【解決手段】インバータ回路2と、インバータ回路2から入力される高周波電流によって磁界を発生させるコイル5とを有する加熱部A1,A2を備えている誘導加熱装置において、干渉音防止機能を機能させる状態と、機能させない状態とを切り替える切替部9を設けた。切替部9によって干渉音防止機能を機能させる状態に切り替えられている場合、干渉音の発生が防止される。一方、切替部9によって干渉音防止機能を機能させない状態に切り替えられている場合、各加熱部A1,A2は、駆動周波数をそれぞれ独立に設定することができるので、出力や効率が制限されることなく制御を行うことができる。したがって、干渉音防止機能を常に機能させる場合と比べて、各加熱部A1,A2の出力や効率が制限されることを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1および
図2は、第1実施形態に係る誘導加熱装置の全体構成を説明するための図である。
図1は、当該誘導加熱装置の各機能ブロックを示しており、
図2は、当該誘導加熱装置の外観を示している。
【0026】
本実施形態に係る誘導加熱装置は、2つの火口を有する、いわゆる電磁調理器であり、電磁誘導を利用して、鍋などの加熱対象物B1,B2の加熱を行う。当該誘導加熱装置は、2つの加熱部である第1加熱部A1と第2加熱部A2、操作部8、および、切替部9を備えている。第1加熱部A1および第2加熱部A2は、それぞれ、直流電源1、インバータ回路2、コイル5、共振コンデンサ6、制御回路7を備えている。第1加熱部A1および第2加熱部A2は、直流電源1が出力する直流電流をインバータ回路2で高周波電流に変換して、コイル5に流すことで、電磁誘導を利用して加熱対象物B1(B2)を加熱する。
図2に示すように、第1加熱部A1のコイル5と第2加熱部A2のコイル5とは、誘導加熱装置の筐体の上面で、互いに近接して配置されている。
【0027】
図3は、第1加熱部A1の詳細な構成を説明するための図である。第2加熱部A2の構成も、
図3に示す第1加熱部A1と同様である。
【0028】
直流電源1は、直流電流を出力するものであり、例えば、電力系統から入力される交流電流を整流する整流回路と、平滑する平滑コンデンサとを備えている。なお、直流電源1は、交流電流を直流電流に変換して出力するものに限られず、例えば、燃料電池、蓄電池、太陽電池などの直流電流を出力するものであってもよい。
【0029】
インバータ回路2は、直流電源1から入力される直流電流を高周波電流に変換して、コイル5に出力するものであり、本実施形態においては、単相フルブリッジ型のインバータである。インバータ回路2は、4個のスイッチング素子2a〜2d、フライホイールダイオード3a〜3d、および、スナバコンデンサ4a〜4dを備えている。本実施形態では、スイッチング素子2a〜2dとしてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を使用している。なお、スイッチング素子2a〜2dはMOSFETに限定されず、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor : 絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)などであってもよい。また、フライホイールダイオード3a〜3dおよびスナバコンデンサ4a〜4dの種類も限定されない。
【0030】
スイッチング素子2aと2bとは、スイッチング素子2aのソース端子とスイッチング素子2bのドレイン端子とが接続されて、直列接続されている。スイッチング素子2aのドレイン端子は直流電源1の正極側に接続され、スイッチング素子2bのソース端子は直流電源1の負極側に接続されて、ブリッジ構造を形成している。同様に、スイッチング素子2cと2dとが直列接続されてブリッジ構造を形成している。スイッチング素子2aと2bで形成されているブリッジ構造を第1アームとし、スイッチング素子2cと2dで形成されているブリッジ構造を第2アームとする。第1アームのスイッチング素子2aと2bとの接続点には出力ラインが接続され、第2アームのスイッチング素子2cと2dとの接続点にも出力ラインが接続されている。これら2つの出力ラインの間に、コイル5と共振コンデンサ6とが直列接続されている。各スイッチング素子2a〜2dのゲート端子には、制御回路7から出力される駆動信号Pa’〜Pd’(後述)がそれぞれ入力される。
【0031】
各スイッチング素子2a〜2dは、それぞれ駆動信号Pa’〜Pd’に基づいて、オン状態とオフ状態とを切り替えられる。各アームの両端はそれぞれ直流電源1の正極と負極とに接続されているので、正極側のスイッチング素子がオン状態で負極側のスイッチング素子がオフ状態の場合、当該アームの出力ラインの電位は直流電源1の正極側の電位となる。一方、正極側のスイッチング素子がオフ状態で負極側のスイッチング素子がオン状態の場合、当該アームの出力ラインの電位は直流電源1の負極側の電位となる。これにより、直流電源1の正極側の電位と負極側の電位とが切り替えられたパルス状の電圧信号が各出力ラインから出力され、2つの出力ライン間の電圧である線間電圧が交流電圧となる。
【0032】
フライホイールダイオード3a〜3dは、スイッチング素子2a〜2dのドレイン端子とソース端子との間に、それぞれ逆並列に接続されている。すなわち、フライホイールダイオード3a〜3dのアノード端子はそれぞれスイッチング素子2a〜2dのソース端子に接続され、フライホイールダイオード3a〜3dのカソード端子はそれぞれスイッチング素子2a〜2dのドレイン端子に接続されている。フライホイールダイオード3a〜3dは、それぞれスイッチング素子2a〜2dの切り替えによって発生する逆起電力による逆方向の高い電圧がスイッチング素子2a〜2dに印加されないようにするためのものである。
【0033】
スナバコンデンサ4a〜4dは、スイッチング素子2a〜2dのドレイン端子とソース端子との間に、それぞれ接続されている。スナバコンデンサ4a〜4dは、スイッチング素子2a〜2dの切り替えによってドレイン端子とソース端子との間に印加されるサージ電圧を吸収するものである。なお、スナバコンデンサ4a〜4dにそれぞれ抵抗を直列接続してスナバ回路としてもよい。
【0034】
なお、フライホイールダイオード3a〜3dおよびスナバコンデンサ4a〜4dは、いずれか一方のみを備えるようにしてもよいし、いずれも備えないようにしてもよい。
【0035】
コイル5は、磁界を発生させるためのものであり、導体線を螺線状に巻いたものである。本実施形態では、誘導加熱装置を加熱調理用のものとして、コイル5の上部に鍋などを配置するので、コイル5を平面的に螺線状に巻いた渦巻形状としているが、これに限られない。コイル5の形状は、加熱対象物B1の形状や配置の状態に応じたものとすればよい。例えば、コイル5を円筒形状に巻いたいわゆるコイル形状として、その中央に加熱対象物B1を配置するようにしてもよい。コイル5は、インバータ回路2から入力される高周波電流が流れることで磁界を変化させる。これにより、この磁界に配置された例えば鍋などの加熱対象物B1に、渦電流が発生する。加熱対象物B1には、渦電流が流れることで電気抵抗によるジュール熱が発生し、自己発熱によって加熱対象物B1は加熱される。
【0036】
共振コンデンサ6は、コイル5によるインピーダンスを打ち消すためのものであり、コイル5に直列接続されることで直列共振回路を構成している。
【0037】
コイル5と加熱対象物B1とは磁気結合しているので、コイル5、共振コンデンサ6および加熱対象物B1をまとめて、インバータ回路2に接続された負荷と考えることができる。つまり、第1加熱部A1は、直流電源1が出力する直流電流をインバータ回路2が交流電流に変換して、負荷に供給するものである。
【0038】
制御回路7は、インバータ回路2の制御を行うものであり、直流電源1に入力される交流電力が目標電力になるように制御することで、インバータ回路2の出力電力を制御する。制御回路7は、フェーズシフト制御と周波数変調制御によって、出力電力の制御を行う。
【0039】
制御回路7は、所定の範囲ではフェーズシフト制御を行う。すなわち、一方のアームのスイッチング素子(例えば2c(2d))に出力する駆動信号の位相を他方のアームのスイッチング素子(例えば、2a(2b))に出力する駆動信号の位相より遅らせるが、この位相差θを変化させることで、出力電力の制御を行う。位相差θを小さくすると、負荷に電圧が印加される時間が短くなり、電流の振幅が小さくなって、インバータ回路2の出力電力が小さくなる。逆に、位相差θを大きくすると、負荷に電圧が印加される時間が長くなり、電流の振幅が大きくなって、インバータ回路2の出力電力が大きくなる。
【0040】
また、制御回路7は、フェーズシフト制御では制御できない範囲(位相差θの変化範囲外)で出力電力を制御する場合、周波数変調制御を行う。すなわち、駆動周波数fを変化させることで、出力電力の制御を行う。直列接続されたコイル5と共振コンデンサ6とは、直列共振回路を構成しており、駆動周波数fが共振周波数のときに共振状態となって、出力電流が最大になる。本実施形態では、遅れ位相にするために、駆動周波数fを共振周波数より高い周波数の範囲で変化させる。したがって、駆動周波数fを低くすると、電流の振幅が大きくなって、インバータ回路2の出力電力が大きくなる。逆に、駆動周波数fを高くすると、電流の振幅が小さくなって、インバータ回路2の出力電力が小さくなる。
【0041】
制御回路7は、電力算出部71、電力設定部72、電力制御部73、周波数制御部74、パルス信号生成部75、および、ドライバ76を備えている。
【0042】
電力算出部71は、電力系統から直流電源1に入力される交流電力の電力値を算出するものである。
図3においては図示されていないが、直流電源1には電力系統と整流回路との間に電流センサおよび電圧センサが設けられている。当該電流センサは、電力系統から直流電源1に入力される交流電流を検出して、電力算出部71に出力している。また、当該電圧センサは、電力系統から直流電源1に入力される交流電圧を検出して、電力算出部71に出力している。電力算出部71は、電流センサおよび電圧センサからの入力に基づいて、直流電源1に入力される交流電力の電力値Pを算出して出力する。なお、電力算出部71を直流電源1に設けて、電力値Pを直流電源1から制御回路7に入力するようにしてもよい。
【0043】
電力設定部72は、電力値Pの目標値P
*を設定するものであり、設定された目標値P
*を出力する。電力設定部72は、操作部8の調整つまみ81(
図2参照)の操作に応じて、目標値P
*を設定する。調整つまみ81は、使用者によって回動されることにより目標値P
*を変化させるものであり、一方方向(例えば反時計回り)に調整つまみ81を回動させると目標値P
*が小さい値に設定され、他方方向(例えば時計回り)に調整つまみ81を回動させると目標値P
*が大きい値に設定される。
【0044】
電力制御部73は、インバータ回路2に入力される電力の制御を行うためのものである。電力制御部73は、電力算出部71より出力される電力値Pと、電力設定部72より出力される目標値P
*との電力偏差ΔP(=P
*−P)を入力されて、当該電力偏差ΔPをゼロにするための電力補償値Xをパルス信号生成部75および周波数制御部74に出力する。電力制御部73は、例えば、比例積分(PI)制御を行っている。
【0045】
周波数制御部74は、駆動周波数fを設定するものである。周波数制御部74は、電力制御部73より入力される電力補償値Xと、切替部9より入力される信号とに基づいて、駆動周波数fを設定する。周波数制御部74は、切替部9より周波数固定信号(後述)が入力されている場合、駆動周波数fとして、あらかじめ設定されている固定周波数f
0を設定する。また、周波数固定信号が入力されていない場合でも、フェーズシフト制御を行っている場合は、駆動周波数fとして固定周波数f
0を設定する。一方、周波数固定信号が入力されておらず、フェーズシフト制御による制御範囲を超えて制御する場合には、電力制御部73より入力される電力補償値Xに応じて、駆動周波数fを変化させる。
【0046】
パルス信号生成部75は、パルス信号Pa〜Pdを生成するものである。パルス信号生成部75は、スイッチング素子2a〜2dに入力される駆動信号Pa’〜Pd’の元になるパルス信号Pa〜Pdを生成して、ドライバ76に出力する。パルス信号生成部75は、周波数制御部74より入力される駆動周波数fで、デューティ比が50%であるパルス信号Paを生成して出力する。また、パルス信号Paを電力補償値Xに応じて位相を遅らせて、パルス信号Pcとして出力する。つまり、第1アームが先行アームで、第2アームが追従アームになる。また、パルス信号生成部75は、パルス信号Paを反転させた信号をパルス信号Pbとして出力し、パルス信号Pcを反転させた信号をパルス信号Pdとして出力する。
【0047】
なお、パルス信号生成部75によるパルス信号の生成方法は、上述したものに限られない。電力制御部73より入力される電力補償値Xに応じて、パルス信号PcおよびPdの位相を遅らせることができればよい。なお、電力補償値Xに応じて、パルス信号PaおよびPbの位相を遅らせる(つまり、第2アームを先行アームとし、第1アームを追従アームとする)ようにしてもよい。また、本実施形態においては、デューティ比を50%にした場合について説明しているが、これに限られない。50%はあくまで例示であって、50%以外の所定値としてもよい。
【0048】
ドライバ76は、パルス信号生成部75から入力されるパルス信号Pa〜Pdを増幅して、各スイッチング素子2a〜2dを駆動できるレベルの駆動信号Pa’〜Pd’として出力する。本実施形態では、ドライバ76を、パルストランス方式のゲートドライブ回路としている。なお、ドライバ76は、パルストランス方式のゲートドライブ回路に限定されず、フォトカプラ方式などの他の方式のゲートドライブ回路としてもよい。
【0049】
なお、制御回路7の各部はディジタル回路として実現してもよいし、アナログ回路として実現してもよい。また、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを制御回路7として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
【0050】
操作部8は、使用者が誘導加熱装置を操作するためのものであり、
図2に示すように、誘導加熱装置の筐体の正面に設けられている。操作部8は、第1加熱部A1の火力を変化させるための調整つまみ81、第2加熱部A2の火力を変化させるための調整つまみ82、および、干渉音防止機能を機能させる状態と機能させない状態とを切り替えるためのボタン84を備えている。
【0051】
調整つまみ81および82は、回動可能に設けられている。使用者は、調整つまみ81(82)を回動させることで電力設定部72が設定する目標値P
*を変化させ、インバータ回路2の出力電力を変化させて、第1加熱部A1(第2加熱部A2)の火力を変化させる。なお、調整つまみ81および82は、スライド式など他の形式としてもよい。
【0052】
ボタン84は、押圧するたびにオンとオフとが反転する位置保持型の押しボタンである。使用者は、ボタン84を押圧することでオンとオフとを切り替える。なお、ボタン84は、これに限られず、オンとオフとを切り替えるものであればよい。例えば、切り替えスイッチやタッチパネル等であってもよく、マイクを設けて音声を認識してオンとオフとを切り替えるものであってもよい。
【0053】
切替部9は、干渉音防止機能を機能させる状態と機能させない状態とを切り替えるためのものである。切替部9は、ボタン84がオン状態の場合、干渉音防止機能を機能させるために、第1加熱部A1(第2加熱部A2)の周波数制御部74に周波数固定信号を出力する。一方、ボタン84がオフ状態の場合、干渉音防止機能を機能させないために、第1加熱部A1(第2加熱部A2)の周波数制御部74に周波数固定信号を出力しない。
【0054】
次に、第1実施形態に係る誘導加熱装置の作用と効果について説明する。
【0055】
ボタン84がオン状態の場合、切替部9は周波数制御部74に周波数固定信号を出力する。周波数固定信号が入力されている間、周波数制御部74は、駆動周波数fとして固定周波数f
0を設定する。第1加熱部A1の駆動周波数fと、第2加熱部A2の駆動周波数fとが、同じ固定周波数f
0に固定されるので、干渉音が発生しない(干渉音防止機能が機能している状態)。一方、ボタン84がオフ状態の場合、切替部9は周波数制御部74に周波数固定信号を出力しない。周波数固定信号が入力されていない間、第1加熱部A1の周波数制御部74と第2加熱部A2の周波数制御部74とは、それぞれ独立に駆動周波数fを設定する。したがって、フェーズシフト制御では制御できない範囲において、周波数変調制御を行うことができる(干渉音防止機能が機能していない状態)。これにより、出力や効率が制限されることなく、制御を行うことができる。つまり、本実施形態に係る誘導加熱装置は、出力や効率が制限される場合があるが干渉音が発生しない、干渉音防止機能を機能させる状態と、干渉音が発生するが出力や効率が制限されない、干渉音防止機能を機能させない状態とを、使用者が切り替えることができる。
【0056】
誘導加熱装置の使用環境によっては、周囲の音が大きい場合などには、干渉音が発生していても気にならない場合がある。本実施形態のような電磁調理機の場合、加熱対象物B1(B2)である鍋などの中の具材の煮立つ音や、換気扇のファンの回転による音などによって、干渉音が打ち消される場合もある。また、一般的に、人の可聴周波数範囲は、20Hz〜20kHzと言われているので、干渉音の周波数が20kHzより大きい場合、当該干渉音は、人には聞こえない。特に、年齢が高い場合、周波数の高い音が聞こえにくいので、干渉音の周波数が15kHz〜20kHzであっても、あまり気にならない場合もある。また、干渉音の周波数が1kHzより小さい場合、当該干渉音は耳障りな音ではなく、あまり気にならない。このように、干渉音が発生していても気にならない場合、使用者は、干渉音防止機能を機能させない状態に切り替えることで、誘導加熱装置に、出力や効率が制限されない制御を行わせることができる。一方、干渉音が不快である場合、使用者は、干渉音防止機能を機能させる状態に切り替えることで、出力や効率が制限される場合があるが、干渉音が発生しないようにすることができる。
【0057】
なお、本実施形態においては、直流電源1に入力される交流電力がインバータ回路2の出力電力とほぼ同じであることを利用して、直流電源1に入力される交流電力を制御することで、インバータ回路2の出力電力を制御しているが、これに限られない。例えば、インバータ回路2の出力電力を直接制御するようにしてもよい。すなわち、電力算出部71がインバータ回路2の出力電流および出力電圧から出力電力を算出し、電力設定部72が出力電力の目標値を設定するようにしてもよい。また、直流電源1からインバータ回路2に入力される直流電力を制御するようにしてもよい。また、直流電源1に入力される交流電流を制御するようにしてもよいし、当該交流電流から推定される交流電力を制御するようにしてもよい。
【0058】
また、本実施形態においては、フェーズシフト制御を行う場合について説明したが、これに限られない。例えば、パルス幅変調(PWM)制御、振幅変調(PAM)制御、または、パルス密度変調(PDM)制御などを行うようにしてもよい。本実施形態においては、フェーズシフト制御を行うので、インバータ回路2はフルブリッジ型であるが、その他の制御を行う場合は、インバータ回路2をハーフブリッジ型としてもよい。
【0059】
上記第1実施形態においては、使用者が干渉音防止機能の切り替えを行う場合について説明したが、これに限られない。干渉音を感知して、干渉音防止機能を自動的に切り替えるようにしてもよい。マイクで検出した干渉音に基づいて干渉音防止機能を切り替える場合を、第2実施形態として、以下に説明する。
【0060】
図4は、第2実施形態に係る誘導加熱装置を説明するための図である。同図においては、第1実施形態に係る誘導加熱装置(
図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0061】
図4に示す誘導加熱装置は、操作部8の操作で干渉音防止機能を切り替える代わりに、干渉音が発生しているか否かを判断して、自動的に干渉音防止機能を切り替える点で、第1実施形態に係る誘導加熱装置と異なる。
【0062】
判断部10は、干渉音が発生しているか否かを判断するものである。判断部10は、第1加熱部A1より入力される駆動周波数f(以下では、「駆動周波数f
1」とする)と、第2加熱部A2より入力される駆動周波数f(以下では、「駆動周波数f
2」とする)とから、周波数差Δf(=|f1−f2|)を算出する。周波数差Δfが干渉音の周波数に相当する。判断部10は、周囲の音声を検出するためのマイク10aを備えている。判断部10は、マイク10aによって検出された音のうち、Δfの周波数成分の大きさ(すなわち、干渉音の大きさ)を検出する。そして、判断部10は、干渉音の大きさが、所定の閾値より大きいか否かを判断する。干渉音の大きさが所定の閾値より大きい場合、干渉音防止機能を機能させるために、判断部10は、切替部9に周波数固定信号を出力させる。一方、干渉音の大きさが所定の閾値以下の場合、干渉音防止機能を機能させないために、判断部10は、切替部9に周波数固定信号を出力させない。
【0063】
第2実施形態においては、判断部10が、周囲の音から干渉音を感知した場合に、干渉音防止機能が機能する。また、干渉音が感知されなくなると、干渉音防止機能が機能しなくなる。したがって、使用者が干渉音防止機能を切り替える必要がなく、干渉音の有無によって、干渉音防止機能を自動的に切り替えることができる。
【0064】
なお、第2実施形態においては、干渉音の大きさが所定の閾値より大きい場合に干渉音防止機能を機能させているが、これに限られない。干渉音の周波数が所定の周波数f
max(例えば、20kHz)より大きい場合や、所定の周波数f
min(例えば、1kHz)より小さい場合、干渉音が気にならない場合が多い。これらの場合、干渉音防止機能を機能させる必要がない。したがって、周波数差Δfがf
min以上でf
max以下であり、かつ、干渉音の大きさが所定の閾値より大きい場合にのみ、干渉音防止機能を機能させるようにしてもよい。また、周波数差Δfを算出することなく、マイク10aによって検出された音のうち、f
min〜f
maxの周波数成分の大きさを検出して、これが所定の閾値より大きい場合に干渉音防止機能を機能させるようにしてもよい。これらの場合、ほとんどの人が不快と感じる干渉音のみを防止するように、f
min〜f
maxを、例えば、4kHz〜6kHzとしてもよい。
【0065】
また、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせて、使用者による切り替えと、干渉音感知による自動切り替えとを、両方備えるようにしてもよい。この場合、どちらの切り替えを優先させるかは、適宜設計すればよい。例えば、干渉音防止機能が機能しない状態から機能する状態への切り替えは、干渉音感知による自動切り替えを行うようにし、干渉音防止機能が機能する状態から機能しない状態への切り替えは、使用者による切り替えを行うようにしてもよい。
【0066】
上記第1および第2実施形態においては、干渉音防止機能が駆動周波数を一致させることで干渉音を防止するものである場合について説明したが、これに限られない。上述したように、人の可聴周波数範囲が20Hz〜20kHzなので、周波数差Δfが、所定の周波数f
max(例えば、20kHz)より大きい場合、当該干渉音は人には聞こえない。したがって、駆動周波数を一致させなくても、周波数差Δfが所定の周波数f
maxより大きくなるように調整していれば、干渉音を防止できる。干渉音防止機能が、周波数差Δfが所定の周波数f
maxより大きくなるように調整することで干渉音を防止するものである場合を、第3実施形態として、以下に説明する。
【0067】
図5(a)は、第3実施形態に係る誘導加熱装置を説明するための図である。
図5(a)においては、第1実施形態に係る誘導加熱装置(
図1参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0068】
図5(a)に示す誘導加熱装置は、周波数差調整部11を備えており、周波数差Δfが所定の周波数f
maxより大きくなるように調整することで干渉音を防止する点で、第1実施形態に係る誘導加熱装置と異なる。なお、所定の周波数f
maxとして、15kHz〜20kHzの値が設定される。
【0069】
切替部9は、ボタン84がオン状態の場合、干渉音防止機能を機能させるために、周波数差調整部11に、周波数調整信号を出力する。一方、ボタン84がオフ状態の場合、干渉音防止機能を機能させないために、周波数差調整部11に周波数調整信号を出力しない。
【0070】
周波数差調整部11は、周波数差Δfを調整するものである。周波数差調整部11は、第1加熱部A1の周波数制御部74から駆動周波数f
1を入力され、第2加熱部A2の周波数制御部74から駆動周波数f
2を入力され、周波数差Δf(=|f
1−f
2|)を算出する。周波数差調整部11は、切替部9より周波数調整信号を入力されている場合、周波数差Δfが所定の周波数f
maxより大きくなるように、駆動周波数f
1および駆動周波数f
2を調整して、調整後の駆動周波数f
1を第1加熱部A1の周波数制御部74に出力し、調整後の駆動周波数f
2を第2加熱部A2の周波数制御部74に出力する。一方、切替部9より周波数調整信号を入力されていない場合、駆動周波数f
1および駆動周波数f
2を調整しない。
【0071】
図5(b)は、周波数差調整部11が行う処理を説明するためのフローチャートである。当該処理は、インバータ回路2の起動時(すなわち、使用者が操作部8の操作によりスイッチをオンにしたとき)に実行が開始され、インバータ回路2の停止時(すなわち、使用者が操作部の操作によりスイッチをオフにしたとき)まで継続する。
【0072】
実行が開始されると、まず、切替部9から周波数調整信号を入力されているか否かが判別される(S1)。周波数調整信号を入力されていない場合(S1:NO)、ステップS1に戻る。つまり、周波数調整信号が入力されていない間は、周波数差調整部11は処理を行わない。一方、周波数調整信号を入力されている場合(S1:YES)、第1加熱部A1から駆動周波数f
1が取得され、第2加熱部A2から駆動周波数f
2が取得される(S2)。そして、周波数差Δf(=|f
1−f
2|)が算出されて(S3)、周波数差Δfが所定の周波数f
maxより大きいか否かが判別される(S4)。周波数差Δfが所定の周波数f
maxより大きい場合(S4:YES)、駆動周波数f
1およびf
2を調整する必要がないので、ステップS1に戻る。一方、周波数差Δfが所定の周波数f
max以下の場合(S4:NO)、駆動周波数f
1およびf
2が調整される(S5)。そして、調整後の駆動周波数f
1が第1加熱部A1の周波数制御部74に出力され、調整後の駆動周波数f
2が第2加熱部A2の周波数制御部74に出力されて(S6)、ステップS1に戻る。なお、周波数差調整部11が行う処理は、上述したものに限定されない。
【0073】
第1加熱部A1(第2加熱部A2)の周波数制御部74は、フェーズシフト制御を行っている場合は、駆動周波数f
1(f
2)として固定周波数f
0を設定する。一方、フェーズシフト制御による制御範囲を超えて制御する場合には、電力制御部73より入力される電力補償値Xに応じて、駆動周波数f
1(f
2)を変化させる。このとき、周波数差調整部11より調整後の駆動周波数f
1(f
2)が入力される場合、当該駆動周波数f
1(f
2)が設定される。
【0074】
第3実施形態においては、周波数差Δfが所定の周波数f
maxより大きくなるように調整することで干渉音を防止するので、干渉音防止機能を機能させている状態においても、駆動周波数f
1およびf
2の設定に自由度がある。したがって、駆動周波数f
1とf
2とを一致させることで干渉音防止機能を機能させる場合よりも、出力や効率が制限されることを、より抑制することができる。
【0075】
なお、第3実施形態においては、周波数差Δfが所定の周波数f
maxより大きくなるように調整する場合について説明したが、これに限られない。上述したように、周波数差Δfが、所定の周波数f
min(例えば、1kHz)より小さい場合、干渉音は耳障りな音ではなく、あまり気にならない。したがって、周波数差Δfが所定の周波数f
minより小さくなるように調整するようにしてもよい。なお、所定の周波数f
minとして、1kHz〜3kHzの値が設定される。また、周波数差Δfが、所定の周波数f
min以上、所定の周波数f
max以下の範囲に入らないように調整するようにしてもよい。
【0076】
上記第1〜3実施形態においては、誘導加熱装置が2つの火口を備えている場合について説明したが、これに限られない。3つ以上の火口を備えるようにしてもよい。3つの火口を備える場合を、第4実施形態として、以下に説明する。
【0077】
図6は、第4実施形態に係る誘導加熱装置を説明するための図である。
図6(a)は、当該誘導加熱装置の各機能ブロックを示しており、
図6(b)は、当該誘導加熱装置の外観を示している。
図6(a)および(b)においては、第1実施形態に係る誘導加熱装置(
図1および
図2参照)と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0078】
図6に示す誘導加熱装置は、第3加熱部A3をさらに備えている点で、第1実施形態に係る誘導加熱装置と異なる。
【0079】
図6(b)に示すように、第3加熱部A3のコイル5は、誘導加熱装置の筐体の上面で、第1加熱部A1のコイル5および第2加熱部A2のコイル5に近接して配置されている。したがって、第1加熱部A1と第2加熱部A2との間で発生する干渉音に加えて、第1加熱部A1と第3加熱部A3との間、および、第2加熱部A2と第3加熱部A3との間でも干渉音が発生する場合がある。本実施形態では、各干渉音に対して、それぞれ干渉音防止機能が設けられており、それぞれの干渉音防止機能は切り替え可能になっている。
【0080】
誘導加熱装置の筐体の正面に設けられている操作部8には、第3加熱部A3の火力を変化させるための調整つまみ83がさらに設けられている。また、操作部8には、ボタン84に代えて、ボタン841〜844が設けられている。各ボタン841〜844は、ボタン84と同様の位置保持型の押しボタンであり、使用者の押圧によりオンとオフとを切り替える。
【0081】
ボタン842は、第1加熱部A1と第2加熱部A2との間で発生する干渉音に対する干渉音防止機能を切り替えるためのものである。切替部9は、ボタン842がオン状態の場合、第1加熱部A1の周波数制御部74、および、第2加熱部A2の周波数制御部74に周波数固定信号を出力して、干渉音防止機能を機能させる。ボタン843は、第2加熱部A2と第3加熱部A3との間で発生する干渉音に対する干渉音防止機能を切り替えるためのものである。切替部9は、ボタン843がオン状態の場合、第2加熱部A2の周波数制御部74、および、第3加熱部A3の周波数制御部74に周波数固定信号を出力して、干渉音防止機能を機能させる。ボタン844は、第1加熱部A1と第3加熱部A3との間で発生する干渉音に対する干渉音防止機能を切り替えるためのものである。切替部9は、ボタン844がオン状態の場合、第1加熱部A1の周波数制御部74、および、第3加熱部A3の周波数制御部74に周波数固定信号を出力して、干渉音防止機能を機能させる。
【0082】
ボタン841は、すべての干渉音防止機能を一括して切り替えるためのものである。切替部9は、ボタン841がオン状態の場合、第1加熱部A1の周波数制御部74、第2加熱部A2の周波数制御部74および第3加熱部A3の周波数制御部74に周波数固定信号を出力して、すべての干渉音防止機能を機能させる。また、切替部9は、ボタン841がオフ状態の場合、第1加熱部A1の周波数制御部74、第2加熱部A2の周波数制御部74および第3加熱部A3の周波数制御部74に周波数固定信号を出力せず、すべての干渉音防止機能を機能させない。つまり、ボタン842〜844の状態に関係なく、ボタン841の状態が優先される。
【0083】
ボタン842〜844は、どの2つの加熱部間で発生する干渉音に対する干渉音防止機能を切り替えるのかを、使用者が直感的に判断できるように、ボタン841の周囲に配置されている。すなわち、誘導加熱装置の筐体の上面での、各加熱部A1〜A3のコイル5(火口)の配置に対応して、ボタン842は、第1加熱部A1と第2加熱部A2との間を示すように、ボタン841の下方に配置されている。同様に、ボタン843は、第2加熱部A2と第3加熱部A3との間を示すように、ボタン841の右上に配置されており、ボタン844は、第1加熱部A1と第3加熱部A3との間を示すように、ボタン841の左上に配置されている。なお、各ボタン841〜844の配置方法はこれに限られない。ただし、各ボタン841〜844が、どの干渉音防止機能の切り替えを行うものであるかが直感的に判るような配置が望ましい。
【0084】
第4実施形態においては、各加熱部A1〜A3間の各干渉音防止機能を、個別に切り替えることができる。例えば、第1加熱部A1と第2加熱部A2のみを使用しているときに干渉音が発生した場合、ボタン842のみをオンにすることで、当該干渉音を防止することができる。また、加熱部A1〜A3を使用していて、第3加熱部A3では大きな火力が必要なので出力を制限したくなく、第1加熱部A1および第2加熱部A2では出力が制限されても構わない場合、ボタン842のみをオンにすることで、第1加熱部A1と第2加熱部A2との間の干渉音を防止し、かつ、第3加熱部A3での出力を制限しないようにすることができる。
【0085】
また、ボタン841の押圧により、すべての干渉音防止機能を一括して切り替えることもできる。例えば、加熱部A1〜A3を使用していて、どの加熱部間で干渉音が発生しているかわからない場合、ボタン841をオンにすることで、干渉音を防止することができる。
【0086】
また、どの加熱部間の干渉音防止機能の切り替えを行うものであるかが直感的に判るように、ボタン842〜844がボタン841の周囲に配置されている。したがって、使用者は干渉音防止機能の切り替え操作を直感的に行うことができるので、使い勝手が良い。
【0087】
本発明に係る誘導加熱装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る誘導加熱装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。