特開2015-225050(P2015-225050A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーションの特許一覧
特開2015-225050電気機器の寿命を予測する装置及び方法
<>
  • 特開2015225050-電気機器の寿命を予測する装置及び方法 図000004
  • 特開2015225050-電気機器の寿命を予測する装置及び方法 図000005
  • 特開2015225050-電気機器の寿命を予測する装置及び方法 図000006
  • 特開2015225050-電気機器の寿命を予測する装置及び方法 図000007
  • 特開2015225050-電気機器の寿命を予測する装置及び方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-225050(P2015-225050A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】電気機器の寿命を予測する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20151117BHJP
   G01R 31/04 20060101ALI20151117BHJP
   G01K 7/16 20060101ALI20151117BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   G01R31/00
   G01R31/04
   G01K7/16 Z
   G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-111792(P2014-111792)
(22)【出願日】2014年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【復代理人】
【識別番号】100134740
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 文雄
(72)【発明者】
【氏名】清野 さつ夫
(72)【発明者】
【氏名】大野 英司
(72)【発明者】
【氏名】上村 昌宏
【テーマコード(参考)】
2G014
2G036
2G050
【Fターム(参考)】
2G014AA02
2G014AA23
2G014AB04
2G014AB52
2G036AA24
2G036BA03
2G036BA35
2G036BB01
2G050AA01
2G050BA10
2G050CA01
2G050EB02
(57)【要約】
【課題】電気機器に取り付けられた熱履歴センサを用いて電気機器の寿命を予測する装置及び方法を提供する。
【解決手段】本発明の装置(方法)は、(a)電気機器10の内部または外壁表面に取り付けられた少なくとも1つの熱履歴センサ20であって、複数の異種金属接合を含み、動作中の電気機器の内部または外壁の温度により異種金属接合において成長する金属間化合物の量に応じて、異種金属接合の抵抗値が変化するように構成された熱履歴センサと、(b)熱履歴センサから複数の異種金属接合の抵抗値を定期的または不定期に継続してモニターしかつメモリに保管して、当該保管された抵抗値の履歴を利用して電気機器の寿命を予測する判断手段30、32、34を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の寿命を予測するための装置であって、
電気機器の内部または外壁表面に取り付けられた少なくとも1つの熱履歴センサであって、複数の異種金属接合を含み、動作中の電気機器の内部または外壁の温度により異種金属接合において成長する金属間化合物の量に応じて、異種金属接合の抵抗値が変化するように構成された熱履歴センサと、
熱履歴センサから複数の異種金属接合の抵抗値を定期的または不定期に継続してモニターしかつメモリに保管して、当該保管された抵抗値の履歴を利用して電気機器の寿命を予測する判断手段と、を備える装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記抵抗値が所定のしきい抵抗値を越えた前記異種金属接合の割合が所定のしきい割合になるまでの時間を前記電気機器の寿命とする、請求項1の装置。
【請求項3】
前記判断手段は、前記抵抗値の変化率が所定のしきい変化率を越える時の時間を前記電気機器の寿命とする、請求項1の装置。
【請求項4】
前記複数の異種金属接合は、基板上の複数の金属パッドと、当該金属パッド上にボンディングされた金属パッドの第1金属の拡散係数よりも小さい拡散係数を持つ第2金属から成る金属ワイヤーを含む、請求項1〜3のいずれか1項の装置。
【請求項5】
前記複数の金属パッドは、異なる厚さの金属パッドを含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記判断手段は、前記複数の金属パッド上の前記金属ワイヤーが断線した割合が所定のしきい割合になるまでの時間を前記電気機器の寿命とする、請求項4または5の装置。
【請求項7】
前記金属パッドの第1金属はアルミニウムからなり、前記金属ワイヤーの第2金属は金からなる、請求項4〜6のいずれか1項の装置。
【請求項8】
前記熱履歴センサは、前記抵抗値を出力するための複数の端子を備え、
前記判断手段は、前記熱履歴センサの複数の端子から有線または無線により取得した前記抵抗値を前記メモリに格納する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記電気機器は電柱に設置された柱上変圧器であり、
前記熱履歴センサは前記柱上変圧器の内部に設けられ、前記熱履歴センサの複数の端子は前記柱上変圧器の外壁まで引き出されている、請求項8の装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置から前記電気機器の寿命予測を受け取り、前記電気機器の管理を行うためのコンピュータを備える、電気機器の管理システム。
【請求項11】
電気機器の寿命を予測するための方法であって、
電気機器の内部または外壁表面に取り付けられた少なくとも1つの熱履歴センサであって、複数の異種金属接合を含み、動作中の電気機器の内部または外壁の温度により異種金属接合において成長する金属間化合物の量に応じて、異種金属接合の抵抗値が変化するように構成された熱履歴センサを準備するステップと、
前記熱履歴センサから前記複数の異種金属接合の抵抗値を定期的または不定期にモニターしメモリに保管するステップと、
前記保管された抵抗値の履歴を利用して電気機器の寿命を予測するステップと、を含む方法。
【請求項12】
前記電気機器の寿命を予測するステップは、前記抵抗値が所定のしきい抵抗値を越えた前記異種金属接合の割合が所定のしきい割合になるまでの時間を前記電気機器の寿命と判断するステップを含む、請求項11の方法。
【請求項13】
前記電気機器の寿命を予測するステップは、前記抵抗値の変化率が所定のしきい変化率を越える時の時間を前記電気機器の寿命と判断するステップを含む、請求項11の方法。
【請求項14】
前記複数の異種金属接合は、基板上の複数の金属パッドと、当該金属パッド上にボンディングされた金属パッドの第1金属の拡散係数よりも小さい拡散係数を持つ第2金属から成る金属ワイヤーを含み、
前記電気機器の寿命を予測するステップは、前記複数の金属パッド上の前記金属ワイヤーが断線した割合が所定のしきい割合になるまでの時間を前記電気機器の寿命と判断するステップを含む、請求項11の方法。
【請求項15】
前記金属パッドの第1金属はアルミニウムからなり、前記金属ワイヤーの第2金属は金からなる、請求項14の方法。
【請求項16】
前記熱履歴センサは、前記抵抗値を出力するための複数の端子を備え、
前記電気機器の寿命を予測するステップは、前記熱履歴センサの複数の端子から有線または無線により取得した前記抵抗値を前記メモリに格納するステップを含む、請求項11の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の寿命を予測する装置及び方法に関し、特に電気機器に取り付けられた熱履歴センサを用いて電気機器の寿命を予測する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、柱上変圧器などのように、長期間連続使用する電気機器もしくは設備に関して、故障による事故を避けるためにその予知と保全を行なう必要がある。その故障及び事故として、例えば、電力供給網の電圧降下による停電、発火、生命に関わる誤動作などが懸念される。そのため、従来から対象となる電気機器を一律してその寿命以前に新規機器と交換することが行われている。しかし、その場合、電気機器としてまだ使えるものが多く、一律して交換してしまうことは不経済である。
【0003】
一方、長期間連続使用する電気機器の劣化、故障、あるいは寿命を推定して対象となる電気機器の交換時期を決めることも行われている。例えば、特許文献1では、柱上変圧器などの機器を個品管理するRFID等のデバイスと、機器の状態を管理するデータベースシステムと、地域毎の消耗度合い係数を演算する機能により、地域毎の配置機器の消耗度合いを演算記録し、機器定格、機器配置箇所、製造元保証期間や設置地域(位置)などの制約条件を考慮した上で、交換対象機器を検索するシステムを開示している。
【0004】
また、特許文献2では、変圧器の故障の有無を判定する変圧器故障判定器として、交流電圧を出力する交流電圧印加手段と、交流電圧印加手段で変圧器に交流電圧を印加し、その時の励磁電流と交流電圧との位相差に基づいて変圧器の巻線間短絡の有無を判定する故障判定部と、故障判定部の判定結果を報知する判定報知部とを備える変圧器故障判定器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-169483
【特許文献2】特開2011-214963
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2に記載の発明は、運転時に比較的高温になる電気機器における熱履歴を利用して電気機器の劣化や寿命を予測するものではない。
したがって、本発明の目的は、電気機器に取り付けられた熱履歴センサを用いて電気機器の寿命を予測する装置/方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、電気機器の寿命を予測するための装置を提供する。その装置は、(a)電気機器の内部または外壁表面に取り付けられた少なくとも1つの熱履歴センサであって、複数の異種金属接合を含み、動作中の電気機器の内部または外壁の温度により異種金属接合において成長する金属間化合物の量に応じて、異種金属接合の抵抗値が変化するように構成された熱履歴センサと、(b)熱履歴センサから複数の異種金属接合の抵抗値を定期的または不定期に継続してモニターしかつメモリに保管して、当該保管された抵抗値の履歴を利用して電気機器の寿命を予測する判断手段とを備える。
【0008】
本発明の一態様によれば、動作中の電気機器の熱劣化を熱履歴センサの異種金属接合の抵抗値の履歴から把握し、電気機器の寿命を予測して、その保守あるいは交換の時期を効果的かつ合理的に決定することができる。
【0009】
本発明の一態様では、判断手段は、抵抗値が所定のしきい抵抗値を越えた異種金属接合の割合が所定のしきい割合になるまでの時間を電気機器の寿命とする。
【0010】
本発明の一態様によれば、抵抗値が所定のしきい抵抗値を越えた異種金属接合の割合(数)を求めるだけで電気機器の寿命を予測することができる。
【0011】
本発明の一態様では、判断手段は、抵抗値の変化率が所定のしきい変化率を越える時の時間を電気機器の寿命とする。
【0012】
本発明の一態様によれば、電気機器の急激な熱劣化に対応した適切な機器の寿命を予測することが可能となる。
【0013】
本発明の一態様では、複数の異種金属接合は、基板上の複数の金属パッドと、当該金属パッド上にボンディングされた金属パッドの第1金属(例えば、アルミニウム)の拡散係数よりも小さい拡散係数を持つ第2金属(例えば、金)から成る金属ワイヤーを含むことができる。
【0014】
本発明の一態様によれば、異種金属接合における金属の拡散、すなわちいわゆるカーケンダル効果(現象)を利用して金属間化合物の生成量を変化させ、その結果として、異種金属接合を含む金属配線の抵抗値を変化させることができる。
【0015】
さらに、本発明の一態様によれば、金属ワイヤーボンディングという半導体製造の汎用的な技術を利用して電気機器内の熱履歴の取得をすることができる。また、電気機器内の動作状態、特に動作温度状態に柔軟に対応して電気機器内の熱履歴の取得をすることが可能となる。
【0016】
本発明の一態様では、複数の金属パッドは異なる厚さの金属パッドを含む。
【0017】
本発明の一態様によれば、熱履歴センサ20が設置される電気機器の運転条件(機器内の温度、外気温度、運転期間等)に応じて、異種金属接合部の金属の拡散量及び金属間化合物の成長量を制御することが可能となる。
【0018】
本発明の一態様では、判断手段は、複数の金属パッド上の金属ワイヤーが断線した割合が所定のしきい割合になるまでの時間を電気機器の寿命とする。
【0019】
本発明の一態様によれば、金属ワイヤーの断線の割合(数)を求めるだけで電気機器の寿命を予測することができる。
【0020】
本発明の一態様では、熱履歴センサは、抵抗値を出力するための複数の端子を備え、判断手段は、熱履歴センサの複数の端子から有線または無線により取得した抵抗値を前記メモリに格納する。
【0021】
本発明の一態様によれば、電気機器の外部から電気機器内の熱履歴を把握することが可能となる。
【0022】
本発明の一態様では、電気機器は電柱に設置された柱上変圧器であり、熱履歴センサは柱上変圧器の内部に設けられ、熱履歴センサの複数の端子は柱上変圧器の外壁まで引き出されている。
【0023】
本発明の一態様によれば、柱上変圧器が取り付けられた電柱の下で柱上変圧器内の熱履歴を把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の電気機器の寿命予測装置を含むシステムの構成例を示す図である。
図2】本発明の端末(判断手段)の構成例を示す図である。本発明の熱履歴センサの構成例を示す図である。
図3】本発明の熱履歴センサの構成例を示す図である。
図4】本発明の熱履歴センサが利用する抵抗と電気機器の運転時間との関係を例示する図である。
図5】本発明の寿命予測装置(方法)における電気機器の劣化予測を例示するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の電気機器の寿命予測装置を含むシステムの構成例を示す図である。システム100は、A〜Cの3つの電気機器10と、破線で示される通信ネットワーク35と、通信ネットワーク35に接続可能な端末(PC、携帯電話、スマートフォン等)30、32、34とを含む。電気機器10は、動作中に内部で発熱する任意の電力(電気)で駆動する機器(電気機器、電子機器、半導体装置等)を含む。電気機器10には、例えば、電柱に設置されたいわゆる柱上変圧器、風力発電機、人工衛星なども含まれる。
【0026】
各端末30、32、34は、通信ネットワーク35を介して、データを管理する管理サーバ等へ取得したデータを送信することができるように構成されている。通信経路35は、無線、有線のいずれによっても構成可能である。各端末は、本発明の判断手段として機能し、所定のソフトウェア(コンピュータ・プログラム)を実行することにより、電気機器の寿命を予測する。すなわち、各端末は、本発明の判断手段として、詳細は後述する熱履歴センサから複数の異種金属接合の抵抗値を定期的または不定期に継続してモニターしかつメモリに保管して、当該保管された抵抗値の履歴を利用して電気機器の寿命を予測する。
【0027】
なお、判断手段としての機能の少なくとも一部を管理サーバで行うようにしてもよい。また、図1の電気機器及び端末の数及び種類はあくまで一例であってシステムあるいはネットワークの規模に応じて任意に選択及び設定することができる。
【0028】
電気機器10の各々には、熱履歴センサ20が設置されている。熱履歴センサ20は、電気機器10の内部あるいは外壁の表面のいずれか一方、あるは双方に少なくとも1つ以上設置することができる。図1では、Aの電気機器10では、熱履歴センサ20は電気機器10の外壁の表面に設置されている。BとCの電気機器10では、熱履歴センサ20は電気機器10の内部に設置されている。Cの電気機器10では、さらに、熱履歴センサ20からの信号を取り出す、あるいは信号を送るための端子25が電気機器10の外壁の表面に設置されている。
【0029】
各熱履歴センサ20は、自ら信号を発して端末30〜34と相互に通信することができる。その通信は、RFID技術を用いても行うこともできる。なお、Bの電気機器10では、熱履歴センサ20は、電気機器10の内部からでも直接的に無線信号を介して端末30〜34と相互に通信することができるように構成されている。熱履歴センサ20からのデータ(抵抗値)は、端末30、32、34に送られる。
【0030】
図2は、本発明の端末30、32、34の構成例を示すブロック図である。端末は、バス330を介して相互に接続された演算処理装置(CPU)300、記憶手段310、及び各種I/F320を含む。演算処理装置(CPU)300は、後述するように、熱履歴センサ20から取得され保管されたデータ(抵抗値)を用いて、電気機器の寿命を予測/推定する。
【0031】
各種I/F320は、入力I/F、出力I/F、外部記憶I/F、外部通信I/F等を含む総称として用いられ、各I/Fが、それぞれ対応するタッチキー、タッチパネル、キーボード等の入力手段340、LCD等の表示手段350、無線あるいは有線の通信手段360、USB接続の半導体メモリやHDD等の外部記憶手段370等に接続する。記憶手段310は、RAM、ROM、Flash等の半導体メモリ、HDD等を含むことができる。記憶手段310は、熱履歴センサ20から取得したデータ(抵抗値)を保管する。
【0032】
図3は、本発明の熱履歴センサ20の構成例を示す図である。(a)は熱履歴センサ20の全体図であり、(b)は熱履歴センサ20の異種金属接合部Sの拡大断面図である。熱履歴センサ20は、基板200と、基板上に設置されたチップ210とを含む。基板200は必要となる所定の回路あるいは配線が設けられたプリント基板等からなる。基板200の表面には、端子部205が設けられている。チップ210は、必要となる所定の回路及び配線が設けられた半導体チップ等からなる。基板200内あるいはチップ210内の所定の回路には、異種金属接合部Sを含む回路及び配線における抵抗値を検出及び出力するための回路(図示なし)が含まれる。これらの回路は、熱履歴センサ20自らが保有するバッテリからの電力あるいは電気機器から供給される電力によって駆動する。
【0033】
チップ210の表面には、複数の異種金属接合部Sが設けられている。図3(a)では、4つの異種金属接合部Sが設けられているが、これはあくまで例示であって、電気機器の仕様や運転期間等に応じて任意にその数を選択することができる。各異種金属接合部は、パッド部212と、パッド部212に接合された金属ワイヤー部216を含む。金属ワイヤー部216の一方の端部は、基板200上の端子205に接続する。4つの異種金属接合部Sは、配線214によって電気的に接続されている。
【0034】
パッド部212は、アルミニウム等の金属からなる。パッド部212は、従来からある、蒸着やスパッタリングのような薄膜形成技術、あるいは金属メッキ技術、およびパターニング(リソグラフィ)技術を用いて形成される。金属ワイヤー部216は、金等のワイヤーからなる。金属ワイヤー部216は、例えば、従来からあるワーヤーボンディング技術によって形成される。本発明で利用する異種金属接合部Sは、例えば、アルミニウム・パッドと金ワイヤーの組み合わせからなる。なお、異種金属接合の組み合わせは、これに限定されず、基本的に温度に依存する拡散係数の異なる任意の少なくとも2種以上の金属の組み合わせが可能である。
【0035】
本発明では、パッド部には拡散係数の大きな金属が使用され、ワイヤー部にはパッド部に比べて拡散係数の小さな金属が使用される。これは、本発明が異種金属接合部Sにおけるカーケンダル効果(現象)による金属の拡散及び金属間化合物の成長に応じた抵抗値変化を利用するからである。言い換えれば、いわゆるカーケンダル・ボイドの生成及びその進行に応じた抵抗値変化を利用するからである。ここで、カーケンダル効果(現象)とは、一般に2種の金属の界面(図3(b)の符号220)が金属原子の拡散によって移動することを意味する。カーケンダル・ボイドとは、カーケンダル効果(現象)によって金属界面220に発生するボイド(空孔)を意味する。
【0036】
図3(b)には、チップ210の表面上に設けられた3つの異種金属接合部A〜Cが示されている。異種金属接合部A〜Cは、厚さTの異なる3つのパッド212と、ワイヤー部216を含む。図3(b)では、AからCの順でパッド212の厚さが厚くなっている。このように厚さを変える理由は、熱履歴センサ20が設置される電気機器の運転条件(機器内の温度、外気温度、運転期間等)に応じて、異種金属接合部の金属の拡散量及び金属間化合物の成長量を制御できるようにするためである。
【0037】
例えば、既に使用中の電気機器に対しては、Aのような薄いパッドを選択して、寿命直前で所定のしきい値以上の抵抗値変化(断線(電気オープン)を含む)の累積率(数)を見ればよい。また、電気機器内の温度が比較的高い電気機器に対しては、Cのような厚いパッドを選択する。この場合も、同様に寿命直前で所定のしきい値以上の抵抗値変化(断線(電気オープン)を含む)の累積率(数)を見ればよい。
【0038】
図4は、本発明の熱履歴センサが利用する抵抗値Rと電気機器の運転時間Tとの関係を例示する図である。図4の抵抗値Rの変化を示すグラフ1は、上述した異種金属接合部Sにおけるカーケンダル効果(現象)による金属の拡散及び金属間化合物の成長に応じた抵抗値変化によって生じている。図4(a)は、電気機器の運転時間Tと共に比較的なだらかに抵抗値Rが変化する場合の例である。
【0039】
グラフ1の抵抗値Rは、いわゆるアレニウスの関係式によって計算されるグラフ(近似式)にほぼ沿った形で変化している。なお、アレニウスの関係式によって計算されるグラフについては、図5を用いて後述する。この場合、図4に示すように、所定のしきい抵抗値R1を設定することにより、しきい抵抗値R1以上の抵抗値Rにおいて電気機器の寿命が来ていると判断することができる。すなわち、所定のしきい抵抗値R1となった運転時間T1がその電気機器の寿命であると判断する。
【0040】
一方、図4(b)は、電気機器の運転時間Tの経過に対して急減に抵抗値Rが変化する場合である。破線のグラフ2は、アレニウスの関係式によって計算されるグラフ(近似式)である。実線のグラフ3では、(a)の場合と同様に、上述した異種金属接合部Sにおけるカーケンダル効果(現象)による金属の拡散及び金属間化合物の成長に応じた抵抗値変化によって生じている。しかし、グラフ3では、電気機器内で金属間化合物の成長を急激に変化させるような何らかの原因で、楕円Dで囲まれた領域で急激に抵抗値Rが変化(低下)している。
【0041】
この場合、こうした急激な抵抗値の変化を想定して、その抵抗値の変化のしきい抵抗値変化量ΔRを設定しておくことにより、電気機器の寿命を判断することができる。すなわち、例えば、しきい抵抗値変化量ΔRを越えた時の運転時間T2を電気機器の寿命が来たと判断することができる。なお、抵抗値変化量ΔRは、抵抗値が低下する場合のみならず増加する場合のしきい値としても設定することができることは言うまでもない。
【0042】
図5は、本発明の寿命予測装置(方法)における電気機器の劣化予測を例示するための図である。言い換えれば、図5は、時間 T(t) と劣化指標値Dの関係を示す図である。図5において、破線4のグラフ4は、アレニウスの関係式によって計算されるグラフ(近似式)である。実線のグラフ5及び6は、いずれも上述した異種金属接合部Sにおけるカーケンダル効果(現象)による金属の拡散及び金属間化合物の成長に応じた抵抗値変化を用いた(想定した)シミュレーション・グラフである。
【0043】
図5における劣化指標(D)、すなわち拡散定数Dは、アレニウスの関係式を用いて以下に示すように求めることができる。
【0044】
図5において、劣化指標値Dのグラフ5ではその傾きが途中から小さく変化している(ΔD1)。したがって、この場合は、破線4で示される近似式(グラフ4)で代表される標準より電気機器の寿命は長い(長命)と判断できる。一方、劣化指標値Dのグラフ6ではその傾きがその途中から大きく変化している(ΔD2)。したがって、この場合は、破線4で示される近似式(グラフ4)で代表される標準標準より電気機器の寿命は短い(短命)と判断できる。図5に例示されるようなシミュレーション・グラフを予め求めておくことによっても、電気機器の寿命の予測/推定を行うことが可能となる。
【0045】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明をした。しかし、本発明はこれらの実施形態に限られるものではない。さらに、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0046】
10 電気機器
20 熱履歴センサ
25 端子
30、32、34 端末
35 ネットワーク
100 システム
200 基板
205 端子
210 チップ
212 金属パッド
214 配線
216 金属ワイヤー
220 金属の界面
図1
図2
図3
図4
図5