【解決手段】コネクタ1は、機器との接続側に開口する第1の開口12Aと機器との接続方向と交差する方向に電線が引き出される第2の開口12Bとを有する収容空間12が内部に設けられ、第1の開口12Aに臨む内壁に固定部50を有するハウジング10と、一端部が電線と接続され、他端部に上記接続方向に貫通する貫通孔40Bが設けられ、貫通孔40Bが上記接続方向において固定部50と重畳する電線側端子40と、機器側接続部30Aと被固定部30Bと被固定部30Bよりも径大とされたフランジ部30Cとを有する機器側端子30とを備え、被固定部30Bが貫通孔40Bに貫通されることで、フランジ部30Cと固定部50との間に貫通孔40Bの開口縁が挟み込まれ、被固定部30Bが上記交差する方向において固定部50と接触する形で固定部50に固定されている。
機器との接続側に開口する第1の開口と、前記機器との接続方向と交差する方向に電線が引き出される第2の開口と、を有する収容空間が内部に設けられ、前記収容空間の前記第1の開口に臨む内壁に固定部を有するハウジングと、
その一端部が前記電線と接続され、前記交差する方向に延伸する形で前記収容空間内に配された電線側端子であって、その他端部に前記接続方向に貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔が前記接続方向において前記固定部と重畳する形で配された電線側端子と、
その一端部が前記第1の開口に臨み、前記接続方向に軸状に延伸する形で前記収容空間内に配された機器側端子であって、その一端部に設けられ、前記機器と接続される機器側接続部と、その他端部に設けられた被固定部と、前記機器側接続部と前記被固定部との間に設けられ、前記被固定部よりも径大とされたフランジ部と、を有する機器側端子と、を備え、
前記被固定部が前記貫通孔に貫通されることで、前記フランジ部と前記固定部との間に前記貫通孔の開口縁が挟み込まれるとともに、前記被固定部が前記交差する方向において前記固定部と接触する形で前記固定部に固定されたコネクタ。
前記機器側端子は、前記機器側接続部と前記フランジ部との間に設けられるとともに前記接続方向から視た形状が多角形状とされた角形部を有する、請求項1に記載のコネクタ。
前記ハウジングは、前記収容空間内に前記交差する方向において前記フランジ部と近接する位置決め部を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
軸状に延伸する端子であって、その一端部に設けられ、機器と接続される機器側接続部と、その他端部において雄ねじ状に設けられた雄ねじ部と、前記機器側接続部と前記雄ねじ部との間に設けられ、前記雄ねじ部よりも径大とされたフランジ部と、を有する端子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のコネクタでは、コネクタの組み付け後に組み付け用開口を塞ぐためのカバー等が必要となるため、その分部材点数が多くなってしまう。一方、L型のコネクタにおいて、このような組み付け用開口を設けることなくコネクタの組み付け過程において上記両端子をハウジングに対して固定させようとすると、上記両端子をハウジングに対して固定させることが困難となるため、上記両端子のハウジングに対する固定強度が十分に得られないことがある。このように上記両端子のハウジングに対する固定強度が十分に得られないと、例えばコネクタが振動環境下に晒されることでその振動によって電線に荷重が発生した場合、その荷重が電線から機器側に接続される端子へと伝播され、当該端子と機器側の端子との接点部が摺動して摩耗し、当該端子と機器との間の接続信頼性が低下する虞がある。
【0006】
本明細書で開示される技術は、上記の課題に鑑みて創作されたものであって、L型のコネクタにおいて、接続信頼性を確保しながら部材点数の削減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示される技術は、機器との接続側に開口する第1の開口と、前記機器との接続方向と交差する方向に電線が引き出される第2の開口と、を有する収容空間が内部に設けられ、前記収容空間の前記第1の開口に臨む内壁に固定部を有するハウジングと、その一端部が前記電線と接続され、前記交差する方向に延伸する形で前記収容空間内に配された電線側端子であって、その他端部に前記接続方向に貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔が前記接続方向において前記固定部と重畳する形で配された電線側端子と、その一端部が前記第1の開口に臨み、前記接続方向に軸状に延伸する形で前記収容空間内に配された機器側端子であって、その一端部に設けられ、前記機器と接続される機器側接続部と、その他端部に設けられた被固定部と、前記機器側接続部と前記被固定部との間に設けられ、前記被固定部よりも径大とされたフランジ部と、を有する機器側端子と、を備え、前記被固定部が前記貫通孔に貫通されることで、前記フランジ部と前記固定部との間に前記貫通孔の開口縁が挟み込まれるとともに、前記被固定部が前記交差する方向において前記固定部と接触する形で前記固定部に固定されたコネクタに関する。
【0008】
上記のコネクタは、機器との接続方向と電線の引き出し方向とが交差する、いわゆるL型のコネクタとされる。また、上記のコネクタは、その組み付け過程において、第1の開口及び第2の開口を有するハウジングの収容空間に組み付け用開口を別途設けることなく、ハウジングに対して機器側端子と電線側端子とを組み付けることができる。即ち、上記のコネクタの組み付け過程において、一端部が電線と接続された電線側端子をその他端部側から第2の開口内に挿入し、その他端部に設けられた貫通孔を機器との接続方向において収容空間内の固定部と重畳させる。ここで、固定部は第1の開口に臨むハウジングの内壁に設けられているので、電線側端子が第2の開口から収容空間内に収容された状態では、上記貫通孔も第1の開口に臨む形となっている。このため、その後に機器側端子をその他端部側から第1の開口内に挿入することで、その一端部を第1の開口に臨む形としながら、その他端部に設けられた被固定部を貫通孔に貫通させることができる。
【0009】
そして、上記のように機器側端子の被固定部を貫通孔に貫通させることで、第1の開口側から被固定部を固定部に固定させることができる。例えば、固定部と被固定部とのいずれか一方が雄ねじであり、いずれか他方が雌ねじである場合には、第1の開口側から機器側端子をその軸周りに回転させることで、被固定部を固定部に螺合させて締め付けることができ、被固定部を固定部に固定させることができる。また、被固定部が固定部に固定されることで、被固定部が貫通された貫通孔も固定部に対して固定される。このように、上記のコネクタでは、その組み付け過程において、被固定部を固定部に固定させるためにハウジングの収容空間に組み付け用開口を別途設けなくとも、機器側端子と電線側端子との両者を収容空間内の固定部に固定させることができる。その結果、上記のコネクタでは、組み付け用開口を塞ぐためのカバー等がハウジングに取り付けられる従来の構成と比べて、部材点数の削減を図ることができる。
【0010】
また、上記のコネクタでは、機器側端子の被固定部が上記交差する方向において固定部と接触する形で固定部に固定されるため、被固定部のうち貫通孔に貫通された部位がハウジングの収容空間内の内壁に埋め込まれた状態となる。そして、この状態において、機器側端子において被固定部よりも径大とされたフランジ部と固定部との間に電線側端子の貫通孔の開口縁が挟み込まれる。貫通孔の開口縁がこのような態様で挟み込まれることで、電線側端子がハウジング(固定部)に対して確実に固定されるため、振動に起因して電線に発生した荷重は電線側端子からハウジングへと伝播し、機器側端子に伝播することが抑制される。また、貫通孔の開口縁が上記のような態様で挟み込まれることで、機器側端子(フランジ部)と電線側端子(貫通孔の開口縁)との接触部位において十分な接触荷重が確保されるため、電線側端子と機器側端子との間で良好な導通を図ることができる。その結果、上記のコネクタでは、振動環境下において電線に荷重が発生した場合であっても、機器側端子と機器との間の接続信頼性を確保することができる。
【0011】
以上のように、L型とされる上記のコネクタでは、接続信頼性を確保しながら部材点数の削減を図ることができる。なお、本明細書でいうL型のコネクタとは、上述したように、機器との接続方向と電線の引き出し方向とが交差するものをいい、機器との接続方向と電線の引き出し方向とが直交するものに限定されない。
【0012】
上記のコネクタにおいて、前記機器側端子は、前記機器側接続部と前記フランジ部との間に設けられるとともに前記接続方向から視た形状が多角形状とされた角形部を有してもよい。
【0013】
この構成によると、コネクタの組み付け過程において、例えば、固定部と被固定部とのいずれか一方が雄ねじであり、いずれか他方が雌ねじである場合、機器側端子の被固定部を貫通孔に貫通させた後に、ボックスレンチ等によって第1の開口側から機器側端子をその軸周りに回転させ易いものとすることができる。このため、コネクタの組み付け過程における作業性を向上させることができる。
【0014】
上記のコネクタにおいて、前記角形部は前記フランジ部よりも径小とされていてもよい。
【0015】
コネクタの組み付け過程において、上記のようにボックスレンチ等によって第1の開口側から機器側端子をその軸周りに回転させる場合、角形部の径がフランジ部の径と同等又はそれ以上の大きさとされていると、角形部の径に応じたボックスレンチ等を第1の開口から収容空間内に挿入するために、第1の開口の径をフランジ部の径と比べて十分に大きな径とする必要がある。このため、コネクタが大型化することが懸念される。上記の構成によると、第1の開口の径をフランジ部の径と比べて十分に大きな径としなくとも、角形部の径に応じたボックスレンチ等を第1の開口から収容空間内に挿入することができるため、上記のようにコネクタが大型化することを回避することができる。
【0016】
上記のコネクタにおいて、前記ハウジングは、前記収容空間内に前記交差する方向において前記フランジ部と近接する位置決め部を有してもよい。
【0017】
この構成によると、機器側端子が上記交差する方向に位置ずれした場合、フランジ部が位置決め部と即座に干渉するため、機器側端子がそれ以上位置ずれすることを抑制することができる。このため、上記交差する方向における機器側端子のがたつきを抑制することができる。
【0018】
上記のコネクタにおいて、前記被固定部が雄ねじとされていてもよい。
【0019】
この構成によると、収容空間内の内壁に設けられた固定部に固定される被固定部の具体的な構成を提供することができる。
【0020】
上記のコネクタにおいて、前記固定部は前記ハウジングの内壁に埋め込まれたナットであってもよい。
【0021】
この構成よると、収容空間内の固定部に対応する内壁に予めナット(雌ねじ)を埋め込んでおき、被固定部が雄ねじとされた機器側端子を第1の開口側からその軸周りに回転させることで、被固定部をナットに対して容易に締め付けて固定させることができる。このため、コネクタの組み付け過程における作業性を向上させることができる。
【0022】
上記のコネクタにおいて、前記被固定部がタッピングねじとされていてもよい。
【0023】
この構成によると、収容空間内の固定部に対応する内壁にタッピングねじとされた被固定部の先端を突き刺し、機器側端子を第1の開口側からその軸周りに回転させることで、被固定部を固定部に対して固定させることができる。このため、収容空間内の固定部に対応する内壁に雌ねじを配する必要がなく、部材点数の一層の削減を図ることができる。
【0024】
本明細書で開示される他の技術は、軸状に延伸する端子であって、その一端部に設けられ、機器と接続される機器側接続部と、その他端部において雄ねじ状に設けられた雄ねじ部と、前記機器側接続部と前記雄ねじ部との間に設けられ、前記雄ねじ部よりも径大とされたフランジ部と、を有する端子に関する。
【0025】
上記の端子では、雄ねじ部を例えばコネクタのハウジングに設けられた収容空間内の内壁に直接締め付けることで、端子を直接ハウジングに固定させることができる。このため、L型のコネクタの組み付け過程において機器と接続される端子として上記の端子を用いることで、ハウジングの収容空間に組み付け用開口を別途設けることなく、上記の端子をハウジングに固定させることができ、組み付け用開口を塞ぐためのカバー等がハウジングに取り付けられる従来の構成と比べて、部材点数の削減を図ることができる。また、L型のコネクタの組み付け過程において機器と接続される端子として上記の端子を用いる場合、上記の端子をハウジングに固定させる際に、雄ねじ部が固定された収容空間内の内壁とフランジ部との間に他の端子を挟み込むことで、当該他の端子をハウジングに固定させるとともに、上記の端子と当該他の端子との間で良好な導通を図ることができ、上記の端子と機器との間の接続信頼性を確保することができる。
【発明の効果】
【0026】
本明細書で開示される技術によれば、L型のコネクタにおいて、接続信頼性を確保しながら部材点数の削減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<実施形態1>
図1から
図6を参照して実施形態1を説明する。本実施形態では、図示しない機器(例えば電気自動車やハイブリッド自動車の車両に搭載されたインバータ)側の端子と電源側の電線W1との間を接続するためのL型のコネクタ1について例示する。コネクタ1は、
図1に示すように、合成樹脂製のハウジング10、このハウジング10の一部を覆うシールドシェル20、ハウジング10の内部に配設された機器側端子(端子の一例)30、ハウジング10の内部に配設されて電線W1の端末に接続されるとともに、機器側端子30と接触される電線側端子40等を備えている。
【0029】
なお、以下では、
図1、
図5、及び
図6において、図の左側をコネクタ1の前方とし、図の上側をコネクタ1の上方として説明する。また、本実施形態のコネクタ1では、コネクタ1の前方側が機器との接続側とされ、コネクタ1の下方が電線W1の引き出し方向とされる。従って、コネクタ1では、前後方向が機器との接続方向とされ、機器との接続方向(前後方向)と交差する方向(上下方向)に電線W1が引き出されている。なお、コネクタ1では、機器との接続方向と電線W1の引き出し方向とが直交状に交差する。
【0030】
ハウジング10は、
図1に示すように、その断面が全体として略L字状であり、一端部が前方に突出するとともに、他端部が下方に突出する形態とされている。ハウジング10の内部には、ハウジング10の形状と同様に略L字状の収容空間12が設けられている。この収容空間12は、機器との接続側、即ち前方に開口する第1の開口12Aと、電線W1の引き出し方向、即ち下方に開口する第2の開口12Bと、を有している。第1の開口12Aと第2の開口12Bとは、収容空間12内において連通している。なお、本実施形態では、ハウジング10の収容空間12に組み付け用開口は設けられていない。詳しくは、ハウジング10の収容空間12には、上記第1の開口12A及び第2の開口12B以外の開口は設けられていない。
【0031】
図1に示すように、ハウジング10の収容空間12の内壁のうち、第1の開口12Aと第2の開口12Bとの両者に臨む部位は、収容空間12の他の部位の内壁よりも前後方向における幅寸法が肉厚とされている。この肉厚とされた部位には、収容空間12内において第1の開口12A側(前方側)に開口する凹部10Aが設けられている。そして、この凹部10A内には、内周面にねじ溝(不図示)を有する略筒状のナット(固定部の一例)50が埋め込まれている。ナット50は、その筒軸方向が前後方向に沿った姿勢で配され、収容空間12の内壁に埋め込まれることでハウジング10に対して固定されている。
【0032】
電線W1は、芯線W1Aと、芯線W1Aを被覆する絶縁被覆W1Bとにより構成されており、その端末において絶縁被覆W1Bから芯線W1Aが露出している。電線W1は、その延伸方向が上下方向に沿った姿勢で、その端末側がハウジング10の収容空間12内に収容されており、収容空間12における第2の開口12Bから下方に引き出されている。収容空間12内における第2の開口12Bの近傍には、電線W1の端末側をシールするゴム栓17と、このゴム栓17を下方に抜け止めするバックリテーナ18とが配されている。
【0033】
シールドシェル20は、導電性の金属材料によって形成されており、
図1に示すように、ハウジング10の一部を覆っている。このシールドシェル20は、
図1に示すように、アッパ部材22とロア部材24とを互いに組み付けることによって構成されている。このうちアッパ部材22の上方には、上方に突出した後、屈曲して前方に伸びる形状とされ、機器側のケースに取り付けられて固定されるケース固定片22Aが設けられている。シールドシェル20は、電線W1等から放射される放射ノイズを低減するためのものであって、ケース固定片22Aが機器側のケースに取り付けられることで機器側にアース接続される。
【0034】
電線側端子40は、導電性の金属材料によって形成されており、その延伸方向が上下方向に沿った姿勢で、ハウジング10の収容空間12内に収容されている。電線側端子40の一端部(下方側の端部)には、収容空間12内において電線W1の端末に露出した芯線W1Aと圧着接続されたバレル部40Aが設けられており、これにより、電線側端子40と電線W1との間の導通が図られている。一方、電線側端子40の他端部(上方側の端部)には、前後方向に貫通する貫通孔40Bが設けられている。電線側端子40は、この貫通孔40Bが前後方向において上記ナット50と重畳する形で配されている。
【0035】
機器側端子30の構成について
図1から
図4を参照して詳しく説明する。機器側端子30は、軸状に延伸する形状とされ、
図1に示すように、その延伸方向が前後方向に沿った姿勢で収容空間12内に配されるとともに、その一端部(
図1における前方側の端部)が第1の開口12Aに臨んだ状態となっている。第1の開口12Aに臨む機器側端子30の一端部には、雄型端子とされるとともに機器と接続される円柱状の機器側接続部30Aが設けられている。一方、機器側端子30の他端部(
図1における後方側の端部)は、
図2に示すように、その外面にねじ溝が設けられるとともにナット50の内径と同径の円柱状の雄ねじ(被固定部の一例)30Bとされている。
【0036】
また、
図2及び
図3に示すように、機器側端子30において、機器側接続部30Aと雄ねじ30Bとの間には、機器側接続部30A及び雄ねじ30Bよりも径大とされた円板状のフランジ部30Cが設けられている。さらに、
図2及び
図3に示すように、機器側端子30において、機器側接続部30Aとフランジ部30Cとの間には、角形状の角形部30Dが設けられている。この角形部30Dは、
図4に示すように、前後方向から視た形状が正六角形状となっており、機器側接続部30A及び雄ねじ30Bよりも径大で、かつ、フランジ部30Cよりも径小とされている。
【0037】
以上のような構成とされた機器側端子30は、次のような態様でハウジング10の収容空間12内に固定されている。即ち。機器側端子30の他端部に設けられた雄ねじ30Bが、上下方向においてナット50と接触する形でナット50に固定されている。具体的には、機器側端子30の雄ねじ30Bは、収容空間12内において電線側端子40の貫通孔40Bに貫通されるとともに、ナット50に螺合されて締結されている。これにより、機器側端子30は、ハウジング10の収容空間12の内壁にナット50を介して固定されている。
【0038】
機器側端子30が上記のような態様でハウジング10の収容空間12内に固定されることで、前後方向においてフランジ部30Cとナット50との間に貫通孔40Bの開口縁が挟み込まれた状態となっている。これにより、機器側端子30のフランジ部30Cから貫通孔40Bの開口縁に接圧が付与されている。このため、電線側端子30は、貫通孔40Bの開口縁を介してハウジング10に対して確実に固定されている。
【0039】
さらに、コネクタ1では、上記のように機器側端子30のフランジ部30Cから貫通孔40Bの開口縁に接圧が付与されることで、機器側端子と電線側端子との接触部位、即ちフランジ部30Cから貫通孔40Bの開口縁において十分な接触荷重が確保されている。その結果、機器側端子30と電線側端子30との間で良好な導通が図られている。
【0040】
ここで、ハウジング10の収容空間12内に設けられた一対の位置決め部10Bについて説明する。
図1に示すように、一対の位置決め部10Bは、ハウジング10の収容空間12内の第1の開口12Aに臨む位置において、上下方向において機器側端子30の角形部30Dと近接するように、収容空間12の内壁から上下方向に突出する形で設けられている。このため、機器側端子30が上下方向に位置ずれすると角形部30Dが即座に位置決め部10Bと干渉するようになっており、当該位置決め部10Bによって上下方向における機器側端子30の位置ずれが抑制されている。
【0041】
以上が実施形態1に係るコネクタ1の構成であって、続いてコネクタ1の組み付け手順について説明する。まず、
図5に示すように、収容空間12内に機器側端子30と電線側端子40のいずれも収容されていない略L字状の上記ハウジング10を用意する。なお、ハウジング10の収容空間12の内壁には、上記ナット50が予め埋め込まれているものとする。
【0042】
次に、電線側端子40の延伸方向を上下方向に沿わせた姿勢で、収容空間12の第2の開口12Bから、電線側端子40をその他端部側から収容空間12内に挿入し、
図6に示すように、電線側端子40の他端部に設けられた貫通孔40Bを前後方向においてナット50と重畳させる。なお、電線側端子40を収容空間12内に挿入するよりも前に、電線側端子40の一端部に設けられたバレル部40Aに電線W1の末端から露出する芯線W1Aを予め圧着接続しておく。これにより、貫通孔40Bが第1の開口12Aに臨む形で収容空間12内に電線側端子40が収容されるとともに、収容空間12の第2の開口12Bから下方に電線W1が引き出された状態とされる。
【0043】
次に、内面が機器側端子30の角形部30Dと同径かつ正六角形状とされたボックスレンチ(不図示)を用意し、角形部30Dよりも径小とされた機器側端子30の機器側接続部30Aをボックスレンチの内側に挿通させ、ボックスレンチの内面を角形部30Dの外面に嵌合させる。次に、機器側端子30の延伸方向を前後方向に沿わせた姿勢で、収容空間12の第1の開口12Aから、機器側端子30をその他端部側からボックスレンチと共に収容空間12内に挿入し、一端部を第1の開口12Aに臨む形とするとともに、他端部に設けられた雄ねじ30Bの先端部を電線側端子40の貫通孔40Bに貫通させる。
【0044】
そして、雄ねじ30Bの先端部をナット50のねじ溝に宛がい、第1の開口12Aからハウジング10の外側にはみ出すボックスレンチの部位を回し込むことで、ボックスレンチを介して雄ねじ30Bを機器側端子30の軸周りに回転させ、雄ねじ30Bをナット50に螺合させて締結させる。また、雄ねじ30Bをナット50に螺合させることで、フランジ部30Cとナット50との間に電線側端子40に設けられた貫通孔40Bの開口縁を挟み込ませる。これにより、電線側端子40をハウジング10に対して確実に固定させるとともに、フランジ部30Cと貫通孔40Bの開口縁との間で十分な接触荷重を確保させ、機器側端子30と電線側端子30との間を導通させる。以上の手順により、
図1に示す本実施形態のコネクタ1が完成する。
【0045】
以上説明したように本実施形態のコネクタ1は、機器との接続方向(前後方向)と電線W1の引き出し方向(上下方向)とが交差する、いわゆるL型のコネクタとされる。そして上記のような組み付け手順でコネクタ1を組み付けることで、第1の開口12A及び第2の開口12Bを有するハウジング10の収容空間12に組み付け用開口を別途設けることなく、ハウジング10に対して機器側端子30と電線側端子40とを組み付けることができる。このため、本実施形態のコネクタ1では、組み付け用開口を塞ぐためのカバー等がハウジングに取り付けられる従来の構成と比べて、部材点数の削減を図ることができる。
【0046】
さらに本実施形態のコネクタ1では、上述したように電線側端子40がハウジング10に対して確実に固定されているため、振動に起因して電線W1に発生した荷重は電線側端子40からハウジング10へと伝播し、機器側端子30に伝播することが抑制される。また、本実施形態のコネクタ1では、上述したように電線側端子40と機器側端子30との間で良好な導通を図られている。このため本実施形態のコネクタ1では、振動環境下において電線W1に荷重が発生した場合であっても、その荷重が電線側端子40と機器側端子30との導通状態に影響を及ぼすことが抑制され、機器側端子30と機器との間の接続信頼性を確保することができる。
【0047】
また本実施形態では、機器側端子30が、機器側接続部30Aとフランジ部30Cとの間に設けられるとともに前後方向から視た形状が正六角形状とされた上記角形部30Dを有している。このため、上述したようにボックスレンチによって第1の開口12A側から機器側端子30をその軸周りに回転させることができ、コネクタ1の組み付け過程における作業性を向上させることができる。
【0048】
また本実施形態では、機器側端子30の角形部30Dがフランジ部30Cよりも径小とされている。このため、第1の開口12Aの径をフランジ部30Cの径と比べて十分に大きな径としなくとも、角形部30Dの径に応じたボックスレンチを第1の開口12Aから収容空間12内に挿入することができ、コネクタ1が大型化することを回避することができる。
【0049】
また本実施形態では、ハウジング10が、収容空間12内に上下方向においてフランジ部30Cと近接する一対の位置決め部30Dを有している。このような構成とされていることで、上述したように上下方向において機器側端子30の位置ずれを抑制することができ、これにより、上下方向における機器側端子30のがたつきを抑制することができる。
【0050】
また本実施形態では、機器側端子30の他端部が雄ねじ30Bとされるとともに、収容空間12内の内壁の機器側端子30が固定される部位にナット50が埋め込まれている。このため、機器側端子30を第1の開口12A側からその軸周りに回転させることで、機器側端子30の雄ねじ30Bをナット50に対して容易に締め付けて固定させることができ、コネクタ1の組み付け過程における作業性を向上させることができる。
【0051】
また本実施形態では、上述したようにハウジング10に組み付け用開口を別途設ける必要がないので、このような組み付け用開口を塞ぐためのカバー等をハウジング10に取り付ける必要がない。このため本実施形態のコネクタ1では、このようなカバー等をハウジングに取り付けられる構成とされた従来のコネクタと比べて、コネクタ1の小型化を図ることができる。
【0052】
ところで、ハウジングに組み付け用開口が設けられた従来のL型のコネクタでは、この組み付け用開口からハウジングの収容空間内に水等が浸入する虞がある。この点、本実施形態では、上述したようにハウジング10に組み付け用開口を別途設ける必要がないので、ハウジングに組み付け用開口が設けられた従来のL型のコネクタと比べて、防水性の向上を図ることができる。
【0053】
なお、例えば電線側端子及び機器側端子をそれぞれ略L字状のハウジングの収容空間内の内壁に圧入することで、ハウジングに組み付け用開口を別途設けることなく、電線側端子及び機器側端子を略L字状のハウジングの収容空間内に固定する構成も考えられる。しかしながら、この場合、電線側端子と機器側端子との間で十分な接触荷重を図ることができず、両端子の間で良好な導通を図ることが困難となる。この点、本実施形態のコネクタ1では、上述したように、略L字状のハウジング10の収容空間12内において電線側端子40及び機器側端子30を固定しながら、両端子30,40の間で十分な接触荷重を確保することができ、両端子30,40の間で良好な導通を図ることができる。
【0054】
<実施形態2>
次に、実施形態2について
図2を参照して説明する。本実施形態のコネクタ101は、機器側端子130の構成及びハウジング110の収容空間112内における機器側端子130の固定態様が実施形態1のものと異なっている。その他の構成については、実施形態1と同様であるため、構造、作用、及び効果の説明は省略する。なお、
図7において、
図1の参照符号にそれぞれ数字100を加えた部位は、実施形態1で説明した部位と同一である。
【0055】
実施形態2のコネクタ101では、
図7に示すように、ハウジング110の収容空間112の内壁のうち、第1の開口112Aと第2の開口112Bとの両者に臨む部位が、実施形態1と同様に、収容空間112の他の部位の内壁よりも前後方向における幅寸法が肉厚とされている。一方、この肉厚とされた部位には、実施形態1のような凹部10Aは設けられておらず、ナット50も埋め込まれていない構成となっている(以下、この肉厚とされた部位を「固定壁110C」と称する)。なお、固定壁110Cは固定部の一例である。
【0056】
また、本実施形態の機器側端子130は、その外面にねじ溝が設けられているものの、実施形態1のような円柱状の雄ねじ30Bではなく、その先端が先尖状とされたタッピングねじ(被固定部の一例)130Bとされている。機器側端子130におけるタッピングねじ130B以外の部位の構成については、実施形態1の機器側端子30と同様である。
【0057】
このような構成とされた機器側端子130は、次のような態様でハウジング110の収容空間112内に固定されている。即ち、機器側端子130の他端部に設けられたタッピングねじ130Bが、上下方向において固定壁110Cと接触する形でナット50に固定されている。具体的には、機器側端子130のタッピングねじ130Bは、収容空間12内において電線側端子40の貫通孔40Bに貫通されるとともに、その先端が固定壁110Cに突き刺され、機器側端子130をその軸周りに回転させることで、固定壁110Cにねじ込まれて固定されている。
【0058】
本実施形態では、機器側端子130が上記のような態様でハウジング110の収容空間112内に固定されていることで、収容空間12の内壁に実施形態1のようなナット50を配する必要がなく、部材点数の一層の削減を図ることができる。
【0059】
上記の実施形態の他の変形例を以下に列挙する。
(1)上記の各実施形態では、機器側端子の他端部の外面にねじ溝が設けられた構成を例示したが、機器側端子を収容空間の内壁に固定させるための構成については限定されない。機器側端子は、収容空間の内壁に固定される機器側端子の部位が、電線側端子の貫通孔に貫通されるとともに、機器との接続方向と交差する方向において収容空間の内壁と接触する形で収容空間の内壁に固定されればよい。
【0060】
(2)上記の各実施形態では、機器側端子の他端部が雄ねじ又はタッピングねじとされた構成を例示したが、例えば機器側端子の他端部が雌ねじとされていてもよい。この場合、機器側端子が固定される収容空間の内壁の部位に上記雌ねじと螺合されるボルトが埋め込まれていてもよい。
【0061】
(3)上記の各実施形態では、機器側端子の機器側接続部が雄型端子とされた構成を例示したが、機器側端子の機器側接続部が雌型端子とされた構成であってもよい。この場合、例えば上記の各実施形態における機器側端子を収容空間の内壁に固定した後、機器側端子の一端部に、内部に雌型端子が設けられた筒状部材等を取り付けることにより、機器側接続部を雌型端子とすることができる。
【0062】
(4)上記の各実施形態では、機器側端子の角形部が接続方向から視て正六角形状とされた構成を例示したが、角形部の形状は正六角形状に限定されない。
【0063】
(5)上記の各実施形態では、機器との接続方向と電線の引き出し方向とが直交するL型のコネクタを例示したが、機器との接続方向と電線の引き出し方向とが交差するL型のコネクタであればよい。
【0064】
以上、各実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。