【実施例】
【0020】
先ず、燃料電池発電装置2について説明する。
図1に示すように、燃料電池発電装置2は、空気と改質燃料ガスとから発電を行うものであり、排熱回収による熱交換後の湯水を貯湯する貯湯給湯装置3と、この貯湯給湯装置3と燃料電池発電装置2との間に湯水を循環させる為の湯水循環回路4等と組み合わせることで燃料電池コージェネレーションシステム1を構成しているが、燃料電池発電装置2以外の詳細な構成の説明は省略する。
【0021】
図2に示すように、燃料電池発電装置2は、燃料電池発電部5、カソード空気用送風装置6、燃料改質空気用送風装置7、燃料ガス昇圧装置8、排気通路11、排熱回収熱交換器12、水処理装置13、インバータ14等を備え、これらの各種器具が外装ケース15に収納されて構成され、燃料電池発電部5にて発電された直流電力は、インバータ14を介して交流電力に変換されて外部に出力される。
【0022】
次に、燃料電池発電部5について説明する。
図2に示すように、燃料電池発電部5は、燃料電池セルスタック5a、蒸発器5b、燃料改質器5c、オフガス燃焼室5d、発電部内熱交換器5e等を備え、燃料改質器5cによって改質された改質燃料ガス及び酸化剤としての空気を燃料電池セルスタック5aで化学反応させることで発電を行うものである。
【0023】
燃料電池セルスタック5aは、複数の燃料電池セルで構成されている。各燃料電池セルは、ジルコニア等の固体電解質と燃料極と酸素極から夫々形成されている。燃料電池セルスタック5aの燃料極(アノード)側に燃料改質器5cから改質燃料ガスが供給され、燃料電池セルスタック5aの酸素極(カソード)側にカソード空気用送風装置6から空気通路16と排気ガスにより加熱される発電部内熱交換器5eとを介して空気が供給され、これらを高温の環境下で電気化学反応させて直流電力を生成する。
【0024】
蒸発器5b(蒸発部に相当する)は、燃料ガスに混合する為の水蒸気を生成して燃料改質器5cに供給するものである。蒸発器5bには、燃料ガス昇圧装置8によって取り込まれて昇圧された燃料ガス(都市ガスやLPG等)と燃料改質空気用送風装置7によって取り込まれた燃料改質用の空気とが共通通路19を介して供給され、水処理装置13から純水が純水供給通路31を介して供給される。蒸発器5bは、供給された純水から水蒸気を生成する。
【0025】
燃料改質器5cは、その内部にニッケルや白金等の改質触媒を備え、蒸発器5bから供給される脱硫された燃料ガスと空気と水蒸気とを混合して反応(所謂、水蒸気改質)させて、水素リッチな改質燃料ガスを生成し、この改質燃料ガスを燃料電池セルスタック5aの燃料極側に供給する。
【0026】
オフガス燃焼室5dは、燃料電池セルスタック5aの発電に伴い生じる残余燃料を燃焼処理する為のものであり、燃料電池セルスタック5aの燃料極側及び酸素極側の各排出側と接続されている。このオフガス燃焼室5dでは、燃料極側から排出された残余燃料ガスを含む反応燃料ガスと酸素極側から排出された酸素を含む空気とを公知の燃焼触媒を用いて燃焼させることによって高温の排気ガスを生成し、この排気ガスは燃料改質器5cや発電部内熱交換器5eを加熱してから、排気通路11を介して外部に排出される。
【0027】
カソード空気用送風装置6は、フィルタを介して外部から空気を発電空気ブロワに取り込み、この取り込まれた空気を、バッファタンクと流量センサと逆止弁が設置された空気通路16を介して燃料電池発電部5に供給する。
【0028】
燃料改質空気用送風装置7は、フィルタを介して外部から燃料改質用の空気を改質空気ブロワに取り込み、この取り込まれた燃料改質用の空気を改質空気通路17と共通通路19とを介して燃料電池発電部5に供給する。
【0029】
燃料ガス昇圧装置8は、図示外のガス供給源から燃料ガスを電磁弁とガスガバナを通して燃料昇圧ブロワに取り込み、この昇圧された燃料ガスを、バッファタンクと流量センサと脱硫器とが設置されたガス通路18とこのガス通路18に連なる共通通路19とを介して燃料電池発電部5に供給する。
【0030】
排気通路11は、オフガス燃焼室5dから延びる上流側排気通路部11a、この上流側排気通路部11aの下流側から延びる下流側排気通路部11bを備え、下流側排気通路部11bの下流端が排気口11cに接続され、燃料電池発電部5のオフガス燃焼室5dから排出された排気ガスは、上流側排気通路部11aと下流側排気通路部11bとを通り排気口11cから外部に排出される。
【0031】
排熱回収用熱交換器12は、上流側排気通路部11aと下流側排気通路部11bとの間に設置されている。排熱回収用熱交換器12は、排気通路11の一部を構成する排気通路側熱交換通路部12a、湯水循環回路4の一部を構成する湯水側熱交換通路部12bを備えている。この排熱回収用熱交換器12において、燃料電池発電部5から排出される高温の排気ガスは、貯湯給湯装置3の貯湯タンクに蓄えられた湯水との間で熱交換されて、排気ガス中に含まれる水蒸気は冷却されて凝縮水となる。
【0032】
次に、水処理装置13について説明する。
図2に示すように、水処理装置13は、水回収通路21、水処理タンク22、純水タンク23、純水供給手段24等を備え、排熱回収熱交換器12で凝縮された凝縮水を回収し、凝縮水から不純物を取り除き、凝縮水から生成された純水を一時的に貯留した後に燃料電池発電部5に供給するものである。
【0033】
水回収通路21は、燃料電池発電部5の排気ガスを排熱回収熱交換器12によって冷却された凝縮水を排気通路11から回収する為のものであり、排気通路11の下流側排気通路部11bと水処理タンク22とを接続している。
【0034】
水処理タンク22は、水回収通路21で回収された凝縮水の不純物を除去する為のものであり、凝縮水を浄化する為のイオン交換樹脂が収納されている。水処理タンク22の上端部に水回収通路21の下流端が接続され、水処理タンク22の下端部にタンク連結通路25の上流端が接続されている。水処理タンク22の上端部にオーバーフロー用の排水通路26が接続され、排水通路26の途中部に中和器27が設置されている。
【0035】
純水タンク23は、水処理タンク22により処理された純水を貯留する為のものである。純水タンク23の上端部に、水処理タンク22から延びるタンク連結通路25の下流端が接続されている。タンク連結通路25の途中部にオーバーフロー用の排水通路28が接続されている。純水タンク23には、純水タンク23内に貯留された純水の液面を3段階(上位レベルL1、中位レベルL2、下位レベルL3)に応じて検出可能な水位スイッチ29が設けられている。
【0036】
純水供給手段24は、純水タンク23に貯留された純水を燃料電池発電部5に供給する為のものであり、純水供給通路31、この純水供給通路31に設置された純水ポンプ32等を有している。純水供給通路31の途中部には、気泡を除去する為の気泡除去手段41が設けられている。
【0037】
純水供給通路31は、上流側供給通路部31a、下流側供給通路部31bとを有している。上流側供給通路部31aの上流端は、純水タンク23の下端部に接続され、上流側供給通路部31aの下流端は、鉛直状に上方に向かって延び、気泡除去手段41のエア抜き弁42に接続されている(
図3参照)。上流側供給通路部31aには、純水ポンプ32が設置されている。
【0038】
純水ポンプ32は、ステッピングモータにより偏心カムを介して進退駆動されるプランジャと、このプランジャが進退駆動可能に収容され且つ吸込口と吐出口とを有するチャンバ等を備えたプランジャポンプで構成され、プランジャの進退駆動に伴いチャンバ内の純水を蒸発器5bに圧送する。
【0039】
次に、気泡除去手段41について説明する。
図2,
図3に示すように、気泡除去手段41は、純水供給通路31から気泡を除去する為のものであり、エア抜き弁42、エア抜き通路44等を備え、純水供給通路31よりも上方に位置するように設けられると共に燃料電池発電部5の近傍部に配置されている。純水供給通路31(上流側供給通路部31a及び下流側供給通路部31b)内に発生した気泡は、上方に流れてエア抜き弁42に流れ込み、エア抜き弁42からエア抜き通路44を介して排出可能である。
【0040】
エア抜き弁42は、ケーシング42a、このケーシング42aの内部に形成されたフロート室42b、このフロート室42bの上端部に設けられた弁座42c、このフロート室42bに収納されたフロート弁体42d等を備えた公知のエア抜き弁の構造である。
【0041】
エア抜き通路44は、エア抜き弁42と換気ファン45とを接続する為のものであり、エア抜き通路44の上流端は、エア抜き弁42の出口側に接続され、気泡除去手段41の排出口41aであるエア抜き通路44の下流端が、換気ファン45の吸込口45aの近傍に配置されている。換気ファン45は、外装ケース15内を換気する為に外装ケース15の外周部に設置されている。
【0042】
次に、本発明に関連する下流側供給通路部31bの構造について説明する。
図2,
図3に示すように、純水供給通路31のうちの気泡除去手段41から蒸発器5bに至る下流側供給通路部31b(通路部分に相当する)は、気泡除去手段41から蒸発器5bに向かって下り勾配となるように構成されている。下流側供給通路部31bの上流端は、エア抜き弁42に接続され、下流側供給通路部31bの下流端は、燃料電池発電部5の蒸発器5bに接続されている。
【0043】
下流側供給通路部31bの上流端及び下流端の他の器具への接続部分を除く大部分の傾斜角度は、例えば、45度程度に設定されているが、特にこの傾斜角度に限定する必要はなく、例えば、約20度〜80度の範囲内で設定されるのが望ましい。下流側供給通路部31bが下り傾斜状に構成されることで、下流側供給通路部31b内に発生した気泡は下流側供給通路部31bから蒸発器5bへ流れ難くなり、下流側供給通路部31bに滞留し難くなる。
【0044】
次に、水流検知手段51について説明する。
図2,
図3に示すように、下流側供給通路部31bにおける燃料電池発電部5の近傍部には、純水の流動の有無を検知する為の水流検知手段51が設けられている。この水流検知手段51は、フラッパー弁51a、このフラッパー弁51aの位置を検知可能な近接スイッチ51b等を備えた公知の開閉センサ付きフラッパー弁の構造であり、フラッパー弁51aの動作と近接スイッチ51bの検知に応じて、下流側供給通路部31bに純水が流れているかを検知することができる。尚、水流検知手段51は、気泡を下流側から上流側に向かって流す為の隙間又は小径孔を備えている。
【0045】
この水流検知手段51において、純水ポンプ32が駆動すると、純水の圧力を受けてフラッパー弁51aが作動して、下流側供給通路部31bを連通状態に切り換えるが、下流側供給通路部31bの水流検知手段51の上流側に気泡が滞留していると、純水ポンプ32が駆動しても、フラッパー弁51aは作動せず、下流側供給通路部31bを閉鎖状態に維持する。水流検知手段51は、近接スイッチ51bがフラッパー弁51aの作動状態を検知し、この検知信号を制御ユニット(図示略)に送信し、この検知信号に基づいて純水の流動の有無を検知する。
【0046】
次に、本発明の燃料電池発電装置2の作用及び効果について説明する。
燃料電池発電装置2の発電稼動に伴い、予め設定された純水流量(例えば5cc/min)が燃料電池発電部5の蒸発器5bに供給されるように、純水ポンプ32のステッピングモータを駆動し、純水タンク23内の純水を純水供給通路31を介して蒸発器5bに供給する。
【0047】
燃料電池発電部5の発電運転時には、純水ポンプ32の駆動に伴う圧力によって、純水がエア抜き弁42のフロート室42bを通り、フロート室42bにおいて、純水の水位が上昇するのに伴いフロート弁体42dが上昇し、フロート室42bの上端側に設けられた弁座42cに当接することで、エア抜き弁42は閉弁状態になる。
【0048】
ところで、燃料電池発電装置2の運転が停止すると、燃料電池発電部5の余熱によって、純水供給通路31内に滞留している純水が加熱されてしまう。この純水には、排気ガスに含まれる二酸化炭素が溶け込んでいるので、純水中には、炭酸、炭酸イオン、炭酸水素イオン等が存在している。このため、純水供給通路31内の純水が加熱されると、純水中の溶存二酸化炭素が気泡となって発生する。
【0049】
純水供給通路31内に気泡が発生すると、気泡は純水供給通路31を上方に流れ、エア抜き弁42のフロート室42bに流れ、フロート室42bに気泡が溜まる。特に、下流側供給通路部31bは、燃料電池発電部5に最も近くに設置されているので、発生する気泡の量も多くなるが、気泡は下流側供給通路部31bを上方に向かって自然に流れてフロート室42bに流れ込む。下流側供給通路部31bの水流検知手段51の下流側には、気泡が滞留する虞があるが、滞留する気泡は比較的少量である。
【0050】
フロート室42bに気泡が流入し続けてエア量が増していくと、フロート室42bの純水の水位が下降し、フロート弁体42dに作用する浮力が減少し、その浮力がフロート弁体42dの自重よりも小さくなったときに、フロート弁体42dが下方へ移動して弁座42cから離隔することで、エア抜き弁42が開弁状態になる。エア抜き弁42が開弁状態になると、フロート室42bの気泡はエア抜き通路44を通って外部に排出される。
【0051】
燃料電池発電装置2の運転の再開に伴い、純水ポンプ32が駆動されると、純水ポンプ32による圧力によってフロート室42bに純水が流入して気泡を上方に押圧し、フロート室42bの気泡はエア抜き通路44を介して換気ファン45から外部に自動的に排出され、その後、フロート弁体42dが上方へ移動して弁座42cに当接することで、エア抜き弁42を閉弁状態にする。
【0052】
以上説明したように、純水供給通路31のうちの気泡除去手段41から蒸発器5bに至る下流側供給通路部31bが下り勾配となるように構成されたので、下り勾配の下流側供給通路部31b内に発生した気泡は、比重の関係で下流側供給通路部31bを上方に向かって流れ、気泡除去手段41に自動的に送られる。
【0053】
従って、燃料電池発電部5の熱によって、下流側供給通路部31b内の純水が加熱されて純水中の溶存二酸化炭素が気泡となっても、この気泡は下流側供給通路部31bから気泡除去手段41を介して外部に排出されるので、純水供給通路31のうちの燃料電池発電部5の熱によって気泡が最も発生しやすい通路部分(下流側供給通路部31b)の気泡の滞留を防止し、純水ポンプ32の空回りを防止することができる。
【0054】
また、燃料電池発電部5の運転再開時に、下流側供給通路部31bを流れる純水に気泡を混入させず、純水ポンプ32の空回りを防ぐので、燃料電池発電部5の蒸発器5bに必要な純水流量を安定して供給することができ、燃料電池発電装置2を安定して運転再開することができるので、燃料電池発電部5が故障するのを防止することができる。
【0055】
さらに、純水供給通路31の下流側供給通路部31bには、純水の流動の有無を検知する為の水流検知手段51が設けられたので、水流検知手段51で純水の流動を検知することで、純水ポンプ32の空回りを確実に防止することができる。純水の流動を検知した状態で純水ポンプ32の回転数を制御することで、蒸発器5bに安定した純水流量を供給することができるので、純水供給通路31のうちの気泡除去手段41より上流側の通路部分(上流側供給通路部31a)の流量センサや気泡センサ等を省略することができる
【0056】
水流検知手段51が純水の流動を検知しない状態では、純水供給通路31内の気泡を除去する為に純水ポンプ32の出力を一定時間上昇させて、気泡を純水供給通路31内から強制的に排出し、一定時間以内に水流検知手段51が純水の流動を検知している状態になると、純水ポンプ32の出力を通常状態に戻す。尚、純水ポンプ32の出力を上昇して一定時間経過しても、水流検知手段51が純水の流動を検知しない場合、改質用の水不足による異常運転を回避する為に燃料電池発電装置2の運転を停止する。
【0057】
次に、前記実施例を部分的に変更した形態について説明する。
[1]
図4に示すように、水流検知手段51Aは、弱い付勢力のバネ部材が組み込まれた逆止弁51Aa、この逆止弁51Aaの弁体の位置を検知可能な近接スイッチ51Ab等を備えた構造であっても良い。この水流検知手段51Aにおいては、逆止弁51Aaの動作と近接スイッチ51Abの検知に応じて、下流側供給通路部31bに純水が流れているかを検知することができる。尚、水流検知手段51Aは、気泡を下流側から上流側に向かって流す為の隙間又は小径孔を備えている。
【0058】
この水流検知手段51Aにおいて、純水ポンプ32が駆動すると、純水の圧力を受けて逆止弁51Aaが開弁状態になって、下流側供給通路部31bを連通状態に切り換えるが、下流側供給通路部31bの水流検知手段51Aの上流側に気泡が滞留していると、純水ポンプ32が駆動しても、逆止弁51Aaは閉弁状態を維持する。近接スイッチ51Abは、逆止弁51Aaの作動状態を検知することで、純水の流動の有無を検知する。
【0059】
[2]前記実施例において、水流検知手段51の構造は、ほんの一例を示したに過ぎず、下流側供給通路部31bの純水の流動の有無を検知する為のものであれば、適宜変更可能である。
【0060】
[3]前記実施例において、気泡除去手段41の構造は、ほんの一例を示したに過ぎず、気泡除去手段41のエア抜き弁42、エア抜き通路44の構造は、純水供給通路31から気泡を除去する為のものであれば、適宜変更可能である。
【0061】
[4]その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。