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特開2015-225722シールド用素線及びシールドケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-225722(P2015-225722A)
(43)【公開日】2015年12月14日
(54)【発明の名称】シールド用素線及びシールドケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/17 20060101AFI20151117BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20151117BHJP
【FI】
   H01B7/18 D
   H05K9/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-108384(P2014-108384)
(22)【出願日】2014年5月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 直貴
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 興治
(72)【発明者】
【氏名】大森 喜和子
【テーマコード(参考)】
5E321
5G313
【Fターム(参考)】
5E321AA21
5E321GG09
5G313AA03
5G313AB02
5G313AB05
5G313AC03
5G313AD06
5G313AE08
(57)【要約】
【課題】高周波数帯における電磁シールド性能及び耐屈曲性に優れたシールド用素線を提供する。
【解決手段】シールド用素線25は、鋼から構成される中心部26と、銅又は銅合金から構成され、中心部26を被覆する銅被覆層27と、を備えており、下記の(1)式を満たしており、下記(1)式において、μは、中心部26を構成する鋼の比透磁率である。
μ<10 … (1)
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼から構成される中心部と、
銅又は銅合金から構成され、前記中心部を被覆する銅被覆層と、を備えており、
下記の(1)式を満たすことを特徴とするシールド用素線。
μ<10 … (1)
但し、上記の(1)式において、μは、前記中心部を構成する鋼の比透磁率である。
【請求項2】
請求項1に記載のシールド用素線であって、
下記の(2)式を満たすことを特徴とするシールド用素線。
μ<5 … (2)
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシールド用素線であって、
下記の(3)式を満たすことを特徴とするシールド用素線。
10%≦S/S≦95%… (3)
但し、上記の(3)式において、Sは、前記シールド用素線における前記中心部の断面積であり、Sは、前記シールド用素線の全体の断面積である。
【請求項4】
中心導体と、
前記中心導体を囲う絶縁層と、
前記絶縁層を囲うシールド層と、を備えたシールドケーブルであって、
前記シールド層は、請求項1〜3のいずれか一項に記載されたシールド用素線を備えていることを特徴とするシールドケーブル。
【請求項5】
請求項4に記載のシールドケーブルであって、
前記シールド層は、前記シールド用素線を編み込んで構成される編組線からなることを特徴とするシールドケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド用素線、及び、そのシールド用素線から構成されたシールド層を備えたシールドケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド用の複合素線として、磁性材料からなる第1の層と、導電性材料からなる第2の層と、を備えており、磁性材料は比透磁率が10以上であり、複合素線の全体断面積に対する第1の層の断面積の比率が5%〜80%である複合素線が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−59150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の複合素線は、低周波数帯(具体的には100kHz)と高周波数帯(具体的には10MHz)の両方での電磁シールド性能の向上が図られている。これに対し、ロボット用ケーブルや自動車用ケーブル等の用途では、より高い周波数帯での良好な電磁シールド性能と良好な耐屈曲性が求められており、上記の複合素線では十分に対応することができない、という問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、より高い周波数帯における電磁シールド性能(電磁波遮蔽性能)及び耐屈曲性に優れたシールド用素線、及び、それを備えたシールドケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係るシールド用素線は、鋼から構成される中心部と、銅又は銅合金から構成され、前記中心部を被覆する銅被覆層と、を備えており、下記の(1)式を満たすことを特徴とする。
【0007】
μ<10 … (1)
【0008】
但し、上記の(1)式において、μは、前記中心部を構成する鋼の比透磁率である。
【0009】
[2]上記発明において、前記シールド用素線は、下記の(2)式を満たしてもよい。
【0010】
μ<5 … (2)
【0011】
[3]上記発明において、前記シールド用素線は、下記の(3)式を満たしてもよい。
【0012】
10%≦S/S≦95%… (3)
【0013】
但し、上記の(3)式において、Sは、前記シールド用素線における前記中心部の断面積であり、Sは、前記シールド用素線の全体の断面積である。
【0014】
[4]本発明に係るシールドケーブルは、中心導体と、前記中心導体を囲う絶縁層と、前記絶縁層を囲うシールド層と、を備えたシールドケーブルであって、前記シールド層は、上記のシールド用素線を備えていてもよい。
【0015】
[5]上記発明において、前記シールド層は、前記シールド用素線を編み込んで構成される編組線からなってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シールド用素線を銅被覆鋼線で構成し、当該シールド用素線の中心部を構成する鋼の比透磁率が10未満であるので、より高い周波数帯における電磁シールド性能と耐屈曲性に優れたシールド用素線、及び、それを備えたシールドケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態におけるシールドケーブルの断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態におけるシールド層の平面図である。
図3図3(a)は、本発明の実施形態におけるシールド用素線の断面図であり、図3(b)は、本発明の実施形態におけるシールド用素線の変形例を示す断面図である。
図4図4(a)〜(c)は、実施例における屈曲試験の方法を示す図である。
図5図5は、屈曲試験における曲げ歪と破断までの屈曲回数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本実施形態におけるシールドケーブルの断面図、図2は本実施形態におけるシールド層の平面図、図3(a)は本実施形態におけるシールド用素線の断面図、図3(b)はシールド用素線の変形例を示す断面図である。
【0020】
本実施形態におけるシールドケーブル1は、より高い周波数帯(例えば100MHz)での良好な電磁シールド性能と耐屈曲性が要求される用途に用いられるケーブルであり、例えば、ロボット用ケーブルや自動車用ケーブルとして用いられる。このシールドケーブル1は、図1に示すように、2本の絶縁電線10と、当該絶縁電線10を囲うシールド層20と、当該シールド層20を覆うシース層30と、を備えている。
【0021】
なお、シールドケーブル1が有する絶縁電線10の本数は特に限定されず、絶縁電線10の本数が1本であってもよいし3本以上であってもよい。また、複数の絶縁電線10同士の間で当該絶縁電線10の線径等が相違してもよい。さらに、絶縁電線10に加えてドレイン線やフィラー等がシールド層20内に配置されていてもよい。
【0022】
それぞれの絶縁電線10は、中心導体11と、当該中心導体11の外周を覆う絶縁層12と、を備えている。本実施形態における中心導体11は、特に図示しないが、複数の素線を撚り合わせることで形成された撚線から構成されている。この中心導体11を構成する素線は、例えば、銅等の導電性を有する材料から構成されている。一方、絶縁層12は、例えば、架橋ポリエチレンや塩化ビニル等の電気絶縁性を有する材料から構成されている。なお、中心導体11を、撚線に代えて、単一の素線で構成してもよい。
【0023】
シールド層20は、シールド用素線25を編み込んで形成された編組線から構成されている。具体的には、図2に示すように、複数のシールド用素線25を一列に並べた帯状の素線束21を形成し、複数の素線束21が交差する2方向に延在すると共に交互に重なるように、複数の素線束21を編み込むことで形成されている。なお、複数のシールド用素線25を同一方向に螺旋状に巻くことでシールド層20を形成してもよい(いわゆる横巻きシールド)。
【0024】
それぞれのシールド用素線25は、図3(a)に示すように、鋼線で構成される中心部26と、当該中心部26を被覆する銅被覆層27と、を有する銅被覆鋼線から構成されている。銅被覆層27は、例えば、銅、又は、銅を主成分とする銅合金から構成されており、このシールド用素線25は、中心部26を構成する鋼線の表面に電解銅めっき処理により銅層を形成した後に、当該線材に対して伸線加工を行うことで形成されている。
【0025】
伸線加工前の鋼線としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼線を使用することができる。オーステナイト系のステンレス鋼の具体例としては、SUS301,SUS302,SUS303,SUS304,SUS305,SUS316,SUS317等を例示することができる。これらのオーステナイト系のステンレス鋼は、通常は磁性をほとんど帯びていないが、伸線加工を加えることでマルテンサイトに変態して部分的に磁性を帯び透磁率を上げることができる。本実施形態では、中心部26を構成する加工後の鋼は、10未満の比透磁率μを有しており(μ<10)、好ましくは、5未満の比透磁率μを有している(μ<5)。
【0026】
ここで、一般的に、導体を流れる電流の周波数fが高くなる程、導体の表面での電流密度が高くなり、導体の表皮厚さδが薄くなる現象(いわゆる表皮効果)が発生し、これによりインピーダンスが高くなって電流が流れ難くなってしまう。この表皮厚さδは、下記の(4)式に示すように、導体を流れる電流の周波数fと導体の透磁率μ[H/m]に反比例する。なお、下記の(4)式において、σは導体の導電率であり、ωは2πfである(ω=2πf)。
【0027】
【数1】
【0028】
本実施形態でも、中心導体11や外部からのノイズによりシールド層20に渦電流が発生し、この渦電流の周波数が高くなるほど(すなわちノイズの周波数が高くなるほど)シールド用素線25の表皮厚さが薄くなる。この際、上述のように中心部26を構成する鋼の比透磁率μを10未満とすることで(μ<10)、表皮厚さが薄くなるのを抑制することができる。このため、表皮効果により渦電流が弱まってしまうのを抑制することができ、高い周波数のノイズに対して良好な電磁シールド性能を確保することができる。
【0029】
また、本実施形態では、このシールド用素線25における鋼占積率は、下記の(5)式を満たしている。下記の(5)式において、Sは、シールド用素線25における中心部26の断面積である。一方、Sは、シールド用素線25の全体の断面積であり、すなわち、このSは、中心部26の断面積Sと、銅被覆層27の断面積Sとの合計値である(S=S+S)。なお、本実施形態におけるシールド用素線25の断面とは、シールド用素線25の軸方向に対して実質的に直交する方向に沿ってシールド用素線25を切断した場合の断面である。
【0030】
10%≦S/S≦95%… (5)
【0031】
このように、シールド用素線25の鋼占積率(=S/S)が上記の(5)式を満たしていることで、より良好な耐屈曲性と耐食性を確保することができる。これに対し、シールド用素線の鋼占積率が10%未満であると、銅素線とほとんど違いがなくなってしまい、耐屈曲性に劣ることとなる。一方、シールド用素線の鋼占積率が95%を超えると、銅被覆層27が割れて中心部26が露出し異種金属接触による腐食が生じ、耐屈曲性や引張り強さが低下すると共にインピーダンスが高くなってしまう。また、シールド用素線の鋼占積率が95%を超えると、当該シールド用素線の製造が困難になってしまう。
【0032】
なお、図3(b)に示すように、シールド用素線25Bが、銅被覆層27をさらに被覆するメッキ層28を有してもよい。こうしたメッキ層28の具体例としては、例えば、錫メッキ層を例示することができる。
【0033】
図1に示すように、以上に説明したシールド層20はシース層30に覆われている。このシース層30は、例えば、架橋ポリエチレンや塩化ビニル等の電気絶縁性を有する材料から構成されている。なお、このシース層30を省略してもよい。
【0034】
以上のように、本実施形態では、シールド用素線25を銅被覆鋼線で構成し、中心部26を構成する鋼の比透磁率が10未満であるので、シールドケーブルの高周波数帯(例えば100MHz)での電磁シールド性能と耐屈曲性をいずれも良好とすることができる。
【0035】
また、本実施形態では、シールド用素線25の鋼占積率(=S/S)が上記の(5)式を満たすことで、より良好な耐屈曲性と耐食性を確保することができる。
【0036】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0037】
以下に、本発明をさらに具現化した実施例及び比較例により本発明の効果を確認した。以下の実施例1〜2及び比較例1は、上述した実施形態におけるシールド用素線の耐屈曲性の効果を確認するためのものである。一方、以下の実施例3〜8及び比較例2〜4は、上述した実施形態におけるシールドケーブルの高周波数帯での電磁シールド性能の効果を確認するためのものである。
【0038】
なお、図4(a)〜図4(c)は実施例における屈曲試験の方法を示す図、図5は、屈曲試験における曲げ歪と破断までの屈曲回数の関係を示すグラフである。
【0039】
<実施例1>
実施例1では、図3(a)に示す構成のシールド用素線を作製した。この際、下記の表1に示すように、直径0.332mmのSUS304からなる線材に電解銅めっきにより厚さ0.004mmの銅層を形成した後に、線径が0.18mmとなるまで当該線材を伸線加工し、鋼占積率(=S/S)を95%とした。
【0040】
【表1】
【0041】
この実施例1のシールド用素線に対して、屈曲試験機(ユアサシステム株式会社製小型卓上試験機 TCDM111LH)を用いて屈曲試験を行った。具体的には、この屈曲試験では、図4に示すように、一対の屈曲治具40の間にシールド用素線を挿入すると共にシールド用素線の下端に50gの荷重を印加した状態で、当該シールド用素線の上部を左右に90°屈曲させた。この時の屈曲速度は60回/分とした。なお、屈曲回数1回とは、図4(a)〜図4(c)に示すように、左右へ1回ずつ曲げる1往復の屈曲を意味する。
【0042】
そして、曲げ歪が0.1で破断回数が100回以上であり、且つ、曲げ歪0.01で2000回以上である場合に、シールド用素線の耐屈曲性が良好であると評価した。これに対し、曲げ歪が0.1で破断回数が100回未満であり、又は、曲げ歪0.01で2000回未満である場合に、シールド用素線の耐屈曲性が劣ると評価した。なお、本実施例における曲げ歪εとは、下記の(6)式で表わされる。但し、下記の(6)式におけるrは、シールド用素線の半径であり、Rは、屈曲治具40の円弧部41の半径である。
【0043】
ε=r/(R+r) … (6)
【0044】
この実施例1では、図5に示すように、曲げ歪が0.1で破断回数が100回以上であり、且つ、曲げ歪が0.01で破断回数が2000回以上であり、シールド用素線の耐屈曲性は良好であった。
【0045】
<実施例2>
実施例2では、上記の表1に示すように、SUS304からなる線材の直径を0.108mmとし、銅層の厚さを0.116mmとし、鋼占積率を10%としたことを除いて、実施例1と同様の条件でシールド用素線を作製し屈曲試験を行った。その結果、図5に示すように、曲げ歪が0.1で破断回数が100回以上であり、且つ、曲げ歪が0.01で破断回数が2000回以上であり、シールド用素線の耐屈曲性は良好であった。
【0046】
<比較例1>
比較例1では、上記の表1に示すように、銅被覆鋼線に代えて、線径が0.18mmの銅線をシールド用素線として用い、このシールド用素線に対して、実施例1と同様の条件で屈曲用試験を行った。その結果、図5に示すように、曲げ歪が0.1で破断回数が100回未満であり、且つ、曲げ歪が0.01で破断回数が2000回未満であり、シールド用素線の耐屈曲性が劣っていた。
【0047】
<実施例3>
実施例3では、図1に示す構成のシールドケーブルを作製した。
【0048】
この際、絶縁電線を次のように作製した。すなわち、先ず、0.32mmの銅素線を9本撚り合わせた子撚線を19本作製し、さらに、この19本の子撚線を撚り合わせることで、線径が5.3mmの中心導体を作製した。次いで、この中心導体の外周に、架橋ポリエチレンから構成され、厚さが1.1mmの絶縁層を形成した。
【0049】
また、シールド用素線としては、図3(b)に示すような錫メッキ層を有する構造のものを作製した。具体的には、下記の表2に示すように、先ず、直径0.08mmのSUS304からなる線材に電解銅めっきにより厚さ0.085mmの銅層を形成した後に、線径が0.18mmとなるまで当該線材を伸線加工し、さらに電解めっき処理によりその表面に錫メッキ層を形成した。
【0050】
【表2】
【0051】
つまり、本実施形態では、電解銅めっき完了から伸線完了までのシールド用素線の加工の度合いを示す加工度を48%とした。具体的には、この加工度PDは、下記の(7)で表される。但し、下記の(7)式におけるΔSは、電解銅めっき完了時から伸線完了時までの間のシールド用素線の断面積の減少量であり、S’は、電解銅めっき完了時のシールド用素線の断面積である。
【0052】
PD=ΔS/S’ … (7)
【0053】
上記の表2に示すように、加工完了後のこのシールド用素線の鋼占積率(=S/S)は10%であり、中心部の比透磁率μは4.8であった。この比透磁率は、振動試料型磁力計を用いて測定した。
【0054】
以上に説明したシールド用素線を7本並べることで素線束を形成し、さらに24本の素線束を編み込むことで、図2に示す構造を有する編組線を作製した。この編組線の長径(図1の符号A)は15mmとし、当該編組線の短径(図1の符号A)は7.5mmとした。また、この編組線の厚さは1.1mmであり、編組密度は98%であった。なお、この実施例3では、編組線の外周にシース層を形成しなかった。
【0055】
この実施例3のシールドケーブルに対して、高周波数帯での電磁シールド性能を評価する試験を行った。具体的には、この電磁シールド性能試験では、シールドケーブルの外周に電流プローブ(Fischer Custom Communications, Inc社製カレントプローブ TCP−9651)を配置し、信号発信機からシールドケーブルの中心導体に100MHzの信号を入力し、電流プローブに接続されたスペクトラムアナライザ(ローデ・シュワルツ・ジャパン社製EMIテストレシーバ ESPI7)を用いて、シールドケーブルの外側に漏洩するノイズレベルを測定した。
【0056】
そして、この電磁シールド試験では、シールドケーブルの100MHzにおけるノイズレベルと基準値との差分を算出し、当該差分が50dBμV以上である場合に、シールドケーブルの高周波帯における電磁シールド性能が良好であると評価した。これに対し、上記の差分が50dBμV未満である場合には、シールドケーブルの高周波帯における電磁シールド性能が劣ると評価した。
【0057】
なお、上記の基準値として、編組線のないケーブルに対して上記の同様の条件で電磁シールド性能試験を予め行い、そのケーブルの100MHzにおけるノイズレベルを設定した。
【0058】
この実施例3では、上記の表2に示すように、100MHzにおける電磁シールド効果が52dBμVであり、シールドケーブルの高周波数帯における電磁シールド性能が良好であった。
【0059】
<実施例4>
実施例4では、SUS304からなる線材の直径を0.176mmとし、銅層の厚さを0.037mmとし、シールド用素線の鋼占積率を50%としたことを除いて、実施例3と同様の条件でシールドケーブルを作製した。上記の表2に示すように、この実施例4の中心部の比透磁率μは4.5であった。
【0060】
そして、この実施例4のシールドケーブルに対して実施例3と同様の条件で電磁シールド性能試験を行った。その結果、上記の表2に示すように、100MHzにおける電磁シールド効果が52dBμVであり、シールドケーブルの高周波数帯における電磁シールド性能が良好であった。
【0061】
<実施例5>
実施例5では、SUS304からなる線材の直径を0.244mmとし、銅層の厚さを0.003mmとし、シールド用素線の鋼占積率を95%としたことを除いて、実施例3と同様の条件でシールドケーブルを作製した。上記の表2に示すように、この実施例5の中心部の比透磁率μは4.4であった。
【0062】
そして、この実施例5のシールドケーブルに対して実施例3と同様の条件で電磁シールド性能試験を行った。その結果、上記の表2に示すように、100MHzにおける電磁シールド効果が51dBμVであり、シールドケーブルの高周波数帯における電磁シールド性能が良好であった。
【0063】
<実施例6>
実施例6では、SUS304からなる線材の直径を0.108mmとし、銅層の厚さを0.116mmとした(すなわち加工度を72%とした)ことを除いて、実施例3と同様の条件でシールドケーブルを作製した。上記の表2に示すように、この実施例5の中心部の比透磁率μは9.5であった。
【0064】
そして、この実施例6のシールドケーブルに対して実施例3と同様の条件で電磁シールド性能試験を行った。その結果、上記の表2に示すように、100MHzにおける電磁シールド効果が51dBμVであり、シールドケーブルの高周波数帯における電磁シールド性能が良好であった。
【0065】
<実施例7>
実施例7では、SUS304からなる線材の直径を0.24mmとし、銅層の厚さを0.05mmとする(すなわち加工度を72%とする)と共にシールド用素線の鋼占積率を50%としたことを除いて、実施例3と同様の条件でシールドケーブルを作製した。上記の表2に示すように、この実施例6の中心部の比透磁率μは9.2であった。
【0066】
そして、この実施例7のシールドケーブルに対して実施例3と同様の条件で電磁シールド性能試験を行った。その結果、上記の表2に示すように、100MHzにおける電磁シールド効果が51dBμVであり、シールドケーブルの高周波数帯における電磁シールド性能が良好であった。
【0067】
<実施例8>
実施例8では、SUS304からなる線材の直径を0.332mmとし、銅層の厚さを0.004mmとする(すなわち加工度を72%とする)と共にシールド用素線の鋼占積率を95%としたことを除いて、実施例3と同様の条件でシールドケーブルを作製した。上記の表2に示すように、この実施例8の中心部の10kHzでの比透磁率μは9.1であった。
【0068】
そして、この実施例8のシールドケーブルに対して実施例3と同様の条件で電磁シールド性能試験を行った。その結果、上記の表2に示すように、100MHzにおける電磁シールド効果が50dBμVであり、シールドケーブルの高周波数帯における電磁シールド性能が良好であった。
【0069】
<比較例2>
比較例2では、低炭素鋼からなる線材の直径を0.108mmとし、銅層の厚さを0.116mmとした(すなわち加工度を72%とした)ことを除いて、実施例3と同様の条件でシールドケーブルを作製した。上記の表2に示すように、この比較例2の中心部の比透磁率μは42.9であった。
【0070】
そして、この比較例2のシールドケーブルに対して実施例3と同様の条件で電磁シールド性能試験を行った。その結果、上記の表2に示すように、100MHzにおける電磁シールド効果が49dBμVであり、シールドケーブルの高周波数帯における電磁シールド性能が劣っていた。
【0071】
<比較例3>
比較例3では、低炭素鋼からなる線材の直径を0.24mmとし、銅層の厚さを0.05mmとする(すなわち加工度を72%とする)と共にシールド用素線の鋼占積率を50%としたことを除いて、実施例3と同様の条件でシールドケーブルを作製した。上記の表2に示すように、この比較例3の中心部の比透磁率μは43.6であった。
【0072】
そして、この比較例3のシールドケーブルに対して実施例3と同様の条件で電磁シールド性能試験を行った。その結果、上記の表2に示すように、100MHzにおける電磁シールド効果が48dBμVであり、シールドケーブルの高周波数帯における電磁シールド性能が劣っていた。
【0073】
<比較例4>
比較例4では、低炭素鋼からなる線材の直径を0.332mmとし、銅層の厚さを0.004mmとする(すなわち加工度を72%とする)と共にシールド用素線の鋼占積率を95%としたことを除いて、実施例3と同様の条件でシールドケーブルを作製した。上記の表2に示すように、この比較例4の中心部の比透磁率μは43.3であった。
【0074】
そして、この比較例4のシールドケーブルに対して実施例3と同様の条件で電磁シールド性能試験を行った。その結果、上記の表2に示すように、100MHzにおける電磁シールド効果が48dBμVであり、シールドケーブルの高周波数帯における電磁シールド性能が劣っていた。
【0075】
以上の結果から、実施例1,2と比較例1を比較すると、図5に示すように、銅線よりも銅被覆鋼線の方が耐屈曲性に優れており、鋼占積率を10%以上とすることで良好な耐屈曲性を得ることができた。
【0076】
また、実施例3〜8と比較例2〜4を比較すると、表2に示すように、シールド用素線の中心部を構成する鋼が、10未満の比透磁率μを有していることで(μ<10)、100MHzにおける電磁シールド性能を良好とすることができた。
【0077】
さらに、実施例3と実施例6、実施例4と実施例7、或いは、実施例5と実施例8を比較すると、表2に示すように、シールド用素線の中心部を構成する鋼が、5未満の比透磁率μを有していることで(μ<5)、100MHzにおける電磁シールド性能をさらに良好とすることができた。
【符号の説明】
【0078】
1…シールドケーブル
10…絶縁電線
11中心導体
12…絶縁層
20…シールド層
21…素線束
25…シールド用素線
26…中心部
27…銅被覆層
28…メッキ層
30…シース層
40…屈曲治具
図1
図2
図3
図4
図5