設定値以下にな
るまで反復する。
【0032】
本実施例では、核酸増幅反応曲線の近似式を式(1)で表すが、従来公知のダブルシグモ
イド式を利用することも可能である。
【0033】
図3に、使用した検査項目試薬で核酸増幅反応させる場合に望まれる理想的な核酸増幅反応曲線301を示す。なお、核酸増幅反応曲線301は、式(1)に近似した後のグラフ
であり、各パラメータの値は表2の通りである。
【0034】
【0035】
本実施例では、表2のパラメータにより決まる核酸増幅反応曲線301を、使用した検査項目試薬におけるポジティブコントロールの正常な増幅曲線と見なす。そして、式(1)
を2階微分(式(7))して核酸増幅反応曲線301の変曲点を求める。式(7)中の変数B,K,a,b,cは表2に従う。
【0036】
図4に、核酸増幅反応曲線301を式(7)により2階微分した後のグラフ401を示す
。2分法より、F’’(26)>0, F’’(27)<0である。このため、F’’(X) = 0となるXは、26 < X <27の範囲にある。よって、本実施例では、F’’(26) ≒ 0とし、X=26を変曲点とする。本実施例とは別に、ニュートン近似を適用し、F’’(X) ≒ 0を算出すること
も可能である。
【0037】
次に、制御部121は、式(1)を1階微分(式(8))し、核酸増幅反応曲線301の各X
値に対する傾きを求める。式(8)中の変数B,K,a,b,cは表2に従う。
【0038】
式(8)のXに先に求めた変曲点X = 26を代入すると、F’(26) = 0.048となる。制御部
121は、この値を、正常な核酸増幅反応曲線301の変曲点における傾きとする。図5に、式(8)により表される核酸増幅反応曲線301を1階微分したグラフ501を示す。
【0039】
さらに、制御部121は、この傾き0.048を測定に使用した検査項目試薬に対するポジ
ティブコントロール核酸増幅反応曲線の変曲点における傾きの基準値(S)とし、他の試薬
情報と共に試薬ボトルに貼り付けられるバーコードに登録する。なお、登録先はバーコードに限らず、試薬ボトルに張り付けられるICタグ等のメモリに登録しても良い。因みに、傾きの基準値は、同じメーカの同一検査項目の試薬でも、試薬ロット(Lot)により変
わる可能性がある。このバーコード等に判定式の基準値が登録されているので、いずれの核酸増幅分析装置においても、測定された核酸増幅反応曲線が正常か否かの判定を行うことが可能となる。
【0040】
さらに、キャリブレータやインターナルコントロールなど他の核酸試料においても、ポジティブコントロールの核酸増幅反応曲線と同様、キャリブレータやインターナルコントロールなど他の核酸試料について、理想となる核酸増幅反応曲線301の変曲点における傾きの基準値(S)も試薬バーコードに登録することができる。
【0041】
さらに、制御部121は、ポジティブコントロールについて、使用した検査項目の試薬に対し、正常な核酸増幅反応曲線301のプラトー値302を式(9)より算出する。算出
されたプラトー値302は、基準とする核酸増幅反応曲線のプラトー値(P)として試薬バ
ーコード等に登録することができる。本実施例では、次の式(9)からプラトー値(P) = 1.0とした。
【0042】
ただし、F(Xi-1)は(i-1)サイクルにおける検出値の近似値であり、F(Xi)はiサイクルにおける検出値の近似値であり、iはPCRの最終サイクルである。
【0043】
キャリブレータやインターナルコントロールなど他の核酸試料についても理想となる核酸増幅反応曲線のプラトー値302がある。キャリブレータやインターナルコントロールなど他の核酸試料についても、基準とする核酸増幅反応曲線のプラトー値(P)を試薬バー
コードに登録することができる。
【0044】
[測定時の処理動作]
次に、対象試料について測定された核酸増幅反応曲線が異常か否かを検出する動作について説明する。前述したように、図2に示すフローチャートには、(1)試薬バーコードに
登録されたキャリブレータやポジティブコントロール、インターナルコントロールなどの核酸試料に対する核酸増幅反応曲線の変曲点での傾きの基準値(S)を利用する処理と、(2)試薬バーコードに登録されたキャリブレータやポジティブコントロール、インターナルコントロールなどの核酸試料に対する核酸増幅反応曲線のプラトー値の基準値(P)を利用す
る処理の2パターンが用意されている。その理由は、ユーザがキャリブレータやポジティブコントロール、インターナルコントロールを含む患者検体を測定した場合に、核酸増幅反応曲線が式(1)に近似できる場合と、増幅産物に基づく検出値が低い又は核酸増幅反応
曲線のベースライン305のバラつき等により近似不可となる場合とがあるためである。
【0045】
図3に、ポジティブコントロールについて異常な核酸増幅反応曲線303の例を示す。
(1)反応液に増幅反応を阻害する物質が含まれていた、(2)試薬の消費期限が切れていた、(3)温調ブロック異常に伴う温度サイクル不良等の装置トラブルなどがあった時、核酸増
幅反応曲線303の変化量は、正常(理想的)な核酸増幅反応曲線301と比べて強度が小さくなる。図3に示す異常な核酸増幅反応曲線303は、測定された核酸増幅反応曲線を式(1)に近似した後のグラフであり、各パラメータの値は表3の通りである。
【0046】
【0047】
ステップ201におけるポジティブコントロールの測定後、制御部121は、ステップ202においてポジティブコントロールの核酸増幅反応曲線は、前述の式(1)に基づき、
次の式(10)に近似される。
【0048】
なお、式(10)では、近似式を与える各パラメータの値に、表3に示した値を代入している。この式(10)が、核酸増幅反応曲線303(Ft(X)とする)である。
【0049】
次に、制御部121は、式(10)を式(7)に従い2階微分(Ft’’(X)とする)した後(ステップ203)、測定ポジティブコントロール増幅曲線の変曲点を求める(ステップ204)。図4に、式(10)により表される核酸増幅反応曲線303を2階微分した後のグラフ402を示す。ステップ204において、Ft’’(X) ≒ 0となるX = 26を、核酸増幅反応曲線303の変曲点とする。
【0050】
次に、制御部121は、式(10)を式(8)に従い1階微分し(Ft’(X)とする)(ステップ205)、測定ポジティブコントロール増幅曲線の変曲点における傾きを求める(ステップ206)。図5に、式(10)により表される核酸増幅反応曲線303を1階微分したグラフ502を示す。式(11)のXに先に求めた変曲点X = 26を代入すると、傾きは、Ft’(26) = 0.029となる。
【0051】
【0052】
次に、制御部121は、ステップ207において使用した試薬バーコードに登録されたポジティブコントロール核酸増幅反応曲線の傾きの基準値(S)(本実施例の場合は、F’(26) = 0.029)を利用し、式(10)に近似された核酸増幅反応曲線303が正常か否かを式(12)で判定する。
【0053】
ただし、S’は判定対象増幅曲線の変曲点での傾き、Sは基準増幅曲線の変曲点での傾きである。
【0054】
ここで、式(12)に、S = 0.048、S’ = 0.029を代入すると、判定式Dsの値は、以下により計算される。
【0055】
仮にDs < 0.7の時を異常であるとすると、制御部121は、核酸増幅反応曲線303
を異常と判定してステップ208に進み、想定される不具合の内容をモニタに表示する。
なお、想定される不具合の内容は、過去の測定結果よりデータベース化されているものとする。一方、Ds ≧ 0.7であれば、制御部121は、測定により得られた核酸増幅反応曲
線を正常であると判定し、アラームを表示させることなく判定処理を終了する(ステップ210)。
【0056】
一方、ステップ202において、増幅産物に基づく検出値が低い又は核酸増幅反応曲線のベースライン305のバラつき等により、測定により得られた核酸増幅反応曲線を式(1)に近似できなかった場合、制御部121は、使用した試薬バーコードに登録されたポジ
ティブコントロール核酸増幅反応曲線のプラトー値(P)とP = 1.0(式(9)より)とを利用
し、得られた核酸増幅反応曲線が正常か否かを次の式(14)を用いて判定する(ステップ209)。
【0057】
ただし、P’は、判定対象増幅曲線のプラトー値であり、Pは基準増幅曲線のプラトー値である。
【0058】
仮に測定したポジティブコントロールの核酸増幅反応曲線303が式(1)へ近似できな
かった場合、核酸増幅反応曲線303のプラトー値(P’)304は、P’ = 0.6となる。ここで、Pは式(9)より、P’は式(15)より導かれる。
【0059】
ただし、Y(Xi-1)は(i-1)サイクルでの検出値(実測値)であり、Y(Xi)はiサイクルでの検出値(実測値)であり、iはPCRの最終サイクルである。
【0060】
ここで、式(14)にP = 1.0、P’= 0.6を代入すると、判定式Dpの値は、以下により計算
される。
【0061】
仮にDp < 0.7の時を異常であるとすると、制御部121は、核酸増幅反応曲線303
を異常と判定してステップ208に進み、想定される不具合の内容をモニタに表示する。
やはり、想定される不具合の内容は、過去の測定結果よりデータベース化されているものとする。一方、Dp ≧ 0.7の場合、制御部121は、測定により得られた核酸増幅反応曲
線を正常であると判定し、アラームを表示させることなく判定処理を終了する(ステップ210)。ただし、近似エラーのアラームは、別途モニタに表示される。
【0062】
本実施例では、ポジティブコントロールの核酸増幅反応曲線について、核酸増幅反応曲線が正常か否かを判定する方法を説明しているが、キャリブレータやインターナルコントロールを含む核酸試料を測定した場合も、同様に処理される。
【0063】
なお、測定した核酸試料の核酸増幅反応曲線が正常と判定された場合、制御部121は、増幅産物に基づく測定値に対し、閾値(Threshold Line)に達する核酸増幅反応の進捗を示す値を算出する。異常と判定された核酸増幅反応曲線の場合、制御部121は、進捗値を算出するが、同時に増幅不良のアラームを付与する。
【0064】
[判定結果の表示例]
図6Aに、ステップ207における判定結果の表示画面例を示す。当該画面には、基準となる核酸増幅反応曲線と測定試料の増幅曲線に関する一次微分曲線601(式(8)参照
)と、変曲点における傾き比(S’/S)と変曲点の結果602とが表示される。同画面に
は、一次微分曲線601についてX軸スクロール604が用意される。X軸スクロール604を軸方向に沿って移動すると、制御部121は、指定のX軸位置(本実施例ではサイク
ル数)に対する基準核酸増幅反応曲線又は測定試料の核酸増幅反応曲線における傾き603も画面内に表示される。
【0065】
図6Bに、ステップ207における判定結果の別の表示画面例を示す。当該画面には、基準となる核酸増幅反応曲線と、測定試料の核酸増幅反応曲線と、過去に測定した同一項目の一次微分曲線とを重ね合わせたグラフ605が表示される。また、同画面には、各増幅曲線の変曲点と、当該変曲点における傾きの結果606も表示される。図6Bでは、グラフ605に、3試料の一次微分曲線が表示されているが、PCの処理能力の範囲内でユーザが重ね合わせたい数(核酸試料の数)を選択できるようにしても良い。
【0066】
図6Cに、ステップ209における判定結果の表示画面例を示す。当該画面には、基準となる核酸増幅反応曲線と測定試料の核酸増幅反応曲線をそれぞれ示すグラフ607と、プラトー値の比(P’/P)及びプラトー値の結果608とが表示される。
【0067】
図6Dに、ステップ209における判定結果の別の表示画面例を示す。当該画面には、基準となる核酸増幅反応曲線と、測定試料の核酸増幅反応曲線と、過去に測定した同一項目の核酸増幅反応曲線を重ね合わせたグラフ609が表示される。また、同画面には、各増幅曲線に対応するプラトー値の結果610も表示される。本実施例では、グラフ609に、3試料の核酸増幅反応曲線が表示されているが、PCの処理能力の範囲内でユーザが重ね合わせたい数(核酸試料の数)を選択できるようにしても良い。
【0068】
[再キャリブレーション条件設定画面]
制御部121には、キャリブレータの核酸増幅反応曲線が異常であると判定された場合に、自動的に再キャリブレーションを実行する機能が搭載されている。ここで、再キャリブレーションとは、核酸試料が収納されたサンプル容器101や試薬容器103をユーザが新たに架設することなく(すなわち、最初に載置したサンプル容器101や試薬容器103を使用し)、再度実行されるキャリブレーションのことである。
【0069】
図7に、自動再キャリブレーション条件設定画面の表示例を示す。図7中の傾き比(S
’/S)は式(12)で算出される値であり、プラトー比(P’/P)は式(14)で算出される値で
ある。測定結果に基づいて計算された傾き比(S’/S)やプラトー比(P’/P)がユーザの設定した値より小さく、かつ「再キャリブレーションをする」ボタンにチェックが入っている場合、制御部121は、異常と判定された濃度が得られたキャリブレータについてのみ再測定を自動実行する機能を有する。
【0070】
ここでは、再キャリブレーション機能に関連する核酸増幅分析装置100の構造部分について、図を用いて簡単に説明する。図8に、核酸増幅分析装置100における核酸増幅部116と検出部117の詳細構成を示す。核酸増幅部116は、カローセル802上に、独立して温度制御可能な温調ブロック803を複数有している。反応液を収容する複数の反応容器105に対応する温調ブロックには、温度制御される保持具804が設けられている。なお、カローセル820は中心軸805を軸中心に回転する。
【0071】
前述のステップ208において発生した不具合の内容に、温調ブロック803の異常が含まれる場合、核酸増幅分析装置100(制御部121)は、異常が疑われる温調ブロック803の使用を中止する(マスクする)機能を有している。図7中の「温調異常ブロックをマスク」ボタンが、この温調ブロックのマスク機能の実行の有無を設定するボタンである。当該ボタンにチェックが入っている場合、制御部121は、異常が疑われる温調ブロック803を使用せず(マスクし)、別の温調ブロック803を用いて再キャリブレーションを実行する。
【0072】
制御部121は、ポジティブコントロールの核酸増幅反応曲線が異常と判定された場合も、自動的にポジティブコントロールを再検する機能を搭載する。図9に、自動再検条件設定画面の表示例を示す。図9中の条件設定法は、再キャリブレーション機能の場合と同様である。ここで、再検とは、核酸試料が収納されたサンプル容器101や試薬容器103をユーザが新たに架設することなく(すなわち、最初に載置したサンプル容器101や試薬容器103を使用し)、同一の核酸試料について同一項目の再測定を実行することである。
【0073】
前述のステップ209において核酸増幅反応曲線が異常と判定された場合も、制御部121は、インターナルコントロールを自動的に再検することができる。条件設定画面の表示項目は、図7と同様である。ただし、「自動再キャリブレーションする」ボタンに代えて、「自動再検」するボタンが用いられる。さらに、自動再検機能は、上記ポジティブコントロールやインターナルコントロールを含む検体以外の核酸試料にも適用可能である。
【0074】
[効果]
前述の通り、核酸増幅分析装置100によれば、キャリブレータ、ポジティブコントロール、インターナルコントロール等の核酸を含む試料について、核酸増幅反応が正常か否かを検出することが可能となり、Ct値といった核酸増幅反応の進捗を示す値の測定結果の信頼性を向上させることができる。
【0075】
また、核酸増幅分析装置100によれば、核酸増幅反応曲線が異常と判定された場合に想定される不具合の内容をモニタに表示することができ(図10)、ユーザに適切な処理を推奨することができる。さらに、キャリブレータの核酸増幅反応曲線が異常と判定された場合、自動で再キャリブレーションを実行する機能を持たせることで、ユーザの負担を軽減することができる。
【0076】
さらに、ポジティブコントロールや濃度未知試料(検体)と同時に測定されるインターナルコントロール、その他の核酸を含む試料の核酸増幅反応曲線が異常と判定された場合、自動で再検を実行する機能を持たせることで、ユーザの負担軽減を図ることができる。
【0077】
[他の実施例]
本発明は、上述した実施例の構成に限定されるものでなく、様々な変形例を含んでい
る。例えば上述した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために、一部の実施例について詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備える必要は無い。また、ある実施例の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成に他の構成を追加し、又は、各実施例の一部構成を他の構成で置換し、又は各実施例の一部構成を削除することも可能である。
【0078】
また、上述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例
えば集積回路その他のハードウェアとして実現しても良い。また、上記の各構成、機能等は、それぞれの機能を実現するプログラムをプロセッサが解釈して実行することにより実現しても良い。すなわち、各構成等をソフトウェアにより実現しても良い。この場合、各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に格納
することができる。
【0079】
また、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示すものであり、製品上必
要な全ての制御線や情報線を表すものでない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0080】
100…核酸増幅分析装置
101…サンプル容器
102…サンプル容器ラック
103…試薬容器
104…試薬容器ラック
105…反応容器
106…反応容器ラック
107…反応液調整部
108…密閉ユニット
109…攪拌ユニット
110…ロボットアームX軸
111…ロボットアームY軸
112…グリッパユニット
113…分注ユニット
114…チップ
115…チップラック
116…核酸増幅部
117…検出器
118…廃棄ボックス
119…入力部
120…表示部
121…制御部
802…カローセル
803…温調ブロック
804…保持具
805…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10